グラム陽性桿菌

  • グラム陽性桿菌の概要
グラム陽性桿菌は好気性・通性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌、偏性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌、芽胞非形成グラム陽性桿菌、嫌気性芽胞非形成グラム陽性桿菌、抗酸菌、不定型グラム陽性桿菌に分けられる。芽胞を形成するのはバシラス属とクロストリジウム属である。

好気性・通性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌 

バシラス属
  • バシラス属の概要
芽胞を形成する好気性又は通性嫌気性桿菌で、ほとんどの筋腫はカタラーゼを産生する。自然界に広く分布する。37℃出ぐらいですぐに培養できる。

①炭疽菌 Bacillus anthracis
人畜共通伝染病である。ペニシリン感受性がある。

②セレウス菌 Bacillus cereus
土壌、水中など自然界に広く分布。ペニシリン耐性がある。セレウス菌食中毒の原因菌となることがある。

③枯草菌 Bacillus subtilis
非病原菌であり、納豆の製造などにも使われる菌株もある。プロテアーゼ活性が強い。芽胞形成のモデルとしてよく研究されている。形質転換能を持つため、大腸菌に次いで組み換えDNAの宿主としても利用される。

④BT菌 BAcillus thuringirnsis
昆虫の病原体として知られる(ヒトの病原菌ではない)。カイコやチョウなどの昆虫がこの結晶を食べると、中毒を起こす。本菌の毒素遺伝子を用いた昆虫耐性遺伝子組み換え作物なども作られている。

偏性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌

クロストリジウム属 Clostridium
  • クロストリジウム属の概要
グラム陽性、偏性嫌気性、芽胞形成桿菌である。

①破傷風菌 Clostridium tetani
土壌中に広く分布。ヒトとウマに病原性を示す。破傷風は5類感染症になっている。培養には高い嫌気度を必要とし、酪酸やプロピオン酸などの脂肪酸を産生する(嫌気性菌の特徴)。
強直性痙攣(テタニ)を起こす。極めて強力な神経毒作用を有する破傷風毒素を菌体外に産出する。破傷風トキソイドによる予防と破傷風抗毒素血清による治療が極めて有効である。

ボツリヌス菌 Clostridium botulinum
莢膜は作らない。強力な神経毒素(ボツリヌス毒素)を産出する。この毒素は腸管から入り、神経接合部に働きアセチルコリンの放出を妨害する。症状は目がちらちらしてピントが合わない。うまく飲み込めない。しゃがり声など。毒素は80℃、30分、あるいは100℃、1分の過熱で失活する(ボツリヌス菌の芽胞は121℃、10分間の熱処理にも耐える。ブドウ球菌と逆パターン)
日本では「いずし」によるE型食中毒が多かったが、最近は野菜・果物などを原因とするA型菌、ハム・ソーセージなどを原因とするB型菌による食中毒も見られるようになった。乳児ボツリヌス中毒症も起こす(はちみつが原因)

③ウェルシュ菌 Clostridium perfringens
ヒト及び動物の腸管内常在菌叢を形成。下痢を起こす。しかしこの食中毒は毒素接種によるものではなく、接種した菌が腸管内で増殖し、芽砲を形成するときに産生する毒素により発症する。

(④ガス壊疽菌群 gas-gangrene bacilli)
毒素は作らない

⑤Clostridium difficile
ヒトの腸管内に生育し、化学療法剤(広域スペクトルのβ-ラクタム剤やクリンダマイシン)の長期投与により腸内細菌叢が乱れる。その結果、本菌が増殖し、菌交代現象が起こり、下痢を主体とする偽膜性大腸炎(腸の中に膜を張る)を起こす。バンコマイシンの内服が有効である。

芽胞非形成グラム陽性桿菌


ラクトバシラス属
  • ラクトバシラス属の概要
健常成人の女性では、膣に常在する乳酸桿菌により、膣内を賛成環境にし、ほかの微生物の増殖を防止する役割をしている。

①Lactobacillus delbrueckii
低レベルにpH(3.8~4.4)を保つことによって膣内の清浄化に役立っている。サワークラウト、ピックルス、バターミルク、ヨーグルトなどの製造に用いる。

リステリア属

①リステリア菌 Listeria monocytogenes
日和見感染であるリステリア症の病原体である。また人畜共通伝染病で家畜・家禽やイヌなどのペットとの接触からの感染もある。妊婦が感染すると垂直感染により流産の原因となる。ヒト成人では髄膜炎が最も多い(日本ではほとんどない)。リステリア菌は食細胞内での増殖可能であり、5℃の低温でも増殖できる特徴をもつ。欧米では、乳製品から分離され、感染の原因となっている。

エリジペロスリックス属

①ブタ丹毒菌 Erysipelothrix rhusiopathiae
ヒトにも感染し、手指などの皮膚に有痛性紅斑が現れ周囲に拡大する。

嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌

プロピオニバクテリウム属 Propionibacterium

①Propionibacterium acnes
にきびの原因菌とされている。

ユークバクテリウム属 Eubacterium

抗酸菌

  • 抗酸菌の概要
通常のグラム染色などでは、染色しにくく、石炭酸フクシンなどで加温染色することにより、染色できる。しかし、いったん染色されると容易に酸、又はアルコールなどで脱色しにくくなる。これを抗酸性という(「酸に強い」というわけではない)

マイクロバクテリウム属 (抗酸菌属) Mycobactterium

①結核菌 Mycobacterium tuberculosis
感染しても普通はそのまま治癒するが、気管支を経て肺の各所に感染が広がると、いわゆる「肺結核症」になる。
一般に集合性が強い。鞭毛、芽胞、莢膜はない。普通寒天培地やブイヨンには発育しない。固形培地としては小川培地がよく利用される。コロニーは淡いクリーム色。
結核菌は、芽胞非形成菌としては熱、乾燥、さらに酸、アルカリ、消毒剤などの化学薬品に対する抵抗性が強い。しかし日光に対しては感受性が高い。また細胞内増殖性である。結核菌の道程には、発育が遅いため、少なくとも4週間以上を要する。
[ツベルクリン反応]
結核菌による感染の有無の判断に用いる。結核菌をグリセリンブイヨンで6~8週刊培養し、培養液を100℃、1時間加熱し、10倍に濃縮後、そのろ液に0.5%石炭酸を加える。
ツベルクリン反応では、その2,000倍希釈液を0.1ml皮内接種し、48時間後の皮膚の発赤を検査する。
発赤の直径が10mm以上→陽性
発赤の直径が9mm以下→陰性
[BCG]病原性の弱いウシ型結核菌を牛胆汁加ジャガイモ培地に長期間継与培養することによって病原性を失わせた弱毒化結核菌産生菌である。ツベルクリン反応陰性者に対して結核予防のワクチン(予防接種液)として用いる。

②ウシ型結核菌 Mycobacterium bovis
ヒトにも感染することがある。

③非結核性抗酸菌 nontuberculous mycobacteria
旧名は非定形抗酸菌である。結核菌・癩菌はナイアシン・テスト陽性。ウシ型結核菌及びその他のマイコバクテリウム属はすべてナイアシン・テスト陰性。結核菌群以外の抗酸菌では、ヒトからヒトへの感染は知られていない。これらの菌の感染源は土壌や水などで、環境由来抗酸菌と呼ばれる。

④癩菌 Mycobacterium leprae
皮膚と神経が冒される慢性肉芽腫性炎症性疾患であるライleprosy、別名ハンセン病の病原体である。未だ人工培地での培養に成功していない。日本ではライ予防法に基づき患者を隔離していたが、1995年に差別的な本法律が撤廃された。

不定型グラム陰性桿菌

コリネバクテリウム属 Corynebacterium
  • コリネバクテリウム属の概要
通性嫌気性であるが、一部好気性も含まれる。グラム陽性桿菌であるが、その配列は松葉状、柵状形態をとる。しかし培養条件で変わる多形態性が特徴である。

①ジフテリア菌 Corynebacterium diphteriae
ジフテリアの病原体である。普通寒天培地では発育せず、発育には血清を加えたレフレルの培地が用いられる。分離培地としては血液寒天培地に亜テルル酸を加えた荒川培地芽用いられる。
本菌は咽頭や鼻の粘膜に付着、感染し、そこで増殖して、偽膜(白い膜。ジフテリアといえばこれ)をつくり、菌体外毒素を産出してジフテリア炎を起こす。菌そのものは血流中に侵入することはないが、毒素は血中に入り、軟口蓋、眼毛様筋、四肢などの麻痺、あるいは心障害を起こし死に至ることもある。
小児は感受性であるが、哺乳中の乳幼児はジフテリアに対する抗毒素(母乳中にある)をもっていて罹患しにくい

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最終更新:2009年06月29日 18:11
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