殺し合い――あまりにも現実離れした目の前の光景を、ただの夢だと思いたくて、自らの頬を優しくつねる。そこに刻まれた微かな感触を信じたくないから、今度は先ほどよりも、ほんの少し強めに。
「……痛いです。」
幾度かそれを繰り返し、その度に感じる痛み。ただただこれが夢でないという現実が重ねて突き付けられるばかりだった。連鎖的に、磯野という男に逆らった少年が殺されたことも、次は自分がああなるかもしれないということも、現実なのだと理解せざるを得ない。
「ああ、これも全部――」
現状の認識は、じんじんと痛む頬によって現実逃避等も混ざることなくできている。
その上で――自らが、これまでの日常には決して巣食うことのなかった悪意に晒されているのだと、改めて理解した上で。
「――私がこんな目をしているのが悪いのですね……。」
桜ノ宮苺香は目を細めたまま、そう言い放った。
ドS・ツンデレ・妹――各従業員が自身にコンセプトを付与し、その属性で接客するコンセプト喫茶、スティーレ。そんな一風変わった普通ではなくとも平常の範疇を大きく逸脱はしない日常の中、誰かから殺し合いに巻き込まれるほどの恨みを買った覚えなど苺香にはない。
それならば――コンプレックスでもある、目付きの悪さ。これがまた悪い方向に機能したのだろう。こんな目付きをしているから戦いに飢えているとでも受け取られたのだろうか。
実際のところはさておき、目付きとは裏腹に人一倍の優しさを持つ苺香の想像力は、それ以上の答えを導き出すことは無かった。
「……だったら、スティーレの皆さんは無事なのでしょうか。」
そして、それと同時。その日常が崩れ去ったことへの不安が、再び巡ってきた。自分の目つきの悪ささえも私の魅力として、私を受け入れてくれた場所。決してこんな催しなんかに壊されていい場所なんかではない。絶対に、誰も巻き込まれていてほしくないという想いと――反面、誰かがいてくれないと心細いという不安も、少々。
「っ……! 最低、ですね。私いま、何を……」
たった今湧き上がってきた気持ちに蓋をするように。僅かとはいえ、大好きな人たちが殺し合いに巻き込まれていて欲しいなどという想いを抱いた自分を罰するように。ぱちん、と両の手で頬を叩く。
「……よし。」
さらに頬に重ねられたその痛みは、自戒を込めたこともあり、先ほどのものよりもいっそう痛い。でもその痛みこそが、前を向く契機となった。
「なよなよしていても仕方ありません。まずは配られているものを、確認しないと……。」
今のところはこれが夢ではないと分かったのみで、それ以上は一切向き合っていない。マイナスから始まった実感をただただゼロに戻しただけだ。
この世界に満ちた悪意を前にして、こうも素早く気持ちを切り替えられる者は決して多くはないだろう。その点については、苺香の鈍感さが功を奏したと言うべきだろうか。何にせよ、苺香は心機一転、支給品のデイパックを漁り始めた。
「これは……なんでしょう? 私専用の……クリスタル?」
そこには『桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル』と書かれた、字面通り水晶のようなものが入っていた。説明書も付属しているようだが、未だ残っている動揺もあり、情報を直ぐにインプットできる自信もない。個別の確認を掘り下げるのは、いったんデイパックの中身をひと通り見終わってからでも遅くはないだろう。
「それと……花札のようなものでしょうか。」
次に取り出したのは、中央に三本の剣が描かれた緑色のカード。周囲は金色に縁取られており、上部には『光の護封剣』と、おそらくイラストの名称を指しているであろう名前が書かれていた。
用途も分からずじまいのカードもいったん保留とし、次の支給品を確認し始める。
「あっ……これなら分かります!」
最後に出てきたのは、ティーカップとソーサー、茶葉とお湯入りのポットを揃えて1セットとしている、何の変哲もないティーセットだった。
職業柄、茶の淹れ方も最低限であるが知っている。それが殺し合いの役に立つかどうかは疑問であるが、それでもほんの少しだけ、これまでの日常に帰ってきたような、そんな気持ち――理解の内側にあるものへの安心感が、ふと襲ってくる。
「さて……って……え?」
マクロの確認を終えたため、次は個別の支給品について確認しようとした、その時だった。ふと足音を察知し、顔を上げる苺香。目の前で、自分より少し背の低い少女がこちらを見ていた。
足を震わせながら立っているというよりは立ち竦んでいるその様子からは、彼女が怯えているのが分かる。さらには、緊張を表すかのごとくぐにゃぐにゃにブレているその尻尾――
「――ってあれ……? 尻尾、ですか?」
「あわわわ……」
「あわわわ……」
さらによく見ると、少女には尻尾のみならずツノまで生えている。その見てくれは典型的な悪魔のそれだ。
(コスプレ……でしょうか。)
苺香自身、スティーレの従業員服でこの世界に連れてこられている身。コスプレ喫茶の類だろうか、と勝手に想像を膨らませた上で、それ自体への疑問は浮かばない。
「あの……。」
「ひっ、な、ななななんですか?」
「ひっ、な、ななななんですか?」
ひとまず声をかけてみると、少女の声色にさらに怯えの色が濃く表れる。今にも逃げ出しそうな形相の少女は、腰が抜けてしまっているのか、その場に留まって動かない。
「そんなに怖がらなくても、いいですよ。」
優勝した一人だけが、生き残ることが出来る。ならば殺し合いに乗り、他人を蹴落としてでも藁を掴むのは、やむを得ないことなのではないか、と苺香は思う。だけど――
「殺し合いなんて、やりたくないですもんね。」
それは私の、属性なんかで飾らない、たったひとつの本音。
日常の中に、ほんの少しだけブレンドされた非日常。時に辛く、苦しいこともある日々を属性という装飾で、彩って欲しい。そんな非日常を、私たちは全力で作り上げてきた。
それでも、食事を真に彩るのはスパイスではなく、料理の側だ。私たちが作り出す非日常は、日常をより楽しく、意味のあるものにするための味付けにすぎない。だからこそ、メインディッシュの味すらも損なわせてしまうような決闘という劇薬なんて、認めるわけにはいかない。
殺し合わずに元の日常に帰るなんて、手段と目的が真反対を向いていて、矛盾しているかもしれない。だけど、一緒に手を取り合える人がいれば何とかなるって気も、どこか湧いてくる。だって私は、お客様を怖がらせてしまうのに接客業に就きたいという矛盾を乗り越えて、今の居場所を見付けたのだから。
だからきっと、大丈夫。
あの日、私の運命ごと変えてしまうような、そんな不思議な出会いがあった。街角の、ガラス越しの何気ない出会いであっても、人は大きく変わることがある。殺し合いの舞台であっても、この縁は、出会えた奇跡は、大事にしたい。だから、差し伸べるんだ。
「で、でも……」
「……まだ、警戒してて落ち着かないみたいですね。」
「……まだ、警戒してて落ち着かないみたいですね。」
仕方ありません、と小さく漏らし、デイパックの中に手を突っ込む。先ほど確認したハーブティーは、パッションフラワーと呼ばれる種類のものだ。それには、鎮静作用やストレス軽減作用のある効能分が含まれている。この子の怯えも、これで多少は軽減されるだろうか。
唐突にデイパックを漁り始めた苺香を、目の前の少女は不思議そうに見つめている。その視線を感じ取り、ふと顔を上げると、少女と目が合った。
不安に寄り添うかのごとく、苺香は静かに告げる。このハーブティーを飲むと、心も落ち着きます、と。
「大丈夫ですよ――」
安心してもらえるように、表面にとびっきりの、笑顔を浮かべて。
「――すぐ、楽にしてあげますから。」
「っ……!!!ㅤきっ……」
「っ……!!!ㅤきっ……」
静寂に包まれた森の中に、張り裂けんばかりの絶叫が響き渡った。
「――ききかんりーっ!!!!」
■
私は吉田優子、15歳です。活動名のシャドウミストレス優子を略してシャミ子って呼んでください。
ある日突然ツノと尻尾が生え揃った新米まぞく……だったはずなのですが。宿敵には出会い頭に片手ダンプで助けられ、それからも色々と雪だるま式に借りが増えていってます。先日なんて夢の中で迷子になった時に闇堕ちしてまで助けにきてくれて、とにかく雪だるまぞくが止まりません。
どうにかこうにかで借りを返したい、そんなまぞくなのですが。何と、決闘なるものに巻き込まれてしまいました。先生曰く、法律で禁止されているらしいのに、です。
できることなら皆で仲良くなって、そして皆が生きて、帰りたい。そう意気込んで、よいやさー!ㅤと、突き進んでみたはいいのですが……最初に出会ったのは、まぞくを殺す目つきをした人。
桃色のヒラヒラした服を着ていたので魔法少女かもしれません。お茶のようにしばかれる――そう思い至った時には私の腰は抜け、動けなくなってしまいました。
そして流れるように、蔑むような目(※笑顔)で「お前を殺す」と言われ(※言われてない)、恐怖のあまり危機管理フォームになれたことで何とか立ち上がれました。今は一刻も早く逃げないと!
……と、宿敵の桃に鍛えられているこの足で、颯爽と走り出そうとしたのですが。
「……あれ?ㅤ進まない、なんで!?」
振り返ると、そこには私の尻尾をガッシリとグリップした少女の姿。
「どこ……行くつもりなんですか……?」
「ま、マーダーの方のまぞく停止ひもは御遠慮ください~!!!」
――まぞくの誤解が解けるまで、あと5分。
【桜ノ宮苺香@ブレンド・S】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤ桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア、ハーブティー@かぐや様は告らせたいㅤ天才たちの恋愛頭脳戦、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗らず、みんなで協力して生還する
1:またこの目つきのせいで怖がらせてしまいました……
[備考]
※参戦時期はお任せします。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤ桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア、ハーブティー@かぐや様は告らせたいㅤ天才たちの恋愛頭脳戦、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗らず、みんなで協力して生還する
1:またこの目つきのせいで怖がらせてしまいました……
[備考]
※参戦時期はお任せします。
【桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア】
桜ノ宮苺香に支給。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で、変身中は身体能力が向上する。また、変身中はきららファンタジアの『まほうつかい』の衣装に服装が変わる。まだ苺香は読んでいないが、説明書が付属している。
桜ノ宮苺香に支給。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で、変身中は身体能力が向上する。また、変身中はきららファンタジアの『まほうつかい』の衣装に服装が変わる。まだ苺香は読んでいないが、説明書が付属している。
【光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG】
桜ノ宮苺香に支給されたカード。
発動を宣言することで消耗し、効果を発動できる。まだ苺香は読んでいないが、カードの効果欄に、宣言のやり方等も含め、説明書きがなされている。
発動すると、3ターンと呼べる程度の時間、敵の攻撃の一切を受け付けず、通過することも出来ないバリアを前方に展開する。(本ロワでは、ゴールドシリーズ仕様のカードはデッキ単位で支給することができないが、単体で強力な効果を発揮するものとする。)
桜ノ宮苺香に支給されたカード。
発動を宣言することで消耗し、効果を発動できる。まだ苺香は読んでいないが、カードの効果欄に、宣言のやり方等も含め、説明書きがなされている。
発動すると、3ターンと呼べる程度の時間、敵の攻撃の一切を受け付けず、通過することも出来ないバリアを前方に展開する。(本ロワでは、ゴールドシリーズ仕様のカードはデッキ単位で支給することができないが、単体で強力な効果を発揮するものとする。)
【ハーブティー@かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦】
鎮静作用やストレス軽減作用がある『パッションフラワー』のハーブティー。石上優が四条眞妃に振る舞ったもの。
鎮静作用やストレス軽減作用がある『パッションフラワー』のハーブティー。石上優が四条眞妃に振る舞ったもの。
【吉田優子@まちカドまぞく】
[状態]:健康ㅤ危機管理フォーム
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:みんなが仲良くなりますように
1:ちぎなげコースは勘弁してください!
[備考]
※参戦時期は夏休み(アニメ2期7話、原作43丁目)以降です。
[状態]:健康ㅤ危機管理フォーム
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:みんなが仲良くなりますように
1:ちぎなげコースは勘弁してください!
[備考]
※参戦時期は夏休み(アニメ2期7話、原作43丁目)以降です。