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暗殺者と蛇のダンス

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暗殺者と蛇のダンス ◆aa/58LO8JE



鞭は戦闘に向かない道具だ。
例えば、物語に出てくる数多の鞭使いは、それを手足のように扱っている。
だが、弾力性に富む先端部分をしならせ、動き回る目標を打ち据えるというその行為は、
一見単純そうに見えるが、実際にはコントロールすら覚束なく扱い難い。
更にそれで生まれる音や見た目の派手さとは裏腹に、対象に深刻な傷を残すわけでもない。
当然だ。
本来、鞭とは調教や拷問、刑罰に用いられてきた物である。
相手に致命的ではない、しかし記憶に刻み込まれるような苦痛を与える事。
それが鞭の真髄なのである。
もう一度言おう。
鞭は戦闘には向かない道具だ。
――それこそ、物語に出てくる数多の鞭使いのように、それを手足のように扱う事が出来ない限り。



                 ◇◇◆◇◇




朝日の差し込みつつある森林内に銃声が響く。
木の影に身を隠しながら、玲二は焦りに顔を歪めていた。
(いったい何なんだ、あの女は……)
淡い色で統一されたブレザーの制服に身を包む少女に銃撃を与える。
しかし、見たところ普通の女子高生にしか見えない彼女は、
先ほど狙撃した時と同じく、胸部を目掛けて飛来する弾丸を反則的な体裁きで回避。
たて続けに頭部目掛けて放たれた弾丸は、少女が右手を振るう事で無効化される。
……信じられない事に、高速で飛来する弾丸を手にした鞭で叩き落したらしい。
「化け物が……」
「ずいぶんな言い草どすな」
言いながら少女は手にした鞭を振るう。
鞭は周囲の木を穿ち、割り、叩き折りながら玲二へと迫った。
玲二は横に走りながら回避するが、それを追うように鞭はその身をくねらせる。
上下左右、あらゆる角度から玲二を襲いかかる鞭。
それはまるで蛇のごとき動きだった。
深夜に出会った暗殺者の拳も蛇のようだった。
だが、彼の拳を獲物を牙で仕留める毒蛇とするならば、
彼女の鞭はその巨体で相手を絞め殺す大蛇――それも無数の頭を持つヒュドラだ。
玲二はその身を打ち据えようと連続で襲い来る鞭を、斜面を駆け登りながら避ける。
そして、そのまま4連射。
脚部、腹部、胸部、そして頭部を狙い飛翔した弾丸は、
鞭によって進路を遮断され、曲げられ、叩き落され、そして弾き飛ばされた。



強い。
それが玲二が目の前の少女に抱いた偽らざる感情である。
樹木の間を蛇行しながら、弾倉に弾を込める。
これ以上戦っても、ただ消耗するだけだろう。
こちらの目的がキャルの保護である以上、ここはこのまま撤退したい所だが……
「残念やけど、逃がしまへんえ」
声と同時に空気を切る音。
足を、腕を、頭を狙い襲いかかる鞭を、玲二は体をずらす事で回避する。
どうやら、向こうにはこちらを逃がすつもりはないらしい。
(やるしかないか)
だが、相手は銃弾を捌くほどの鞭の達人である。
どうにか銃弾を撃ち込む隙を……そうでなくとも、せめて弾を込める隙を作らなければ。
次々と繰り出される苛烈な攻撃を、軸をずらし、樹を盾にして回避しながら、玲二は考える。そして……



                 ◇◇◆◇◇




強い。
それが藤乃静留が目前の男に抱いた偽らざる感情だった。
足場の悪さを物ともせず、急所を狙って的確な射撃をしてくるその男は明らかに銃の……殺しのプロフェッショナル。
今は優位に立っているが、これ以上長引くと経験と地力の差で負ける可能性が出てくるだろう。
(せやけど、ここで退く訳にはいきませんのや)
殺し合いに乗ったこの男を放置すると、なつきにまで危害が及ぶ恐れもある。
ここで確実に殺しておきたい。

と……不意に木々が途切れ、視界がクリアになる。
戦いながら移動しているうちに、元々居た採石場に戻ってきたのだ。
同時に、今まで防戦一方だった男がこちらへと突進してくる。
(仕掛けてきよりましたか)
右手の銃から放たれた3連射を鞭でいなしながら回避。
そのまま鞭をしならせ、男の右手をしたたかに打ち据えた。
顔を苦痛に歪ませながら、銃を取り落とす男。
おそらく、骨にヒビくらいは入っただろう。
(思ったより、あっけなかったどすな)
そんな事を考えながら、更に男を打ち据えようとして……静留は鞭が動かなくなっている事に気がついた。
静留の腕の先――ちょうど鞭の先端の部分を、男が右腕を使い押さえ込んでいたのだ。
そして、男の左手では矢の装填されたボウガンがこちらを狙っている。
まさに肉を切らせてといった様相だが、鞭以外に攻撃手段を持っていない静留には有効な一手。
「なるほど、考えはりましたな……せやけど」
しかし……それは、あくまでも普通の鞭を持った相手の話だ。
小さな呟きと共に、静留の持つ鞭――殉逢が掻き消える。
男の表情が驚愕に変わると同時、再び現れた殉逢が男の頭部をしたたかに打ち据えた。



                 ◇◇◆◇◇




頭部に走った衝撃に、玲二は呻き声をあげて崩れ落ちた。
腕から、脚から力が抜けるのを感じる。
赤く染まる世界を眺めながら、玲二は思う。
(俺は……死ぬのか……?)
これで終わるのか?
昏くなる脳裏に、金髪の少女の姿が浮かんだ。


(終われるか……終わってたまるか!)


うっすらと開いた玲二の眼に、鞭を持った少女が近づいてくるのが映る。
どうやら、こちらに止めをさすつもりらしい。
(何か……何か、方法はないのか?)
状況を覆す一手を探しながら、少女の隙を伺っている時だった。
何処からともなく、美しい音色が聞こえてきた。
(歌? 誰かが歌っているのか? ……こんな所で?)
少女もそれに気を取られたらしく、音の聞こえる方角をちらりと一瞥する。
(……今だ!)
自身の体から少女の視線が反れるのを確認するや否や、玲二は手元にあったものを握り締める。
そして起き上がりざまに、その物体――ボウガンの矢を少女の脚へと突き刺した。
声にならない呻きを上げる少女をよそに、玲二はボウガンを拾い上げながら森の中へと駆け込む。
(ぐっ……頭が重い)
痛みをこらえながら、玲二は走る。
昇りつつある日の光は、森林内にまでは届いていなかった。




【C-3 森林内/1日目 早朝】

吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コンポジットボウ(13/20)、コルト・ローマンの予備弾(21/36)
【所持品】:支給品一式×2。コンバットナイフ、レザーソー@School Days L×H
【状態】:疲労(大)、右手に小さな蚯蚓腫れ、右腕の骨にヒビ、頭部から出血
【思考・行動】
0:女からできるだけ遠くに離れる
1:キャルを見つけ出して保護する
2:アインはなるべく敵にしない
3:他の参加者から武器を奪う、可能ならば殺すが無理はしない



※身体に微妙な違和感を感じています。
※アインが生きていることに疑問。
※時間軸はキャルBADENDです。
真アサシン(外見のみ)を強く警戒しています。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※静留を警戒しています





                 ◇◇◆◇◇




「あきまへんな……」
男に刺された太股を押さえながら、静留は小さく呟いた。
血が止まらない。
支給された下着を何枚か使って止血を試みているものの、血が滲むように流れ続けている。
突き刺された矢は、おそらく太い血管を傷つけてしまったのだろう。
付近に治療できそうな設備があるわけでもない。
だが、このままじっとしていても死を待つだけだろう。
静留はこの付近で唯一、確実に参加者が居ると思われる方角に目をやる。
それは、先ほど何者かの歌声が流れてきた方向。
もしかすると、あそこに居る参加者達は、何らかの治療道具を持っているかもしれない。
もしかすると、病院まで高速で移動できるような手段を持っているかもしれない。
……もしかすると、なつきもそこに居るかもしれない。

「結局は理想論どすな……」

落ちていた拳銃を拾い上げながら、静留はその方角へと歩き始める。
少しでも可能性がある限り、彼女はあきらめるつもりはなかった…………








「せやけど……もし、このまま助かる見込みがないようやったら……」
そのときは、考えるべきかもしれない。
自分がなつきの為に何ができるのか、という事を。
(ほんの少しでも間引いておいた方が、なつきの生きる確立が上がるかもしれませんしな)
人数がある程度減るまでは、殺し合いに乗る事は考えていなかった。
だが、生命に期限があるのならば、その時間をどのような形であれ、なつきの為に使うのが一番いいだろう。
不穏な考えを胸に少女は行く。
昇りつつある日の光は、森林内にまでは届いていなかった。




【C-4 採石場付近の森/1日目 早朝】

【藤乃静留@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、。コルト・ローマン(3/6)】
【所持品:支給品一式、虎竹刀@Fate/stay night[Realta Nua]、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME 運命の系統樹】
【状態】疲労(中)、左手首に銃創(応急処置済み)、左の太股から出血(布で押さえていますが、血は出続けています)
【思考・行動】
 基本:なつきを探す
 0:歌声が聞こえた方向へ行く
 1:太股の傷を治療する為の道具を探す
 2:なつきに関する情報を集める
 3:とりあえずゲームには乗らないが、このまま死ぬようなら……



【備考】
 ※下着コレクションは使用可能です。
 ※理樹を女だと勘違いしてます。
 ※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします



070:リセエンヌ(後編) 投下順に読む 072:望郷
070:リセエンヌ(後編) 時系列順に読む 072:望郷
048:クモノイト 吾妻玲二(ツヴァイ) 085:無題(前編)
048:クモノイト 藤乃静留 092:doll(前編)

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