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誰も彼も、シルエット

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朝陽に包まれる街を駆ける、3つの小さな影とそれに追従する大量の人影。
言うまでもなく、ナルト、エリス、セリムの3人と、ナルトの影分身だ。
彼等は必死にシュライバーから逃走しようとしていた。
だが、セリムはいかなホムンクルスと言えど体は子供相応の身体能力。
それに加えてエリスも明らかに足取りに精細さを欠いている。
焦燥が募る中、ナルトは目下一番の懸念事項を口にする。


「なぁおい!羽蛾の奴はどうすんだってばよ!エリス!!」


ナルト達が戦っている中、一人逃げ出した同行者の名前を叫ぶ。
彼にとっては出会ったばかりの、一目見ただけで分かるいけ好かない相手だったが。
それでも、エリスの方は別れてから行動を共にしていた相手だろう。
シュライバーが突如ナルト達をおいて掻き消えた理由。
それを考えれば、羽蛾を追っていったのは明らかだ。
逃げきれればいいが、シュライバーの速度を前に逃げ切れるとは思えなかった。
そして追いつかれてしまえば羽蛾は確実に死ぬ。
それはエリスも分かっているはずだ。


「そんなの分かってるわよ!でも逃げ出したのはあいつが勝手にやった事だし、
そもそも私達が助けに行ってどうなるって言うの!?」


一番行動を共にしてきた筈のエリスの態度はどこまでも冷たく。
そもそも彼女にとって羽蛾は半ば丸め込まれる形、利害の一致で同行していたのだ。
彼個人の人格で言えば、下種である事を確信する好感度だった。
彼女だって情がない訳ではない、目の前で羽蛾が死にかけていたら助けに入るだろう。
しかし、それはあくまで彼女の力が及ぶ範囲での話だ。
助けに行けば、エリスは死ぬ。
最早羽蛾は利益をもたらす存在にはなりえない。
利害の一致で同行していた相手なのだから、害しか無くなれば切り捨てられるのは必定だった。



「私はルーデウスにまた会うまで死ねないのよ!分かる!?
あいつがあのバケモノに襲われたとしても、それは全部あいつが選んだ結果!
ルーデウスだって、きっとそう言うわ!」



表情こそ白い鎧に包まれて見えないものの。
焦燥と苛立ちとシュライバーの畏怖とルーデウスと再会したい恋心がない交ぜになっているであろうことはナルトにも察せられた。
彼にとっても見捨てるのは後味が悪いが、エリスの言う事ももっともだと反論ができない。


「…分かった。せめて影分身を向かわせて───」


それが、どれほど意味がある事かはナルト自身疑問だったけれど。
それでも何もせずに同行者を見捨てるのは後味が悪い。
支給品などを使い、上手く羽蛾が逃げおおせていた時の為に影分身を逃げた方向へ向かわせようとする。



「いや、その必要はないよ」



直後、後方から声が響く。
大きな声という訳でもないのに、克明に聞こえるその声を聴いて。
3人の背筋が凍り付く。
弾かれた様に振り返ってみれば、黒い影が空中を疾走し、此方に迫っているのが見えた。
視認してから、逃げるには遅すぎた。
補足された時点で、詰み。本能が訴えていた。
事実黒い影は空中からあっという間に、影分身たちや、3人の子供を追い越して。
そして、彼等の眼前にふわりと鷹の如く降り立った。
新鮮な、死臭を纏わせて。



「君たちにも言ったはずだろう?一人も逃がさないって」



どしゃりと、何かがナルト達の前方の足元に落ちてくる。
それは、ボーリングの球程の大きさをしていた。
尚且つ、三人取って、見覚えがあった。
特徴的な眼鏡をして、顔中を恐怖で歪ませた、彼の名は───



「……羽蛾……っ!?」


それは、羽蛾の生首だった。
さっきまで生きていたその男の末路を目の当たりにして、三人の間に戦慄が駆ける。
そんな彼らを眺めて、くすくすと笑い。
死線が、訪れる。







圧倒的な存在感。
暴風よりなお速く鋭いその俊敏さ。
餓えた白狼は、決して獲物を逃がさない。
言葉にせずとも、直感的にエリス、ナルト、セリムの3人はそれを悟った。



「何、でだ……」



一秒後の生存すら絶望的な状況。
しかしだからこそ、絞り出すような声で。
ナルトはシュライバーに言葉を投げかける。
何故そんなにも力があるのに、乃亜に従うのか、と。
何故、乃亜に立ち向かおうとしないのか、と。


「んー……そんな事言われてもなァ。乃亜は最後に勿論殺すよ?
だけど60年間ずぅっと死体ばかり殺してきた所に折角用意された余興だ。
楽しまないと損だろ?」


僕が戦争をするに値する、それなりに面白い奴も何人かいたしね。
語るシュライバーの言葉は、アメストリス国の人間すべてを父に捧げる予定のセリムですら理解しがたい物だった。
狂っている。
セリムは父の計画のためなら何人だって殺すし、その事に良心の呵責は無い。
その点においてはシュライバーと同じだ。
だがシュライバーは、行動理念の最上位に他者の殺害を置いている。
損得や利害など度外視、必要があれば殺すし、無くとも殺す。
我殺す故我在り。単純にして、だからこそ説得は不可能だと確信させられる。


「それに僕の忠誠を誓った方…獣の軍勢に捧ぐ魂は多い方がいい。
君たちを殺して、最後に乃亜を殺す。それが一番“アガリ”が大きいと思わないかい?」


その言葉はナルトやエリスには変わらず理解不能だったけれど。
セリムにはシュライバーの言っている事の輪郭が掴めていた。
ホムンクルス達がアメストリスで行ってきた様に、彼も“血の紋”を刻もうとしているのだろう。
己が敗れると一切思っていないが故の、鏖殺宣言。
だが、同時にシュライバーならやってのけるだろう。
相対者にそうおもわせるだけの力を彼は有していた。


「……ふざけんな。んな訳分かんねー理由の為に、全員殺すつもりか、お前は」


納得ができない、と言う顔で、ナルトは尚も食い下がる。
彼だって理解している。シュライバーが自分よりもずっとずっと強い存在である事など。
強者の理屈がまかり通るのも世の常だ。
しかし、それに頭を垂れて受け入れるかどうかは別の話。
狂った動機の為に、自分の火影になるという夢を譲るつもりは、毛頭なかった。
それに、何より彼の反骨精神をかき乱すのは。



「そんな事、させっかよ……!!」



襲い来る凶獣の瞳には、見覚えがあった。
シュライバーの瞳は、少し前に自分が戦い、この殺し合いにも参加させられている忍。
砂瀑の我愛羅にとてもよく似ていた。
世界の全てを憎んで、目の前にいる相手を全て殺さなければ気が済まない。
だからこいつは、自分も、同じく参加させられている我愛羅も、シカマルも、それ以外の参加者も、殺しつくすつもりだろう。
絶対に膝を折ってはいけない相手だった。
だからこそ、力の差は歴然と分かった上で、反抗の意志を示し続ける。


「はぁー……それで?吠えるのはまぁいいんだけどさ」


相対する白騎士は、冷然とした態度だった。
シュライバーはぽりぽりと面倒くさそうに頭を掻いて。
直後、爆発音染みた衝撃が、空間に伝播する。



「───!?下がりなさいうずまきナルト!!」



不味い、セリムがそう思考した時にはもう全てが遅かった。
苦し紛れに大規模展開した影をシュライバーに見舞うモノの、蝶の様にひらりと躱される。
セリム達の現在の状況は、先ほどまでと違う。
先ほどまでは、ナルトの影分身と言う大量の障害物があった。
その隙間をセリムの影で埋め、また影を影分身たちの防御壁にすることによって防戦が成立していたのだ。
だが、今の位置取りは本物のナルトが、最前列でシュライバーと向かい合っている。
それは殆ど無防備な状態で相対しているに等しい。
セリムの危惧は、正確に戦況を掴んでいた。




「許せないのなら、言葉じゃなくて力で語れ。
僕よりも弱い分際で、僕に意見するなんて万死に値する」



影分身という障害物を欠いた状態では、セリムの影でもシュライバーは止められない。
鋼を軽々切り裂く影の鋭利な触手を踊る様に躱し、ナルトの眼前に肉薄する。
同行者を救うべく乾坤一擲で放った最後の影の刃は、やはり空を切り、そして。



「が、ぁ………っ!?」
「君じゃ僕に勝てないよ。
…君の内側に在るモノを早く出せ、僕の気は長くない。」



見透かしたように言いながら、
シュライバーの突きがうずまきナルトという肉の塊を、貫き吹き飛ばす。
肺をぶち抜かれた。印も結べない。
疑いようも無く、致命傷だった。
そのまま壁に近場に会った建物の壁に激突して、ずるずると崩れ落ちる。
影の妨害が無ければ、壁にぶつかった勢いでナルトは挽肉になっていただろう。
尤も、致死が即死に変わっただけで、結果は同じだっただろうが。



「さて、二人目だ」



今しがた敵手を討ったとは思えぬ気軽さでそう漏らし。
うずまきナルトの返り血を滴らせて。
死を運ぶ白き風は、エリスとセリムに向き直る。
戦況は、いよいよ絶望の色を濃くしていた。








…………………。
………。
……。
うずまきナルトが倒れてから数分。
嬲り殺し。
エリスの今の状況を形容するなら、その一言で言い表せた。


「がっ……はっ……はっ……あぁぐ………」
「やれやれ、亀の様に撃たれ続けるだけかい?
宝の持ち腐れだね。そんな体たらくで僕に挑もうとは片腹痛いにも程がある」


エリスの身体の状態は満身創痍だった。
セリムの展開する影と、インクルシオの防御力によって何とか凌いでいる。
この二つが無ければ、とっくの昔に死臭を放つ銃殺死体に変わっていただろう。
そしてそれはセリムも同じだ。
彼の協力無比な影は、しかしこれまで一度もシュライバーを捕えられていない。
精々がエリスに放たれる大砲かと見紛う威力の銃弾を逸らして守るぐらいだ。
それも守り切れていない。エリスは確実に削られ続け、その戦意は最早風前の灯火。
それでもエリスが前線を張って、シュライバーがエリスを集中的に狙っているからこそ戦闘が成立しているのだ。
もし一対一に持ち込まれればセリムにも勝ち目はない。
残存する賢者の石が尽きるまで銃弾を撃ち込まれて、それで詰みだ。


(どうする……どうすれば………)


目まぐるしく脳を回転させて、セリムは必死に策を練ろうとする。
エリスを置いて逃げるのはずっと考えていたが、論外だ。
彼の移動速度は入れ物である子供の身体に依存する。
補足された状態で、シュライバーの速度から逃げ去るのは難しい。
ただ逃げただけでは羽蛾の二の舞になるのが目に見えている。
かといって、このままエリスの援護に徹していても、もう時間が殆ど残されていない。
可能性があるとすれば、セリムが黒人の赤ん坊から得た支給品だが……


(あれの準備には最低数分はかかる。彼女(エリス)を守りながらでは手が足りない。
……ですが僕が援護を止めれば、彼女は数十秒も生きてはいられないでしょう)


臍を噛む思いで影を操作し続ける。
その脳裏には、ずっと2文字の言葉が浮かび続けていた。
“詰み”と言う脳裏に浮かぶ2文字が、継戦の意志すら削ぎにかかる。
愚直に人間を守り、掠りもしない影を振るう様は、普段の冷徹なプライドが見れば冷笑を禁じ得ないだろう。




「ハァ……ッ!ハァーッ!」



凶獣と相対するもう一人。
エリスは鎧の下に珠のような汗を幾つも浮かべ、ぜいぜいと荒い息を吐き、肩で息をして。
諦観と言う死神を必死に抑え込んでいた。
全身に走る痛みと、今迄どれだけ剣を振っても掠りもしていない事実は。
幼い少女剣士の心を折るのに十分な絶望だっただろう。
それでも今なお彼女が膝を折っていないのは。



「まだ……ルーデウスに会うまで、死ぬ訳にはいかないのよ………!」



エリスの予想通り、やはりルーデウスもこの島に来ていた。
そして自分と同じく2度の放送を乗り越え、生きている。
ただ、好きな男の子にもう一度会いたい。
それが、一条の光明すら見えない戦況の中で、彼女を支える理由だった。
戦力差は歴然、遠からず自分の身体は限界を迎える。
それは分かっていたけど、それでも諦めきれない。
艶のある唇を?みちぎり、その痛みで全身の鈍痛を誤魔化し、構えを取る。



「んー…君たちの相手も飽きてきたな。
そろそろ殺して、次に行かせてもらうとするよ」



人造人間の計算も、少女剣士の恋心も意に介さず。
白騎士は欠伸を浮かべるような所作をした後、詰めの宣言を行った。
彼の視線はエリス達を見てすらいない。
それも当然だ。エリス達の速度では、決してシュライバーを捕えられないのだから。
最早これは戦争は愚か戦闘ですらなく、ただの殺害と言う名の作業。
耐えきれなくなるまで弾丸を見舞って、崩れた所を轢き潰す。それだけだ。
彼がその気であれば、もっと早く決着がついていた。
そうならなかったのは、シュライバーの中に僅かに期待があったからだ。
今しがた体を貫いた少年の仲間を嬲れば、彼の中に潜むものが出てくるかもしれない、と。
結果は甚だ期待はずれなものに終わったようだが。



「それじゃあね、劣等。つまらなかったよ」



極寒の声でそう告げながら、シュライバーは白銀の銃口を向けた。
エリス達は身構え防御姿勢を取るものの、その瞳に光は無い。
希望など存在しないが、ただ現実を受け入れられない敗北主義者の挙動だ。
魔人ウォルフガング・シュライバーの瞳には、二人はそう映った。
さっさと殺して、あの青いコートの少年等を探そう。
その思考の元、白銀の引き金を引き絞ろうとする。



────待てよ、眼帯ヤロー、



その直後の事だった。
肺を貫かれた筈の、オレンジの服を着た少年が、シュライバーの背後に立っていた。
その手に、一本の剣を握って。



「この木の葉流忍者、うずまきナルト様は───まだ死んでねーってばよ」



その相貌に、消える事のない火の意志を燈して。
言葉を紡ぎながら、うずまきナルトは不敵に笑ったのだった。








強かった。
白髪の眼帯ヤローは、俺なんかよりずっとずっと強かった。
俺と同じくらいの年で、カカシ先生より強いガキがいる。
それが忍者の世界だって、カカシ先生は言ってた。
とてもじゃねーけど、敵う気がしねぇ………
火影にもなれず。
サスケの奴に勝つこともできず。
我愛羅も止めてやれないまま、俺ってば殺されるんだ。
だってあいつは、俺よりもずっと強いんだから。
それぐらい、俺にだって分かるってばよ。


あぁ……でも、何でかな。


彼奴の…あの片方しかない目。
彼奴の目を見た時に思ったんだ。
あの目は、同じだった。
俺が戦った時の、我愛羅の目と。
とても寂しくて…孤独で…何もかもを憎んで殺してやるって目だった。
……あの目だけはダメだ。
やっぱ、俺ってばあの目にだけは────負けたくねぇ。



────ナルト、いい事を教えてやる。



不意に、綱手のバーちゃんを大蛇丸から助けた後に。
エロ仙人から言われたことを思い出した。


───忍ってのはのぉ…多くの忍術が使える奴の事を言うんじゃねぇ。
───忍び耐える者の事を言うんだよ。


正直、言われたその時は、エロ仙人が何が言いたいのか俺ってば良く分かんなかった。
でも、その後言われた事は分かる。
あの時、エロ仙人は───、




───お前は直情タイプだからのぉ…難しく考えなくていい。要するに、必要なのは……
───諦めねぇド根性だ。




あぁ。
偶にはいい事言うってばよ、エロ仙人。
そうだ、力で言えば敵わねぇかもしれないけど、諦めの悪さだけは絶対に負けねぇ。
そう決めた瞬間、腹の内側に力を籠める。
お陰で、いいモン持ってるの思い出したぜ………!
さぁ出番だぜ九尾。
さっき俺にあれだけエラソーに言ったんだ。
根性見せろ!







前提として、確実に致命傷ではあった。
箸を通した豆腐の様に風穴が空いていたのだ、疑いようもない。
しかし、その傷は現在完全に塞がっており、死に至る兆候は見られない。
自分が出会った時に感じた少年の中に潜むものの力だろう。
シュライバーはそう判断した。そしてその上で抱いたのは。



「なーんで君かなぁ。さっきまで僕にビクビクしてた敗北主義者に用はないよ。
もう一度言うよ。さっさと消えて君の中に閉じ込められてる怪物(モノ)と変わりな」



失望。落胆。
漸く面白くなりそうだと思っていた展開が、途端に尻すぼみになってしまった様な。
如何にもぬか喜びをさせられた、といった様相で肩を竦めて。
これならばさっきさっさと殺しておくんだったと、嘆息する。
そんな見下し切ったシュライバーの態度を前にしてもナルトは笑みを崩さなかった。


「へっ、言ってろ。バケ狐に何か頼らなくても、
こっちにゃ切り札がまだあるんだってばよ」


ナルトは言葉と共に、刀を構える。
シュライバーの目にはその刀には見覚えがあった。
数時間前に交戦した、氷を操る剣士の刀と似たものを感じたのだ。
得意げに刀を構える敵手に対して、狂気の白騎士は失笑を禁じ得なかった。


「…何かと思えば、最後に頼りにするのが乃亜から下賜された支給品と来たか。
そんな刀百年振った所で、僕に掠りもしないよ」


前提として、シュライバーはナルトの握る刀を侮っている訳ではない。
彼は氷を操る剣士の策に追い詰められたのだから。
その上で、得意げに斬魄刀を握るナルトの事を醜悪なものとして見ている。
あの氷の剣士とは違い、ナルトは目に見えて握る刀に慣れていない。
感じる魔導も、構え方も、氷の剣士には遠く及ばない。
与えられた自分の物ではない力を、自分の力と錯覚している者のそれだ。


「興覚めだね。君じゃあ僕とは釣り合わない、期待外れもいいところだ」


吐き捨てるようにそう一言呟いて、構えを取る。
本当に、期待外れな戦いだった。
放送前に戦った、青いコートの少年。
あの少年の様に、中に潜むものを引きずりだして殺せれば。
己の欠落を埋めてくれる黄金の獣に捧げるに相応しい殺戮になると期待したのに。
その打算もあって、ナルトを致命傷で留め、エリス達を嬲り殺しにしたのに。
結果は愚にもつかない劣等に無駄に時間を取られる結果となった。
こうなれば、さっさと全員殺す他ない。



世界が、爆ぜる。



その光景を見ずに少年の疾走の影響によるものであると信じられる者はいないだろう。
アスファルトを、コンクリートを、街路樹をなぎ倒し粉砕して。
餓えた白狼が敵手の喉笛へと駆ける。


「───このッ!」
「………ッ!!」


しかし、シュライバーが動くよりも早く、その行動を予測して動いている者がいた。
エリスが刀を振り上げ、セリムが影を放出して凶獣の行く手を阻む。
二人にとっても、これが最後の賭けだ。
限りなく信頼性は低い物の、ナルトの切り札とやらに全てを託す他ない。


「もっと必死になりなよ。そうでないと遅すぎる」


二人が死力を尽くしてなお、止められた時間は一秒足らず。
全力の妨害を紙細工の様に蹴散らして。
目標の元へと飛び上がる。



「───出番だぜ」



視線が交わる。
瞳に秘めた力だけは立派なものだと、白騎士は思った。
まぁ、尤も。
実際の力が伴っていなければ、無意味に等しい事に変わりはないが。



「鏡花水月!!」


叫んだ名前は、刀の銘か。
とは言えもうどうでも良い話。


───二人目だ。


何故なら駆け抜けた先で、振り下ろしたシュライバーの手刀は。
うずまきナルトの左脳を一撃で以て破壊していたからだ。


「ナルト!!」


白い鎧が少女の声で叫びをあげる。
さて、次だ。
くるりと華麗にバックターンをキメて、次の敵を沈黙させにかかる。
襲い来る影をひらりひらりと躱し。或いは銃弾で撃ち落として。
苦し紛れに放ってきた拳を叩き落とし、無意味な抵抗を一蹴する。


「────っ!?」


末期の言葉を吐く暇さえ与えずに。
シュライバーの理外の速度で放たれた拳が、白い鎧を穿つ。


「三人目」
「がッ……ああああああッ!!!」


それでも最後の執念か、此方に掴かかろうとした少女の心臓をぐちゃりと潰して。
そして、触れられるより早く投げ飛ばす。
そして脚部に力を籠めて、殺到する影の触手を闘牛士の様に美しいフォームで躱す。
最後の獲物を仕留めるべく、魔人は朝を駆ける。


「くっ───!!」


散々鬱陶しい影を伸ばしてきた少年の顔が、焦燥と絶望に彩られる。
何とか死神から逃れようと後退しているが、シュライバーにとってその速度は亀の歩みでしかない。
迎撃のために伸ばしてきた影を避けつつ、詰め(チェック)にかかる。



「四人目だ」



轟音と共に、凄まじい数の死の雨が降り注ぐ。
最早ホムンクルスを前線で守る盾はいない。
迎撃と防御を一手に引き受けるには、ウォルフガング・シュライバーは難敵すぎる。
一騎打ちの開始から十秒足らずで、均衡は崩される。
一発の魔弾がセリムの肩を引きちぎり、それが終わりを示す合図となった。



「くく───あはははははははははははははははははは!!!!!」



狂笑と共に、影の少年をハチの巣にして。
狂える白騎士は殺戮の味に上機嫌に笑った。
駆け抜けた先にたっているのは、これまで通り。彼だけだ。
全てを轢殺の轍に変えて、一人の子供が乱れ狂いながら、敵対者の抵抗全てを踏み躙った。







どんなもんだい、と。
喧嘩相手を叩きのめしたガキ大将が力を誇示するように、ひとしきり笑って。
そして、銃を仕舞った。
相手が取るに足らない敗北主義者の劣等とは言え、数十年ぶりに感じる生の肉と血の感触は得も言われぬ快感があった。
戦争もいいが、虐殺もまた良い物だ。
猫の様に大きく伸びをしながら、そう考え。
轢殺死体が散らばる戦場を後にしようとする。


「────?」


違和感を抱いたのは、その時だった。
特に理由はない。ただ“何となく”だ。
その何となくの勘に突き動かされる様に、物言わぬ肉袋達を眺める。
殺した後の残骸にもう一度意識を裂くなど、シュライバーらしからぬ行動だった。



───何故。



何故、エイヴィヒカイトによる魂の収奪が始まらない?
シュライバーの違和感の発露は、その事実を発端としていた。
聖槍十三騎士団副首領メリクリウスより与えられた魔導。
高等魔術永劫破壊【エイヴィヒカイト】。
黒円卓の魔人たちが有する聖遺物の種類こそ多種多様で在るモノの、
そこに付随するエイヴィヒカイトには共通する性質が存在する。
それは殺害した相手の魂を取り込み、聖遺物所有者を強化すること。
内包した魂が多ければ多い程、聖遺物保有者の存在強度は上がっていく。
十八万を超える魂を簒奪し、活動位階であっても上位の位階を凌駕するシュライバーなどがよい例だ。
そんなエイヴィヒカイトが、魂の簒奪を遂げられていない。

考えられる可能性は二つだ。
一つは、海馬乃亜の手によってエイヴィヒカイトの性質が封印されていること。
そして、もう一つは────



「───何処だ」


まだ、連中が死んでいない。
確証はなかった。
何方の可能性が高いかと問われれば、100人中99人が前者を選ぶだろう。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚。
全てが既に獲物は屠ったと伝えてくる。
伝えてくるからこそ、自身の魔人たる象徴だけが反応しないことが。
拭えない違和感としてシュライバーの疑念を揺り起こした。
シュライバーが疾走を開始するのと同時に、大気が爆ぜる。
街路樹をなぎ倒し、アスファルトを粉砕し、コンクリートを削り飛ばして。
白狼は今、破壊の具現となる。



「何処にいる」



短い言葉と共に。
少年は、極小の嵐となり荒れ狂う。
今しがた手にかけた死体が千々に千切れ肉片と化しても気にも留めず。
ただ己の獣の直感に従って、目視で見える範囲全てを荒野へと変貌させるべく駆ける。
彼が周囲を駆けまわるとバリバリと大気を引き裂くような轟音が空間に満ち───
そこで、気づいた。





「さっさと出てこい!!」




狂える魔獣の表情が、怒りに歪む。
よくもコケにしてくれたな、と。不服な事が起きた時の子供そのものの顔で。
さっきまでうずまきナルトの死体があった場所を射すくめるように睨みつける。
そう、ナルトを殺した時には確かに傍にあったものが無かった。
彼が握っていた剣が無かった。
敵手が切り札とまで称していた剣が、何処にもないのだ。
ナルトを葬ってからその仲間も十秒足らずで殺したため仲間が動かした訳ではない。
闖入者が現れたのなら自分が気づかない筈がない。
では、剣は一体どこに行った?誰が動かした?
エイヴィヒカイトの性質から感じた違和感も考慮に入れて。
その上で、勘に従ってシュライバーは決断を下す。




「この程度で僕から逃げおおせるなんて、百年早いんだよ!」



シュライバーの速度が上がる。
周囲の何もかもを破壊しながら、空間を跳ね回る。
都度、人外の踏み込みによる圧力と、衝撃の余波で周辺の空間が崩壊していく。
可憐な容姿を怒りに歪ませ暴れ狂う姿は、本当に遍く全てを破壊しつくそうとしているかのよう。
事実シュライバーの周囲半径150メートルは、生物の生存を許さぬ死の領域と化していた。


「オイ」


シュライバーの読みは当たっていた。
死んだはずの人間の声が、背後で響く。


「どーだってばよ、俺の切り札ばッ」


得意げな言葉を吐き終わる前に、心臓をぶち抜く。
確かに、殺している。
さっきまでの分身を蹴散らした時の感覚では無く。
敵の本体を葬った、と。
五感全てが、伝えてくる。
だが───彼の殺戮の本能だけが、その判断に異を唱える。


「おいテメー!!人の話はちゃんと聞けべっ」


まただ。今度も確かに殺した。
その筈なのに、魂の簒奪は始まらない。
それなのに、殺害の感触だけはしっかりとある。
実に奇妙な感覚だった。


「───ッ!!」


だが、その違和感の修正を行う事を敵は許さない。
シュライバーの死角である角度から突撃槍の如き鋭さで伸びてくる影。
それを人外の直感だけで躱し、銃弾をばら撒いて撃ち落とす。
違和感が募っていく。
単純な幻覚ではない。その程度の力が黒円卓の大隊長たる彼の瞳を欺けるはずがない。
だが、現状進行している状況として。
果たして今自分が撃ち落としたのは本当に影なのか?
今しがた自分が殺したのは額当てをしたガキなのか?
それすらも疑わしくなってくる。
シュライバーの渇望は絶対回避。どんな攻撃も、彼に触れる事は叶わない。
だが───シュライバー本人が攻撃を攻撃と知覚できなければどうか?



「────へっ、どーだ。驚いたろ」



銃声。
銃声。
銃声。
銃声が響くたびに、敵手は倒れ、死体だけが増えていく。



「これが木の葉流忍者──うずまきナルト様のとっておきだってばよ」



言い終わるのと、胴体に風穴が空いて倒れるのは同時だった。
既に戦場に転がるナルトの死体は十体を超えている。
それだけの戦果を挙げながら、シュライバーの表情から笑みは消えていた。
張り付けたような無表情で、引き金を引き、戦場を駆ける。
依然戦力差は圧倒的、一発たりとて彼の力はその牙城を崩していない。
しかし──彼の圧倒的な速さをもってしても勝負を決めきれない。


「生憎、我慢比べなら自身があんだよ───退くなら今の内だぜ」


最早数えるのも馬鹿らしくなる程の殺害を成し遂げても。
それでもうずまきナルトは、シュライバーの眼前から消えないのだ。


「退く?随分とまあ吠えたね。
潰した端から沸いて出るしか能のない、腐肉生まれの蛆虫の分際でさ」
「へっ!その蛆虫を殺せてねーのがお前だろうが」


本当の事を言えば、出会った時からずっと恐怖を抱いている。
目の前の相手…シュライバーは、カカシたち上忍よりも強いだろう。
火影に届く実力すらあるかもしれない。
けれど、もうナルトもただ怯えるだけでは終わらない。
ここで敵に臆する男が、火影になどなれるはずがない。
恐怖を抑え込み、押し殺して、白騎士に忍者は相対する。



「吠えるのなら───」
「僕の影の端でも触れてから吠えて見ろ、ってか?」


まるで心を読んだかのようだった。
シュライバーが口にしようとした言葉を先んじてナルトは口にする。
直後に、銃口が火を噴き、胸に大穴を開けて倒れ伏す。
つまらなそうにその様を眺めるシュライバーの表情に、やはり笑みは無い。


「本当にうざったいなぁ、もう」


不快感を露わにした表情と所作を浮かべるシュライバー。
それも当然だろう、彼にとってこれは殺戮でも戦争でもないのだから。
つまらない不快な手品を延々と見せられている気分だった。


「「──うんざりして来たからさ、そろそろその薄汚い口を閉じて死ねよ劣等」」


言葉が重なる。
眼前に広がるのは、既知感に溢れる光景だった。
殺したはずのうずまきナルトが、不敵な笑みを浮かべてそこに立っている。
銃声は響かない。
先ほどまでの焼き直しになると、シュライバーも理解したからだ。
代わりに訪れるのは、不気味な沈黙と、そして。


「───くっ」


嘲笑だった。


「っく、ふふふ。はは。ははははははははは────!!」


見る者に凶兆を確信させる様相で、白き餓狼は嗤い狂う。
ビリビリと、大気すら振るわせて、ただ笑い声だけが周辺に波及して。
相対しているナルトの背筋に、必然的に冷たい物が走った。


「……何、笑ってるんだってばよ」


尋ねる声色に先ほどまでの余裕はなく。
再び、抑え込んでいた恐怖が噴出しそうだった。
そんなナルトに、余裕を内包した笑みでシュライバーは応える。


「いや。だって、さ。どれだけ必死に隠れた所で───君たち、まだ近くにいるんだろ?」


ナルトの表情が強張る。
シュライバーの指摘が、正に図星だったからだ。



「どんな姑息なまやかしに命運を託したのかは知らないが──
未だに君が僕に触れられてもいないのに、うろちょろ付きまとっているのがその証明だ」



最初に見せた分身能力の延長なのか、それとも全く別の、幻覚でも見せる力なのか。
それは定かではないが。
何某かの力使ってもなお、ナルト達の攻撃は一発とてシュライバーには届いていない。
彼の理外の速度と、己の渇望より来る獣の危険察知能力で全て躱されてしまうからだ。
つまり、勝ち目の以前絶望的な勝負である事は間違いない。
では何故、何時までも自分を煽って玉砕の様な真似を繰り返すのか。
もし既に逃げおおせているなら、分身や幻覚などをけしかける必要性がない。
ともすればそこから形跡を辿られ、追撃を受ける恐れがあるのだから。
それに彼の感覚すら誤魔化す能力の維持にかかるリソースも、バカにならないだろう。
逃げ切ったのなら解除してしまえば良いのに、それをせずヘイトを集める真似をするのは。
まだ付近にいて、必死に本体から自分の気を逸らそうとしているのではないか。
他にも幾つか可能性は考えられたが、その可能性が最も高いと殺しの本能が告げている。
では、その仮定を踏まえたうえでウォルフガング・シュライバーは如何な選択をすべきか。



「そこで、だ───ここら一帯、君達ごと更地にしてあげる事にした」





それが、シュライバーの答えだった。
小細工ごと、盤面を叩き潰して平らにする。
本体が近くにいると言うのなら、本体に攻撃が当たるまで戦場を蹂躙する。
空気を蹴って空中に飛翔し、活動位階から宇宙速度で暴威を振るう速度が可能にする荒業。
それは至極単純で、だからこそ抗しにくい作戦だった。


「クソッ───!!」


シュライバーの作戦を受けた後、ナルトの表情に焦燥が浮かぶ。
不味い、気づかれた。
ナルトがシュライバーにかけた能力と、シュライバーの立てた対抗策の相性は頗る悪い。
何とか阻止しようとするものの、それよりも遥かに早くシュライバーの姿が消える。



───逃げても構わないよ、僕から逃げられる者なら、ね。



次瞬、訪れたのは破壊だった。
白色の風が、隠れ潜む敗北主義者たちの命運を終わらせにかかる。
ナルト達の死体も、時折襲ってくる影の触手も、全てを轢殺していく。
それこそが、彼の英雄/怪物としての在り方。
全ての参加者を轍に変えるまで───殺人機械が止まることは無い。
ただ、圧倒的な速度(スペック)で相手の策を叩き潰し、蹂躙する。
そこに駆け引きなど必要ない。三匹の蟻を踏み潰すのに策を弄する狼はいない。
彼は、暴風のシュライバーなのだから。




半径二メートル。
それが、ナルト、セリム、エリスの三人に許された唯一の生存可能領域だった。
そこから先は、迂闊に踏み出せば即死すらあり得る死の世界となっている。


「……で、どうするの」


詰問するような声色で、エリスが尋ねる。
議題は勿論、ここからどうやって生き延びるか、だ。
射殺す様な鋭い視線を、この状況に持ち込んだ張本人にぶつける。



「……………………」



対するナルトは、無言だった。
冷や汗をダラダラと流し、頭を抱えて。
一目見て手詰まりであると分かる様相を呈していた。



「…考えて無かったのね」
「だーッ!しょーがねーだろ!見ろアレェ!
滅ッ茶苦茶だぞアイツ!!あんなん予想できる訳ねーってばよォ!!」
「それはまぁ、そうだけど……」


周囲を指さすナルトに従い視線を移して見れば。
エリスをして、目にすれば強くは責められない凄まじい様相を呈していた。
民家の外壁が何処かに吹き飛んでいき、アスファルトがタールに塗れた砂利へと変わり、
街路樹を根こそぎ蹴散らし周囲を更地にするべく、縦横無尽に餓狼が大地を駆ける。
絶えず轟音が鳴り響き、衝撃こそ届かないものの、腹の底に響く振動は、不可視の巨竜が荒れ狂っている様だった。
どんなに低く見積もっても王級、帝級と言われてもカケラほどの違和感もない。
寝物語に聞いた、人界で最強の七人と謳われる七大列強にすら届いているかもしれない。
もしあれがルーデウスと出会ったらと思うと、悪寒が走った。


「くっそー…あのままやり過ごせればよかったんだけどな」



ナルトはその手の刀を見つめながら、悔し気に呟く。
それはナルトの支給品として入っていた刀だ。
刀の銘を鏡花水月。
宿す力は、解号を目撃した者への完全催眠。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、そして霊圧の知覚すら欺く圧倒的な誤認能力。

鏡花水月を支給された事に関するナルトの幸運は幾つかあった。
まず、この殺し合いに当たって斬魄刀が死神以外の参加者にも扱える様に、乃亜の調整を受けていた事。
この調整が無ければそもそもナルトは鏡花水月を扱えなかった。
次に、鏡花水月が始解の状態から強力な効力を発揮する性質の斬魄刀だったことだ。
斬魄刀を扱える様になったと言っても、乃亜より許された範囲は始解まで。
死神の奥義たる卍解にはうずまきナルトでは到達できなかったのは間違いない。
更に言うなら、鏡花水月を扱うナルトの中に、九尾と言う莫大なエネルギーリソースが存在した事だ。
エリスは愚か体内に賢者の石のエネルギーを備えるセリムですら、ナルトが秘めるエネルギー量には遠く及ばない。
死神同士の戦闘でも、能力を莫大な霊圧差で抑え込むという芸当が可能なのを考慮すれば、
もし、ナルト以外が鏡花水月を使っていても、即座にシュライバーに見抜かれていた可能性が非常に高かった。
そして、無形で変幻自在、質量を伴った影を創れるセリムがいた事も追い風として機能していた。
今、シュライバーを現在進行形で欺いているのは、プライドの影だ。
ナルト達の体格の影を形づくり、それを鏡花水月の催眠によって欺いている。
未熟なナルトではAをBに変える催眠効果しか発揮できない。
もし街路樹などを誤認させていれば、あっという間に誤認させられる物体が無くなっていただろう。


「…幻術返しもだけど、エロ仙人に幻術のかけ方とかも習っとくんだったってばよ」


そう、ナルトは確かに鏡花水月の力を引き出す事に成功していたが。
それでも使いこなす水準には遠く及んでいなかった。
もし本来の担い手ならば、完璧に自身の死を偽装していただろう。
未来を見通し、自由自在に未来を見通す帝国の主すら欺いた、本来の担い手ならば。
だが、ナルトには最低限運用するためのエネルギーはあったが、センスが無かった。
結果、シュライバーの天性の殺しに対する才能が、ナルトの発動した偽装能力を上回ってしまった。
結果、やり過ごすことに失敗し、こうして窮地に立たされている。


「無い物ねだりをしていても仕方ありません。
うずまきナルト、その刀の力はあとどれぐらい保ちますか?」


焦燥を隠し切れないナルト達とは対照的な、沈着な声が響く。
鏡花水月を指さしながら、セリムはじっとナルトを見つつ尋ねた。
醸し出す雰囲気は、見た目相応の無邪気で聡明な子供のそれではなく。
つい三十分前までの態度は擬態でしかなかったのだと思い知らされる。
だが、そのただならぬ雰囲気は、今の二人にとって恐ろしさよりも頼もしさが勝った。


「……後、十分くらいだってばよ。それが終わったら十二時間はただの刀だ」


支給品の説明書に書いてあった制限時間は十五分。
それを過ぎれば鏡花水月の完全催眠は解除されてしまう。
そして、再使用には放送二回分の時間を跨ぐ必要がある。
もし今解除されれれば即刻、ナルト達は怪物の餌食だ。


「十分ですか……私のバリアーポイントはそれよりも早く効力を失いますね」


ナルトの言葉を聞いた後、セリムはその手の支給品の説明書に視線を落とした。
鏡花水月の完全睡眠と並び、三人に安全地帯を提供しているのがセリムに支給されたバリヤーポイントと言う道具だった。
その道具は半径二メートルに見えない障壁を展開し、使用者を自動的に防御するという防御においては非常に強力な支給品だった。
シュライバーの暴虐の余波を完全にガードしている事からもそれが伺える。
だが、強力さ故に乃亜はその道具に手を加えていた。
二メートルの安全圏が保証されるのは、発動した地点に限る、という。
つまり、三人はこのバリヤーポイントが展開している二メートルから動けない。
竜巻の中に無策で突き進めば、結果は火を見るよりも明らかだ。


「なによそれ……それってつまり」



エリスの口から、絶望が零れる。
当然だ、この場にいる者全員の残された時間はあと十分足らず。
そう宣告されたに状況は等しい。
今もこうして刻一刻とその時は迫っている。
それを受けてナルトも何か言葉を返そうとしたが、何を言っても気休めしかならない、と。
言葉に詰まってしまう。




「十分ですか……きわどいですが。不可能ではありませんね」


人間二人が絶望の淵に立つ中で。
この場において唯一人間ではない存在──ホムンクルスだけが。
一筋の光明を見ていた。
元より勝機はあった、それを仕込む時間が無かったが。
だが、ナルトの催眠能力により条件はクリアーされた。
制限時間は厳しいが、決行は可能だ。
セリムはそう結論付けた。



「なに…セリム、何か手があるの!?教えなさいよ!」



何か策があるのを感じ取ったエリスは、望みを託すようにセリムに詰め寄る。
彼女の縋るような眼差しを、冷たい視線で返しながら。
それでも彼は首を縦に振った。
そして、時間がないから簡潔に策を伝えます、と二人に告げて。
静かに、しかし確かな感情を感じさせる声で口火を切った。
奴を倒します、と。
反論はない。
エリスもナルトもセリムの立てた作戦に従うしか打つ手はないと理解しているためだ。
だが、直情的な二人では当然「どうやって?」という視線を控える事は出来なかった。
そんな二人に。


「簡単ですよ、あの狂った自称英雄と同じです」



始まりの人造人間は、事も無げに答えた。



「この周辺一帯を、丸ごと吹き飛ばすんです」








話は纏まった。
うずまきナルトとエリス・ボレアス・グレイラットを先行して逃がし。
エリアの端で待機させる。
うずまきナルトの話では時間経過だけでなく、刀の使用者がエリアを超えて移動した場合も効果が解除されてしまうらしい。
故に流れ弾が被弾せず、同時に刀の能力が発揮されるギリギリの位置にいてもらう。
そして殿を務めた私が、ウォルフガング・シュライバーの討滅を決行するタイミングで逃走するように伝えた。
…最もリスクの高い殿を務めたのは、別に彼らへの情が湧いたわけではない。
ただ、この作戦を決行するのは私が一番適任であると、私自身が断じてしまったからだ。
うずまきナルトも、エリス・ボレアス・グレイラットも、肉体的にはただの人間。
つまり、一度死ねばそれまで。
常時ならば死んでもらっても構わないが、今この時だけは困る。
彼等を生贄にして逃げた所で、目前の度し難い殺人狂は追いすがって来るだろう。
そうなれば詰みだ。
つまり、追撃の余裕すら奪う程に手痛い一撃を与える以外に道はない。
それに最も適任なのが、一度死んだ程度では大した痛痒にならない私だ。
何しろ、今実行しようとしている作戦は、決行者の死が前提となるのだから。



「セリム」



うずまきナルトが、申し訳なさそうに私を見てくる。
この作戦の発案者は私で、全ては織り込み済みのため、同情的に見られても困るのだが。


「心配ありませんよ。僕はこんな所で死ぬつもりはありません」


まぁ正確には一度死ぬが。
それでも約束の日が差し迫ったこの時に、滅ぼされるつもりは毛頭なかった。
それに、先に逃がすと言っても相手が相手だ、危険度に関して言えばそう変わりはない。
だから気にする必要はない、そう伝えた。
その言葉を聞いて、うずまきナルトは少しの間俯いてしまう。
人間とは面倒なものだ。コミュニケーションを取っている時間も惜しいのだが。
そう思った二秒後に、彼の顔が上がる。
彼の表情に、既に暗い色は無かった。


「…分かった。火影岩で待ってるから、お前も追いついて来いよ」


そう言って、うずまきナルトはニッと白い歯を見せて笑った。
まるで私を仲間だと思っているかのようだった。
まったく呑気なものだ。


「貴方は」


人ではない私が、マーダーになると思っていないのですか?
平和ボケと形容した方がよさそうな信頼に、思わず口に出てしまった。
そんな事を聞いている暇では、当然ないと言うのに。
我ながら合理性を欠いた行動と言うほかない。
では、何故私は彼に問いかけたのか。
新たな疑問が脳裏で浮かびそうだった所に、先んじてうずまきナルトは返事を返してきた。



「……別に、お前が人じゃなくたって。今俺達と戦おうっていうんじゃないだろ」



これまで頭の軽そうな少年だと思っていたが。
今、語る彼の表情は今迄の物とは違っていた。
その直後に、だけど、と彼は付け加えて。



「勿論、お前がこんなふざけた殺し合いに乗ろうって言うなら遠慮はしねーってばよ。
ボッコボコにして、思いとどまらせてやる」



私への情と、剣呑さが入り混じった答えだった。



「でも、今敵じゃないならそれでいい。少なくとも俺はそう思ってる」



彼の笑顔には、様々な感情が籠められているのが見て取れた。
シュライバーは私だけでなく、うずまきナルトも人外に類する者であると言っていた。
それは数時間前に目撃した彼の内側にある存在を指しているのだろう。
だが、彼自身はあくまで人間だ。
あのおにぎり頭の少年の時もそうだったが。
化け物と言う言葉に抵抗を示したのは、恐らく迫害を受けていたのではないだろうか。
人は弱く愚かだ。
アメストリス建国から各地に血の紋を刻んでいる時に飽きるほど確認できた。
簡単な扇動で昨日まで同胞だった者達と殺しあう。
もし内に潜むものが周囲の人間に周知されていた場合、彼がどんな人生を送って来たかは想像に難くない。
まぁ、興味のない話だが。
彼が私に自分の境遇を重ねているというなら、利用させてもらうだけの話だ。
そう思いながら、私は自分の鞄を彼に放り投げた。


「セリム、お前これ……?」
「預かっていてください。爆発で吹き飛んだら面倒なので」


そう言うと彼は私と鞄を何度か見やって、口の端を引き締め、何度も首を縦に振った。
全くもって、扱いやすい男だ。簡単に私を信じて。


「ナルト、そろそろ行くわよ。時間がないわ」


そう、会話をしている時間はもうない。
エリスと言う少女は、それを理解している様だった。
彼女は、ナルトとは違い、私の事を怪物として精神的に距離を置いている。
此方の方が余程人間らしいと言えば人間らしいかもしれない。
ただ、彼女は最後に私に一瞥すると、短く、ぶっきらぼうに。


「……ありがと」


そう言ったのだった。
私はそれには応えない。ただ一度頷くだけだ。
それで十分だと、判断した。きっと彼女も。
二人はバリヤーポイントの効果範囲の淵に立って、覚悟を固めた顔している。
未だ外では凶獣が荒れ狂っていたが、幸いにして刀の効果は発揮されているらしい。
彼の意識が此方に向く事は現在なさそうだった。
だが、問題はこの後、この後の数分間で、全てが決する。
あの速度だ、その気になれば一時間もかからず島の端から端まで駆けまわれるだろう。
そもそも放送のたびに生存可能な領域は減っていく。
いずれ確実にぶつかる相手。あの自称英雄を討たなければ、未来はない。
しかし、本当に可能なのか────、



「───セリム!お前見た目より根性あるってばよ!
こっから生きて帰ったら、ラーメン奢ってやるぜェ!!」



生まれ落ちてから初めて感じる、自分の命に他者の指が掛かる感覚。
その重圧の中で聞いた彼の声は、轟音と振動の中でもはっきりと聞き取れた。
本当に、呑気なものだと改めて思う。
一時間後の生死すらはっきりとしない、魔人闊歩するこの地で。
生きて帰った後の話ができるなんて。
それも、数百万の人間を父の計画の生贄にしようとしている人造人間(ホムンクルス)を相手に。
だが、まぁ、彼のお陰で────差し迫った状況から感じていた重圧は消えていた。



「……不思議な男ですね、貴方は」



彼は私が元の世界に戻ったら行おうとしている事を聞いて、何を思うだろうか。
失望?落胆?憤怒?
どれでも別段不思議ではないし、どう思われようと別段どうでも良かったけど。
それでも確かめたい、と。私はそう思った。
取るに足らない興味。けれどそんな興味がきっと今の私には必要だった。
だから、此方を覗き込む彼に述べる答えは決まっていた。



「嫌です」



はい、と。そう答えると。
これで終わってしまう気がしたから。






結果だけ述べるならば。
うずまきナルトとエリス・ボレアス・グレイラットの撤退戦は成功を収めた。
如何な狂える白騎士とは言え、五感全てを掌握され。
第六感だけを頼りに、二人の殺害を行うのは失敗した。
セリムも、その時だけは影を“仕込み”からナルト達のサポートに割り振っていた。
エリスはどうでもいいが、ナルトに死なれれば計画全てが水泡だからだ。
セリムの影、そして残りのチャクラ全てを用いた多重影分身と、インクルシオの防御力が彼らの命を救った。
もし何方かが無ければ、シュライバーの起こす破壊の余波を切り抜ける事すら叶わなかっただろう。



───だが、それだけでは足りない。



彼の速度を相手にしては、一時的に逃走に成功しても根本的な解決にはならない。
鏡花水月の完全催眠が、次も通じる相手とは断言もできない。
だから、ここで息の根を止める。
最低でも、追撃を行う余裕は奪う。
その過程で一度自分は死ぬが、一度の死であの怪物を下せるのなら安い買い物だ。
その意志を胸に、セリム・ブラッドレイは狂える英雄と相対する。



(時間は……およそ後二分か)



射程だけで言えばアメストリス全土にも影を伸ばせる傲慢(プライド)の影を総動員し。
周囲に仕込み、張り巡らされた切り札の結界。
この調子でいけばかなり危ういが、鏡花水月の効果が切れる前に仕掛け終わる。
ほんの一分に満たない僅かな時間だが──その数十秒が勝負の分かれ目だ。


(やはり時間は厳しいが、勝機はある)


ウォルフガング・シュライバーの速さの前にはプライドの影も意味がない。
無形にして変幻自在ではあっても、所詮は点と線の攻撃だ。
面の攻撃…逃げる隙間のない飽和攻撃でなければ、あの怪物は倒せない。
だから、逃げ延びる事の出来ない規模の飽和攻撃を加える。
このエリア一帯を吹き飛ばす。
この、影の下に張り巡らせた起爆札で。





────その総数、6000億。
ウォルフガング・シュライバーの内包する魂の総量の約300万倍の物量だった。






暁最後の生き残りが、うちはの始祖を倒そうとした時に用意したものだ。
それを、乃亜は支給品として支給していた。
本来の使用者が使った時の様に時間差起爆はできず、一斉起爆しかできない制限を受けているが…
それでも、今のセリムにとって、死に続ける心配がないそちらの方がありがたかった。
乃亜の支給品の説明が信用できるかどうかは、運を天に任せる他ないが。
ともあれ、起爆札を張り付けた影は今や一つのエリア全体を包む様に伸びている。
ある程度上空にも伸ばし、上方もカバーしておく。


(後数十秒で準備が終わる、そうすれば)


シュライバーは未だあらぬ方向を駆けまわっている。
未だに影の攻撃は掠りもしないが、鏡花水月の影響下にはあるようだ。
いける。このまま起爆に成功すれば───
そう思った、その瞬間の事だった。



────見つけた。



その言葉を聞いた瞬間。
時が止まった。
さっきまで明後日の方向を向いていた筈のシュライバーが。
今この瞬間、正確にセリムの姿を捕えている。
何故?ナルトの話ではまだ鏡花水月の効果時間は残っている筈。
彼が離れた事で、効果が減退したのか?
いや、そんな事は今はどうでもいい。
それよりも、重要なのは────




(間に合え───!)



白狼が獲物の喉笛を食いちぎろうと駆けてくる。
彼我の距離は約百メートル。
防御を捨て、影を全力で繰り出し迎撃する。
無意味でも、奴の時間を少しでも奪い取れれば、それで勝てる!



「あははははははははは────!!!!!」



狂気の爆笑があらゆる均衡を破り。
白き餓狼は、瞬きよりも短い刹那で、百メートルの距離を一瞬でゼロとする。
次瞬、セリムはずぶ、と言う。自分の体内に何かが侵入する感触をまず認識した。
心臓を抉られたのだと、一瞬のうちに悟った。


(───問題ない。再生した後、起爆すれば────!!)


シュライバーの方が認識しているかは定かではないが。
お互いレッドゾーンの交錯だ。
例え一度死んだとしても、人造人間(ホムンクルス)は、死なない。
死に行く時も、再生までに影だけは維持する様に強く強く、魂を保つ。
その時───気づいた。



(────再生が)



そう、再生が始まらないのだ。
この地に来てから一度も死んではいない。
賢者の石の魂のリソースはまだある筈なのに。
そんな、セリムの思考を読んだかのように。
百万分の一秒の世界で、声が届く。



「君のその力、僕らのエイヴィヒカイトと似てるみたいだけど」



───エイヴィヒカイトの特性を知らないのは、不運だったね。
そう。
高等魔術永劫破壊【エイヴィヒカイト】。
その基本特性として。
殺害した人物の魂の簒奪がある。
それはつまり。
セリム・ブラッドレイ。始まりの人造人間(ホムンクルス)プライドにとって。
エイヴィヒカイトの特性は、まさに致命的だった。



「僕には結局───追いつけないんだよ、誰もね」


魂の簒奪が成されていく。
セリムと呼ばれていた少年は今終わる。
それを確信して、シュライバーは嗤った。
だが、まだだ。まだ満足していない。
即刻、逃げた二人にも追撃を───



「───何?」



偶然だった。
彼が手にかけた後の敗者に視線を向ける事など早々ある筈もない。
ただ偶然、何某かの予感がして、一瞥した。
影が霧散し、その下に隠されていた夥しい数の紙切れが露わになっていく。
目撃した瞬間、シュライバーにぞくりとした何かが駆け巡り。
今度は、彼が声を掛けられる側となる。




────やはり、慣れない賭けなどするものではありません。
────だが、貴方も道連れです、ウォルフガング・シュライバー。




セリムの最期の言葉が響くのと同時に。
世界は、轟音と閃光に包まれた。







エリアの端に避難して早々の事だった。
今迄自分達がいたエリアが、大爆発を起こしたのは。
セリムの作戦は決行されたらしい。
ナルトとエリスの二人は、その事実を悟った。
セリムは死なない。正確には一度死んだぐらいでは終わらない。
そう言っていたが。無事に切り抜けられただろうか。


「ダメよ、ナルト」


爆発した場所を睨む少年に、エリスは釘を刺した。
今ここで戦場に戻り、シュライバーが生きていれば。
セリムが殿を務めた意味がなくなってしまう。
幸いにして、シュライバーが追いかけてきていないという事は。
半分は目的を達成したのは確かだ。
だから、今の自分達がやるべきは直ぐにこの場を離れる事。
それ以外に何もないと、彼女は視線だけで語った。



「あぁ……分かってる」



ナルトもそれを理解していたから、特に反論することは無かった、
ただ、拳を握り締めて。
可能性がどれだけ存在するか思考しつつも、もう立ち止まりはしない。
火影岩の前で、セリムが姿を現すことを信じてひた走る。
その背に、二つ分のランドセルの重みを感じながら。



【D-5/1日目/朝】

【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、少しルーデウスに対して不安、沙都子とメリュジーヌに対する好感度(高め)、シュライバーに対する恐怖
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE、悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!(相性高め)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
0:シュライバーから逃げる、その後暫し休息を取りたい。
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:早くルーデウスと再開したいわね!
4:私の家周りは、沙都子達に任せておくわ。
5:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ
6:羽蛾は……自業自得ね、あいつ。
7:ルーデウスが地図を見れなかった可能性も考えて、もう少し散策範囲を広げるわ。
[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)~ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました

※沙都子から、梨花達と遭遇しそうなエリアは散策済みでルーデウスは居なかったと伝えられています。
 例としてはG-2の港やI・R・T周辺など。

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:チャクラ消費(大)、疲労(大)、全身にダメージ(治癒中)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品×3、煙玉×4@NARUTO、ファウードの回復液@金色のガッシュ!!、鏡花水月@BLEACH、ランダム支給品0~2(マニッシュ・ボーイ、セリムの支給品)、
エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×1@スーパーマリオRPG、
マニッシュ・ボーイの首輪
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
1:火影岩でセリムを待つ。
2: 我愛羅を止めに行きたい。
3:殺し合いを止める方法を探す。
4: 逃げて行ったおにぎり頭を探す。
5:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。






「………っ!」



この島に来る以前、最後に疲労、という概念を感じたのは何時だったか。
きっと最後にそれを感じたのはアンナ・シュライバーと名乗っていた頃。
少なくとも、ウォルフガング・シュライバーと名乗り出してから疲労の概念は彼にはなかった。


「全く、忌々しい……」


路地裏で、壁にもたれ掛かり。
シュライバーは実に不服そうに吐き捨てた。
普段の自分であれば、あの程度の四人、瞬く間に殺すことができた。
乃亜が余計な事さえしていなければ。
二人殺したが、残る二人には逃げられてしまった。
最後の爆発から逃れるのに活動位階でかなりの無茶を強いられたのは、
彼にとって、全くもって予想外の事態だった。
氷を操る少年と戦った時もそうだ、シュライバーが全力を出そうとすると、
首輪から体力を吸い取られた様な感覚を毎回覚える。
全く、乃亜は何故自分に気持ちよく戦わせようとしないのか。


「だけど……まぁいい。次だ。まだまだ戦場は残ってる」


どの道この首輪がある限り、根本的に何処にも逃げられはしない。
時間は劣等たちに味方しない。
狭まっていく世界は、常にシュライバーに微笑む。
焦る必要はない。
放送で聞いた脱落のペースなら、一日程でこの殺し合いは終わる。
無論のこと、自分の勝利によって。
その後、乃亜を絶殺し、ツァラトゥストラとの戦争に舞い戻る。
それはシュライバーの中では既に確定事項だった。
今回も、誰も、自分に触れる事は出来なかったのだから。


「───まだまだ足りない。ハイドリヒ卿に捧げる血と魂を、もっと寄越せ」


ただ己の欠落を埋めてくれる男が本懐を遂げられるよう。
不老不死の軍勢との永遠の戦争の日々と言う地獄が顕現するよう。
たかが四人程度では我慢ならない。
そうだ、ボクは────


「誰一人として逃がさない。ボクは、」



男でも、女でもない。
完全無欠の生命体。決して死なない英雄で、化け物なんだよ。
そんな、ともすれば気が触れたとしか思えないアイデンティティに身を委ね。
餓えた白狼は、生ある限り更なる血を求め疾走する。
───逃れられるものなど、誰もいない。




【インセクター羽蛾@遊戯王DM 死亡】
【セリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 死亡】



【E-4/1日目/朝】

【ウォルフガング・シュライバー@Dies Irae】
[状態]:疲労(大)ダメージ(中 魂を消費して回復中)、形成使用不可(日中まで)、創造使用不可(真夜中まで)、欲求不満(大)
[装備]:ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae、修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:皆殺し。
1:敵討ちをしたいのでルサルカ(アンナ)を殺す。
2:いずれ、悟飯と決着を着ける。その前に大勢を殺す。
3:ブラックを探し回る。途中で見付けた参加者も皆殺し。
[備考]
※マリィルートで、ルサルカを殺害して以降からの参戦です。
※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
※形成は一度の使用で12時間使用不可、創造は24時間使用不可
※グランシャリオの鎧越しであれば、相手に触れられたとは認識しません。



※バリヤーポイント@ドラえもんは爆発に巻き込まれ破壊されました。
※D-4は爆発によって更地と化しました





【鏡花水月@BLEACH】
うずまきナルトに使用。藍染惣右介の斬魄刀。
その能力は解号を目撃した対象への完全催眠。
相手の五感・霊圧知覚を支配し、対象を誤認させることができる。
蠅を竜に見せたり、沼地を花畑に見せたりと、対象に全く違うものを認識させられる能力。
非常に強力だが、解放前に刀身に触れて居たり、そもそも盲目の相手には通用しないという弱点がある。
本ロワでは更に乃亜によって調整が加えられており、以下の制限が加えられている。
  • 完全催眠が効果を発揮するのは10~15分以内。
  • 同エリア内にいる対象に対してのみ。
  • また、霊圧に差がありすぎる相手に対しては効果が薄れる。
この事から一般人が使用しても、効果は薄い。
  • 一回の解放後から12時間経過しなければ、再発動はできない。

【6000億枚の起爆札@-NARUTO-】
元々はマニッシュ・ボーイに支給される。
暁、最後の一人である小南がうちはマダラ(推定)を打倒する為に使用した起爆札。
その尋常ではない量以外は普通の起爆札と相違ない。
一枚使用した所で勝手に周囲に散らばって展開されるが、
一枚起爆すると他の起爆札も全て連鎖して起爆する様に調整が加えられている。
故に周囲に張り切れていない起爆札があってもそれを単体で再使用することはできない。
完全に一発切りの大花火である。
また原作では十分間の連続起爆と言う形で使用されていたが、本ロワでは時間差なしの一斉起爆する様に制限が掛かっている。

【バリヤーポイント@ドラえもん】
セリム・ブラッドレイに支給。
22世紀の警察官などが使用するひみつ道具で、紫の球体の形をしている。
これを使用している限り、不可視の障壁が半径二メートル以内に展開される。
ただし、乃亜によって以下の調整を受けている。
  • 一回の使用できる時間は十分以内。
  • 障壁は発動した場所で固定されるため、使用中は使用者は身動きが取れない。




071:明け方の子供達 投下順に読む 073:ボーダーライン
時系列順に読む
030:関係なかった!! うずまきナルト 099:DRAGON FLY
セリム・ブラッドレイ GAME OVER
065:館越え エリス・ボレアス・グレイラット 103:割り切れないのなら、括弧で括って俺を足せ
インセクター羽蛾 GAME OVER
068:愛さえ知らずに ウォルフガング・シュライバー 074:ここに神は見当たらない

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