グラム陽性球菌で重要な菌:ブドウ球菌(スタフィロコッカス属 Staphylococcus)&レンサ球菌(ストレプトコッカス属 Streptococcus&エンテロコッカス属 Entetococcus)
スタフィロコッカス属 Staphylococcus
通性嫌気性で高濃度の食塩(7.5~15%、海水は3%)、又は胆汁(40%)存在下で増殖できる。温血動物の皮膚や粘膜面に高頻度に見出される。
コアグラーゼを産生する黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ非産生ブドウ球菌に分けられる。{黄色ブドウ球菌以外にもコアグラーゼを産生するブドウ球菌(S.intermediusなど)がいるが、ほとんどヒトから分離されない。}
①黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus
0.5~1.0μmの球菌で鞭毛、芽胞を認めない。ふつう寒天培地によく発育し、黄色コロニーを形成する。マンニット分解性を有し、酸を生産する。15%食塩含有培地でよく増殖する。(スタフィロコッカス110番培地やマンニット食塩寒天培地はこの食塩耐性を利用したもの)。ブドウ球菌感染症は組織破壊性が強く化膿性病変を主とする。病原性に関係する多くの酵素や毒素を産生する。
1)コアグラーゼ:血漿凝固物質であり、菌と血漿が混合するとフィブリンができ、血漿が凝固する。8種類ある。
2)エンテロトキシン:腸管毒、ブドウ球菌食中毒の原因。10~46℃の温度域で産生され、100℃、30分の加熱に耐える。(菌は死ぬが毒素は残る)。接種後1~6時間、平均3時間くらいで症状が現れるのが特徴で他の食中毒に比べ臨床症状の発現がきわめて早い。主症状は嘔吐で、嘔気、腹痛、下痢が見られる。発熱はあっても微熱程度。
3)毒素性ショック毒素:毒性が強い
4)表皮剝脱毒素:ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染は特に重要である。
②表皮ブドウ球菌 Staphylococcus epidermidis
コアグラーゼ非産生、マンニット非分解性など黄色ブドウ球菌と区別される。全員が持っていて特に問題はないが、易感染性宿主には深在性感染が見られる。
③その他のコアグラーゼ非産生ブドウ球菌 coagulase-negative staphylococci CNS
グラム陽性、通性嫌気性、2μmあるいはそれ以下の小球菌か双球菌あるいはレンサ(連鎖)状配列を示す球菌。ストレプトコッカス属の菌を一般にレンサ球菌と呼んでいる。(肺炎レンサ球菌のみが双球菌状配列である。)血液寒天平板上での溶血性から
a)α溶血性レンサ球菌:ヘモグロビンがメトヘモグロビンに還元されるときにコロニー周辺が緑色に変化する。
b)ベータ溶血性レンサ球菌:血液寒天平板上コロニー周囲に透明な溶血帯が形成される。
c)非溶血性(γ溶血性)
α、β、γの分類は病原性の強さがすぐにわかる。(α、βはすぐに対応する。)
①化膿性レンサ球菌 Streptococcus pyogenes
A群レンサ球菌ともいう。β溶血性である。猩紅熱皮疹の患者に発赤を起こす外毒素として報告された。主な感染症として猩紅熱、丹毒、リウマチ熱、急性糸球体腎炎などがある。また毒素ショック様症状(急速な軟部組織の壊死、ショック、多臓器不全)いわゆる劇症A群レンサ球菌感染症も起こす。
②肺炎レンサ球菌 Streptococcus pneumoniae
α溶血性、双球菌で莢膜を有する。微量のDNAにより形質転換をすることがあることがエイブリT.Averyらによって明らかにされた。中耳炎、髄膜炎を起こす。
E.faecalisとE.faeciumがヒトからよく分離される(腸にいないと困るが、腸以外では病気の原因となりうる菌)。抗菌剤に対する感受性が比較的低い。英国でバンコマイシン耐性腸球菌による院内感染が報告された。
最終更新:2009年06月29日 15:40