腎臓・腎盂・尿管・膀胱・尿道に起こる感染症。
非特異性{起炎菌:単純性では、大腸菌が約80%(P線毛のアドヘジン)}or特異性(特定の病原微生物)、急性or慢性がある。
上部では腎盂腎炎が、下部では膀胱炎が代表的である。
女性(尿路が短い)、老年男性(前立腺肥大)、小児(尿路器系、膀胱尿管逆流症)に多い
感染経路は逆行性(上行性)感染(尿の出口から侵入)
注)血行性、リンパ行性、直接は間違いである。
神経因性膀胱(精神的なものではない)
カテーテル留置(バイオフィルム:菌が出すフィルムが抗菌剤を菌に届きにくくしている)
腎実質および腎盂・腎杯の細菌感染症
病因:大腸菌や他のグラム陰性桿菌(注:陽性球菌はまれである)上行性感染。
症状:発熱、悪寒戦慄{高熱(寒気&ふるえ)}吐き気、腰背部痛
検査所見:背部叩打痛(costovertebral angle)、膿尿(尿が白くなる→白血球増多のため)
治療:起炎菌として大腸菌を想定(経験的治療)←同定に時間がかかるため
軽症の場合:ニューキノロン系薬や新経口セフェム系薬の経口投与(1~2週間)、外来可能
高熱持続の場合:入院。第二世代セフェム系薬、βーラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬などの点滴静注。解熱後、経口投与薬に変更。抗菌薬は2週間使用
院内発症の場合:第三、四世代セフェム系など
あまり自覚症状はなく、不定愁訴(なんとなく~)がある。原因菌が幅広い(大腸菌とは限らない)。耐性菌や複数の菌がいるかもしれない。
治療:第三世代セフェム系薬、カルバペネム系薬の点滴静注。βーラクタム系薬とアミノグリコシド系薬の併用。
注)腎障害を有する場合は、腎毒性の少ないもの、使用量の調整を。
膀胱の炎症。20~40代の女性に多い
病因:上行性感染。大腸菌。小児ではアデノウイルス(大腸菌より弱い)が多い。
症状:頻尿・排尿痛・尿混濁→三大症状
通常は発熱を伴わず、あっても微熱
検査所見:尿混濁、肉眼的血尿
治療:水補給、再燃予防に性行為後の排尿。
抗菌薬(尿培養、経験的治療)。経験的療法として新経口セフェム系薬を1週間。再来時、尿培養の結果から薬剤感受性を勘案。(ダメだったら薬を変える)症状は2日間の経口投与で消失。
再燃予防のため1週間の投与が必要(これ以上は耐性菌を作り出してしまうので×)。
ニューキノロン系は3日間の投与で充分。しかし、頻繁使用により耐性菌が増加したため、第一選択としての使用が減少。
①尿路結核
原発巣は肺で血行性感染、無菌性膿尿{白いが、コロニーで菌が出ない(一般的に使うコロニーでは増えない)}、漆喰腎、
治療:抗結核療法(リファンピシン、イソニアジド)
②性感染症
淋病、梅毒、軟性下疳、鼠径リンパ肉腫、クラミジア、後天性免疫不全症候群など
③無症候性細菌尿
膀胱留置カテーテルを挿入している患者などで、膿尿や細菌尿が認められても、臨床症状のない場合のこと。多くの場合抗菌薬投与などの治療を必要としない。
尿中に排泄された成分が腎・尿路で凝固物を形成
成分:シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウム結石(カルシウム結石;80%)、リン酸マグネシウム・アンモニウム結石(MAP結石)、尿酸結石、シスチン結石(六角板状結晶)
男女比は3:1で、20~50代に多い(20人に一人)
原因疾患:
①代謝異常(甲状腺機能亢進症、Cushing症候群)
②薬剤{アセタゾラミド(アルカリ性にして結石を作りやすくしてしまう)、副腎皮質ステロイド(血中のカルシウム濃度↑)}
③尿路感染症(尿素分解菌で尿がアルカリ化)
④尿細管の異常(尿細管性アシドーシス)
⑤高尿酸血症
⑥尿路通過障害(前立腺肥大症、尿路搾取)
補足)尿のpHが酸性なら尿酸結石、シスチン結石。アルカリ性ならリン酸カルシウム結石、MAP結石ができる。
症状:鈍痛、疝痛(colic pain;結石が腎盂や尿管に嵌頓)、血尿、悪心・嘔吐、排尿障害
診断:X線:カルシウム結石は陰影を証明できる。(ただし尿酸、シスチン結石は放射線透過性あり)、腹部CT、エコー、血中&尿中のカルシウム・尿酸・シスチンの測定
治療
①保存的療法:直径5mm以下は自然排石。飲水と運動。体外衝撃波結石砕石術
②薬物治療
疝痛:インドメタシン直腸内挿入(30分~5時間有効)
ペンタゾシン筋注(NSAIDsで不十分の場合)
エトドラク経口服用(長期服用で胃痛の原因)
排石促進:サイアザイド系利尿薬、ウラジロガシエキス(尿量増加、X溶石)など。鎮痙薬(尿管を弛緩)
再発予防(尿路結石は再発することが多い):
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム→尿pHをアルカリ化(6.7~7.0)し、尿酸やシスチン結晶生産を阻害
アロプリノール→尿酸産生阻害薬。血中尿酸を減少させ、尿中への尿酸排泄も抑制し、尿酸結晶生産阻害する。
注)ベンズブロマロンは結石形成を亢進するので用いない。
前立腺の内腺(移行域)が増殖(結節肥大)し、衝動が圧迫され排尿が障害された状態。
病因:5αージヒドロテストステロンの過形成、平滑筋のα1受容体を介した機能的な閉塞。
症状:刺激症状、閉塞症状
診断:IPSS、直腸診、経直腸的エコー、排尿流量測定
治療:排尿障害の改善、QOL、カテーテル導尿(留置)
薬物療法:(α1遮断薬、抗アンドロゲン、5αリダクターゼ阻害薬←日本では使われていない)
第1選択薬(α1選択薬)
シロドジン(ユリーフ)、ナフトピジル(フリバス)、タムスロシン塩酸塩(ハルナール)
高血圧傾向のある場合→テラゾジン塩酸塩水和物(バソメット)、ブラゾシン塩酸塩(ミニプレス)
排尿障害の改善を期待→α1遮断薬+抗アンドロゲン薬(クロルマジノン酢酸エステルなど)
注)抗アンドロゲン薬は副作用{肝障害、性機能障害、PSA低下(前立腺癌の合併をマスク)}
残尿の多い場合(閉塞状態がほとんどなく低活動膀胱の場合)→α1遮断薬+コリン作動薬(ジスチグミン臭化物など)
軽度から中程度の畜尿障害を伴う場合→α1遮断薬+植物製剤(エビプロスタットなど)
中程度から重度の畜尿障害を伴う場合→α1遮断薬+抗コリン薬(オキシブチニン塩酸塩など)
注)抗コリン薬は重度の排尿障害(尿閉)には禁忌
手術療法:経尿道的前立腺切除術
第Ⅰ期(刺激期)
軽度の排尿困難と夜間頻尿(2回以上)、排尿時不快感などの刺激症状。
第Ⅱ期(残尿発生期)
排尿困難は増強。残尿出現し、尿意切迫感、切迫性尿失禁などの刺激症状を認める。
第Ⅲ期(完全尿閉期)
残尿が増加し、膀胱が高度に拡張。奇異性尿失禁(尿漏れ)をきたす。
前立腺の外腺より発生する上皮性悪性腫瘍。腺癌。欧米で発症率が高く、我国でも増加傾向。アンドロゲンで発育促進。エストロゲンで抑制。進行が遅く、癌で亡くなるよりも前に老衰などで無くなりそうな場合は何もしない。75歳未満には手術を適用
症状:排尿障害(前立腺肥大と同じ)
診断:直腸指診(不整で石様硬)
腫瘍マーカー
前立腺酸フォスファターゼ:PAP
前立腺特異抗原:PSA(スクリーニングに有効。初期のころほど上がる)
↓
4.0ng/ml未満:正常
10.0ng/ml以上:確率50%
4.0~10.0ng/ml gray zone :確率10%
治療:病期と期待余命によって選択
①手術療法(前立腺全摘):期待余命10年以上で適用
②外照射療法
③組織内照射法(小線源療法):小さな放射線源を前立腺の中に50-100個挿入し、内側から癌細胞を死滅。チタン製カプセル中に125I(あまり放射線が飛ばない→前立腺ぐらいにしか届かない)が密封されたシード線源。
手術が簡単で尿漏れがしにくい。
④内分泌療法:(薬物的去勢)→乳がんの治療にも用いる。最初はテストステロン↑より癌が悪化。しかし後に抵抗性が出てくるので良い。
1)LH-RH作動薬:リュープロレリン酢酸塩またはゴセレリン酢酸塩を4周ごとに皮下注(PAB)。ほてり、発汗などの副作用。
2)抗アンドロゲン:フルタミド、クロルマジノン酢酸エステルなどを経口。LH-RH作動薬との併用。(TAB、CAB)
3)エストロゲン:副作用として心血管障害、血液凝固
⑤化学療法:単独での有効性は証明されていない(これは無効だと思ってよい)
膀胱・尿道の機能障害。畜尿(女性が多い)あるいは排尿(男性が多い)機能障害。60才以上の約80%
畜尿期
①ある程度の尿がたまると尿意を生じる
②尿意を生じてからもある程度我慢できる
③十分な尿を膀胱にためることができる
④尿失禁がない
排尿期
①排尿を意図すればいつでも排尿できる
②排尿に特別な努力を要しない
③排尿中に尿線を中断できる
④残尿がない
1回の排尿量:薬200~400ml、1日尿量:1000~1500ml、昼間頻尿:8回以上、夜間頻尿:夜間に排尿のために2回以上起きなければならないという愁訴
膀胱排尿筋{交感神経β3=弛緩=排尿、副交感神経M3=収縮=畜尿})
内尿道括約筋(交感神経α1=収縮)
前立腺(交感神経α1A)収縮
外尿道括約筋・骨盤底筋(体性神経N=収縮)
腹圧性:急に腹圧が上昇した場合に尿漏れ、咳、くしゃみ、階段の昇降など、加齢や出産で骨盤底筋群の脆弱化
切迫性:急に尿意を催し、間に合わず尿漏れ(冷水に触れるなど)。脳血管疾患、パーキンソン病、神経性膀胱、前立腺癌や肥大症による膀胱刺激の亢進。
溢流性:尿閉のため、膀胱容量の限界を超え尿漏れ。高度の前立腺肥大症や子宮筋腫などで膀胱頚部圧迫。
機能性:地方や運動障害のため、我慢できず尿漏れ。
反射性:尿意がないのに排尿筋が不随意収縮し尿漏れ。脊髄損傷、脊髄腫瘍。
真性:膀胱に尿を保持できず、常に尿漏れ(手術などで膀胱を傷つける等が原因)
夜尿症:排尿中枢の発育不全、心身症
尿意切迫感を必須とし、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う症状症候群。切迫性尿失禁は伴わなくとも構わない。
排尿筋過活動(DO)は尿流動態検査(膀胱内圧測定検査)で、畜尿時に不随意膀胱収縮を認める膀胱の畜尿機能障害。
OABの診断、初期治療に尿流動態検査は必須ではない。
40歳以上の12.4%(約810万人)
成因:神経因性と非神経性(90%)、下部尿路閉塞、加齢による尿路上皮・平滑筋・支配神経などの変化。
診断:問診(自己記入式問診票←恥ずかしいので…)
治療
行動療法:排尿日記(排尿を意識させるため)、水分摂取量の調節、膀胱訓練(尿を我慢すること)
薬物療法:抗コリン:膀胱にはムスカリンM2受容体も多く存在しているが、膀胱平滑筋の収縮にはM3受容体が重要なので、M3受容体選択性の高いもの。
オキシブチニン塩酸塩(ポラキス)、プロピベリン塩酸塩(バップフォー)、コハク酸ソリフェナシン(ベシケア)、酒石酸トルテロジン(デトルシトール)、インダフェナシン(ウリトス、ステーブラ) ()=商品名
禁忌:閉塞隅角緑内障、重症筋無力症、尿閉など
成因:尿道過可動(分娩、加齢に伴い骨盤底が脆弱化し、尿道が膣側へ下垂すること)、尿道括約筋の不全
検査・診断:問診(自己記入式問診票)
60分間パットテスト(水500ml付加し、外陰部に装着したパットの重量変化を測定。2g異常を尿失禁陽性)。通常はこれだけで診断される。手術をしたいときは
膀胱内圧測定と膀胱造影をする。
治療:
薬物療法:β2受容体作動薬{クレンブテロール塩酸塩(スピロペント)}
手術療法:TVT(tension-free vaginal tape)法
男女比は約3:1、50才代以降に多い
原因:芳香族アミンの職業的暴露、喫煙
症状:無症候性肉眼的血尿(ほとんどの人がこれで気づく)
検査・診断:尿細胞診
治療
表在性の場合:経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)。←癌の部分のみ切る。再発予防に抗癌剤やBCGワクチンの膀胱内注入療法。
浸潤性の場合:膀胱全摘出術と尿路変更、再建。
温存療法:TUR-Bt+シスプラチン単独・多剤+放射線)
転移がある場合は、シスプラチンを中心に多剤療法。
乳腺組織から発生する上皮性悪性腫瘍。未出産、遅い初産などが高リスク群。約19人に1人の確立
。
分類方法
①病理組織的分類
非浸潤癌(10%)
浸潤癌
↳浸潤性乳管癌(80%、一番多い)
↳特殊型(小様癌など)(10%)
パジェット病(乳首の癌)(0.5%)
②臨床病期分類:TNM分類(T:直径、N:リンパに転移しているか、M:遠くに転移しているか)
③遺伝子プロファイル分類(エストロゲン受容体、HER2)
症状:乳腺の腫瘤(しこり);好発部位は外上部。
診断:視触診、マンモグラフィー{乳房を上下、左右から挟み、X線で撮影する検査乳がんのスクリーニング検査(40才以上)}
癌のの性質・広がり、転移による分類→細胞診、組織診、MRI、CT、センチネルリンパ節生検(リンパ節を通じて転移するため)
腫瘍マーカー(CEA、CA15-3)
治療:癌の除去、QOLの維持
最終更新:2009年06月30日 18:06