◆
出来の悪い飼い犬に手を噛まれたと、そう思わずにはいられない。
廃ホテルの広間を揺らす二体の巨竜と、輝く剣を構えた剣士。
囚われの姫を救出に参戦した英雄、構図だけならそんな錯覚を覚えるだろう。
残念ながら、使い古された王道のストーリーはなく。
殺意のみが交差する戦場、それが実際の光景だった。
囚われの姫を救出に参戦した英雄、構図だけならそんな錯覚を覚えるだろう。
残念ながら、使い古された王道のストーリーはなく。
殺意のみが交差する戦場、それが実際の光景だった。
体躯を震わせ片方が突進を仕掛ければ、剣士が床を蹴り跳躍。
既に原形を留めていない足場には目もくれず、意識は即座にもう一体へ移る。
牙を打ち鳴らし、眼前まで口が迫りつつあるも慌てふためかず対処。
引き上げられた身体機能を用いれば、強引な体勢からの回避も困難に非ず。
既に原形を留めていない足場には目もくれず、意識は即座にもう一体へ移る。
牙を打ち鳴らし、眼前まで口が迫りつつあるも慌てふためかず対処。
引き上げられた身体機能を用いれば、強引な体勢からの回避も困難に非ず。
「……っ」
甲冑の下で悲鳴を上げる肉体に、一々構ってられない。
原因を作った小娘の四肢を磨り潰し、呪文詠唱『だけ』を目的にした装置に変えてやりたい衝動も。
この状況下では蓋をして、微塵も薄れぬ死の気配を退けるのに集中。
傷を癒す術すら、この時ばかりは行う余裕がないのだから。
原因を作った小娘の四肢を磨り潰し、呪文詠唱『だけ』を目的にした装置に変えてやりたい衝動も。
この状況下では蓋をして、微塵も薄れぬ死の気配を退けるのに集中。
傷を癒す術すら、この時ばかりは行う余裕がないのだから。
「あなたのごっこ遊びに付き合うのも、いい加減不愉快ね……」
いずれにしろ、巨竜を使役する低俗な襲撃者を始末しない事には始まらない。
片足に力を籠め大きく跳べば、巨竜の頭上をも跳び越える。
離れた位置でカードを手に取る男、天城カイトの成れの果て。
ナンバーズハンターの元へと、一気に肉薄。
召喚するモンスターこそ強力な布陣であるも、呼び出す本人の力は高いと言えない。
ならば殺害は赤子の手を捻るも同然、振り被った剣の餌食と化すまで一刻の猶予も無し。
片足に力を籠め大きく跳べば、巨竜の頭上をも跳び越える。
離れた位置でカードを手に取る男、天城カイトの成れの果て。
ナンバーズハンターの元へと、一気に肉薄。
召喚するモンスターこそ強力な布陣であるも、呼び出す本人の力は高いと言えない。
ならば殺害は赤子の手を捻るも同然、振り被った剣の餌食と化すまで一刻の猶予も無し。
肉を裂き骨を断つ感触は、待てども待てどもやって来ず。
金属同士の衝突が鼓膜を震わせ、いつの間にやら目と鼻の先に新たなモンスターが現れていた。
金属同士の衝突が鼓膜を震わせ、いつの間にやら目と鼻の先に新たなモンスターが現れていた。
「場にギャラクシーモンスターが存在する時、銀河騎士は手札から特殊召喚が出来る」
「聞いてもいない説明をありがとう……!」
「聞いてもいない説明をありがとう……!」
舌打ちを零しながら聖剣を叩き付けるように振るうと、銀河騎士は体勢が崩れるも破壊には至らない。
二撃目で仕留めるべく踏み込むが、背後からの殺気で中断を余儀なくされる。
二撃目で仕留めるべく踏み込むが、背後からの殺気で中断を余儀なくされる。
(本当に忌々しいわね……!)
巨竜の猛攻をどうにか躱すのは最早、数えるのも飽きたくらいに繰り返した。
クロスセイバーの高スペックにアシストを受けていても、動く度に傷口へ響く。
反抗する気力も持たない小娘だと侮った、己の失態を呪っても今更だ。
クロスセイバーの高スペックにアシストを受けていても、動く度に傷口へ響く。
反抗する気力も持たない小娘だと侮った、己の失態を呪っても今更だ。
ココアが繰り出した激流は確かに威力・範囲共に効果的な技ではあったが。
嘗て死闘を繰り広げたプリンセスナイトと、トゥインクルウィッシュの強さに比べれば。
もっと言うと、強大な力を我が物とするカイザーインサイト自身からすれば。
だから何だ以外に言葉が出ない、酷くありふれたつまらない一撃でしかなかった。
嘗て死闘を繰り広げたプリンセスナイトと、トゥインクルウィッシュの強さに比べれば。
もっと言うと、強大な力を我が物とするカイザーインサイト自身からすれば。
だから何だ以外に言葉が出ない、酷くありふれたつまらない一撃でしかなかった。
対処は決して不可能じゃない。
ココアが使った技以上の威力を返し、全身の骨を砕いてやれたろうに。
言われた事をこなす以外に何も出来ない人形、そう冷めた目で見て油断が過ぎたか。
取るに足らない小娘の下らない術で、余計な傷が足を引っ張る羽目に陥った。
ココアが使った技以上の威力を返し、全身の骨を砕いてやれたろうに。
言われた事をこなす以外に何も出来ない人形、そう冷めた目で見て油断が過ぎたか。
取るに足らない小娘の下らない術で、余計な傷が足を引っ張る羽目に陥った。
尤も負傷を考慮しても、クロスセイバーの能力なら。
何よりカイザーインサイトが元々持つ力を駆使すれば、場を切り抜けるのに然程苦労はしない筈だ。
何よりカイザーインサイトが元々持つ力を駆使すれば、場を切り抜けるのに然程苦労はしない筈だ。
予定調和の勝利を狂わせたのが、ナンバーズハンターが繰り出したモンスター。
銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオンドラゴン)の存在である。
バリアン七皇が一人、ミザエルの切り札にして魂を分けたと言っても過言ではないオーバーハンドレッドナンバーズ。
エクシーズ素材を取り除き、自分以外のフィールドの全モンスターの効果を無効にする強力無比な能力。
世界を支配下に置くスタンド、ザ・ワールドの時間停止を封じた効果が此度も発動された。
銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオンドラゴン)の存在である。
バリアン七皇が一人、ミザエルの切り札にして魂を分けたと言っても過言ではないオーバーハンドレッドナンバーズ。
エクシーズ素材を取り除き、自分以外のフィールドの全モンスターの効果を無効にする強力無比な能力。
世界を支配下に置くスタンド、ザ・ワールドの時間停止を封じた効果が此度も発動された。
(制限の影響じゃない、十中八九あのドラゴンがふざけた真似を……!)
七冠の権能たる覇瞳天星も、大量のマナを用いた高火力の魔法も。
十聖刃に宿った十一本の聖剣の力も、全てが使用不可能。
元々手数に優れたカイザーインサイトだが、銀河眼の時空竜の効果とはこれ以上ない程に相性が悪い。
始まりの呼吸の剣士や上弦の壱のように、純粋な武力による強さではなく。
術の行使による強さがウェイトを占める為、召喚を許した時点で詰んだと断言出来よう。
十聖刃に宿った十一本の聖剣の力も、全てが使用不可能。
元々手数に優れたカイザーインサイトだが、銀河眼の時空竜の効果とはこれ以上ない程に相性が悪い。
始まりの呼吸の剣士や上弦の壱のように、純粋な武力による強さではなく。
術の行使による強さがウェイトを占める為、召喚を許した時点で詰んだと断言出来よう。
「チィッ……!」
銀河騎士の振るう刃から逃れつつ、聖剣をバックルに収納。
運が良いのか、十聖刃本体の技だけはまだ使えた。
巨竜の内片方でも仕留めれば、空いた穴から形成を変えられる。
柄部分のトリガーを引いて抜刀、刀身に夜空色のエネルギーを付与。
ブレスが放たれるまで気長に待ってられない、一刀の元に首を落とさんと駆け、
運が良いのか、十聖刃本体の技だけはまだ使えた。
巨竜の内片方でも仕留めれば、空いた穴から形成を変えられる。
柄部分のトリガーを引いて抜刀、刀身に夜空色のエネルギーを付与。
ブレスが放たれるまで気長に待ってられない、一刀の元に首を落とさんと駆け、
「ぐぅっ!?」
肉体の内側から、弾けるような痛みが突如として襲い。
予期せぬダメージで硬直、しまったと思った時は手遅れ。
僅かな隙も見逃さないのは敵も同じ。
生前のカイトが手緩いデュエルを行わなかったように、ナンバーズハンターもまた手加減はしない。
従えるモンスターを殺戮兵器に変え、攻撃を宣言。
予期せぬダメージで硬直、しまったと思った時は手遅れ。
僅かな隙も見逃さないのは敵も同じ。
生前のカイトが手緩いデュエルを行わなかったように、ナンバーズハンターもまた手加減はしない。
従えるモンスターを殺戮兵器に変え、攻撃を宣言。
「銀河眼の時空竜で攻撃!殲滅のタキオンスパイラル!」
「――――っ!!」
「――――っ!!」
来る衝撃へ辛うじて聖剣を構えるも、そこが限界だ。
膨大な熱量が浴びせられ、広間一帯に破壊が広がる。
時間にすれば5秒にも満たない間、無間に等しい灼熱地獄を味わった。
膨大な熱量が浴びせられ、広間一帯に破壊が広がる。
時間にすれば5秒にも満たない間、無間に等しい灼熱地獄を味わった。
「ぐ……よく、も……!」
光が晴れた時、膝を付き息も絶え絶えなカイザーインサイトが露わとなる。
制限下にあるとはいえクロスセイバーの耐久性は非常に高く、消滅を免れるのには成功。
なれど、軽傷とは口が裂けても言えまい。
変身解除された生身の体は、そこかしこに傷が目立つ。
豪奢な衣装も所々が焼け焦げ、覇王の威光も薄れ掛かっていた。
代わりに怒りを宿す瞳は燃え盛っており、視線だけで十数人は呪い殺せそうな眼光だ。
ふざけた真似に出たナンバーズハンターを、手駒のモンスター共々消し去らん衝動が激しさを増し、
制限下にあるとはいえクロスセイバーの耐久性は非常に高く、消滅を免れるのには成功。
なれど、軽傷とは口が裂けても言えまい。
変身解除された生身の体は、そこかしこに傷が目立つ。
豪奢な衣装も所々が焼け焦げ、覇王の威光も薄れ掛かっていた。
代わりに怒りを宿す瞳は燃え盛っており、視線だけで十数人は呪い殺せそうな眼光だ。
ふざけた真似に出たナンバーズハンターを、手駒のモンスター共々消し去らん衝動が激しさを増し、
「ああ、それ以上はもう結構です。後は拙僧にお任せあれ」
背後から腹部を貫かれ、呆気なく鎮火の末路を辿った。
血を吐き出し、視線を落とせば原因が即座に判明。
今の今まで振るっていて、変身が解かれた際に落とした聖剣。
それが自分の腹を突き破り、赤いメイクを施してある。
血を吐き出し、視線を落とせば原因が即座に判明。
今の今まで振るっていて、変身が解かれた際に落とした聖剣。
それが自分の腹を突き破り、赤いメイクを施してある。
引き抜かれうつ伏せに倒れたカイザーインサイトが、歯を食い縛り意識を保つ間。
刺した当人は悠々と襲撃者、ナンバーズハンターの元へ近付く。
隙だらけにも関わらず、一向にモンスターをけしかけない。
突っ立ったままの相手を、疑問に思わなくて当然だ。
何せカイトを一介の怪物へ変えたのは、カイザーインサイトに手を掛けた張本人。
キャスター・リンボなのだから。
刺した当人は悠々と襲撃者、ナンバーズハンターの元へ近付く。
隙だらけにも関わらず、一向にモンスターをけしかけない。
突っ立ったままの相手を、疑問に思わなくて当然だ。
何せカイトを一介の怪物へ変えたのは、カイザーインサイトに手を掛けた張本人。
キャスター・リンボなのだから。
「ンンン、存分に力を振るっておられるようで何より。ですが貴殿が混乱と殺戮を病の如く広める場は、ここではありませぬ」
言って聞かせる間も、逆らう様子は無く黙って言葉を耳に入れる。
ややあって内容を理解、踵を返してフェントホープを去って行った。
元は天城カイトという人間だったとはいえ、宝具の効果で変貌を遂げ生まれたのがナンバーズハンター。
つまりリンボは創造主も同然であり、制御も相応に効く。
Lのように多少なりとも自我を取り戻せば、反抗の意思を示す事が出来たかもしれないが。
カイトの場合はナンバーズハンターに堕ちた時点で、自我は完全に消滅。
リンボから手出し無用とでも告げられた者でもない限りは、見境なしに殺すモンスターでしかない。
ややあって内容を理解、踵を返してフェントホープを去って行った。
元は天城カイトという人間だったとはいえ、宝具の効果で変貌を遂げ生まれたのがナンバーズハンター。
つまりリンボは創造主も同然であり、制御も相応に効く。
Lのように多少なりとも自我を取り戻せば、反抗の意思を示す事が出来たかもしれないが。
カイトの場合はナンバーズハンターに堕ちた時点で、自我は完全に消滅。
リンボから手出し無用とでも告げられた者でもない限りは、見境なしに殺すモンスターでしかない。
「よもやよもや、と言ったところですな。こういった形で影響が出るとは、拙僧をしてちと予想外」
広間の惨状を見渡し、これはこれで愉快と喉を鳴らす。
他の無辜の民か、元々仲間だった者達を襲っていれば酒の肴に丁度良いと思っていたが。
まさか自分が仕えた皇帝の城に現れ、戦力を大きく削って帰るとは。
少々予定は狂ったが問題無い、組み立てていたプランを前倒しにするだけだ。
他の無辜の民か、元々仲間だった者達を襲っていれば酒の肴に丁度良いと思っていたが。
まさか自分が仕えた皇帝の城に現れ、戦力を大きく削って帰るとは。
少々予定は狂ったが問題無い、組み立てていたプランを前倒しにするだけだ。
「やってくれるわね……よりにもよって今、いえ、ある意味ベストタイミングかしら……?」
傷口を片手で抑え、繋ぎ止めた意識で憎たらし気に吐き捨てる。
殺意の籠った瞳で射抜かれても、リンボの笑みは崩れない。
見下ろす側と見上げる側、カイザーインサイトの立場は一瞬で変わってしまった。
殺意の籠った瞳で射抜かれても、リンボの笑みは崩れない。
見下ろす側と見上げる側、カイザーインサイトの立場は一瞬で変わってしまった。
「申し訳ありませぬ。拙僧とて最初は助太刀に参戦しようと思ったのですが……やめました」
にこやかに、実にあっさりと。
今日は外出の予定があったが急遽中止し、自宅でくつろぐのに決めた程度の気安さで。
ほんの数秒で別方向に方針の舵取りを決定した。
今日は外出の予定があったが急遽中止し、自宅でくつろぐのに決めた程度の気安さで。
ほんの数秒で別方向に方針の舵取りを決定した。
見張りとして自分に宛がわれた、ココアが召喚した魔物。
プリンセスナイトの役割を破棄した以上、向こうとのリンクはとうに切れたが。
そも、大元を辿ればプリンセスナイトの力はカイザーインサイトが分け与えたもの。
ココア程でなくとも必然的に、カイザーインサイトとも魔力的な繋がりが存在した。
リンボがやった事は余りに単純明快。
魔物へ自身の呪力を流し、逆流する形でカイザーインサイトに衝撃を与えた。
ナンバーズハンター相手に余裕を剥がされ、力の大半を使用不能にされた最悪のタイミングで行った為に。
王手を掛ける致命的な裏切りだったと言えよう。
プリンセスナイトの役割を破棄した以上、向こうとのリンクはとうに切れたが。
そも、大元を辿ればプリンセスナイトの力はカイザーインサイトが分け与えたもの。
ココア程でなくとも必然的に、カイザーインサイトとも魔力的な繋がりが存在した。
リンボがやった事は余りに単純明快。
魔物へ自身の呪力を流し、逆流する形でカイザーインサイトに衝撃を与えた。
ナンバーズハンター相手に余裕を剥がされ、力の大半を使用不能にされた最悪のタイミングで行った為に。
王手を掛ける致命的な裏切りだったと言えよう。
「本来であれば皇帝陛下に献上を考えておりましたが、拙僧ふとこう思ったのです。拙僧自身が使っても問題ないのでは?と」
既に準備は済ませてある。
フェントホープ内を気ままにうろつき、ココアの反乱やナンバーズハンターの乱入が起こる間。
向かった先は地下深く、魔女の飼育槽が大量に設置された空間。
エンブリオ・イブの餌として飼われた、魔法少女の末路の再現相手に仕込みを行った。
最初にカイザーインサイトへ見せたデモンストレーションとは違い、より大掛かりな術の発動の為に。
フェントホープ内を気ままにうろつき、ココアの反乱やナンバーズハンターの乱入が起こる間。
向かった先は地下深く、魔女の飼育槽が大量に設置された空間。
エンブリオ・イブの餌として飼われた、魔法少女の末路の再現相手に仕込みを行った。
最初にカイザーインサイトへ見せたデモンストレーションとは違い、より大掛かりな術の発動の為に。
「もう一つ素材を組み込みたかったのが本音ですがまあ、そこは運次第ですなぁ」
片手には奪ったばかりの十聖刃、もう片方の手には取り出した支給品。
元々吉田優子のデイパックに入っていたソレを、見付けた時は笑いを抑えるのに苦労したものだ。
桜田ネネにアークドライバーワンを寄越した件といい、余程小娘と劇薬を引き合わせるのが好きらしい。
全く見事と言う他ない主催側の悪辣さへ、内心拍手を送るのもそこそこに。
元々吉田優子のデイパックに入っていたソレを、見付けた時は笑いを抑えるのに苦労したものだ。
桜田ネネにアークドライバーワンを寄越した件といい、余程小娘と劇薬を引き合わせるのが好きらしい。
全く見事と言う他ない主催側の悪辣さへ、内心拍手を送るのもそこそこに。
「さてさてそれでは、生誕の議を執り行うと致しましょうか」
掲げたソレを起点に術式を発動。
地下に眠る無数の魔女だけではない、フェントホープそのものが必要な素材となる。
この廃ホテルは単なる拠点に非ず、建物自体が巨大なウワサだ。
溜め込んだ魔力はリンボの術の出力を十分補い、望む形へ大きく近付く。
それに何より、豊富な魔力を宿す『贄』はすぐそこへ転がっている。
地下に眠る無数の魔女だけではない、フェントホープそのものが必要な素材となる。
この廃ホテルは単なる拠点に非ず、建物自体が巨大なウワサだ。
溜め込んだ魔力はリンボの術の出力を十分補い、望む形へ大きく近付く。
それに何より、豊富な魔力を宿す『贄』はすぐそこへ転がっている。
「ンンンンン!!偉大なる覇瞳皇帝殿!世の真実に近付き過ぎた、叶わぬ願いに縋る夢追い人よ!その身!その魂!存在の全て!一欠片も余す事なく使わせて頂きたく!!!」
「――――っ!!!」
「――――っ!!!」
床に、壁に、宙に浮かび上がる赤黒い陣。
轟音を立て崩壊する瓦礫が、津波の如く押し寄せる中。
圧死が遥かにマシと思える程の激痛が、瞬く間に全身を駆け巡る。
有無を言わせずに意識が閉じられ、耳障りな笑いがいつまでも耳に木霊した。
轟音を立て崩壊する瓦礫が、津波の如く押し寄せる中。
圧死が遥かにマシと思える程の激痛が、瞬く間に全身を駆け巡る。
有無を言わせずに意識が閉じられ、耳障りな笑いがいつまでも耳に木霊した。
数分後、C-1エリアにて。
荘厳な雰囲気を醸し出す、魔法少女達の城はそこになく。
残された瓦礫の山だけが、異常事態を物語っていた。
荘厳な雰囲気を醸し出す、魔法少女達の城はそこになく。
残された瓦礫の山だけが、異常事態を物語っていた。
◆◆◆
「っ!?」
喉が引き攣った音を立て、身を強張らせたのは誰か。
驚愕に目を見開いたのは誰が最初かなど、気にしていられない。
意識を向けざるを得ない存在を前に、雑念へ気を割けば生存すらも危ぶまれる。
驚愕に目を見開いたのは誰が最初かなど、気にしていられない。
意識を向けざるを得ない存在を前に、雑念へ気を割けば生存すらも危ぶまれる。
万丈一行が桜ノ館中学校に向かう道中、これといった問題には遭遇しなかった。
参加者はおろか、NPCとの接触も無しに無事到着。
イリヤにとって数時間ぶりの来訪になる校舎に、放送前と変化は見られない。
エボルト達による会合は争いが起きず、スムーズに進んでいるのか。
或いはまだ到着前なのかを、冷静に考える余裕はとっくに消え失せた。
参加者はおろか、NPCとの接触も無しに無事到着。
イリヤにとって数時間ぶりの来訪になる校舎に、放送前と変化は見られない。
エボルト達による会合は争いが起きず、スムーズに進んでいるのか。
或いはまだ到着前なのかを、冷静に考える余裕はとっくに消え失せた。
「なん、だよありゃ……」
信じられぬものを見たと、絞り出す声色が告げる。
万丈と同じ方を見上げる二人も、気持ちは全く同じだろう。
桜ノ館中学校とは別に、浮遊し存在感を示す巨大なソレ。
建造物とは到底言い難く、かといって既存の生物にも当て嵌められない。
万丈と同じ方を見上げる二人も、気持ちは全く同じだろう。
桜ノ館中学校とは別に、浮遊し存在感を示す巨大なソレ。
建造物とは到底言い難く、かといって既存の生物にも当て嵌められない。
開いた本、とでも言うのだろうか。
表紙と裏表紙らしき位置へ、緑色の装飾が施され。
不気味に微笑む悪魔の顔、そんなイメージを見るものに抱かせる。
胴体らしき箇所に四肢は生えておらず、代わりに捩じくれたダークグリーンの枝が突き出ていた。
民間伝承の怪物が現実に迷い出たのを疑う、正気とは思えぬナニカ。
予期せず異形を目の当たりにし凍り付く三人を、我に返らせたのは緊迫感を帯びた魔術礼装の声だ。
表紙と裏表紙らしき位置へ、緑色の装飾が施され。
不気味に微笑む悪魔の顔、そんなイメージを見るものに抱かせる。
胴体らしき箇所に四肢は生えておらず、代わりに捩じくれたダークグリーンの枝が突き出ていた。
民間伝承の怪物が現実に迷い出たのを疑う、正気とは思えぬナニカ。
予期せず異形を目の当たりにし凍り付く三人を、我に返らせたのは緊迫感を帯びた魔術礼装の声だ。
『皆さんしっかり!ドン引きする気持ちは当然ですが、すぐに動けるよう備えてください!』
「う、うん!」
「う、うん!」
相棒の呼びかけに頭を振り、構え直すイリヤに倣い残り二人も警戒を強める。
奇怪な外見だけが怪物の全てでない事が、ルビーには即座に分かった。
感知機能に引っ掛かった魔力の質と膨大さに、悪い冗談だと思いたい。
こんなモノが自然に生まれる筈がない、複数の生命を繋ぎ合わせた悪趣味極まるパッチワークではないか。
それにルビーが感じ取ったのは異形以外にもう一つ、邪悪極まる存在がいた。
奇怪な外見だけが怪物の全てでない事が、ルビーには即座に分かった。
感知機能に引っ掛かった魔力の質と膨大さに、悪い冗談だと思いたい。
こんなモノが自然に生まれる筈がない、複数の生命を繋ぎ合わせた悪趣味極まるパッチワークではないか。
それにルビーが感じ取ったのは異形以外にもう一つ、邪悪極まる存在がいた。
『趣味の悪さで言ったら私もそれなりに覚えがありますが、トップに一瞬で踊り出てしまいましたよ』
「ンン、これは手厳しい。拍手喝采を密かに期待した身としては、涙を禁じ得ませぬぞ」
「ンン、これは手厳しい。拍手喝采を密かに期待した身としては、涙を禁じ得ませぬぞ」
辛辣な言葉へ反応し、異形の頭部へ姿を見せる男。
わざとらしく目元を覆い、涙を拭う仕草は同情を微塵も誘わない。
嘲笑う意図がこれ以上ないくらいに籠められてるのを、誰もが分からない筈がなく。
奇抜な装いと日本人離れの長身、そこへ端正な顔立ちが加われば黄色い歓声を浴びるのが世の常なれど。
数億の毒虫が蠢く様を思わせるおぞましき気配が、本能へ危険信号を鳴らさせる。
人の形をしながら人へ当て嵌めるのに躊躇を抱く男へ、真っ先に反応したのは万丈だ。
わざとらしく目元を覆い、涙を拭う仕草は同情を微塵も誘わない。
嘲笑う意図がこれ以上ないくらいに籠められてるのを、誰もが分からない筈がなく。
奇抜な装いと日本人離れの長身、そこへ端正な顔立ちが加われば黄色い歓声を浴びるのが世の常なれど。
数億の毒虫が蠢く様を思わせるおぞましき気配が、本能へ危険信号を鳴らさせる。
人の形をしながら人へ当て嵌めるのに躊躇を抱く男へ、真っ先に反応したのは万丈だ。
「テメェ!こっちに来てやがったのかよ……!」
忘れる筈がない、或人の命を奪った許し難き外道。
各地で悪行を散々働いた陰陽師が、再び自分の前に現れた。
驚愕から一転、マグマに等しい怒りを燃え上がらせる。
各地で悪行を散々働いた陰陽師が、再び自分の前に現れた。
驚愕から一転、マグマに等しい怒りを燃え上がらせる。
「おや貴殿は……ああ!その節はどうも。折角会えたのですし、或人殿の為に線香でも立てて差し上げましょうか?」
「うるせぇ!!今すぐ引き摺り下ろしてぶっ潰してやる!!」
「うるせぇ!!今すぐ引き摺り下ろしてぶっ潰してやる!!」
分身が得た情報により、万丈の存在も既に把握済。
この期に及んで或人をコケにする言動へ、頭に血が上るのが抑えられない。
この期に及んで或人をコケにする言動へ、頭に血が上るのが抑えられない。
『イリヤさんご注意ください。俄かには信じ難いですがあの胡散臭い男、恐らくは……サーヴァントかと』
「えっ!?それってクラスカードの……?」
『ルビーちゃん的にもその方がまだマシな気さえしますが、違います。アレは“本物の”英霊です』
「っ!?」
「えっ!?それってクラスカードの……?」
『ルビーちゃん的にもその方がまだマシな気さえしますが、違います。アレは“本物の”英霊です』
「っ!?」
クラスカードの英霊が一時的に実体化したのとは明確に異なる。
正真正銘のサーヴァント。
それだけでも戦慄を禁じ得ない情報だが、より悪い事実がルビーには分かった。
アレは、一介のサーヴァントに当て嵌められる類ではないと。
正真正銘のサーヴァント。
それだけでも戦慄を禁じ得ない情報だが、より悪い事実がルビーには分かった。
アレは、一介のサーヴァントに当て嵌められる類ではないと。
『本当に悪趣味としか言えませんねぇ……あなた、ナニを取り込んだんですか?』
「おや?分かっておられでしたか。術者ですらない杖までも魅せられるとは、我ながら罪造りで悩ましい限りですな」
「おや?分かっておられでしたか。術者ですらない杖までも魅せられるとは、我ながら罪造りで悩ましい限りですな」
口調こそ呆れ交じりだが、声色の硬さは誤魔化せない。
否定はせずとも明確な肯定も返さず、分かった上で見当違いな軽口を叩く。
ついでに一つ訂正するとすれば、
否定はせずとも明確な肯定も返さず、分かった上で見当違いな軽口を叩く。
ついでに一つ訂正するとすれば、
「喰ろうた、と。正しくはそう言うべきでしょうなぁ」
三体の悪神を喰らったハイ・サーヴァントこそ、アルターエゴ・リンボ。
猫のように細めた瞳で嗤う様は、怖気が走る程に邪悪そのもの。
背に冷たい汗を流すイリヤに嘲笑一つを返し、視線は残る少女へ向かう。
猫のように細めた瞳で嗤う様は、怖気が走る程に邪悪そのもの。
背に冷たい汗を流すイリヤに嘲笑一つを返し、視線は残る少女へ向かう。
「お元気そうで何よりです。陛下殿を裏切った末に早くも異なる陣営へ転がり込むその卑劣な手腕、拙僧も見習いたく思いまする」
「っ、私が、カイザーインサイトさんを裏切ったのは本当だけど……でも!やっぱりあの人のやり方は――」
「ああ、その手の話は間に合っておりますので」
「っ、私が、カイザーインサイトさんを裏切ったのは本当だけど……でも!やっぱりあの人のやり方は――」
「ああ、その手の話は間に合っておりますので」
ココアが何を返すかは予想通りであり、最後まで耳を傾ける義理もない。
片手を翳し制し、同時に異形へ指示を出す。
顔面部分の開いたページが発光、収束現象が起きた。
マズい、危機感を激しく煽られた次の瞬間に襲い来るは拡散した魔力。
茨の蔓のように広がった魔力波が、地上目掛けて放たれた。
片手を翳し制し、同時に異形へ指示を出す。
顔面部分の開いたページが発光、収束現象が起きた。
マズい、危機感を激しく煽られた次の瞬間に襲い来るは拡散した魔力。
茨の蔓のように広がった魔力波が、地上目掛けて放たれた。
『っ!全員退避を!』
ルビーの叫びと魔力波の到達、早いのはどちらだったか。
各々力を引き出す姿に変身し飛び退くが、地面も爆撃を受けた如き衝撃を受けた。
それぞれ爆風に煽られ吹き飛び、痛む体に鞭打って立ち上がる。
異世界で得た戦う力のお陰で、ココアも打たれ強さは常人以上。
姉として再起した以上、この程度でへこたれるのは真っ平御免だ。
各々力を引き出す姿に変身し飛び退くが、地面も爆撃を受けた如き衝撃を受けた。
それぞれ爆風に煽られ吹き飛び、痛む体に鞭打って立ち上がる。
異世界で得た戦う力のお陰で、ココアも打たれ強さは常人以上。
姉として再起した以上、この程度でへこたれるのは真っ平御免だ。
「皆は……」
土煙が視界を覆い、万丈とイリヤの姿は近くに見えない。
と、近付く気配を感じ仲間かと振り返る。
リンボであった場合も考え、警戒は疎かにせずに構え、
と、近付く気配を感じ仲間かと振り返る。
リンボであった場合も考え、警戒は疎かにせずに構え、
「え――」
思考が凍り付く感覚を、ココアは味わう事となる。
目の前に立つのが誰か知ってる、知ってるけど有り得ない。
自分の通う学校とは別の制服、肩で切り揃えたショートヘア。
顔も名前も記憶にあるけど、彼女がここにいる事実へ理解が追い付かなかった。
目の前に立つのが誰か知ってる、知ってるけど有り得ない。
自分の通う学校とは別の制服、肩で切り揃えたショートヘア。
顔も名前も記憶にあるけど、彼女がここにいる事実へ理解が追い付かなかった。
「みかげちゃん……」
最期を直接見てはいないが、死が確定となったプレイヤー。
琴岡みかげを前にし、意識せずとも声が震える。
どうして、その四文字を紡がれるのを見計らったように手が伸びた。
色白を通り越し、土気色となった細い指先がココアの腕に触れる。
避けようと思えば避けられたが、予期せぬ光景に咄嗟の動きもままならない。
琴岡みかげを前にし、意識せずとも声が震える。
どうして、その四文字を紡がれるのを見計らったように手が伸びた。
色白を通り越し、土気色となった細い指先がココアの腕に触れる。
避けようと思えば避けられたが、予期せぬ光景に咄嗟の動きもままならない。
故にこの瞬間、並行世界の保登心愛は終わる。
「――っ!?がふっ!?げほっ……!?」
何の前触れもなく、体の内側からせり上がる激痛。
膝を付き咳き込むと、夥しい量の血塊を吐き出す。
桃色の唇はあっという間に、自身が零した赤で彩られた。
膝を付き咳き込むと、夥しい量の血塊を吐き出す。
桃色の唇はあっという間に、自身が零した赤で彩られた。
「ココア!?」
視界を遮る壁を薙ぎ払った万丈が異変に気付くも、一手遅い。
怪鳥を模した式神に天高く運ばれ、降り立った場所は異形の頭部。
足元に転がり、吐血を続ける少女をリンボが見下ろす。
怪鳥を模した式神に天高く運ばれ、降り立った場所は異形の頭部。
足元に転がり、吐血を続ける少女をリンボが見下ろす。
「どう、して……みかげちゃん、が……」
「ある程度原形は残っていたので、有効活用させて頂きました。それと無理はなさらぬように、臓器を幾つか腐らせましたのでな」
「ある程度原形は残っていたので、有効活用させて頂きました。それと無理はなさらぬように、臓器を幾つか腐らせましたのでな」
仕掛けは分身が戒の遺体にやったのと同じ、呪術を使って屍兵に利用した。
と言っても戦闘目的でなく、あくまで一瞬ココアの動揺を誘えれば良い。
自身の手が加わった遺体は最早、ソレ自体が媒介。
ココアに触れたのを見計らい遠隔で術式を発動、呪力を流し内側から腐食させたのだ。
と言っても戦闘目的でなく、あくまで一瞬ココアの動揺を誘えれば良い。
自身の手が加わった遺体は最早、ソレ自体が媒介。
ココアに触れたのを見計らい遠隔で術式を発動、呪力を流し内側から腐食させたのだ。
「ンンンンン!まさかこうも早くに運が巡るとは、偶然とはかくも恐ろしき也!」
フェントホープを使って造り上げた異形を、このまま動かしても問題無いが。
もう一段階押し上げる手札が、己が元へ戻って来た。
試運転で近場のエリアへ赴いた甲斐があり、振って湧いた幸運を見逃すつもりは無し。
とくれば躊躇は不要、夜空色の聖剣を大仰な動作で振り被る。
地上の者達が阻止に動かんとするも、みかげの遺体を呪力で破裂させ意識を逸らす。
ダメージになるとは思っていない、儀式を終える為の隙さえ生まれれば構わないのだから。
もう一段階押し上げる手札が、己が元へ戻って来た。
試運転で近場のエリアへ赴いた甲斐があり、振って湧いた幸運を見逃すつもりは無し。
とくれば躊躇は不要、夜空色の聖剣を大仰な動作で振り被る。
地上の者達が阻止に動かんとするも、みかげの遺体を呪力で破裂させ意識を逸らす。
ダメージになるとは思っていない、儀式を終える為の隙さえ生まれれば構わないのだから。
「ではではではぁ!新たな贄をご賞味あれ!」
振り下ろした十聖刃がココアを貫き、瞬く間に異形へ変化が現れた。
天空へ亀裂が走ったと思えば、巨大な体躯を高純度のエネルギーが駆け巡る。
何者かの攻撃に非ず、悪しき魂の新生を祝福する輝きだ。
天空へ亀裂が走ったと思えば、巨大な体躯を高純度のエネルギーが駆け巡る。
何者かの攻撃に非ず、悪しき魂の新生を祝福する輝きだ。
「なにこれ……!何が起きてるの!?」
『っ!?この魔力は……』
『っ!?この魔力は……』
魔術の世界に身を置く一人と一本だからこそ、爆発的に増す魔力へ動揺を隠せない。
リンボが並以上の実力を持つ術者だとて、個人の術でここまでが可能なのか。
手に持った眩い剣、あれが何らかの効果を発揮したのかを疑うも解答へ辿り着くだけの時間は無い。
異形の頭部が種を割ったように開き、蠢く触手がココアを引き摺り下ろす。
リンボが並以上の実力を持つ術者だとて、個人の術でここまでが可能なのか。
手に持った眩い剣、あれが何らかの効果を発揮したのかを疑うも解答へ辿り着くだけの時間は無い。
異形の頭部が種を割ったように開き、蠢く触手がココアを引き摺り下ろす。
「い゛っ、あ゛っ――――」
服を引き裂き、傷口へ肉槍を捻じ込ませる。
裸身が晒された羞恥に回す意識など、ありはしない。
想像を絶する痛みに絶叫が飛び出すも、万丈達には届かない。
頭部が閉じ、分厚い肉の檻に閉じ込められる。
陵辱と蹂躙が繰り返されようと、声を聞き届ける者は一人もいなかった。
裸身が晒された羞恥に回す意識など、ありはしない。
想像を絶する痛みに絶叫が飛び出すも、万丈達には届かない。
頭部が閉じ、分厚い肉の檻に閉じ込められる。
陵辱と蹂躙が繰り返されようと、声を聞き届ける者は一人もいなかった。
『WAKE UP』
「おっと、飛び入り参加がご希望ですかな?」
ココアを閉じ込めるのとタイミングをほぼ同じくして、鮮血色の鞭が飛来。
焦らず指先で五芒星を描き、結界を展開。
弾き飛ばした傍から光矢が連射されるも、リンボの護りを貫くにはまだ足りない。
放った者ら目掛け、異形が熱線を放つ。
巨体に見合った威力をモロに受けては蒸発が避けられない、攻撃を中断し回避。
地面へ降り立つ二名の乱入者、その両方に驚きを見せたのはイリヤだ。
焦らず指先で五芒星を描き、結界を展開。
弾き飛ばした傍から光矢が連射されるも、リンボの護りを貫くにはまだ足りない。
放った者ら目掛け、異形が熱線を放つ。
巨体に見合った威力をモロに受けては蒸発が避けられない、攻撃を中断し回避。
地面へ降り立つ二名の乱入者、その両方に驚きを見せたのはイリヤだ。
「いろはさん!?」
『それにいつぞやのヒモ…ゲフンゲフン、黒死牟さんもご一緒ですね』
「ちょっと!?私まで睨まれるからやめてってば!?」
『それにいつぞやのヒモ…ゲフンゲフン、黒死牟さんもご一緒ですね』
「ちょっと!?私まで睨まれるからやめてってば!?」
意味は分からないが不愉快な響きの単語を口走ったステッキを、仮面越しに一睨み。
横に立つ桜色の少女も困り顔を作るが、そんな場合でないと気を引き締め直す。
横に立つ桜色の少女も困り顔を作るが、そんな場合でないと気を引き締め直す。
仲間の探索に出たいろは達は、あの後研究所前に立ち寄った。
しかし既にレイ達は後を発っており、誰もいないと判断し再出発。
次なる候補で桜ノ館中学校へ向かった所、尋常ならざる魔力を感じ急行したのだった。
しかし既にレイ達は後を発っており、誰もいないと判断し再出発。
次なる候補で桜ノ館中学校へ向かった所、尋常ならざる魔力を感じ急行したのだった。
「凄い魔力を感じたから来てみたけど、またあの人が……!」
灯花に良からぬことをした術師が、またもや悪しき真似をしでかしたのは明らか。
放送前に戦ったのは分身の方、とは知らないが今は微々たる問題だろう。
本を思わせる頭部の異形が発する魔力パターンに、いろはは覚えがあった。
放送前に戦ったのは分身の方、とは知らないが今は微々たる問題だろう。
本を思わせる頭部の異形が発する魔力パターンに、いろはは覚えがあった。
「あの怪物……まさかウワサなの……!?」
神浜で倒して来た怪物と一致する魔力も確かに感じ、ウワサの一種かとは思うも。
こうまで背筋の寒くなる気配は、それこそアリナが融合を果たしたイブくらいだ。
こうまで背筋の寒くなる気配は、それこそアリナが融合を果たしたイブくらいだ。
リンボがこの異形を造るにあたり、コアに使った物こそ吉田優子の最後の支給品。
名をグリモワールワンダーライドブック。
ソードオブロゴスの宿敵たる組織、メギドを束ねるストリウスが仮面ライダーへの変身に用いるキーアイテム。
剣士達と違い聖剣抜きで変身を可能とし、持ち得る力も並のライダーを凌駕する。
匹敵するのはそれこそ、仮面ライダーセイバーの最終形態たるクロスセイバーくらいだろう。
名をグリモワールワンダーライドブック。
ソードオブロゴスの宿敵たる組織、メギドを束ねるストリウスが仮面ライダーへの変身に用いるキーアイテム。
剣士達と違い聖剣抜きで変身を可能とし、持ち得る力も並のライダーを凌駕する。
匹敵するのはそれこそ、仮面ライダーセイバーの最終形態たるクロスセイバーくらいだろう。
とはいえ強力な支給品には何かしらの枷を付けられるのが、デスゲームでのセオリー。
グリモワールワンダーライドブックも同様に、本来の権能の大半に制限を施された。
純粋な変身後のスペックだけでも、大抵の相手には圧倒出来るが。
グリモワールワンダーライドブックも同様に、本来の権能の大半に制限を施された。
純粋な変身後のスペックだけでも、大抵の相手には圧倒出来るが。
ではそのライドブックを使い、リンボは一体何をやったのか。
フェントホープと大量の魔女、そして膨大なマナを宿すカイザーインサイトを使い巨大な怪物を創造。
そこへ更に加わったのが保登心愛、より正確に言うと『並行世界の保登心愛』。
ゲーム開始直後に櫻井戒と出会い、喪失と再起を経てカブトの資格者に選ばれたココアではなく。
カイザーインサイトの手駒にされたココアでなければ、今しがたの奇怪な現象は起こらなかったろう。
フェントホープと大量の魔女、そして膨大なマナを宿すカイザーインサイトを使い巨大な怪物を創造。
そこへ更に加わったのが保登心愛、より正確に言うと『並行世界の保登心愛』。
ゲーム開始直後に櫻井戒と出会い、喪失と再起を経てカブトの資格者に選ばれたココアではなく。
カイザーインサイトの手駒にされたココアでなければ、今しがたの奇怪な現象は起こらなかったろう。
グリモワールワンダーライドブックの前身とも言える物として、オムニフォースワンダーライドブックが嘗て存在した。
当代のマスターロゴス…イザクが自らの欲を果たす目的で造り上げた書だ。
この際必要となったのは複数の聖剣やライドブック以外に、ルナと呼ばれる少女もである。
現実世界とワンダーワールド、二つの世界を繋ぐ存在無くして儀式の成功は有り得ず。
マスターロゴスの目論見も、失敗に終わったに違いない。
当代のマスターロゴス…イザクが自らの欲を果たす目的で造り上げた書だ。
この際必要となったのは複数の聖剣やライドブック以外に、ルナと呼ばれる少女もである。
現実世界とワンダーワールド、二つの世界を繋ぐ存在無くして儀式の成功は有り得ず。
マスターロゴスの目論見も、失敗に終わったに違いない。
当然、ルナとココアは全くの別人だ。
しかし前者が、現実世界とワンダーワールドを繋ぐ者だったように。
後者もまた現実世界で生まれ、エトワリアという異世界できららに導かれ戦った事が影響し、
現実と異世界、二つの世界を繋ぎ止める存在と言えるだろう。
専用装備を持ったココア達とも、吉田優子や桜ノ宮苺香とも違う。
実際に現実世界から異世界に召喚されたココアでなかったら、起こりはしなかった。
しかし前者が、現実世界とワンダーワールドを繋ぐ者だったように。
後者もまた現実世界で生まれ、エトワリアという異世界できららに導かれ戦った事が影響し、
現実と異世界、二つの世界を繋ぎ止める存在と言えるだろう。
専用装備を持ったココア達とも、吉田優子や桜ノ宮苺香とも違う。
実際に現実世界から異世界に召喚されたココアでなかったら、起こりはしなかった。
膨大な量の魔力、十一本の聖剣を束ねて創り出された刃王剣十聖刃。
破壊されたとはいえ、力自体は残留していたみかげの遺した聖剣とライドブック。
ウワサというライドブックとはまた別の、『物語』の力。
そこへ二つの世界を繋ぐ少女を加え、トドメとばかりに後押ししたのが小さな綻び。
葛葉絋汰の乱入によって生じた、外界と隔離された会場への亀裂。
運営側の手で即座に対策はあったがしかし、一度継ぎ目が生まれてしまえば付け入る隙は無数に存在する。
破壊されたとはいえ、力自体は残留していたみかげの遺した聖剣とライドブック。
ウワサというライドブックとはまた別の、『物語』の力。
そこへ二つの世界を繋ぐ少女を加え、トドメとばかりに後押ししたのが小さな綻び。
葛葉絋汰の乱入によって生じた、外界と隔離された会場への亀裂。
運営側の手で即座に対策はあったがしかし、一度継ぎ目が生まれてしまえば付け入る隙は無数に存在する。
主催者の手で厳重に制限されていた全知全能の書へのアクセスを、ほんの一端とはいえ可能にしてしまったのだ。
「では御覧に入れましょうぞ!今宵新たな舞台役者による演目を!」
片手を振り上げたリンボへ応え、異形改めグリモワールのウワサが権能を発動。
頭部が妖しく輝き、大地は黒々と染まり出す。
何が起きるか不明なれど、放って置けばロクな事態にならないのは誰の目にも明らか。
好き勝手を許すのが悪手であれば、早急に片を付けるまで。
相も変わらぬ鎧の着心地へ違和感を覚えるも、一旦は意識から外し黒死牟が疾走。
跳躍と共に魔皇剣の斬撃を浴びせんとし、
頭部が妖しく輝き、大地は黒々と染まり出す。
何が起きるか不明なれど、放って置けばロクな事態にならないのは誰の目にも明らか。
好き勝手を許すのが悪手であれば、早急に片を付けるまで。
相も変わらぬ鎧の着心地へ違和感を覚えるも、一旦は意識から外し黒死牟が疾走。
跳躍と共に魔皇剣の斬撃を浴びせんとし、
「……っ!」
鬼となってからは滅多に味合わず、異界の屠り合いでは幾度も感じた悪寒。
危険を知らせる己が直感へ逆らう事無く、咄嗟の判断で得物を防御に回す。
刀身へ衝撃を叩き付けられ、重厚な鎧を纏った身が後方へと吹き飛んだ。
危険を知らせる己が直感へ逆らう事無く、咄嗟の判断で得物を防御に回す。
刀身へ衝撃を叩き付けられ、重厚な鎧を纏った身が後方へと吹き飛んだ。
背より叩き付けらても止まらず、壁を破って屋内へ。
全校集会や部活動等で使用される、広々した空間。
体育館にて体勢を整え、間髪入れずにもう一つ気配が現れた。
今しがた自分を吹き飛ばした者が、律儀に追い掛けて来たらしい。
いずれにしろ屋内へ移ったのは好都合、生身に戻り敵の姿を視界に入れる。
全校集会や部活動等で使用される、広々した空間。
体育館にて体勢を整え、間髪入れずにもう一つ気配が現れた。
今しがた自分を吹き飛ばした者が、律儀に追い掛けて来たらしい。
いずれにしろ屋内へ移ったのは好都合、生身に戻り敵の姿を視界に入れる。
「馬鹿な……!?」
漏れ出た声色は、上弦の壱らしからぬ驚愕に溢れたもの。
無理もないことだろう、仮にここへいるのが他の上弦であっても。
黒死牟と似たり寄ったりな反応となったのは、想像に難くない。
無理もないことだろう、仮にここへいるのが他の上弦であっても。
黒死牟と似たり寄ったりな反応となったのは、想像に難くない。
その顔を、その瞳を、その存在感を。
背から肉の鞭を生み出し、揺蕩わせた異形の男を。
忘れる等有り得ないが故に、信じられぬと凍り付く。
背から肉の鞭を生み出し、揺蕩わせた異形の男を。
忘れる等有り得ないが故に、信じられぬと凍り付く。
千年を生きた鬼の始祖にして、数多の悲劇の元凶。
屠り合いにて橘朔也に討たれた筈の、自身を鬼に変えた主がさも当然の如く立っていた。
屠り合いにて橘朔也に討たれた筈の、自身を鬼に変えた主がさも当然の如く立っていた。
「なん、で……」
黒死牟を追う為の足は動かず、いろはもまた目の前の相手へ釘付けになる。
四肢の先端を切符鋏に変え、蠍に似た尾にカンテラを垂らす女。
ベールの奥から覗く、光の宿らぬ瞳がいろはを射抜く。
四肢の先端を切符鋏に変え、蠍に似た尾にカンテラを垂らす女。
ベールの奥から覗く、光の宿らぬ瞳がいろはを射抜く。
「嘘でしょ……」
息を呑み、わなわなと震えるのはイリヤも同じだ。
赤い外套に身を包んだ、褐色肌の少女を。
自分と瓜二つの、二度と会える筈の無い顔が冷徹にこちらを睨んだ。
赤い外套に身を包んだ、褐色肌の少女を。
自分と瓜二つの、二度と会える筈の無い顔が冷徹にこちらを睨んだ。
「あの野郎……!どこまで、ふざけた真似しやがんだ……!!」
ただ一人、万丈だけは憤怒に顔を歪ませる。
過去に似たような事を宿敵が行い、仲間の一人を激怒させ。
結果そいつは、猿渡一海はパンドラタワーでの決戦で力尽きた。
だから驚きは無く、代わりに己自身を壊しかねない激情が燃え上がる。
全身にボトルを突き刺し、純白の装甲を纏った戦士。
友の尊厳を悉く踏み躙る陰陽師へ、星狩り相手に抱いたのにも匹敵する怒りを宿す。
過去に似たような事を宿敵が行い、仲間の一人を激怒させ。
結果そいつは、猿渡一海はパンドラタワーでの決戦で力尽きた。
だから驚きは無く、代わりに己自身を壊しかねない激情が燃え上がる。
全身にボトルを突き刺し、純白の装甲を纏った戦士。
友の尊厳を悉く踏み躙る陰陽師へ、星狩り相手に抱いたのにも匹敵する怒りを宿す。
グリモワールワンダーライドブックが秘める能力の一つに、死者の復活がある。
本来の使い手たるストリウスは四賢神を蘇生し尖兵に変え、ソードオブロゴスを相手取った。
物語を自身の手で終わらせると豪語する男に相応しい異能も、ゲームではバランスブレイカーと見なされ封印。
変身しても使用不可能だったが、それはついさっきまでの話。
制限を超えて全知全能の書へ一時的に繋がり、幾分劣化した状態なれど発動。
本来の使い手たるストリウスは四賢神を蘇生し尖兵に変え、ソードオブロゴスを相手取った。
物語を自身の手で終わらせると豪語する男に相応しい異能も、ゲームではバランスブレイカーと見なされ封印。
変身しても使用不可能だったが、それはついさっきまでの話。
制限を超えて全知全能の書へ一時的に繋がり、幾分劣化した状態なれど発動。
「感動の再会が果たされたようで何より。いつの時代も好まれるのでしょう?こういった陳腐な展開が」
対峙する者達の記憶から死者を引き出し、従える。
リンボの手が加わった影響か、悪辣な形で効果が表れた。
リンボの手が加わった影響か、悪辣な形で効果が表れた。
鬼舞辻無惨。
七海やちよ。
クロエ・フォン・アインツベルン。
桐生戦兎。
七海やちよ。
クロエ・フォン・アインツベルン。
桐生戦兎。
元いた戦場で、或いは屠り合いで散った者達は今。
悪しき陰陽師好みの舞台を彩る、自我無き人形として再演を果たす。
悪しき陰陽師好みの舞台を彩る、自我無き人形として再演を果たす。
「それでは皆々様、準備は宜しいですかなぁ?」
降板不可能、途中退場厳禁。
悲劇にして喜劇、脚本演出キャスター・リンボによる生者と死者の織り成す舞台。
奇跡の再起を起こした姉は最早、生きながらに死したも同然の部品と化した。
鬼と、ヒーローと、魔法少女達がどこまで足掻けるか。
たった一人が笑い転げる為の闘争が、幕を開ける。
悲劇にして喜劇、脚本演出キャスター・リンボによる生者と死者の織り成す舞台。
奇跡の再起を起こした姉は最早、生きながらに死したも同然の部品と化した。
鬼と、ヒーローと、魔法少女達がどこまで足掻けるか。
たった一人が笑い転げる為の闘争が、幕を開ける。