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  • 決闘バトルロイヤル @ ウィキ
  • Judge End ─アドバンス・カーニバル─

決闘バトルロイヤル @ ウィキ

Judge End ─アドバンス・カーニバル─

最終更新:2025年05月23日 19:02

zombi2baisoku

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空を見上げたらロケットが飛んでいた。
何を言ってるんだと思われるだろうが、イリヤからしてみれば言葉通りの光景が見えたのだから仕方ない。

ジャック達と別れ移動を開始、雪で彩られた道を進みどれくらい経った頃か。
どこからか唸るような音が聞こえ、不思議に思い頭上を見た。
視界へ飛び込んだのはロッケト…と正確に言って良いのかは分からない奇妙な物体。
いつだったか、ニュース映像で打ち上げがどうたらと流れた白い乗り物とは明らかに違う。
相当な速さで空を駆け、確認出来たのは一瞬。
しかしあれだけの大きさが飛んでいれば、地上にいる参加者が気付かない筈も無く。
イリヤのみならず、同行者の遊戯と司も思わず呆気に取られていた。

「な、なに今の。ギルくんが乗ってるのにちょっと似てたような…?」
『それ帰っても本人には言わない方が良いですねー。見た目のトンチキ具合は今飛んでった方が上ですが』

マスターの少々ズレた発言に返しつつ、飛行物体の向かう方角を探知。
炎を吹かしてはいるが、あれの動力源は間違いなく魔力。
流石に英雄王の宝物庫から出した宝具と比べるのは酷であるも、速度の面だけで見れば優秀な移動手段だろう。
目立ち過ぎるというデメリットに目を瞑ればだが。

如何なる経緯でロケット(仮)が作られたかはさておき、重要なのは何故使うに至ったか。
美的センスは置いておいて、会場をスピーディーに移動可能なら使わない手は無い。
が、今しがた言った通りあの飛行物体は相当目立つ。
目撃するのが友好的な参加者だけとは限らない、むしろゲームに乗った者からは格好の的となる。
もしロケット(仮)に乗っているのが司のような争いとは一切縁のない、「普通」の世界に生きる者だとしても。
悪目立ちする危険性に全く気付かないとは、幾ら何でも考え辛い。

『んー、あれですかねぇ。目撃されちゃうのは承知の上で、一刻も早く移動しなきゃいけない必要に迫られたと』
「それって…誰かに襲われて急いで逃げてるってこと?」
『若しくは「来るなら来やがれ!俺は逃げも隠れもしねぇ!」とかいう、一人か二人はコンペ中に投げられる脳筋キャラムーブかもしれませんよ』
「まーたこのステッキは意味の分かんないことを…」

意味深なようでいて別にそんな事は無いルビーの言葉は、今に始まったものじゃないので軽く流す。
今考えるべきはロケット(仮)を追いかけるか否か。
余程自分の力に自信があり襲われるのはむしろ望む所という、後者の場合ならともかく。
前者であれば一刻を争う事態かもしれない。
襲われた際に傷を負い、重症のまま逃げ続けている可能性だって否定出来ない。

『まあ実は罠で、好奇心に駆られてロケットを追って来た人達を一網打尽、ってことも有り得なくはないですけど』
「でも…そうじゃなくて本当に怪我をしてる可能性もあるんだよね」

この場で立ち止まっていても、やれるのはあれかこれかと仮説を並べるだけ。
何かしらのアクションを起こさなければ、事態が好転する機会はやって来ない。
イリヤとしてはロケットを追いかけたい。

「俺はそれで構わない。今の俺達には檀黎斗を倒す為の仲間も情報も足りない、行ってみるだけの価値はあると思うぜ」
「…うん、私も追いかけたいかな。もしかすると、琴岡がいるかもしれないし」

公園での一件以来ギクシャクしたままだが、友達だと思ってるのは変わらない。
ウザいと言われて拒絶され、どんな顔で会えば良いのか分からなかったけど。
殺し合いとかいう悪趣味なもので、みかげが命を落とす方がずっと嫌だ。
もしロケットで逃げたのがみかげなら、会いに行かない理由は無い。

(まあアレに琴岡が乗ってるってのは、別の意味でどんな顔すりゃ良いか分かんないけどさ…)

奇天烈な飛行物体に跨る親友を想像し、思わず引き攣り笑い。
シュールな絵面は頭から追い出して、ともかく三人共意見は一致。
ルビーのナビに従って移動開始。
何ともおかしな見た目のロケットだったな等の、軽い言葉を交わしつつ先へ進む。
海馬が操縦するブルーアイズのジェット機を知っているだけに、遊戯は二人に比べ平然と受け入れていたが。

雪道を踏みしめエリア間を跨ぎ、気が付けば地面の白さは消失。
イリヤにしてみればエインズワースの工房内以外では久方振りの、雪が見当たらない道。
元の世界ではない、血濡れた箱庭で懐かしさを感じ苦い思いが走る。
顰めた顔が後方の二人には見えてない事へ安堵し、ルビーもあえて指摘はせずに案内を続けてくれた。

道中ゲームに乗った参加者との戦闘は起きなかった代わりに、NPCが群れを成して襲って来た。
ここは自分がと引き受けようとしたイリヤを制し、遊戯がエアトスで迎撃。
治療促進を掛けているとはいえ、受けた傷は決して浅くない。
幸いエアトス一体でどうにかなり、足止めで時間のロスになったが負傷も無く切り抜け移動を再開。

一行が到着した場所に件のロケットは影も形も見えない。
代わりにあるのは周囲から明らかに浮いた建造物。
ドオオオンという擬音が今にも聞こえて来そうな佇まい。
大金を掛けつつも成金特有の下品さを感じさせない、そんな豪邸が目の前にあった。

「…っていうかここルヴィアさんの家だよね!?」
『いやールビーちゃんもビックリですよ。あの人が知ったら、金髪ドリルでギガブレイクするくらいに怒――いえ、あんまり気にしなさそうですね』

美遊が転入して来た初日に我が家の向かいに建てられ、代行者との戦闘で崩壊の憂き目に遭うもすぐに再建築。
平行世界に飛ばされてからは当たり前だが、すっかり目にしていない屋敷。
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの日本での仮住まい。
何がどうして、よりにもよって殺し合いの会場に存在するのか。
ロケットと言い予想外の光景に頭が混乱するも、状況は落ち着くまで待ってくれない。

「騒がしいと思って来たけど、人ん家の前で五月蠅くしちゃ駄目だろ?」
「っ!?」

同行者達ではない、知らない声。
身構えるイリヤの横では司も顔を強張らせている。
声の主は目の前、正確に言うと少し見上げた先。
閉じた門の上にしゃがみ、軽薄な笑みでこちらを見下ろす男。
夜闇と同化しそうなコートを羽織った彼は、揶揄うような表情で一件無害そうに見えないこともない。

(この人……)

だがイリヤとて、クラスカードの回収に始まり幾つもの死線を潜り抜けて来た少女。
今更上辺だけの情報に惑わされはしない。
男の目は全く笑っておらず、自分達の一挙一動を見極めている。
敵か否か、前者であれば攻撃に躊躇は抱かぬだろう刃の如き瞳だ。

「待ちな、俺達はここへ襲いに来た訳じゃない」

緊張感が漂う中で、真っ先に男との対話を試みたのは遊戯だ。
強敵達との、時には命をも賭けた決闘(デュエル)を経験して来たが故にこの程度では動じない。
ジャック達との遭遇時は向こうが遊星の仲間だったからスムーズに情報交換が行えたものの、毎回そうなるとは限らない。
警戒を抱かれるくらいは想定内。

「俺達はロケットを追ってここに来た。若しかしたらこっちの仲間が負傷してるかもしれないし、そうでなくてもお互い殺し合いに乗ってないなら協力できる筈だ」

伝えた内容に嘘偽りは含まれていない。
やましいものが何も無いのだから、余計な隠し立てはせず堂々と口にするまで。
次はそっちがどう出るかを視線に乗せて尋ねる。

「ふぅん?女の子侍らせてるから恰好付けたい、って感じでも無いか」

視線を逸らさない遊戯の姿と、背後の少女達を見比べ思案顔。
信用して良いかどうかを考える時間は長くなく、すぐに答えは出た。
門から飛び降り華麗に着地。
整った顔立ちと相俟って、靡くコートが随分と似合う男だった。

「恐がらせちゃってごめんね?外は寒いし、中で休みながら話そっか。イカした髪のアンタもそれで良い?」

ヘラリと表情を崩し微笑み掛ければ、重い空気は一瞬で霧散。
一触即発は無事に回避し、ホッと司は胸を撫で下ろす。
別に大人の男性が苦手という訳じゃないけど、ジャックや冥王と名乗るおじさんとはまた毛色の異なる相手。
自分の方にも顔を向けて来たので、とりあえず会釈しておく。
さっきまでは迂闊に近寄れない雰囲気だったのに、今やクラスの男子みたいに気安く接して来る。
掴み所のない人だと思った。

「魔導具…とはちょっと違うか?おっ、意外と柔らかくて伸びる」
『あ~♡ソフトッタチがこそばゆい♡ごめんなさいサファイアちゃん、お姉ちゃんは一足先に大人の階段を昇っちゃいました…♡』
「すみません、このステッキの言うことは真に受けなくて大丈夫ですので…」

緩いやり取りもそこそこに、男に案内され一行は屋敷の中へ。
敷かれた絨毯の色も細かい調度品も全て、イリヤの記憶にあるのと同じ。
歩く途中でルビーから『多分精巧に作ったレプリカでしょう』と言われ、余計に気味の悪さが増す。
メイド服姿の美遊を見れて、凛とルヴィアの小競り合いが繰り広げられた場は実際にはここじゃない。
だというのに、懐かしさを偽物の屋敷に一瞬感じた自分が嫌だった。

イリヤの内心がどうであれ、男は案内役を放り投げず部屋の前に到着。
ノックし声をかけると、扉一枚隔てた先から応答があった。
入室の許可を貰えたなら遠慮はいらない、中に入ると三人も後に続く。
家主であるエーデルフェルト家の令嬢の私室へ、無関係の者が土足で踏み入れるのは言語道断。
と言ってもレプリカの屋敷に、そういった常識を当て嵌める必要は皆無。
遠坂凛が見たら眉間に皺を寄せるだろう、大金を掛けたベッド。
その上で上体だけを起こした水色の髪の少女と、傍らに佇む軍服の少女。
どちらもイリヤ達には見覚えの無い顔だった。

「よっチノちゃん。もう起きて大丈夫なのか?」
「あっはい、ロゼさんが手当てしてくださったので。ご心配をおかけしました」
「そんなに畏まらなくても、もっと砕けた話し方でも俺は気にしないよ?ま、それはともかく後ろにいる連中なんだけど…」
「問題ない。零が案内したということは、危険は無いと判断。私から見ても、今の所敵意は感じられない」

軍服の少女は真顔で、水色の少女は少し驚き訪問者達を見つめる。
強く警戒をぶつけないのは今言った通り。
ここまで案内した男が判断を間違える人間ではないと、信頼しているからか。
先んじて屋敷を訪れた三人と、後から来た三人。
互いに初対面、捜索中の仲間や友はいない。
けれど命を弄ぶゲームを強く否定する志は同じ、武力を用いる必要はどこにも無かった。


○


超人類、野比のび太との戦闘から撤退後。
ロケットを飛ばし十分な距離を取ったのを確認し、ロゼは急ぎ開けた場所へ着地。
緊急時の移動手段としてならまだしも、常時乗り続けるには大きさ故にリスクが高い。
稼働限界時間の10分まで数分の余裕こそあったが、目撃者を無駄に増やしては後々自分達の首を絞める。
二階建ての住宅程のサイズがデイパックに収まり、そこからは徒歩で移動。
零がチノ背負い、ロゼが襲撃に対応できるよう役割を分担。
幸いと言って良いのか、移動中に襲って来たのは数体のNPC。
一部のバグスター達のような自我を持たないモンスターに、空気を読むのを期待しても無駄だ。
手早く片付け、辿り着いたのが現在イリヤ達もいる屋敷。
傷薬やガーゼを集め、ロゼが手当てをしてる間零は見張りを担当。
時間や状況に関係無く他の参加者も訪れるだろうし、傷の処置に服を脱がす場へ男が同席する訳にもいかない。

「で、お客さんが来ないか見張ってた所にイリヤちゃん達が来たってわけ」
「そうなのか…涼邑さん達も危ない奴に襲われたんだな…」

屋敷に来るまでの経緯を聞き終え、司は神妙な顔で頷く。
自分とイリヤもゲーム開始早々女騎士に襲われたが、そういった例は当然他にもある。
こちらはイリヤが必死に戦い、遊戯が助けに来てくれたおかげで命が繋がったまま。
聞いた話では零達が戦った相手も相当な強さで、チノの負傷もそいつが原因だと言う。

(琴岡のやつ、本当に大丈夫なのかよ……)

女騎士もチノ達を襲った丸眼鏡で筋肉質の男も、どこの漫画のキャラだと言いたくなるような滅茶苦茶な危険人物。
自分達の場合は戦い慣れている善人が一緒だから助かったけど、全ての参加者が運に恵まれるとは限らない。
みかげも自分と同じ、特別な力を持たないただの女子中学生だ。
もし一人でいる所を女騎士みたいな参加者に出くわせば、為す術無く殺されたって不思議はない。
チノ達もみかげには会ってないらしく、今どうなっているのか不明。
無事を祈るが最悪の可能性が頭をチラ付いてしまう。
せめて殺し合いに乗っていない、信頼できる者に保護してもらっていればと思い、

(……本当に大丈夫だよな?)

もしや、保護してもらったは良いがその人と口論になったりとかはしてないだろうか。
参加者として招かれる少し前、公園でのみかげと撫子の喧嘩が思い出される。
まさかここでも参加者と衝突が起きてはいまいか。
みかげが危険人物に襲われるのとは別の問題も有り得ないとは言い切れず、頭が痛くなった。

弟の言葉で決心が付き、もう一度三人で過ごす為にみかげの家を訪ねた筈が殺し合い。
どうしてこうも余計なタイミングで、ふざけたゲームに巻き込むのか。
今更ながら非常に腹が立って来る。

女騎士と丸眼鏡の男は要注意人物として、6人と1本共通の認識を抱く。
続く会話の内容は友好的な参加者について。
まず主催者打倒を掲げる者全員に関係する、首輪の解除が可能な人物。

「確かアトラス様も言ってたけど、遊星さんって人なら外せるかもしれないんだよね」
「ああ。それに遊星くんはこんな馬鹿げたゲームに乗るような奴じゃない」

ジャックの仲間であり、パラドックスとの決闘では遊戯も共闘した青年。
凄腕の決闘者なだけでなく、メカニックとしての才能も超が付く程優秀。
Dホイールやデュエルディスクを自作する遊星にならば、首輪解除を任せられる。
人間性に関しても遊戯とジャックの両方から殺し合いに乗らないと断言出来る、正しき心の持ち主だ。

遊星とは別に各々探したい参加者の事を話す。
冴島鋼牙や海馬瀬人など、合流出来れば心強いが本人達の能力を考えれば最優先で無くとも大丈夫だろう者達。
司やチノの友人達のように、元々一般人の為早めに見付けておきたい者達。
また信頼はしているが無茶をしないかという危惧もあり、出来れば合流を急ぎたいレイや城之内克也等々。

仲間達の話題が出たタイミングで、名簿上での不可解な記載にも言及があった。
海馬とココア、彼らの名前が何故か二つ記載されている。
一人だけなら単なる印刷ミスと考えられなくも無いが、二人もあれば流石に不自然。
こちらの疑問は平行世界の存在を把握し、実際に転移した経験を持つイリヤとルビーがいた為スムーズに解決された。
恐らく海馬とココアの両名は、別の世界からも参加している。
荒唐無稽な答えだが、それを言えば自分達が巻き込まれた殺し合いが既に何でもありのメチャクチャな場だ。
頭から煙を出しショートし掛けるも、そういうものだとチノも受け入れる。

「ココアさんが二人…ラビットハウスの中に台風が吹き荒れそうです……」
「チノはココアをどっちも独り占めしたいの?」
「えっ!?そ、そんなことありません。二人もいたら、私もリゼさんも今以上に振り回されてしまいますっ」

赤い顔で否定するチノを尻目に、イリヤは平行世界の人間について考え込む。
殺し合いに関わる人物で、彼女が知っている者は二人。
一人は人質として紹介された美遊・エーデルフェルト。
もう一人は参加者名簿に記載された青年。

「…ねえルビー。ずっと気になってたんだけど……」
『皆まで言わずとも、ルビーちゃんにはお見通しですよー。士郎さんのことですね?』

衛宮士郎、過去にイリヤの父が養子に迎えた義理の兄。
一つ屋根の下で暮らす彼もまた、殺し合いの会場に拉致されてしまった。
自身の生まれた世界でクラスカード回収を行っていた頃のイリヤなら、そう考えただろう。
しかし平行世界でエインズワースと戦い、『彼』の存在を知った今ならもう一つの可能性が思い浮かぶ。

『参加している士郎さんは美遊さんのお兄さんの方、その可能性は高いです。むしろ大々的に美遊さんの存在を公表した以上、あっちの世界の士郎さんの方が受ける衝撃は大きいでしょうね。
 檀黎斗もそれが分かっているからこそ、ああいった行動に出たのだと思いますよ』
「…っ」

自分の兄が危険な目に遭うのも最悪だが、もう一つの可能性も言うに及ばず。
平行世界の士郎が美遊を助ける為にどれ程傷付き、苦難の果てに絶望へ打ち勝ったか。
衛宮邸で過去に起きた聖杯戦争の話を聞き、込み上げるものの大きさに涙を流した瞬間は忘れない。
なのにどうだ、兄妹は再び引き裂かれた。
士郎がどんな思いで美遊を平行世界に飛ばし、牢獄で自分と初めて会い感涙したのか。
それらを檀黎斗は、ゲームを盛り上げるスパイスの一環程度にしか見ていない。
やるせなさと黎斗への激しい怒りが胸を焦がし、同時に士郎への不安も高まる。
美遊を助け出した時点で、既に彼の体はボロボロだった。
そんな状態で美遊を黎斗の元から助ける為に無茶な戦い方を繰り返し、その果てに待ち受けるのは死か、或いは無銘の英雄(エミヤ)の完全侵食。
どちらだろうと、到底納得のいく結末では無い。

(…美遊さんと同じように確保し士郎さんも参加せた、本当にそれだけですか?イリヤさんや遊戯さんが参加している事からも、主催者が時間移動を把握してるのは確実。となると…殺し合いの点から見ても、士郎さんはイリヤさんと会うよりも前の……いえ、結論を出すにはまだ早い……)
「ルビー?どうしたの急に黙り込んで」
『あー、お気になさらず。どちらの世界の士郎さんがいるにせよ、早めに見付けるに越したことはないですねー。
 イリヤさんが絶賛片思い中で、【小学生の私だけど6歳年上のお兄ちゃんとガチ♡恋しちゃってます~衛宮家緊急家族会議待ったなし~】の士郎さんがいるって可能性もゼロではないですので』
「ちょ!?絶対後半の変なタイトルっぽい件いらなかったでしょ!?」
「イリヤさんは、『妹』としてお兄さんに恋をしてらっしゃるんですか?」
「チノさんも何でそこに食い付いちゃうの!?」
「誰を好きになったって悪いことじゃない。イリヤはもっと堂々として良い」
「ロゼさんも親指立てなくて良いからね!?」

マスターをおちょくるという、相棒ながら舐め腐った趣味はここでも健在。
サラッと兄への想いを曝露された挙句、何故かチノが瞳を輝かせロゼもサムズアップをしてきた。
シリアスが長続きせず頭を抱える傍らで、遊戯も自身の相棒と言葉を交わす。

(ねぇもう一人の僕。参加してる海馬くんの内片方が平行世界の海馬くんなら、城之内くん達もその可能性があるんじゃないかな?)
(海馬と違って名簿に載ってる名前は一つ。だが俺達と同じ世界の城之内くんや御伽とは限らない、そういうことか?相棒)
(うん、それにもしかしたら本田くんも……)

一番最初に集められた空間、磯野に食って掛かった直後に殺された親友の一人。
実は本田ももう一人の海馬と同じく、遊戯とは別の世界の人間なんじゃないか。
可能性が真実なら、あくまで平行世界の本田が死んだに過ぎず自分の世界の本田は生きている。

と、自分自身の考えに後悔と怒りが湧き上がった。
たとえ平行世界の本田だろうと、死んでいい筈が無い。
制止する自分を安心させようと微笑んだ彼は、紛れもない「武藤遊戯の大切な友の本田ヒロト」だ。
なのに自分は今、よりにもよって平行世界の本田なら自分の世界に影響無いなどと、彼の死を侮蔑するに等しい事を一瞬とはいえ考えてしまった。

(ごめん、もう一人の僕……僕最低だ……)
(相棒……)

悔やむ相棒に遊戯も言葉が見付からない。
殺し合いが始まって時間を置かずイリヤ達の危機に駆け付けたのもあってか、長々と悲しんでいる余裕は無かった。
しかし今、改めて本田の死が重く圧し掛かる。
意識が奥に引っ込んでいる相棒は当然、己にとっても本田は城之内や杏子と同じ親友の一人。
BIG5とのデュエルで体を奪われた時とは違う、本当の死を迎えた。
カードに幽閉された祖父の魂を救ったのと同じ展開にはならない、デュエルに勝っても本田の魂は返って来ない。
その事実が決闘王(デュエルキング)の心に影を落とす。

とにかく互いの持つ情報は粗方話し終えた。
それぞれ水を取り出し喉を潤すなど、一息つくムードが漂う。

「あっ、ちょっと待って。遊戯と二人で話したいから、付き合って欲しい」
「俺か?別に構わないが…」
「んじゃ、俺も話が終わるまで見張りやっとくよ。チノちゃん達も、もう少しガールズトークを楽しんでて」
「そんなに長くはかからないと思うけど、遊戯の答え次第」

ロゼからの誘いに困惑を抱くも承諾、遊戯達と揃って零も部屋を後にする。
残ったのは三人の少女と愉快な魔術礼装。

「ガールズトークって場合でもない気がするんだけどなぁ…」
「いえ、きっと私達が煮詰め過ぎないように零さんなりの気遣いだと思います」

軽薄な態度や言動の裏では、常に自分とロゼを気に掛ける優しさがある。
出会ってからの零を間近で見ているだけに、チノが信頼を置くまで時間は掛からなかった。
ココアへの素直になれない気持ちに耳を傾け、支えてくれたロゼも同じだ。
殺し合いに巻き込まれたのに言うのは変かもしれないけど、自分は本当に運が良いのだと思う。
優しくて強い彼らと出会い、仲間として受け入れてもらった。
先の丸眼鏡の男の言葉に揺らいだ時も、支えてくれる二人の存在がどれ程心強かったか。
ロゼと零に感謝する反面、自分のようにならなかった少女の存在が棘となって突き刺さる。
たった一人で抗い、その果てに命を奪われた友の最期はきっと永遠に忘れられない。

「香風さん?顔色悪いけど大丈夫か?」
「す、すみません。ちょっと、マヤさんのことを考えて……」

チノの口から出た名前に、心配気な顔を作る。
放送で金髪の男に殺された少女が、チノの親友の一人なのは先程聞いた。
友達が巻き込まれているだけでなく、死ぬ瞬間を見世物のように扱われる。
それがチノの心にどれ程の傷を刻んだのか、想像も出来ない。
イリヤだってもし美遊が人質にされるのみならず、マヤのようになったら果たして正気を保っていられるのか。
ダリウスが世界を終わらせた時とは条件が違い過ぎる、クロだけでなく美遊も失い心はまだ奮い立たせられるか。

「チノさん……」
「大丈夫です、ロゼさんの胸でいっぱい泣きましたから。それに、私にはまだ守りたい人達がいます」

打ちのめされて塞ぎ込むのは簡単だけど、逃げる選択をチノは払い除ける。
ココア達を自分の剣で守る、ロゼとの誓いを嘘にするなどお断り。
自分が死ぬのは勿論嫌だけど、大切な人達が殺されるのはもっと嫌だから。

(凄いな、二人とも…)

親しい人が殺され、悪辣な者達に囚われても。
自棄を起こさず戦おうとする姿は、司にとって眩しいくらいだ。
最初はイリヤと同じ小学生かと勘違いしたくらいに小柄なチノだけど、心は自分よりもずっと大きく見える。
イリヤに守られ、無茶をさせてしまった自分がどうにも情けない。
無意識の内にため息が零れ――





『ッ!?イリヤさん!障壁を――』





視界を光が覆い尽くした。


○


「ここならチノ達にも聞こえない。白状するなら今の内」

ルヴィアの私室を離れ、立ち止まり話を促すロゼに遊戯はまたもや困惑。
どうも杏子や舞、レベッカと言った自分の知る女性陣とは異なるタイプでやりにくい。
尤も、遊戯が困惑する理由は他にもあるのだが。

「ロゼちゃん、直球過ぎて伝わってないんじゃない?遊戯が何か言いた気にロゼちゃんのことチラ見してたのも、一緒に言わないと」
「そう、その通り。最初に私を見た時も驚いてたけど、どうして?」
「…気付かれてたのか」

悟られないように動揺は顔に出さなかったつもりだが、相手は歴戦の閃刀姫と魔戒騎士。
あっさり見抜かれており、つい感嘆の呟きが漏れる。
別に後ろめたい内容を隠していたのではない、ただ大っぴらに話すのも少々憚れる内容だった。
こうして相手の方から話せる場を提供されては、この期に及んでシラを切りはしない。

「なあロゼ、俺は屋敷に来る前にアンタやアンタの仲間のレイの事を知った」
「…どうして?さっきレイには会ってないって言ったのは嘘?」
「そうじゃない、理由に関してはこいつを見てくれ」

言って差し出されたのは参加者共通の支給品。
首を傾げタブレットの画面を見下ろし、驚愕で目を見開く。

「レイ……?」
「それにこっちは…ロゼちゃんだよな…?」

ディスプレイ上に映るカードらしき画像。
下部のテキストはともかく、イラストとカードの名称を知らない訳が無い。
閃刀姫、レイとロゼ。
まるで意味が分からないと言った二人へ、遊戯が一から説明を始める。

今開いているのは放送後に追加された、デュエルモンスターズのルール。
ジャック達と別れた後、自身のデッキは手元に無いが念の為にと遊戯もアプリを起動。
ページを捲り、ふと目に付いたのは召喚方法のやり方とカードを使った例。
シンクロ召喚は遊星がやったのを実際に見たが、どうやら特殊召喚は他にもあるらしく更に読み込む。
エクシーズ、ペンデュラム、リンク。
聞いた事も見た事も無い単語やカードが次々現れるものだから、あの時はさしもの遊戯も目を白黒させた。

そうして見付けたのがリンク召喚の項にて記載された、閃刀デッキ。
黒い軍服に身を包み、得物を構えた少女こそ遊戯が屋敷で出会ったロゼである。

ロゼからしてみれば意味が分からない。
何故自分とレイ、いや閃刀姫という存在がカードゲームに登場してるのか。
まさか自分達の知らない所で、戦争への投入以外にこういった形で閃刀姫を利用していたとでも?
馬鹿なと、自分で自分の予想を否定する。
あの列強国が兵器としてでなく、娯楽に閃刀姫を使うなど有り得ない。

「多分だが、イリヤ達が言ってた平行世界ってことだと思うぜ」
「それは……つまり…?」

遊戯が何を言いたいのかも、混乱の抜け切らない頭ではすぐには察しが付けられず聞き返す。

一方遊戯はロゼの様子から、デュエルモンスターズの精霊ではないと分かった。
ダーツとのデュエルで力を貸した伝説の3体の竜と違い、ロゼはデュエルモンスターズに関して一切知らない。
あくまで遊戯の推察になるが、恐らくロゼやレイは元々デュエルモンスターズが存在しない世界の住人。
閃刀姫というのもカードのテーマではない、現実に造り出された存在なのだろう。



と言った説明を行う時間は唐突に失われた。



「「――ッ!!」」

動揺から一変、引き抜いた剣の如き瞳を揃って同じ方向へと向ける。
事情を事細かに伝える時間は無い、遊戯の反応も今や後回し。
姿は見えずとも存在は、身を引き裂かんと迫る殺意は確かに感じ取れた。
ありとあらゆる場所から死が襲う戦場を駆け抜けてきた、列強国の閃刀姫。
陰我を餌に根を伸ばす魔界の住人との死闘へ身を投じた、歴代最強の魔戒騎士の一人。

到着まで一刻の猶予も無い、死から逃れるべく動き出し、
閃光と衝撃が三人を襲った。


◆◆◆


ロケットを追い掛けるか、発射地点へ向かうか。
暫し悩んだ末に風が選んだのは後者。
考え込む振りだけして実はこれといった理由も無しに適当に言った、ということではない。
自分達に限らずロケットの目撃者が口を揃えて言うだろうが、あのトンチキな飛行物体はかなり目立つ。
殺し合いで悪戯に注意を引くのが如何に危険か、理解してないとは考え辛い。
恐らくだが、目立つのを承知の上でロケットを使わねばならない事態に陥った。
となればロケットに乗っている者は、負傷している可能性が高い。
具体的にどれ程弱っているかは分からなくとも、万全でないなら自分達にとって好都合。
仕留めるには絶好のチャンス。
尤も断言出来る程の根拠も無く、勘頼りの部分があるのは否定できないが。

とはいえ士郎からは反対されずアッサリ承諾。
思い切りの良い人間は個人的に嫌いじゃないが、そんな即答で良いのか。
風の内心を知ってか知らずかロケットが飛んで行った方向へ進み出し、慌てて士郎の背を追い掛けた。

片や夢幻召喚を行った少女、片や未来の英霊に置換(侵食)される少年。
人の限界を優に超えた身体能力を持ち、当然移動速度も常人とは比べ物にならない。
飛行物体よりは流石に落ちるとしても、大きなトラブルにでも見舞われない限りは追い付けない訳ではなかった。

「っとに最悪…!ワラワラワラワラ湧いて虫かっての!」

残念ながら不運が降り掛かり、余計に時間を割かれる羽目になったのである。
ゲームにおける参加者以外の存在、主催者が会場に放ったNPCのモンスター。
数体程度ならともかく、10を超える数が一気に襲って来ては流石にのんびり構えてもいられない。
しかもOCGで言えばレベル5以上、攻守2500前後のモンスターも少なく無かった。
ホカクカードで戦力確保を行う不動遊星なら良い機会と思うだろうが、士郎達からすれば迷惑以外の何物でもなく。
結果、いらぬ労力を強いられ風の機嫌は急降下している。

「ぶった斬った傍から違うのが出て来るし…もしかして、衛宮さんがアイツらの好きな匂いとか出してる?」
「どんな匂いだよ。単に参加者なら誰でも餌に見えてるんじゃないか?」
「あーやだやだ、あんな連中にモテても嬉しくないわよ」

げんなりする風には士郎も苦笑いを返す他ない。
気持ちは分からんでもない、襲ってきた中には昆虫系のモンスターもおり中々にグロテスクだった。
思い出したのか余計に嫌そうな顔になる風だが、全てが無意味な戦闘かと言えば違う。

「まあお互い、持ってる武器には慣れたしそこは無駄じゃなかったと思うぞ」
「そうだけどさぁ…ってか余裕で私の一撃受け止めてた衛宮さんが言っても、嫌味にしか聞こえないんだけど」

バイザー越しにジト目を向けられ、曖昧に笑って誤魔化す。
実際風としても、勇者システムとは異なる力の練習台としてならNPCは丁度良い相手だったと思う。
互いに打ち明けてはいないし話すつもりも無いが、本来の彼らの力はおいそれと使えない事情がある。
投影魔術の使用回数を重ねる毎に、肉体が英霊に蝕まれる士郎。
絶大な力を齎す満開を経て、神へ身体機能を捧げねばならない風。
目的の為には絶大なリスクも飲み込む覚悟だが、代用の力で乗り切れるなら利用しない手は無かった。

幸い、支給された武器はどちらにとっても当たりの類に入る。
得意とする刀剣類、しかもディスクを使えば双剣を装備可能なシンケンマル。
投影せずとも十分な強度と切れ味の得物を使えるのは、士郎にとって有難かった。

サーヴァントカードは勇者と別物だが、アーサー王の力とやらは風としても申し分ない。
スマホが支給されずとも、これなら問題無く戦える。
何より、心情的にも妹の声を奪った忌まわしいシステムよりはずっとマシなのだから。

(どう考えても「剣道やってます!」ってだけの動きじゃないっぽいかなぁ。夏凛みたいに戦闘訓練してたとか?)
(セイバーの新しい使い手なら疑問は無いけど、剣を振るうのに迷いが一切無い。殺し合いの前から荒事を経験してる、か)

加えて馬鹿正直に伝えはしないが、互いの戦う様子もしっかり観察している。
協力はあくまで一時的、いずれは道を違えるのが確定な関係だ。
遠くない内に必ず来る決別に備えて、戦力を把握しておくのは当然のこと。

時間は掛かったが白一色のエリアを抜け、住宅地へ足を踏み入れる。
ロケットの向かった方角は南、民家が立ち並ぶここに身を潜めたと考えるのが自然。
腰の刀を意識し進む士郎の隣で、風は支給品を使い注意深く家々を調べる。
一見何の変哲もない望遠鏡だが説明書によると、壁数枚隔てた先まで透視する機能があるのだという。
魔術礼装の一種かと思うも、そこは重要じゃないので深堀りしなかった。

「言っとくけど貸さないわよ。覗きにでも使われちゃ、私も女として黙ってられないから」
「犬吠埼の中で俺はどういう扱いなんだ…」

年上と言う事もあってか自分をさん付けで呼んではいても、随分砕けた態度で接して来る。
もういない後輩の少女とは違うタイプで、どうも反応に困った。

「…今衛宮さんが勝手に私を誰かと比べた気がする…」
「……いや誤解も良いところだろそれ」
「最初の沈黙がどうも怪し――見付けた」

軽口の応酬は終わり、共に同じ方向を睨み付ける。
周りに立つ家と比べて一際大きい屋敷だ。
士郎が住まう冬木には無い建造物を、望遠鏡で細かく調べる。

「3人…違う、6人いる。二ヶ所に別れてるみたい」
「どんな奴らかは見えるか?」

ダイヤルを調整し、屋敷内にいる人数・位置・容姿を確認。
名簿に勇者部の4人の名が無かったので当然、風の知る者は一人もいない。
士郎も同じく、『参加者』に知っている者は皆無。
だから屋敷内の参加者の外見を伝えられても、何らかの反応を見せる事はなかった。

向こうがこちらに気付いた様子はない、対して自分達は正確に位置を把握。
先手を打つには持って来いの状況を、利用しない馬鹿に非ず。
中には子供もいる、その事実に何も感じない冷徹な人間では無い。
だが今更躊躇を抱くような、中途半端な心構えでもないのだ。

弓を投影し狙い撃つのが嘗ての聖杯戦争でのセオリーなれど、可能な限り魔術は温存しておきたい。
肉体の侵食はもとより、今後を考えれば風の前で手の内を明かし過ぎるのも避けたかった。
ここは支給品を有効に活用させてもらう。
シンケンマルのディスクを回し、異なる形状の武器へ変化。
刀身へ刻まれた「火」の一文字は、侍戦隊を率いる殿専用装備の証。
重厚な刃を以て外道衆を斬った剣の名は烈火大斬刀。
志葉家の当主が豪快に振るい、世界の破壊者と結んだ絆の証は悪を為す兄の手に渡った。
外見に違わず敵を一刀両断可能だが、もう一つの使い道もある。
刀身部分を倒し、大筒モードとも呼ばれる遠距離形態へ変化。
ディスク装填が済んだ大筒を風に渡し、最後の支給品を取り出す。

「銃…じゃなくて牛?」
「モウギュウバズーカって名前らしいぞ」
「見たまんま過ぎでしょ…」

風の呆れはさておき、立派な武器であるのには変わり無し。
烈火大斬刀同様、こちらも元はシンケンレッドこと志葉丈瑠が使う装備だ。
牛折神の特性を備えた大筒は、人の世を脅かすアヤカシを葬るのが本来の役目。
残念ながらシンケンジャーと同じ志の戦士の手には渡らなかったが。
威力を最大に高める為のディスクを装填し、照準を合わせる。
士郎も風も銃火器は使い慣れた武器とは言い難いが、標的の位置が分かっていれば然程問題にならない。
反動の大きさも今の身体機能なら耐えられる。

「準備は良いか?」
「いつでも」

それぞれ狙いを付け、胸中で燻る罪悪感を噛み殺す。
合図は一瞬、引き返す道を自ら壊し底へ底へと突き進む。
千の屍を築き上げようとも助けたい者の為に、引き金を引く。
外道を地獄へ送り返す光輪が発射、轟音を立てて屋敷の二ヶ所が吹き飛んだ。

(死んだかな……)

煙を上げる屋敷を見て、生き残るのは難しいだろうと風は思う。
大筒モードの烈火大斬刀は本来、シンケンジャー全員のディスクを装填し放ってこそ最大級の火力を発揮する。
一枚だけでは威力も低下、現にシンケンレッドが筋殻アクマロに撃った時はあっさり防がれた。
だがそれは、外道衆の中でも上位の実力者であるアクマロだから出来た芸当。
壁越しの人間三人を跡形も無く消し飛ばす程度、ディスク一枚でも十分可能だ。

烈火大斬刀を士郎に投げ渡し、これで本当に人を殺し戻れなくなったのを噛み締める。

「っ!まだ終わってない!」

と、感傷に浸るには気が早過ぎた。

協力者の怒声を最後まで聞かずに剣を翳し、間髪入れずに衝撃が刀身を襲う。
反応が間に合ったのは、バーテックス相手に切った張ったを繰り返した経験が活きた為か。
理由を詳しく探る等の無駄な思考は削ぎ落とし、バイザー越しに敵を睨む。
爆風の中を突っ切り、弾丸の如き勢いで斬り掛かった少女。
銀髪を靡かせた閃刀姫もまた、真紅の瞳で斬るべき相手を射抜く。
丸眼鏡の男と同じだ、会話の余地を許さずに攻撃を仕掛けたのなら容赦してやる理由も無い。

「こっちもか…!」
「訪問のチャイムにしては過激にも程があるでしょ、お宅ら」

爆風を飛び出し疾走した黒い影はロゼ一人じゃない。
脅威の急接近を視界のみならず肌で感じ取り、士郎も戦闘態勢へ移行。
赤き大剣を再び日本刀へ戻し、流れる動きで双剣に変化。
一撃の威力こそ強烈でも振るう速度はシンケンマルに劣る。
今から相手取る敵を前に、自ら速さを捨てるのは愚の骨頂。
交差させた刀が衝突するは、士郎同様に二振りの刃。
魔界の住人ホラーにとっての猛毒、魔戒剣を手に零が魔術使いと斬り結ぶ。

対アヤカシ用の大筒を撃ち込まれれば、只の人間に抗う術は無い。
なれど、此度の標的を容易く殺せると思ったら大間違いだ。
自らへ迫る殺意に何も出来ないようなら、とうの昔に戦場で力尽き、或いはホラーの餌となっただろう。
襲撃を察知し体は一切の無駄なく回避へ動き、大筒の直撃には至らなかった。

彼らに助けられた決闘者も、五体満足で生き延びている。

「おっと…!一人だけ行かせたりはしないよ!」

サーヴァントカードの恩恵で感覚も常人の数十倍に引き上げられたのだろう。
煙に紛れて離れようとする鼠を一匹目敏く発見。
コソコソ隠れても無駄だ、聖剣で力任せにロゼを押し退ける。
紅葉みたいなぶっ飛んだ髪型の少年が、何かする前に斬り殺す。

「うえっ!?まだ仲間がいたの!?」

騎士王の聖剣を決闘者に届かせまいと、女剣士が妨害。
屋敷の中にはいなかった筈の人物へ驚くのも束の間、背後よりロゼが斬り掛かる。
女剣士との鍔迫り合いは中断し真横に回避。
空を切った剣を見送らずに二人、いや三人の標的をしかと隻眼に焼き付けた。

「大丈夫?遊戯」
「エアトスを召喚しておいたからな。だが助かったぜ」

襲撃こそロゼ達の手を借りたが、そこから状況に置いて行かれたつもりはない。
急ぎエアトスを戦場に出し、次に何が起きても対処可能な準備は出来た。
見た所敵は二人、ロゼと零に加勢といきたいが被害に遭ったのは自分達3人だけじゃあない。
砲撃はイリヤ達がいた部屋にも行われたようで、煙が上がるのが見える。
向こうはどうなった、何とか凌げたのか、或いは最悪の事態に陥ってるのでは?
仲間達への不安は加速し、すぐにでも駆け付けたいが敵は素通りさせてくれない。
襲撃者の対処は自分達に任せて、遊戯はチノ達の元へ行ってと伝えようとするが、

「悪いけど、作戦会議を許してあげる程優しくないのよ!」
「む、空気の読めない奴」

ロゼとエアトスを襲い、隙あらば遊戯も狙う。
ここから離れるのを風が許可した覚えはない。
見れば零も士郎の相手で手が離せず、状況はこちらが悪い。
チノ達の無事を確かめたいというのに、叶わず強制的に足止めを食らう。
焦る内心を嘲るように、剣戟の音は激しさを増した。


◆◆◆


「――――っ!?みんな大丈夫!?」

ルビーの言葉を最後まで聞くより先に転身し障壁を展開。
11歳ながら既に幾度となく、命懸けの戦いに身を投じた経験に救われた。
クラスカードの回収、8枚目のカードから現れた黄金の少年との一騎打ち、エインズワースとの死闘。
気を張り続けねば命は無い、欠伸を漏らした瞬間に何が起きたかも理解せず死ぬ。
魔術の世界は子供相手だろうと優しくなくて、だからこそこの瞬間の糧となる。

魔術障壁と物理保護の重ね掛け、両方にリソースを割き砲撃の威力を削いだ。
だがモウギュウバズーカは上位の力を持つアヤカシですら一撃で葬る、スーパーシンケンレッドの武装。
まして最終奥義ディスクを装填し放ったのだ、勢いを簡単には殺せない。
障壁を張ったままイリヤの背後にいた二人を巻き込み、窓ガラスを突き破って吹き飛ばされた。
屋敷から引き離された先で落下したのである。

「大丈夫です…!イリヤさんが守ってくれましたし、司さんも私が…」
「あ、ああ…!二人とも助かった!ってか何が起きて……」

イリヤに遅れる形ではあるが、チノも専用ソードを使い変身。
身体能力強化の恩恵を受け、地面に叩きつけられても生きていられる打たれ強さを得た。
危険なのは二人と違って普通の人間の肉体の司。
高所から落ちれば骨が折れるし、当たり所が悪ければ即死も有り得る。
咄嗟にチノが引き寄せ守ったお陰で、大事にはならずに済んだ。

互いの無事に安堵するも、気を抜ける段階ではない。
屋敷が何者かに襲われた以上、きっと遊戯達にも危険が迫っている。
彼らを信じていない訳ではないが、かといってこのまま任せっ切りは御免だ。
仲間達の元から遠ざけられたのは痛い、一刻も早く戻らなくては。

『――待ってください皆さん!こちらへ急接近する反応があります!』

逸る心に身を任せるのは不可能。
警戒を呼び掛けるルビーの言葉に間違いは無く、三人の前に新たな脅威が姿を見せた。

「へえ、私以外にも魔法を使える奴が参加してたんだ」

故意か偶然か。
仲間達との合流を妨害する、最悪のタイミングで現れる魔女。
栗色の髪を揺らし、幼い風貌には不釣り合いな異様なプレッシャー。
天より見下ろす瞳は赫に染まり、少女達を決して逃しはしない。

「あなたは……」
「悪いけど自己紹介なんてしないから。あの男の時みたいに、余計なこと言われても腹立つし…」

ボソリと呟かれた苛立ちが、誰に向けてかをイリヤ達は知らない。
友好的なものが一つも含まれない視線を寄越す少女を知る者はこの場におらず。
数少ない情報から導き出されるのは一つ。

「私の為に、全員ここで死になさい」

戦いは決して避けられない。

→
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