「えーっと、とりあえず」
「また違うところに来ちゃった、ってことでいいのかな……?」
紺と白で構成された落ち着いた隊服が、朱のマフラーを目立たせる。まるで極東の忍のような格好をした少女、ショウは、そうつぶやくと困ったように少し笑った。
彼女はポケモンの生態を調べ、図鑑を完成させるため、ヒスイを西へ東へと走り回っており、今はフィールドワークを終えてコトブキムラへ帰るところであった。……のだが、たどり着いたのはコトブキムラではない、よくわからない場所。いたのはこれまたよくわからないいろんな格好をした人たちと、
「モンスター……」
空を飛ぶカマキリ、鎧を着た隻眼の大熊、血のように赤い目を光らせる狂犬……。モンスターボールを投げても反応はないし、意思疎通もできそうにないそれらは、ポケモンというよりは、はっきりとモンスターと言ってしまったほうがいいだろう。
ショウがそれらを見てまた違う場所に転移してしまったのだと理解するまでに、時間はかからなかった。
ショウがそれらを見てまた違う場所に転移してしまったのだと理解するまでに、時間はかからなかった。
「さて、これから、どうしようかな」
二度目の転移。ゆえに飲み込みは早いが、心配がないわけではない。一度目はラベン博士やテルを初めとするコトブキムラの面々が迎え入れてくれたし、自分についてきてくれるポケモンもいた。だが今回はかなり状況が違う。
『本田くんーーーー!』
本田ヒロトと呼ばれた少年の頭と身体が離れる光景が、友人だろう少年の絶叫が、脳内を過り、びくりと身体が震える。
『デュエル』とあのサングラスのおじさんは言った。ポケモンバトルも人同士のデュエルの手段として用いられることがあるが、開始時のあの光景を思い返すに、今回デュエルと呼ばれているそれの凄惨さはポケモンバトルの比ではないのだろう。そんなものに参加させられるような人たちが、今までショウに接してくれた人たちのように優しいとは限らない。
ひとりだと非力で、逃げ回ることしかできない。だからこそ、状況と協力できそうな人をよく見極める必要がある。
『デュエル』とあのサングラスのおじさんは言った。ポケモンバトルも人同士のデュエルの手段として用いられることがあるが、開始時のあの光景を思い返すに、今回デュエルと呼ばれているそれの凄惨さはポケモンバトルの比ではないのだろう。そんなものに参加させられるような人たちが、今までショウに接してくれた人たちのように優しいとは限らない。
ひとりだと非力で、逃げ回ることしかできない。だからこそ、状況と協力できそうな人をよく見極める必要がある。
「とにかく、ここだとモンスターから逃げるだけで終わっちゃうし、誰か変な人が来ちゃうかもしれないから……。よし! 何か安心して立てこもれるところを探そう!」
「ヒスイ地方へ帰るためにっ!」
ずきり。
「……?」
ヒスイで鍛えられ、足にだけは自信があった。帰るために、今は進む。一瞬、どうしてか胸が痛んだが、すぐに気を取り直すと、ショウは大きなデイパックを背負って立ち上がり、ふんす! と意気込んで野兎のように駆けていく。
その先に何が待っているかも知らずに。
「ここは……?」
モンスターの攻撃を持ち前の逃げ足と回避で華麗に躱しながら、あてもなく走り続けていたショウの足が、突然止まり、顔は驚きでいっぱいになる。
見えたのは、4階建てくらいの、コンクリートでできた大きな建物。上部には何も映っていない大きなテレビモニターがついており、それを黒い枠と柱が支えている。上の方になればなるほど横に広くなる、どう支えているのか不思議なその建物を、ショウは知っている。看板を見なくてもわかってしまう。
ヒスイに来る前、ショウがいた場所、そこに住む人ならみんな名前を知っている、とても有名なテレビ局。
「テレビコトブキ……」
罠かもしれない。誰かいるかもしれない。そんな考えはすっかり消え失せて、ショウの足はテレビコトブキへと向かう。
「社会科見学以来だな」
内装はそのときに見たものと特に変わりない。
入ってまず正面に見えるのは受付。いつも女の人が立っていて、ここでくじの結果を教えてくれたりもする。そこから左を見れば、ポケモンバトルができる広めのスペースがあり、右を見れば、ソファがふたつとテーブルがひとつ、そしてその奥にさらにテレビがある。
入ってまず正面に見えるのは受付。いつも女の人が立っていて、ここでくじの結果を教えてくれたりもする。そこから左を見れば、ポケモンバトルができる広めのスペースがあり、右を見れば、ソファがふたつとテーブルがひとつ、そしてその奥にさらにテレビがある。
『雪が 見たい…… だから キッサキシティ』
『3速! 4速! ギアチェンジ!
最新型 じてんしゃの お求めは サイクルショップ 『自転車人力』』
最新型 じてんしゃの お求めは サイクルショップ 『自転車人力』』
『今日は トバリデパート 嬉しいが ある 場所』
『ちょっと ニンマリ 新しい ポケッチ アプリ!
お求めは コトブキシティ ポケッチカンパニー まで!』
お求めは コトブキシティ ポケッチカンパニー まで!』
『世界が 違う ホテルグランドレイク』
テレビからは、今はCMの時間なのか、昔から変わらないお馴染みのCMが繰り返し流れ続けている。
「懐かしいな。フタバはキッサキほど積もらないから、積もったときが嬉しくて、ジュンたちと遊んで……」
「自転車の練習、上手くこげなくて転けまくったな」
「デパートで買ったピッピにんぎょう、まだあったっけ?」
「初めてピンクのポケッチ買ってもらったときは、友達に自慢して回ったなあ。私が一番乗りだったんだよねっ!」
「わあ、グランドレイク、CMで見るだけでもすごいなあ! そういや今度行こうねって話してたな。けど結局行けなくて……」
「……懐かしいなあ」
ぽたり。
「あれ」
目から、何かが零れ落ちる。
「あはは、ダメだなあ、私」
零れ落ちたのは、雫。
「今は、今はヒスイで頑張らないといけないのに」
それも、ただの雫ではなく、
「ヒスイに、帰らないといけないのに」
ひとつ落ちればキリがなく、
「あは、あはは、私、わたし……」
悲しみに合わせては流れ落ちる、
「ぁ、ぁあ……うあぁぁあぁ……!」
涙──。
忘れたフリをしていた。
ヒスイに帰る。帰って、ポケモン図鑑を埋めるためにヒスイの地を走って、登って。そして帰ってきたら、コトブキムラのみんなに迎えてもらう。それが私の幸せで、生きる道。
だってそう思わないと悲しいから。
そう思わないと立っていられないから。
そう思わないと走っていられないから。
だって、
だってそう思わないと悲しいから。
そう思わないと立っていられないから。
そう思わないと走っていられないから。
だって、
「いきなり、つれてこられて」
「全てのポケモンに出会えって」
「ヒスイのみんなが優しくて、私も頑張って」
「痛かったけど、怖かったけど、キングやクイーンを鎮めて」
「たくさんポケモンつかまえて」
「それは全部、シンオウに帰るためで」
「シンオウにかえるためにこんなにがんばってきたのに」
「それがいちばんのちかみちってしんじてたのに」
説明書には書いてあった。「最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。」と。
デュエルキングになれば、ヒスイ地方に戻らなくても、直接シンオウ地方に戻れるじゃないか、そう思うだろう。
だが、ショウにとって、これはそういう問題ではなかった。
彼女は、ヒスイのために動くことが、ヒスイのポケモンと触れることが帰る術だと思って今まで頑張ってきた。
バサギリ、ドレディア、ウィンディ、マルマイン、クレベース、そして……。あんなに大きなモンスターに直接襲われるなんて初めてだった。
それでも頑張った。必死に頑張った。辛いときがあっても、周りの人が、厳しい気候を受け止めて成長するヒスイの大地のように優しく受け入れてくれた。いなくなるのは寂しいけど、でもショウはいつかきっと故郷へと帰れるよと。だから泥だらけになっても走り回れた。走り回ってきた。
だが、その結果訪れたものはこれだ。
ある日突然こうなって、ある日突然近道が示されるのなら、今まで無理して頑張らなくてもよかったんじゃないか?
痛くて、痛くて、熱くて、痺れて、冷たい、あの辛く苦しい想いは一体なんだったんだ? 一体なんのためにあったんだ?
そもそも、これは近道なのか?
周りからのバックアップやポケモンは強くても、彼女自身は非力だ。こんなの、近道に見えて遠回りさせられただけじゃないのか? あんなに泣きながら頑張ったのに? どうして?
デュエルキングになれば、ヒスイ地方に戻らなくても、直接シンオウ地方に戻れるじゃないか、そう思うだろう。
だが、ショウにとって、これはそういう問題ではなかった。
彼女は、ヒスイのために動くことが、ヒスイのポケモンと触れることが帰る術だと思って今まで頑張ってきた。
バサギリ、ドレディア、ウィンディ、マルマイン、クレベース、そして……。あんなに大きなモンスターに直接襲われるなんて初めてだった。
それでも頑張った。必死に頑張った。辛いときがあっても、周りの人が、厳しい気候を受け止めて成長するヒスイの大地のように優しく受け入れてくれた。いなくなるのは寂しいけど、でもショウはいつかきっと故郷へと帰れるよと。だから泥だらけになっても走り回れた。走り回ってきた。
だが、その結果訪れたものはこれだ。
ある日突然こうなって、ある日突然近道が示されるのなら、今まで無理して頑張らなくてもよかったんじゃないか?
痛くて、痛くて、熱くて、痺れて、冷たい、あの辛く苦しい想いは一体なんだったんだ? 一体なんのためにあったんだ?
そもそも、これは近道なのか?
周りからのバックアップやポケモンは強くても、彼女自身は非力だ。こんなの、近道に見えて遠回りさせられただけじゃないのか? あんなに泣きながら頑張ったのに? どうして?
「わたしが、なにをしたっていうの……!」
そういうこともあるよね。
そんな言葉で割り切れるほど、ショウは器用じゃない。むしろ、今までのヒスイでの努力は無駄で、こんな神の采配でどうにでもなってしまうんだよと、突きつけられているように思ってしまう。
彼女はどうしようもなく不器用で、優しくて、
彼女はどうしようもなく不器用で、優しくて、
どうしようもなく物事の重さを理解できてしまう。
「かえりたいよぉ……」
不確かな少女の願いは、テレビの笑い声にかき消される。
だいじなものが、砕ける音がした。
だいじなものが、砕ける音がした。
【ショウ(女主人公)@Pokémon LEGENDS アルセウス】
[状態]:パニック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
もう私、どうしたらいいの……?
基本方針:わからない
[備考]
参戦時期はクリア後、クリア後ストーリー攻略前
[状態]:パニック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
もう私、どうしたらいいの……?
基本方針:わからない
[備考]
参戦時期はクリア後、クリア後ストーリー攻略前
【NPC紹介】
フライングマンティス@遊戯王OCG
風属性 レベル4 昆虫族 ATK/1500 DEF/800
飛行能力を持ったカマキリ。昆虫が大好物。
フライングマンティス@遊戯王OCG
風属性 レベル4 昆虫族 ATK/1500 DEF/800
飛行能力を持ったカマキリ。昆虫が大好物。
剣闘獣アンダル@遊戯王OCG
地属性 レベル4 獣戦士族 ATK/1900 DEF/1500
高い攻撃力で敵を追い詰める、隻眼の戦闘グマ。恐るべきスピードと重さを誇る自慢のパンチを受けて倒れぬものはいない。
地属性 レベル4 獣戦士族 ATK/1900 DEF/1500
高い攻撃力で敵を追い詰める、隻眼の戦闘グマ。恐るべきスピードと重さを誇る自慢のパンチを受けて倒れぬものはいない。
暗黒の狂犬@遊戯王OCG
闇属性 レベル4 獣族 ATK/1900 DEF/1400
かつては公園で遊ぶ普通の犬だったが、暗黒の力により凶暴化してしまった。
闇属性 レベル4 獣族 ATK/1900 DEF/1400
かつては公園で遊ぶ普通の犬だったが、暗黒の力により凶暴化してしまった。