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2308●原発処理水放出

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2308●原発処理水放出
 福島第一原発1~3号機建屋内には、事故後焼け落ちた燃料デブリが推計880トンあった。デブリは、注水によって冷やし続けなければならない。その冷却水に雨や地下水が混じることで汚染水が増え続けていた。建屋にたまる汚染水には多様な放射性物質が高濃度に含まれる。他核種除去設備(ALPS)で大半の放射性物質を除去するようにしたが、放射性物質のなかでトリチウムだけは、水の一部として存在するためALPSでは除去できない。そこでALPSで処理した水を、原発敷地内のタンクに保管してきたのだが、処理水は際限なく増え続け、タンクの増設に限界が生じてきた。
 政府の専門家会議は、処理水の放出方法を検討し、前例のある水蒸気放出と海洋放出の2案に絞った上で、海洋放出のほうが環境影響を監視しやすいとした。政府は21年、海洋放出の方針を決定した。しかし、放射能の影響、水産物への風評被害を心配する漁業者らの反対の声は強かった。また、韓国や中国なども環境の観点から反対を日本政府に伝えていた。
 政府は23年8月22日、関係閣僚会議を開き、早ければ24日に放出を始めることを正式決定した。岸田文雄首相は、「風評や漁業者のなりわい継続の不安に対処すべく、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも処理水の処分が完了するまで、政府として責任をもって取り組む」と政府の責任を強調した。また、処理水放出については「国際社会の正確な理解が広がりつつある」との認識を示し、放出による風評被害対策の基金創設などにも触れ、「セーフティーネット対策にも万全を期している。関係省庁には寄り添った対応を行ってほしい」と指示した。
 政府はこれまで「夏ごろ」に放出を始める方針を示していた。決定に先立ち首相は、20日に福島第一原発を視察したのに続き、21日には官邸で全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長らと面会、放出計画の安全性や風評対策について直接伝えて理解を求めた。坂本会長は反対する立場を示しつつ、「科学的な安全性への理解は私ども事業者の間でも深まってきた」と事実上容認する姿勢を示した。
 決定を受けて東京電力は8月24日、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。
 これに対して、中国は日本の水産物の輸入を全面停止するなど反発を強めた。岸田文雄首相は、中国に対し、外交ルートで禁輸措置の即時撤廃を求める申し入れを行った。処理水放出問題は、尖閣諸島問題に加えたもうひとつの棘となって日中関係を難しくした。
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