マルティナとミリーナが武器屋に逃げ込んだ頃、カイムは街を脱出していた。


不意なアクシデントに見舞われたとはいえ、一度ならず二度までも殺し損ねるとは。
カイムは怒りのあまり壁を蹴飛ばした。
壁は簡単に壊れ、建物の中が露になる。

室内にあった時計を見ると、意外と放送まで近い。
誰かが死んだからといって、やり方を変えるつもりは更々ないが、一先ず休憩が欲しい所だ。
あの隕石を降らす魔法は、強力だが消費する魔力も桁違いらしい。

コントロールもまだ上手く出来ないし、慣れる必要がありそうだ。


(………。)
不意に、こんな考えが頭をよぎる。
もし、人を殺す以外に、マナの下へ行く方法があれば?
殺さなければ殺される。
そんなことは前にいた世界でも今でも同じこと。
自分は人殺しに抵抗を抱かないのに、なぜこんなことを思いつく?





「エアリスさん!!早くワタクシの城に行きましょう!!」

トウヤとの戦いの後、ゲーチスは何かから逃げるかのように、ひたすらに目的地を目指した。
途中、トウヤが歩いた方向から、何度か衝撃音のようなものや、物が壊れるような音が聞こえてくると、その足をゲーチスはさらに速めた。


橋の上は注意して進まないと危ないというエアリスの忠告も無視して、ゲーチスは逃げ続けた。
城へ行けば。自分の居城にさえ行けば。
行ったところでどうするか、何か解決策があるのかと言われれば答えられないが、今の状況よりかはマシになると思っていた。

橋ももう少しで終わりという所で、二人の目に衝撃的なものが映りこんだ。
街に降り注ぐ、火球。
しかも1発や2発じゃない。



「ダメよ!!誰かがいるかもしれない!!」
あの場所にあるのはカームの街。
エアリスもティファもこの世界で共通して知っている場所。

もしかすると、あそこで誰かが戦っているかもしれない。
そして、エアリスにはもう一つ疑問があった。

黒マテリア。
セフィロスが求めたマテリアで、究極黒魔法、メテオを呼び出し惑星一つを破壊し尽くしてしまう。
何らかの形でこの世界に転送されていたら、規模は違えど、メテオを扱うことも可能だろう。


「エアリスさん!!誰か来ますよ!!逃げましょう!!」
もう少しでカームの街にたどり着く頃。
ゲーチスはなおもエアリスを必死で止めようとする。

エアリスはそれを無視してカームへ行こうとするが、目の前に一人の男が現れた。

その姿を見た時、エアリスは衝撃を受けた。
相手が持っている武器は、自分達の宿敵、セフィロスが持っていた正宗だったから。


あの剣は、簡単に使えるものではない。恐らくあの男も、相当の手練れだと感じた。
同時に、刺すような視線が、二人に伝わってきた。


「あの……ワタクシたちは、この戦いを壊そうと思って……そして、仲間を集めて……こんなくだらないゲームを……。」

ゲーチスがしどろもどろになりながらも、返事はなかった。ただ、相手は自分達の殺戮を目指しているようだ。


「スリプル!!」
恐らくこの男に自分の攻撃は聞かないだろう。
素手での攻撃は論外だし、弓矢の攻撃も恐らく時間稼ぎにもならない。

だとすると、最初から無力化を狙う。

しかし、従来のものと契約による強靭な精神力は、睡眠魔法をも打ち払う。
カイムは正体不明の眠気に一瞬襲われるも、すぐに二人に斬りかかる。

横なぎに一閃。そのまま二人纏めて真っ二つにしてしまおうとする。

「ぬぅ!!」
しかし、正宗の攻撃を、ゲーチスのスコップが止めた。

精神的なダメージがあるが、ほとんど無傷なゲーチスに対し、カイムは先程の戦いで幾分かのダメージと、魔力の消耗による疲労がある。
加えて、カイムは正宗をまだ完全に使いこなしていないが、ゲーチスが持つシャベルは、頑丈さに加えて、素人でもある程度使いこなすことが出来る。

だが、正宗を止めたのも一瞬。
カイムの剛力が、ゲーチスとエアリスをいとも簡単に打ち飛ばす。

「きゃあ!!」
「ぐっ!!」

少し前の光鱗の槍と正宗のぶつかり合いと、同じ状況が起こる。
だが、その後の結果は違っていた。


カイムは再度正宗を構え、今度こそ二人を斬殺せんとする。
その瞬間、エアリスは王家の弓を構えた。

「邪気封印!!」
(!?)

王家の弓から、木の矢ではなく白い光の矢がカイムに飛んでいく。
そこからカイムを包む光に、カイムは勿論、ゲーチスも驚く。
気が付くと、カイムは剣を振り回す姿勢のまま、硬直していた。


「い、今何をしたのですか?」
その瞬間、暫く何も音が響かなかったが、ゲーチスが沈黙を破る。
「私のリミット技よ。邪気や殺意を持った相手の動きを止めるの。」

それを聞くと、すぐにゲーチスはシャベルをカイムの頭に叩きつけようとする。

「ダメッ!!」
それを制止するエアリス。

「ナゼですか!!ワタクシたちを殺そうとしたのですよ!!向こうの街の火事もきっとこの男のせいです!!」

エアリスがゲーチスの攻撃を制止したのは、スコップの殴打くらいでこの男は殺せないと思ったこと。そして……。


「何故かは言えないけど……きっと、この人もやりたいことがあったのだと思う。
ここで私達が、殺しちゃいけない気がする。」

何も言わずに斬りかかってきた瞬間を見て思いだした。
古代種の神殿で、セフィロスに操られ、殴りかかってきたクラウド。
彼も同じように、何かに憑りつかれたかのように破壊を続けている気がする。


「そんなのワタクシ達の知ったことじゃない!!アナタが殺さないなら、ワタクシが……。」
「止めなさい。それは誰も望んじゃいないわ。」

エアリスは王家の弓をゲーチスに向けた。
「私達はこの人も助ける。このゲームからも脱出する。あの二人に勝つ方法はそれだけよ。」
「…………。」


「ゲーチスさん、どうしたの?」
「いえ、何でもありません。そうしましょう。」

硬直状態になったカイムを二人は抱え、空き家に運び込む。
そのまま手足を室内のカーテンで縛り、動けなくした。
もうそろそろ硬直時間は終わる。
一番脅威となる武器は奪えたが、ひょっとすれば拘束を千切って襲い掛かってくるかもしれない。
二人は目の前で見張っていた。

「エアリスさん。アナタはこういったことに慣れているのですか?」
圧倒的な強さを見せつけたトウヤに対しても恐れや隷属の意思を示さなかった。
自分はかつての宿敵トウヤに、そして今目の前の男の強さに恐れおののいているだけだ。

もはや今の自分を七賢人の一人だと認めてくれる者はいないだろう。

「まあ、そういうことになるわね。あと、さっきは助けてくれてありがとう。」
「ああ、いや。ワタクシも危なかったので……。」

こんなザマでどうするのだ。
そして、恐らくこの男は人間ではない。ポケモンか、何か別の存在の力を借りた怪物。
エアリスは和解を目指しているらしいが、そんなこと出来るわけがない。
何か、何かこの状況を打破する何かを探さないと。


かつて七賢人の一人だった愚かな男は、そのようなことばかり考えていた。


【D-3/市街地/一日目 早朝】
【ゲーチス@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:ダメージ小、無力感、苛立ち
[装備]:雪歩のスコップ@THE IDOLM@STER
[道具]:基本支給品、スタミナンX@龍が如く 極
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、野望を実現させる。
1.エアリスを利用し対主催を演じる。
2.早くNの城へ行きたい
3.スキを見て、カイムを殺害し、逆転の手段を練る

※本編終了後からの参戦です。
※エアリスからFF7の世界の情報を聞きましたが、信じていません。

【エアリス・ゲインズブール@FINAL FANTASY Ⅶ】
[状態]:ダメージ小 MP消費(小)
[装備]:王家の弓@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、木の矢(残り二十本)@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
[道具]:基本支給品、マテリア(ふうじる)@FINAL FANTASY Ⅶ 正宗@FINAL FANTASY Ⅶ
[思考・状況]
基本行動方針:ティファを探し、脱出の糸口を見つける。
1.カイムをどうにかして止める。
2.今はゲーチスに付いて行きティファを探す。もし危なくなったら……。
3.ゲーチスの態度に不信感。


※参戦時期は古代種の神殿でセフィロスに黒マテリアを奪われた~死亡前までの間です。
※ゲーチスからポケモンの世界の情報を聞きました。


【カイム@ドラッグ・オン・ドラグーン】
[状態]:ダメージ(中)魔力消費(大) 両手両足拘束中、ストップ(もうじき解除)、沈黙状態
[装備]: なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、マナを殺す。
1.自分よりも弱い存在を狙い、殲滅する。
2.雷を操る者(ウルボザ)のような強者に注意する。
3.子供は殺したくない。

※フリアエがマナに心の中を暴かれ、自殺した直後からの参戦です。
※契約により声を失っています。
※正宗に自分の魔力を纏わせることで、魔法「コメテオ」が使用できます。




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057:生と死の境界 時系列順 059:流星光底長蛇を逸す
投下順
014:Abide カイム 084:拘束が緩む時は
021:ポケットにファンタジー エアリス・ゲインズブール
ゲーチス
030:灯火の星 マルティナ 077:選ぶんじゃねえ、もう選んだんだよ
025:輝け、少女たちの歌 ミリーナ・ヴァイス

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最終更新:2022年06月23日 13:27