模索路晶にとって、世界とは価値のないモノクロ模様にしか過ぎない代物でしかなかった。
誰かを救うという事に意味はなく、薄汚く自己にしか興味のない雑多な民衆に埋め尽くされた世界。
地球人口、約79億人。すべてを救うなど不可能のひと言だ。
取り零れそうな命を拾い上げ、救うのが医師と呼ばれる者たちの役目だとして、掬い上げた命以外誰も救われないとして。その行為に何の意味があるのだろう。
誰かを救うという事に意味はなく、薄汚く自己にしか興味のない雑多な民衆に埋め尽くされた世界。
地球人口、約79億人。すべてを救うなど不可能のひと言だ。
取り零れそうな命を拾い上げ、救うのが医師と呼ばれる者たちの役目だとして、掬い上げた命以外誰も救われないとして。その行為に何の意味があるのだろう。
模索路晶には、人を救うという行為への無意味さだを何時か何処かで実感した。
誰かのために医師として名を馳せた父親。そんな憧れの対象は誰そ彼とも知らぬ他人の謀略に巻き込まれて命を落とした。「無償で誰かを救う」という行いの無意味さを、少女の脳裏に焼き付けて。
模索路晶は天才であった。それは医療の勉学のため海外へ旅行する程度には。
だが、才能というのは祝福である反面呪いでもある。世界に蔓延る、薄っぺらい善意という名の汚さと、澱みどす黒く広がる悪意を、否応なく理解できてしまったのだから。
理解してしまった以上はそれっきりだ。才能を持つのは決して幸福なのではない。
妬み、羨望、憎しみ、嫌悪。才能ある者へ才能なき者が向ける目が善いものばかりではない。例え善意があろうと、そんなものは砂漠に転がる一欠片の宝石以上に極微な矮小さだ。
だからこそ、そんな小さすぎる価値に目を留まらせる程の意味もないと諦観するしかなかった。
誰かのために医師として名を馳せた父親。そんな憧れの対象は誰そ彼とも知らぬ他人の謀略に巻き込まれて命を落とした。「無償で誰かを救う」という行いの無意味さを、少女の脳裏に焼き付けて。
模索路晶は天才であった。それは医療の勉学のため海外へ旅行する程度には。
だが、才能というのは祝福である反面呪いでもある。世界に蔓延る、薄っぺらい善意という名の汚さと、澱みどす黒く広がる悪意を、否応なく理解できてしまったのだから。
理解してしまった以上はそれっきりだ。才能を持つのは決して幸福なのではない。
妬み、羨望、憎しみ、嫌悪。才能ある者へ才能なき者が向ける目が善いものばかりではない。例え善意があろうと、そんなものは砂漠に転がる一欠片の宝石以上に極微な矮小さだ。
だからこそ、そんな小さすぎる価値に目を留まらせる程の意味もないと諦観するしかなかった。
だが、彼女はある日、運命と出会った。
母親に呼ばれた父親の法事の為に帰国せざる得なかった道中に出会った少年。
困っている人を見かければ形振り構わず助けの手を差し伸べる。
世界全ての誰かは無理だとしても、目の前にいる困っている誰かを、それが本能と言わんばかりに手を差し伸べる。それが少年にとっての、全くもって当たり前の行為。
純真無垢な雛鳥のような、それでいてどれだけ雨に打たれようと飛び続ける白鳩のような。そんな優しさを忘れずに抱き続ける、ごくごくありふれた善良な少年だったのだ。
模索路晶は、父の死というフィルターによって、世界も人間もまともに直視できていなかった。目を背けていた。恐ろしくて、斜に構えていた。
それを溶かしたのは、純粋な少年の行動だ。同業の天才しか仲間と言える者たちが居なかった彼女にとって出来た、彼女に久しぶりの、心からの『笑顔』を取り戻させてくれた『人間』。新しい理解者にして、彼女にとっての騎士だった。
彼が居たからこそ、彼の善良さを目の当たりにしたからこそ、彼女は世界を、人間を捨てたもんじゃないと再定義出来た。
だからこそ、彼女は再び世界を、できる限りの誰かを救う事を、再び夢見ることが出来たのだ。
母親に呼ばれた父親の法事の為に帰国せざる得なかった道中に出会った少年。
困っている人を見かければ形振り構わず助けの手を差し伸べる。
世界全ての誰かは無理だとしても、目の前にいる困っている誰かを、それが本能と言わんばかりに手を差し伸べる。それが少年にとっての、全くもって当たり前の行為。
純真無垢な雛鳥のような、それでいてどれだけ雨に打たれようと飛び続ける白鳩のような。そんな優しさを忘れずに抱き続ける、ごくごくありふれた善良な少年だったのだ。
模索路晶は、父の死というフィルターによって、世界も人間もまともに直視できていなかった。目を背けていた。恐ろしくて、斜に構えていた。
それを溶かしたのは、純粋な少年の行動だ。同業の天才しか仲間と言える者たちが居なかった彼女にとって出来た、彼女に久しぶりの、心からの『笑顔』を取り戻させてくれた『人間』。新しい理解者にして、彼女にとっての騎士だった。
彼が居たからこそ、彼の善良さを目の当たりにしたからこそ、彼女は世界を、人間を捨てたもんじゃないと再定義出来た。
だからこそ、彼女は再び世界を、できる限りの誰かを救う事を、再び夢見ることが出来たのだ。
数年の時が経ち、模索路晶は少年の前に姿を表す。
少女たちを、ソルの塔へと導いて欲しいというささやかなお願いを告げ、彼を電脳世界アストルムへと招待したのだ。
その行動が、一体少年に何を齎したのかを、当時の彼女がまだ知らないまま。
少女たちを、ソルの塔へと導いて欲しいというささやかなお願いを告げ、彼を電脳世界アストルムへと招待したのだ。
その行動が、一体少年に何を齎したのかを、当時の彼女がまだ知らないまま。
模索路晶が少年に施した行為に関して、後悔はしていない。
何故なら彼女は少年のことを信じていたからだ。
それが後付け良心による一種の理解不足だったのか定かではないが。後に起きた出来事を総評すれば、少年が記憶を失うことになったきっかけを作ったのは間違いなく模索路晶であるのは逃れられない現実。
それだけが、申し訳なかった。その少年は、少女たちを守ろうとした代償として、その魂に大きな傷を負い、記憶を失った。
模索路晶含め、アストルムの誕生に関わる人工知能ミネルヴァの作成に関わった七冠と呼ばれる集団。所謂一般人の視点からして狂人と称される天才の集まり。
少年がこうなった負い目があれど、彼の記憶喪失に関わる、プリンセスナイトという役割を背負わせたことについては後悔が無い限り、彼女もまた常人とはかけ離れた性質である。
何故なら彼女は少年のことを信じていたからだ。
それが後付け良心による一種の理解不足だったのか定かではないが。後に起きた出来事を総評すれば、少年が記憶を失うことになったきっかけを作ったのは間違いなく模索路晶であるのは逃れられない現実。
それだけが、申し訳なかった。その少年は、少女たちを守ろうとした代償として、その魂に大きな傷を負い、記憶を失った。
模索路晶含め、アストルムの誕生に関わる人工知能ミネルヴァの作成に関わった七冠と呼ばれる集団。所謂一般人の視点からして狂人と称される天才の集まり。
少年がこうなった負い目があれど、彼の記憶喪失に関わる、プリンセスナイトという役割を背負わせたことについては後悔が無い限り、彼女もまた常人とはかけ離れた性質である。
最も、それを少年が咎めることはしないし。模索路晶もまた、自分たちが引き起こした事による大惨事のツケを支払う事になるのは確定事項だ。
ミネルヴァの懲役と称される、少年含めたアストルムログイン者全員を昏睡状態に陥らせた世紀の大事件。それが解決したその時、裁きの壇上で審判を迎えるになるのは間違いなく彼女たち七冠。
七冠の一人として、模索路晶として、少年を身内の争いに巻き込んでしまったを責任を取るために。
かつて交わした約束が、呪いとなって少年の欠落を生んだ。
だからこそ、なのだろう。
ミネルヴァの懲役と称される、少年含めたアストルムログイン者全員を昏睡状態に陥らせた世紀の大事件。それが解決したその時、裁きの壇上で審判を迎えるになるのは間違いなく彼女たち七冠。
七冠の一人として、模索路晶として、少年を身内の争いに巻き込んでしまったを責任を取るために。
かつて交わした約束が、呪いとなって少年の欠落を生んだ。
だからこそ、なのだろう。
自分が困った時は少年に助けてもらう。少年が大変な時は自分が彼を助けにゆく。
たとえそれが一般感性からズレた思考であろうとも、天才・模索路晶が触れてたかけがえの無い普遍的で、尊い感情である。――それだけは、決して裏切れないのだ。
たとえそれが一般感性からズレた思考であろうとも、天才・模索路晶が触れてたかけがえの無い普遍的で、尊い感情である。――それだけは、決して裏切れないのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「一体どういう理論なのよ、それ。」
「端的に言えば開発者権限みたいなの。と言いたいところではあるけれど、ここがアストルムじゃないと仮定して、そう『適応』されてるってことになるのかな。」
「端的に言えば開発者権限みたいなの。と言いたいところではあるけれど、ここがアストルムじゃないと仮定して、そう『適応』されてるってことになるのかな。」
バトル・ロワイアルという名の決闘の舞台となっているとある離れ小島。
研究施設らしき建造物の内、その一室の机上に佇む一匹の翠瞳のカエル一匹
これを作ったのが、正しく赤という色がとことん似合う迷宮女王ことラビリスタ。リアルネーム、模索路晶本人である。
その結果に対し、表面上冷静に疑問を投げかけながらも、実際内心は驚いているのが白髪の少女。
神殺し、終焉吼竜(ニーズヘッグ)の伴侶たる月葬天女(ツクヨミ)、ミサキ・クジョウである。
研究施設らしき建造物の内、その一室の机上に佇む一匹の翠瞳のカエル一匹
これを作ったのが、正しく赤という色がとことん似合う迷宮女王ことラビリスタ。リアルネーム、模索路晶本人である。
その結果に対し、表面上冷静に疑問を投げかけながらも、実際内心は驚いているのが白髪の少女。
神殺し、終焉吼竜(ニーズヘッグ)の伴侶たる月葬天女(ツクヨミ)、ミサキ・クジョウである。
ミサキの反応の理由はラビリスタが眼前の兵器を作成した経緯にある。
前提として二人の出会いは決して穏便なものでは無く、凡そ様子見という形でのミサキ側からの警戒から始まった。
ミサキとしても最初に自分が呼ばれたのが神祖の手によるものだと過ったがその考えは直ぐに否定した。何故なら聖教国の実質的支配者ともいうべき彼らが、この様な低俗な催しを開く理由はありはしないのだ。
いくら完全な不老不死とは言え、一度汚名を被ればその影響がどのようなものになるかは神祖当人たちがご存知のはずだ。過去の独裁者のような凶行を起こすまずありえない。
そして伴侶であるラグナの身の危険が次に、正確には真っ先に思い浮かぶ。グレンファルトが自分の何を知っているかまでは分からないが、その聴取でラグナ達が捕縛させられるのが先になるとして、どちらにしろ彼らの命が危ういのは事実となる。
だからこそ早急に殺し合いから元の世界への帰還を最優先として行動方針を纏めるつもりではった。
そこで出会ったのは、如何にも胡散臭そうな赤ずくめの女性。
前提として二人の出会いは決して穏便なものでは無く、凡そ様子見という形でのミサキ側からの警戒から始まった。
ミサキとしても最初に自分が呼ばれたのが神祖の手によるものだと過ったがその考えは直ぐに否定した。何故なら聖教国の実質的支配者ともいうべき彼らが、この様な低俗な催しを開く理由はありはしないのだ。
いくら完全な不老不死とは言え、一度汚名を被ればその影響がどのようなものになるかは神祖当人たちがご存知のはずだ。過去の独裁者のような凶行を起こすまずありえない。
そして伴侶であるラグナの身の危険が次に、正確には真っ先に思い浮かぶ。グレンファルトが自分の何を知っているかまでは分からないが、その聴取でラグナ達が捕縛させられるのが先になるとして、どちらにしろ彼らの命が危ういのは事実となる。
だからこそ早急に殺し合いから元の世界への帰還を最優先として行動方針を纏めるつもりではった。
そこで出会ったのは、如何にも胡散臭そうな赤ずくめの女性。
勿論女性――ラビリスタは殺し合いに乗っていないという意思表明をした。
ラビリスタもとい模索路晶は研究畑の人間だ。観察対象と為りうる他者に対する自身による影響を排他する性質であり、出会った当初こそしがないクレープ屋だと誤魔化した、が、如何せん相手が悪かった。
ミサキ・クジョウは神殺しであると同時に、リベラ―ティに雇用されている傭兵。要するに職業柄怪しいのは大体ひと目で分かる。それを吟味しても、どっちにしろ胡散臭そうだったのでバレる事に関しては明白だったのであるが。
詰まる所、ラビリスタが情報交換を兼ねた話し合い提案と言う名の白旗を上げたので、敵対意思が無いことを確認し、一旦はこちらも情報の整理も兼ねて話し合うとう形に収まったのだ。
ラビリスタもとい模索路晶は研究畑の人間だ。観察対象と為りうる他者に対する自身による影響を排他する性質であり、出会った当初こそしがないクレープ屋だと誤魔化した、が、如何せん相手が悪かった。
ミサキ・クジョウは神殺しであると同時に、リベラ―ティに雇用されている傭兵。要するに職業柄怪しいのは大体ひと目で分かる。それを吟味しても、どっちにしろ胡散臭そうだったのでバレる事に関しては明白だったのであるが。
詰まる所、ラビリスタが情報交換を兼ねた話し合い提案と言う名の白旗を上げたので、敵対意思が無いことを確認し、一旦はこちらも情報の整理も兼ねて話し合うとう形に収まったのだ。
ラビリスタの『七冠』としての固有能力。アストルム内におけるオブジェクトの変更という、単純明快ながら有効範囲の広さによる強力無比な代物。
だが、ここはアストルムではなく決闘と言う名の殺し合いの舞台。そんな万能を許すほどハ・デスは甘くはない。オブジェクトの変更・変化に関しては強力な制約が掛かっており、最大でも自分の身体程の大きさの物体に関してのみ可能という体たらく
だが、逆を言えば制約下であるならばある程度の融通が利く。例えば、適当な石ころや機械片を別のものに変えたり、とか。
だが、ここはアストルムではなく決闘と言う名の殺し合いの舞台。そんな万能を許すほどハ・デスは甘くはない。オブジェクトの変更・変化に関しては強力な制約が掛かっており、最大でも自分の身体程の大きさの物体に関してのみ可能という体たらく
だが、逆を言えば制約下であるならばある程度の融通が利く。例えば、適当な石ころや機械片を別のものに変えたり、とか。
この辺鄙な小島における小さな研究所を仮陣地として、制限の具合を確かめるため、都合よく入っていた緑色の鉱石に対し『迷宮女王』の権能を使用。
オブジェクトとは物体の意。制限範囲の確認も兼ねて試した結果、出来上がったのがこの机の上のこれである。
そして肝心のミサキの反応の理由、まずラビリスタが素材として使ったのが翠星晶鋼(アキシオン)と呼ばれる鉱石。高次元エネルギーを超強引的に結晶化させた、新西暦の文明を正負含めてひっくり返しかねない代物。本来ならば神祖かラグナでしかこの星の結晶を作り出せず、最長でも一分も持たず自壊する、本来であれば無用の長物。
だがラビリスタの固有能力からすれば、この場所においては翠星晶鋼も『支給アイテム』というオブジェクトの一つにしか数えられないのか、それを使用してカエルを生み出し、そして現在に至るのだ。
オブジェクトとは物体の意。制限範囲の確認も兼ねて試した結果、出来上がったのがこの机の上のこれである。
そして肝心のミサキの反応の理由、まずラビリスタが素材として使ったのが翠星晶鋼(アキシオン)と呼ばれる鉱石。高次元エネルギーを超強引的に結晶化させた、新西暦の文明を正負含めてひっくり返しかねない代物。本来ならば神祖かラグナでしかこの星の結晶を作り出せず、最長でも一分も持たず自壊する、本来であれば無用の長物。
だがラビリスタの固有能力からすれば、この場所においては翠星晶鋼も『支給アイテム』というオブジェクトの一つにしか数えられないのか、それを使用してカエルを生み出し、そして現在に至るのだ。
「管理者権限って、ゲームの運営気取り?」
「実際ゲームなんだけどね。そして今の私の身体はゲーム内のアバターの方。……こちらの方が殺し合いを盛り上げる事しては有能だってことで選ばれたのかな。」
「実際ゲームなんだけどね。そして今の私の身体はゲーム内のアバターの方。……こちらの方が殺し合いを盛り上げる事しては有能だってことで選ばれたのかな。」
当然の如く、ラビリスタがこの身体で、制限されてながらも権能を使える事こそ、殺し合いを盛り上げるという点におけるスパイス感覚で設定される。
ハ・デスの催し、決闘と言う名の殺し合い。まるでゲームだ。あの魔王はさしずめゲームのプレイ動画を観戦している見物客というわけか。
ハ・デスの催し、決闘と言う名の殺し合い。まるでゲームだ。あの魔王はさしずめゲームのプレイ動画を観戦している見物客というわけか。
「……制約なしかつ本気の私達を相手取っても、十分に鎮圧できる程の手種は持ち合わせているって自身かな? これは手厳しい。」
「手厳しいだけなら、まだ良かったわよ。」
「手厳しいだけなら、まだ良かったわよ。」
あっけからんと憶測を告げるラビリスタに対し、ミサキは伴侶と離れ離れにされた事が少々不機嫌と言った様相。
「やらなきゃいけない事もある、待っている家族もいる。だからこんな所で屯っている暇なんて無いというのに。……こんなくだらない事に呼び出してくれて。」
「そいつは同感。まあ、高みの見物気取っている魔王にお灸を据えてやるのは愉快だと思うさ。……私の場合は待たせているのは家族ではなくて少年なんだけれど。」
「……少年って、その年で初物食いの類はどうかと思うわよ。というか誰なわけ? まさか彼氏的な?」
「そいつは同感。まあ、高みの見物気取っている魔王にお灸を据えてやるのは愉快だと思うさ。……私の場合は待たせているのは家族ではなくて少年なんだけれど。」
「……少年って、その年で初物食いの類はどうかと思うわよ。というか誰なわけ? まさか彼氏的な?」
最も、魔王の企みを打ち砕くという一点においては正しく二人の思考は合致している。
ただ、ラビリスタの少年発言に少しばかり噛みつくたくなったミサキが思わず言葉を投げかける。
ただ、ラビリスタの少年発言に少しばかり噛みつくたくなったミサキが思わず言葉を投げかける。
「いや、彼氏とかそういうわけじゃないんだ。少年は……」
「じゃあ息子とか?」
「意外に食いつきが深い……。……少年はね、私にとってのプリンセスナイトで、希望(ひかり)なんだ。」
「じゃあ息子とか?」
「意外に食いつきが深い……。……少年はね、私にとってのプリンセスナイトで、希望(ひかり)なんだ。」
少々、恥ずかしながらもラビリスタは告げる。
「私に希望を照らしてくれた。人間不信で燻ってて、色んなことから目を逸らしてた私に、人間は捨てたもんじゃないと教えてくれた。」
「……希望、ね。」
「まあ、大袈裟な言い方かもしれないけれどね。けれど私が変われたのは間違いなくあの少年のお陰だった。父のような医者を目指して、そんな父が謀略に巻き込まれて命を落とした。少年と出会うまで、私は誰かを救う事に意味なんて無いと思っていたんだ。」
そう語るラビリスタを、さっきの食いつきとは打って変わってミサキは黙って聞いている。
「それが少年と出会えて、もう一度だけ、世界中の誰かを助けるというのをやってみたくなった。その為に色々やって、あの少年を誘って―――。」
ラビリスタの口が止まる。ほんの少しだけ、その顔に翳り、そして直ぐに向き直して。
「……私の願いが、少年を巻き込んでしまった。彼の魂は、覇瞳皇帝との戦いの中で傷付いて、何もかも、忘れてしまった。……私のせいでね。」
それは、迷宮女王の口から漏れた、心残りというべきものだったのだろうか。
「後悔しているの?」
「……いや、少年をアストルムに招待したことは特に。」
「そういう尾びれもなく言えるの、人間として比較的破綻してるわよ。と言うか精神性がこっちの仇敵と似通ってるんだけれど。」
「せめて上辺だけでも良いからそこは慰めの言葉欲しかったかなぁ。」
「いや、あなたが誘ったのが原因でしょ。………まさかだとは思うけれど無理やり?」
「……うん、まあ。その。」
「……火を見るより明らかな碌でなしじゃない。」
前言撤回。その別種の前向きさは神祖にある意味通ずる感じと思い、ミサキは思わず溜息。
明らかに善意で誰かの人生結果的に破壊しているんじゃないとも言い出しても良かったが、流石に当人にとっても予想外らしい雰囲気だったのでその点は奥に仕舞い込んでおく。
明らかに善意で誰かの人生結果的に破壊しているんじゃないとも言い出しても良かったが、流石に当人にとっても予想外らしい雰囲気だったのでその点は奥に仕舞い込んでおく。
「否定しないさ。――私が巻き込まなければ、少年は平和に暮らせていたんだ。」
そして、ラビリスタは己の碌でなしさをある程度自覚している。
碌でなし、そう少年を関わらないはずの身内争いと一種の危機に巻き込んだ。
少年の前世を信じているこそ、後悔はしていない。でも罪拭いぐらいはしたかった。
なにせ、身内が引き起こしたことを発端とした一連の騒ぎ。
碌でなし、そう少年を関わらないはずの身内争いと一種の危機に巻き込んだ。
少年の前世を信じているこそ、後悔はしていない。でも罪拭いぐらいはしたかった。
なにせ、身内が引き起こしたことを発端とした一連の騒ぎ。
「正直、他人から恨まれても仕方がない事をしでかしたんだ。それでも少年は恨むことはしなかったさ。……もしかしたら、私はあの子の優しさに甘えているのかもしれないね。」
やや自嘲気味に語りながらも、ラビリスタの唇が緩む。
「だから、だよ。失わせてしまったから、奪ってしまったから。せめて私は私が出来ることで、少年を助けたかった。こんな私に、「あなたのおかげで、みんなと会えた」なんてお礼を言ってくれる。そんな優しい彼のために。」
そう、ラビリスタが、模索路晶の行動意義はただ一人、優しい彼(プリンセスナイト)に集約する。
後悔はない、それでも憂いや心残りはある。その残り物こそ、彼女にとっての重要なもので、誰かのために戦うという簡単な理由。
そう、誰かを助けるという、彼女が一度捨てて、取り戻した願いの第一歩で。
後悔はない、それでも憂いや心残りはある。その残り物こそ、彼女にとっての重要なもので、誰かのために戦うという簡単な理由。
そう、誰かを助けるという、彼女が一度捨てて、取り戻した願いの第一歩で。
227: "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:40:24 ID:.LdKi1qs0
「あの子は――ユウキは、私にそんな当たり前の事を、教えてくれた。ただ一人の人間だから。だから、あんなこと言われた手前、引き下がれるわけないよ。」
「あの子は――ユウキは、私にそんな当たり前の事を、教えてくれた。ただ一人の人間だから。だから、あんなこと言われた手前、引き下がれるわけないよ。」
自分のような碌でなしに希望を教えてくれた。光を照らしてくれた。
もしあの時あの少年と出会っていたら、冷酷無比な科学者に、それこそ人の心など介さない化け物として生きていただろう。
だからこそ、模索路晶にとってのユウキは、彼女を人間にしてくれた、唯一無二のプリンセスナイトなのだから。
だから、プリンセスナイトという力を背負わせてしまった大人としての責任と、かつての約束を守るために。
もしあの時あの少年と出会っていたら、冷酷無比な科学者に、それこそ人の心など介さない化け物として生きていただろう。
だからこそ、模索路晶にとってのユウキは、彼女を人間にしてくれた、唯一無二のプリンセスナイトなのだから。
だから、プリンセスナイトという力を背負わせてしまった大人としての責任と、かつての約束を守るために。
「――ああ、なるほど。」
それだけ聞いて、多少気になることはあれど、ミサキは納得する。
「あなたも、希望(ヒカリ)に救われたのね。」
それだけは、納得出来た。理解できた。
神殺しが生まれた、絶望の日。自分の住んでいた村が、隣人が、全てが死に絶えた緑晶の樹木林の中心で。
絶望と嘆きのみが木霊させた少女の叫びに応えて、邪竜という彼女にとっての希望は彼女に降り注いだ。
彼女にとっての始まり。希望を、光を、笑顔をくれたただ一人の人間、ラグナ・ニーズヘッグ。
自分にとってのラグナ・ニーズヘッグが、ラビリスタにとってのプリンセスナイトなのだろう。
普遍的な善性、という意味ではそのプリンセスナイトはリチャード・ザンブレイブよりの好青年だろうか。
一歩間違えれば神祖ルートに向かいそうな迷宮女王が、人間の心を捨て去らなかったのは彼の影響が大きいのだから。
『信頼』はまだ出来ないが、『信用』は一応は出来ると言ったところか。
神殺しが生まれた、絶望の日。自分の住んでいた村が、隣人が、全てが死に絶えた緑晶の樹木林の中心で。
絶望と嘆きのみが木霊させた少女の叫びに応えて、邪竜という彼女にとっての希望は彼女に降り注いだ。
彼女にとっての始まり。希望を、光を、笑顔をくれたただ一人の人間、ラグナ・ニーズヘッグ。
自分にとってのラグナ・ニーズヘッグが、ラビリスタにとってのプリンセスナイトなのだろう。
普遍的な善性、という意味ではそのプリンセスナイトはリチャード・ザンブレイブよりの好青年だろうか。
一歩間違えれば神祖ルートに向かいそうな迷宮女王が、人間の心を捨て去らなかったのは彼の影響が大きいのだから。
『信頼』はまだ出来ないが、『信用』は一応は出来ると言ったところか。
「……どちらにせよ、ハ・デスを倒して、お互い元の世界に戻りましょうっていうのは変わらないから。変な真似しない以上は付き合うわよ。」
「それは有り難いね。……あ、首輪をどうこうってのは無理そう。実のところキミと出会う前に試したから。」
「元から首輪云々は期待していないわ、私の星までこうやって抑えてるんだから、」
「それは有り難いね。……あ、首輪をどうこうってのは無理そう。実のところキミと出会う前に試したから。」
「元から首輪云々は期待していないわ、私の星までこうやって抑えてるんだから、」
主催への逆襲にに関し、一番の弊害と為りうるこの首輪。ラビリスタに科せられたを基準とすれば、殺し合いを直接的に破綻してしまう力は厳しく制約される、ということだろうか。
「……で、このアキシオン生まれのカエル、どうするのよ。」
「まあノリと実験ついでで作ったみたいな所もあるし、斥候として利用できるんじゃないかな。」
「あんたねぇ……。」
「まあノリと実験ついでで作ったみたいな所もあるし、斥候として利用できるんじゃないかな。」
「あんたねぇ……。」
もうこういう事に関してミサキは特に突っ込まないことにした。
実際アキシオンをカエルへと変化させたのはラビリスタだ。文明を一変させかねない物体をこうも容易く変化させた、いやこの会場だからこそもあるが、それを込みしても神祖に匹敵するほどの埒外の力と言っても良い。
実際アキシオンをカエルへと変化させたのはラビリスタだ。文明を一変させかねない物体をこうも容易く変化させた、いやこの会場だからこそもあるが、それを込みしても神祖に匹敵するほどの埒外の力と言っても良い。
「じゃあ私から一つだけ。あの少年絡みの事に嘘は無いって、言える?」
「―――それは約束する。信じてもらえなくてもいいけど、それにだけは嘘は付きたくない。」
「―――それは約束する。信じてもらえなくてもいいけど、それにだけは嘘は付きたくない。」
ラビリスタの、その真っ直ぐな程に真剣な眼差しこそ、ラビリスタにとってのユウキが、本当に希望(ヒカリ)であったということの、嘘偽りない言霊そのものだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
何れ、運命(けつまつ)の果て、彼の優しい笑顔が再び見れますように。
【ラビリスタ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康、決意
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2、翠星晶鋼(残り残量???)
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、早急にこの殺し合いから脱出する
1:やれやれ、信頼されないのは仕方がないか。
2:少年や彼女たちが巻き込まれていないか懸念
3:首輪解除手段の画策
[備考]
※参戦時期は最低でも第2部第7章以降
※翠星晶鋼を『迷宮女王』の権能でカエルへ変化させました。現在このカエルは創造主であるラビリスタに懐いています。
※『迷宮女王』の権能に制限が掛けられています。
[状態]:健康、決意
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2、翠星晶鋼(残り残量???)
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、早急にこの殺し合いから脱出する
1:やれやれ、信頼されないのは仕方がないか。
2:少年や彼女たちが巻き込まれていないか懸念
3:首輪解除手段の画策
[備考]
※参戦時期は最低でも第2部第7章以降
※翠星晶鋼を『迷宮女王』の権能でカエルへ変化させました。現在このカエルは創造主であるラビリスタに懐いています。
※『迷宮女王』の権能に制限が掛けられています。
【ミサキ・クジョウ@シルヴァリオ ラグナログ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、元の世界に戻る
1:彼女(ラビリスタは)は信頼ならない、ただ彼女にとっての希望に対しての思いは信用できる。
2:もしいるのなら早急にラグナたちとの合流
3:首輪解除手段の画策
4:もしかしてあいつら(神祖)も呼ばれているとか、いやまさか……?
[備考]
※参戦時期は最低でもChapter3『大神素戔王/Veratyr』以降
※ミサキの星辰光に関しての制約は後続の書き手におまかせします。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、元の世界に戻る
1:彼女(ラビリスタは)は信頼ならない、ただ彼女にとっての希望に対しての思いは信用できる。
2:もしいるのなら早急にラグナたちとの合流
3:首輪解除手段の画策
4:もしかしてあいつら(神祖)も呼ばれているとか、いやまさか……?
[備考]
※参戦時期は最低でもChapter3『大神素戔王/Veratyr』以降
※ミサキの星辰光に関しての制約は後続の書き手におまかせします。
『支給品紹介』
【翠星晶鋼@シルヴァリオ ラグナログ】
ラビリスタに支給。高位次元から降り注ぐエネルギーを強引に物質化したような代物であり、現状では神祖及び神殺したるラグナ・ニーズホッグとミサキ・クジョウしかウ見出せない。
超常の理屈で素粒子を結合させているのか、最長で一分も持たず自壊することから技術転用は基本的に不可能。
ただし極晃星に匹敵する星辰光の高出力発動、金属以外を用いた電子回路の創造など、その用途は余りに幅広い。他にも行為次元への接触様触媒として優秀。
【翠星晶鋼@シルヴァリオ ラグナログ】
ラビリスタに支給。高位次元から降り注ぐエネルギーを強引に物質化したような代物であり、現状では神祖及び神殺したるラグナ・ニーズホッグとミサキ・クジョウしかウ見出せない。
超常の理屈で素粒子を結合させているのか、最長で一分も持たず自壊することから技術転用は基本的に不可能。
ただし極晃星に匹敵する星辰光の高出力発動、金属以外を用いた電子回路の創造など、その用途は余りに幅広い。他にも行為次元への接触様触媒として優秀。