ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

Let's Play?

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Let's Play? ◆iDqvc5TpTI


どこまでが森で、どこからが空なのか。
どこからが影で、どこまでが闇なのか。


夜空に輝く星々から漏れ出る光は、雲と枝葉に遮られ大地を照らすことは無い。
我先にと陽光を求めた木々の葉達は、貪欲にも日が落ちた後ですら地上に光を分けてはくれない。

深夜の森。
それはなんて暗い世界であろうか。
森の黒、夜の黒、影の黒、闇の黒。
ありとあらゆる黒が入り乱れる黒き世界。
幻想的とも悪魔的ともとれるこの世の異界。

古来より人が畏怖の念を抱き続けてきたその聖域は、

「ドォォォォクタァァァァァァァァァァ―――ッ・ウェェェェェェェェェェストッッッッ!!」

只今現在進行形でムード絶賛ぶち壊され中であった。


「気にくわないのである」

欝蒼と生い茂る森の中、筋骨隆々な長身をボディスーツで覆いその上に白衣を纏った男がぽつりと呟く。
思い出すのは男にとってはつい先ほどの光景――監督役と名乗った者達による見せしめと思われる惨劇。
彼、ドクター・ウェストとて悪党である。
己が望みの為だけに悪の秘密結社『ブラックロッジ』に与し、自らが設計した破壊ロボで破滅と恐怖をばら撒いてきた。
今更、そのことを弁解するつもりも道徳ぶるつもりもない。
しかし、彼には彼なりの美学がある。
この下劣な殺し合いと決して相容れることのない美学が。

何よりもう一つ許せないことがある。
ドクター・ウェストは存在自体が放送規制用語な人物ではあるが、紛れもなく天才科学者である。
しかも彼の専門は科学に限らず、魔術すらもカバーしている。
本人が魔術を使えるわけではないが、魔術を理論に組み込んだ兵器の開発などならお手の物だ。
その知識・柔軟性・発想力のどれをとっても完璧と言えるほどだ。

そんなウェストは当然のことながら、しかるべき設備か道具があれば首輪を解除できると自負している。
外すより先に遠隔操作で爆殺される恐れもあるが、逆にいえばそれは首輪に対して外部から干渉できるという証明に他ならない。
現に神父は一度起動した爆弾のタイマーの解除すらしてのけた。
同じように外部から爆弾が爆発しないよう干渉することや、主催陣からの干渉を妨害しつつ直接外すことも可能ではないか?
試しに何処からか首輪を手に入れて分解してみないことにはわからないことだらけだが、
どんな未知の技術や力が使われていたところで、自分の頭脳は首輪解除の大きな助けになることは間違いない。

当然主催陣もそのことは熟知しているはずだ。
殺された双子との会話や制限についての説明からしても、
主催者とやらが参加者の能力や正体についてかなり詳しいことは明白である。
きっといくつもの対策が用意されているに違いない。

だからこそ屈辱なのだ。

主催者たちはウェストのことをどう評価したにしろ、最終的には参加者として選んだ。
裏を返せば、舐められているのだ、自分は。決定的な脅威とは成り得ないと、無事に首輪を外せはしまいと。

この天才が!大天才が!!一億年は前言ったから二千年足して一億二千年に一人の大!天!才!たる
我輩ドクタァァァァァ・ウェェェェストッッッがぁぁぁあああああ!!

「くう、我が宿敵大十字九郎にならまだしも、見ず知らずの奴らにこれだけの屈辱を味あわせられるとは!
 億倍返しである!今ならセットでここ最近負け続けの我輩の負債もついてくるのである!!
 え、一つでいいからまけろって?NO!!んなの知るかボケえっ、てめえらはホイホイ騙されればいいんじゃあ!」

幸い自分には心強い味方がついている。
人造人間エルザ。高位の魔術師とも互角に渡り合う戦闘力を秘めたドクター・ウェストの最高傑作。
一人ずつ『ゲーム』とやらの舞台に転移させられたからこそ今ははぐれてしまっているが、
自分とエルザは一心同体、呼べば必ず現れると、ウェストは根拠もなく信じて疑わない。

「ふん、この程度で我輩たちの絆を断ち切ったつもりであるか?甘い、甘すぎるのであーる!
 ああ、あれは甘く切ない我輩の青春時代。恋と夢を天秤にかけたあの日。
 後から乗せた我輩の科学への情熱の重さによって、ジャンプ台と化した天秤から飛んで行く恋心!
 行くのである、誰も見たことのない宇宙の彼方へ!!あれ、なんか熱い!?た、大気圏!?ぎゃー!」

我輩の愛は燃えるように熱いのだとえらくひねりのない結論に達したウェストは、
今か今かと出番を待っているであろう我が子の名を、愛をこめて高らかに大声で告げる。

「かも~~ん、エェルザ!」






風が木々の葉を揺らす。
ざわざわと鳴る音だけが虚しく響く。
それだけだ。常に彼の傍らにいた相方の返事はない。







「エルザ!エルザァァァァァァ!?NOォォォォォ」

先程までの威勢はどこへやら、先端が白く染まったやたらと明るい緑色の髪を振り乱し、
涙と鼻水を垂れ流しながらドクターウェストは絶叫する。
愛が足りなかったのかと体をくねらせアホ毛をおっ立て叫び続けるも、見慣れた少女の姿はおろか返事すらない。

「ま、まさか、我輩を残して嫁いで行ってしまったのであるか、あの鬼畜外道ロリコン変態探偵の元に!
 我輩の美学そのものがあのような男に汚されるなどと!エルザー、逃げてー!
 行ってはいかんのである、マイ・フィア・レディー、エルザー!カムバッークッ!」

がくりと肩を下ろし膝をつくドクター・ウェスト。


およよよと泣きじゃくるも、最後の希望とばかりにランタンに明かりをつけ、名簿の隅々にまで目を通す。

尚、暗い森ではランタンの光がとてつもなく目立つことなど、これっぽちも気にしない。


幸か不幸か彼の最高傑作たる人造人間の名前はどこにも載っていなかった。
代わりとばかりに目についたのは一つの名前。
ティトゥス
ウェストが所属するブラックロッジの大幹部『アンチクロス』の一人だ。
参加者に奴がいること自体は問題では無い。
重要なのはブラックロッジの頂点に立つ大導師が今回の件を見逃したということだ。

鬼であったらしい双子を瞬殺した神崎黎人の力は、数多くの超人を知るウェストからしても中々のものだった。

少女から立て続けに幼馴染を奪った言峰綺礼の歪みは、同じ狂人であるウェストからしても相当のものだった。

だが、それでも。足元にも、及ばない。あまりにも、届かない。圧倒的すぎるのだ、「聖書の獣」大導師マスターテリオンは!
そんなマスターテリオンが、悲願たる『C計画』の発動直前に組織の重要人物二人をむざむざ奪われるとは思えない。
いや、むしろいつもの戯れで見逃したというのならそれはそれで構わない。
だが、もしも現状が気まぐれの結果で無いとしたら。神崎黎人も匂わせていたではないか、黒幕の存在を。
その黒幕は大導師と何らかの関係を持っているとのでは。
最悪マスターテリオン本人、あるいはあの魔人をも上回る邪悪が黒幕である可能性も……。

「ま、まだである!我輩には無敵ロボがあるのである!共に闘い続けたロボと我輩。
 心の無い筈のロボが最後の最後で我輩を守るために単身主催者の根城へと突っ込んでいく!
 『も、戻るのであるロボ!』『博士、エルザの口癖ぱくるなロボ』『ちょ、エルザァアアア!?誤解なのでグギャハゴベ!』
 ロボを一人で死なせない我輩の優しさに、全我輩が涙。ホロリ」

ぞくりと、己が想像に肌寒いものを感じたのウェストは、恐怖を誤魔化すかのように立ち上がり声を張り上げる。
主催者たちの手に渡っているかもしれない愛しのエルザを助けにいく我輩燃え、と勇気を奮い起す。
こんなこともあろうかと、幸い新型の破壊ロボは例え地球の裏側から呼んだとしても現れてくれる優れものだ。
これぞまさに男のロマン!指パッチンも忘れない!助けて僕らのピンチジェノサイダー!!

「さあ、今こそ友のもとへ駆けつけるのである、スーパーウェスト無敵ロボ29号先行公開型劇場版スペシャルぅぅううううう!!」





世界は依然黒一色に支配されたままである。
闇を切り裂くロケット噴射の光が空に輝くことはない。
大地を震動が揺るがし銀のドリルが姿を現すこともない。



「ろ、ロボ!?愛するエリザをみすみす奪われた我輩では、操縦者にふさわしくないということであるか!?
 っく、だが我輩は信じているのである。最終回付近で君が駆けつけてくれることを!」

そういえば、言峰綺礼は『元の世界』という言葉を用いていた。
なるほど、さすがの我輩も別世界へのワープ機能は破壊ロボに組み込んではいなかったと、実にあっさり納得する。
それでもドリルなら次元の壁くらい突き破ってくれるはずと信じていることも合せて、色々とんでもない人物である。

「……うう、静かすぎるのである」
とはいえドクター・ウェストも人間だ。
しかも、彼の世界では最も活気溢れる街――アーカムシティの住人であり、愉快犯なのだ。
一転して虫の子一匹すらいない夜の森に一人放り出されれば、寂しいと思ったりもするのである。

ちなみに、先程までの大声が好からぬものを呼び寄せうるとは、思ってもいない。


「っは、て、天才とは常に孤高!とはいえ大十字九郎達も主催者打倒に動くはず。
 同じ敵を前にして手を組むライバル達!
『か、勘違いしないでよね!?一人で寂しかったわけじゃないんだからね!?』
 そんなツンデレな我輩も萌え」

ふとデイパックが目についた。
わざわざ能力に制限をかけるくらいだ、破壊ロボが支給されることはないだろう。
だが、愛用のギターなら入っているのではないか?あれのケースはミサイルが発射できる立派な武器なのだから。
僅かな期待を胸にデイパックを漁り出すドクター・ウェスト。
あれでもないこれでもないと探り続けること数十秒、遂に望んでいたものが姿を現す。
楽器である。ギターでこそないものの、箱に詰められたそれはどう見ても鍵盤だ。
まともに曲を弾くならともかく、音を鳴らすだけなら、ピアノやオルガンといった鍵盤楽器ほど簡単なものはない。

強そうな名前からして意外とロック向きかもしれないと、ウキウキしながら説明書を見つつ組み立てていく。

言うまでもなく、一か所に留まるのは危険だなどとは、考えもしない。


「ぬはははははははははははははははっ!天才とは天に選ばれた才能の持ち主!
 故に我輩には神の加護が付いているのである!
 我輩の熱き魂のシャウトに着いてくるには少し心もとないが、
 そこは我輩、どっかの鬼畜で変態な探偵とは違って紳士なのであ~る。
 優しく、優しく、レェッツ・ロォッケンロォォォオオオオオル!!」

準備を終えたマッドサイエンティストの指が鍵盤の上を踊る、踊る。
コンソールを弄るかのような出鱈目で乱雑な動きだが、そもそもが初めて鳴らす楽器である。
派手になりさえすればそれでいいと適当に弾き続ける。
されど、無音。どこをどう押そうとも音の一つすら奏でられない。
起動ボタンでも押し忘れたのかと最後まで読んでいなかった説明書に再び目を通し、絶句する。

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

説明書の最終行、そこにはこう書かれていた。

『魔導奏器。鍵盤楽器。生来の資質を有する者にしか演奏できない』

「ま、魔導奏器?」

知らない名称だったが、魔術を組み込んだ楽器という直訳でなんとなくわかる。
たぶん一定の魔力がないと弾けないとかそういうことなのだろう。
またも、魔術。ドクター・ウェストの前にいつもいつも立ち塞がる壁。
ウェストは憎々しげに楽器を元の箱へと戻す。
いつか改造するなりして弾いてみせると、フォルテールという楽器の名に負けないよう強い意志を込めて。

「ふふふ……ふははは……ふははははっ!まあ良いのである。
我輩の頭脳は異界の魔術をも超えることを証明してみせるまで!
分解である!解析である!!改造である!!!
そうだ!そうだとも!我輩の科学に支配できぬものなど何も無いのである!
我輩はドクター・ウェスト!科学の申し子ドォォォオオオクタァァァァァー・ウェスト!」

がんばれ僕らのドクター・ウェスト!科学が魔術に勝利するその日まで!!



【E-4 深い森 深夜】

【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:フォルテール(リセ)
【所持品】支給品一式、ランダムアイテム×2(確認済み 楽器ではない)
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
1:設備・器具の入手
2:首輪のサンプルが欲しい
3:首輪の解除
4:フォルテールをあらゆる手を使って弾いてみせる
5:誰か人と合流したい(ティトゥス以外)

【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥスを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※相当派手に騒いでいるので、同エリア内の誰かに一方的に見つかっているかもしれません。

009:狂ヒ咲ク人間ノ証明 投下順 011:固有の私でいるために
時系列順
ドクター・ウェスト 033:Fearing heart

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