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激突!?究極の筋肉VS至高の筋肉!

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激突!?究極の筋肉VS至高の筋肉! ◆jRWsRROwBY



場所は森の中。
見渡す限り、緑と茶色の混合した景色で全てが埋められている。
時折吹く風が、植物の匂いと共に優しく彼女の鼻腔をくすぐる。
ザワザワと鳴く木の葉と草の合唱が、彼女の精神を落ち着かせていた。
静寂。
大地の自然以外の何者も、この静謐な空間を侵すことは憚られるようである。
ひょっとしたら、妖精や精霊の類が現れて踊っていても、なんら疑問を抱くこともなく受け入れられることもできたかもしれない。
それほどまでにこの場所は神秘的かつ幻想的な場所であった。
殺し合いの舞台にはあまりにも似つかわしくない雰囲気。
いや、似つかわしくないからこそのアンバランスさと不安定さが、より一層この場の神秘的雰囲気を高めているのかもしれない。
木陰から漏れる月の光を一身に浴びながら、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはそこに佇んでいた。
正式名称はアントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナだが、彼女が留学している神沢学園ではトーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナと名乗っている。

気の強そうな瞳。
あるいは確かな意志を感じさせる瞳と言い換えてもいいかもしれない。
真っ白な神沢学園の制服に、所々散りばめられた赤が絶妙なハーモニーを奏でている。
妙齢のロシア人女性に比べてあまりにも貧相な胸……ゲフンゲフン、失礼。
身長は同年代のロシア人女性どころか、日本人女性の平均よりも小さいかもしれない。
彼女はその陶磁器のように美しい肌で、参加者名簿と地図とコンパスを握り締めていた。

初めに彼女がしたのは、参加者の確認と現在位置の確認。
そして、自分の頭を抱えることだった。
詳細は省くが、神沢学園の生徒というのは表の顔で、彼女はロシアから日本に送り込まれたスパイである。
そのスパイがこうして見知らぬ場所に拉致され、こうして殺し合いを強制させられているのだ。
スパイが人を拉致することはあっても、拉致されるなど言語道断。
しかも、この島が世界のどこに位置するのかも彼女には分からなかった。

ここまできたらスパイの面目丸つぶれも同然。
トーニャはこの裏の仕事に誇りなどは抱いてないが、それでも己の不覚を恥じずにはいられない。
この話を聞いたら、各国の諜報機関はロシアの間諜はさぞかしノロマなんだろうと噂するかもしれない。
しかし、彼女はそんな中傷は気にしてはいない。
気にするとすれば、本国の反応。
もし、今から大至急ロシア、または潜伏してる神沢市へ帰還を果たすことができても、報告はどうするか。
ありのまま言っても正気を疑われるだけ。
黙っていても、報告がない間、何をしていたか聞かれるに違いない。
我が身の処分などどうなっても構わないが、トーニャには血の繋がった実の妹がいる。
妹をスパイなんていう血なまぐさい世界から、日常の世界へ帰還させるために、今までトーニャは努力してきたのだ。
しかし、こうして拉致されたとあってはもう妹の無事を確認するすべなどない。




次にトーニャが考えたのは、この殺し合いに乗ろうということだった。
神崎黎人言峰綺礼の言っていた言葉に従い、人を殺そう決意したのだ。
それは彼女が殺人凶だからでも、自分以外の存在などどうでもいいというエゴイストだからでもない。

彼女は何よりも妹の、サーシャ・アントーノヴナ・ニキーチナのことが大事だった。
日本にいる間は妹との手紙のやり取りが二人を繋ぐ唯一の絆だった。
彼女のことを思えばなんでもできた。
はやくロシアに帰って、二人で平和に暮らしたかった。
だから、人を殺す決意をした。
日本に来た当初は、残された妹のことを思うと、今すぐにでも帰りたいと何度と無く思った。
報告が少しでも遅れると、本部から叱咤された。
兄のウラジミールはとんでもない変態オタクだった。

一乃谷兄弟、七海伊緒、その他彼女の知人友人はほぼすべてその人妖能力を詳細に記して本国へ送った。
皆に裏の顔を隠すのは心苦しかったが、職業柄、「私はスパイです」とも言えないからしょうがない。
悪いとは思っていたが、妹のためだと、ただひたすら良心の呵責を押し殺し、冷徹ともいえるほどに任務を遂行した。
皆が自分の正体を知ったら何と言うだろうか、間違いなく嫌われるだろうなと何度と鳴く想像を巡らした。
でも、それでも、七海伊緒といるときは任務も何もかも忘れることができた。
いつの間にか伊緒は良き友とも言うべき存在となる。
伊緒と、先輩の癖に身長の低い上杉刑二郎との煮え切らない仲を時には応援し、時にはからかい、時には炊き付けた。
何の因果か、神沢学園の生徒会の仕事もするようになったが、会長を初めとしてみな優しい人ばかり。
生徒会の仕事も、生徒会の皆と遊ぶのも楽しかった。
トーニャも、こういう生活も悪くないかな、と徐々に感じ始めていた。

しかし、いつかは壊れると予想していた日常は、最も予想外の形で崩れることになる。
心の準備も何もなく、ある日突然訪れた究極の選択肢。
彼らを殺せるのか?
トーニャは――イエスと答えた。
神沢学園の友人より、妹の方が大事。
ただそれだけのことだ。
証明もなにも必要はない。
なれば、やるべきことは決まってる。
彼女は、もはや自分の手の延長にも使えるほどにも使いこなした人妖能力を口にする。
「キキーモラ!」
呟くのは一瞬。
それに答えるように現れたのも一瞬。
トーニャの背中からチューブの黄色いチューブのようなものが伸びてきた。
そして、その先端にはひし形の金属錘が取り付けられている。
さらにトーニャはこのキキーモラに命令を与えて、手近な木に向かわせる。
トーニャの意志に答えて、彼女の長い長い手とも言うべきチューブと、その先に取り付けられた金属錘が、瞬く間に近くの木の幹を抉り取った。
パラパラと地上に落下していく木の破片を見て、彼女は満足そうな笑みを浮かべる。

これが人工的に取り付けられた彼女の人妖能力、『キキーモラ』だ。
彼女はこの背中から伸びたチューブと金属錘を自在に操って敵と戦う。
チューブとは呼んだが、これは厳密には極小の糸を幾重にも重ねて太いチューブを形成している。
この糸はバラバラにすることも可能だが、そうすると激痛が走るため、やむなく束ねているのだ
この背中から生えた糸の集合体こそ「キキーモラ」であり、先端に取り付けられた金属錘はあくまでも付属品に近い。
キキーモラそのものは敵を縛ったり、遠くの物を探るのにも使えたりと汎用性は高いが、如何せん殺傷力に劣る。
そこで、攻撃力増加のために取り付けられたのが、先端の金属錘。
現在は鉛の金属錘が取り付けられているが、別の素材、例えば炭化タングステンを特殊加工した金属錘に取り替えることも可能である。
また、この糸は彼女と触覚を共有もしている。
支給品などなくても、これがあれば彼女は戦っている、そのはずだった。
しかし、ここでキキーモラに予想外の事態が発生していることにトーニャは気づいた。
「……短い」
そう、キキーモラは彼女がその気になれば100m、痛みを我慢すればもっと伸ばせるはずだった。
だが、今彼女が痛みに耐えて、限界まで伸ばしてみたが、伸ばせたのはおそらく10mほど。
いつものわずか1/10までしかキキーモラを伸ばせないのだ。
そこで、不意に神崎黎人の言葉が思い浮かぶ。
『超常的な能力を持つものはその能力にある程度の制限を課す』、と。
「そういうことですか……」
皮肉めいた笑みを浮かべた。
なるほど、たしかに大幅な制限だ、と。
これでは100m先の標的にキキーモラだけを送り込み、その金属錘で暗殺ということもできない。
接近戦もできない訳でもないが、できるだけ怪我をするのは御免被りたいだけに、この制限は思わぬ痛手だった。
「……ふぅ、なら支給品に頼ることにしましょう」



さて、ここで、ようやく支給品のお出ましである。
トーニャも支給品の事をないがしろにするつもりはなかったが、状況の把握とこれからの方針を決めるのに時間が掛かりすぎていた。
鬼が出るか蛇が出るか。
その前に一つおさらいをするとしよう。

ここは殺し合いの舞台だ。
そしてトーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはこの殺し合いの参加者だ。
デイパックの中には殺し合いをするための支給品が入っているらしい。

現在必要な情報はこれくらいか。
ここまでは参加者なら誰でも分かる事柄だ。

「……………………」
支給品を確認した彼女は頭痛でその場に倒れこんでいた。
悪い物を食べたのではない。
劇薬を嗅いでしまったのでもない。
あるいは支給品がハズレだったという訳でもない。
彼女は人生の厳しさというものを初めて知ってしまったのだ。


殺し合いをすすめるために支給人があるのだから、中には武器が入っているのだろう。
妥当な考えだ。

中に入ってるのは銃やナイフ、まあ、最悪の場合裁縫針ということもあるだろう。
その考えは間違ってはいない。

いずれにせよ、邪魔になる道具が入ってるということはあるまい。
ダウト! 甘い! 大甘! 内容量190gの缶コーヒーに200gの砂糖をブチ込んで飲むよりも甘い!


トーニャはきっとこう考えたのに違いない。
「神様、そんなに私のことが嫌いですか?」、と

彼女の支給品は防弾チョッキ。
……武器ではないが、ハズレでもない。
トーニャも、これが普通の防弾チョッキなら喜んで着ただろう。
そうは問屋が卸さない。
この時のトーニャの感情を表せる言葉は、おそらく地球上になかったであろう。

高い防御力が獲得できるではないかと思う人もいるかもしれない。
では、そんなことを思った人たちに聞いてみよう。




これが『マッチョスーツ型』の防弾チョッキだと言われたら、貴方は着ますか?




「……な、なんですかこの一昔前のお笑い番組に出てくるようなマッチョスーツは!?
 しかもとても作り物には見えないじゃないですか!?こんなもんに無駄な技術使う暇があったらさっさと世界平和に役立てなさい!
 この波打つような上腕二頭筋とか芸術物の出来栄えではないですか! 
 そもそも防弾仕様だからってこんな堂々とした防弾チョッキがあってたまりますか!
 他人からは見えないところに着込むから効果があるんでしょうが!?
 こんな見え見えの防弾チョッキなんかすぐに避けられて、別の場所撃たれるわ!
 それになんなんですかこの説明書は!?
 『私はこれを着てロワを生還しました 37歳 会社員』とか意味不明の驚天動地の空前絶後の前人未到過ぎです!?
 こっちの『これには驚いたわ。自分が何もしなくても筋肉がつくのが分かるんだ(HAHAHA!)』とか、これは防弾チョッキじゃないのですか!?
 むしろ、こんなもん着てるだけで筋肉ついたら怖いわ!?
 そもそもなんですかこの思わずニューヨークに直行したくなるような説明書は!?
 通販!?通販ですか!?電話と振込みはどこにすればいいんですか!?分割払いはできるんですか!?
 ああもう、ツッコミが追いつかない!?
 っていうかこんなもん着れるか!着るか!着てたまるか!着たらキキーモラが使えないでしょうがーーーーーーーー!!!」

ちなみに彼女、普段から怖いが怒らせるともっと怖いという自他共に認めるドSだが、ツッコミの才能もある何気にハイスペックな人物である。

数分後、そこには筋肉チョッキを着て元気に走り回るトーニャの姿が!
……ではなく、ツッコミのし過ぎで疲れて、ハァハァと息をついている姿があった。
理不尽だった。
あまりにも理不尽だった。
どうしようもなく理不尽だった。
何故こんなところに連れてこられて、何が悲しくてこんなガチムチなマッチョスーツを着て戦わねばならないのか。
これを着て戦えと?冗談じゃない。
トーニャの中に沸々とした怒りの感情が渦巻いていた。
今となっては本国のこともサーシャのどうでもいいと思えるほどの怒り。
堪忍袋の尾が切れるとはこういうことだったのかと、トーニャはある意味感謝もしていた。
さっきまでの決意はどこへやら、トーニャは反逆の意志を静かに胸に抱く。
とりあえず、こんなものを支給したやつは殺す。
ここまでコケにされて黙ってられるのはパンダだけだ。
トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナを馬鹿にした人間に待ち受けるのは死だけだと思い知るがいい。
かくして、ここに反逆の意志を持つ一人の少女が誕生した。
言峰綺礼と神崎黎人の失敗は、もっとマシなものを彼女に支給していれば、より円滑にこの殺し合いは進んだだろう、ということである。
だが、彼女の受難はこれだけで終わらなかったのだ。

「理樹、そこか!?それとも鈴か!?」

さて、トーニャが反抗の意志を確認して移動しようとした途端、いきなり夜の静寂を切り裂かれた。
ガサガサと音がして一人の人物が現れたのだ。
どうやら先ほどの叫びを聞きつけてきたらしい。
迂闊に声を出した事をトーニャは恥じるが、それよりも先に現れた人物の品定めの方を優先させた。
その人物は鍛えられた見事な肉体をその身に纏った青年。
短ランのような短く黒い制服に、下は水色のジーンズ。
彼の気性を現すかのように、頭のバンダナと制服の下のシャツは燃えるような赤。
そしてツンツンとした固そう質の髪の毛の持ち主である。
とりあえず敵意はないようで、トーニャは警戒を解いた。

その人物の名は井ノ原真人
筋肉の為に生き、筋肉の為に死ぬ、憎めない筋肉馬鹿一直線だ。
彼を知るものに、彼の性格を聞いたらこう答えるだろう。
馬鹿、と。
「なんだよ……違うのか。違うなら筋肉で違いますよって言えよ」
真人はあからさまに落胆した様子で呟いた。
「筋肉はしゃべりませんよ」
トーニャも冷静に切り替えした。
と、同時にこの人物に対しての評価も即座に決めた。
馬鹿、と。
短いが、これ以上ないほど的確な評価だった。
もっとも、真人がここに駆けつけてこれたのはトーニャの怒りの声のおかげであり、その点では、二人は似たもの同士だったことに両者は気がついてない。
そして、かの支給品をそのまま外に置いていたことこそ、トーニャの今日最大の失敗だったのかもしれない。

「そうか、悪かったな。じゃあ――っておい、それは何だ?」
真人がトーニャの足元を指差す。
トーニャも真人が何を指差していたのかすぐに察した。
しまった、とトーニャは思わず自分の頭に手をやってしまう。
あのうれし恥ずかしい支給品のマッチョスーツ型の防弾チョッキが転がっていたのだ。
防弾チョッキはその存在を誇示するように、月の光を反射して誇らしげに光る。
「その筋肉……お前のか?」
「ええ、まことにお恥ずかしい限りですが……」
真人の指摘に開き直って答えた。
もうこの状況は誤魔化しようがないのだ。
ならば、正直に言って笑われて、大変だったね、こんなこともあるさ、で終わらせればよかろう。
トーニャはそう考えていた。

しかし、その思考が通じるのは普通の人間のみだ。
目の前の人間、特に筋肉に至上のこだわりを持つ真人にはそれは通じなかった。
重ねて言おう、トーニャは本当に運がなかったと。
真人は不敵な笑みで今度はトーニャを指差し、こう言うのであった。
「そうか……なら……着ろ」
「……はぁ?」
いまいち状況を理解できないトーニャを尻目に、真人は拳を天に突き上げ、今ここに神聖な勝負が始まった事を宣言する。




「俺の究極の筋肉とお前の至高の筋肉、どっちがいい筋肉か勝負だ!!!」



【D-1 森林/1日目 深夜】
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、不明支給品1~3】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
1:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。けど、その前にこいつと筋肉勝負だ!


【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと -幻妖異聞録-】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実、不明支給品0~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:打倒主催
1:筋肉勝負なんてしてたまるか!っていうか着るか!
2:不明、とりあえず打倒主催を目的に行動

※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。
 先端の金属錘は鉛製です。
※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
※防弾チョッキを着るつもりは微塵もありません。むしろ、誰かに着せようと考えています



014:天から舞い降りたシ者 投下順 016:私と貴方は似ている。
時系列順
井ノ原真人 045:まこまこクエスト~狸と筋肉とスライムと呪われし血脈
アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ

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