「へぇ、ロイドさんっていうんですか……。ふゆは、黛冬優子っていいます。ふゆって呼んでくれると嬉しいです!」
「ええ、分かりました、ふゆさん。」
決闘開始から数十分が過ぎて、にこやかに邂逅を果たした二人は、挨拶の意を込めた握手を交わす。
「「それでは、よろしくお願いします。」」
発声が被る。それへの照れ隠しとばかりに少しだけ、誤魔化すように笑って――そうして生まれた僅かな沈黙を破るように口を開いたのは、ロイドの側。
「……ところでふゆさん、鍛えていらっしゃるんですね。」
「えっ……?」
「ああ、失礼。ボクは精神科医をやっているのですが、人体構造といった医学分野もひと通り勉強しておりまして。ふゆさん、若いながらによく鍛えられているようで、感心してしまいました。」
「ああ、それはですね……」
特に顔色を変えることもないままに、冬優子は語る。
「……アイドル活動、やっているんです。そこでダンスとかのレッスンを受けているから……きっとそこで鍛えられているのかなって。」
「アイドル、ですか?」
「はい。テレビ出演とかもしたことあって……もしかしたら見覚えとか、ありませんか?」
「……いえ。すみません、そういった文化には疎いもので。」
「ふふっ。だったらいつかロイドさんにも届くくらい有名になって、次はそう言えなくしちゃいますからっ。」
「ははっ、私の方ももう少し、アンテナを張り巡らせてみることにします。」
ここが決闘の舞台であることを忘れ去ったかのように、穏やかな会話が繰り広げられていた。きっと、日常の中で出会っていたとしても、彼らは同じ顔で、同じ言葉を紡いでいただろう。
だとしても――目に見えない領域で、彼らの様態は日常と大きく隔たりを見せていた。
■
(この子は一見、殺し合いに積極的には見えないが……オレも同じだ。乗っているようには見せていない。彼女が猫を被っているだけであるのは否定できないな。)
ロイド・フォージャー、またの名を暗号名『黄昏』。男は、スパイだった。
冷戦の終結による東西平和の実現。その大願を叶えるために、オペレーション<梟>と称するミッションをこなしている最中、突如として招かれた決闘の舞台。主催者の目的は分からないが、現状はかなり後手に回っているのは確かだ。
その上で素直に殺し合いに応じるべきか、ロイドは思索を巡らせていた。
(オレの正体を知った上でオレを消すつもりなら、この首輪を爆発させればいい。そうしないのには何かしらの意図が感じられる。それに……)
説明書に書いていたルールによると、後ほど参加者の一覧が書かれた名簿が配布されるらしい。ただ見世物として殺し合うだけであれば、わざわざ名簿を配る必要はないだろうに、そこにも単なる娯楽とは違う思惑が潜んでいる予感がする。
ただ、自分はスパイとしての活動の中で、裏社会の人間の名前や、国家の大物の名前、その他ミッションで必要となった人間の素性を概ね把握している。どういった立場の人間がこの殺し合いに招かれているのか、名簿からそれを知るだけでも主催者の目的に近付ける。
さらに名簿と聞いて気になる点があるとすれば、自身の名がいかなる名義で記載されているのかということだ。現状の顔は、精神科医ロイド・フォージャーとしての顔。一つ前の顔では、エドガーという大物に恨みを買う立ち回りはしたが……十分に警告を施したヤツが改めて報復に……というのは考え難い。何にせよ、名簿に載っている自分の名義も、主催者の正体や目的に接近し得る情報だ。
そしてもう一点――ロイド・フォージャーとして巻き込まれたのであれば、懸念すべきは、家族の存在。仮にも最高峰のスパイであり、日常にも十分な注意を払っていた自分が、拉致された記憶もないままに連れてこられている。この現状、果たして、ヨルさんやアーニャが平穏無事であると言えるだろうか。
(……オレらしくないな。偽りの家族のことなど、後回しだろう。オレが考えるべきは、このアクシデントによるオペレーション<梟>の達成における障害の有無。このミッションの失敗は……国の平和にかかわる。)
ぶんぶんと首を横に振って、ノイズとなる思考を排除する。
何にせよこの殺し合いでいかに立ち回るのか、スタンスを考えるのはそれを踏まえた後だ。それまでに参加者と何かしら同盟関係を組めるのであれば、どうスタンスを翻すにしても遅くはないだろう。
■
(ドッキリにしては、周りにカメラらしきものはない。っていうか、事前の説明もなしにやるにはさすがに悪趣味すぎる。さすがにこんな仕事をアイツが承諾するとは思えないし……。)
黛冬優子。女は、偶像だった。
配布された説明書には確かに他者の命を奪うことをもって勝利条件となす記述がある。そして何より、デイパックから出てきた拳銃は、その質感が舞台道具の作り物には見えなかった。試し撃ちをしてみればその答えもハッキリとするのかもしれない。しかし冬優子はその引き金を引けなかった。
躊躇させたのは、銃声を辺りに響かせ自身の位置を知らしめるリスク、弾を浪費するデメリット、そういった計算が無いとは言わない。だけど、本心は違う。
もし、そこから銃弾が発射されてしまえば。この企画が明確に法の外にあるものだとハッキリし、連鎖的に自身が巻き込まれたものが日常から逸脱した本当の殺し合いであるのだと、分かってしまうから。遠からず向き合わなければならないことだとしても、もう少しだけ曖昧にして――逃げておきたかった。
ㅤ一方で、本物であることを直感的に確信しているからこそ、生まれる思考もある。自分はこの殺し合いにおいて、いかに立ち回るべきなのか。
(もちろん大人しく死ぬなんて、絶対にごめんよ。だけど……だからといってはいそうですかと簡単に他人を殺せるほど理性がぶっ壊れてもいないわよ。)
先ほど手にした銃の重みが、改めて冬優子の脳裏をよぎる。物理学的な重量だけではない。もっと概念的な、命の重さだ。
殺し合いの特典である富や名誉。はたまた、一つだけ叶えて貰えるという願いごと。それらにまったく興味が無い、などとは言わない。年相応と言うには、アイドル活動で見てきた世界は広すぎる。その分、欲しいもの、手に入らないものは山ほどある。だけど、他人から一方的に貰うだけ、そんな掴み方をしたいとは思わない。ましてや、そのために性分に合わない人殺しを強制させられるなど、真っ平御免だ。
(だけど……もし本当に、殺さないと生き残れないのだとしたら。誰かを蹴落とさないと、自分の夢を掴めないのだとしたら。)
それでも。勝者に与えられる特典、それら一切合切を抜きに考えても。
(……私は、戦う。そうするしか生き残る術がないのなら、私はそうするし……できる。)
生き残る事ができる権利。それだけで、戦う理由には十分だった。
(そのためにもまずは、殺し合いの優勝以外に生還する道があるかどうかの模索……かしら。ロイドみたいに成人男性も多く紛れてるなら、体格的にふゆは分が悪い。人数的にも、真っ当に殺し合って生き残れる確率は高くないもの。)
その上で、冬優子の出した結論は様子見だった。
まだ、優勝でしか帰還の道がないと断ずるには早すぎる。ルール説明書で確定しているだけでも、参加者名簿が開示されるフェイズがまだ到来していないことが分かっている。その際に、もしくはその後何らかのキッカケで、主催者側から複数人で生還する方法が示されることもあるかもしれない。ふゆのような純情派アイドルを拉致しておいて、歌やダンスを差し置いて剣闘士の如く戦わせることを見世物とするのは、そういう趣味の主催者であれば考えられないこともないが、やはり腑に落ちない点もある。
まっさらに――綺麗に生きようなんて、そんな驕りはとうに捨ててきた。ファンが理想に思う『ふゆ』として舞台に立ち始めたあの日から、ふゆは皆を騙している『詐欺師』でしかないのだから。
■
人はみな、誰にも見せぬ自分を持っている。
友人にも、恋人にも、家族にさえも。
友人にも、恋人にも、家族にさえも。
張り付けた笑顔や虚勢で本音を隠し、本性を隠し。
そうやって、世界は――
かりそめの平穏を、取り繕っている。
【ロイド・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:名簿が配られるのを待った上で立ち回りを考える。
1:冬優子に限らず、ひとまずは全参加者を警戒。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:名簿が配られるのを待った上で立ち回りを考える。
1:冬優子に限らず、ひとまずは全参加者を警戒。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
【黛冬優子@アイドルマスターㅤシャイニーカラーズ 】
[状態]:健康
[装備]:拳銃@出典不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:生還する。もしもの場合は人殺しも辞さない。
1:一旦は様子見。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
[状態]:健康
[装備]:拳銃@出典不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:生還する。もしもの場合は人殺しも辞さない。
1:一旦は様子見。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
【拳銃@出典不明】
冬優子に支給された拳銃。少なくとも外観上は、一般的な日本人である冬優子にも拳銃であると認識される見た目をしている。何の変哲もない拳銃でもいいし、何かしらの出典を明かした上で、特別な効力のあるものであるとしてもよい。
冬優子に支給された拳銃。少なくとも外観上は、一般的な日本人である冬優子にも拳銃であると認識される見た目をしている。何の変哲もない拳銃でもいいし、何かしらの出典を明かした上で、特別な効力のあるものであるとしてもよい。