大天空寺を発見し、さてここからどう動くか。
周辺エリアの探索を引き続き行う。
やちよとの合流場所まで戻る。
地下で見付けたパソコンのデータをもっと詳しく調査。
選択肢は複数あれど、選べるのは内の一つのみ。
因みにエボルトの監視を投げ出せない以上、当たり前だが二手に分かれて行動は最初から考えなかった。
周辺エリアの探索を引き続き行う。
やちよとの合流場所まで戻る。
地下で見付けたパソコンのデータをもっと詳しく調査。
選択肢は複数あれど、選べるのは内の一つのみ。
因みにエボルトの監視を投げ出せない以上、当たり前だが二手に分かれて行動は最初から考えなかった。
考え込んだ末、ややあって顔を上げる。
地べたに腰を下ろしこちらの答えを待つ仮の協力者、因縁深い地球外生命体と目が合う。
戦兎の良く知る喫茶店のマスターではない、本人にはまだ直接会った事の無い少女の姿。
一体こいつは環いろはの擬態をいつまで続けるつもりなのだろうか。
ため息を押し殺し、淡いパープルの瞳へ答えを告げた。
地べたに腰を下ろしこちらの答えを待つ仮の協力者、因縁深い地球外生命体と目が合う。
戦兎の良く知る喫茶店のマスターではない、本人にはまだ直接会った事の無い少女の姿。
一体こいつは環いろはの擬態をいつまで続けるつもりなのだろうか。
ため息を押し殺し、淡いパープルの瞳へ答えを告げた。
「もう少し近くのエリアを調べに行くぞ」
「へぇ?別に構わねぇが、後になってやっぱりこの寺に残りたかっただの言い出すのは無しだぜ?」
「ガキじゃないんだから言う訳ねぇだろ」
「へぇ?別に構わねぇが、後になってやっぱりこの寺に残りたかっただの言い出すのは無しだぜ?」
「ガキじゃないんだから言う訳ねぇだろ」
からかいの言葉を冷たく切り捨てられ、わざとらしく目元を拭う少女の姿をしたナニカ。
小馬鹿にした態度は嫌と言う程見慣れたものだ、今更一つ一つに反応するのは時間の無駄。
ツレないねぇとの呟きを無視して、出発の準備を行う。
小馬鹿にした態度は嫌と言う程見慣れたものだ、今更一つ一つに反応するのは時間の無駄。
ツレないねぇとの呟きを無視して、出発の準備を行う。
バイクが手に入ったとはいえ、時間的にもそろそろやちよの元へ向かった方が良いのは戦兎自身理解していた。
だけどもし、付近のエリアで助けを求める参加者がいるのだとしたら。
放送で殺された者達のように、間に合わない事態を引き起こすのは御免だ。
加えて、やちよの探し人であるいろはが見付かる可能性もゼロではない。
だけどもし、付近のエリアで助けを求める参加者がいるのだとしたら。
放送で殺された者達のように、間に合わない事態を引き起こすのは御免だ。
加えて、やちよの探し人であるいろはが見付かる可能性もゼロではない。
「ああ待った、行く前に一応この場所に見張りを立てといた方が良いだろ」
本堂を後にし石造りの階段を降りた時、何かを思い付いたようにエボルトが言う。
一時的に離れるが大天空寺は首輪解除の設備が備わった施設。
戦兎はもとより、エボルトとしてもここは今後の拠点なりに役立てたい場所だ。
自分達が不在の間に他の参加者が訪れても、何ら不思議は無い。
それが殺し合いに反対の者ならばともかく、優勝を目指す輩であれば問題である。
ゲームに勝ち残り願いを叶えたい参加者にとって、首輪を外し主催者打倒を目指す者達は邪魔な存在。
首輪解除を阻止すべく、施設の破壊に出られては困るのだ。
一時的に離れるが大天空寺は首輪解除の設備が備わった施設。
戦兎はもとより、エボルトとしてもここは今後の拠点なりに役立てたい場所だ。
自分達が不在の間に他の参加者が訪れても、何ら不思議は無い。
それが殺し合いに反対の者ならばともかく、優勝を目指す輩であれば問題である。
ゲームに勝ち残り願いを叶えたい参加者にとって、首輪を外し主催者打倒を目指す者達は邪魔な存在。
首輪解除を阻止すべく、施設の破壊に出られては困るのだ。
と言ったエボルトの意見は戦兎も理解出来る。
しかし見張りとはどういう意味かを尋ねる前に、タイミング悪くNPCのモンスターに遭遇。
出発前に出鼻を挫かれ戦兎が顔を顰める一方で、丁度良いとばかりにエボルトはトランスチームガンを向けた。
しかし見張りとはどういう意味かを尋ねる前に、タイミング悪くNPCのモンスターに遭遇。
出発前に出鼻を挫かれ戦兎が顔を顰める一方で、丁度良いとばかりにエボルトはトランスチームガンを向けた。
「そっちから集まってくれてありがとよ」
銃口からネビュラガスを噴射、あっという間に低級モンスター数体はスマッシュへ変貌。
一度こうなってはファウストの人体実験を受けた者達同様、エボルトの操り人形と化す。
攻撃どころか身動ぎもせずに不動の体勢を取り、命令を待っている。
一度こうなってはファウストの人体実験を受けた者達同様、エボルトの操り人形と化す。
攻撃どころか身動ぎもせずに不動の体勢を取り、命令を待っている。
「悪くない使い道だろ?腐る程会場にいるってんなら、有効活用しなきゃなァ」
ヘラヘラと笑うエボルトへ、戦兎はどうにも渋い顔を浮かべてしまう。
旧世界でスマッシュに変えられた人々を大勢見て来ただけに、内心は複雑だ。
あくまで主催者の用意したNPCのモンスター、そう分かっているから特別反論もしないが。
旧世界でスマッシュに変えられた人々を大勢見て来ただけに、内心は複雑だ。
あくまで主催者の用意したNPCのモンスター、そう分かっているから特別反論もしないが。
パソコンを奪ったり設備の破壊に出る者が来たら攻撃、そうでなければ手を出すな。
命令を受けたスマッシュ達が本堂へ消えるのを最後まで見送らず、手に入れたばかりのバイクを取り出す。
戦兎が運転を担当するのに異論は無く、後ろに乗り出発準備完了。
まさか万丈や美空ではなくエボルトと相乗りするとは思わなかった、というか実現してほしくなかった。
当の本人は桜色の髪を揺らし、少女の顔であっけらかんと告げる。
命令を受けたスマッシュ達が本堂へ消えるのを最後まで見送らず、手に入れたばかりのバイクを取り出す。
戦兎が運転を担当するのに異論は無く、後ろに乗り出発準備完了。
まさか万丈や美空ではなくエボルトと相乗りするとは思わなかった、というか実現してほしくなかった。
当の本人は桜色の髪を揺らし、少女の顔であっけらかんと告げる。
「良かったじゃねぇか。万丈と違って女っ気のないお前が二ケツなんざ、こういう機会でもなけりゃ実現しないだろうよ」
「大きなお世話なんだよ。大体お前を後ろに乗せて喜べるかっての」
「大きなお世話なんだよ。大体お前を後ろに乗せて喜べるかっての」
辛辣な返しもそこそこにエンジンを掛け出発。
マシンビルダーとは違うも性能は引けを取らず、徒歩とは段違いのスピードで草原を駆けた。
マシンビルダーとは違うも性能は引けを取らず、徒歩とは段違いのスピードで草原を駆けた。
道中現れたNPCを華麗に避け、或いはエボルトが撃ち殺し事無きを得て進み続ける。
もっと早くにこういった足が手に入っていればと思うも、過ぎた事故仕方ない。
もっと早くにこういった足が手に入っていればと思うも、過ぎた事故仕方ない。
エリア同士の境目を越え街らしき場所へ近付いた頃、視界が捉えたのは戦闘中の一団。
嘲りと共に悪意を吐き出す剣士と、命懸けで食らい付く4人組。
どちらに味方するかなど誰に問うまでも無い。
バイクを急停止させるや間髪入れずに変身を実行、装甲を纏った時には共に武器へフルボトルを装填。
ゲーム開始直後エボルに襲われて以来数時間ぶりに、参加者同士の戦闘へ参戦を果たした。
嘲りと共に悪意を吐き出す剣士と、命懸けで食らい付く4人組。
どちらに味方するかなど誰に問うまでも無い。
バイクを急停止させるや間髪入れずに変身を実行、装甲を纏った時には共に武器へフルボトルを装填。
ゲーム開始直後エボルに襲われて以来数時間ぶりに、参加者同士の戦闘へ参戦を果たした。
◆◆◆
「仮面ライダー…それって鎧武、葛葉絋太さんが言ってた…?」
神に立ち向かった青年の最期は記憶に新しい。
この場にはマコトとニノン、そしてマサツグ様と既に三人のライダーが存在する。
だが仮面ライダーという名称を他者の口から聞くのは放送以来。
自分達を助けてくれた事からも、乱入者二人は絋太と同じようなヒーローなのか。
學の声色には自然と期待が籠り出す。
この場にはマコトとニノン、そしてマサツグ様と既に三人のライダーが存在する。
だが仮面ライダーという名称を他者の口から聞くのは放送以来。
自分達を助けてくれた事からも、乱入者二人は絋太と同じようなヒーローなのか。
學の声色には自然と期待が籠り出す。
残念ながら片方は善側とは程遠い男。
とはいえ少なくとも今は學達へ害を齎す気は無く、目下最大の脅威へ意識を向ける。
とはいえ少なくとも今は學達へ害を齎す気は無く、目下最大の脅威へ意識を向ける。
『初めて見るライダーシステムが三つ。で、よりにもよって一番おっかないのが敵に回ってると。来て早々貧乏くじ引かされた気分だなこりゃ』
「文句言ってないで集中しろ。…仮面ライダーの力を悪用する奴を、黙って見過ごせるかよ」
「文句言ってないで集中しろ。…仮面ライダーの力を悪用する奴を、黙って見過ごせるかよ」
隣から聞こえる愚痴をピシャリと黙らせ、ドリルクラッシャーをブレードモードにチェンジ。
戦兎にとって最も使い慣れたビルド専用の武器も、果たしてどこまで通じるやら。
煩わし気に睨み付ける紺色のライダーはエボルトに言われるまでもなく、強敵だと分かる。
発せられる嫌なプレッシャーは、旧世界で仮面ライダーエボル相手に感じ取ったのとほぼ同じだ。
戦兎にとって最も使い慣れたビルド専用の武器も、果たしてどこまで通じるやら。
煩わし気に睨み付ける紺色のライダーはエボルトに言われるまでもなく、強敵だと分かる。
発せられる嫌なプレッシャーは、旧世界で仮面ライダーエボル相手に感じ取ったのとほぼ同じだ。
「其方達は…いや、申し訳ないが自己紹介は後にさせてくれ。まずは救援感謝する」
「畏まらなくても良いって。詳しい事情はともかく、あいつが敵で合ってるか?」
「畏まらなくても良いって。詳しい事情はともかく、あいつが敵で合ってるか?」
モニカもまた戦兎達の登場に驚きこそしたが、敵意が無いと分かれば今はそれで問題無し。
まだ自己紹介も出来てない相手を巻き込むのは気が引けるも、そう言ってられる状況ではない。
不謹慎なのは十分承知、それでもこちら側へ味方してくれる者が現れたのには安堵を隠せなかった。
他の三人も敵でないと理解し、共闘を受け入れる。
まだ自己紹介も出来てない相手を巻き込むのは気が引けるも、そう言ってられる状況ではない。
不謹慎なのは十分承知、それでもこちら側へ味方してくれる者が現れたのには安堵を隠せなかった。
他の三人も敵でないと理解し、共闘を受け入れる。
「なあアンタ、もしかして仮面ライダーゴーストの仲間だったりするか?」
「っ、何故お前がタケルの事を…」
「あー、詳しいことは後で話す。今はこれを受け取ってくれ」
「っ、何故お前がタケルの事を…」
「あー、詳しいことは後で話す。今はこれを受け取ってくれ」
カラーリングや仮面の意匠は違えど青いライダー…スペクターはゴーストと似ている。
何より腹部のベルトが同じな為、ゴーストの関係者と直ぐに気付けた。
ゴーストドライバーの持ち主がゲームに乗っている可能性も考慮していたが、どうやら杞憂で済んだらしい。
それなら、大天空寺で見付けたアイテムの譲渡に躊躇は無い。
思わぬ所で取り戻した力に驚きを見せたのは一瞬、感謝の言葉を告げ即座に起動。
何より腹部のベルトが同じな為、ゴーストの関係者と直ぐに気付けた。
ゴーストドライバーの持ち主がゲームに乗っている可能性も考慮していたが、どうやら杞憂で済んだらしい。
それなら、大天空寺で見付けたアイテムの譲渡に躊躇は無い。
思わぬ所で取り戻した力に驚きを見せたのは一瞬、感謝の言葉を告げ即座に起動。
『アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!』
ドライバーから歌うように電子音声が流れ、変身に必要なもう一つのガジェットが動き出す。
停止してあったブルーペイントのバイク、マシンフーディーが変形。
スペクターの周囲を、重量を感じさせない軽やかさで飛び回った。
停止してあったブルーペイントのバイク、マシンフーディーが変形。
スペクターの周囲を、重量を感じさせない軽やかさで飛び回った。
『カイガン!フーディーニ!マジイイジャン!すげえマジシャン!』
ロイヤルブルーのパーカーを纏い、背面部には変形済みのバイクを装着。
各部へ垂らした強固な鎖と同様に、マスク部分の意匠も絡み合ったチェーンへと変化。
仮面ライダースペクター・フーディーニ魂。
脱出王の異名を持つ英雄の試練を乗り越えた、深海マコトの強さの証。
各部へ垂らした強固な鎖と同様に、マスク部分の意匠も絡み合ったチェーンへと変化。
仮面ライダースペクター・フーディーニ魂。
脱出王の異名を持つ英雄の試練を乗り越えた、深海マコトの強さの証。
「その様子じゃ、元はアンタが使ってた物みたいだな」
「感謝する、だが片付いたらタケルの話を聞かせて貰う」
「感謝する、だが片付いたらタケルの話を聞かせて貰う」
英雄眼魂の一つを取り戻したからといって、敵の脅威に変わりは無い。
スペクターの新たな変身、助太刀に現れた戦兎達。
戦場の変化を目の当たりにして尚も、マサツグ様に動揺は皆無。
どこまでも尊大で下らなそうに、だけど隠せない苛立ちを乗せて侮蔑を吐き出す。
スペクターの新たな変身、助太刀に現れた戦兎達。
戦場の変化を目の当たりにして尚も、マサツグ様に動揺は皆無。
どこまでも尊大で下らなそうに、だけど隠せない苛立ちを乗せて侮蔑を吐き出す。
「羽虫の元に集まるのは同じく馬鹿で救いようのない羽虫か。どこまでも俺を不愉快にさせるクズどもが」
偽善者どもの所には次から次へと助けが現れ、反吐が出る仲良しごっこに興じる。
自分の時には来なかったくせに、本当に助けを求めてる者には手を差し伸べなかったくせに。
雑魚が何人集まっても雑魚、分かっていても喉奥からせり上がる不快感は一向に消えてくれなかった。
自分の時には来なかったくせに、本当に助けを求めてる者には手を差し伸べなかったくせに。
雑魚が何人集まっても雑魚、分かっていても喉奥からせり上がる不快感は一向に消えてくれなかった。
『不機嫌にさせちまって悪かったよ。そら、詫びの品を受け取れ!』
何が理由で機嫌が急降下したかに一切興味は無く、ブラッドスタークは障害の排除へ動いた。
気怠い仕草からは想像も付かない、電光石火の動作で右腕を跳ね上げトリガーを引く。
高熱硬化弾が狙うのは全て急所、西部劇のガンマン顔負けの早撃ちと正確な狙いがマサツグ様を襲う。
気怠い仕草からは想像も付かない、電光石火の動作で右腕を跳ね上げトリガーを引く。
高熱硬化弾が狙うのは全て急所、西部劇のガンマン顔負けの早撃ちと正確な狙いがマサツグ様を襲う。
「っ!いけまセーン!」
敵を攻撃するのは間違ってない、但しマサツグ様相手では悪手以外の何物にも非ず。
ニノンの焦りへ疑問を抱く余裕も与えられず、ブラッドスタークへ迫る濃密な死の気配。
激しく損壊しながらも切れ味は衰えない、二本の聖剣が飛来。
高熱硬化弾を一発残らず叩き落とし、次はお前の番とばかりに撃った本人へ刃が唸る。
ニノンの焦りへ疑問を抱く余裕も与えられず、ブラッドスタークへ迫る濃密な死の気配。
激しく損壊しながらも切れ味は衰えない、二本の聖剣が飛来。
高熱硬化弾を一発残らず叩き落とし、次はお前の番とばかりに撃った本人へ刃が唸る。
『おっとォ!?どんな手品だこいつは!』
助けに来たつもりが呆気なく退場、つまらない末路を遠ざけたのはブラッドスタークの機能とエボルト自身の戦闘技能。
動体センサーが飛来物を探知し、間髪入れずに左手はバルブ付きの短剣を振るう。
スチームブレードと翠風が弾かれ合い、一先ず無傷でやり過ごす。
動体センサーが飛来物を探知し、間髪入れずに左手はバルブ付きの短剣を振るう。
スチームブレードと翠風が弾かれ合い、一先ず無傷でやり過ごす。
「油断は禁物デース!こっちが仕掛ければ、今みたいに邪魔されてしまいマース!」
『ご忠告ありがとよ。出来ればもっと早くに言って欲しかったがねぇ』
「ソーリー!でもストライクハンド無しという訳では――」
『ご忠告ありがとよ。出来ればもっと早くに言って欲しかったがねぇ』
「ソーリー!でもストライクハンド無しという訳では――」
ニノン達へのストレスを内包するマサツグ様は、会話を最後まで許してくれる寛容さを持ち合わせない。
夜空色の甲冑が身体能力を増強させ、瞬間移動を疑うスピードでニノンの元へ到達。
聞くに堪えない騒音を吐き散らす口を永遠に黙らせようと、十聖刃が風を切り首を狙った。
負の感情が剣の腕をより研ぎ澄ます、しかしニノンとて大人しくやられる気は毛頭ない。
満身創痍の身を気力で無理やり動かし、交差させた両腕で聖剣を防ぐ。
耐久性が上がったネクロムだからこそ両断にはならない。
夜空色の甲冑が身体能力を増強させ、瞬間移動を疑うスピードでニノンの元へ到達。
聞くに堪えない騒音を吐き散らす口を永遠に黙らせようと、十聖刃が風を切り首を狙った。
負の感情が剣の腕をより研ぎ澄ます、しかしニノンとて大人しくやられる気は毛頭ない。
満身創痍の身を気力で無理やり動かし、交差させた両腕で聖剣を防ぐ。
耐久性が上がったネクロムだからこそ両断にはならない。
「なんてザマだよ偽善者。立ってるだけでもゼーハー言ってる雑魚虫の分際で、見苦しいったらないな」
十聖刃の刀身もネクロム・友情バースト魂の腕部装甲も、簡単に破壊される代物じゃあない。
勝負を分けるのは変身者の状態だ。
片やほぼ万全、片やいつ倒れても不思議は無い。
どちらが押されるかなど言うまでもなく、あっという間にニノンの体勢が崩れる。
このまま一気に真っ二つ、それは断じて認めないと仲間達が駆け出す。
勝負を分けるのは変身者の状態だ。
片やほぼ万全、片やいつ倒れても不思議は無い。
どちらが押されるかなど言うまでもなく、あっという間にニノンの体勢が崩れる。
このまま一気に真っ二つ、それは断じて認めないと仲間達が駆け出す。
「っ!?今度は俺の方かよ…!」
助け出そうと武器片手に突っ込んだは良いものの、「守る」スキルは当然の如く機能。
翠風をドリルクラッシャーで防ぐビルドを追い越し、我が身を弾丸に変え突撃するのはモニカ。
友を追い詰める敵へ切っ先を向け疾走、大型の魔物が相手でも抵抗を許さない速さだ。
マサツグ様からしたら欠伸が出るくらいに対処は簡単、馬鹿がと嗤い自身も剣を振るった。
翠風をドリルクラッシャーで防ぐビルドを追い越し、我が身を弾丸に変え突撃するのはモニカ。
友を追い詰める敵へ切っ先を向け疾走、大型の魔物が相手でも抵抗を許さない速さだ。
マサツグ様からしたら欠伸が出るくらいに対処は簡単、馬鹿がと嗤い自身も剣を振るった。
「伏せろモニカ!」
刀身を叩き剣の狙いを外せば後は首を落とすのみ。
煌めく刃が細く白い首に食い込む寸前、声に従い身を屈める。
1秒前までモニカの頭があった場所を駆ける鉄の鞭。
十聖刃を巻き取らんとフーディーニ魂の固有武装、タイトゥンチェーンが射出された。
煌めく刃が細く白い首に食い込む寸前、声に従い身を屈める。
1秒前までモニカの頭があった場所を駆ける鉄の鞭。
十聖刃を巻き取らんとフーディーニ魂の固有武装、タイトゥンチェーンが射出された。
「無駄な努力って言葉を知らないのか?羽虫め」
眼魔を捕える強固な鎖もマサツグ様には脆い糸同然。
無駄の無さと速さを兼ね備えた剣が鎖を斬り落とし、破片が空しく地面へ散らばる。
簡単に勝負が付かないとはスペクターとて分かっている。
フーディーニ眼魂が新たな鎖を生成し、数十本一気に殺到。
目障りな蝿を掃うかの気安さで防ぐも手数の多さで勝ったのか、一本が腕へ巻き付く。
無駄の無さと速さを兼ね備えた剣が鎖を斬り落とし、破片が空しく地面へ散らばる。
簡単に勝負が付かないとはスペクターとて分かっている。
フーディーニ眼魂が新たな鎖を生成し、数十本一気に殺到。
目障りな蝿を掃うかの気安さで防ぐも手数の多さで勝ったのか、一本が腕へ巻き付く。
「また雑魚の悪足掻きをっ!?」
力任せに引き千切ろうとし、腕に痛みが走った。
タイトゥンチェーンはエネルギーショックを与え、装甲内部から敵にダメージを与える。
肉体破壊されるレベルの傷でないとはいえ、痛みは痛みだ。
動きを止めたマサツグ様目掛け、再生成したばかりの鎖を伸ばす。
タイトゥンチェーンはエネルギーショックを与え、装甲内部から敵にダメージを与える。
肉体破壊されるレベルの傷でないとはいえ、痛みは痛みだ。
動きを止めたマサツグ様目掛け、再生成したばかりの鎖を伸ばす。
「調子の乗るなゴミが!」
見下していた相手からの思わぬ反撃へ苛立ちが加速。
自身の油断が原因でもあるが、それを認める少年ではない。
拘束されたままの腕に力を籠め、タイトゥンチェーン諸共スペクターを引き寄せる。
背部ユニットを含めたスペクターの重量は300kgを超えるも、クロスセイバーの膂力なら風船と同じだ。
自身の油断が原因でもあるが、それを認める少年ではない。
拘束されたままの腕に力を籠め、タイトゥンチェーン諸共スペクターを引き寄せる。
背部ユニットを含めたスペクターの重量は300kgを超えるも、クロスセイバーの膂力なら風船と同じだ。
足が地から浮き、僅かな間宙へ無防備な身を晒す。
命を刈り取る刃が頭部を叩き割らんと振り下ろされ、瞬間スペクターの姿が消失。
フーディーニ魂の固有能力、脱出マジックはこの地でも変わらず使用可能だった。
敵を見失おうと慌てる必要は無く、銀色のバイザーが力の流れを捉える。
頭上からの敵意に「守る」スキルが発動、地面に転がる翠風が射出。
戦闘開始当初ならともかく既に見飽きた攻撃だ、厄介であれど対処はそこまで難しくない。
数本の鎖に絡め取られ、抵抗を完全に封じられた。
命を刈り取る刃が頭部を叩き割らんと振り下ろされ、瞬間スペクターの姿が消失。
フーディーニ魂の固有能力、脱出マジックはこの地でも変わらず使用可能だった。
敵を見失おうと慌てる必要は無く、銀色のバイザーが力の流れを捉える。
頭上からの敵意に「守る」スキルが発動、地面に転がる翠風が射出。
戦闘開始当初ならともかく既に見飽きた攻撃だ、厄介であれど対処はそこまで難しくない。
数本の鎖に絡め取られ、抵抗を完全に封じられた。
『Ready GO!』
『VOLTEC BREAK!』
これ以上聖剣の妨害を受けるのは全員御免被る。
跳躍し腕を振るったビルドの手には、ブレードモードのドリルクラッシャー。
フルボトルの装填により切れ味と刃の回転数を強化し、二本の聖剣へ纏めて叩きつけた。
ただでさえ損壊が激しいのに「守る」スキルで酷使されたのだ、耐久性にも限界が訪れ遂に砕け散る。
跳躍し腕を振るったビルドの手には、ブレードモードのドリルクラッシャー。
フルボトルの装填により切れ味と刃の回転数を強化し、二本の聖剣へ纏めて叩きつけた。
ただでさえ損壊が激しいのに「守る」スキルで酷使されたのだ、耐久性にも限界が訪れ遂に砕け散る。
翠風の破壊を最後まで見届けず、スペクターは空中から攻撃を開始。
射撃形態のガンガンハンドと無数の鎖がマサツグ様を狙い、同じタイミングで地上の者達も動いた。
左右からモニカとニノンが仕掛け、倒すべき敵へ己が刃と拳の距離が近付く。
射撃形態のガンガンハンドと無数の鎖がマサツグ様を狙い、同じタイミングで地上の者達も動いた。
左右からモニカとニノンが仕掛け、倒すべき敵へ己が刃と拳の距離が近付く。
「やれやれ、この程度で勝ち誇るとは本気でお前らの間抜けぶりには呆れて物も言えんな」
嘲笑は負け惜しみなどではなく本心から。
自信満々の態度が嘘では無いと証明するかの如く、マサツグ様のデイパックから剣が飛び出した。
標的に選ばれたのはスペクター、鎖を切り裂きエネルギー弾を消し飛ばして刃が目前へと迫る。
刀身が胴体を撫でる前に地上から高熱硬化弾が放たれ、剣の勢いが低下。
得られたほんの少しの猶予を無駄にはせず、ガンガンハンドで叩き落とす。
自信満々の態度が嘘では無いと証明するかの如く、マサツグ様のデイパックから剣が飛び出した。
標的に選ばれたのはスペクター、鎖を切り裂きエネルギー弾を消し飛ばして刃が目前へと迫る。
刀身が胴体を撫でる前に地上から高熱硬化弾が放たれ、剣の勢いが低下。
得られたほんの少しの猶予を無駄にはせず、ガンガンハンドで叩き落とす。
攻撃が届かないのはスペクターだけでなく、少女達もだ。
モニカの聖剣は弾き返され、ニノンの拳はいなされる。
装甲を纏っているとは思えない軽やかな動きで翻弄し、反対に二人へ蹴りが飛ぶ。
刀身と腕部装甲でダメージを抑えるが、腕の痺れに自然と呻き声が漏れた。
モニカの聖剣は弾き返され、ニノンの拳はいなされる。
装甲を纏っているとは思えない軽やかな動きで翻弄し、反対に二人へ蹴りが飛ぶ。
刀身と腕部装甲でダメージを抑えるが、腕の痺れに自然と呻き声が漏れた。
「お前もだ。最近は正義のヒーロー(笑)ごっこが流行ってるのか?弱いくせに痛々しいんだよ」
「好きに言ってろ。生憎、安い挑発で諦めるならヒーローなんてやってないからな!」
「好きに言ってろ。生憎、安い挑発で諦めるならヒーローなんてやってないからな!」
回転刃が火花を散らすが、翠風と違い十聖刃には僅かな亀裂すら入らない。
武器の破壊は現実的じゃ無いと実感、使い手本人を直接叩くべきだ。
ラビットフルボトルの成分がビルドの動作を数秒間だけ高速化、聖剣の防御をすり抜けた。
武器の破壊は現実的じゃ無いと実感、使い手本人を直接叩くべきだ。
ラビットフルボトルの成分がビルドの動作を数秒間だけ高速化、聖剣の防御をすり抜けた。
「ぐあっ!?」
自分自身を守りたいと思った時にこそ、「守る」スキルは効果を最大限に発揮する。
スペクターに撃ち落とされた剣が電動鋸を思わせる速さで回転し、主に手を出す不埒者を妨害。
血飛沫代わりの火花を散らして後退したビルドを鼻で笑い、己の手で追撃を行う。
スペクターに撃ち落とされた剣が電動鋸を思わせる速さで回転し、主に手を出す不埒者を妨害。
血飛沫代わりの火花を散らして後退したビルドを鼻で笑い、己の手で追撃を行う。
『おいおい、遊び相手ならこっちにもいるのを忘れないで欲しいね』
誰よりも利用価値を認める人間(ヒーロー)に、こんな場面で死なれては困る。
極めて利己的ながら、ブラッドスタークの援護射撃はグッドタイミング。
ビルドを斬るつもりだった剣は、高熱硬化弾を払い落とすのに使われた。
銃内部のユニットが絶えず銃弾を生成し発射、だが一発すらマサツグ様は己が身へ掠らせない。
極めて利己的ながら、ブラッドスタークの援護射撃はグッドタイミング。
ビルドを斬るつもりだった剣は、高熱硬化弾を払い落とすのに使われた。
銃内部のユニットが絶えず銃弾を生成し発射、だが一発すらマサツグ様は己が身へ掠らせない。
「て、てやぁっ…!」
余裕を崩さぬままなれど、マサツグ様はブラッドスタークに意識を割いている真っ最中。
少しでも攻撃を当てるチャンスと剣を振り被り、背後から駆け寄るのは學だ。
女装趣味という少しばかり変わった世界に身を置きはしても、荒事とは遠い場所で生きる。
そんな學もマサツグ様との戦闘が影響し、仲間からのフォローを待たずとも自分で攻撃の機会を考えるくらいには戦いの空気へ慣れた。
自分の体とは思えない驚異的な身体能力も、モニカ達の助けになれるなら心強い。
少しでも攻撃を当てるチャンスと剣を振り被り、背後から駆け寄るのは學だ。
女装趣味という少しばかり変わった世界に身を置きはしても、荒事とは遠い場所で生きる。
そんな學もマサツグ様との戦闘が影響し、仲間からのフォローを待たずとも自分で攻撃の機会を考えるくらいには戦いの空気へ慣れた。
自分の体とは思えない驚異的な身体能力も、モニカ達の助けになれるなら心強い。
だからといってマサツグ様に有効打を与えられるかと聞かれれば、違うと言わざるを得ない。
チラとだけ見やり左腕を振り払う、動作一つで剣共々學を殴り飛ばした。
靴に蟻が一匹くっ付いた、その程度の煩わしさ。
チラとだけ見やり左腕を振り払う、動作一つで剣共々學を殴り飛ばした。
靴に蟻が一匹くっ付いた、その程度の煩わしさ。
『んん…?』
首を傾げるブラッドスタークを気にする者はおらず、學を慌ててモニカが受け止める。
自身の傷に響く等は二の次で、地面への激突を阻止し無事を確かめる。
自身の傷に響く等は二の次で、地面への激突を阻止し無事を確かめる。
「大丈夫かマナブ!?」
「な、何とかね…モニカちゃんが受け止めてくれたし。それに…剣も離さなかったよ」
「な、何とかね…モニカちゃんが受け止めてくれたし。それに…剣も離さなかったよ」
今回は緋々色金も手元に有り、二度も同じ失敗は繰り返さなかった。
ホッと一息つく暇は最初から無い、金属同士を叩きつけ合う音に意識を戻される。
ホッと一息つく暇は最初から無い、金属同士を叩きつけ合う音に意識を戻される。
「守る」スキルの妨害をニノンが引き受け、二体のライダーが接近戦を仕掛ける。
飛来する剣をスペクターが対処、ビルドの援護を受けたニノンが拳を叩き込む。
前衛と後衛を変え、あの手この手で何度攻撃を行ったか。
全てがマサツグ様には届かない、嘲笑と共に手痛い反撃を受けるばかり。
飛来する剣をスペクターが対処、ビルドの援護を受けたニノンが拳を叩き込む。
前衛と後衛を変え、あの手この手で何度攻撃を行ったか。
全てがマサツグ様には届かない、嘲笑と共に手痛い反撃を受けるばかり。
「一周回って感心し兼ねない強さだな……だからといって、勝ちは譲らん…!」
元から仲間達に戦いを押し付け、高みの見物に徹する悪趣味はない。
疲労が圧し掛かる肉体に喝を入れ、再度闘争へ身を投げ入れる。
激化の一途を辿る戦場の空気へ我を忘れないよう、柄を握る力を強め學もモニカの後に続き――
疲労が圧し掛かる肉体に喝を入れ、再度闘争へ身を投げ入れる。
激化の一途を辿る戦場の空気へ我を忘れないよう、柄を握る力を強め學もモニカの後に続き――
『ちょっと待った。いきなりだが、俺に手を貸す気はあるか?』
決意新たに踏み出しかけた一歩は、蛇の声に絡め取られた。
○
こちらが複数なのに対しマサツグ様一人。
数では圧倒的に勝り、しかもほとんどが戦闘経験者。
普通ならば負ける要素の無い、一方的なリンチにしかならない。
あくまで『普通』ならば。
数では圧倒的に勝り、しかもほとんどが戦闘経験者。
普通ならば負ける要素の無い、一方的なリンチにしかならない。
あくまで『普通』ならば。
「ぐっ…まだ強くなるのか…!?」
鎖の乱舞を掻い潜り、ガンガンハンドの猛攻をものともしない。
敵の強さは十分に分かっているつもりだったが、どうやら認識が甘かったらしい。
苦し紛れの防御態勢すら間に合わず、十聖刃が胸部へ一文字を書く。
スペクターの装甲から散る火花の量が、一撃の威力が如何程かを物語っていた。
敵の強さは十分に分かっているつもりだったが、どうやら認識が甘かったらしい。
苦し紛れの防御態勢すら間に合わず、十聖刃が胸部へ一文字を書く。
スペクターの装甲から散る火花の量が、一撃の威力が如何程かを物語っていた。
「手裏剣を受けるがいいデース!シュシュシュシュシュ!」
「どこにも手裏剣要素が無いだろそれ!?」
「どこにも手裏剣要素が無いだろそれ!?」
眼魂から引き出したエネルギーを光弾として発射、隣ではガンモードのドリルクラッシャーによる射撃。
遠距離攻撃だろうと関係無い、地上に光が走ったかと思えば刀身がビルド達の胴を疾走。
スペクター同様に怯み、その間を縫ってモニカが剣を叩き込む。
遠距離攻撃だろうと関係無い、地上に光が走ったかと思えば刀身がビルド達の胴を疾走。
スペクター同様に怯み、その間を縫ってモニカが剣を叩き込む。
「またか…!」
当たり前だろとでも言いた気に、モニカを強制的に止める剣。
手痛い一撃を受けた「守る」スキルを再び食らうつもりは無い、聖剣をぶつけ勢いを相殺。
次いで襲い来る十聖刃も全身を無理やり動かし回避、それが仇となり一瞬の硬直。
手痛い一撃を受けた「守る」スキルを再び食らうつもりは無い、聖剣をぶつけ勢いを相殺。
次いで襲い来る十聖刃も全身を無理やり動かし回避、それが仇となり一瞬の硬直。
「うあっ!?」
拳を避ける事は叶わずに地面を転がり、突っ伏して血を吐き出す。
傷の痛みもそろそろ笑い飛ばせなくなって来た。
見ればニノンも戦意とは裏腹に動きが鈍り始めており、限界の近さを嫌でも伝えて来る。
傷の痛みもそろそろ笑い飛ばせなくなって来た。
見ればニノンも戦意とは裏腹に動きが鈍り始めており、限界の近さを嫌でも伝えて来る。
「ふう、いい加減大人しく死んでもらいたいものだな。あんまりしぶと過ぎると、まるで俺がイジメでもしてるみたいじゃないか」
這い蹲る者達を見下ろすマサツグ様がどんな顔かは、仮面越しでも全員に分かる。
手足をもがれ痙攣する昆虫を見て笑う悪童と同じだ。
徹底的に見下され、しかし戦士達の心は未だに折れておらず。
武器を杖代わりに立ち上がる様を、侮蔑と嫌悪を籠めた瞳で射抜く。
手足をもがれ痙攣する昆虫を見て笑う悪童と同じだ。
徹底的に見下され、しかし戦士達の心は未だに折れておらず。
武器を杖代わりに立ち上がる様を、侮蔑と嫌悪を籠めた瞳で射抜く。
「やれやれ、脳みその無い羽虫どもに何を言っても無駄だったな」
勝てもしないのにしつこく食い下がり、力の差も理解出来ずヒーロー気取りで助けに入る。
その結果がこれだ。
馬鹿は死んでも治らない、治る見込みの無い馬鹿を生かす理由は無い。
十聖刃のエンブレムに手を添え、見せ付けるようにスライドし、
その結果がこれだ。
馬鹿は死んでも治らない、治る見込みの無い馬鹿を生かす理由は無い。
十聖刃のエンブレムに手を添え、見せ付けるようにスライドし、
「おーおー、随分好き放題やってくれたねぇ」
ピタリと動きを止め、声の主を睨み付けた。
別に攻撃を中止したのに深い理由は無い、ただ初めて聞く声にまた邪魔者かと思ったから。
マサツグ様の視線が捉えたのは、やはり見た事の無い顔。
制服のスカートと桜色の髪を揺らし、友人と街でバッタリ会ったかのような軽い足取りで近付く。
緊張感を欠片も持ち合わせない少女に眉を顰め、ふと右手の銃に気が付いた。
確かアレはついさっき邪魔をしに現れた、二人組の片割れが撃ったのと同じではないか。
ということは赤い装甲服の正体こそ、能天気な態度の少女。
声は男だったがボイスチェンジャーでも使ったのか、どうでも良いが。
別に攻撃を中止したのに深い理由は無い、ただ初めて聞く声にまた邪魔者かと思ったから。
マサツグ様の視線が捉えたのは、やはり見た事の無い顔。
制服のスカートと桜色の髪を揺らし、友人と街でバッタリ会ったかのような軽い足取りで近付く。
緊張感を欠片も持ち合わせない少女に眉を顰め、ふと右手の銃に気が付いた。
確かアレはついさっき邪魔をしに現れた、二人組の片割れが撃ったのと同じではないか。
ということは赤い装甲服の正体こそ、能天気な態度の少女。
声は男だったがボイスチェンジャーでも使ったのか、どうでも良いが。
「わざわざ自分から生身に戻るのは、馬鹿以外に何も言葉が見付からないな。それとも、力の差をようやく理解出来たか?」
「…ま、否定はしねぇよ。こいつでお前さんに勝つのは、幾ら何でも自殺行為としか思えないんでね」
「…ま、否定はしねぇよ。こいつでお前さんに勝つのは、幾ら何でも自殺行為としか思えないんでね」
呆れを含んだ目で手元の銃を眺める少女…環いろはに擬態中のエボルトへ、マサツグ様以外は困惑するばかりだ。
一体何を考えているのかを問い質そうとし、ビルドのカメラアイに向こうから視線が合う。
僅かに目を細めチロリと舌を出す、悪戯っぽい表情に察する他ない。
「この男、またしてもロクでもない手に出るつもりだ」と。
一体何を考えているのかを問い質そうとし、ビルドのカメラアイに向こうから視線が合う。
僅かに目を細めチロリと舌を出す、悪戯っぽい表情に察する他ない。
「この男、またしてもロクでもない手に出るつもりだ」と。
「そうか…ははっ、どうやらそこで転がってるヒーロー(笑)だの友情(激寒)だのほざく痛い連中よりは、多少マシらしいな」
「お褒めに与り光栄だよ。勝てないって分かって喧嘩売るような馬鹿と一緒くたにされちゃ、こっちも堪んないからなァ。降参だ降参」
「お褒めに与り光栄だよ。勝てないって分かって喧嘩売るような馬鹿と一緒くたにされちゃ、こっちも堪んないからなァ。降参だ降参」
エボルトの内心を露知らず、マサツグ様は少しだけ機嫌を良くした。
このタイミングで変身を解き、わざわざ白旗をアピールする理由。
そんなもの一つしかない、自分だけは助けて欲しいとの懇願以外に考えられない。
このタイミングで変身を解き、わざわざ白旗をアピールする理由。
そんなもの一つしかない、自分だけは助けて欲しいとの懇願以外に考えられない。
後方に視線をくれてやれば、信じられないといった顔で立ち尽くす雑魚が一人。
裏切られたとショックを受けているのだろう、學の姿も愉快極まりない。
次から次へと邪魔が入り、その度に不愉快な戯言を聞く羽目になった。
だがどうだ、助けに来た内の一人はニノン達を見捨てたじゃあないか。
モニカは唇を噛み俯き、仮面で見えないがニノンも笑顔ではあるまい。
マコトも同じだ、顔を怒りに歪ませているのが手に取るように分かる。
散々イラつかせられた羽虫共が打ちのめされる光景は、全く持って最高としか言いようがない。
裏切られたとショックを受けているのだろう、學の姿も愉快極まりない。
次から次へと邪魔が入り、その度に不愉快な戯言を聞く羽目になった。
だがどうだ、助けに来た内の一人はニノン達を見捨てたじゃあないか。
モニカは唇を噛み俯き、仮面で見えないがニノンも笑顔ではあるまい。
マコトも同じだ、顔を怒りに歪ませているのが手に取るように分かる。
散々イラつかせられた羽虫共が打ちのめされる光景は、全く持って最高としか言いようがない。
自分を助けてくれなかった偽善者に相応しい報いだ。
殺す事に変わりは無いが、その前に馬鹿共の惨めな姿を見れて気分が良い。
王の座に就いた自分へ懲りずに食って掛かったミヤモトやヨシハラを、徹底的に言い負かしてやった時にも似た爽快感。
上機嫌のままで、何とも笑える光景を生み出した少女へ口を開く。
殺す事に変わりは無いが、その前に馬鹿共の惨めな姿を見れて気分が良い。
王の座に就いた自分へ懲りずに食って掛かったミヤモトやヨシハラを、徹底的に言い負かしてやった時にも似た爽快感。
上機嫌のままで、何とも笑える光景を生み出した少女へ口を開く。
「理解出来たのは結構だが、その言い方は気に入らないな。負けを認めて、助けて欲しいなら相応の謝罪の仕方があるだろう?」
「具体的には?」
「はぁ、一々説明しなきゃ分からんとは。やはり元が付いても雑魚虫どもの仲間か。
地に額を擦り付け、誠心誠意詫びる、土下座以外に何をやれと?ああ、勿論自分が人間だなんて思うなよ?
もっと早くに力の差を理解する事が出来なかった蛆虫と自分を戒めろ。そうすれば、虫から家畜程度にはランクアップさせても良い」
「具体的には?」
「はぁ、一々説明しなきゃ分からんとは。やはり元が付いても雑魚虫どもの仲間か。
地に額を擦り付け、誠心誠意詫びる、土下座以外に何をやれと?ああ、勿論自分が人間だなんて思うなよ?
もっと早くに力の差を理解する事が出来なかった蛆虫と自分を戒めろ。そうすれば、虫から家畜程度にはランクアップさせても良い」
小馬鹿にする態度で剣を突き付けての要求に、相手は暫し無言。
表情を消し、伽藍洞の瞳で銀のバイザーを見つめる。
やがて視線を外し、いやにゆっくりと天を仰ぎ、
表情を消し、伽藍洞の瞳で銀のバイザーを見つめる。
やがて視線を外し、いやにゆっくりと天を仰ぎ、
「成程ねぇ、そうやって見下されてきた訳か。教えてくれてありがとよ、別に知りたくも無かったけどなァ」
下手糞な芸しかできないピエロを見たような顔で、環いろはが生涯一度も浮かべる事の無い表情で。
さも楽し気にそう言った。
さも楽し気にそう言った。
「…何だと」
「戦ってる最中もずっとあーだこーだこっちを馬鹿にして、しかも内容は羽虫だゴミだとレパートリーに乏しいと来た。
随分同じ罵倒に拘るなと疑問に思ったんだが…蓋を開けりゃ答えは単純だったな」
「戦ってる最中もずっとあーだこーだこっちを馬鹿にして、しかも内容は羽虫だゴミだとレパートリーに乏しいと来た。
随分同じ罵倒に拘るなと疑問に思ったんだが…蓋を開けりゃ答えは単純だったな」
それ以上言うなと睨み付ける。
効果はゼロ。
効果はゼロ。
「昔、自分も同じ事を散々言われた口だろ?
それにそっちのお嬢ちゃん達、随分と嬲ったみたいじゃねぇか。お前がどんな扱いを受けたのか、察するのは難しくない。
今は強力なライダーシステムが手に入って?もう虐げられる立場じゃなくたった訳だ」
それにそっちのお嬢ちゃん達、随分と嬲ったみたいじゃねぇか。お前がどんな扱いを受けたのか、察するのは難しくない。
今は強力なライダーシステムが手に入って?もう虐げられる立場じゃなくたった訳だ」
余計な事は何もう言うなと怒りをぶつける。
効果はゼロ。
効果はゼロ。
「そんでだ。これ幸いとばかりに、昔自分がやられた事をそっくりそのまま無関係の奴らにやり出したと」
マサツグ様からの敵意、いや殺意がこれまで以上に膨れ上がる。
対峙中のエボルトも当然感じているが、一向に口は閉じられない。
対峙中のエボルトも当然感じているが、一向に口は閉じられない。
「虐げられて、力を持った途端に自分をこの世の頂点と勘違いし、何をやっても許されると思い込む」
ロクでもない、しかし心の弱い典型的な人間らしさ。
「俺はな、お前みたいな愛すべき、愚かな人間が…大好きなんだよ!!!ハハハハッ!!いやあ、俺とした事がすっかり忘れてたぜ」
人間は強い、二度に渡り自分を打ち倒したラブ&ピースのヒーロー達の手で思い知った。
その認識は変わらないし、キルバスへ向けた言葉に偽りは無い。
癪ではある、しかし桐生戦兎達の強さは認めている。
その認識は変わらないし、キルバスへ向けた言葉に偽りは無い。
癪ではある、しかし桐生戦兎達の強さは認めている。
だが全ての人間がヒーロー達のように、何度へし折られても再起する強靭な心を持つ訳ではない。
高圧的な態度を取りながら、追い詰められれば一変し命乞いに出た難波重三郎。
自分を欺く演技だったとはいえ、嘗ての主をあっさり裏切った内海成彰。
近頃は戦兎や万丈の影響でつい忘れ掛けていたが、そもそもの始まりは違う。
人間への見方が変わる切っ掛けを作ったのは、強き者ではない。
高圧的な態度を取りながら、追い詰められれば一変し命乞いに出た難波重三郎。
自分を欺く演技だったとはいえ、嘗ての主をあっさり裏切った内海成彰。
近頃は戦兎や万丈の影響でつい忘れ掛けていたが、そもそもの始まりは違う。
人間への見方が変わる切っ掛けを作ったのは、強き者ではない。
「お前のような道化こそ、人間は面白いと俺に教えてくれたんだよ!
聞こえてるか、檀黎斗!今だけ礼を言わなきゃならねぇ。こんなに笑える玩具と会わせてくれたんだからなァ!」
聞こえてるか、檀黎斗!今だけ礼を言わなきゃならねぇ。こんなに笑える玩具と会わせてくれたんだからなァ!」
狂気に彩られたエボルトの笑い声が響き渡る。
誰も、何も言わない、何も言えない。
ただ一人、ありったけの悪意をぶつけられた少年だけが己が内にドス黒いモノを宿らせる。
誰も、何も言わない、何も言えない。
ただ一人、ありったけの悪意をぶつけられた少年だけが己が内にドス黒いモノを宿らせる。
「ん?おいおい駄目だろ?玩具が持ち主の許可なく勝手に動いたら」
「――――――ッ!!!!!!!!!!!」
「――――――ッ!!!!!!!!!!!」
わざとらしく吹き出す少女の姿をした蛇。
限界は訪れ紺色の剣士は感情を爆発、余裕と共に挑発を行う様は見られない。
今この瞬間だけは、ニノンやモニカへの苛立ちも頭からごっそり抜け落ちた。
不快感や嫉妬程度では済まない、明確な憎悪を十聖刃に乗せる。
限界は訪れ紺色の剣士は感情を爆発、余裕と共に挑発を行う様は見られない。
今この瞬間だけは、ニノンやモニカへの苛立ちも頭からごっそり抜け落ちた。
不快感や嫉妬程度では済まない、明確な憎悪を十聖刃に乗せる。
「トラップカード発動!」
耳に届いたのは蚊の羽音にも似た声。
タイミングを同じくして、全身を包み込む何とも言えない感覚。
痛みは無い、言葉ではどう表現すべきかが分からない気持ち悪さ。
おかしな真似に出た相手を睨み、問い質すのが普通の反応だろう。
だが一度点いた火は消えず、体へ生じた奇怪な違和感も今のマサツグ様には些事以下。
嘗てのミヤモト達のように自分をコケにし嘲笑った、許し難き桜色の少女への制裁が最優先。
他の羽虫の排除は二の次で疾走、目に映るのはどこまでも憎たらしい笑み。
何かがおかしいと気付くだけの余裕は消え失せ、脳内はありとあらゆる手で少女を殺す光景に埋め尽くされた。
タイミングを同じくして、全身を包み込む何とも言えない感覚。
痛みは無い、言葉ではどう表現すべきかが分からない気持ち悪さ。
おかしな真似に出た相手を睨み、問い質すのが普通の反応だろう。
だが一度点いた火は消えず、体へ生じた奇怪な違和感も今のマサツグ様には些事以下。
嘗てのミヤモト達のように自分をコケにし嘲笑った、許し難き桜色の少女への制裁が最優先。
他の羽虫の排除は二の次で疾走、目に映るのはどこまでも憎たらしい笑み。
何かがおかしいと気付くだけの余裕は消え失せ、脳内はありとあらゆる手で少女を殺す光景に埋め尽くされた。
『Ready GO!』
『VOLTEC BREAK!』
今しがたの声とは別の方向から聞こえる、ハイテンションな男性の叫び。
タンクフルボトルを装填し、ドリルクラッシャーから破壊力を高めたエネルギー弾をビルドが撃つ。
単なる露悪趣味で挑発に出る程後先考えない男ではない、そう知っているが故にいつでも動ける準備は出来ていた。
高火力の銃撃もマサツグ様には脅威でも何でもなく、鬱陶しさ以外に感じるものはない。
足は止めずに横目でエネルギー弾を睨めば、剣が飛来し勝手に防いでくれる。
タンクフルボトルを装填し、ドリルクラッシャーから破壊力を高めたエネルギー弾をビルドが撃つ。
単なる露悪趣味で挑発に出る程後先考えない男ではない、そう知っているが故にいつでも動ける準備は出来ていた。
高火力の銃撃もマサツグ様には脅威でも何でもなく、鬱陶しさ以外に感じるものはない。
足は止めずに横目でエネルギー弾を睨めば、剣が飛来し勝手に防いでくれる。
「がぁっ!?」
疑いなく描いた数秒先の未来図は、無防備な胴体への衝撃で呆気なく潰えた。
錐もみ回転し吹き飛ぶ様はまるで空気を抜いた風船のよう。
錐もみ回転し吹き飛ぶ様はまるで空気を抜いた風船のよう。
字面を転がりうつ伏せに倒れるも、直ぐに起き上がる気配は無い。
憤怒一色に支配された頭は打って変わって、大量のクエスチョンマークが発生。
自分に何が起こったのか、何故『起こらなかったのか』が分からない。
疑問へ懇切丁寧に答えてくれる物好きはおらず、返答代わりに高熱硬化弾が群れを成して襲来。
顔を上げ、銃を撃った張本人へ「無駄だ」と吐き捨て、
憤怒一色に支配された頭は打って変わって、大量のクエスチョンマークが発生。
自分に何が起こったのか、何故『起こらなかったのか』が分からない。
疑問へ懇切丁寧に答えてくれる物好きはおらず、返答代わりに高熱硬化弾が群れを成して襲来。
顔を上げ、銃を撃った張本人へ「無駄だ」と吐き捨て、
「ぬぐっ!?」
装甲へ命中しては弾け、そこら中に火花の雨を撒き散らす。
一発一発はクロスセイバーの耐久性を超えられないが、数にものを言わせれば少しずつでもダメージは蓄積。
多少の痛みは噛み殺して起き上がり、十聖刃で片っ端から斬り落とした。
一発一発はクロスセイバーの耐久性を超えられないが、数にものを言わせれば少しずつでもダメージは蓄積。
多少の痛みは噛み殺して起き上がり、十聖刃で片っ端から斬り落とした。
「なん、だ、これは……」
愕然と呟き自分の体を見回すマサツグ様の様子は、とてもこれまでと一緒とは思えない。
わなわなと震えながら背後左右へ視線を往ったり来たり、ゼンマイの壊れた玩具染みた動作。
仮面の奥で見開いた目が捉えたのは二人。
いつの間にかカードらしき物を手に持った一番どうでもいい雑魚と、してやったと言わんばかりに笑う少女。
これを見れば馬鹿でも誰が原因か分かる。
わなわなと震えながら背後左右へ視線を往ったり来たり、ゼンマイの壊れた玩具染みた動作。
仮面の奥で見開いた目が捉えたのは二人。
いつの間にかカードらしき物を手に持った一番どうでもいい雑魚と、してやったと言わんばかりに笑う少女。
これを見れば馬鹿でも誰が原因か分かる。
「何を…した……」
歯が砕けんばかりに噛み締められ、声の震えには怒りと焦りが含まれた。
「小賢しいゴミ以下の虫けらどもめ…!俺に一体何をした!?」
「さあねぇ?地面に額を擦り付けて、俺に忠誠を誓うってんなら教えてやるよ」
「さあねぇ?地面に額を擦り付けて、俺に忠誠を誓うってんなら教えてやるよ」
熱砂の暴風にも等しい怒りを受け流し、エボルトは変わらぬ軽薄な言葉を投げ付ける。
彼らの様子へ學の頬には一筋の冷や汗が垂れつつも、作戦の成功に人知れず安堵の息を吐いた。
彼らの様子へ學の頬には一筋の冷や汗が垂れつつも、作戦の成功に人知れず安堵の息を吐いた。
學がエボルトから提案された作戦内容は至ってシンプル。
曰く、適当に挑発して相手の怒りを自分に向けさせるから、そのタイミングでカードを使えとのこと。
手渡されたのはエボルトの三つ目の支給品。
既に複数の参加者が手にし、異なる場面で活用され続けているデュエルモンスターズのカード。
ブレイクスルー・スキル。相手モンスターの効果を無効にするトラップカードである。
同封していた説明書によれば参加者相手にも有効らしく、マサツグ様の力を削ぐのに使えるやもしれぬと使用を決断。
しかし問題となるのは、使おうとした瞬間に剣の飛来…「守る」スキルで妨害される可能性。
万が一カードをバッサリ斬られれば、折角の有用なカードもただの燃えるゴミと化す。
曰く、適当に挑発して相手の怒りを自分に向けさせるから、そのタイミングでカードを使えとのこと。
手渡されたのはエボルトの三つ目の支給品。
既に複数の参加者が手にし、異なる場面で活用され続けているデュエルモンスターズのカード。
ブレイクスルー・スキル。相手モンスターの効果を無効にするトラップカードである。
同封していた説明書によれば参加者相手にも有効らしく、マサツグ様の力を削ぐのに使えるやもしれぬと使用を決断。
しかし問題となるのは、使おうとした瞬間に剣の飛来…「守る」スキルで妨害される可能性。
万が一カードをバッサリ斬られれば、折角の有用なカードもただの燃えるゴミと化す。
だから學に白羽の矢を立てた。
恐らく、敵は學を特に軽視し取るに足らない雑魚と見なしている。
他の者の攻撃は「守る」スキルで防いでるにも関わらず、學には力を使う価値無しとでも言うようにマサツグ様自身が軽くあしらった。
無論、もし成功すればマサツグ様からの敵意は大きく膨れ上がり危険も増す。
それに気付かない學ではない。
けれど少しでも戦いで役に立てるなら、モニカ達の負担を軽くできるならと承諾し提案を受け入れた。
恐らく、敵は學を特に軽視し取るに足らない雑魚と見なしている。
他の者の攻撃は「守る」スキルで防いでるにも関わらず、學には力を使う価値無しとでも言うようにマサツグ様自身が軽くあしらった。
無論、もし成功すればマサツグ様からの敵意は大きく膨れ上がり危険も増す。
それに気付かない學ではない。
けれど少しでも戦いで役に立てるなら、モニカ達の負担を軽くできるならと承諾し提案を受け入れた。
「守る」スキルはマサツグ様が自分を守りたいと思った時に効果を表す。
スキルを使わずとも問題無い、どうでもいい相手と見下す學には「守る」スキルも当然発動されない。
ニノンとの戦闘開始直後の時と同じだ。
故にエボルトには好都合、最も警戒が薄い學ならばカードを使っても「守る」スキルで妨害を受ける可能性は低いのだから。
後は學から手短に聞いたマサツグ様のこれまでの言動や様子から、特に怒りを誘い意識を引き付けられるような挑発を行った。
いろはの擬態を解かずにいたのも、年下の少女の外見で煽られた方が屈辱だろうと踏んだ為。
未だ直接会っていない少女への擬態は、石動やブラッドスタークの姿以上の効果を齎したようだ。
結果は成功と言って良い、剣が独りでに動きこちらを襲う気配は全く見られない。
異世界で手に入れたレアスキルはこの瞬間、名前だけのお飾りとなったのだ。
スキルを使わずとも問題無い、どうでもいい相手と見下す學には「守る」スキルも当然発動されない。
ニノンとの戦闘開始直後の時と同じだ。
故にエボルトには好都合、最も警戒が薄い學ならばカードを使っても「守る」スキルで妨害を受ける可能性は低いのだから。
後は學から手短に聞いたマサツグ様のこれまでの言動や様子から、特に怒りを誘い意識を引き付けられるような挑発を行った。
いろはの擬態を解かずにいたのも、年下の少女の外見で煽られた方が屈辱だろうと踏んだ為。
未だ直接会っていない少女への擬態は、石動やブラッドスタークの姿以上の効果を齎したようだ。
結果は成功と言って良い、剣が独りでに動きこちらを襲う気配は全く見られない。
異世界で手に入れたレアスキルはこの瞬間、名前だけのお飾りとなったのだ。
「ふざけるな雑魚虫ども…!地に這い蹲るしか能の無いゴミクズが、何をしたかと聞いてるんだ…!!」
怒りで顔を赤く染め、罵りをぶつけ問い質す。
真っ向から殺意を叩きつけられ、思わず學の全身が強張る。
ほんの数分前まであからさまに下へ見られていた、だがもう違う。
學はエボルトと並んでマサツグ様の多大な怒りを買ってしまった。
舐め腐った真似に出た害虫自身の命で、愚行の代償を払わせる。
真っ向から殺意を叩きつけられ、思わず學の全身が強張る。
ほんの数分前まであからさまに下へ見られていた、だがもう違う。
學はエボルトと並んでマサツグ様の多大な怒りを買ってしまった。
舐め腐った真似に出た害虫自身の命で、愚行の代償を払わせる。
怒りの感情はマサツグ様にブーストを掛け、苛烈極まりない剣術を発揮可能とする。
反応一つ認めず十聖刃で學の顔面に突きを繰り出し、しかし刀身より伝わる手応えは人体貫通とは全く別もの。
聖剣の脅威を退けられるのは、同じく聖剣を持つ學の仲間。
反応一つ認めず十聖刃で學の顔面に突きを繰り出し、しかし刀身より伝わる手応えは人体貫通とは全く別もの。
聖剣の脅威を退けられるのは、同じく聖剣を持つ學の仲間。
「性懲りも無く邪魔をする気か、偽善者のミジンコ女め!」
「当たり前だ!貴公が私の友へ剣を向けるなら、何度だって立ち塞がってやる!」
「当たり前だ!貴公が私の友へ剣を向けるなら、何度だって立ち塞がってやる!」
目まぐるしく変わる状況に少々置いてけぼりとなったが、學へ危機が迫りモニカもここで復帰を果たす。
細かい事はさておき、學達の策が功を為し敵の力が一つ封じられた。
それが分かれば問題無い、どのみちやることは戦って勝つ以外にない。
細かい事はさておき、學達の策が功を為し敵の力が一つ封じられた。
それが分かれば問題無い、どのみちやることは戦って勝つ以外にない。
「そういうことだったんデスネー!エネミーを欺くにはまずフレンドカラ!すっかり騙されまシタ!」
聖剣諸共圧し潰すべく力を籠めるマサツグ様へ、横合いから迫るニノンの拳。
「守る」スキルは機能せず、自力で対処する他ない。
舌打ち交じりに腕を翳し防御、衝撃は走るが痛みは薄い。
鍛え上げられたプレートアーマーを何重にも重ねた装甲は、強化フォームのネクロムでも突破困難だ。
「守る」スキルは機能せず、自力で対処する他ない。
舌打ち交じりに腕を翳し防御、衝撃は走るが痛みは薄い。
鍛え上げられたプレートアーマーを何重にも重ねた装甲は、強化フォームのネクロムでも突破困難だ。
『ガンガンミロー!ガンガンミロー!オメガスマッシュ!』
戦闘へ復帰したのは二人だけではない。
タイトゥンチェーンをガンガンハンドに巻き付け、打撃威力を強化。
両手が塞がったままのマサツグ様目掛け、スペクターの豪快な一撃が振るわれた。
タイトゥンチェーンをガンガンハンドに巻き付け、打撃威力を強化。
両手が塞がったままのマサツグ様目掛け、スペクターの豪快な一撃が振るわれた。
「無駄な足掻きだと何度も言わせるな!学習能力ゼロの出来損ないども!」
なれどこうも容易く討ち取られるなら、マサツグ様はとうの昔に敗北を余儀なくされている。
目障りな羽虫共への不快感が剣術の精度を引き上げ、一瞬で場が引っ繰り返った。
片足を軸にし腰の捻りを効かせた回転斬りで、三人纏めて薙ぎ払う。
腹立たしい抵抗に出ようと所詮雑魚は雑魚。
そう嘲笑う暇を与えてたまるかと、二方向から弾幕が張られた。
目障りな羽虫共への不快感が剣術の精度を引き上げ、一瞬で場が引っ繰り返った。
片足を軸にし腰の捻りを効かせた回転斬りで、三人纏めて薙ぎ払う。
腹立たしい抵抗に出ようと所詮雑魚は雑魚。
そう嘲笑う暇を与えてたまるかと、二方向から弾幕が張られた。
『その出来損ないに一杯食わされた奴が何を言っても、負け惜しみにしか聞こえないよなァ?戦兎ォ?』
「俺に振るんじゃないよ!いいから集中しとけ!」
「俺に振るんじゃないよ!いいから集中しとけ!」
いつまでも生身を晒すのは自殺行為に等しい。
ブラッドスタークへ素早く再変身し、ビルドと共にマサツグ様へ集中砲火を行う。
ブラッドスタークへ素早く再変身し、ビルドと共にマサツグ様へ集中砲火を行う。
「どいつもこいつも…雑魚の癖にいつまで楯突く気だ…!」
「守る」スキルが無効化された以上、両方共に自分で相手取らなくては。
幸いクロスセイバーの装甲には何ら変化無し。
どうせ当たっても大したダメージにはならないのだ、被弾は無視して早急に片方を仕留める。
まずはこうなる原因を作った内の一人。
縦横無尽に駆け翻弄、狙いを付け直すより先に十聖刃がブラッドスタークへと半円を描く。
幸いクロスセイバーの装甲には何ら変化無し。
どうせ当たっても大したダメージにはならないのだ、被弾は無視して早急に片方を仕留める。
まずはこうなる原因を作った内の一人。
縦横無尽に駆け翻弄、狙いを付け直すより先に十聖刃がブラッドスタークへと半円を描く。
『そんなにカッカするなよ。頭に血が上り過ぎて早死にするぜ?』
夜空色の聖剣が齎す死を阻むは、黄金の刀身。
本来の装備であるスチームブレードではない、機械仕掛けの大剣がブラッドスタークの手にあった。
名はパーフェクトゼクター、ZECTが開発した対ワームの究極武器。
元々はエリンに支給され、スキル効果で翠風に代わりマサツグ様守護の役目を押し付けられる憂き目に遭い、目敏くブラッドスタークに回収され今に至る。
影山瞬が生きた世界でグリラスワームとの戦闘時に破壊されたが、ゲームの支給品に使えると判断され修復を受けたのだろう。
マサツグ様然りエボルト然り、善の心を持ち合わせない参加者にばかり所有権が移っているのは偶然だろうか。
本来の装備であるスチームブレードではない、機械仕掛けの大剣がブラッドスタークの手にあった。
名はパーフェクトゼクター、ZECTが開発した対ワームの究極武器。
元々はエリンに支給され、スキル効果で翠風に代わりマサツグ様守護の役目を押し付けられる憂き目に遭い、目敏くブラッドスタークに回収され今に至る。
影山瞬が生きた世界でグリラスワームとの戦闘時に破壊されたが、ゲームの支給品に使えると判断され修復を受けたのだろう。
マサツグ様然りエボルト然り、善の心を持ち合わせない参加者にばかり所有権が移っているのは偶然だろうか。
「誰に断って勝手に使っている?三流の薄汚い盗人め、死んで二度と顔を見せるな」
『心配しなくても、ここでお前が死ねば二度と俺の顔を見ずに済むだろ?』
『心配しなくても、ここでお前が死ねば二度と俺の顔を見ずに済むだろ?』
挑発には挑発を返し剣戟を展開。
十聖刃が武器として最高クラスの性能を誇るのは言うまでもないが、パーフェクトゼクターとて決して劣らない。
差が出るとすれば使い手自身の技量。
刀身を叩きつけ合い、隙を見せぬ攻防を続けるもどちらが優勢かは明白だ。
十聖刃が武器として最高クラスの性能を誇るのは言うまでもないが、パーフェクトゼクターとて決して劣らない。
差が出るとすれば使い手自身の技量。
刀身を叩きつけ合い、隙を見せぬ攻防を続けるもどちらが優勢かは明白だ。
本来の戦闘技能はエボルトが勝るとはいえ、現実に押しているのはマサツグ様の方。
主催者に付け足されたスキルの恩恵を受け、マサツグ様の剣術は達人の枠に収まらない。
それも負の感情を激しく震わせた影響で、まるで数十年の修練と実戦を経た如き強さへと変貌を遂げた。
仮面ライダーエボルならまだしもブラッドスタークではクロスセイバーとのスペック差も大きく開き、単独で相手取るのは流石に無理がある。
主催者に付け足されたスキルの恩恵を受け、マサツグ様の剣術は達人の枠に収まらない。
それも負の感情を激しく震わせた影響で、まるで数十年の修練と実戦を経た如き強さへと変貌を遂げた。
仮面ライダーエボルならまだしもブラッドスタークではクロスセイバーとのスペック差も大きく開き、単独で相手取るのは流石に無理がある。
『そういう訳だ戦兎ォ!手助け頼むぜ!』
「んな堂々と言う内容じゃねぇだろ……」
「んな堂々と言う内容じゃねぇだろ……」
呆れつつもマサツグ様を倒す目的は一致しており、得物を接近戦用に変形。
脚部のスプリングが瞬発力を強化、ロケットもかくやの勢いで突進。
片手に構えたドリルクラッシャーは回転数を増し、装甲を削り取る瞬間を待ち侘びている。
一度二度斬り付けたところで大したダメージにはならない、ならば回転刃の特性を活かし少しでも耐久性を落とす。
後は実行に移すだけだが、どれ程困難かは言うまでもない。
脚部のスプリングが瞬発力を強化、ロケットもかくやの勢いで突進。
片手に構えたドリルクラッシャーは回転数を増し、装甲を削り取る瞬間を待ち侘びている。
一度二度斬り付けたところで大したダメージにはならない、ならば回転刃の特性を活かし少しでも耐久性を落とす。
後は実行に移すだけだが、どれ程困難かは言うまでもない。
「うおおおっ!?」
ビルドの接近に舌を打ってからの行動は迅速の一言に尽きる。
パーフェクトゼクターの間をすり抜け、手甲で覆った拳がブラッドスタークの胸部を叩く。
殴り飛ばされた真紅の怪人から標的はビルドへ移り、大振りながら速度にも優れた斬撃を見舞う。
これをビルド、強引に上半身を捻って危うい体勢ではあるが回避。
が、続けて振り下ろされた脚までは間に合わずに直撃。
仰向けに倒れた所へ、蟻を踏み潰すかの気安さで更に足底が迫った。
ドリルクラッシャーを盾にしようにも、クロスセイバー相手では一時凌ぎにしかならない。
片足を地に付け底のキャタピラが高速回転、一旦距離を取りながら起き上がるとマサツグ様が即座に距離を詰める。
パーフェクトゼクターの間をすり抜け、手甲で覆った拳がブラッドスタークの胸部を叩く。
殴り飛ばされた真紅の怪人から標的はビルドへ移り、大振りながら速度にも優れた斬撃を見舞う。
これをビルド、強引に上半身を捻って危うい体勢ではあるが回避。
が、続けて振り下ろされた脚までは間に合わずに直撃。
仰向けに倒れた所へ、蟻を踏み潰すかの気安さで更に足底が迫った。
ドリルクラッシャーを盾にしようにも、クロスセイバー相手では一時凌ぎにしかならない。
片足を地に付け底のキャタピラが高速回転、一旦距離を取りながら起き上がるとマサツグ様が即座に距離を詰める。
「待って…!」
憎たらしい少年の声がビルドへの攻撃を強制的に止め、悪鬼の形相を仮面越しに向けた。
睨まれた學は背中に冷たいものがどっと流れ落ちるのを実感、それでも歯を食い縛り目の前の敵へ集中。
緋々色金を持つのとは反対の手を掲げ、マサツグ様へカードを見せ付ける。
エボルトから渡されたままのブレイクスルー・スキルに、相手が顔色を変えるのが分かった。
睨まれた學は背中に冷たいものがどっと流れ落ちるのを実感、それでも歯を食い縛り目の前の敵へ集中。
緋々色金を持つのとは反対の手を掲げ、マサツグ様へカードを見せ付ける。
エボルトから渡されたままのブレイクスルー・スキルに、相手が顔色を変えるのが分かった。
「こ、このカードの力はまだこんなもんじゃない。君でもっと試す事も出来るんだ」
「ちっぽけな羽虫如きが、見え透いたハッタリを……」
「本当にハッタリかどうか、後で後悔するのはそっちだよ」
「ちっぽけな羽虫如きが、見え透いたハッタリを……」
「本当にハッタリかどうか、後で後悔するのはそっちだよ」
デタラメを抜かし自分の動揺を誘っているに過ぎない。
そう言い切るのは簡単でも、ハッタリでない可能性も否定できない。
事実、マサツグ様は「守る」スキルの発動を無効化されている。
異世界で得た能力のみならず、今度はクロスセイバーの変身まで不可能にされたら?
自分にとって最悪の展開に言葉は詰まり、思わず動きが止まった。
そう言い切るのは簡単でも、ハッタリでない可能性も否定できない。
事実、マサツグ様は「守る」スキルの発動を無効化されている。
異世界で得た能力のみならず、今度はクロスセイバーの変身まで不可能にされたら?
自分にとって最悪の展開に言葉は詰まり、思わず動きが止まった。
ほんの僅かな、しかし學の仲間達には十分なチャンスが生まれる。
『ダイカイガン!フーディーニ!オメガドライブ!』
タイトゥンチェーンを大量生成し射出、雁字搦めとなり動きを封じる。
眼魂からエネルギーを流し込み強度を引き上げた事で、少しでも拘束時間を伸ばす。
眼魂からエネルギーを流し込み強度を引き上げた事で、少しでも拘束時間を伸ばす。
「今だ!」
スペクターの合図を聞くまでも無く、それぞれ高威力の技を放つ準備に掛かった。
眼魂とフルボトルを装填、四肢や武器にエネルギーが充填され必殺の威力へと昇華。
如何にクロスセイバーと言えども、複数人同時の攻撃をマトモに受ければ無傷ではいられない。
眼魂とフルボトルを装填、四肢や武器にエネルギーが充填され必殺の威力へと昇華。
如何にクロスセイバーと言えども、複数人同時の攻撃をマトモに受ければ無傷ではいられない。
「調子に乗るのも大概にしろクズども!ゴミは纏めてゴミ箱に入ってろ!」
反撃を大人しく受け入れるマサツグ様ではない。
雑魚に相応しいチンケな力で自分を縛り、あまつさえ一斉に襲い掛かって袋叩きという卑劣な手に出た。
群れねば何も出来ない蛆虫どもの身勝手さに、負の感情がまたしても刺激を受ける。
マグマの如く沸騰する頭とは裏腹に剣術は一層の冴えを発揮、小賢しい鎖は細切れと化す。
雑魚に相応しいチンケな力で自分を縛り、あまつさえ一斉に襲い掛かって袋叩きという卑劣な手に出た。
群れねば何も出来ない蛆虫どもの身勝手さに、負の感情がまたしても刺激を受ける。
マグマの如く沸騰する頭とは裏腹に剣術は一層の冴えを発揮、小賢しい鎖は細切れと化す。
「何度実力差を教えてやっても理解出来ない三下どもめ。これだから恵まれた環境でぬくぬくと育った馬鹿は困る。有難く思え、お前ら程度の為に少し本気を出してやろう」
『烈火!流水!黄雷!既読!』
『烈火!流水!黄雷!クロス斬り!』
エンブレムをスライドし再び聖剣の力を解放。
全知全能の書を巡る戦いで時に衝突し、その果てに絆を高め合った三人の英雄。
殺し合いの予選では時間軸の違いから望まぬ闘争に身を委ねた、水と雷の剣士。
彼らの友情を踏み躙り、唾を吐くかの如き所業だ。
剣士達の事情はマサツグ様も、対峙中のモニカ達にも知る由は無い。
確かな事はどうにか凌いだ大技の三連発、あれがまたしても起ころうとしている。
全知全能の書を巡る戦いで時に衝突し、その果てに絆を高め合った三人の英雄。
殺し合いの予選では時間軸の違いから望まぬ闘争に身を委ねた、水と雷の剣士。
彼らの友情を踏み躙り、唾を吐くかの如き所業だ。
剣士達の事情はマサツグ様も、対峙中のモニカ達にも知る由は無い。
確かな事はどうにか凌いだ大技の三連発、あれがまたしても起ころうとしている。
『Ready Go!』
『VOLTEC FINISH!』
発動された以上、直撃だけは何としても防がねばなるまい。
レバーの回転数が増す度に、二本のボトルから生成されるエネルギー量も増大。
グラフ型の滑走路を生み出すビルドの横では、ニノンがどこからか巨大な軍配を取り出し装備。
ネクロムの能力ではなく、ニノンが習得した忍術発動の合図だ。
二人を襲うのは火炎剣烈火、神山飛羽真を炎の剣士へ覚醒させた聖剣。
名前をそのまま表すかの如く炎を纏った斬撃へ、ニノンが放つのもまた炎。
レバーの回転数が増す度に、二本のボトルから生成されるエネルギー量も増大。
グラフ型の滑走路を生み出すビルドの横では、ニノンがどこからか巨大な軍配を取り出し装備。
ネクロムの能力ではなく、ニノンが習得した忍術発動の合図だ。
二人を襲うのは火炎剣烈火、神山飛羽真を炎の剣士へ覚醒させた聖剣。
名前をそのまま表すかの如く炎を纏った斬撃へ、ニノンが放つのもまた炎。
「忍法、灼熱地獄!」
軍配を振り下ろし火炎の渦が発生、高熱同士の激突で互いに威力が弱まる。
となれば後はビルドの仕事だ、急降下による勢いを乗せた蹴りで烈火を粉砕。
となれば後はビルドの仕事だ、急降下による勢いを乗せた蹴りで烈火を粉砕。
一本を防げば間髪入れずに二本目が襲来。
青い聖剣、流水の斬撃が激流となり戦士達を飲み込まんと大口を開けた。
マサツグ様には叩き込めなかったが、スペクターの技の使いどころはここしかない。
フーディーニ眼魂のエネルギーを纏い全身を回転、その隣でブラッドスタークが大剣を構える。
パーフェクトゼクターの真価を発揮する為のゼクターは所持しておらず、己が元に呼び寄せる機能も使用不可能に細工済み。
青い聖剣、流水の斬撃が激流となり戦士達を飲み込まんと大口を開けた。
マサツグ様には叩き込めなかったが、スペクターの技の使いどころはここしかない。
フーディーニ眼魂のエネルギーを纏い全身を回転、その隣でブラッドスタークが大剣を構える。
パーフェクトゼクターの真価を発揮する為のゼクターは所持しておらず、己が元に呼び寄せる機能も使用不可能に細工済み。
だったら足りない分はエボルト自身の力で補えば良い。
ブラッド族のエネルギーを刀身に纏わせ、黄金から真紅へと色を変える。
以前トランスチームガンの銃弾を強化したのと同じく、パーフェクトゼクターに異星の力が齎された。
激流すらも飲み干す蛇の刃が振り下ろされ、共に牙を突き立て拮抗。
勢いが弱まれば残りはスペクターの仕事だ。
水飛沫を周囲に散らし、最後は流水の幻影を蹴り砕く。
ブラッド族のエネルギーを刀身に纏わせ、黄金から真紅へと色を変える。
以前トランスチームガンの銃弾を強化したのと同じく、パーフェクトゼクターに異星の力が齎された。
激流すらも飲み干す蛇の刃が振り下ろされ、共に牙を突き立て拮抗。
勢いが弱まれば残りはスペクターの仕事だ。
水飛沫を周囲に散らし、最後は流水の幻影を蹴り砕く。
「や、やった…!これで……」
「いやまだだ!もっとマズいのが来るぞ!」
「いやまだだ!もっとマズいのが来るぞ!」
焦燥を露わに叫ぶモニカへ全員が同意せざるを得ない。
上空へ出現する無数の聖剣、雷鳴剣黄雷。
切っ先全てが地上の虫たちを見下ろし、一斉に電撃が放出された。
上空へ出現する無数の聖剣、雷鳴剣黄雷。
切っ先全てが地上の虫たちを見下ろし、一斉に電撃が放出された。
「く…おぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
降り注ぐ光は神罰と見紛う威力。
最早雷撃どころか爆撃と言った方が正しい地獄の中を、モニカは死に物狂いで駆け抜ける。
強引に腕を引く少年、彼の存在が決して攻撃を受けてはならない何よりの理由となった。
最早雷撃どころか爆撃と言った方が正しい地獄の中を、モニカは死に物狂いで駆け抜ける。
強引に腕を引く少年、彼の存在が決して攻撃を受けてはならない何よりの理由となった。
しかし雷撃は一つ二つでは終わらない。
幾度も落ちる地面を消し飛ばす絶望の光へ、モニカを含め全員避け続けるのには限界が近い。
直撃はどうにか躱すも、大地が吹き飛ぶ衝撃の余波だけでも相当な脅威。
幾度も落ちる地面を消し飛ばす絶望の光へ、モニカを含め全員避け続けるのには限界が近い。
直撃はどうにか躱すも、大地が吹き飛ぶ衝撃の余波だけでも相当な脅威。
「ぐあああああっ!?」
吹き飛ばされる最中、せめて學だけは守ろうと体勢を変える。
自分自身をクッションにしたおかげで學の激突は防げたが、代わりの痛みがモニカを襲う。
血相を変えて呼びかける學へ大丈夫だと返す声もどこか弱々しい。
自分自身をクッションにしたおかげで學の激突は防げたが、代わりの痛みがモニカを襲う。
血相を変えて呼びかける學へ大丈夫だと返す声もどこか弱々しい。
被害を受けたのは他の者達もだ。
吹き飛び叩きつけられ、ダメージの大きさに変身が解除される。
何より、マサツグ様の攻撃はこれで終わりなんかじゃあない。
自分をコケにしてくれた連中の無様な姿は気分爽快だが、この程度では到底気は晴れなかった。
吹き飛び叩きつけられ、ダメージの大きさに変身が解除される。
何より、マサツグ様の攻撃はこれで終わりなんかじゃあない。
自分をコケにしてくれた連中の無様な姿は気分爽快だが、この程度では到底気は晴れなかった。
『刃王!必殺読破!』
「光栄に思えよ羽虫ども。お前らのような価値の無い連中の為に、わざわざこの力を使ってやるのだからな」
バックルに十聖刃を納刀しトリガーを引く。
武器を収めたのは断じて戦闘中止の為でも、まして今更になって見逃す訳でもない。
これまでも高威力の技を放ったが、それらは全て別の聖剣の力を再現しただけ。
十聖刃に秘められた真の力の解放による、煩わしい羽虫の殲滅を実行に移す時だ。
変身者の創造力が大きければ大きい程、人知を超えた奇跡を起こす。
尤も、マサツグ様では制限の影響もあり飛羽真がやったような現象は不可能。
武器を収めたのは断じて戦闘中止の為でも、まして今更になって見逃す訳でもない。
これまでも高威力の技を放ったが、それらは全て別の聖剣の力を再現しただけ。
十聖刃に秘められた真の力の解放による、煩わしい羽虫の殲滅を実行に移す時だ。
変身者の創造力が大きければ大きい程、人知を超えた奇跡を起こす。
尤も、マサツグ様では制限の影響もあり飛羽真がやったような現象は不可能。
『聖刃抜刀!刃王一冊斬り!』
『セイバー!』
但し使用不可能なのはあくまで奇跡染みた現象は、だ。
敵対者を滅ぼす斬撃技の発動に一切支障は無い。
眩いワインレッドの光を刀身が帯び、次いで星雲を思わせるエネルギーが包み込む。
目を奪われる美しさなれど、破壊力は桁違い。
剣士達を幾度も手玉に取り追い詰めた、仮面ライダーソロモンにも打ち勝った聖剣。
それこそが刃王剣十聖刃なのだから。
敵対者を滅ぼす斬撃技の発動に一切支障は無い。
眩いワインレッドの光を刀身が帯び、次いで星雲を思わせるエネルギーが包み込む。
目を奪われる美しさなれど、破壊力は桁違い。
剣士達を幾度も手玉に取り追い詰めた、仮面ライダーソロモンにも打ち勝った聖剣。
それこそが刃王剣十聖刃なのだから。
神秘的な光でありながら、自分達を地獄へ突き落とす絶望の象徴。
常人ならば心が折れ抵抗を投げ出す光景に、それでも諦めを捻じ伏せる少女がいた。
常人ならば心が折れ抵抗を投げ出す光景に、それでも諦めを捻じ伏せる少女がいた。
「絶対に…終わらせまセン…ワタシ達…ヴァイスフリューゲルに……諦めるなんてノーサンキューデス……!」
両脚が針金になったように頼りない、立つだけで笑ってしまう程震える。
ほんのちょっぴりでも気を抜けば途端に視界はブラックアウト確実、それくらい意識も朦朧とする。
限界などとっくに通り越し、いつ死んでもおかしくはない。
まだ生きているのが誰にとっても不思議な状態で、尚もニノンは戦いを投げ出さなかった。
再び纏った装甲が輝き出す。
ほんのちょっぴりでも気を抜けば途端に視界はブラックアウト確実、それくらい意識も朦朧とする。
限界などとっくに通り越し、いつ死んでもおかしくはない。
まだ生きているのが誰にとっても不思議な状態で、尚もニノンは戦いを投げ出さなかった。
再び纏った装甲が輝き出す。
「死に損ないが…本当に気持ち悪いなお前」
「何とでも…言うがいいデース……ソウルが籠ってない…あなたの言葉なんて……これっぽっちも響きまセーン……!」
「何とでも…言うがいいデース……ソウルが籠ってない…あなたの言葉なんて……これっぽっちも響きまセーン……!」
『ダイテンガン!ネクロム!オメガウルオウド!』
掲げた拳は黄金色に燃え盛り、ニノンの決意に呼応するかの如く勢いが衰えない。
眼魂に宿るエネルギー全てを集中させた一撃は、文字通り命を燃やして放つ。
力で敵が圧倒するのなら、負けじと心の叫びを叩きつけるのみだ。
眼魂に宿るエネルギー全てを集中させた一撃は、文字通り命を燃やして放つ。
力で敵が圧倒するのなら、負けじと心の叫びを叩きつけるのみだ。
「ニノン……!!」
仲間の、ギルドリーダーの、大切な友の悲痛な声が背に届き。
それが合図となり、ひたすら前へ突き進んだ。
それが合図となり、ひたすら前へ突き進んだ。
「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
拳だけでは無い、ニノン自身が黄金の矢となり強敵を射抜くべく駆ける。
大型の魔物ですら怯え戦意を喪失するだろう気迫に、マサツグ様の返答は嘲笑と聖剣。
視界を焼き潰し兼ねない光を互いの得物に乗せ激突、一歩も後ろへ下がってたまるかと視線をぶつけ合う。
大型の魔物ですら怯え戦意を喪失するだろう気迫に、マサツグ様の返答は嘲笑と聖剣。
視界を焼き潰し兼ねない光を互いの得物に乗せ激突、一歩も後ろへ下がってたまるかと視線をぶつけ合う。
「う…ぐ…あぁぁ……!」
「はっ、結局こうなるんじゃないか。吠える以外に脳の無いゴミ虫が!薄っぺらい正義感諸共、地獄に落ちろ!」
「はっ、結局こうなるんじゃないか。吠える以外に脳の無いゴミ虫が!薄っぺらい正義感諸共、地獄に落ちろ!」
都合の良い逆転など起こらないから、現実はいつの時代も非情なのだ。
「守る」スキルで不意打ちを受けた時点で重傷のニノン、傷を負いこそしたが死には程遠いマサツグ様。
戦う前から分かり切った結果は、どう足掻いても覆らない。
声高々に叫んだ全てはマサツグ様に蹂躙されるだけの、哀れな生贄。
「守る」スキルで不意打ちを受けた時点で重傷のニノン、傷を負いこそしたが死には程遠いマサツグ様。
戦う前から分かり切った結果は、どう足掻いても覆らない。
声高々に叫んだ全てはマサツグ様に蹂躙されるだけの、哀れな生贄。
「最大の…チャンスは…死中にこそありデース…!」
なれど、悲劇に終わると誰が決めたのか。
たとえ神がそのような命令を下そうと、ニノン自身は最後まで否を叩きつける。
装甲耐久値を遥かに超える斬撃に、最早痛みすら曖昧だ。
体の何処から血を流してるのか、自分でももう分からない。
たとえ神がそのような命令を下そうと、ニノン自身は最後まで否を叩きつける。
装甲耐久値を遥かに超える斬撃に、最早痛みすら曖昧だ。
体の何処から血を流してるのか、自分でももう分からない。
だからこそ、最大の好機となる。
伸ばした腕とは反対の手に握る巨大な銃が、ニノンの最後の支給品。
黒く塗りつぶされた銃身が徐々に赤い光を帯び、存在感を増していく。
変化はそれだけに留まらず、銃自体も巨大化が止まらない。
黒く塗りつぶされた銃身が徐々に赤い光を帯び、存在感を増していく。
変化はそれだけに留まらず、銃自体も巨大化が止まらない。
リベンジシューター。
とある世界でファイターと称される者達が扱うこの武器は、普通の銃にはない特製があった。
使用者の体力が低ければ低い程、死に近い者程威力と射程が強化される。
絶体絶命の時にこそ真価を発揮する、一発逆転の切り札。
とある世界でファイターと称される者達が扱うこの武器は、普通の銃にはない特製があった。
使用者の体力が低ければ低い程、死に近い者程威力と射程が強化される。
絶体絶命の時にこそ真価を発揮する、一発逆転の切り札。
(モニカさん……ワタシも一足先に、アユミさんの元へ行くことになりマース……)
引き金に力を籠める直前、想うのはやはり大切なギルドの仲間達のこと。
本当だったら、アユミと再会を果たすのはもっとずっと先が良かった。
檀黎斗達を成敗し、無事ショーグンの元へ帰り泰平の世を築き、年を取ってもヴァイスフリューゲルの友情は変わらずにいて。
そうやって悔いを残さずに生きたかったが叶わない。
被虐趣味の激しい仲間と、隙あらば己の美しさに見惚れる仲間と、そして、小さな体で誰よりも責任感の大きい仲間。
皆とこんな形で別れる事になって、悲しくない筈が無い。
本当だったら、アユミと再会を果たすのはもっとずっと先が良かった。
檀黎斗達を成敗し、無事ショーグンの元へ帰り泰平の世を築き、年を取ってもヴァイスフリューゲルの友情は変わらずにいて。
そうやって悔いを残さずに生きたかったが叶わない。
被虐趣味の激しい仲間と、隙あらば己の美しさに見惚れる仲間と、そして、小さな体で誰よりも責任感の大きい仲間。
皆とこんな形で別れる事になって、悲しくない筈が無い。
(ミカゲさん……)
心残りは殺し合いで出会った少女のこともそう。
自分が言い方を間違えたせいで余計に傷付けてしまった、繊細な彼女。
最後まで守り抜き、出来ることなら友達と仲直りして欲しかった。
謝る機会すらやって来ない、無責任な終わり方にただただ申し訳なく思う。
せめて、ショーグンと呼び慕う“彼”のような人と出会い、少しでも心の傷が癒えてくれたら。
自分が彼女にしてやれるのはもう、そんな風に願うだけ。
自分が言い方を間違えたせいで余計に傷付けてしまった、繊細な彼女。
最後まで守り抜き、出来ることなら友達と仲直りして欲しかった。
謝る機会すらやって来ない、無責任な終わり方にただただ申し訳なく思う。
せめて、ショーグンと呼び慕う“彼”のような人と出会い、少しでも心の傷が癒えてくれたら。
自分が彼女にしてやれるのはもう、そんな風に願うだけ。
「忍びの心得ファースト……仲間は絶対に…見捨てまセーン…!!」
朽ち果てる命の使い道は一つ。
巨悪を道連れにしてでも倒し、仲間達がほんの僅かでも助かる確率を上げること。
以前アクダイカンの相手を一人で引き受けようとしたモニカを、これではどうこう言えまい。
巨悪を道連れにしてでも倒し、仲間達がほんの僅かでも助かる確率を上げること。
以前アクダイカンの相手を一人で引き受けようとしたモニカを、これではどうこう言えまい。
「この…死に損ないが…!早く死ね…!!」
間近で睨む銃口へ流石に危機感を覚えたのか、マサツグ様が決着を急ぐ。
色々と思い足りないがそろそろ自分も勝負に出る時だ。
指先の感覚が完全に失われる前に、トリガーに掛かった指を手前に引く。
色々と思い足りないがそろそろ自分も勝負に出る時だ。
指先の感覚が完全に失われる前に、トリガーに掛かった指を手前に引く。
(ショーグン……ワタシは……)
光に包まれ、痛みも苦しみも無に還る中。
一人の少年を想う彼女は忍ではなく、年相応の少女の眼差しで、ここではないどこかを見つめた。
一人の少年を想う彼女は忍ではなく、年相応の少女の眼差しで、ここではないどこかを見つめた。