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2207●安倍首相狙撃、国葬論議

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2207●安倍首相狙撃、国葬論議
 参院選を2日後に控えた22年7月8日、安倍元首相が、遊説先の奈良市で銃撃され、搬送先病院で死亡した。
 犯人はその場で逮捕され、身元もすぐにあきらかになった。奈良県在住40歳の男性、元海上自衛隊員・山上徹也で、犯行の動機について「宗教団体への恨みから」と供述していた。新聞やテレビで、その宗教団体が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)であることが報じられたのは、参院選の後、事件から数日後のことであった。
 メディアは、犯人の母親が年来教団に累計で1億円以上にもなる献金を行い、そのために破産、犯人は大学進学を諦めざるをえなかったことなどを報じた。一方、安倍が教団の関連団体の集会でビデオメッセージを送っていたこと、参院選で当選した安倍側近の議員が教団の支援を受けていたことなど、教団と安倍ないし安倍派、自民党との関わりも報じられた。
 メディアによる精力的な調査の結果、自民党政治家と教団との関係は、想像以上に広範で深いものであることがわかってきた。中でも、安倍に近い政治家の教団との関わりが突出していることが明らかになった。1980年代後半に騒がれた教団の霊感商法による被害が今も続いていること、二世信者の自己疎外・社会不適応の問題なども報じられた。
 教団との関係を指摘された自民党議員たちは、「問題を知らなかった」「教団のために何かをしたことはない」などと弁解し、「以後関係を絶つ」とメディアの前に誓わされた。また、岸田政権は教団の問題に対処するために、改めて実態を調査することと、多額の寄付や霊感商法などを規制する立法へと、世論に押されて動かざるを得なくなった。

安倍国葬

 岸田首相は、事件から6日後の7月14日に、安倍の国葬を実施する考えを表明、閣議決定した。憲政史上最長の在任期間、内政・外交での実績などを理由にあげ、費用として総額16億6千万円の試算も明らかにした。しかし、法的根拠のあいまいさや費用の不透明さが指摘され、安倍の功績評価が歴史的に定まったものでないこと、「桜を見る会」問題や森友学園・加計学園問題などで表れた安倍の説明回避の姿勢、さらに安倍と旧統一教会の関わりも問題視され、報道各社の世論調査では、国葬への反対が賛成を上回った。
 1967年に閣議決定をもとに実施した吉田茂元首相の国葬については、当時の佐藤首相が決定前に野党にも根回しをしたが、それでも反対の声は強かった。佐藤が80年に死去したときは、三木首相が「三権の了承が必要」との内閣法制局の見解を受けて国葬を見送った。今回、岸田は、「内閣設置法」に、閣議決定で実施できると規定する「国の儀式」に該当すると説明した。しかしこの解釈には無理があるし、岸田の根回し不足で、理解は広がらなかった。
 9月27日、日本武道館で行われた「国葬儀」には、海外218の国・地域・国際機関からの要人を含む、4100人あまりの参列があった。会場近くに設けられた一般向けの献花台には2万人以上の市民が訪れた。一方、立憲民主党・共産党などの野党は国葬反対の立場をとり、議員らは参列を見送った。都内・全国各地で国葬反対の集会が行われ、武道館周辺でもデモ行進があり、騒然とした場面も見られ、国論の「分断」を印象付けるイベントとなった。

安倍暗殺の影響

 安倍首相暗殺事件の影響として予想されたことは、政治面では、党内最大派閥である安倍派が名実ともの首領である安倍を失い流動化する可能性、またその安倍派に消極的であれ支えられていた岸田現政権の基盤の弱体化を誘うのではないかということ。また、政界保守派の最大の実力者でありながら中道派とのバランスをとっていた安倍がいなくなることで、保守派を抑えることのできる実力者がいなくなることも考えられた。参院選での自民党の圧勝にはおそらく安倍の死への同情票が多少影響したと推測されるが、憲法改正はじめ安倍が推進した右傾化が加速する可能性が考えられた。反面、旧統一教会と自民党との協力関係が見直され、関係の深かった政治家の力が弱まるということも考えられた。
 社会意識的な面での影響も見逃せない。もっとも長く首相を務めた政界最大実力者の暗殺という形での突然の死。それも、政治的テロというよりは、個人的恨みに近いものを動機として影響力のある個人や集団を狙うというテロは、京都アニメーションや大阪のメンタルクリニックの放火事件など拡大自殺と呼ばれるような事件と共通するという指摘もあった。特に今回は、一個人が独力で自家製の武器を使って、警備に囲まれた政界最大の実力者の暗殺にまんまと成功したということで、犯人を英雄視し、模倣するような犯罪が今後続くことが懸念された。
2024/10/11記
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