憂鬱な空の旅を終え、降り立ったその足で目に付いた民家へ直行。
倉庫の戸を開け、埃の被ったシャベルを拝借。
無論、即席の武器に使う為などではない。
命中率は低いが銃があり、今や遺品と化したがアーマードライダーへの変身ツールも所持。
何より、一番の武器たるカードだって手元に残っているのだ。
倉庫の戸を開け、埃の被ったシャベルを拝借。
無論、即席の武器に使う為などではない。
命中率は低いが銃があり、今や遺品と化したがアーマードライダーへの変身ツールも所持。
何より、一番の武器たるカードだって手元に残っているのだ。
では何の為にと聞かれれば、答えはシャベル本来の用途。
民家の庭に先端を突き刺し、力を入れて掘る。
手入れの行き届いた庭を荒らされ、家主がいれば怒髪天を突いたのは想像に難くない。
殺し合いの会場に、そんな奴がいるのは有り得ないが。
民家の庭に先端を突き刺し、力を入れて掘る。
手入れの行き届いた庭を荒らされ、家主がいれば怒髪天を突いたのは想像に難くない。
殺し合いの会場に、そんな奴がいるのは有り得ないが。
「ったくよぉ……こういうのはアリトだのギラグだの、暑苦しい連中の仕事だろうが」
らしくもなく肉体労働に出た事への愚痴が、耳に入るのは言った本人だけ。
生きている者はベクターのみであり、周りを見てもNPCすら確認出来ない。
バリアン一体と死体が一つ、軽口を叩いたとて地面を掘る音に虚しく溶けていく。
自分をこき使い、打算ありとはいえ身を挺し庇い。
何だかんだ上手く付き合っていた、喪った後で仲間だったと実感出来た名探偵は。
一足先に脱落となり、次の定時放送で喧しい神の口から死亡者として名を呼ばれるだろう。
生きている者はベクターのみであり、周りを見てもNPCすら確認出来ない。
バリアン一体と死体が一つ、軽口を叩いたとて地面を掘る音に虚しく溶けていく。
自分をこき使い、打算ありとはいえ身を挺し庇い。
何だかんだ上手く付き合っていた、喪った後で仲間だったと実感出来た名探偵は。
一足先に脱落となり、次の定時放送で喧しい神の口から死亡者として名を呼ばれるだろう。
もう一度言葉を交わす機会などやって来ない。
怪物に変貌する前の、元の容姿を直接拝むのだって不可能。
それこそ、ヌメロン・コードでも使わない限りは。
宇宙創成のカードであり、あらゆる事象を意のままに書き換える願望器。
あの力を用いれば、死という生命の終わりすらも覆せる。
怪物に変貌する前の、元の容姿を直接拝むのだって不可能。
それこそ、ヌメロン・コードでも使わない限りは。
宇宙創成のカードであり、あらゆる事象を意のままに書き換える願望器。
あの力を用いれば、死という生命の終わりすらも覆せる。
逆に言うと、ヌメロン・コード並の力でもなければ死者の蘇生は不可能。
可哀想ですが死んでしまいました、でもすぐに生き返るから大丈夫。
なんて、安っぽい死生観で世界が回っていたら。
メラグを殺されたナッシュが、激情を露わになどしていない。
名探偵やどこぞのお人好しの死に、自分はこうもささくれ立つ筈がない。
可哀想ですが死んでしまいました、でもすぐに生き返るから大丈夫。
なんて、安っぽい死生観で世界が回っていたら。
メラグを殺されたナッシュが、激情を露わになどしていない。
名探偵やどこぞのお人好しの死に、自分はこうもささくれ立つ筈がない。
そうこう考えながらも腕は止めず、丁度良いサイズの穴が完成。
上半身のみの異形を横たえ、土を被せていく。
合理的に考えるなら、ゲームにおける埋葬行為は全くの無駄だ。
首輪の回収が済めば、死体はその場に放置していればいい。
時間と体力の節約が正しいと、ベクター自身も理解している。
上半身のみの異形を横たえ、土を被せていく。
合理的に考えるなら、ゲームにおける埋葬行為は全くの無駄だ。
首輪の回収が済めば、死体はその場に放置していればいい。
時間と体力の節約が正しいと、ベクター自身も理解している。
胸部を土に覆われ、露出した顔と目が合う。
物言わぬ屍なれど、もし向こうに死後の世界から意思を伝える術があったら。
時は金なりとの諺に従い、時間を割く必要はないと自分の死すら割り切っただろう。
そういった想像が出来るくらいには、Lとの付き合いは短くも浅いものじゃなかった。
物言わぬ屍なれど、もし向こうに死後の世界から意思を伝える術があったら。
時は金なりとの諺に従い、時間を割く必要はないと自分の死すら割り切っただろう。
そういった想像が出来るくらいには、Lとの付き合いは短くも浅いものじゃなかった。
「ハッ。何でもかんでも指示通りに動くなんざ、言った覚えはねぇよ。俺がそういう奴だって分かって、テメェも手を組んだんだろ?」
皮肉気な言葉とは裏腹に、声色はどこか寂し気で。
見下ろす表情がどんなものか、知る者はベクター以外に誰もいない。
Lからの文句は死体と共に置いていく、完全に埋め終えたら足止めされる理由も消失。
持って行くのは首輪と、亡き名探偵の意思だけでいい。
事件解決前に力尽きた未練と、終焉を齎した悪しき術師への借り。
それを背負って、進んで行くだけだ。
見下ろす表情がどんなものか、知る者はベクター以外に誰もいない。
Lからの文句は死体と共に置いていく、完全に埋め終えたら足止めされる理由も消失。
持って行くのは首輪と、亡き名探偵の意思だけでいい。
事件解決前に力尽きた未練と、終焉を齎した悪しき術師への借り。
それを背負って、進んで行くだけだ。
「……じゃあな」
被せた土が顔を隠し、短い言葉で別れを告げる。
零したため息に宿るのが何なのか、今は深く考えずに民家を後にした。
零したため息に宿るのが何なのか、今は深く考えずに民家を後にした。
運が良い、と言って良いのか不明だが。
移動先で生きた参加者とは会えなくとも、首輪付の死体は見付かった。
ワイシャツ姿に細身の男が誰か、ベクターは知らない。
しかし発見した以上、放置し立ち去る気も皆無。
ゲーム開始当初よりも感傷的なのは否定しないが、かといって見ず知らずの参加者まで丁重に弔ってやるつもりもない。
一応、余り人目に付かない場所へ運んでやりホープを召喚。
首輪を拾いまた暫く進むと、もう一体死体が転がっているではないか。
体格からしていい大人が、何故児童の体操着を着てるのかに興味はなく。
もう一度ホープで首を落とし、必要な物を手に入れた。
移動先で生きた参加者とは会えなくとも、首輪付の死体は見付かった。
ワイシャツ姿に細身の男が誰か、ベクターは知らない。
しかし発見した以上、放置し立ち去る気も皆無。
ゲーム開始当初よりも感傷的なのは否定しないが、かといって見ず知らずの参加者まで丁重に弔ってやるつもりもない。
一応、余り人目に付かない場所へ運んでやりホープを召喚。
首輪を拾いまた暫く進むと、もう一体死体が転がっているではないか。
体格からしていい大人が、何故児童の体操着を着てるのかに興味はなく。
もう一度ホープで首を落とし、必要な物を手に入れた。
「お前も災難だな、こんな使われ方ばっかでよ」
返答がないと分かった上で、ホープに呆れ笑いを向ける。
首輪を複数個手に入れ、次にやる事と言ったら生存中の参加者との接触。
一番良いのは戒斗との合流だが、生憎行き先の手掛かりは一つも無し。
オーバーロードとしての強さを思えば、単独行動でも然程問題はないだろうが。
首輪を複数個手に入れ、次にやる事と言ったら生存中の参加者との接触。
一番良いのは戒斗との合流だが、生憎行き先の手掛かりは一つも無し。
オーバーロードとしての強さを思えば、単独行動でも然程問題はないだろうが。
一人歩き続け、やがて街へ到着。
北上するとすぐ湖に着く位置から見るに、D-4エリアの北西部分らしい。
会場中央の都市部とくれば、参加者が集まる可能性は高い。
探索に赴くのは必然の流れだ。
北上するとすぐ湖に着く位置から見るに、D-4エリアの北西部分らしい。
会場中央の都市部とくれば、参加者が集まる可能性は高い。
探索に赴くのは必然の流れだ。
「あれは……」
活気というものが抜け落ちた街中で、ふと視線が一点を捉える。
小走りで近付くと、『CARD SHOP Presented by KUROTO DAN GOD』の看板が設置されてあった。
自己主張の激しいゲームマスターはともかく、何を売る店かは興味を引くのに十分な効果がある。
殺し合いでカードショップが何の役に立つのかと、普通はそう呆れ返るだろう。
だが此度はデュエルが戦闘に組み込まれたデスゲーム、カード一枚で戦況が大きく変わるのも珍しくない。
小走りで近付くと、『CARD SHOP Presented by KUROTO DAN GOD』の看板が設置されてあった。
自己主張の激しいゲームマスターはともかく、何を売る店かは興味を引くのに十分な効果がある。
殺し合いでカードショップが何の役に立つのかと、普通はそう呆れ返るだろう。
だが此度はデュエルが戦闘に組み込まれたデスゲーム、カード一枚で戦況が大きく変わるのも珍しくない。
気が利いてるなどと言う気はないが、寄らない理由もない。
片手はいつでも銃を引き抜けるよう意識し、扉を開ける。
片手はいつでも銃を引き抜けるよう意識し、扉を開ける。
「おお、良くぞ来た!店を開け早数時間、暇していたが遂に扉を叩く者が現れたか!」
「……何だお前?」
「……何だお前?」
ベクターを迎えたのはいやにテンションの高い、人ならざる存在。
獣の顔と四肢を持ち、頭部から伸びるのはヘラジカに似た角。
そんな存在が赤いローブを纏い、流暢に人語を発しているのだ。
眉を顰めるのも無理からぬ反応である。
少々呆気に取られたが、当然の如く警戒し銃を向けた。
獣の顔と四肢を持ち、頭部から伸びるのはヘラジカに似た角。
そんな存在が赤いローブを纏い、流暢に人語を発しているのだ。
眉を顰めるのも無理からぬ反応である。
少々呆気に取られたが、当然の如く警戒し銃を向けた。
「こちとらカード屋に来たつもりだったが、いつから動物小屋になったんだよ?」
「否、ここはお客人にカードを提供する場で間違いない。銃を下ろされよ、引き金を引き後悔するのはそちらであるぞ?」
「否、ここはお客人にカードを提供する場で間違いない。銃を下ろされよ、引き金を引き後悔するのはそちらであるぞ?」
銃口に睨み付けられても、何ら慌てる様子は見られない。
視線で訝しく問うベクターへ、気分を害さずに説明を始めた。
話す内容は数時間前、カイトが魔導雑貨商人から聞いたのとほとんど同じ。
参加者との取引を行う為に用意されたNPC、魔導闇商人(マジカル・ブローカー)。
デュエルモンスターズの同名カードの異形が店主を務めるこの場所こそ、決闘者にとっては戦略上少なくない意味を持つ施設だった。
視線で訝しく問うベクターへ、気分を害さずに説明を始めた。
話す内容は数時間前、カイトが魔導雑貨商人から聞いたのとほとんど同じ。
参加者との取引を行う為に用意されたNPC、魔導闇商人(マジカル・ブローカー)。
デュエルモンスターズの同名カードの異形が店主を務めるこの場所こそ、決闘者にとっては戦略上少なくない意味を持つ施設だった。
「へぇ?そいつは確かに耳寄りな話だけどよ、テメェを撃って根こそぎ持ち去るって手も取れるんじゃないのか?」
「はは、当然対策済に決まっておろう」
「だろうな、あの胡散臭ぇ神様野郎が考えてない筈はねぇか」
「はは、当然対策済に決まっておろう」
「だろうな、あの胡散臭ぇ神様野郎が考えてない筈はねぇか」
魔導雑貨商人と同じく、転送という過程を挟んで参加者に物品を提供するのだ。
仮に魔導闇商人を排除したとて、得られる物は何一つない。
むしろルール違反者と見なし、ペナルティを課せられるのだから正に百害あって一利なし。
つまらなそうに銃を引っ込めるのを見計らい、タブレット端末を渡された。
表示されてる中から、欲しいカードを選べるのだろう。
仮に魔導闇商人を排除したとて、得られる物は何一つない。
むしろルール違反者と見なし、ペナルティを課せられるのだから正に百害あって一利なし。
つまらなそうに銃を引っ込めるのを見計らい、タブレット端末を渡された。
表示されてる中から、欲しいカードを選べるのだろう。
「ほーん……こりゃ確かに、選り取り見取りってやつか」
画面をスクロールし、思わず感心の声が漏れる。
知っているカードもあれば、初めて目にする物も一枚二枚じゃない。
ホープを主軸に回すデッキと、相性の良いカードもちらほら。
好きに選べるなら遠慮なしにそうさせてもらうが、当然そこまで太っ腹ではない。
対価として支給品や首輪は必須であり、強力であればある程レートも高くなる。
知っているカードもあれば、初めて目にする物も一枚二枚じゃない。
ホープを主軸に回すデッキと、相性の良いカードもちらほら。
好きに選べるなら遠慮なしにそうさせてもらうが、当然そこまで太っ腹ではない。
対価として支給品や首輪は必須であり、強力であればある程レートも高くなる。
公園で見付けた四人の死体に、デェムシュが引き連れていた殺人鬼。
凄惨な拷問を受けた少女、先程見付けた二人。
そしてLの分を合わせて計9個の首輪を所持しており、解析用に一つ残してもまだ8個手元に残る。
余程の無法カードでもない限り、取引可能な筈だ
遺品という点を深く考えなければ、バロンの変身ツールや双眼鏡付属の杖も交換用に使えるが。
凄惨な拷問を受けた少女、先程見付けた二人。
そしてLの分を合わせて計9個の首輪を所持しており、解析用に一つ残してもまだ8個手元に残る。
余程の無法カードでもない限り、取引可能な筈だ
遺品という点を深く考えなければ、バロンの変身ツールや双眼鏡付属の杖も交換用に使えるが。
(どうすっかねぇ……)
牛尾と遊星のデッキをミックスし、そこへホープを追加した現在の自身のデッキ。
そこへ新たに投入するとしたら、どのカードを優先が正解か画面と睨めっこ。
客のデッキ構築には口を挟まないらしく、魔導闇商人は沈黙し答えを待っている。
吟味に集中出来る為、ベクターには有難い限りだ。
そこへ新たに投入するとしたら、どのカードを優先が正解か画面と睨めっこ。
客のデッキ構築には口を挟まないらしく、魔導闇商人は沈黙し答えを待っている。
吟味に集中出来る為、ベクターには有難い限りだ。
尤も、直後に起きた轟音に意識は一瞬で持って行かれた。
「っ!?おいおい今度は何だってんだよ!」
タブレットを店主に突き返し、慌てて外に出る。
双眼鏡を使い音のした方を見やれば、原因は即座に判明。
奇怪な紋様らしきものを刻み込んだ巨人と、同じサイズのモンスター。
二体が破壊の限りを尽くすのが、遠目にも確認出来た。
双眼鏡を使い音のした方を見やれば、原因は即座に判明。
奇怪な紋様らしきものを刻み込んだ巨人と、同じサイズのモンスター。
二体が破壊の限りを尽くすのが、遠目にも確認出来た。
「んだありゃ……デカ過ぎんだろ……」
ホープもベクターの倍の巨大さだが、レンズ越しに見る二体はそれ以上。
あれもデュエルモンスターズで召喚されたのだろうかと、頭を捻りながら様子を見続ける。
等身大の参加者が戦っているとは辛うじて分かったが、最大倍率でも詳細には不明。
やがて二体とも消えたと思えば、別の巨大モンスターが出現。
何処かへ飛び去り、街は再び沈黙を取り戻す。
とんでもないものを見た衝撃を引き摺りながら、一旦店内に戻った。
あれもデュエルモンスターズで召喚されたのだろうかと、頭を捻りながら様子を見続ける。
等身大の参加者が戦っているとは辛うじて分かったが、最大倍率でも詳細には不明。
やがて二体とも消えたと思えば、別の巨大モンスターが出現。
何処かへ飛び去り、街は再び沈黙を取り戻す。
とんでもないものを見た衝撃を引き摺りながら、一旦店内に戻った。
「随分派手にやったようだな。私の店まで潰されないかと、肝が冷える思いだったぞ」
「ならもっとビビる真似でもしとけ。…そういやお前、こういう紋様みてぇなの付けたモンスターって知ってるか?」
「ならもっとビビる真似でもしとけ。…そういやお前、こういう紋様みてぇなの付けたモンスターって知ってるか?」
カードショップに配置されたNPCなら、モンスターの詳細な情報も持っているんじゃないか。
ふと思い付き、自分の体をなぞるように巨人の特徴を伝える。
ふと思い付き、自分の体をなぞるように巨人の特徴を伝える。
「ふぅむ?ひょっとすると、地縛神のカードを支給されたプレイヤーがいたのかもしれんな」
「地縛神?」
「おっと、つい口が滑ってしまった。詳しく知りたくば、当然無料とはいかんよ」
「地縛神?」
「おっと、つい口が滑ってしまった。詳しく知りたくば、当然無料とはいかんよ」
情報は持っているが知りたくば、首輪なり支給品を寄越せと言いたいらしい。
現金な野郎だと舌を打つ。
気にはなるが、絶対に知りたいかと言うとすぐには頷けない。
第一誰が使ったか、どういった状況なのかも不明なのだ。
面倒そうに頭をガシガシと掻き、
現金な野郎だと舌を打つ。
気にはなるが、絶対に知りたいかと言うとすぐには頷けない。
第一誰が使ったか、どういった状況なのかも不明なのだ。
面倒そうに頭をガシガシと掻き、
「あ?」
またしても外からの物音を鼓膜が拾った。
但し先程の轟音とは違い、聞こえるのは男女の話し声。
どちらも覚えはなく、しかし今しがたの戦闘を見たばかりな為に。
関係者かと疑い、銃を片手に外へ出てみる。
但し先程の轟音とは違い、聞こえるのは男女の話し声。
どちらも覚えはなく、しかし今しがたの戦闘を見たばかりな為に。
関係者かと疑い、銃を片手に外へ出てみる。
「っと、そこまで遠くには飛ばされずに済んだな」
「それは確かに助かりましたけど、一体幾つ変身出来るんですか?」
「知りたいか?当ててみろ、正解したらお供から弟子にランクアップしてやってもいい」
「相棒ですよ!もう!士は私の何が不満なんですか!?」
「それは確かに助かりましたけど、一体幾つ変身出来るんですか?」
「知りたいか?当ててみろ、正解したらお供から弟子にランクアップしてやってもいい」
「相棒ですよ!もう!士は私の何が不満なんですか!?」
地上へ降り立つマゼンタ色の装甲の戦士と、金髪の少女。
揶揄い交じりのニヒルな態度へ、ぷりぷりと可愛らしく食って掛かる。
痴話喧嘩でもしてるのかと呆れるベクターだが、向こうも存在に気付く。
視線が合うや腕を跳ね上げ、ショット・オブ・ザ・スターの銃口が射抜いた。
揶揄い交じりのニヒルな態度へ、ぷりぷりと可愛らしく食って掛かる。
痴話喧嘩でもしてるのかと呆れるベクターだが、向こうも存在に気付く。
視線が合うや腕を跳ね上げ、ショット・オブ・ザ・スターの銃口が射抜いた。
「おいおい、いきなりご挨拶だな?ガンマンの真似事がしたいなら他を当たれ」
「能天気にお空のデートにしけ込むだけあって、余裕じゃねぇか。バーコード仮面様よ」
「能天気にお空のデートにしけ込むだけあって、余裕じゃねぇか。バーコード仮面様よ」
皮肉を叩き合うも、友人同士の気の知れたやり取りではない。
一つ返答を間違えれば、戦闘に発展しても不思議では非ず。
例え、双方デスゲームに抗う者でもだ。
一つ返答を間違えれば、戦闘に発展しても不思議では非ず。
例え、双方デスゲームに抗う者でもだ。
「ああもう、これじゃ相棒というより悪ぶった弟に手を焼くお姉ちゃんですよ……」
相変わらずな相棒の態度に呆れながら、一歩前に出る少女。
相手はいきなり撃つ真似をせず、今はまだ警戒に留めてる以上。
会話で余計な戦闘を回避可能だろう。
両手を上げつつ、殺し合いに乗っていないとハッキリ伝える。
ベクターが疑わし気に横を見やれば、男の方も肩を竦め変身を解除。
敵意がないとのアピールを暫し見比べ、ややあって銃を下ろす。
相手はいきなり撃つ真似をせず、今はまだ警戒に留めてる以上。
会話で余計な戦闘を回避可能だろう。
両手を上げつつ、殺し合いに乗っていないとハッキリ伝える。
ベクターが疑わし気に横を見やれば、男の方も肩を竦め変身を解除。
敵意がないとのアピールを暫し見比べ、ややあって銃を下ろす。
「とりあえず、カップルで殺し回ってるんじゃないって受け取ってやらぁ」
「いや、私達ってそういうのじゃないですから」
「いや、私達ってそういうのじゃないですから」
顔の前で手をパタパタと降り、ベクターからの疑惑を否定。
それはともかく、争う意思が無いのは確認出来た。
互いの持つ情報を開示し合うのが、自然な流れだろう。
それはともかく、争う意思が無いのは確認出来た。
互いの持つ情報を開示し合うのが、自然な流れだろう。
「そいつは俺達も賛成だが、もう少し待て。先に確かめておきたいものがある」
「実は……向こうに仲間を置いて来たんです」
「実は……向こうに仲間を置いて来たんです」
少々言い淀みながら、少女が指を差す。
今の今まで、二体の巨大な怪物が暴れていた場所を。
今の今まで、二体の巨大な怪物が暴れていた場所を。
◆◆◆
ヘルメットを被っていないのもあり、頬を叩く風は普段以上に冷たい気がした。
肌が冷えても、燻り続ける怒りを鎮める効果はロクに発揮されず。
まして命の懸かった正真正銘の殺し合いで、能天気に風を浴びた心地良さを感じられる訳がない。
肌が冷えても、燻り続ける怒りを鎮める効果はロクに発揮されず。
まして命の懸かった正真正銘の殺し合いで、能天気に風を浴びた心地良さを感じられる訳がない。
助けられなかった己と、奪い去った悪しきプレイヤー。
両名への怒りは治まる気配がなく、煮え滾るマグマのよう。
今からでも引き返し、叩き潰さんと挑むのは不可能じゃない。
因縁深い星狩りの兵器は、認めたくないが武器として申し分ない性能。
軽くない消耗を抱えたままだとて、敗北の末路を木っ端微塵に打ち砕く自信がある。
両名への怒りは治まる気配がなく、煮え滾るマグマのよう。
今からでも引き返し、叩き潰さんと挑むのは不可能じゃない。
因縁深い星狩りの兵器は、認めたくないが武器として申し分ない性能。
軽くない消耗を抱えたままだとて、敗北の末路を木っ端微塵に打ち砕く自信がある。
しかし、頭にへばりつく選択を万丈は取れない。
走行中のDホイールに跨るのは、自分一人に非ず。
傷を負い、意識を手放した男。
助かるかどうかが己に委ねられた命を二の次にし、敵対者との戦闘へ飛び込む。
ヒーローとは到底言えない、ソレを躊躇なく選べたのは最早過去。
救いを求める声を切り捨てて、逸る衝動だけに身を任せ拳を振るう。
新世界で突き付けられた過ちを、二度と繰り返さないとの決意は偽りなんかじゃない。
だから振り返らずに、突き進むしか出来なかった。
走行中のDホイールに跨るのは、自分一人に非ず。
傷を負い、意識を手放した男。
助かるかどうかが己に委ねられた命を二の次にし、敵対者との戦闘へ飛び込む。
ヒーローとは到底言えない、ソレを躊躇なく選べたのは最早過去。
救いを求める声を切り捨てて、逸る衝動だけに身を任せ拳を振るう。
新世界で突き付けられた過ちを、二度と繰り返さないとの決意は偽りなんかじゃない。
だから振り返らずに、突き進むしか出来なかった。
「……誰も来ねぇな」
エリア同士の境界線を越えてもブレーキは掛けず、エンジン音を響かせどれくらい経ったか。
徐々に速度を緩め停車、最大限に気を払うも接近の気配は無し。
追跡を諦めた、若しくはわざわざ追い掛けてまで殺すつもりもない。
どちらが正解か、両方とも間違っているかはともかく。
重体の者を抱えながらの鬼ごっこには、発展しなかったらしい。
徐々に速度を緩め停車、最大限に気を払うも接近の気配は無し。
追跡を諦めた、若しくはわざわざ追い掛けてまで殺すつもりもない。
どちらが正解か、両方とも間違っているかはともかく。
重体の者を抱えながらの鬼ごっこには、発展しなかったらしい。
無事逃げ切れたと、安堵に顔を綻ばせられはしない。
先の場に一人残った、機械仕掛けの戦士がどうなったか。
分からない筈がなく、だからこそやり切れない思いが灰のように積もる。
先の場に一人残った、機械仕掛けの戦士がどうなったか。
分からない筈がなく、だからこそやり切れない思いが灰のように積もる。
「追い掛けて来いって言っただろうがよ……」
それが果たせない事など、万丈だって最初から分かっていた。
分かっていて尚、任せるしかなかった己の弱さがひたすらに腹立たしい。
覚悟を決め、戦う為の力が手元にあったとしても。
取り零す命が出て来るとは、旧世界の死闘で幾度も思い知らされて来た。
今が初めてじゃなく、かといってあっさり切り替えられる程薄情になったつもりもない。
分かっていて尚、任せるしかなかった己の弱さがひたすらに腹立たしい。
覚悟を決め、戦う為の力が手元にあったとしても。
取り零す命が出て来るとは、旧世界の死闘で幾度も思い知らされて来た。
今が初めてじゃなく、かといってあっさり切り替えられる程薄情になったつもりもない。
怒りのぶつけ先に惑い、搭乗中のマシンへ思わず拳を落としそうになるも。
キーキーという鳴き声が聞こえ、寸での所で力を抜く。
八つ当たり染みた真似に出るよりもまず、優先すべき存在がいるだろう。
堪え切れないものを無理やり吐き出すように、深呼吸を一度だけ行い。
近場の建造物へDホイールを走らせた。
キーキーという鳴き声が聞こえ、寸での所で力を抜く。
八つ当たり染みた真似に出るよりもまず、優先すべき存在がいるだろう。
堪え切れないものを無理やり吐き出すように、深呼吸を一度だけ行い。
近場の建造物へDホイールを走らせた。
年季の入ったアパートの前に止まると、デイパックにマシンを収納。
そこいらに放置しては、身を潜めているのを知らせるのと何ら変わらない。
同乗者を背負い、二階の一番奥の部屋に入る。
自立行動ユニット、クローズドラゴンが中をざっと飛び回り確認。
先客はおらず、屋内に上がり込むや背負った男を一旦下ろす。
押し入れから布団を引っ張り出し、仰向けに寝かせてやった。
そこいらに放置しては、身を潜めているのを知らせるのと何ら変わらない。
同乗者を背負い、二階の一番奥の部屋に入る。
自立行動ユニット、クローズドラゴンが中をざっと飛び回り確認。
先客はおらず、屋内に上がり込むや背負った男を一旦下ろす。
押し入れから布団を引っ張り出し、仰向けに寝かせてやった。
(手当しないとヤベェよな……)
巻かれた包帯には赤い染みが滲み出ており、傷口が開いたのは明らか。
処置の痕跡の多さを見るに、自分よりも戦闘の機会が多かったのだろう。
誰と戦って来たかは、起きてから聞ける事だ。
自分の支給品は一つ残らず、戦闘に関係するものばかり。
回復可能な道具がないか、気絶中の男へ一言断りを入れデイパックの口を開ける。
処置の痕跡の多さを見るに、自分よりも戦闘の機会が多かったのだろう。
誰と戦って来たかは、起きてから聞ける事だ。
自分の支給品は一つ残らず、戦闘に関係するものばかり。
回復可能な道具がないか、気絶中の男へ一言断りを入れデイパックの口を開ける。
『やっと出れたぁ!ガイ!?ガイはどうなっ――あーっ!あなた!』
「うおおおおおおお!?」
「うおおおおおおお!?」
腕を突っ込み、指先が触れた物を取り出してみれば。
響き渡る大音量に、仰天し手を離す。
思わず布団の上を見やるも、起きた様子はない。
一体全体何事かと、音の発生源を慎重に拾い上げる。
携帯ゲーム機を思わせる形状の、タッチパネル画面付きデバイス。
電源か何かを誤って入れたのかと首を捻り、映り込んだ姿に二度目の驚愕を抱いた。
響き渡る大音量に、仰天し手を離す。
思わず布団の上を見やるも、起きた様子はない。
一体全体何事かと、音の発生源を慎重に拾い上げる。
携帯ゲーム機を思わせる形状の、タッチパネル画面付きデバイス。
電源か何かを誤って入れたのかと首を捻り、映り込んだ姿に二度目の驚愕を抱いた。
「お前……あの時の!」
派手なピンクのボブカットヘアーに、音符をあしらったカラフルな衣装。
ゲームキャラクターが現実に飛び出たような、風変わりな外見。
小さな画面越しに自分を見つめる、何とも奇妙な女は万丈と初対面ではない。
ゲームキャラクターが現実に飛び出たような、風変わりな外見。
小さな画面越しに自分を見つめる、何とも奇妙な女は万丈と初対面ではない。
「確か……そうだ、オッパッピー!」
『ポッピーだよ!どっからオが出て来たの!?』
「わ、悪い。全部パ行で逆に覚え辛くてよ……」
『ポッピーだよ!どっからオが出て来たの!?』
「わ、悪い。全部パ行で逆に覚え辛くてよ……」
画面の中から怒るポッピーへ、万丈もつい頭を下げる。
エニグマの起動に巻き込まれ、平行世界の地球へ飛ばされた時。
聖都大学附属病院を万丈は訪れており、ポッピーを含めたCRの者達と面識がある。
エニグマの起動に巻き込まれ、平行世界の地球へ飛ばされた時。
聖都大学附属病院を万丈は訪れており、ポッピーを含めたCRの者達と面識がある。
片やスカイウォールの存在しない地球へ、訳も分からず転移させられ。
片やネビュラバグスターの襲撃を受け、負傷者の対応の真っ最中と。
双方余裕のない状況でのファーストコンタクトにより、友好的な第一印象はどちらも抱けず。
加えて当時は仮面ライダービルドに成分を奪われたのが原因で、永夢がエグゼイドの変身能力を喪失していたのも影響し。
険悪一歩手前の邂逅となったのは、どちらも覚えている。
とはいえ最上魁星との戦いを通じて、そういった蟠りも解消。
以前のような悪印象は持っていないが、それはそれとして驚きはゼロじゃなかった。
片やネビュラバグスターの襲撃を受け、負傷者の対応の真っ最中と。
双方余裕のない状況でのファーストコンタクトにより、友好的な第一印象はどちらも抱けず。
加えて当時は仮面ライダービルドに成分を奪われたのが原因で、永夢がエグゼイドの変身能力を喪失していたのも影響し。
険悪一歩手前の邂逅となったのは、どちらも覚えている。
とはいえ最上魁星との戦いを通じて、そういった蟠りも解消。
以前のような悪印象は持っていないが、それはそれとして驚きはゼロじゃなかった。
「何でお前までここにいるんだよ?名簿にパ行だらけの名前なんざ載ってねぇぞ?」
『あ、そっから話さないとダメか……。でも今は待って!私の説明より、ガイは大丈夫なの!?』
『あ、そっから話さないとダメか……。でも今は待って!私の説明より、ガイは大丈夫なの!?』
焦燥を隠さない様子に、万丈も詳しく聞くのは後回しと思考を切り替える。
何故ポッピーまで巻き込まれているのか、気になるが優先すべきはそこじゃない。
傷の回復に使える道具があるかを尋ねるも、首を横に振られ空振り。
となると頼みの綱は、足止めを引き受けたヒューマギアの支給品。
滅のデイパックに望みを託し、中を確認する。
何故ポッピーまで巻き込まれているのか、気になるが優先すべきはそこじゃない。
傷の回復に使える道具があるかを尋ねるも、首を横に振られ空振り。
となると頼みの綱は、足止めを引き受けたヒューマギアの支給品。
滅のデイパックに望みを託し、中を確認する。
「なんだこりゃ?」
袋詰めされたナニカへ首を傾げ、同封の説明書に目を通す。
読み終わると、正に打って付けのアイテムだと判明。
だが万丈の顔に喜びはなく、胡散臭いものを見る視線を手元に向けた。
読み終わると、正に打って付けのアイテムだと判明。
だが万丈の顔に喜びはなく、胡散臭いものを見る視線を手元に向けた。
「本当にこれで治んのかよ?あの大馬鹿野郎がデタラメ書いたんじゃねぇのか?」
『それはない、かな。ゲームに関してだけなら、クロトはいつでも本気だから……』
『それはない、かな。ゲームに関してだけなら、クロトはいつでも本気だから……』
疑わし気な万丈へ、複雑な面持ちでポッピーがやんわりと否定。
殺し合いという暴挙に出た事への怒りは健在であるも、檀黎斗を前々から深く知っているだけに。
自らのゲーム開発に注ぐ情熱は、いつだって本気だと理解している。
故にこそ、虚偽の情報をプレイヤーに伝える可能性はゼロに等しい。
CRのメンバー程、黎斗を知らない万丈には簡単に頷けないが。
殺し合いという暴挙に出た事への怒りは健在であるも、檀黎斗を前々から深く知っているだけに。
自らのゲーム開発に注ぐ情熱は、いつだって本気だと理解している。
故にこそ、虚偽の情報をプレイヤーに伝える可能性はゼロに等しい。
CRのメンバー程、黎斗を知らない万丈には簡単に頷けないが。
「……一応、俺が先に食ってみる。もし毒でも入ってたらヤベェしな」
『えっ?あなたも危ないんじゃないの?』
「俺は……まあ大丈夫だろ。鍛えて、毎日プロテイン飲みまくってからよ」
『それ大丈夫って言わないよ……』
『えっ?あなたも危ないんじゃないの?』
「俺は……まあ大丈夫だろ。鍛えて、毎日プロテイン飲みまくってからよ」
『それ大丈夫って言わないよ……』
何を言ってるんだろうかと、大いに呆れを含んだ視線も何のその。
毒味のように、袋から一つ取り出し口に放る。
数度租借し嚥下、無言のままの万丈へ恐る恐る尋ねた。
毒味のように、袋から一つ取り出し口に放る。
数度租借し嚥下、無言のままの万丈へ恐る恐る尋ねた。
『どう……?』
「甘酸っぱくて、思ったよりも美味ぇな」
『いや味の感想じゃなくて!』
「……おっ、なんか体があんまり痛くなくなってんぞ!」
「甘酸っぱくて、思ったよりも美味ぇな」
『いや味の感想じゃなくて!』
「……おっ、なんか体があんまり痛くなくなってんぞ!」
斜め上の返答から一転、自身の体の変化へ気付く。
戦闘で負った傷の痛みが、不思議と薄れてるではないか。
ブラッド族の遺伝子が流れる万丈と言えども、流石にここまでの短時間で回復は進まない。
何らかの副作用らしきものも確認出来ず、記載通りの効果が発揮されるのは本当らしい。
戦闘で負った傷の痛みが、不思議と薄れてるではないか。
ブラッド族の遺伝子が流れる万丈と言えども、流石にここまでの短時間で回復は進まない。
何らかの副作用らしきものも確認出来ず、記載通りの効果が発揮されるのは本当らしい。
そうと分かれば使用に躊躇はない。
眠り続ける相手の口に含ませ、咽ないように水で流し込む。
数秒と経たず顔色が良くなり、一先ずは危機を乗り越えたと言って良いだろう。
眠り続ける相手の口に含ませ、咽ないように水で流し込む。
数秒と経たず顔色が良くなり、一先ずは危機を乗り越えたと言って良いだろう。
「……なんだ?」
窓の外の異変に気付いたのは、その直後のことだった。
○
「……っ」
目を覚ますと、節々に鈍い痛みが走った。
同じ体勢で寝続けたからだろう、関節がパキパキと不快な音を立てる。
顔を顰めながら上体を起こし、筋肉を軽く解す最中に気付く。
気を失う程のダメージを負ったにしては、痛みが妙に薄い。
何が起きたかを天津が考え込むよりも先に、近付く気配があった。
同じ体勢で寝続けたからだろう、関節がパキパキと不快な音を立てる。
顔を顰めながら上体を起こし、筋肉を軽く解す最中に気付く。
気を失う程のダメージを負ったにしては、痛みが妙に薄い。
何が起きたかを天津が考え込むよりも先に、近付く気配があった。
「おっと、あんま無理すんなよ。治ったつっても、今まで気絶したままだったんだぜ?」
「君は……」
「君は……」
青いスカジャンに茶髪の青年は、天津にも見覚えがある。
暴走した或人を止めるべく、バイクで颯爽と駆け付けた仮面ライダーだ。
自分も自分で戦闘に集中を余儀なくされ、言葉を交わす暇など到底なかったが。
あの状況で戦場に飛び込み、恐らく自分をここまで運んだ参加者とくれば。
殺し合いを肯定する輩でないと、馬鹿でも分かる。
暴走した或人を止めるべく、バイクで颯爽と駆け付けた仮面ライダーだ。
自分も自分で戦闘に集中を余儀なくされ、言葉を交わす暇など到底なかったが。
あの状況で戦場に飛び込み、恐らく自分をここまで運んだ参加者とくれば。
殺し合いを肯定する輩でないと、馬鹿でも分かる。
「まだ言ってなかったな。俺はプロテインの貴公子、万・丈・りゅ『ガイ!起きたの!?良かったぁ~~~……心配してたんだからね!』って、うおい!?せめて最後まで言わせろよ!」
決め顔の名乗りを遮り、画面越しから安堵の喜びが天津の耳にも届く。
文句を言う青年の手の中には、元々自分に支給されたツール。
『彼女』も自分と同じく、ここまで運ばれたらしい。
文句を言う青年の手の中には、元々自分に支給されたツール。
『彼女』も自分と同じく、ここまで運ばれたらしい。
「君も無事で何よりだ、ポッピー。…ところで、こちらの彼は?」
『あっ、そうだった。自己紹介の続きしていいよ、リュウガ!えっと確か、貴公子とかってとこまでは言ってて……』
「やめろって!言い直すなよ!」
『あっ、そうだった。自己紹介の続きしていいよ、リュウガ!えっと確か、貴公子とかってとこまでは言ってて……』
「やめろって!言い直すなよ!」
何やら珍妙な二つ名を思い出そうとするポッピーを、今更ながら気恥ずかしそうに止める。
誤魔化すように後頭部を掻きながら、自身の名を伝えた。
万丈龍我と名乗った青年に、天津が会うのはこれが最初。
しかし存在自体は定時放送の前から、既に把握済だ。
誤魔化すように後頭部を掻きながら、自身の名を伝えた。
万丈龍我と名乗った青年に、天津が会うのはこれが最初。
しかし存在自体は定時放送の前から、既に把握済だ。
「そうか……君が一海君の仲間の……」
「お前カズミンと会って…!?ああいや、確かキャルが言ってた奴の一人がお前だったもんな」
「っ、キャルくんを知っているのか?」
「お前カズミンと会って…!?ああいや、確かキャルが言ってた奴の一人がお前だったもんな」
「っ、キャルくんを知っているのか?」
喪った仲間が、信頼出来ると伝えた青年。
出会った少女が、信用して問題無いと伝えた男。
双方異なる参加者からの情報で、相手の事はある程度知っていた。
余計な衝突もなく、情報開示へ自然と流れて行く。
出会った少女が、信用して問題無いと伝えた男。
双方異なる参加者からの情報で、相手の事はある程度知っていた。
余計な衝突もなく、情報開示へ自然と流れて行く。
だがまず、天津には優先して聞かねばならないものがあった。
「龍我君、君がここまで連れて来たのは私だけなのか?」
「……おう」
「……おう」
明らかに表情へ影が差し、頷く万丈に天津も最悪の展開を察しざるを得ない。
怒りと無力感を噛み締めながら、ポツポツと語られる。
奇抜な装いの術師の手で、或人の命が奪われた。
自分達を逃がす為に滅はあの場へ残り、未だに追いかけて来ないと。
無事に生き延びて、その内なんでもないように顔を出す。
などと都合の良い展開へ、楽観的に期待を抱く段階はとうに過ぎた。
滅がどうなったかは、誰に指摘されずとも分かる。
怒りと無力感を噛み締めながら、ポツポツと語られる。
奇抜な装いの術師の手で、或人の命が奪われた。
自分達を逃がす為に滅はあの場へ残り、未だに追いかけて来ないと。
無事に生き延びて、その内なんでもないように顔を出す。
などと都合の良い展開へ、楽観的に期待を抱く段階はとうに過ぎた。
滅がどうなったかは、誰に指摘されずとも分かる。
「そう、か……」
肩を落とし、自分でも驚く程掠れた声を絞り出す。
万丈の奮戦の甲斐もあり、或人は正気に戻った。
だというのに直後、術師に殺されたのだ。
余りにもやり切れず、彼を手に掛けた張本人と。
何より、気絶し何も出来なかった自分への怒りが沸々と湧く。
灯花に勝ってさえいれば、或人が殺されるのも防げたんじゃないか。
滅が足止めを買って出る必要だって、なかった筈。
万丈の奮戦の甲斐もあり、或人は正気に戻った。
だというのに直後、術師に殺されたのだ。
余りにもやり切れず、彼を手に掛けた張本人と。
何より、気絶し何も出来なかった自分への怒りが沸々と湧く。
灯花に勝ってさえいれば、或人が殺されるのも防げたんじゃないか。
滅が足止めを買って出る必要だって、なかった筈。
(何をやっているんだろうな、私は……)
一海や承太郎の時と同じだ、取り零してばかりの自分だけが生を拾い続けている。
いいやそもそも、不破達が死んだ時から何も変わっていない。
悪辣なゲームで悉く、力の無さを痛感する。
普段は自信家の天津といえども、今回ばかりは自分の弱さを恨まずにいられない。
いいやそもそも、不破達が死んだ時から何も変わっていない。
悪辣なゲームで悉く、力の無さを痛感する。
普段は自信家の天津といえども、今回ばかりは自分の弱さを恨まずにいられない。
「…悪い。或人も滅の奴も、一緒に連れて来れなかった」
「謝らないでくれ。君がいなければ私もポッピーも、今こうして話せてはいなかった」
「謝らないでくれ。君がいなければ私もポッピーも、今こうして話せてはいなかった」
同じく無力感に苛まれる万丈が、頭を下げるのを制する。
自分達の命の恩人であり、命懸けで或人を正気に戻したのだ。
感謝こそすれど、責めるなどとんでもない。
自分達の命の恩人であり、命懸けで或人を正気に戻したのだ。
感謝こそすれど、責めるなどとんでもない。
「それに妙な話に聞こえるかもしれないが、彼の最期を聞き……少しホッとしている。私の知る本来の彼に、君が戻してくれたんだろう?」
万丈を庇って或人は術師に殺された。
覆せない事実を嘆く気持ちは当然あるが、一方で最後の最後に。
人とヒューマギアの懸け橋になるべく奔走した、復讐に囚われる前の。
自分以外の誰かの為に本気になれる、そんな或人らしさを取り戻せた事へ。
敵対という形であれど、幾度も見て来ただけに安堵があったのは否定出来ない。
叶うならば、生きて元いた時間へ帰還して欲しかったのも本音だが。
覆せない事実を嘆く気持ちは当然あるが、一方で最後の最後に。
人とヒューマギアの懸け橋になるべく奔走した、復讐に囚われる前の。
自分以外の誰かの為に本気になれる、そんな或人らしさを取り戻せた事へ。
敵対という形であれど、幾度も見て来ただけに安堵があったのは否定出来ない。
叶うならば、生きて元いた時間へ帰還して欲しかったのも本音だが。
「難しいかもしれないが、余り気に病まないでくれ。彼らを知る者として、私は君を責めるつもりなど一切ないのだからね」
「……分かったよ。あんた、なんつーか…聞いてたよりも良い奴だな」
「出会いに恵まれたから、とだけ言っておこう」
「……分かったよ。あんた、なんつーか…聞いてたよりも良い奴だな」
「出会いに恵まれたから、とだけ言っておこう」
或人から過去の所業を聞いた時は、正直素直に信頼を向けるのは難しいと感じた。
しかし実際に会ってみると、抱いた印象とは全く異なる。
仲間の死に本気で悲しみ、それでいて年長者らしい気遣いも見せる男。
考えてみればキャルと会った時にも、天津へ特別悪い反応などはなかったのだ。
過去の行いを悔いているのは、成程事実なのだろう。
しかし実際に会ってみると、抱いた印象とは全く異なる。
仲間の死に本気で悲しみ、それでいて年長者らしい気遣いも見せる男。
考えてみればキャルと会った時にも、天津へ特別悪い反応などはなかったのだ。
過去の行いを悔いているのは、成程事実なのだろう。
「ところで、先程の話では君はキャルくんに会ったようだが……」
「あー、それなんだけどよ」
「あー、それなんだけどよ」
何とも言えない表情を浮かべながら、天津の聞きたがってる内容について説明。
或人達を見付ける少し前、ブラック・ホールに巻き込まれたキャルと遭遇。
彼女が元々目的地にしていた、メダルガッシャーまで同行し別れた。
と、数十分前の万丈ならそこで話は終わりだがもう違う。
或人達を見付ける少し前、ブラック・ホールに巻き込まれたキャルと遭遇。
彼女が元々目的地にしていた、メダルガッシャーまで同行し別れた。
と、数十分前の万丈ならそこで話は終わりだがもう違う。
天津が眠っている間、窓の向こうで異変を捉えたのだ。
エリア内の都市部が広まる区画にて、離れた位置からでも建造物の倒壊を確認。
何事かと目を見開く瞬間にも事態は動き続け、やがて巨大な怪鳥が何処かへ飛び去って行った。
万丈の知る限り、ああいった怪獣の姿になれるのはウルトラゼットライザーを持つキャル一人。
一体あの場で何が起こったのか、キャルは誰と戦ったのか。
他に何人の参加者がいるのか、当然気にならない訳がない。
とはいえ気絶中の天津を置いて行くのは、幾ら何でも危険過ぎる。
だから目が覚めるまで待つしかなかった。
エリア内の都市部が広まる区画にて、離れた位置からでも建造物の倒壊を確認。
何事かと目を見開く瞬間にも事態は動き続け、やがて巨大な怪鳥が何処かへ飛び去って行った。
万丈の知る限り、ああいった怪獣の姿になれるのはウルトラゼットライザーを持つキャル一人。
一体あの場で何が起こったのか、キャルは誰と戦ったのか。
他に何人の参加者がいるのか、当然気にならない訳がない。
とはいえ気絶中の天津を置いて行くのは、幾ら何でも危険過ぎる。
だから目が覚めるまで待つしかなかった。
「そんなことが……いや、確かあの場所には…」
話を聞いた天津はふと、聖都大学附属病院でのやり取りを思い出す。
キャルに支給された、会場の施設の詳細を把握可能なアプリ。
見せてもらった中で一つ、自分達がいるエリア内に該当するものがあった筈。
逃げて来た方角を万丈から聞き、更に都市部の存在もあってほぼ間違いない。
キャルに支給された、会場の施設の詳細を把握可能なアプリ。
見せてもらった中で一つ、自分達がいるエリア内に該当するものがあった筈。
逃げて来た方角を万丈から聞き、更に都市部の存在もあってほぼ間違いない。
「東都先端物質科学研究所。首輪を外すのに十分な設備が整っている施設の一つが、あそこにあった筈だ」
「おいそれって……パンドラボックスが置かれてたとこじゃねぇか!?」
「おいそれって……パンドラボックスが置かれてたとこじゃねぇか!?」
以前戦兎が雇われ、まだファウストに所属していた頃の幻徳が所長を務めた研究所だ。
まさかそんな場所までもが、再現されてるとは予想外。
ナイトローグやブラッドスタークと死闘を繰り広げ、その少し後に仮面ライダーとなったのは今でもハッキリ思い出せる。
まさかそんな場所までもが、再現されてるとは予想外。
ナイトローグやブラッドスタークと死闘を繰り広げ、その少し後に仮面ライダーとなったのは今でもハッキリ思い出せる。
『知ってる場所?じゃあもしかしたら、リュウガの仲間がそこに寄った可能性もあるのかな?』
「戦兎と幻さん、あとエボルトの野郎も無視はしない筈だ。キャルの奴、そんなとこで何に巻き込まれたんだよ……」
「戦兎と幻さん、あとエボルトの野郎も無視はしない筈だ。キャルの奴、そんなとこで何に巻き込まれたんだよ……」
単に研究所の存在を知れただけなら、仲間との合流に期待を抱くだけだった。
生憎とこの目で見た大規模な破壊に加え、飛び去ったキャルらしき怪獣。
上記が影響し、どうも嫌な予感を拭えない。
生憎とこの目で見た大規模な破壊に加え、飛び去ったキャルらしき怪獣。
上記が影響し、どうも嫌な予感を拭えない。
「キャルくんを追い掛けて話を聞くのが手っ取り早いが……」
『今から追い付くのは難しい、よねぇ』
『今から追い付くのは難しい、よねぇ』
飛び去ってから時間が経ち、おまけに向こうも相当な速さで飛行したのは確かだ。
仮にDホイールを全速力で走らせたとて、流石にもう無理だろう。
無事かどうかはともかく、キャルの生存が確認出来ただけでもマシだが。
仮にDホイールを全速力で走らせたとて、流石にもう無理だろう。
無事かどうかはともかく、キャルの生存が確認出来ただけでもマシだが。
よもやキャルが『襲われた』のでなく、『襲った』側だとは夢にも思わず。
追い掛けるのは諦め、残る選択肢は研究所が設置された都市の調査に赴くこと。
戦兎達がまだ残っているか、仮に去った後でも行き先を示す手掛かりが見付かる可能性はゼロじゃない。
もし戦兎や幻徳がいなかったとしても、カイト達のように重傷を負った参加者がいても不思議はない。
追い掛けるのは諦め、残る選択肢は研究所が設置された都市の調査に赴くこと。
戦兎達がまだ残っているか、仮に去った後でも行き先を示す手掛かりが見付かる可能性はゼロじゃない。
もし戦兎や幻徳がいなかったとしても、カイト達のように重傷を負った参加者がいても不思議はない。
「俺は全然戦えっけどよ、あんたは大丈夫なのか?」
「問題無い、君が支給品を使ってくれたおかげだ」
「問題無い、君が支給品を使ってくれたおかげだ」
疲労こそ残っているも、アパート内で休んだ為幾分マシになった。
向かった先で戦闘になろうと、十分戦える。
互いに反対が出ない以上、長々と留まる時間はもう終わりだ。
部屋を出て、Dホイールに跨り発進。
向かった先で戦闘になろうと、十分戦える。
互いに反対が出ない以上、長々と留まる時間はもう終わりだ。
部屋を出て、Dホイールに跨り発進。
どうか手遅れにならないでくれと願い、研究所への道を急いだ。
○
予想に反して街は綺麗なまま、なんてことがある筈なく。
進めば進む程に、破壊の痕跡は深刻さを増すばかり。
進めば進む程に、破壊の痕跡は深刻さを増すばかり。
怪獣が暴れたようだと誰かが例えれば、それが事実と天津は頷き返す。
ウルトラゼットライザーを使い、キャルがこの場所で戦闘を行った。
であれば破壊された複数の建造物にも納得が――いかない。
ウルトラゼットライザーを使い、キャルがこの場所で戦闘を行った。
であれば破壊された複数の建造物にも納得が――いかない。
(戦闘が激しかったにしても、本当にここまでの被害をキャルくんが出したのか?)
定時放送が終わり間もない頃、病院で起きた戦闘にて。
トライキングやファイブキング等、怪獣に変身しキャルは襲撃者を相手取った。
しかしあの時は、仲間に巻き添えが及ばないように立ち回っていた筈。
可能な限り大技を避け、病院に攻撃が届かない位置へ動く。
そのおかげで、天津達も各々自身の戦闘に集中できたのだ。
トライキングやファイブキング等、怪獣に変身しキャルは襲撃者を相手取った。
しかしあの時は、仲間に巻き添えが及ばないように立ち回っていた筈。
可能な限り大技を避け、病院に攻撃が届かない位置へ動く。
そのおかげで、天津達も各々自身の戦闘に集中できたのだ。
だが都市に広がる破壊痕から、病院で見せた立ち回りはまるで窺えない。
此度はキャル単独での戦闘であり、周囲へ気を回す必要がなかっただけかもしれないが。
此度はキャル単独での戦闘であり、周囲へ気を回す必要がなかっただけかもしれないが。
自身の知るキャルとはどこか噛み合わない、ちぐはぐさに首を傾げる。
疑問は膨れ上がるも、即座に答えが出る類ではない。
結局今は保留にするしかなく、気付けば目的地に到着。
疑問は膨れ上がるも、即座に答えが出る類ではない。
結局今は保留にするしかなく、気付けば目的地に到着。
「本当に、またここに来たんだな……」
Dホイールを降り、聳え立つ研究所を懐かし気に見上げる。
戦兎が創った新世界にスカイウォールは存在せず、当然この研究所だってない。
良い思い出があるとはいえないが、本当なら二度とお目に掛かれない場所だ。
精巧なレプリカに過ぎなくとも、思う所は少なくなかった。
戦兎が創った新世界にスカイウォールは存在せず、当然この研究所だってない。
良い思い出があるとはいえないが、本当なら二度とお目に掛かれない場所だ。
精巧なレプリカに過ぎなくとも、思う所は少なくなかった。
「無事とは言い難いが、周囲に比べれば被害は免れているな」
「ってことは、誰か中にいてもおかしくねぇか」
「ってことは、誰か中にいてもおかしくねぇか」
例に漏れず研究所は壊されているが、全壊には至っていない。
内部の探索が可能であれば、無視する選択は無し。
念の為にドライバーを装着し、いつでも変身出来る状態となり踏み込む。
内部の探索が可能であれば、無視する選択は無し。
念の為にドライバーを装着し、いつでも変身出来る状態となり踏み込む。
「……中も俺の知ってるまんまだ」
『まあクロトなら、手抜きしないで本物と全部同じにするくらいはやると思うよ?』
「情熱の方向性をもっと倫理の面でも発揮してもらいたいが……」
『まあクロトなら、手抜きしないで本物と全部同じにするくらいはやると思うよ?』
「情熱の方向性をもっと倫理の面でも発揮してもらいたいが……」
瓦礫が散乱した区画を抜け、破壊を免れた箇所が見えて来た。
小綺麗な廊下に二人分の足音が響き、やがて最奥の部屋の前に到着。
耳を澄ますも、中から物音は聞こえてこない。
扉一枚隔てた先に、参加者の気配は感じ取れなかった。
小綺麗な廊下に二人分の足音が響き、やがて最奥の部屋の前に到着。
耳を澄ますも、中から物音は聞こえてこない。
扉一枚隔てた先に、参加者の気配は感じ取れなかった。
ゆっくりと開け、万丈が先行し足を踏み入れる。
それなりに広い部屋で、真っ先に視線が向かったのは盛り上がったシーツ。
何を隠す為に被せたかを、自分達の現状で察せられない程鈍くはない。
恐る恐る近付き、天津と頷き合いシーツを剥がし、
それなりに広い部屋で、真っ先に視線が向かったのは盛り上がったシーツ。
何を隠す為に被せたかを、自分達の現状で察せられない程鈍くはない。
恐る恐る近付き、天津と頷き合いシーツを剥がし、
「――――――――――は?」
予想通りのものと、予想していなかった顔がそこにあった。
横たわり、ピクリとも動かない人間。
腹部を中心に衣服は赤黒く汚れ、既に乾きつつある。
命を奪った原因の傷だと、誰の目にも明らか。
死んだ参加者を野晒しにしておけず、屋内へ安置していった。
殺し合いでは大騒ぎするものじゃない、起こり得ると万丈にだって分かる。
事実、死体を隠す為だと察しが付いた上で晒したのだ。
腹部を中心に衣服は赤黒く汚れ、既に乾きつつある。
命を奪った原因の傷だと、誰の目にも明らか。
死んだ参加者を野晒しにしておけず、屋内へ安置していった。
殺し合いでは大騒ぎするものじゃない、起こり得ると万丈にだって分かる。
事実、死体を隠す為だと察しが付いた上で晒したのだ。
「おい、なにしてんだよ」
だけど、目の前に転がっているソレが。
自分の知る、自分が最も信頼を置く仲間であるとは。
自分の知る、自分が最も信頼を置く仲間であるとは。
「なに寝てんだよ。おい」
桐生戦兎の屍だと、誰が信じられようか。
「ははーん、お前さてはあれだな?俺が来るのが遅かったから、へそ曲げてしょうもねぇドッキリ仕組んでんだろ?っとに捻くれてんなぁ」
あえておどけたように言う今の自分が、どんな顔をしてるか。
酷く引き攣った、下手くそなピエロのようだと万丈は気付かない。
普段仲間同士で、馬鹿話をする時と同じ調子で舌が回り。
その声が、どうしようもなく震えてると気付く余裕など存在しない。
酷く引き攣った、下手くそなピエロのようだと万丈は気付かない。
普段仲間同士で、馬鹿話をする時と同じ調子で舌が回り。
その声が、どうしようもなく震えてると気付く余裕など存在しない。
「その手には乗らねぇぞ?こんな胡散臭い芝居で騙そうなんざ、馬鹿だなーお前は」
反応はない。
眉を吊り上げ反論したり、肩を竦め偉そうにあしらったり。
旧世界で初めて会い、自分の無実を信じて共に戦うようになってからずっと。
戦兎との間にあったやり取りは、もう二度と起こらない。
眉を吊り上げ反論したり、肩を竦め偉そうにあしらったり。
旧世界で初めて会い、自分の無実を信じて共に戦うようになってからずっと。
戦兎との間にあったやり取りは、もう二度と起こらない。
「……何で、何も言わないんだよ。普段散々筋肉馬鹿って言ってる奴から、馬鹿呼ばわりされてんだぞ。起きて言い返してみろよ。いつもみたいに、偉そうに何か言ってみろよ。なぁ」
返事なんて返って来る筈がない相手へ、何度も呼びかける。
肩を揺さぶり、ふいに首に指が触れて。
生きてる証の温もりが、全く感じられないのに。
それでも止めない万丈を、痛まし気に天津が制止する。
肩を揺さぶり、ふいに首に指が触れて。
生きてる証の温もりが、全く感じられないのに。
それでも止めない万丈を、痛まし気に天津が制止する。
「龍我君、彼は……」
口を噤んだ先、何を言う気だったのか。
嫌でも分かる、分かってしまうからこそ。
そうだなと簡単に頷けない。
嫌でも分かる、分かってしまうからこそ。
そうだなと簡単に頷けない。
「そんなわけねぇ……そんなことあるわけねぇだろうが!こいつは、いつだってカッコつけて、偉そうなことばっかり言いやがって、頭に来るくらい自信過剰で……」
本当は、万丈だって分かっていた。
見せしめのように少年少女が命を散らし、デスゲームの阻止に動いた葛葉絋汰が返り討ちに遭い。
飛電或人がゲームオーバーとなるのを、自分の目で見て来た以上。
神が開いた遊戯盤での死は、紛れもない現実。
自身も含めた全プレイヤーへ、平等に死が常に付き纏っている。
見せしめのように少年少女が命を散らし、デスゲームの阻止に動いた葛葉絋汰が返り討ちに遭い。
飛電或人がゲームオーバーとなるのを、自分の目で見て来た以上。
神が開いた遊戯盤での死は、紛れもない現実。
自身も含めた全プレイヤーへ、平等に死が常に付き纏っている。
「こいつが……戦兎が……!神だの魔王だの、大馬鹿野郎どもなんざぶっ倒すヒーローが……!死ぬ筈ねぇんだよ……!」
例えそれが。
自分にとっての相棒であり、最高のヒーローである男だろうと。
神に届かず力尽きる可能性は、決してゼロなんかじゃなかった。
自分にとっての相棒であり、最高のヒーローである男だろうと。
神に届かず力尽きる可能性は、決してゼロなんかじゃなかった。
「龍我君……」
「……クソッ、チクショウ……クソォオオオオオオオオオッ!!!」
「……クソッ、チクショウ……クソォオオオオオオオオオッ!!!」
己への誤魔化しも、長くは続かない。
こちらを見る天津へ顔を合わせられず、膝を付く。
堪らず床を殴りつけるも、拳の痛みなんてまるで感じられない。
こちらを見る天津へ顔を合わせられず、膝を付く。
堪らず床を殴りつけるも、拳の痛みなんてまるで感じられない。
許せなかった、戦兎を殺した顔も分からない誰かが。
悔しかった、戦兎が死の危機に瀕していたのに何も出来なかった自分が。
そして、戦兎とはもう二度と言葉を交わせない。
新世界で続く筈だった日常が、永遠に失われたのが。
泣きたくなるくらいに、痛かった。
悔しかった、戦兎が死の危機に瀕していたのに何も出来なかった自分が。
そして、戦兎とはもう二度と言葉を交わせない。
新世界で続く筈だった日常が、永遠に失われたのが。
泣きたくなるくらいに、痛かった。
『リュウガ……』
仲間を喪った天津にも、殺し合いで永夢と死別したポッピーにも。
万丈がどれ程の悲しみに打ちのめされてるか、理解出来ない筈がなく。
だからこそ、軽々しく声を掛けられない。
息苦しい沈黙が続き、誰もが言葉を発せられない中、
万丈がどれ程の悲しみに打ちのめされてるか、理解出来ない筈がなく。
だからこそ、軽々しく声を掛けられない。
息苦しい沈黙が続き、誰もが言葉を発せられない中、
「っ、何者だ?」
物音を捉えた天津が振り向き、プログライズキーに手を伸ばす。
喪失感に傷付く青年がいて尚、お構いなしで襲う輩なら即刻退場あるのみ。
睨み付ける先で姿を見せたのは、この場の誰も見覚えのない三人だった。
喪失感に傷付く青年がいて尚、お構いなしで襲う輩なら即刻退場あるのみ。
睨み付ける先で姿を見せたのは、この場の誰も見覚えのない三人だった。
「そんな……戦兎まで……」
「一足遅かった、ってことか……」
「一足遅かった、ってことか……」
横たわり息絶えた仲間が目に入り、愕然と呟くのはレイだ。
隣では士も普段の態度を引っ込めて、どこか悔やむように呟く。
ゴルバーの飛翔に巻き込まれたが、地面への激突前にライダーカードでビルドに変身。
更に飛行能力を持つベストマッチフォームの一つ、ローズコプターになり遠く離れたエリアまで吹き飛ぶのを回避。
降り立った先は戦場から北上した場所であり、偶然にもベクターと会えたのだ。
隣では士も普段の態度を引っ込めて、どこか悔やむように呟く。
ゴルバーの飛翔に巻き込まれたが、地面への激突前にライダーカードでビルドに変身。
更に飛行能力を持つベストマッチフォームの一つ、ローズコプターになり遠く離れたエリアまで吹き飛ぶのを回避。
降り立った先は戦場から北上した場所であり、偶然にもベクターと会えたのだ。
「ちょいとばかし、俺らのが空気読めてなかったな」
以前までなら平然と嗤ったであろう、死を嘆く者の存在も。
今のベクターには到底嘲笑の的になど出来ず、少々気まず気に目を逸らす。
今のベクターには到底嘲笑の的になど出来ず、少々気まず気に目を逸らす。
警戒する天津へ噛み付く様子もなく、内の二人は戦兎を見て顔色を曇らせた
もしや敵ではなく戦兎の仲間だったのかと、僅かに戦意を緩め。
不意にこちらへ気付いたレイが、あっと何かに気付いた。
もしや敵ではなく戦兎の仲間だったのかと、僅かに戦意を緩め。
不意にこちらへ気付いたレイが、あっと何かに気付いた。
「その服装とベルト……もしかしてですけど、いろは達が言っていた天津垓ですか?」
「環くんと会ったのか!?ということは、やはりキャルくんもここに……?」
「ええまあ、間違ってはいないんですけど」
「環くんと会ったのか!?ということは、やはりキャルくんもここに……?」
「ええまあ、間違ってはいないんですけど」
否定はしないが、どこか言い辛そうに口を噤む。
戦兎が殺された件も含め、こちらにとっては非常に悪い情報なのか。
詳しい内容は不明なれど、何が起きたかをレイ達は知っている。
戦兎が殺された件も含め、こちらにとっては非常に悪い情報なのか。
詳しい内容は不明なれど、何が起きたかをレイ達は知っている。
「我々が来るまでに何があったか、それを知っているなら詳しく聞かせてもらっても?」
「あ、はい。こっちもそれは問題ないです。ただ……」
「あ、はい。こっちもそれは問題ないです。ただ……」
チラと見るのは、戦兎の死に最も衝撃を受けた青年。
万丈にも天津達の会話は聞こえており、場所を変えて話を聞くのを間違ってるとは言わない。
ただそれでも、今すぐに切り替えられるかは別だ。
万丈にも天津達の会話は聞こえており、場所を変えて話を聞くのを間違ってるとは言わない。
ただそれでも、今すぐに切り替えられるかは別だ。
「……わりぃ、少しだけ時間くれ」
「…分かった。私達は先に別の部屋に行っている」
「…分かった。私達は先に別の部屋に行っている」
万丈の心情を考慮しないものはおらず、ある程度の整理が付くまで待つ。
そう決めると、一人また一人と部屋を後にする。
残ったのは物言わぬヒーローの骸と、その相棒だった青年。
そう決めると、一人また一人と部屋を後にする。
残ったのは物言わぬヒーローの骸と、その相棒だった青年。
生気を失い、瞳の閉じられた顔を見下ろす。
数分か、或いは数十分か。
ひょっとすると、1分すら経っていないのかもしれない。
だがどれだけ時間を掛けた所で、戦兎が目覚める奇跡は起きない。
数分か、或いは数十分か。
ひょっとすると、1分すら経っていないのかもしれない。
だがどれだけ時間を掛けた所で、戦兎が目覚める奇跡は起きない。
「なぁ戦兎……お前、本当に死んじまったのかよ……」
問い掛けへの答えが返って来ないのは、万丈とて百も承知。
頭で分かっていても、心はまだ戦兎の死を受け入れられずにいる。
頭で分かっていても、心はまだ戦兎の死を受け入れられずにいる。
やってもいない殺人罪で捕まり、誰も味方がいない状況での逃亡。
どうしてなんだと嘆く自分へ、世間が向ける目は凶悪な犯罪者への恐れのみ。
絶望的な状況で初めて、無実を信じてくれたのが戦兎だった。
衝突し合い、知った顔で偉そうにあれこれ言われるのも一度や二度じゃなく。
けれどその裏で、自分を助けるべく奔走していた。
戦友であり、相棒であり、自分に手を差し伸べたヒーロー。
それが万丈にとっての、桐生戦兎という男だ。
どうしてなんだと嘆く自分へ、世間が向ける目は凶悪な犯罪者への恐れのみ。
絶望的な状況で初めて、無実を信じてくれたのが戦兎だった。
衝突し合い、知った顔で偉そうにあれこれ言われるのも一度や二度じゃなく。
けれどその裏で、自分を助けるべく奔走していた。
戦友であり、相棒であり、自分に手を差し伸べたヒーロー。
それが万丈にとっての、桐生戦兎という男だ。
無論、戦兎とてビルドドライバーが無ければただの人間だ。
エボルトのような地球外生命体でなく、まして不死身の肉体を持つのでもない。
一海や永夢と同じく、命を落とす可能性へ常に付き纏われた。
実際にこうなったのは、何らおかしな話じゃあない。
エボルトのような地球外生命体でなく、まして不死身の肉体を持つのでもない。
一海や永夢と同じく、命を落とす可能性へ常に付き纏われた。
実際にこうなったのは、何らおかしな話じゃあない。
「クソッ……」
かといって、仕方ないで済ませられる程戦兎の存在は軽くない。
傍でずっと相棒の、仮面ライダービルドの戦いを見て来た。
時に心が折れそうになり、だけど最後には立ち上がって勝利を収めた。
自分の目に焼き付けた姿を忘れていないが故に、此度の殺し合いでも。
檀黎斗達を倒し、ラブアンドピースの大勝利で終止符を打つ。
そんな光景が実現するのだと信じ切っていた。
傍でずっと相棒の、仮面ライダービルドの戦いを見て来た。
時に心が折れそうになり、だけど最後には立ち上がって勝利を収めた。
自分の目に焼き付けた姿を忘れていないが故に、此度の殺し合いでも。
檀黎斗達を倒し、ラブアンドピースの大勝利で終止符を打つ。
そんな光景が実現するのだと信じ切っていた。
「どうしろってんだよ……」
だからこそ、戦兎の死によって思い描いたエンディングが閉ざされた事に。
やがて訪れるゲームマスターとの決戦の場に、戦兎がいない未来に。
逸る鼓動に押されるまま、ここまで突っ走って来た魂へ。
喪失感が枷となり、迷いが万丈を動かせまいとし、
やがて訪れるゲームマスターとの決戦の場に、戦兎がいない未来に。
逸る鼓動に押されるまま、ここまで突っ走って来た魂へ。
喪失感が枷となり、迷いが万丈を動かせまいとし、
「誰よりもそいつを知ってるなら、答えはもう出てるようなもんだろ」
背後から掛けられた声に、ギョッとして振り向く。
いつの間に身か出て行った筈の男、士が部屋に戻って来ていた。
扉を開ける音にも気付かない程、迷いで意識が鈍ったのか。
困惑する万丈の横を通り抜け、戦兎の傍へ歩を進める。
いつの間に身か出て行った筈の男、士が部屋に戻って来ていた。
扉を開ける音にも気付かない程、迷いで意識が鈍ったのか。
困惑する万丈の横を通り抜け、戦兎の傍へ歩を進める。
「お前……何で戻って来て……」
てっきり天津達と一緒に、別室で待っているとばかり。
遅い自分を呼びに来たのかとも思ったが、様子を見るにどうも違う。
じっと戦兎を見つめる男の意図が読めず、余計に頭はこんがらがった。
落ち着かない万丈を笑うでもなく、視線は戦兎に向けたまま。
真剣味を籠めた表情で、静かに口を開く。
遅い自分を呼びに来たのかとも思ったが、様子を見るにどうも違う。
じっと戦兎を見つめる男の意図が読めず、余計に頭はこんがらがった。
落ち着かない万丈を笑うでもなく、視線は戦兎に向けたまま。
真剣味を籠めた表情で、静かに口を開く。
「こいつを本当の意味で死なせない為に、自分の目でもう一度しっかり見ておきたかっただけだ」
「どういうことだよ……?」
「どういうことだよ……?」
言わんとする内容を掴み切れず、訝し気に聞き返す。
戦兎が何者かに殺された以外で、死があるとでもいうのだろうか。
戦兎が何者かに殺された以外で、死があるとでもいうのだろうか。
「今まで旅して来て、世界の数だけライダーや関わる人間に会って来た。死んだ奴も中にはいたが、それでも誰かの記憶には残っていた」
世界中の人々の笑顔を守る為に戦って欲しいと、凄まじき戦士へ託した女がいた。
討つべき異形へ成り果てるも、強く鍛えた魂を弟子に受け継がせた鬼がいた。
彼らの物語は、死という絶対の結末によって終わりを迎えたが。
忘れる事なく記憶する人々がいる限り、生きた証は残り続ける。
討つべき異形へ成り果てるも、強く鍛えた魂を弟子に受け継がせた鬼がいた。
彼らの物語は、死という絶対の結末によって終わりを迎えたが。
忘れる事なく記憶する人々がいる限り、生きた証は残り続ける。
「誰にも覚えられず忘れられるってのは、そいつを二度殺すのと変わらない。だがたった一人でも覚えている奴がいれば、話は別だ」
破壊の果てに再創造し、代わりに自身は装置としての役目を終える。
ディケイドに物語は存在しないと断じられ、一度は幕を閉じ。
しかし旅の仲間達が、門矢士を覚えている者達の願いが実ったから。
もう一度、通りすがりの仮面ライダーとして蘇る事が叶った。
ディケイドに物語は存在しないと断じられ、一度は幕を閉じ。
しかし旅の仲間達が、門矢士を覚えている者達の願いが実ったから。
もう一度、通りすがりの仮面ライダーとして蘇る事が叶った。
過去へ馳せた想いを現在へ引き戻し、亡き戦友の姿を目に焼き付ける。
共有した時間は短くとも、結んだ信頼は誰にも否定させない。
きっと、自分達が見ていない所でも。
最後まで誰かを守る為に戦い、命を散らしたのだろう。
無念も、未練も、後悔も。
全てを背負うのは、生きた者の役目だ。
共有した時間は短くとも、結んだ信頼は誰にも否定させない。
きっと、自分達が見ていない所でも。
最後まで誰かを守る為に戦い、命を散らしたのだろう。
無念も、未練も、後悔も。
全てを背負うのは、生きた者の役目だ。
「後は任せろ、仮面ライダービルド。こんな三流以下のゲームは、俺達で壊してやる」
若きファンガイアの王へ、誓いを立てた時と同じく。
天才物理学者が果たせなかった、檀黎斗の打倒を今一度約束する。
天才物理学者が果たせなかった、檀黎斗の打倒を今一度約束する。
「お前はどうする?戦うのがキツいなら、茶汲み係を任せても良いぞ?」
「……決まってんだろ」
「……決まってんだろ」
試すように問われ、言い返さずにはいられない。
変身した姿は見ていないが、自分と同じ仮面ライダーだろう男が戦意を燃やしているのに。
戦兎の相棒だった男が長々と迷い続ける、そんな自分自身へ段々と腹が立って来た。
ああそうだ、今言われたばかりだろう。
誰よりも戦兎を知るのなら、答えは一つしかない。
変身した姿は見ていないが、自分と同じ仮面ライダーだろう男が戦意を燃やしているのに。
戦兎の相棒だった男が長々と迷い続ける、そんな自分自身へ段々と腹が立って来た。
ああそうだ、今言われたばかりだろう。
誰よりも戦兎を知るのなら、答えは一つしかない。
「愛と平和(ラブ&ピース)を胸に戦う。戦兎だけじゃねぇ、俺だってそうやって戦う仮面ライダーなんだよ!」
自分自身の為にしか戦えなかった過去には、もう戻らない。
嘗て釘を刺された、ヒーローとしての在り方を忘れたつもりもない。
喪失の痛みは未だ強く、だが足を止めんと纏わり付く迷いは木っ端微塵に粉砕。
やるべき事は最初から変わっていない。
亡き友の想いも乗せて、神様気取りの大馬鹿野郎を叩きのめすだけだ。
嘗て釘を刺された、ヒーローとしての在り方を忘れたつもりもない。
喪失の痛みは未だ強く、だが足を止めんと纏わり付く迷いは木っ端微塵に粉砕。
やるべき事は最初から変わっていない。
亡き友の想いも乗せて、神様気取りの大馬鹿野郎を叩きのめすだけだ。
ジャケットの袖で涙を強引に拭い、己が魂へ再び火を灯す。
自らの意思で立ち上がった万丈へ、士が向けるのは普段通りの笑み。
だがそこへ皮肉の類は宿らず、ヒーローの再起を見守る瞳をしていた。
自らの意思で立ち上がった万丈へ、士が向けるのは普段通りの笑み。
だがそこへ皮肉の類は宿らず、ヒーローの再起を見守る瞳をしていた。
「ありがとよ。お前、良い奴だな」
「簡単に信用し過ぎだ。もしかしたら、世界を壊す悪魔の可能性だってあるかもな?」
「簡単に信用し過ぎだ。もしかしたら、世界を壊す悪魔の可能性だってあるかもな?」
迷いを断ち切る切っ掛けをくれた男へ礼を告げれば、おどけたように言う。
レイや光夏実がここにいたら、もっと素直に感謝を受け取れと呆れたに違いない。
レイや光夏実がここにいたら、もっと素直に感謝を受け取れと呆れたに違いない。
「おっと?」
ふと何かを感じ取ったのか、ライドブッカーに手を伸ばす。
相変わらず大半のカードが力を失い、灰色に染まったままだが。
内の一枚には、赤い龍の騎士がハッキリ浮かび上がってるではないか。
これまで力を取り戻した時と、明らかに状況が違う。
急に何故と困惑し、ややあって可能性に思い当たった。
相変わらず大半のカードが力を失い、灰色に染まったままだが。
内の一枚には、赤い龍の騎士がハッキリ浮かび上がってるではないか。
これまで力を取り戻した時と、明らかに状況が違う。
急に何故と困惑し、ややあって可能性に思い当たった。
「まさかお前、龍騎のカードデッキを持ってるのか?」
「は?何で知ってんだよ?」
「は?何で知ってんだよ?」
半ば予想通りの答えに、流石の士も開いた口が塞がらない。
ココアのように本来の変身者以外でも、信頼を結べば対応するライダーの力は取り戻せる。
であれば、万丈が龍騎のデッキ所持者ならこの現象も納得はいく。
だとしても、今のやり取りだけで自分へ強く信頼を向けたのは流石に顔が引き攣る。
キャルからの「良い奴だけど馬鹿っぽい男」との評価へ、戦兎が頷いてた意味が少し分かった気がした。
ココアのように本来の変身者以外でも、信頼を結べば対応するライダーの力は取り戻せる。
であれば、万丈が龍騎のデッキ所持者ならこの現象も納得はいく。
だとしても、今のやり取りだけで自分へ強く信頼を向けたのは流石に顔が引き攣る。
キャルからの「良い奴だけど馬鹿っぽい男」との評価へ、戦兎が頷いてた意味が少し分かった気がした。
「何だよ?急に人の顔じっと見て?ってかそのカード、何で龍騎が写ってんだ?うおっ!?こっちに写ってんのビルドじゃねぇか!?」
「分かったから落ち着け、向こうに行ったら説明してやる」
「分かったから落ち着け、向こうに行ったら説明してやる」
急にぐいぐい詰めて来る万丈を押さえつつ、別室への移動を促す。
天津達を待たせてしまったが、この様子ではもう心配ないだろう。
士の後に続き部屋を出て行こうとし、去り際に振り向き、
天津達を待たせてしまったが、この様子ではもう心配ないだろう。
士の後に続き部屋を出て行こうとし、去り際に振り向き、
「…行って来る。お前の分まで、檀黎斗の野郎をぶっ潰してやるよ」
多くは語らない。
自分と戦兎の間にはきっと、この一言で十分だと思うから。
自分と戦兎の間にはきっと、この一言で十分だと思うから。
「ったく、世話が焼けるんだからお前は」、なんて。
相変わらずの偉そうな態度で、送り出す声が聞こえた気がした。
相変わらずの偉そうな態度で、送り出す声が聞こえた気がした。