平行世界の自分と別れた海馬(原)は暫く驚愕していたが、放送が始まると前には思考を切り替えた。
彼はアテムという存在に固執し、やがて冥界へ辿り着くはずの男である。
アテムとは未来へのロードを全速前進で突き進んできた海馬瀬人が、それでも過去に囚われてしまう程の存在なのだ。
彼はアテムという存在に固執し、やがて冥界へ辿り着くはずの男である。
アテムとは未来へのロードを全速前進で突き進んできた海馬瀬人が、それでも過去に囚われてしまう程の存在なのだ。
過去は一筋の足跡であり、過ぎ去った過去など何の意味も持たない――以前海馬はそんな言葉を口にしたことがある。
だから平行世界の海馬(ア)はもう一人の自分に不快感を覚えた。
そしてだからこそ武藤遊戯がアテムに勝利したという事実を平行世界の自分に聞いた海馬(原)は驚愕し、放心状態になったのだ。
だから平行世界の海馬(ア)はもう一人の自分に不快感を覚えた。
そしてだからこそ武藤遊戯がアテムに勝利したという事実を平行世界の自分に聞いた海馬(原)は驚愕し、放心状態になったのだ。
しかしいつまでもそんな言葉に心を囚われる海馬じゃない。
あのアテムが遊戯に負けるなどとは思えない。それも三体の神を同時に相手してなど――到底、信じることが出来ないような情報。
あのアテムが遊戯に負けるなどとは思えない。それも三体の神を同時に相手してなど――到底、信じることが出来ないような情報。
――だが情報源は平行世界の自分。海馬瀬人だ。
情報源がもう一人の自分じゃなければくだらん戯言だと切り捨てただろうが、自分がそんなくだらぬ嘘をつくことはない。
言葉を交わした時間こそ短いが、アレは間違いなく平行世界の自分自身だと確信した。
情報源がもう一人の自分じゃなければくだらん戯言だと切り捨てただろうが、自分がそんなくだらぬ嘘をつくことはない。
言葉を交わした時間こそ短いが、アレは間違いなく平行世界の自分自身だと確信した。
ならば彼の言葉に嘘は混じっていないのだろう。信じ難いことだが、彼の世界では本当に遊戯がアテムを倒したという可能性が高い。
誤解や勘違いでアテムが遊戯に負けたと思い込んでいる可能性も否定は出来ないが――なんならその方が海馬としては納得出来るのだが。
しかし自分を信じている彼だからこそ、平行世界の自分がそんな誤解や勘違いに惑わされる姿を想像することもまた難しい。
しかし自分を信じている彼だからこそ、平行世界の自分がそんな誤解や勘違いに惑わされる姿を想像することもまた難しい。
――ならばその答えはデュエルの中で見つけるしかない。
(――遊戯。平行世界の貴様が本当にアテムを倒したのならば、俺にその強さを示してみせるがいい)
平行世界の自分の言葉の真偽を確認するために導き出された手段はシンプル極まりないものだ。
遊戯がアテムを倒すほどの決闘者だというのならばこのゲームで彼を見つけ出し、その実力を見極めるまでのこと。
たとえ平行世界の自分の言葉であっても彼の突き進むロードを遮ることは出来ない。
遊戯がアテムを倒すほどの決闘者だというのならばこのゲームで彼を見つけ出し、その実力を見極めるまでのこと。
たとえ平行世界の自分の言葉であっても彼の突き進むロードを遮ることは出来ない。
――放送が始まる頃には海馬の心は元に戻っていた。
マジック&ウィザーズのモンスターや磯野――そして遂に姿を現した神を名乗るゲームマスターの放送を冷静に見届ける。
マジック&ウィザーズのモンスターや磯野――そして遂に姿を現した神を名乗るゲームマスターの放送を冷静に見届ける。
「こんな悪趣味極まりないゲームを開発した身で神を名乗るか、ゲームマスターよ。くだらぬことを考える神がいたものだ」
放送を見た後の第一声がソレだった。
檀黎斗という男に対する評価が彼の中で決まった瞬間でもある。
檀黎斗という男に対する評価が彼の中で決まった瞬間でもある。
ちなみに海馬自身も過去にDEATH-Tという死のアトラクションを作り、理不尽にも遊戯達に参加させるということもしたのだが――そこら辺の過去を気にする性格でもない。
ブルーアイズのために所有者を自殺に追い込んだりもしたが、マインドクラッシュされて以降はこういった類のクズを許せない性格になっている。
ブルーアイズのために所有者を自殺に追い込んだりもしたが、マインドクラッシュされて以降はこういった類のクズを許せない性格になっている。
色々とツッコミどころがあるかもしれないが、過去などに囚われず未来へのロードを突き進む。それが海馬瀬人という男である。
そんな海馬でもアテムという過ぎ去った過去だけには固執してしまっているのだが――それもまた仕方のないことだろう。アテムとは海馬にとって強い宿命で結び付けられた相手なのだから。
アテムとの闘いに終わりはないと――そう思っていたのだから。
そんな海馬でもアテムという過ぎ去った過去だけには固執してしまっているのだが――それもまた仕方のないことだろう。アテムとは海馬にとって強い宿命で結び付けられた相手なのだから。
アテムとの闘いに終わりはないと――そう思っていたのだから。
そしてなにより遊戯が覚悟を示し、アテムに勝利した闘いの儀――それを見届けられなかったことが平行世界の海馬との最も大きな違いだろう。
さて。それはともかく、海馬は放送を見終えた。
これがデスゲームだというのは想定の範囲内――というかとっくに理解していたことだ。今更驚くほどでもない。
自分やアテムをくだらぬゲームのテストプレイに参加させたことには若干の苛立ちを覚えるが、まあ良いだろう。
ゲームマスターは究極のゲームだのとほざいているが、これについては微塵も賛同する気にもならない。
これがデスゲームだというのは想定の範囲内――というかとっくに理解していたことだ。今更驚くほどでもない。
自分やアテムをくだらぬゲームのテストプレイに参加させたことには若干の苛立ちを覚えるが、まあ良いだろう。
ゲームマスターは究極のゲームだのとほざいているが、これについては微塵も賛同する気にもならない。
しかしルールを用意し、バランス調整までしていることから檀黎斗がゲームに対して多少なりとも真摯に向き合おうとしていることもわかる。
死ぬとしても単純な殺し合いではなくゲームで死ね――ということだろう。
海馬も過去にオレを殺すならカードで殺せだのと口にしてきた。それほどまでにカードゲームに対する想いが強い決闘者だ。
だから殺し合いではなくゲームで死ねという檀黎斗の思想自体には一定の理解を示す。
ルールを整備して、バランス調整をするということは彼が本気で殺し合いではなくデスゲームを望んでいる証だ。
死ぬとしても単純な殺し合いではなくゲームで死ね――ということだろう。
海馬も過去にオレを殺すならカードで殺せだのと口にしてきた。それほどまでにカードゲームに対する想いが強い決闘者だ。
だから殺し合いではなくゲームで死ねという檀黎斗の思想自体には一定の理解を示す。
ルールを整備して、バランス調整をするということは彼が本気で殺し合いではなくデスゲームを望んでいる証だ。
だがそれでも海馬は悪趣味極まりないくだらぬゲームだと断言した。
それには当然、様々な理由が存在するのだが――なにより彼が気に食わないのは闘うための牙も、意志も持たない子供の命が残酷にも散らされたことだ。
それには当然、様々な理由が存在するのだが――なにより彼が気に食わないのは闘うための牙も、意志も持たない子供の命が残酷にも散らされたことだ。
ゲームとは互いに闘う意志があってこそ成り立つもの。だがモニターに映し出された子供は強引に参加させられ、闘うことを強制されたようにしか見えない。
そして無力な子供はこの理不尽に抗うことも出来ず、命を散らした。これはもはやゲームなどではなく、一方的な惨殺だ。
そして無力な子供はこの理不尽に抗うことも出来ず、命を散らした。これはもはやゲームなどではなく、一方的な惨殺だ。
――過去にDEATH-Tを行った海馬が言えたことじゃないかもしれないが、檀黎斗という人間は腐り切っている。
葛葉紘汰のように闘うための牙を持ち、己が意志でゲームマスターと決闘するならばまだ良い。
だが理不尽にプレイヤーとして選ばれ、命を散らした子供も居る。そもそも海馬自身も自ら望んでゲームに参加したわけじゃなく、いつの間にか巻き込まれていたのだ。
だが理不尽にプレイヤーとして選ばれ、命を散らした子供も居る。そもそも海馬自身も自ら望んでゲームに参加したわけじゃなく、いつの間にか巻き込まれていたのだ。
これをゲームだのと言い切るには無理があるし、闘う意志のない者まで参加させる理由もわからない。
しかもあんな子供まで――神を自称するクズの手によって未来を奪われた。
あの見た目からして、モクバと同じくらいの年頃だろうか。
いつか海馬ランドへ遊びに来たかもしれない。もしくは既に海馬ランドに遊びに来たことがあるかもしれない未来ある子供が理不尽にも命を落とした。
しかもあんな子供まで――神を自称するクズの手によって未来を奪われた。
あの見た目からして、モクバと同じくらいの年頃だろうか。
いつか海馬ランドへ遊びに来たかもしれない。もしくは既に海馬ランドに遊びに来たことがあるかもしれない未来ある子供が理不尽にも命を落とした。
その他、首輪を爆破させられて死亡したアユミという少女。
運試しのゲームという理不尽極まりない方法で殺されたプレイヤー達。
そのどれもが神を名乗るにはなんとも愚かで、外道過ぎる行為だ。
こんな男を神などと認めるつもりはない。……このような愚行をしていなくとも、海馬は彼を神とは認めなかっただろうが。
運試しのゲームという理不尽極まりない方法で殺されたプレイヤー達。
そのどれもが神を名乗るにはなんとも愚かで、外道過ぎる行為だ。
こんな男を神などと認めるつもりはない。……このような愚行をしていなくとも、海馬は彼を神とは認めなかっただろうが。
そしてなによりこんなものをゲームと認めるつもりもない。ゲームはゲームでも、とんでもないクソゲーだ。
これをゲーム、決闘だなどと烏滸がましいにも程がある。
これをゲーム、決闘だなどと烏滸がましいにも程がある。
「首を洗って待っているがいい、檀黎斗よ。貴様がこのくだらぬゲームにオレを参加させたこと、存分に後悔させてやろう!」
平行世界の遊戯は三体の神を相手にし、遊戯に勝利した。
ならば海馬がこの程度の神を粉砕出来ぬ道理などない。当然、遊戯もまた同じだ。
名簿に遊戯の名が記されていることは確認済み。アテムの名がないということは、彼らが別離する前の状態で参加させたか。或いは別離後でも支給品として遊戯にアテムが眠る千年パズルでも渡したのか。
ならば海馬がこの程度の神を粉砕出来ぬ道理などない。当然、遊戯もまた同じだ。
名簿に遊戯の名が記されていることは確認済み。アテムの名がないということは、彼らが別離する前の状態で参加させたか。或いは別離後でも支給品として遊戯にアテムが眠る千年パズルでも渡したのか。
どちらにせよ、武藤遊戯は参加している。
凡骨こと城之内も参加しているようだが――本田が呼び出されていた時点で、彼らが参加しているのも必然的か。
そして海馬は城之内を凡骨と呼んでいるが――マリク戦で彼の勇姿を見届け、決闘者だと認めた。
凡骨こと城之内も参加しているようだが――本田が呼び出されていた時点で、彼らが参加しているのも必然的か。
そして海馬は城之内を凡骨と呼んでいるが――マリク戦で彼の勇姿を見届け、決闘者だと認めた。
もちろん城之内本人にそんな言葉をくれてやる気はないが、彼もまた誇り高き決闘者。遊戯共々、このくだらぬゲームを終わらせようと凡骨なりに精一杯に足掻くだろう。
(他にオレの知っている決闘者の名は無いが――このゲームは明らかに決闘を重要な要素として組み込んでいる。別の世界から未知の決闘者がやってきている可能性も高いだろう……)
バクラやマリクの名は記されていないが、他の世界から様々な強豪決闘者が招かれている可能性は大いにある。
ゲームを粉砕しようと抗う者もいれば、他人を殺してでも願いを叶えようとする輩もいるかもしれない。グールズのような腐りきった連中が招かれている可能性もある。
ゲームを粉砕しようと抗う者もいれば、他人を殺してでも願いを叶えようとする輩もいるかもしれない。グールズのような腐りきった連中が招かれている可能性もある。
前者は好きに抗うが良いが――後者を発見した場合、自らの手で粉砕する。
第一目標はゲームマスターの撃破だ。だがその道中にグールズのようなクズや殺人者――DEATH-Tにあった殺人の館(マーダーズマンション)に住まうチョップマンのようなマーダーが存在した場合も当然、叩き潰すのみ。
第一目標はゲームマスターの撃破だ。だがその道中にグールズのようなクズや殺人者――DEATH-Tにあった殺人の館(マーダーズマンション)に住まうチョップマンのようなマーダーが存在した場合も当然、叩き潰すのみ。
無論、あの子供を殺した金髪の男もこの手で粉砕してみせる所存だ。
あの殺し方を見るに彼は決闘者ではないようだが、関係ない。海馬にはカードの剣があり、その腕には絶対的な自信がある。
信頼するブルーアイズをデッキの中から抜き取るという愚策を警戒して念のためにデッキを確認したが、どうやら健在のようだ。
あの殺し方を見るに彼は決闘者ではないようだが、関係ない。海馬にはカードの剣があり、その腕には絶対的な自信がある。
信頼するブルーアイズをデッキの中から抜き取るという愚策を警戒して念のためにデッキを確認したが、どうやら健在のようだ。
しかし皮肉な話だが、このゲームの参加者がマジック&ウィザーズのモンスターをあれほど造作もなく破壊するほどフィジカルに優れた存在が居ることを確認出来たのは大きいだろう。相手がフィジカル面に優れている可能性を考慮して立ち回ることもまたこの決闘では重要らしい。
そしてあの少女のように力もなく、何らかの理由で殺人者(マーダー)に成り下がったわけでもないプレイヤーが居た場合――
(もしもあの子供のようなプレイヤーに遭遇した時は……状況が状況だ。保護することも検討してやろう)
そういうことは遊戯やアテム、城之内などに任せたいが――自分が突き放した結果、理不尽に命を散らされるというのも気分が良いものではない。
もちろん人は選ぶ。マーダーでなくとも生き残るために他人を利用しようとする小賢しい輩は論外だ。
もちろん人は選ぶ。マーダーでなくとも生き残るために他人を利用しようとする小賢しい輩は論外だ。
過去を振り切ることが出来ず、アテムに固執する海馬瀬人は神を自称する男を粉砕せんと行動を開始する。
アテムと決着をつけるのは、全てが終わった後だ。
平行世界の武藤遊戯が三体の神を相手にアテムと闘い、勝利したというのなら――自分は手始めにこの自称神を倒してやろう。
アテムと決着をつけるのは、全てが終わった後だ。
平行世界の武藤遊戯が三体の神を相手にアテムと闘い、勝利したというのなら――自分は手始めにこの自称神を倒してやろう。
そして器の遊戯が本当にそれほど強いのならば、このゲームでその実力を示してみせるが良い。
なんともくだらぬゲームで檀黎斗のことは心から軽蔑するが――もう一人の自分が語っていた器の遊戯と実力というものには興味がある。
なんともくだらぬゲームで檀黎斗のことは心から軽蔑するが――もう一人の自分が語っていた器の遊戯と実力というものには興味がある。
(――オレの期待を裏切るなよ、遊戯!)
【一日目/深夜/G-2】
【海馬瀬人@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:海馬瀬人のデッキ&新型デュエルディスク@遊☆戯☆王THE DARK SIDE OF DIMENSIONS
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:この決闘を粉砕したのち、アテムと決着をつける
1:檀黎斗と闘うための方法を模索する。あの自称神はこのオレが粉砕してくれるわ!
2:首輪を解除したい
3:アテム及び共に存在しているであろう遊戯を探す。そうそう死ぬとも思えないが、お友達が死んで心に隙が生まれれば万が一があるかもしれない 。器の遊戯の実力にも興味がある。当然凡骨は放置だ
4:残酷にも殺された少女(条河麻耶)のように闘う意志も牙も持たぬ参加者と遭遇した場合、保護も検討してやろう。
[備考]
※参戦時期は本編終了後からTHE DARK SIDE OF DIMENSIONS開始前のどこか
【海馬瀬人@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:海馬瀬人のデッキ&新型デュエルディスク@遊☆戯☆王THE DARK SIDE OF DIMENSIONS
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:この決闘を粉砕したのち、アテムと決着をつける
1:檀黎斗と闘うための方法を模索する。あの自称神はこのオレが粉砕してくれるわ!
2:首輪を解除したい
3:アテム及び共に存在しているであろう遊戯を探す。そうそう死ぬとも思えないが、お友達が死んで心に隙が生まれれば万が一があるかもしれない 。器の遊戯の実力にも興味がある。当然凡骨は放置だ
4:残酷にも殺された少女(条河麻耶)のように闘う意志も牙も持たぬ参加者と遭遇した場合、保護も検討してやろう。
[備考]
※参戦時期は本編終了後からTHE DARK SIDE OF DIMENSIONS開始前のどこか
023:天命の聖剣 | 投下順 | 025:神様、キサマを殺したい。 |
時系列順 | ||
18:二重召喚 | 海馬瀬人@遊☆戯☆王 | 057:青き眼の激臨 |