からだのしんからあったまろうね!! 25KB
・俺設定多大にあり。
・展開がおかしいのは仕様です。
・出てくる人間もおかしいです。
・天然あきが書いた他作品と繋がりがあります。
天然あき
・ゆっくりを身体の芯からあっためてあげる話。身体なんて無いだろなんてツッコミは無しの方向でお願いします。
男は正直驚いた。
まさか一度でも驚きなのに一日に二度もゆっくりがやって来るとは思わなかった。
最初は登山用の道具を探すのが目的だった。
だが気が付いたらゆっくりの相手をしていた。
相変わらず無意味な集中力がここでも遺憾無く発揮されたようだ。
その為食事を作る時間もなくなり、外食する気も起きなかった男は風呂を沸かし、カップラーメンで済まそうとやかんにたっぷりと水を入れて火をかけて沸騰するのを待ち、その間も登山用具を探す際に取り出したものを戻す作業をしていた。
すると、玄関から騒がしい声が聞こえたのだ。
「ゆっふっふっふ!ここをまりさのおうちにするんだぜ!!」
「ここならゆっきりできないかぜもこないね!!」
「そうだぜ!ここならぞんぶんにあったまれるんだぜ!!」
「そうだね!からだのしんからあったまろうね!!」
男はそれに驚く。
ドアを開けたのがゆっくりであるという事実に。
確かに男の家のドアは男の年齢とあまり変わらないボロさだ。
だがそれでもゆっくりが開けられる程たやすい物でも無かった。
それが開けられたのだ。驚くのも無理はない。
そして男がいるのにも構わずそのゆっくりは家の中に侵入してきた。
そして男は気付いた。
サイズが普通のゆっくりも大きいのに。それこそバランスボールよりも大きい。
れいむとまりさのつがいだが二匹いるだけで玄関がギッチギチだ。
これだけならさぞ中身も詰まって重いのだろう。
二匹がかりなら開いても不思議ではない。
通常のゆっくりの範囲を越えている。
小さい子供なら大怪我を負わせられるレベルだ。
だが男はそんな二匹に笑みを浮かべ、
「こんにちは、何か用?」
と尋ねたのだった。
しかし、
「ゆ?なんでまりささまのおうちににんげんなんかがいるんだぜ?」
男に気付いたまりさは明らかにこちらを見下した態度を取る。
「きっとゆっくりしているれいむたちのどれいになりにきたんだよ!!」
とまずありえない推測を述べるれいむ。
この二匹は人間というものを知らなかった。
せいぜいふらんやれみりゃに毛が生えた程度のものとしか考えていなかった。
ありあまる巨体でふらんやれみりゃをご飯にしていたまりさとれいむからすればれみりゃとふらんは恐るるに足らず。
森で怖いもの知らずだった二匹は森の中だけでは飽きたらず、わざわざ人間の住む町に来て人間を奴隷にしようとした。
その手始めがこの男の家だった。
森に近い訳でもないのにまりさ達はわざわざゆっくり出来そうという理由で男の家を選択した。
それがとんでもない間違いだと気付かず、二匹は男と対峙してしまった。
それは人間達にとっては幸い。
男と二匹にとっては不幸だった。
「それにしてはずがたかいんだぜ!!まりささまがいちどみのほどってものをおしえてやるんだぜ!!!」
そうまりさは叫ぶと男に襲い掛かる。
バランスボールよりも大きく、小型の獣位なら難無く追い払え、れみりゃやふらんをむしろご飯にするようなまりさの体当たりを受ければ流石に成人男性でも危険だ。
子供なら最悪の場合死者が出たかもしれない。
だが、
「ぶぎゅう゛う゛う゛!!?」
男は反射的にそんなまりさに踵落しを叩きこんだ。
「あ…」
男にとっては予想外の事態。
まりさにとっては有り得ない出来事。
しかし潰れたまりさの帽子がそれを真実だと告げている。
「ゆ…ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
おそらく頭頂部への攻撃なんてものは生まれてこの方一度も受けた事なかったのだろう。
ぶざまに泣き叫ぶしか出来ない。
「だいじょうぶまりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
「ご、ごめんわざとじゃないんだ!!?」
男は慌ててまりさ達に謝罪する。
本能的に危険を感じて反応してしまった為、どうしてこんな事になったか男には理解できなかった。
「ゆ、ゆうぅ…いちゃいんだぜ…」
「だいじょうぶまりさ!?まっててね!いまゆっくりできないじじいをせいっさいするからね!!」
そう叫んでれいむは男に体当たりを仕掛ける。
だが、
「うわっと!?」
難無く男はそれを受け止める。
まるで苦にした様子もない。
「ゆ?ゆ?どうしてたおれないのお゛お゛お゛お゛!!?」
今までこの体当たりでどんな相手もイチコロだったのだろう。
自慢の一撃が難無く止められたショックは思いの外大きかったようだ。
まぁゆっくりにしては巨大なバランスボールサイズの体当たりを普通に受ければ大人でも危ないだろうがその自信は間違いではないだろう。
だが、
「危ないよ。俺ならまだいいけど子供にやったら怪我するよ」
男には何の意味もなかったようだ。
子供をあやすような笑みはまりさ達にとって蔑視の態度にしか感じられなかった。
「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
怒り狂ったれいむは男にまた体当たりをしてくる。
「だから危ないって、落ち着いてね」
そして全く効果がない。
「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「もう仕方ないなぁ…」
男は話を聞かないれいむに実力行使する事にした。
と、言ってもチョップしただけだが。
「ゆごぼお゛ぉッ!!?」
まぁ彼の場合それは人にやった場合意識を奪えるレベルのものであるが…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
と、いう訳で落ち着いた辺りでようやく会話が始められた。
「で、何の用なのかな?」
実を言うと結構危険な状態なのだが男はそんな事に気付きもせず話し掛ける。
「ここはまりさたちのおうちにするんだぜ!!
じゃまなじじいさっさとでていくんだぜ!!!」
踵落とし一発で撃沈したとは思えないふてぶてしさをまりさは発揮しながら宣言する。
「そうだよ!!れいむたちにせいっさいされたくなかったらさっさとでてってね!!」
返り討ちに遭う確率100%なのに自信満々なれいむ。
「それはちょっと無理だね」
笑顔のまま即答する男。
「悪いけどここを出ていくのは無理だよ…」
曲がりなりに男の両親から任された一軒家。そうそう簡単に捨てられる訳はなかった。
「ゆう゛う゛う゛う゛う゛!!!やっぱりにんげんはばかなんだぜ!!まりささまがじひをみせてやっているのもわからないんだぜ!!!」
「そうだね!こんなじじいさっさとせいっさいしておうちのなかでからだのしんまであったまろうね!!」
さっき両方とも一撃で行動不能に陥っておきながら二匹共男を完全に見下していた。
「ちょ、ちょっと待って!どうしてそんなにこの家が欲しいの?君達は見た感じ大きくて強そうなんだからわざわざ人間から奪わなくってもいいじゃないか」
あくまで穏便に済ませたい男はまりさ達に尋ねる。
「このおうちにはにんげんごときにはもったいないんだぜ!!!だからつよいつよいつよ~~~いまりささまがいただいてやるんだぜ!!!」
「ゆ!ここならあめさんもつめたいかぜさんもこないからみんなでぽ~かぽ~かできるよ!!!」
うん、返答になってねぇ。
だが男はその言葉に笑顔で返す。
「そっか…つまり寒くてゆっくり出来なくなったから人間の家であったまろうとしたんだね」
「そうだぜ!!だからまりささまにここをあけわたすかどれいになるかえらぶんだぜ!!!」
まりさは男の言葉を半分も聞いていないのだろう。
だが男にとってはその会話は大事な意味を持っていた。
「それじゃあこの家を渡す事は出来ないけど暖めてあげるよ」
男はまりさ達にそう告げた。
そうした後の男の行動は早かった。
まりさが反応するよりも早く男はまりさを抱えて運び出した。
「ゆ!?なにずるんだぜ!!?ぎだないででまりざざまにざわるんじゃないぜ!!!」
まりさは暴れる。
バランスボール以上のサイズが暴れればそれはそれで危険なのだが男は苦にもしない。
段々この人、人外の域になってきてる気がするが気のせいだろう。
それはさておき男は笑顔で抵抗するまりさをある場所へ運んだ。
「ここに入ればすぐにあったまれるよー♪」
それは風呂場である。
男は寒くて人間の家に避難して来たのだと判断したのだ。
自宅を明け渡したりは出来ないが数日位なら居てもいいと判断した男は暖まりだがっていると思われるまりさを風呂に入れてあげる事にした。
この家は風呂好きの男の両親が広めにつくっており、成人男性が寝転がれる広さの浴槽と洗い場がある。余程こだわったのだろう。
だから人間とバランスボールサイズ以上のゆっくりが入っても窮屈にはならなかった。
「まりざをはなぜごのぐぞじじいい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
れいむはれいむで男からまりさを助けようと体当たりを繰り返すが効果はない。
「ゆゆ、なんだがもわもわずるんだぜ!!?」
涌いた風呂の湯気に反応するまりさ。
「それじゃ、いくよ」
そしてそんなまりさを浴槽に投げ込む男。
「ゆごぼお゛お゛お゛お゛お゛!!?」
さてここで考えてほしい。
例えば君が寝袋に入ったような状態で自由に出来る行動がジャンプと顔の部分の操作と向きを変える位だとしよう。
そんな状態で風呂に投げ込まれたらどうなるだろうか?
「ごぼ!!?げぼ!?たずべ!!?」
答えはこうである。
まりさは身体が床についている状態で溺れている。
「ゆびい゛い゛い゛い゛い゛あぢゅい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
れいむはれいむでまりさを投げ込んだ際の跳ねた湯を浴びてのたうっていた。
「あれ?」
男は予想外といった反応をする。
流石にまりさがただ事ではないのに気付いたらしい。
「ちょっと熱かったかな?」
男はまりさをすくい上げる。
「ゆぴぃ…げひぃ…」
息も絶え絶えなまりさ。
何か足りない気もするがまりさはそれに気付く余裕もない。
どうして自分がこんな目に遭うのか全く理解出来ない。
「大丈夫かい?」
そんな中空気の読めない男の声がまりさの耳に入る。
「ゆっくり…でぎるわげない…んだぜ…」
まりさは息も絶え絶えになりながら答える。
「そっか…ゴメンね…」
男はまりさの言葉に素直に謝罪すると床に下ろした。
するとピイイイイという音が聞こえてきたのだ。
沸かしていたやかんが沸騰したのだ。
「おわあ!!?やっべ忘れてた!!!」
それを聞いた男は慌ててお湯を止めに走り出す。
まりさとれいむを置き去りにして…。
「ゆふぅ…ゆっぐりできなかったんだぜぇ…」
まりさが男が去った後でようやく落ち着く。
「ゆひぃ…ひどいめにあっだよ…」
れいむもどうやら持ち直したようだ。
「あのじじいはゆっくりしてないんだぜ!!かえってきたらせいっさいしてやるんだぜ!!!」
まりさはさっきやられた事の復讐に燃え上がっていた。
「………………」
だがれいむはまりさをじっと黙って見つめている。
「ゆ?どうしたんだぜれいむ?」
まりさがれいむのそんな様子に気付いて話し掛ける。
「ゆっくりじねええええええ!!!」
するといきなりれいむはまりさに向けて体当たりしてきた。
「ゆぴぃ!!?」
それをまともに受けてしまうまりさ。
「な、なにずるんだぜれいむ!!?」
まりさには訳がわからない事ばかりだった。
男にゆっくりできないお湯の中に落とされたと思えばつがいのれいむにいきなり攻撃されている。
訳がわからなかった…だが、
「ゆっくりできないゆっぐりはれいぶがぜいざいずるよ゛お゛お゛お゛お゛お゛
お゛!!!」
このままではれいむに殺される事だけは確かだった。
「ゆっくり「じねえ゛え゛!!!」ゆぶお゛お゛!!?」
まりさの反撃を想定していなかったのだろうか今度はれいむがまともにまりさの体当たりを受けてしまった。
「ゆぴぃ…いぢゃい゛…」
思わず痛みに弱音を吐いてしまうれいむ。
しかし本来ならそんな事している場合ではなかった。
「ゆっぐりじねえ゛え゛え゛!!!」
「ゆんべるばぁ!!?」
まりさの追撃を受けるれいむ。
どうやらまともにやり合えば勝つのはまりさのようだ。
「じねぇ!!じねぇ!!じねぇ!!」
「ゆぼう゛!?ゆべぶ!?ゆばぼ!?」
どうしてこんな事になったかまりさにはわからないが今れいむを殺さなければまりさが殺されるという事だけは確かなのだ。
このまま行けばれいむは死ぬだろう。
だが、
「ゆ?ゆゆゆ!!?」
まりさはふと視界の端に映ったあるものを発見した。
それは湯舟に浮かぶ自分の帽子だった。
溺れている最中に落としてしまっていたようだ。
ゆっくりは互いを帽子や飾りで認識する。
帽子がないゆっくりはゆっくりできないゆっくりとして殺されてしまう事が多い。
家族ですら帽子や飾りをなくすと襲い掛かる事がある。
れいむがまりさに襲い掛かったのはそれが理由だった。
「まりざのおぼうじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
故にまりさにとって帽子は大事な物。何よりも優先しなければならないのだ。
だから自分の帽子が自分から離れてしまったのを発見したまりさは急いでそれを取りに行った。
帽子が浮かぶ浴槽の中に…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふぅ…焦った焦った…」
火を消して男は一息つく。
するとテーブルの上に置いてある携帯がブーブー振動している。
「ん?誰からだ?」
男は携帯を手に取り誰からの着信か確認する。
「お、灰野からじゃん」
どうやら男の口ぶりから友人のようだ。
「よぅ久し振り。どうした突然電話して来て?」
友人との通話が始まった。それはつまりまりさたちのところへ戻るのに時間が掛かるという事でもあった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ゆごぼお゛お゛お゛!!?」
再び溺れるまりさ。れいむはボロボロ、男は長電話。誰も助けには来られない。
「ゆび!?だればだずべ!!?」
動揺も味方してまりさはどんどん溺れていく。
「ゆごぼぼぼぼ…」
そして遂に、まりさは湯舟の中に沈んでしまう。
呼吸が出来ずまりさは苦しみ出す。
本来ゆっくりに呼吸はあまり必要ではない。
だがエレベーター等の密室に閉じ込められた際に呼吸が出来なくなる錯覚が起こるようにまりさは苦しみ出す。
『たずげで!!だれがだずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!?』
まりさは必死に助けを求める。
わからなかった。この家に来てからまりさには何もわからなかった…。
どうして弱い筈の人間にまるで太刀打ち出来なかったのか?
どうして選ばれたゆっくりである自分がこんな苦しい目に遭わなければならないのか?
何でれいむに殺されそうになったのか?
何でまた苦しい目に遭うのか?
何もかも理解出来ない。
ただこのままでは自分が死ぬという事だけは確実にわかる。
『やだあ゛あ゛!!?じにだぶない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?』
まりさはもっともっとゆっくりする筈なんだ!!
人間を奴隷にして、世界を征服してずっとずっとゆっくりするんだ!!!とか本気で思っていた。
だがそれは絶対に叶わない。
様々な理由があるが一番の理由はもうすぐ死ぬからだ。
『やじゃ…じにぢゃくに゛ゃ…』
意識が霞んでくる。このままじゃ死ぬ。
それだけはまりさは嫌だった。
だが抵抗する手段はない。
『もっぢょ…ゆっぐり゛…』
まりさの最期の言葉はまりさ自身の夢想と同じように口から泡となって出ていき、泡沫のように消えて行ったのだった…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ゴメンゴメン、待たせたね」
男が通話を終わらせ風呂場へ戻っていく。
すると、
「いつも思うけど俺がいない間に何があったの…?」
男は目の前の惨状に茫然とする。
長電話と言っても所詮10分かそこらの時間の会話だったのだがその間にれいむは死にかけ、まりさは湯舟に沈んでいた。
「と!そんな暢気にしてる場合じゃない!!」
男は慌てて湯舟に沈むまりさを掬い出す。
だが時既に遅く…ではないのだがゆっくりはいい加減なのでこの時点で応急処置を施せば助かるかもしれないのだが男にゆっくりに関してそこまでの知識を期待するのはいささか無茶な注文だろう。
だから男はまりさが死んだと判断した。
事実まりさは放置され数分後には死ぬだろうからあまり違いはない。
「ゴメンな…気付くの遅くて…」
男はまりさに謝罪する。
後でしっかり埋葬しようと心に誓う。
そして、
「大丈夫か!!?」
続いてれいむの方に駆け寄った。
「ゆぎ…」
かなりボロボロであったがまだれいむは生きていた。
「えっとこういう場合どうすれば…そうだ!!」
男は慌てて風呂場から出てある本を持って来た。
それはかつて一匹のまりさを飼った時に購入した“豆ゆっくり飼育書”だった。
「これに確かゆっくりの応急処置の仕方があった筈だ…」
男は慌ててページをめくる。
すると、
「なになに…衰弱している場合はオレンジジュースもしくは砂糖水を与えると回復します…これだ!!」
男は急いで台所に向かっていった。
「砂糖砂糖…!!」
男は急いで砂糖水を作ってれいむの所へ戻っていく。
オレンジジュースが手元にないのは既に男は理解していた。
だから砂糖水を使用する事にした。
「ゆぎい゛…いぢゃい゛ぃ…」
呻き声を上げるれいむ。
そんなれいむに対し、
「大丈夫かい?今あまあまあげるから!」
そう告げる男。
「ゆ゛…あみ゛ゃあ゛みゃ…はやぎゅ…よきょちぇ…」
れいむは息も絶え絶えながらもあまあまの言葉に反応して男に催促する。
あまりにも不遜な物言いだが男は一切気にせず、
「それじゃいくよ」
やかんの中にある砂糖水ならぬ砂糖熱湯をれいむの口に注ぎ込んだ。
本来カップラーメンを食べる為にやかんにたっぷりと入った沸騰してそう時間は経過してない湯はれいむには大ダメージだ。
「ゆぎょぼごお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
あまあまをもらえると思っていたれいむが感じたのは猛烈な熱さだった。
「あぢゅい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
そう叫ぶとれいむはいきなり跳びはね出す。
「おお、元気になった」
れいむの反応を見て見当違いの結論を出す男。
「なにずるのごのぐぞじじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
そんな男を糾弾するかのように叫ぶれいむ。
「よかったよかった元気になったみたいだね」
だが男にはれいむの怒り狂った様子など気にもせず笑顔で喜ぶ。
それはれいむからはおちょくっているようにしか思えなかった。
怒りで顔を真っ赤にしてれいむは叫ぶ。
「ふざげるな゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぜいっざいじでやるう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」
れいむは叫び体当たりしてくる。
熱湯とはいえ砂糖を大量に溶かしたおかげか回復は出来たようだ。
衰弱した者に飲料を与える場合は冷水よりも暖めたものの方がいいと男はテレビで聞いたので熱湯に入れたのだ。
問題は男の予想よりも湯が熱く、れいむの耐性が低かったという点だったろう。
「じね!!じね!!じねええええええ!!!」
「そんなに焦らなくても大丈夫だからね」
男はれいむの体当たりをじゃれつきと勘違いしている。
というかバランスボールサイズの体当たりを苦にもしない辺り化け物じみてる。
「ほら、まだあまあまたくさんあるからね」
そう言って男は片手に持つやかんをれいむに見せる。
「ゆゆ!!?」
れいむはどうやらそれがさっきの熱さの原因だと気付いたようだ。
「い、いらないよ゛!!!べづのあまあまもっできでね!!!」
れいむはそれを拒否しようと叫ぶ。
しかしそれは無意味。
「遠慮しなくていいからね」の男の一言で終わってしまうから。
「大丈夫だよ。あまあま食べればもっと元気になれるよ」
男は笑顔のままやかんの熱湯をれいむに飲ませようとする。
れいむは何としてもそれを阻止ししなければならない。
「ゆっくりしないでれいむはにげるよ!!!」
れいむはそのまま逃げようとし、
「そんなに急いだら危ないよ」
「ゆひいいい!!?」
スタートするよりも早く止められた。
「どうしたんだい?そんなに焦って。ゆっくりはあまあま大好きだよね?」
「ゆ、ゆうううう!!!で、でいぶはいらないからさっさとそれどっかやっでねえええ゛え゛え゛え゛え゛!!?」
れいむは何とか回避しようと足掻く。
「だから遠慮はしなくていいって…」
男はれいむが拒否するのを遠慮としか思っていない。
「や、やばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?でいぶあづぐでいだいのやばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
「ん、もしかして何処か怪我してたのかい?」
「ゆ!?」
れいむの叫びに男は反応する。
痛い、れいむのその言葉に男はもしかしたら口を怪我したせいであまあま(熱湯in砂糖)を拒否しているのではないかと考えたのだ。
これをれいむはチャンスと考えた。
「ゆ!ぞうだよ!!れいぶのおぐぢのなががいだいいだいなんだよ!!!だがらぞれはやべでべづのあまあまにじでね!!!」
痛くて食べられない筈なのに何故かあまあまは要求するれいむ。
「そっか…なら仕方ないね…」
男もれいむの言葉に頷く。
れいむはここで自分の考えがうまくいったと思い込んだ。
だが、
「でも怪我してるみたいだし手当位はしないとね」
男はそう言ってやかんの熱湯をれいむにかけた。
オレンジジュースをゆっくりに掛けると回復すると飼育書に書いてあったので飲めない以上、そうしてやるのが得策だと考えたのだ。
予測していた反応の斜め上を行った男の行動の結果、れいむは熱湯を全身で浴びる羽目になる。
「ゆぽお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
熱湯を浴びて跳ね回るれいむ。
何度かまりさにぶつかってもいるがれいむ気付いていない。
「う~ん…」
男は跳ね回るれいむを見ながら不満げに呟く。
「やっぱりこれじゃ勿体ないな…」
男はこぼれ落ちた熱湯に対して少し勿体ない感を抱いていた。
「でも口は駄目みたいだし…」
何とかして全部味わってもらいたい男は飼育書に目を通してみる。
するとある事が書いてあった。
“もしもゆっくりが口から栄養を摂取出来ず、急を要する場合はあにゃるやまむまむ、もしくは死なない程度に皮を破いて直接栄養を補給させて下さい。”と書かれていた。
そこには“これは場合によってはゆっくりの身体に傷を付ける行為であり、一歩間違えば死んでしまう可能性があるのであくまで最後の手段として行ってください。衰弱し、抵抗も出来なくなった状態でない限りは行わないで下さい。”とも書かれているのだが男はどうやらその瞬間を今だと判断したようだ。
「そうだ!あれを使おう!」
男はあれを使えばもっと効率的にれいむに砂糖水、熱湯バージョンを吸収出来ると判断し、台所へ取りに向かっていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ゆう゛ぅ…あぢゅがっだよぅ…」
れいむはようやく落ち着きを取り戻したようだ。
風呂場に置いてあったシャンプー等が散乱していた。
「ゆう゛ぅ…まりざどごぉ…?」
れいむは自分のつがいを必死に探す。
すぐ近くで死んでいるのにも気付かない。
まりさがいないのと男にやられた攻撃によって鬱憤がどんどんれいむに蓄積されていく。
「ゆゆう!!じゃまだよ!!!」
目障りなゆっくりできないゆっくりの死体に体当たりして鬱憤を晴らす。
「このままじゃすまさないよ…」
怒りに燃えるれいむ。
喉元過ぎれば熱さ忘れる。
れいむには恐怖よりも男に対する復讐心の方が強かったようだ。
そんな時、
「よし、これで大丈夫だ!!」
男が再びやかんを片手に現れた。
もう片方の手には漏斗が握られていた。
「ゆゆう!!こんどこそれいぶがぜいっざいじであげるよ゛お゛お゛お゛お゛!!!」
先手必勝とばかりにれいむが体当たりする。
学習能力のない奴だ。
そんなれいむを男は両手が塞がっているにもかかわらず難無く受け止める。
「ゆゆ!?どうぢでえ゛ぇ!!?」
れいむは自分の渾身の体当たりが意味を為さなかった事に驚きを隠せない。
そんなれいむに対し男は笑顔のまま、
「ちょっとゴメンね」
漏斗をれいむの頭に突き刺した。
「ぶごお゛ぉ!!?」
漏斗の先がれいむの頭に減り込んでいく。
「ぐごぉ…ぴぎゅい゛!!?」
今まで受けた事もない痛みに白目を向いて口から泡を出すれいむ。
「これでいっかな。それじゃいくよ」
男はれいむの体内に漏斗を通じて熱湯を注ぎ込んでいく。
それはれいむにとって筆舌にしがたい激痛だった。
苦しみを与える熱が内側に染み渡っていく。
「ごぼえええええええ!!?
しぎゅ!!あぢゅぐぢぇじびゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」
しかしただ破壊されるだけならよかった。
問題はその熱湯には糖分が多く含まれていた。
それがれいむの体を熱さで破壊しながらもれいむを若干ながら回復させていたのだ。
それによって起こる結果は苦痛の延長。
ただ回復させられ、その分苦しむ時間が増えただけだ。
リットル単位の量の熱湯が注ぎ込まれる。
「ひょぎい゛い゛!!?ふぎい゛い゛!!?」
苦しみのたうち回ろうとするが男に空いた腕と足でがっちりと固定されて悲鳴しか上げられない。
その結果男にとっての体内に栄養を叩き込む条件として書かれてあった「衰弱して抵抗も出来ない状態」に該当したと思い、どんどん注ぎ込んでいく。
男にとってはれいむの死に物狂いの足掻きも抵抗の内にすら入らないのだ。
「ほぎょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
熱湯がれいむを蹂躙していく。
口から泡を吐きまくり、白目を向いてビクンビクン小刻みに痙攣し、しーしーをとめどなく流し続ける。
だがその様子は男の視点からは見えず、何の意味もない。
「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛…」
そして遂にれいむのゆん生も終了までカウントダウンに入ったようだ。
『ど…うじ…べ…』
れいむはまともにはたらかなくなった思考で最後の疑問を問う。
こんな事になるなんてれいむは夢にも思わなかった。
生まれてからずっと恵まれた体躯でまりさ以外に負けた事もなかった(この家で
飾りのないまりさにやられた事は忘れている)。
挫折を経験しなかったから自分達はずっとずっと王として上り詰めていく事と疑
いもなかった。
それが、このザマだ。
『や…やじゃ…じにだぶ…な…』
れいむは死ぬ。ゴミのように死ぬ。今まで殺してきたゆっくりのように…。
とても幸せそうでゆっくりしていたぱちゅりーとちぇんの一家を殺した。
親を弄んですっきり殺した後子ゆっくり達を食べた。
子まりさを家族として育てて撒き餌の役割として獲物であるゆっくりをおびき寄せて狩りをしていたふらんの一家も殺した。
親を殺せば助けてやると子供のふらん達に告げて殺させた後「おやをころしたゲスはしね!!」と言って殺した。
撒き餌の役割をしていた子まりさは帽子を破り捨て、ふらんの羽根を突き刺した後森の中に放り捨てた。
全部楽しんで殺した。
何故なら自分達は強いから。絶対にこんな目には遭わないから平気で残虐な真似が出来た。
あんな奴等とは違う。自分達はこんな死に方はしない。
何故なら強いから。
そう思い込んでいたれいむは自分がこんな風に死ぬなんてあっていい訳がないと信じていた。
だが事実はここで死ぬ。
弄ばれて死ぬ。今までれいむが殺してきたゆっくりと同じように…。
『やじゃ…あんなの…みだいに…じにたぐない……』
れいむは認めない。
ゴミのように殺してきた奴等と同じようにゴミのように死ぬなど…。
だが意識が遠のいていく。それが死ぬ事だとれいむは気付く。
『やじゃあ゛…やじゃやじゃやじゃやじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?』
駄々っ子のように死を否定するれいむ。
無意味でしかない行動。
どう足掻いてもれいむはゴミのように死んでいく。
『…や…じゃ……』
最期の最後の時、れいむの意識が闇に永遠に落ちる瞬間、自身がゴミと何等変わらなく死ぬ事実の絶望はどれ程のものなのかわからない。
だが、それはきっとれいむの分不相応に肥大したプライドが招いた自業自得なものであるのは確かだった。
そうしてれいむは絶望というゆっくり出来ない感情を存分に感じて息絶えたのだった…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「俺は何を間違えた?」
男は一時間かけてまりさとれいむを庭に埋葬した後考える。
花壇以外の場所をわざわざ掘って埋めた。
体積が大きい分埋めた場所がこんもりとしている。
その後男は考える。
どうして自分はあの二匹を殺してしまったのか?
一体何を間違えたのか?
前者の答えはゆっくりの扱い方への不理解と常人とは違う思考の仕方が原因であり、後者の答えに至っては“何もかも”なのだが、男がそれに気付く事はない。
「取りあえず…風呂涌かしなおすてから考えるか…」
まりさが溺れた事により湯の量が減った為にいっその事もう一回涌かす事にしな
がら男は自宅に戻っていく。
こうして、れいむとまりさは何も残す事なく、男の庭の一部をこんもりさせて消えていったのだった…。
END
あとがき
今回はゆっくりを暖めて上げる心温まるお話でした。
展開や何やらがおかしいのはもう気にしないで下さい。お願いします。
今回の作品は「あみゃあみゃもっちぇきょいくちょじじい!!」の続きで、時系列的には「ゆっくりをハサミで切るだけの話」や「必然の死」よりも以前の話です。時間的には天然お兄さん初登場の「きゃわいきゅっちぇぎょめんにぇ!!」は秋位で、そこから年末にかけての一、二ヶ月間となっています。
だから「あまあまおいてさっさとでていってね!!」の話で地中に埋められたぱちゅりーが「必然の死」で掘り返すまでは実質一、二週間程度しか経過してません。
それはさておきそれでは、今回このSSを読んで頂き誠にありがとうございました。
過去に作ったSS(今回のみ時系列順)
トップページに戻る
このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- この男、生かしておいたら絶対何かやらかすから精神病院にぶちこんどいたほうがいいよね。 -- 2018-01-13 12:05:06
- なぜか知らんがこれを読んでる間、「男=ぷよぷよのレムレス(好青年・洋菓子職人・魔法使いの実力者)」が頭にこびりついて離れなかった俺がいる
なぜだろう、ゲームのやり過ぎかな?
-- 2015-01-22 07:48:50
- 天然お兄さんが予想不可能な行動
をしてとても面白いです
これは
つづきがよめなくてごめんねー!!!
と言うべきです -- 2012-12-09 19:05:55
- 「何もかも」間違っていてワロタw -- 2012-04-28 21:52:58
- 天は二物を与えなかったか… -- 2012-02-13 00:53:16
- 脳筋お兄さんwww -- 2011-11-03 16:52:12
- お兄さんの脳みそは筋肉でできていた… -- 2011-02-27 23:12:44
- お兄さんの頭が残念なのは今に始まったことじゃないだろww -- 2010-12-17 08:44:58
- って言うか言葉で拒否してる上にあからさまに嫌って態度してるのに本気でわからないとはこのお兄さん頭が残念なんじゃね -- 2010-12-07 03:07:26
- 駄目だこのお兄さん・・・もう手遅れだwww -- 2010-11-30 07:29:31
- お前の熱湯では私は死なん!! -- 2010-09-29 16:14:31
- なんというハイスペックお兄さんw -- 2010-07-24 01:28:30
- 帽子が脱げたからじゃね?面白かった -- 2010-07-11 17:36:56
- なんでれいむはまりさを殺そうとしたの? -- 2010-06-21 03:50:02
- すばらしい。 -- 2010-06-17 09:56:08
最終更新:2010年05月25日 18:12