体の奥が凍えていく。
じくじくと痛んで、熱を帯びていた体全部が冷えていく。
やらなきゃいけないことは沢山あるのに、何をしなきゃいけないのかが抜け落ちる。
思い出そうとしてもぼんやりした頭じゃ何も考えられない。
じくじくと痛んで、熱を帯びていた体全部が冷えていく。
やらなきゃいけないことは沢山あるのに、何をしなきゃいけないのかが抜け落ちる。
思い出そうとしてもぼんやりした頭じゃ何も考えられない。
どこまでも吸い込まれていく。
抗う事の出来ない、深い深い底へ。
何もできずに落ちていく。
わたし自身の奥底へ。
ああだけど、きっと底なんてどこにも無いんだ。
このまま永遠に落ち続けるんだろう。
抗う事の出来ない、深い深い底へ。
何もできずに落ちていく。
わたし自身の奥底へ。
ああだけど、きっと底なんてどこにも無いんだ。
このまま永遠に落ち続けるんだろう。
そう思った途端、体がやけに軽くなった。
纏う全てを剥ぎ取られ。
背負う全てを奪い去られ。
背負う全てを奪い去られ。
裸の上から与えられたのは無数の布。
何も見なくて良いように、目が隠された。
何も聞かなくて良いように、耳が隠された。
何もしなくて良いように、体中へ布が巻き付く。
何も聞かなくて良いように、耳が隠された。
何もしなくて良いように、体中へ布が巻き付く。
目を逸らしたら駄目なはず。
耳を塞いだら駄目なはず。
何もしないでいるのなんて、それで本当に良いの?
耳を塞いだら駄目なはず。
何もしないでいるのなんて、それで本当に良いの?
《良いんじゃないの?また余計な事して誰かを絶望させるよりはマシでしょ》
聞こえた声は呆れと冷たさを含んでいて。
わたしを肯定したいのか、それとも否定したいのか分からなかった。
わたしを肯定したいのか、それとも否定したいのか分からなかった。
○
「なん……だと……」
「なニィ!?」
「なニィ!?」
黒死牟とデェムシュ。
殺し合っていた二体は奇しくも同じ思いで空を見上げた。
彼らが抱くのは驚愕。
デェムシュは残るもう一体の猿を始末しようとし、黒死牟は己を苛む苛立ちの原因を取り除こうと得物を振るい、
刃同士がぶつかり合う瞬間にソレが起きた。
殺し合っていた二体は奇しくも同じ思いで空を見上げた。
彼らが抱くのは驚愕。
デェムシュは残るもう一体の猿を始末しようとし、黒死牟は己を苛む苛立ちの原因を取り除こうと得物を振るい、
刃同士がぶつかり合う瞬間にソレが起きた。
「何故……」
彼らが見上げる先には、鬼ともインベスとも違う新たな異形。
浮遊し地上の化け物どもを睥睨するのは、形容し難い歪な存在。
巨大な頭部は鳥を思わせるフォルムなれど、左右非対称の色。
纏った粗末な布切れは使い古した毛布にも見え、どことなく女性らしい体を覆い隠す。
足は無く、卵のような下腹部からぶら下がるのは…
浮遊し地上の化け物どもを睥睨するのは、形容し難い歪な存在。
巨大な頭部は鳥を思わせるフォルムなれど、左右非対称の色。
纏った粗末な布切れは使い古した毛布にも見え、どことなく女性らしい体を覆い隠す。
足は無く、卵のような下腹部からぶら下がるのは…
「お前は……一体……」
左右に大きく広げた両手は、十字架に張り付けられたかの如く微動だにしない。
夜でも目立った桜色の髪の毛は逆立ち、異形の下腹部へと繋がっていた。
俯いていた顔にはこの数時間で見知った表情は無い。
代わりにあるのは滲んだ墨汁のような目と口が描かれた、白い面。
夜でも目立った桜色の髪の毛は逆立ち、異形の下腹部へと繋がっていた。
俯いていた顔にはこの数時間で見知った表情は無い。
代わりにあるのは滲んだ墨汁のような目と口が描かれた、白い面。
鳥のような異形が出現する様を黒死牟は見ていた。
デェムシュを一刀の下に地獄へ叩き落とさんとし、異様な気配に振り向いた時だ。
倒れ伏した娘の髪が地面を覆う程に伸びたかと思えば、あっという間に異形へと姿を変えた。
デェムシュを一刀の下に地獄へ叩き落とさんとし、異様な気配に振り向いた時だ。
倒れ伏した娘の髪が地面を覆う程に伸びたかと思えば、あっという間に異形へと姿を変えた。
ソウルジェムが濁り切った時、魔法少女は魔女へなる。
しかしこれは魔女では無い。
環いろはが姿を変えたこの正体はドッペル。正式名称はドッペル・ウィッチ。
ソウルジェムが穢れで満たされた時、自らの体の一部に呪いの姿を映し取り、溜め込んだ穢れを変換する。
マギウスによって生み出された、魔法少女を魔女化の運命から救うただ一つの方法。
しかしこれは魔女では無い。
環いろはが姿を変えたこの正体はドッペル。正式名称はドッペル・ウィッチ。
ソウルジェムが穢れで満たされた時、自らの体の一部に呪いの姿を映し取り、溜め込んだ穢れを変換する。
マギウスによって生み出された、魔法少女を魔女化の運命から救うただ一つの方法。
呼子鳥へと姿を変えたいろは…沈黙のドッペルは嘴を大きく開く。
見た目に反して怪鳥のような鳴き声は無く、空気を震わせるだけ。
威圧ではない、攻撃の合図。
沈黙のドッペルの背後より出現した大量の布はゆらゆらと揺蕩う。
それが一斉に動きを止め、地上目掛けて射出された。
見た目に反して怪鳥のような鳴き声は無く、空気を震わせるだけ。
威圧ではない、攻撃の合図。
沈黙のドッペルの背後より出現した大量の布はゆらゆらと揺蕩う。
それが一斉に動きを止め、地上目掛けて射出された。
「っ……!」
困惑しながらも警戒は解かなかった甲斐があったのだろう。
布が動きを止めた時点で黒死牟は飛び退き、一瞬遅れて地面へ布が殺到。
柔らかく脆い布とは思えない攻撃だ、黒死牟が立っていた場所のアスファルトが粉砕される。
布というよりは鉄柱を振り下ろしたと言った方がしっくり来る勢いだ。
布が動きを止めた時点で黒死牟は飛び退き、一瞬遅れて地面へ布が殺到。
柔らかく脆い布とは思えない攻撃だ、黒死牟が立っていた場所のアスファルトが粉砕される。
布というよりは鉄柱を振り下ろしたと言った方がしっくり来る勢いだ。
「えエい!また猿ノ下らン小細工カ!?」
デェムシュの叫びからは困惑以上に苛立ちが強い。
痛め付けたと思った相手が不格好な化け物になったのだ、思うように事が進まずささくれ立っている。
痛め付けたと思った相手が不格好な化け物になったのだ、思うように事が進まずささくれ立っている。
そんなデェムシュにも等しく布は襲い掛かる。
何もしなければ大量の布に叩き潰されミンチになるか、締め付けられバラバラになるかの二択。
だが苛立ちは大きくとも行動へは影響しない。
シュイムを豪快に振るって近付く布を片っ端から両断。
運良く剣から逃れた布は素手で引き千切って対処。
何もしなければ大量の布に叩き潰されミンチになるか、締め付けられバラバラになるかの二択。
だが苛立ちは大きくとも行動へは影響しない。
シュイムを豪快に振るって近付く布を片っ端から両断。
運良く剣から逃れた布は素手で引き千切って対処。
「……」
少し離れた場所では黒死牟もデェムシュ同様に、得物を振るって布を切り裂く。
刀の一振りで発生した複数の刃が、布を次から次へと細切れにする。
そうやって斬った先から群れを成して襲い掛かる布。
これでは斬っても斬ってもキリが無い。
手っ取り早くどうにかするなら、布を飛ばす本体を斬れば片が付く。
刀の一振りで発生した複数の刃が、布を次から次へと細切れにする。
そうやって斬った先から群れを成して襲い掛かる布。
これでは斬っても斬ってもキリが無い。
手っ取り早くどうにかするなら、布を飛ばす本体を斬れば片が付く。
「…………」
そうだ、斬れば良い。
この手で宙に浮かぶ怪鳥のような異形を、斬り落とせば。
この手で宙に浮かぶ怪鳥のような異形を、斬り落とせば。
ドッペルは神浜市の魔法少女が持つ能力の中でも特に強力。
個人によって差はあれど、魔女やウワサを一方的に蹴散らす程の力を発揮する。
だがドッペルとは決して無敵の能力ではない。
例え魔法少女がドッペルを出現させても、それ以上の実力を持った魔法少女に瞬殺される事も珍しくは無い。
現にいろはは殺し合いよりも前、初めてドッペルを出現させた時、巴マミの砲撃を受け一撃で沈められている。
ならばベテランの魔法少女数名に匹敵、或いは凌駕する力を持つ黒死牟でも沈黙のドッペルを一刀両断は可能である。
個人によって差はあれど、魔女やウワサを一方的に蹴散らす程の力を発揮する。
だがドッペルとは決して無敵の能力ではない。
例え魔法少女がドッペルを出現させても、それ以上の実力を持った魔法少女に瞬殺される事も珍しくは無い。
現にいろはは殺し合いよりも前、初めてドッペルを出現させた時、巴マミの砲撃を受け一撃で沈められている。
ならばベテランの魔法少女数名に匹敵、或いは凌駕する力を持つ黒死牟でも沈黙のドッペルを一刀両断は可能である。
「…………」
だったらどうして、斬ろうとしないのか。
あの怪鳥は赤い異形のみならず、自分までも攻撃している。
つまり娘の意識とは関係なしに暴れ回る存在なのだろう。
ならさっさと斬って何もできなくさせれば良い。
未だに屠り合いへ積極的には全くなれないが、殺しに来る輩の好きにさせてやるつもりもない。
元は自分に付いて回った娘だとして、それが斬らない理由にはならない。
つまり娘の意識とは関係なしに暴れ回る存在なのだろう。
ならさっさと斬って何もできなくさせれば良い。
未だに屠り合いへ積極的には全くなれないが、殺しに来る輩の好きにさせてやるつもりもない。
元は自分に付いて回った娘だとして、それが斬らない理由にはならない。
だというのに、何故自分は斬ろうとしない。
何故鼠のように駆け布を蹴散らすばかりで、アレを直接手に掛けない。
何故鼠のように駆け布を蹴散らすばかりで、アレを直接手に掛けない。
こちらを覆い隠すようにして飛ばされた布を跳んで躱し、追跡したモノを全て斬り払う。
降り立った先は偶然なのか、怪鳥の真下。
見上げれば白い面と視線がかち合う。
面は何も言わずに頭部を微かに振るう。
こちらを嘲笑っているような、あの娘とはかけ離れた仕草に何を思う間もなく、
降り立った先は偶然なのか、怪鳥の真下。
見上げれば白い面と視線がかち合う。
面は何も言わずに頭部を微かに振るう。
こちらを嘲笑っているような、あの娘とはかけ離れた仕草に何を思う間もなく、
「消え去レィっ!」
火球が自分達へ放たれた。
○○○
何も見なくて良いのは楽だ、嫌な光景を見ずに済むから。
何も聞かなくて良いのは楽だ、酷い言葉を聞かずに済むから。
何もしなくて良いのは楽だ、傷つく事も傷つける事も無いのだから。
泥の海に沈んだような不快感、それさえも今は心地が良い。
何も聞かなくて良いのは楽だ、酷い言葉を聞かずに済むから。
何もしなくて良いのは楽だ、傷つく事も傷つける事も無いのだから。
泥の海に沈んだような不快感、それさえも今は心地が良い。
ずっとこのままでいられたら、それはそれで幸せなのかもしれない。
自分が悲しい目に遭うのも、自分のせいで誰かを悲しい目に遭わせたりもしないから。
わたしのせいで絶望したあの娘。
わたしが手を届かせられなかったあの娘達。
わたしが何かをやろうとすれば、最悪の結果になる。
じゃあわたしは、何もしない方が皆の為になるのかな。
自分が悲しい目に遭うのも、自分のせいで誰かを悲しい目に遭わせたりもしないから。
わたしのせいで絶望したあの娘。
わたしが手を届かせられなかったあの娘達。
わたしが何かをやろうとすれば、最悪の結果になる。
じゃあわたしは、何もしない方が皆の為になるのかな。
『……違う』
それは、それは違う。
わたしは取り返しの付かない失敗もしたけど、何もかも全部が間違いだったなんて思わない。
わたしは取り返しの付かない失敗もしたけど、何もかも全部が間違いだったなんて思わない。
――『ありがとう…いろは』
そう簡単に死なないって、約束した人がいる。
――『私たちが来れたのは、いろはちゃんがいてくれたおかげだよ』
そう言ってくれた皆がいる。
まだ死ねない。
みかづき荘の皆が希望を思い出させてくれるから、わたしはこの先も手を伸ばせる。
みかづき荘の皆が希望を思い出させてくれるから、わたしはこの先も手を伸ばせる。
それにまだ、まだあの人の助けに全然なれてない。
《そうやって空回りして、また間違えなきゃいいけど》
『あなたはわたし。だったら分かる筈だよ。そんな言葉で止まったりなんかしないって』
《……どうしてこんなに頑固なんだろうね、私》
そんなの決まってるよ。
それがわたし、それが環いろはだもの。
それがわたし、それが環いろはだもの。
○
「オノれぇぇ…!」
忌々しく自らが火球を発射した方を睨み付ける。
一般人ならば視線だけで心臓を止めかねない、絶大な憤怒が宿った瞳。
デェムシュが見るのは無様に焼け死んだ猿ではない。
何重にも折り重ねられた布、ほとんどが焼け焦げながらも火球を防いだ猿の小癪な抵抗。
一般人ならば視線だけで心臓を止めかねない、絶大な憤怒が宿った瞳。
デェムシュが見るのは無様に焼け死んだ猿ではない。
何重にも折り重ねられた布、ほとんどが焼け焦げながらも火球を防いだ猿の小癪な抵抗。
「ふぅ……」
パラパラと辺りに舞い散る焼けた布の切れ端を視界に収め、いろはは小さく息を吐く。
不気味な仮面は跡形もなく消え、色白の肌に汗を垂らした素顔を見せている。
頭上に巨大な怪鳥は出現させたまま降り立ち、傍らの六眼へ視線を合わせた。
不気味な仮面は跡形もなく消え、色白の肌に汗を垂らした素顔を見せている。
頭上に巨大な怪鳥は出現させたまま降り立ち、傍らの六眼へ視線を合わせた。
「ごめんなさい…!わたしのドッペル…えっと、これのせいで迷惑を掛けて……」
申し訳なさを大いに含んだその顔は間違いなく、出会ってから自分の心を乱す娘のもの。
自分は何を言えば良いのやら、一文字すら浮かばず黙って娘を見下ろす。
と、そう呑気に事を構えてもいられない。
こちらを仕留められずに怒り狂った異形が放つ殺気で、娘も弾かれたように顔を上げた。
真剣な顔つきに切り替えは早い方かと至極どうでもいい事を思う。
自分は何を言えば良いのやら、一文字すら浮かばず黙って娘を見下ろす。
と、そう呑気に事を構えてもいられない。
こちらを仕留められずに怒り狂った異形が放つ殺気で、娘も弾かれたように顔を上げた。
真剣な顔つきに切り替えは早い方かと至極どうでもいい事を思う。
「どコまで俺ヲこケにスル気ダ猿どモ!」
怒髪天を突くという言葉を体現したような怒りようだ。
余程あの異形はプライドが高いらしいが、悠長に考えてはいられない。
いろはの意思に従い布が蛇のように地面を這い、デェムシュへと飛び掛かる。
布が行くのは地上のみだけでなく、頭上からも次々射出。
四方八方からの攻撃など、360度より放たれたアーマードライダーの必殺技をも防いだデェムシュにはどうという事は無い。
真紅のマントを翻しながらシュイムでの回転斬りで、布は瞬く間に裂かれる。
余程あの異形はプライドが高いらしいが、悠長に考えてはいられない。
いろはの意思に従い布が蛇のように地面を這い、デェムシュへと飛び掛かる。
布が行くのは地上のみだけでなく、頭上からも次々射出。
四方八方からの攻撃など、360度より放たれたアーマードライダーの必殺技をも防いだデェムシュにはどうという事は無い。
真紅のマントを翻しながらシュイムでの回転斬りで、布は瞬く間に裂かれる。
いろはとデェムシュの攻防を目の当たりにし、黒死牟は気の抜けたような息を吐いた。
これまでの自分を思い返すと、自嘲する気にもなれない。
異形の言葉にみっともなく動揺して、人間の娘一人の言動と行動に一々呆ける。
一体全体自分はどこまで恥を晒し続ければ気が済むのか。
これまでの自分を思い返すと、自嘲する気にもなれない。
異形の言葉にみっともなく動揺して、人間の娘一人の言動と行動に一々呆ける。
一体全体自分はどこまで恥を晒し続ければ気が済むのか。
ああしかし、自分がこうして木偶人形のような無様を晒す最中も戦闘は続いていて。
あの娘は、環いろはは何度布を斬られ燃やされても戦う事を止めようとはしなくて。
頭上に巨大な怪鳥を携えた幼い少女の背中を見つめ、誰に対してのものか分からない呆れを含んだ声を漏らし、
あの娘は、環いろはは何度布を斬られ燃やされても戦う事を止めようとはしなくて。
頭上に巨大な怪鳥を携えた幼い少女の背中を見つめ、誰に対してのものか分からない呆れを含んだ声を漏らし、
――月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦
「ヌぉ!?」
「っ!?」
疾走と同時に放たれるは月の呼吸の型。
この技は他の型と違い、刀を構えるだけで斬撃を発生させる事が可能。
振り無しで攻撃するという、剣士に必要不可欠な動作を削ぎ落した鬼だからこその技。
故に接近しただけで突如飛来した斬撃にデェムシュの反応が遅れ、肉体に刀傷を刻まれる。
斬られた痛みも、自分の体にまたもや傷が付けられたという怒りで塗り潰す。
同じ得物を振るっていた為か、小娘に受けた屈辱も再来。
人間であれば顔中に血管が浮かび上がっていただろう。
この技は他の型と違い、刀を構えるだけで斬撃を発生させる事が可能。
振り無しで攻撃するという、剣士に必要不可欠な動作を削ぎ落した鬼だからこその技。
故に接近しただけで突如飛来した斬撃にデェムシュの反応が遅れ、肉体に刀傷を刻まれる。
斬られた痛みも、自分の体にまたもや傷が付けられたという怒りで塗り潰す。
同じ得物を振るっていた為か、小娘に受けた屈辱も再来。
人間であれば顔中に血管が浮かび上がっていただろう。
渦のように戦場の空気を掻き回すデェムシュの怒り。
それをさらりと受け流し、黒死牟は改めて虛哭神去を構え直す。
別に、今になって自分から戦おうという気になったのに深い理由など有りはしない。
ただ人間の娘一人に戦わせ高みの見物に逃げるような真似をして、これ以上恥の上塗りをする事もあるまい。
そう思っただけのこと。
隣に立ってこちらを見上げる娘。
環いろはに感化されただとかそんな馬鹿げた理由では断じて無い
天地が引っ繰り返っても、そのような愚かしく蕩け切った理由は有り得ない。
自分を見つめたままの視線を振り払うように、一言だけ告げた。
それをさらりと受け流し、黒死牟は改めて虛哭神去を構え直す。
別に、今になって自分から戦おうという気になったのに深い理由など有りはしない。
ただ人間の娘一人に戦わせ高みの見物に逃げるような真似をして、これ以上恥の上塗りをする事もあるまい。
そう思っただけのこと。
隣に立ってこちらを見上げる娘。
環いろはに感化されただとかそんな馬鹿げた理由では断じて無い
天地が引っ繰り返っても、そのような愚かしく蕩け切った理由は有り得ない。
自分を見つめたままの視線を振り払うように、一言だけ告げた。
「私よりも……奴に集中しろ……」
「は、はい…!」
「は、はい…!」
言われた通りに慌ててデェムシュへ向き直る。
強敵へ向けた表情は険しいままなれど、心はそんな場合で無いと分かってもどこか弾んでいる。
「邪魔だ」とか、「退いてろ」とかじゃない。
黒死牟にとっては大した理由も無く口にしただけかもしれないけど、一緒に戦うなとは言われなかった。
それがいろはには嬉しかったのだ。
強敵へ向けた表情は険しいままなれど、心はそんな場合で無いと分かってもどこか弾んでいる。
「邪魔だ」とか、「退いてろ」とかじゃない。
黒死牟にとっては大した理由も無く口にしただけかもしれないけど、一緒に戦うなとは言われなかった。
それがいろはには嬉しかったのだ。
鬼は己の意思で刀を構えた、魔法少女は変わらぬ決意を胸に隣へ立つ。
激情に自分自身を支配されたオーバーロードは、目に映るモノ全てを壊すだけ。
激情に自分自身を支配されたオーバーロードは、目に映るモノ全てを壊すだけ。
黒死牟とデェムシュ。
二体の異形が同時に駆け出し、魔剣と妖刀が火花を散らす。
怒りを刃に乗せた怒涛の攻めは、黒死牟に技を出す隙を決して与えようとはしない。
一見すれば童子が癇癪を起し棒切れを振るっているような動きは的確に急所を狙い、それでいて速さも別格。
これを黒死牟、焦りも苛立ちも決して面には出さず、無駄を削ぎ落した動作で防御。
二体の異形が同時に駆け出し、魔剣と妖刀が火花を散らす。
怒りを刃に乗せた怒涛の攻めは、黒死牟に技を出す隙を決して与えようとはしない。
一見すれば童子が癇癪を起し棒切れを振るっているような動きは的確に急所を狙い、それでいて速さも別格。
これを黒死牟、焦りも苛立ちも決して面には出さず、無駄を削ぎ落した動作で防御。
「っ!?まタそれカ…!」
頭を沸騰させるデェムシュが睨むは、シュイムに巻き付いた布。
黒死牟の後方にて、沈黙のドッペルを動かし布を射出したいろはだ。
巻き付けた布はデェムシュが軽く振り払うだけで簡単に斬られる。
だがその前に、こちらが強く引いてやると剣の軌道が僅かにズレた。
黒死牟の後方にて、沈黙のドッペルを動かし布を射出したいろはだ。
巻き付けた布はデェムシュが軽く振り払うだけで簡単に斬られる。
だがその前に、こちらが強く引いてやると剣の軌道が僅かにズレた。
――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月
となればデェムシュへ放たれるのは、当然黒死牟の技。
地面に深い痕を生みながら、虛哭神去による三連の斬撃。
シュイムを縛る布を引き裂き防御、刀身に衝撃が伝わるも本人は無傷。
しかし続けてシュイムへと掛ったのは重み、刀で押し込まれたのだ。
地面に深い痕を生みながら、虛哭神去による三連の斬撃。
シュイムを縛る布を引き裂き防御、刀身に衝撃が伝わるも本人は無傷。
しかし続けてシュイムへと掛ったのは重み、刀で押し込まれたのだ。
「邪魔ダァッ!」
誰が馬鹿正直に打ち合ってやるものか。
体を霧状に変化させると、突然消えた感触に黒死牟が少しばかりつんのめる。
円を描くように黒死牟の周囲を飛び回るデェムシュ。
斬られた所で気体と化した体は無傷、反対にこちらは一方的に攻撃が可能。
体を霧状に変化させると、突然消えた感触に黒死牟が少しばかりつんのめる。
円を描くように黒死牟の周囲を飛び回るデェムシュ。
斬られた所で気体と化した体は無傷、反対にこちらは一方的に攻撃が可能。
「成程……初見の術なり……」
淡々と呟くその姿がデェムシュには気に入らない。
余裕ぶった態度を崩そうとし、急に体が自分の意思とは無関係に後方へと飛んで行く。
敵は体を霧へと変化させた。そこを斬っても傷は付けられない。
だが霧になったと言う事は元の肉体にあった重量は皆無。
鬼の膂力をここぞとばかりに発揮し刀を振るい、強風を意図的に引き起こしたのだ。
無限城で斬り合った風柱のような暴風では無いが、今はこれで十分。
余裕ぶった態度を崩そうとし、急に体が自分の意思とは無関係に後方へと飛んで行く。
敵は体を霧へと変化させた。そこを斬っても傷は付けられない。
だが霧になったと言う事は元の肉体にあった重量は皆無。
鬼の膂力をここぞとばかりに発揮し刀を振るい、強風を意図的に引き起こしたのだ。
無限城で斬り合った風柱のような暴風では無いが、今はこれで十分。
「チィィィッ!!」
吹き飛ばされた先でデェムシュは実体化。
アスファルトを砕く勢いで踏みしめ、すかさず殺到する無数の布。
掌より火球を発射して焼き尽くす。
煙が僅かな間視界を塞ぐ。
ヒラヒラと宙を舞う焦げた切れ端を払い除けながら、黒死牟が斬り掛かった。
獣のように真っ向から突っ込んでくる姿を鼻で笑いつつ、シュイムの切っ先で突き殺さんとする。
真っ直ぐに迫り来る切っ先を六眼で睨みながら黒死牟は跳躍、地から足を離したまま刀を振るう。
アスファルトを砕く勢いで踏みしめ、すかさず殺到する無数の布。
掌より火球を発射して焼き尽くす。
煙が僅かな間視界を塞ぐ。
ヒラヒラと宙を舞う焦げた切れ端を払い除けながら、黒死牟が斬り掛かった。
獣のように真っ向から突っ込んでくる姿を鼻で笑いつつ、シュイムの切っ先で突き殺さんとする。
真っ直ぐに迫り来る切っ先を六眼で睨みながら黒死牟は跳躍、地から足を離したまま刀を振るう。
――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り
頭上より真下の異形を輪切りにせんと、半円の刃が降り注ぐ。
黒死牟が跳躍した時点でデェムシュは次にどう動くかを決定済。
地面を蹴り上げ後方へと大きく回避、舗装された地面があっという間に破壊された。
黒死牟が跳躍した時点でデェムシュは次にどう動くかを決定済。
地面を蹴り上げ後方へと大きく回避、舗装された地面があっという間に破壊された。
下がった場所で両肩の突起物に力を込めるデェムシュ。
放電したのは、これより二匹の猿目掛けて電撃を落とす合図。
フェムシンムをコケにした罰を与えようとし、その顔面が勢い良くはたかれた。
痛みは無くとも予期せぬ衝撃に間抜けな声が出て、両肩の電気が霧散。
おまけに自分をはたいたソレが顔に巻き付き視界を封じる。
放電したのは、これより二匹の猿目掛けて電撃を落とす合図。
フェムシンムをコケにした罰を与えようとし、その顔面が勢い良くはたかれた。
痛みは無くとも予期せぬ衝撃に間抜けな声が出て、両肩の電気が霧散。
おまけに自分をはたいたソレが顔に巻き付き視界を封じる。
「貴様ァアアアアアアアアアアッ!!!」
――月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え
自分の顔をはたき、攻撃を阻止し、視界を塞ぐ。
巻かれた布を引き裂いて、許し難い罪を犯したの小娘へ火球を発射しようと掌を向けた。
だがそれもまた中断するしかない。
デェムシュ目掛けて複数の斬撃が地を這いやって来る。
遠距離の敵に対しても有効な型をシュイムで防御。
斬られはしないがとっくに振り切りつつある怒りのメーターはまたしても上昇。
感情のままに新たな手に出た。
巻かれた布を引き裂いて、許し難い罪を犯したの小娘へ火球を発射しようと掌を向けた。
だがそれもまた中断するしかない。
デェムシュ目掛けて複数の斬撃が地を這いやって来る。
遠距離の敵に対しても有効な型をシュイムで防御。
斬られはしないがとっくに振り切りつつある怒りのメーターはまたしても上昇。
感情のままに新たな手に出た。
「蹴散らしテくれル!!」
主霊石が光を放ち、再び周囲一帯の気温が急速に低下する。
デェムシュの背後より複数の氷柱が出現。
否、背後のみならず黒死牟といろはを取り囲むようにして氷柱が配置された。
デェムシュの背後より複数の氷柱が出現。
否、背後のみならず黒死牟といろはを取り囲むようにして氷柱が配置された。
「死ネ!」
号令のようにシュイムを振り下ろせば、氷柱が一斉に発射される。
自分の体も凍り付いているが、少し動かせば容易く砕ける程度のもの。
猿どもの串刺し死体を拝もうとし、望まぬものを見た。
六眼の化け物、黒死牟は迫る大量の氷柱を前にして尚も平然としている。
全集中の呼吸により鬼の身体能力が爆発的に上昇。
刀を縦方向に振るった。
自分の体も凍り付いているが、少し動かせば容易く砕ける程度のもの。
猿どもの串刺し死体を拝もうとし、望まぬものを見た。
六眼の化け物、黒死牟は迫る大量の氷柱を前にして尚も平然としている。
全集中の呼吸により鬼の身体能力が爆発的に上昇。
刀を縦方向に振るった。
――月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間
ただの一振りで氷柱が全て砕け散る。
広範囲に縦横無尽の斬撃を放つ攻防一体の極めて優秀な技だ。
キラキラと氷の粒が舞う中を、黒死牟は駆け抜ける。
斬ったのはあくまで氷柱だけで、デェムシュへ刃は届いていない。
しかしむざむざと近付かせてはくれまいとも確信している。
黒死牟を阻み、全身を襤褸切れに変えるべく地面から大量の氷柱が生え出した。
広範囲に縦横無尽の斬撃を放つ攻防一体の極めて優秀な技だ。
キラキラと氷の粒が舞う中を、黒死牟は駆け抜ける。
斬ったのはあくまで氷柱だけで、デェムシュへ刃は届いていない。
しかしむざむざと近付かせてはくれまいとも確信している。
黒死牟を阻み、全身を襤褸切れに変えるべく地面から大量の氷柱が生え出した。
「生憎だが……」
――月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月
「この手の術には……慣れている……」
脳裏に空虚な笑みを思い浮かべつつ、刀を振るう。
生み出されたのは楕円形の、現代人ならば回転鋸を髣髴とさせる斬撃。
それが二つ横に並び、凍った地面ごと氷柱を斬り刻む。
辺り一面に飛び散った氷の粒により、またもやデェムシュの視界が封じられた。
鬱陶しいとばかりにシュイムを振り回し吹き飛ばす。
瞬く間に視界が晴れ、
生み出されたのは楕円形の、現代人ならば回転鋸を髣髴とさせる斬撃。
それが二つ横に並び、凍った地面ごと氷柱を斬り刻む。
辺り一面に飛び散った氷の粒により、またもやデェムシュの視界が封じられた。
鬱陶しいとばかりにシュイムを振り回し吹き飛ばす。
瞬く間に視界が晴れ、
「――ッ!?グオオ!!」
間近に迫った巨大な嘴に突き飛ばされた。
シュイムを盾にしダメージこそ防いだが、突然の衝撃に背中から地面に倒れる。
フェムシンムである自分が猿に倒れる様を見せた。
このような無様を何時までも晒すなど自分自身が許せない。
弾かれたように立ち上がり、怪鳥を従えた小娘を睨む。
シュイムを盾にしダメージこそ防いだが、突然の衝撃に背中から地面に倒れる。
フェムシンムである自分が猿に倒れる様を見せた。
このような無様を何時までも晒すなど自分自身が許せない。
弾かれたように立ち上がり、怪鳥を従えた小娘を睨む。
(この…猿ドモがああああ…!!!)
何たる屈辱。
自分の攻撃を悉く打ち破る六眼の化け物も、要所要所で小賢しい真似をする小娘も、絶対に生かしてはおけない。
自分の攻撃を悉く打ち破る六眼の化け物も、要所要所で小賢しい真似をする小娘も、絶対に生かしてはおけない。
いろはには黒死牟のような剣術も無ければ、人外の身体能力も無い。
だがやれる事ならばある。
神浜市を訪れ、やちよ達と知り合ってからはいろは一人で戦う場面はほとんど無かった。
みかづき荘の皆だったり、ももこ達のチームだったり、黒江とだったり、見滝原の魔法少女とだったり。
そういった場面が多々あった為か、いろはは誰かと共に戦う際の立ち回りというものに非常に慣れている。
加えてやちよを始めとして近接戦を得意とする魔法少女が周りに多かったのも影響しており、前に出て刀を振るう黒死牟とでもどのように動けば良いかが瞬時に判断出来たのだ。
だがやれる事ならばある。
神浜市を訪れ、やちよ達と知り合ってからはいろは一人で戦う場面はほとんど無かった。
みかづき荘の皆だったり、ももこ達のチームだったり、黒江とだったり、見滝原の魔法少女とだったり。
そういった場面が多々あった為か、いろはは誰かと共に戦う際の立ち回りというものに非常に慣れている。
加えてやちよを始めとして近接戦を得意とする魔法少女が周りに多かったのも影響しており、前に出て刀を振るう黒死牟とでもどのように動けば良いかが瞬時に判断出来たのだ。
「ッ!?オノレ……!!!」
猿どもへシュイムを振り被ろうとし、だが何かに気付いたように身を震わせる。
怒りをぶつけるように咆えると体を霧状に変化させ一気に上昇。
これまでのように敵の周囲を飛んで攻撃する為ではない、戦闘から撤退する為だ。
ゲーム開始直後の承太郎・一海との戦闘、間を開けずに行った結芽・城之内との戦闘。
そして此度の戦闘とデェムシュはこれまでロクに休みもせず、感情のままに暴れ回って来た。
オーバーロードの肉体ならば人間以上に無理が効くとは言っても、流石に限度がある。
度重なる戦闘で蓄積した疲労と、傷も癒えぬままの連戦によりここに来て響き出すダメージの数々。
よって自ら退く事を選択した。
怒りをぶつけるように咆えると体を霧状に変化させ一気に上昇。
これまでのように敵の周囲を飛んで攻撃する為ではない、戦闘から撤退する為だ。
ゲーム開始直後の承太郎・一海との戦闘、間を開けずに行った結芽・城之内との戦闘。
そして此度の戦闘とデェムシュはこれまでロクに休みもせず、感情のままに暴れ回って来た。
オーバーロードの肉体ならば人間以上に無理が効くとは言っても、流石に限度がある。
度重なる戦闘で蓄積した疲労と、傷も癒えぬままの連戦によりここに来て響き出すダメージの数々。
よって自ら退く事を選択した。
(コノ俺が、猿ドモ相手に尻尾を巻いテ逃ゲルだとォ…!!!)
合理的な判断だろうがデェムシュからしたら屈辱としか言いようが無い。
無論、撤退の必要性を全く理解していない訳では無いが、それでもやはり耐え難い。
今は本当に忌々しいが退く、だがこのままでは絶対に済まさないと殺意を練り固める。
無論、撤退の必要性を全く理解していない訳では無いが、それでもやはり耐え難い。
今は本当に忌々しいが退く、だがこのままでは絶対に済まさないと殺意を練り固める。
「なニィっ!?」
しかし今回は、相手の方にこそ逃がす気は無かったらしい。
デェムシュがいる地上よりも遥かに高い位置へ、同じく飛び上がった異形。
沈黙のドッペルを飛翔させたいろはと、怪鳥の頭部に立った黒死牟である。
デェムシュがいる地上よりも遥かに高い位置へ、同じく飛び上がった異形。
沈黙のドッペルを飛翔させたいろはと、怪鳥の頭部に立った黒死牟である。
「貴様ラ……!」
歯があれば抑えきれぬ怒りでガチガチと打ち鳴らしていただろう。
デェムシュが何に対してそこまで怒りを覚えているかへ、最初から興味の無い黒死牟は無言で構える。
だが今のデェムシュは体を霧状に変化させている。
通常の斬撃は無意味であり、せめてもの悪足掻きでまた強風でも巻き起こす気なのか。
デェムシュが何に対してそこまで怒りを覚えているかへ、最初から興味の無い黒死牟は無言で構える。
だが今のデェムシュは体を霧状に変化させている。
通常の斬撃は無意味であり、せめてもの悪足掻きでまた強風でも巻き起こす気なのか。
愚かしい真似だと最後に嗤おうとし、ゾクリとデェムシュの体を冷たいものが走った。
今の自分に物理攻撃は一切通じない。それは向こうも承知のはず。
違う、この男が見ているのは霧と化した体ではない。
霧で覆い隠した、自分を縛る忌々しい枷。
今の自分に物理攻撃は一切通じない。それは向こうも承知のはず。
違う、この男が見ているのは霧と化した体ではない。
霧で覆い隠した、自分を縛る忌々しい枷。
透き通る世界を通し見ても、今のデェムシュの体は気体以外の何者でもない。
しかし唯一、霧以外の物が存在した。
体を霧に変化させてもどんな仕掛けなのか、外せなかった物。
全参加者に装着された、檀黎斗に命を握られた証。
首輪である。
しかし唯一、霧以外の物が存在した。
体を霧に変化させてもどんな仕掛けなのか、外せなかった物。
全参加者に装着された、檀黎斗に命を握られた証。
首輪である。
「ヌ、おオオオオ!!」
怒りと焦りでデェムシュは叫ぶ。
霧に変えた体の奥へ奥へと隠した首輪の位置を、この男は正しく認識している。
これを攻撃されるのが非常にマズい事は、デェムシュにだって分かった。
首輪の強度が具体的にどれくらいなのかは知らない。
檀黎斗らの手による以外の方法で爆破が可能かどうかだって不明。
だがコレは、肉体を変化させる能力を以てしても外せないこれに衝撃を与えられ爆発すれば、オーバーロードであろうと死は免れない。
霧に変えた体の奥へ奥へと隠した首輪の位置を、この男は正しく認識している。
これを攻撃されるのが非常にマズい事は、デェムシュにだって分かった。
首輪の強度が具体的にどれくらいなのかは知らない。
檀黎斗らの手による以外の方法で爆破が可能かどうかだって不明。
だがコレは、肉体を変化させる能力を以てしても外せないこれに衝撃を与えられ爆発すれば、オーバーロードであろうと死は免れない。
焦燥に駆られ実体化、シュイムを翳し防御の構えを取ったデェムシュは見た。
先程の数倍はあろう程に肥大化した刀身と、歪な枝のように刃を生やした大剣が振り抜かれるのを。
先程の数倍はあろう程に肥大化した刀身と、歪な枝のように刃を生やした大剣が振り抜かれるのを。
――月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾
龍の尾が振るわれたと錯覚しかねない、強力無比な一撃。
シュイムを翳しても到底防ぎ切れない傷が刻まれる。
シュイムを翳しても到底防ぎ切れない傷が刻まれる。
デェムシュには最早怨嗟の声を上げる事すら叶わない。
巨大な斬撃に呑まれながら吹き飛ばされ、やがてその姿は夜の闇へと消えていった。
巨大な斬撃に呑まれながら吹き飛ばされ、やがてその姿は夜の闇へと消えていった。