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素晴らしく冴えたやり方

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素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU


 神宮司奏は一人、無音の畳部屋で正座をしていた。
 姿勢正しく、瞑想するように目を閉じ、述懐する。

 ――『奏さん、貴方はどうします? 貴方自身で決めてください』

 トーニャの残していった言葉が、脳裏で靄のように蟠っている。
 課せられた質問は、シンプルにして難題。究極の二択が、奏に選択を強いる。
 記憶を失った少女、ファルシータ・フォーセットを信じるか、信じざるか。
 あらかじめ解を与えられた問題は、時として、必要以上に解答への時間を要する場合がある。

(……困ったことになったわね)

 静穏と一体化した奏の身は、一切の音を漏らさない。
 寺という領域が満たす、和の空気に溶け込むように、奏はただ静かに考えた。

 ファルシータ・フォーセットは、記憶喪失だ。しかし、彼女の記憶喪失には疑惑がある。
 井ノ原真人は、ファルを信用している。疑心を抱いた上での判断かどうかは、奏にはわからない。
 トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナは、ファルを信用しない。孤立してでも、切り捨てる覚悟でいる。

 奏がどちらを選択したとしても、真人とトーニャの分断は免れない。
 両方の意を汲むことは適わず、ファルへの疑心を晴らすことはできず、人間関係を修復するには圧倒的に時間が足りなかった。
 八方塞の精神的窮地に立たされた少女は、困りはするものの慌てるまでには至らない。
 生まれ故のお淑やかさと度胸、天然という枠組みにカテゴライズされる性格は、冷静な思慮を運ぶ。

 浅間サクヤが死に、改めて殺し合いという現実を知った今。
 神宮司奏は、再び岐路に立たされる。

(りのは……無事なのかしら?)

 忌避しがたい現実を受け入れ、まず心配になったのは、自分の身ではない。
 下級生にして、妹のような存在。蘭堂りのの安否についてだった。

 蘭堂りの。奏が会長を務める、『極上生徒会』執行部書記の座に就く少女。
 性格は天真爛漫で少しドジ。常にパペット人形のプッチャンと行動を共にしている一風変わった女の子だ。
 運動神経は一般中学生の平均程度であり、また大きなトラブルやアクシデントに対する免疫も皆無。
 殺し合いなどという非現実的な窮地に直面しては、たちどころに殺されてしまうだろう。

 だが、どう転ぶかわからないのが現実というものだ。
 スペックで言えば即退場でもおかしくないりのの身柄は、現状、死亡という最悪の状態にだけは陥っていない。
 誰かに保護されているのか、辺境の地で隠れ通しているのか、会場内をひたすら逃げ回っているのか。
 考えれば考えるほど、奏の胸は不安で押し潰されそうになった。

 奏がここまでりのを気にかけているのには、もちろん理由がある。
 宮神学園理事長としての義務感、極上生徒会会長としての責任感、そういったものよりもずっと重い、約束。
 りのの母、蘭堂ちえりとの――りのを守るという――約束が。

(私に、できること――)

 りのを守る、という絶対的使命を踏まえ、奏が次に考えたことは、自分に与えられた可能性だった。
 銃器を構えて戦争など、奏のカラーではない。
 殺し合いという行為において言えば、彼女は殺される側の役しか担えずに終わるだろう。
 故に奏は生徒会長として、組織の上に立つ者として、ゲームの背景を読む側に就こうとした。

 しかし、それすらも中途半端だ。企画運営者たちの懐を探るには、圧倒的に情報が不足している。
 唯一と言える手がかり、藤乃静留の所在は未だ掴めず、コミュニティを築こうにも、早速仲違いが生まれる始末。
 奏は、ほぅ、と溜め息をつき、目を開く。

 一人間としての限界は、やはり凡人の域を出ない。それが神宮司奏の宿命。
 となれば、当然考えざるを得ないのは……彼女自身が忌み嫌う異能、『神宮司の力』について。

 神宮司の力と呼ばれる能力は、神宮司の一族が生まれ持って得た、枷のようなものである。
 強力な力を持った者は、神宮司家当主としての数奇な運命を背負わされることになり、自由を束縛される。
 りのの母、蘭堂ちえりも、かつては神宮司一の使い手と言われた能力者だった。

 彼女は神宮司家の宿命から逃れ、蘭堂の人間として娘と平和に暮らしていたが、約一年前に病気で死去している。
 無機物に特定の人間の意識と記憶を吹き込む力……りのが所持しているプッチャンも、ちえりが生前に力を行使して作り出した、忘れ形見だった。
 りのが一人きりにならないようにと、神宮司の宿命とは無縁の世を生きて欲しいと、願いを込めて。

 奏が持つ神宮司の力は、ちえりほど優れたものではない。
 彼女の力は、言葉を必要とせずに、相手の心に己の意を達意する力……言ってしまえば、一方的なテレパスだ。
 この力は、強制力を伴う。能力者の言霊を受けた者は、その言霊の示すとおりに行動せざるを得なくなる……という、洗脳にも似た力だった。
 ただし、そこに絶対遵守という概念はなく、力の保有者によって強制力の強弱がある。
 奏の言霊が持つ強制力は、現在の神宮司一とされているが……奏本人は、そうは思っていない。

 頭に浮かぶのは、やはりりのの存在。
 まだはっきりと力に目覚めてはいないものの、りのはちえりの実の娘にして、彼女が意図して神宮司から遠ざけた逸材だ。
 りのが覚醒し、神宮司の力を自由自在に操れるようになれば――例え制限下といえど――殺し合いの一斉停止など、おそらくは容易。
 未成熟ながら、奏以上の能力者として、りのはこのゲームの切り札にも成り得る存在だった。

(でも)

 奏本人の心は、奏に娘を託したちえりの本意は、りのの覚醒を望まない。
 いかに今が緊急時とはいえ、一度力に目覚めてしまえば最後、神宮司の宿命からは逃れることができなくなる。
 りのを神宮司家の者としてではなく、あくまでも蘭堂りのとして、平和な日常へ送り返す。
 それが、神宮司奏と蘭堂ちえりの総意だった。

「……本当に、困ったことになったわね。どうしたらいいのかしら」

 心中にではなく、声に出して吐露する。
 りのの想う気持ち、己の殺し合いに対する姿勢、再認識しても、やはりぶれはない。
 今さら自分の立ち位置や神宮司の力について考えてみたところで、名案が開けるわけでもなく。
 ファルをどうするか、真人をどうするか、トーニャにどう答えるか、という難題への解決には至らなかった。

 ――『極上生徒会総員に告げる! いま会長は困っている! それがどういうことかわかるな!』
 ――『極上生徒会規約第一条第七項。生徒会長の職務を妨げる者は、いかなる手段を持っても対応する』
 ――『故に、対応する!』

 ここが宮神学園であったならば、奏が困った顔を浮かべるだけで、二人の副会長が一斉招集をかけただろう。
 教職者よりも優れた地位に立つ、極大権限保有最上級生徒会――通称、極上生徒会。
 その生徒会長たる肩書きは、このゲームにおいて言えばなんの役にも立たない。
 宮神学園理事長、ひいては神宮司家当主としての極大権限は、暴力の世界では適用されない。
 天然気質の会長を支える優秀な面々も、今はいない。奏は完全に、武装を剥がされた状態にあった。

 改めて認識する。
 極上生徒会会長ならばともかく、ただの少女たる神宮司奏にできることは、少ない。

(けれど)

 非力を痛感して、しかしだからこそなんとかしたい、という欲求は、強くなる一方だった。
 もう、神宮司の宿命に振り回されるだけのお飾りではいたくないから。

 ――『聞かせて。奏はなにがしたい?』

 初めてできた親友は、奏に道を示してくれた。
 なにかを背負ったままでも、なにかを成すことはできる。
 大切なのは意志なんだと、友達に教えてもらった。
 だからこそ今、奏はかつて目指した理想郷を思い出す。

(――宮神学園)

 奏は道を見つけるまで、学校に行ったことがなかった。
 友達と知る喜び、友達と分かち合う楽しさ、全て学び足りなかった。
 そんな想いから創立したのが、彼女が理事長を務める宮神学園である。

(極上生徒会)

 私立宮神学園極大権限保有最上級生徒会。名づけて極上生徒会。
 学園の平和を守るため、自ら立ち上げた生徒会には、多くの同志が集まってくれた。
 奏の意に共感を覚える友達、奏を慕う後輩、神宮司の宿命を知る者も数名。

(シンディさん、みなもちゃん、管理人さん)

 車両部に属し、奏をボスと慕ってくれた、やや引きこもりがちなハーフのシンディ・真鍋。
 重い病気を抱えながら、常に生徒会のムードを高めてくれた自称特別名誉顧問の桂みなも。
 極上寮の管理人として、小学生ながらみんなの衣食住を一手に担ってくれた久川まあち。

(角元さん、飛田さん、和泉さん)

 遊撃部の右翼として、学園のトラブルを率先して処理してくれた角元れいん。
 遊撃部の左翼として、学園のトラブルを率先して処理してくれた飛田小百合。
 幼い弟妹たちを養いながら、忠誠的に学園のためを思って行動してくれた和泉香。

(聖奈、桜梅さん、琴葉)

 神宮司家の事情を知る者として、常に奏の心情を気にかけてくれた桂聖奈。
 忍者の末裔として、その能力を奏のために献身的に捧げてくれた隠密部の桜梅歩。
 神宮司家のお庭番として、奏ですら把握しきれない裏の仕事をこなしてきてくれた矩継琴葉。

(まゆらさん、久遠さん、奈々穂)

 毎度の如く予算難に苦しむ生徒会の財政を、たった一人で帳尻合わせしてくれた市川まゆら。
 おっとりした奏をフォローするように、常に冷静な視線で事態を見つめてくれていた銀河久遠。
 奏にきっかけを与えてくれた、掛け替えのない親友であり、幼なじみでもある金城奈々穂。

(りの、プッチャン)

 心の底から愛してやまない、蘭堂りの。
 ちえりが残したパペット人形の、プッチャン。

(私のしたいこと。私がやらなければならないこと)

 回顧しても、やはり変わらない。
 奏は、りのと一緒に帰りたかった。
 みんなが帰りを待つ、宮神学園へ。
 大切な仲間たちがいる、極上生徒会へ。

 そのためにはやはり、ただの非力な少女ではいられない。
 極大権限保有者として、極上生徒会会長神宮司奏として。
 この殺し合い――いや、ゲームに、臨む。

「……よし」

 奏は力強く頷き、座禅を解く。
 立ち上がり、畳部屋から退室しようとしたところで、タイミングよく障子が開かれた。

「……答えは出ましたか?」

 銀髪の小柄な体が、障子の先から奏を見据えている。
 彼女もまた、寺の周囲を散策する間に決心を固めたのだろう。

「私の意志は変わりません。全てはあなたしだいです。奏さん、どうか返答を」

 答えは既に、胸の中に。
 支えられるだけが能ではない、優秀な生徒会長として。
 奏は一歩踏み出し、神妙な顔を浮かべるトーニャに開口する。

「私は、彼女を切り捨てません」

 ストレートな主張に、聞き手であるトーニャの顔が強張る。

「そこで」

 トーニャが完全なる落胆に陥るよりも先に、奏は言葉を続けた。

「トーニャさん……あなたには、〝隠密〟になっていただきたいのです」


 ◇ ◇ ◇


「――で、それがおめぇの出した結論だってのかよ」

 仄かなラザニアの残り香と、食事の跡が広がる卓を間に、三者と一者が向かい合っていた。
 三者のほうは、左から順に、ファル、真人、奏が並んで座っている。
 三者の視線を仰ぐのが、陰険な敵愾心を必要以上に放つ、トーニャだった。

「ええ。なんならそのファッキン脳筋にもわかるよう、二、三度復唱してやりましょうか?
 あなたや奏さんがどう言おうが、私は彼女を信用することができません。
 行動を共にするなんてもってのほか、どんな理由を述べられようと、考えは変わりません。
 こんな怪しいヤツと一緒になんかいられるか、私は部屋に戻らせてもらう。といった心境です」

 厳格な声を崩さないトーニャ。迸る眼光は、チンピラのようにファルを見据えている。
 ファルが困惑の表情でいることも構わず牽制を続ける、その様に真人はいい顔をせず、舌打ちを打った。

「だから、一人で出てくってか? 刑事ドラマだったら真っ先に殺されるぞ、おまえ」
「ご心配なく。私はリアルを生きてますから。この中で最も生存率が高いのも、私でしょうし」

 真人の皮肉めいた忠告を、さらっと受け流すトーニャ。
 戦闘力的な面で言えば、人妖である彼女は、屈強な筋肉を有する真人よりもずっと強い。
 敵と相対したとしても対処は容易である上に、守るものもないから、行動範囲はぐんと広くなる。

「ただし、井ノ原さんはともかくとして、奏さんの安否は気がかりです。
 なので名無しさん。あなたに一つ、条件を課します。
 それがのめないというのであれば、私は今この場で、あなたを本当の意味で切り捨てます」

 敵愾心が、質量を伴った殺気へと変わる。
 突き刺さる空気を肌で感じ取ったファルは、ビクッと震え、僅かに真人のほうへ縋った。
 向けられる殺気を跳ね除けるように、真人が言葉によって掣肘を加える。

「この子が持ってる首輪をよこせ、ってんだろ? むやみやたらに脅かすんじゃねぇよ」

 食べ残しのこびりついた皿が転々とする卓の上、真人は無造作に一個の輪を掴み取り、トーニャに放る。
 それこそが、疑惑の種にして脱出への重要な足掛かり。ファルが所持していた、首輪のサンプルだった。

「いいよな?」
「え、ええ。それで信用してもらえるんなら……」
「ハッ、勘違いも甚だしい。こんなもので信頼が買えるとでも?
 しつこく言わせてもらいますが、あなたは得体が知れない。
 仮に記憶喪失が真実だったとしても、元々ろくな人間ではなかったのでしょう」

 トーニャのあからさまな挑発に、怒気を唱える者はいない。
 真人は顔を顰めるだけに留め、ファルはひたすらに困惑、奏は辛辣な表情で推移を見守る。

「……言いたいことは、それだけかよ?」

 茶目っ気を殺した、真人の重々しい声が響く。
 トーニャは厳格な態度を変えず、しかし真っ向からの言い争いは望まず、失笑を零した。

「失礼。お喋りが過ぎましたね。私ともあろうものが、無駄に時間を浪費してしまったようです」

 やれやれ、と小声を漏らしながら立ち上がり、執着のない仕草で障子に向かう。
 もうこんなわからず屋たちと話すことはなにもない、とでも言いたげな背中が、三者の注目を浴びる。

「一つだけ、聞かせろ」

 トーニャが障子に手をかける寸前、真人が制止の声をかけた。
 互いに視線は合わせず、言葉だけでの、最後の掛け合いを興じる。

「おまえ、もしまたこのみに会ったら――やっぱり助けねぇのか?」
「助けません。無視です」

 ファル、そして又聞きしたレベルの奏には、おおよそどんな意味があるのかわからない問答。
 トーニャの無慈悲な即答に、真人は少しだけ目を伏せた。

「では、ごきげんようみなさん。縁があればまた会いましょう。
 そのときは、互いに敵ではないことを祈っていますよ――」

 振り向かぬまま、別れの言葉にしては忌々しい言を残し、トーニャは出て行った。
 あっさりと、一切の後悔などなく。


 ◇ ◇ ◇


 トーニャが出て行ってから数分後。
 寺の門前では、身支度を済ませた奏たちの姿があった。

「よっしゃあ! そんじゃま、気を取り直して出発といくかぁ!」
「てけり・り……」
「あん? ボス狸がいなくなって寂しいだぁ? フッ……なに言ってんだダンセイニ。おめぇには立派な筋肉がついてんじゃねぇか」

 藤林杏の死、トーニャとの離別と、人並みの感情を持つダンセイニにとっては、辛い出来事の連続だったことだろう。
 どことなくしょげた雰囲気を纏う軟体スライムに、真人は腰を振って励ましの言葉をかける。

「でも、本当によかったのかしら。なんだか私が追い出してしまったようで……」
「そう自分を追いつめないで。トーニャさんも、決してあなたのことが嫌いなわけではないから」
「……そうは、思えなかったけれど」

 疑惑の種であり、一連の騒動の中心にあったファル本人は、表面上は責任を感じているように見える。
 はたしてそれが真意か偽りか、見極めることは誰にもできない。
 少なくとも奏自身の意志は、ファルという人間を受け入れている。

(トーニャさんの言うことはもっともだけれど……それでもやっぱり、私には彼女を疑うことができない)

 そもそも神宮司奏という人間は、他者を疑ったり騙したりといった風潮が好きではない。
 立場上、腹の探り合いなど不可避ではあるものの、好んで疑心を向けることなど絶対になかった。
 誰もが誰もを信頼し、互いに手を取り合うことができたなら、どんなに幸福な世が訪れるか。
 奏は真剣に理想を見据え、そして目指す。ファルとトーニャも、いつかきっと打ち解ける、と。

(だから……絶対にまた会いましょう、トーニャさん。みんなで、故郷に帰るために)

 広大な青空を仰ぎつつ、奏は自身が目指す理想に想いを募らせた。
 宮神学園で味わえた、あの極上な日々をもう一度――。
 りのはもちろん、トーニャや真人、そしてファルにも。

「ところで……真人さん、でいいかしら? ここからどこに向かうのかしら?」
「ああ、それだけどよ。実はちょっとばかし気になる場所があってな……三人とも付き合ってくれねぇか?」

 いつになく真剣な表情をした真人が、ダンセイニ、ファル、奏へと、視線を巡らせる。
 含みがあるような顔つきは、彼の素の表情か否か。付き合いの浅い二人と一体には判然としない。

「構いませんけど……気になる場所、というのは?」

 奏の質問の後、しばしの間を置き、真人は告げた。

「教会だ」



【C-5 寺の入り口付近/一日目/午後】

【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、レトルト食品×6、予備の水
      SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと-幻妖異聞録-、不明支給品×1(確認済み)
【状態】:健康。爪にひび割れ
【思考・行動】
基本方針:極上生徒会会長として、ゲームに対抗する。
 0:教会に行く?
 1:蘭堂りのを探す。
 2:できれば、九郎たちと合流したい。
 3:藤野静留を探す。
 4:大十字九郎に恩を返す。
 5:いつかまた、トーニャと再会する。
【備考】
 ※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
 ※浅間サクヤ・大十字九郎と情報を交換しました。
 ※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
 ※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰かがいるのではと考えています。
 ※禁止エリアには何か隠されてるかもと考えてます。
 ※トーニャ・真人と情報交換しました。


【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備】:僧衣、木魚、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】
【所持品】:餡かけ炒飯(レトルトパック)×3、制服(破れかけ)
【状態】:、胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲、胸に締め上げた痕、全身にぬめり
【思考・行動】
 基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
 1:教会に向かう。
 2:理樹たちリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。
 3:主催への反抗のために仲間を集める。
 4:ティトゥス、クリス、ドライを警戒。
 5:柚原このみが救いを求めたなら、必ず助ける。
 6:今は無理でも、いつかトーニャと分かり合いたい。
【備考】
 ※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
 ※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。
 ※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
 ※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。
 ※杏、ドクターウェストと情報交換をしました。
 ※奏と情報交換をしました。
 ※大十字九郎は好敵手になりえる筋肉の持ち主だと勝手に思い込んでいます。


【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
杏の死とトーニャの離散で、ショックを受けているようです。


【ファルシータ・フォーセット@シンフォニック=レイン】
【装備】:包丁(少々刃毀れしています、返り血は拭き取ってあります)、デッキブラシ、イリヤの服とコート@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:リュックサック、救急箱、その他色々な日用品、
      ピオーヴァ音楽学院の制服(スカートが裂けている)@シンフォニック=レイン
【状態:重度の記憶喪失(僅かだが記憶が戻り始めている)、頭に包帯、体力疲労(中)、精神的疲労(中)、後頭部出血(処置済み)、空腹】
【思考・行動】
 基本:他者を利用してでも絶対に生き延びる。自分の記憶を取り戻したい。パパとママと恋人を探したい。
 0:他者を利用してでも、自身の生存を最優先する。
 0:教会に行く?
 1:真人と奏と行動。
 2:首輪を外せる人間を探す。
 3:男性との接触は避けたいが、必要とあれば我慢する。
 4:パパやママ、恋人を探し出す。
【備考】
※ファルの登場時期は、ファルエンド後からです。
※頭を強く打った衝撃で目が覚める前の記憶を失ってますが、徐々に思い出しつつあります。
※教会に倒れていたこととスカートが裂けてたことから、記憶を失う前は男性に乱暴されてたと思ってます。
※真人たちからの情報により、自身がバトルロワイアルに参加者であることを自覚しました。


 ◇ ◇ ◇


(さて)

 孤高に聳える大樹の枝の上、トーニャは猿でもなければ登れないような高所から、山々を見渡した。
 生い茂る大自然は太陽光に晒され、木々は燦々と輝きを満たしている。
 見た目には、戦火の兆しも見当たらない。付近には、もう人はいないのだろうか。

(まあ、いつまでもこんな山奥に滞在している理由もないですし……『彼』がいるとすれば、やはりふもとの街でしょうか)

 ファルから手に入れた何者かの首輪を懐に、トーニャは脳内にあの騒がしい男を顕現させた。
 自称大天才ドクター・ウェスト……死亡報告のあった藤林杏と行動を共にしていたはずの、キ○ガイ科学者である。

(現状、ゲームを打開するにあたって最も論理的な視点を構えているのは、彼を置いて他にないでしょう。
 彼の技術力がどれほどのものかは知りませんが、この首輪のサンプルを渡すだけの価値はある、はず。
 藤林さんが死んだ一方で彼は生きている……と、そこは考えたらキリがないから置いておくとして。
 せっかくフリーになったのですから、効率的に動かなくては。奏さんとの約束を果たすためにも、ね)

 大樹の上から跳躍し、キキーモラを発動。
 背中から生えたロープのような物体が枝に絡み、まるでターザンのように森の中空を伝っていく。

(まったく、単なる天然ボケ担当かと思いきや、とんだ食わせ者です。
 生徒会長なんてのは、やっぱりアレくらいぶっ飛んでないと務まらないんですかねぇ)

 脳裏で神宮司奏と一乃谷愁厳の姿を比較しつつ、トーニャは少し前のやり取りを思い出す。

(まさか、あんなことを言い出すとはね)


 ◇ ◇ ◇


 数十分前。
 奏からの返答を聞くため、彼女の下を訪れたトーニャは、予想外の事態に直面した。

「トーニャさん……あなたには、〝隠密〟になっていただきたいのです」

 これまでのトーニャの奏に対する評、良くも悪くも受動的。
 生徒会長という肩書きもお飾り程度の意味しか持たず、仲間に支えられてこその人間だと認識していた。
 故に、返事もイエスかノーの二択だろうと思い込んでいたところで、認識を改めざるを得ない回答が返ってきた。

「隠密……ですか。単語の意味する役割はなんとなく想像できますが……いったいどういったものですか?」
「極上生徒会隠密部……簡単に説明すれば、表立って動く生徒会を、影からサポートする役目です」

 奏が語る『隠密』という役職は、日本の戦国時代に存在したという忍者の役割に近い。
 時には諜報員として、時には暗殺者として、時には囮として、時には影武者として、影より主の支援に回る。
 決して表には出ず、徹底的に潜み、事を成す。損な役回りにも思えた。

「これは私の見解ですが……トーニャさんは、単独でいたほうが行動しやすいと思います。
 大所帯の一人として動くよりは、そこから一歩離れた地点にいたほうが、本領が発揮できる。
 隠密は、常に冷静な状況判断と臨機応変な対応が求められる役職です。トーニャさんのような……」

 奏の論を静聴する傍らで、トーニャはふむふむと感心する。実際、奏の観察眼は大したものだった。
 トーニャの本業はスパイであり、キキーモラを主軸にした戦闘も、単独での一撃離脱を得意とする。
 諜報活動、闇討ち、撤退、いずれも得意分野。対して、他者との連携や誰かを守りながらの戦いは不得手。
 暗躍するにしても、戦うにしても、逃げ回るにしても、一人のほうが都合がいいのは確かだ。
 ファルを信用するかどうかはともかくとして、奏はしっかりと、トーニャの本質を見極めていた。

「だから、私にあなたの部下になれと。影ながら身辺警護でもさせるつもりですか?
 それとも小間使い? ご自身にそんな権限があるとでも?
 ご存知かとは思いますが、ここはあなたが首座に就く極上生徒会ではないのですよ」

 奏の真意を探るため、刺々しい言葉を選んで反応を窺う。
 トーニャの挑発的な態度に、しかし奏は嫌な顔一つせず、堂々と答えた。

「わかっています。だからこそ、私は命令ではなくあなたに『お願い』しているんです。
 ここにいるみんなのためにも――トーニャさんには、最善の動き方をしてほしいと」

 奏の語る『みんな』には、この寺に身を置く四人のみならず、会場にいる全参加者を指すような意味合いが含まれていた。
 彼女の後輩たる蘭堂りの、真人が探し求めるリトルバスターズメンバー、トーニャの属する神沢学園生徒会の面々、そしてまだ見ぬ志を同じくする者たちも。

(なんて、あまったるい……)

 トーニャは心中で頭を抱えた。
 奏もやはり、真人と同じ側にいる人間だ。
 日常を引き摺った楽観的思考のせいで、最悪の状況を想定できない。
 切り捨てるべき人間とそうでない人間の分別がつけられないから、善悪も見分けられない。

 それなのに、トーニャに隠密活動をしろ、などとは――

「初めてですよ……この私をここまでコケにしたお馬鹿さんは……」

 ――やはりあまい。が、上等。おもしろいではないか、と。

 トーニャは内面のみに抑えることができず、表にも、失笑を漏らす。
 くっくっ、と小刻みに発声するトーニャに困惑する奏の表情がまた、おろおろしていておもしろかった。

「あ、あの、トーニャさん? やはり、気分を害してしまったでしょうか……」
「……ふふ。いえいえ、ぜ~んぜん……そんなことはありませんよ? どうかお気になさらず」
「そうは言われましても……ごめんなさい。やっぱり差し出がましいお願いでしたね」
「そうですね。ですが了承。オーライオーケイです。請け負いましょう、その隠密としての仕事」

 落としどころとしては、むしろ及第点だろう。
 と、トーニャはホッと息を継ぐ。

(正直、このまま仲違いで離別、なんてデメリットしかありませんからね。
 私を独自に動かすという名目があれば、井ノ原さんとの関係も荒立てずに済みますか。
 はははー……って、どうして私がそんなどうでもいい点に気を配らなければならないんですか。
 あほらしい。不愉快です。それじゃまるで、私が井ノ原さんのこと心配してるみたいじゃないですか)

 笑っていたかと思ったら、急に肩を落とし、盛大に溜め息をつく。
 主張もなしに感情を変化させていくトーニャに、奏はまた困った表情を浮かべた。

「ええ、そうです。ここまで来て後に引けますか。リアリストなトーニャさんはあくまでも、
 あの蜂蜜漬けグッピーがあますぎるから距離を置く……ということで一つ。
 そのほうが、井ノ原さんのためにもなるでしょうし、彼女が信用できないことには変わりありませんから」
「え、え、え? えぇと、それじゃあ……真人さんにはなんて説明すれば?」
「正面からあんたとはやっとれんわ、とでも言ってやりましょう。大丈夫。あの筋肉は気にするタマじゃありませんよ」
「トーニャさん……なんだか、笑みが、黒い、です」
「フ、フ、フ……」


 ◇ ◇ ◇


 そしてトーニャは、真人との縁切りを果たし、奏の隠密として動く。

「人材は適材適所に。奏さん。あなたには、生徒会長として、組織の上に立つ者として、見るべきものが見えているようです」

 奏自身への忠誠心など欠片もないトーニャだったが、それでも彼女の持つ統率力は評価できる。
 実直にして生真面目、不器用だがやるときはやる。
 一乃谷愁厳という完璧のようで完璧からは少しずれた手本があるだけに、奏の手腕に期待せざるを得なかった。

「うちの生徒会長様は今頃どこでなにをやっているのか。如月くんや加藤先生も。
 第二回放送は乗り切ったみたいですが、二人で賭博場に引きこもりつつ、
 ヤーサンに身包み剥がされてるなんことは……笑い話にもなりませんね。プッ」

 僅かに笑みを零し、トーニャは樹林を行く。
 当面の活動は、隠密としてあくまでも影ながら、脱出への糸口を模索する。
 兼ねてから思考の隅に置いていた、寺の大仏含む施設の謎。
 奏の考察の鍵となる神崎を知る人物、藤乃静留との接触。
 そして首輪というキーアイテムを入手した上での、ドクター・ウェストというキーパーソンとの再接触。

(次に会うときはきっと、成果を持って帰りますよ。それまでは、筋肉のお守りをよろしく)

 気楽さと開放感を手に入れたトーニャは、意気揚々と山を渡っていく。
 ロシアンスパイ――アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナの誇りに懸けて。

 請け負った仕事は、必ず形ある成功として持ち帰る。
 それまでは、どうか無事にいて欲しいと――トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナとしての願いを込めながら。



【C-5 西部山中/一日目/午後】

【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと-幻妖異聞録-】
【装備】:ゲイボルク(異臭付き)@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:支給品一式、不明支給品0~2、スペツナズナイフの刃
      智天使薬(濃)@あやかしびと-幻妖異聞録-、レトルト食品×6、予備の水、首輪(岡崎朋也
【状態】:健康。
【思考・行動】
基本方針:打倒主催。『隠密』として行動。
 1:ドクター・ウェストを探し出し、首輪を提供する。山のふもとの街(中世西洋風の街)へ。
 2:しばらくは単独行動を徹底。物資や情報の調達、各施設の調査などに努める。
 3:藤乃静留を探し出し、主催者(神崎黎人)の情報を絞り取る。
 4:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
 5:主催者への反抗のための仲間を集める。
 6:地図に記された各施設を廻り、仮説を検証する。
 7:ティトゥス、クリス、ドライ、このみを警戒。アイン、ツヴァイも念のため警戒。
 8:時機を見て、奏と合流する。ファルはやっぱり信用できない。
【備考】
 ※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。先端の金属錘は鉛製です。
 ※真人を襲った相手についてはまったく知りません。
 ※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウェストと情報交換をしたことで確信を深めました。
 ※杏、ドクターウエストと情報交換をしました。
 ※奏と情報交換をしました。
【トーニャの仮説】
※地図に明記された各施設は、なにかしらの意味を持っている。
※禁止エリアには何か隠されているかもしれない。



160:世界の中心、直枝さん(後編) 投下順 162:すれ違うイト
時系列順
153:ハジマリとオワリへのプレリュード 神宮司奏 173:Rewrite
井ノ原真人
ファルシータ・フォーセット
アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ 181:一人の隠密として、一人の姉として

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