「そんな……。」
怒りに任せて撃った銃は、ミファーの心臓には命中しなかった。
命中したのは肩のあたり。
ただでは済まないが、相手を殺すのには到底至らなかった。
確かに雪歩の決意は漲っていたはず。
だが、手元の震えか、殺人への恐怖か、未知の世界の空気のせいか、銃を撃つのは初めてだからか、反動のせいか、はたまた最後に躊躇ったか。
理由こそは不明だが、友の仇を殺害するには至らなかった。
そして、急所に当てることが出来ずに、放心した雪歩の隙を、歴戦の英傑である彼女が見落とすわけがない。
右肩の怪我も厭わず、そのまま雪歩に詰め寄り、今度は至近距離で彼女が銃の引き金を引いた。
火薬の爆ぜる音が、戦場から離れた場所で響く。
ただ真っすぐにミファーが放った弾は、雪歩の心臓を打ち抜く。
口を開けて、声を出さずに血のみを零し、開いていた瞳孔が完全に開ききった状態で、ぐらり揺らめいたと可憐な少女は、草原の上に倒れる。
それはまるで、雪の上でも可憐に咲いていた萩の花の命が、雪解けの洪水によって無残に刈り取られたように見えた。
最も飛び散ったのは、紅紫色の花びらではなく、曼珠沙華のように赤い色なのだが。
消音式の銃とは異なるマカロフが火薬の音を出し、反動で彼女の左肩の関節と両の鼓膜を痛めつけるが、それでも二人目の敵の殺害に成功した。
動かなくなった、二人の少女の死体を眺める。
彼女らに対して、これといった同情を抱くこともなく、片方の胸に刺さったナイフを引き抜いた。
(待っていて……リンク……。)
関節の痛みと、銃の痛み2つを受けながらも、彼女は最愛の男の下へ進む。
リンクの仲間が死んだことを聞けば、彼はきっと悲しむ、それは分かっていた。
でも、彼女としてはそれでもよかった。
場所の方は聞けずじまいだったが、音だけは聞こえる。
その音の方へと、ただ静かに向かう。
彼女が起こしたことが、どういった災害を呼び起こしたのかもつゆ知らず。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
地上は3人で囲み、上空には1匹。
勝利は目前に迫ってきた。
だが、ゆめゆめ忘れるなかれ。
いくら目の前の敵が強かれど、目の前の存在のみがすべての敵では無いことを。
ここは決められた数の敵とだけ戦う場所では断じてない。
ソニックがかつて戦っていた場所で例えるなら、ポケモンスタジアムのように、時間経過で外部から状況が変わったりすることもある。
(銃声!?)
丁度雪歩が隠れていた辺りで、火薬の破裂する音が響いた。
一番不幸なことは、リンクが既にトレバーと戦っていたことだ。
トレバーとの戦いで、初めて銃声を聞いていたリンクは、方向的にあり得ないにしろ、またあの禿げ頭の男が雪歩を狙ってきたのかと思い込んでしまう。
そして、後の二人は過去の戦いで何度も銃の音を聞いていた。
すなわち、この一瞬だけ、3人共カイムから集中力を逸らしてしまった。
ならばリザードンは銃声に惑わされなかったのかというと、これも否である。
竜のポケモンは、別の出来事に心を乱されていたからだ。
すなわち、持ち主の喪失である。
不幸中の幸いながら、モンスターボールの効力のある範囲のギリギリで戦っていたこと、ミファーがモンスターボールの仕組みを知らなかったことで、主導権が雪歩からミファーにすぐさま譲渡されることは無かった。
だがそれでいて、突然所持者が死んだことは、一匹のポケモンとして、十分に精神を搔きまわした。
参加者だけでなく、支給ポケモンのリザードンでさえ銃声に耳を傾けた中で、戦闘に身を委ねたカイムのみが最適な行動を選ぶことが出来た。
この一瞬のスキをついて、誰か一人を攻撃しても、その瞬間他の誰かに纏めて攻撃される。
攻撃をしてくる敵の場所も、タイミングもバラバラなので、一太刀で全員を殺すのは難しい。
だが、カイムの攻撃には、もう一つ技があった。
正宗に魔法を纏わせることで使う技、コメテオ。
「うわっ!!」
「!!」
カイムはリンクの回転斬りを真似したかのように、正宗を低い方向に思いっ切り振るった。
誰にも当たらなかったが、地を這う風の刃は3人の脚に傷を負わせた。
切り落とされることは無かったが、ズボンに赤黒い染みが広がり、顔を歪めるリンク。
2Bに至っては、既に負傷していた片足に大きなダメージを受け、金属片が散らばった。
そしてソニックの脚にも同様に裂傷が走る。
2人に比べて傷は浅いが、ダメージを受けた際にスマッシュボールの力を手放してしまった。
一度リンクがやったかのように、2Bの頭を踏み台に飛び上がり、再び空高くへ。
しかし一瞬の精神の乱れから回復したリザードンが、翼をはためかせカイムに襲い掛かる。
「グア!?」
しかし、あわてず騒がず、カイムはリザードンの片羽を、あるもので斬り裂いた。
それは、ソニックが落とした、短剣オオナズチ。
先程、リンクとリザードンの波状攻撃により地面に撃墜された時、地面に転がっていたそれを拾って、サブウェポンとして用いた。
翼を傷つけられ、空の支配権を手放してしまう。
2Bに加え、更にリザードンを踏み台に、羽を手にしたかのように天高く上る。
この瞬間、空の支配権は、一気に飛竜からカイムへと渡った。
(くそ……でも今やるしかねえ!!)
ソニックは、完全にとどめのタイミングを逃したことで、悔しさに歯を食いしばる。
だが、翼を持つ者がいない以上、自分が切り札を切ることで、飛行能力を得るしかない。
再びスマッシュボールを破壊する。
離れたはずのその力が、ソニックに集まる。
「決めてやる!!」
体が黄金に包まれ、そして重力の鎖と、空気摩擦の鎖を断ち切り、限界を超えたスピードを得る。
だが、スタートが1日遅れたアキレスが、スタートが1日早かった亀に勝てなかったように、いくら速さで勝っていても、開始時間で後れを取れば、間に合わないこともある。
カイムは無人の空で手に入れた時間を使い、正宗を上空で一回転。
その瞬間、4つの隕石が地上の者と空の者目掛けて落とされた。
(何だ……これは……。)
地上にいたリンクは、ただ圧倒的な力を、見つめるしか出来なかった。
流れ星は何度か見たことがあるが、自分の所にその命刈り取らんと迫る星は初めてだった。
逃げようにも、足を怪我している以上は走るのも難しい。
(ここまでやって、まだ奥の手があったと……?)
2Bは今まで見たことのない隕石を、リンクと同じように見つめている。
唯一、スーパーソニックのみが、そのメテオに逆らうことが出来た。
音速、いや、光速ともいえる目に見えないほどの連続攻撃を巨大な岩に繰り出す。
隕石を一つ貫き砕き、カイムもまとめて貫こうとした時、急いで方向転換した。
(No,違うぜ。)
カイムよりも、残された人とアンドロイド、そしてポケモンに降り注ぐ残り三個の隕石を地面に落ちる前に止めようとする。
「ファイターのSpiritsがなくならない限り、平和への戦いも終わらねえ!!」
2個目をぶつかりに行った時、その姿は金から青に戻り、それでもなお隕石へと目掛けて弾丸となり襲い掛かった。
「Burning……でもオレの魂も、まだ燃え尽きちゃいないぜ。」
空から降り注ぐ炎の塊に焼かれてもなお、連続してぶつかり続け、一つでも砕こうとする。
「「ソニック……」」
地上に残された二人は、ソニックを必死で止めようと言葉を発す。
持ち前の速さを使えば、一人だけ逃げることも出来たはずだ。
だが、それでも仲間を守るため、1つでも隕石を破壊するためにその速さと力を使った。
「リンク…リザードン……皆…たのんだ……ぜ……。」
ソニックは焼き尽くされる瞬間、地面に置いてきた鞄を指さし、もう片方の手で2個目の隕石を破壊し、それから体を動かなくなり、地面に堕ちていった。
彼の速さは、仲間と自分、両方を守ることは出来なかった。
だからこそ、共に戦ったファイターを守った。
だが、隕石は残り2個。
地上に落とされたリザードンと、2B、リンクを殺すには十分な数だ。
デルカダールの盾では、英傑だとしても身を守るには余りに心もとない。
「リンク。」
そう一言アンドロイドが呟くと思うと、機械の両腕でリンクを掴み、思いっきり投げ飛ばした。
既に片足はボロボロだったのにも関わらず、激しい運動をしたため、投げた瞬間に負傷していた脚が落ちた。
「2B……!!何を!!」
「私はもう、戦えない。」
隕石が迫りくる中、一人だけその場所から放す。
「グゴオオオオン!!」
毒を受け、翼を動かなくされてなお、リザードンの口から強烈な炎を吐き、隕石の1つを破壊しようとする。
「リザードン、付き合ってくれるのか、悪いな。」
それを見ていた2Bは、どこか申し訳なさそうにする。
どうせなら、リザードンも外に投げ飛ばしたかったが、片足だけではどうにも難しい。
(ああ、これで終わりか。)
あっけなく、突きつけられた死。
だが、一つだけ満たされたことはあった。
今まで司令官から聞いたことしかなかった存在であった、人間。
人類を守ることが自分たちアンドロイドの命令だとしても、一度も会うことは無かった。
だが、初めてこの世界で機械生命体ではない人間に出会い、その人間を守り、そして終わることが出来る。
こんな戦いに勝手に巻き込まれたのは癪だが、それだけは主催にも感謝しないといけない。
彼女は、自らが戦い無くなり無価値になっても叫んだ。
壊れた敵を目の前にして。
脚を失い、戦えなくなってしまっても。
アンドロイドとはいえ、笑顔が眩しいままの仲間たちに、想いを残すために。
(みんなをお願いするね…リンク、ナインズ。)
地面に堕ちた隕石が、爆発する。
広がった灼熱の爆風と、砕け散った石の欠片が、アンドロイドとポケモンの全身を貫いた。
「2B!!リザードン!!!」
直撃点からは離れていたものの、それでも隕石の欠片と爆風は襲い来る。
それを盾で守りながら、叫ぶが、どちらの返事も帰ってこない。
「2B!!!!!リザードン!!!!!!!」
叫び続けるが、耳に響くのは爆音のみだ。
燃え盛る炎の中に立っていたのは、地面に着地した、カイムだけだった。
戦い続けてなお、残された獲物であるリンクを殺すために、正宗を振りかざす。
しかし、何かの力がカイムを拘束し、大剣を振りかぶった状態のままにする。
「ふざけるな。」
そう呟いたリンクの目は怒りが現れ、そして輝いていた。
それは決して比喩表現ではなく、スマッシュボールで手に入れたエフェクトだ。
一太刀の下で、ソニックに託された最後のスマッシュボールを砕いた時から、光に満ちていた。
言葉を発せないカイムは、表情を歪め、身を捩って抵抗するも、もう遅い。
リンクの片手に浮かぶトライフォースの痣が光る。
三つ連なった光り輝く正三角形が、戦いに身を委ねた男を完全に拘束し、さらにまた光り輝く。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
野生の加護を得た獣のような怒声と共に、動かなくなった敵を斬る。
斬って、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬りつけた。
腕の筋肉の限界も、脚の痛みも、何もかもを気にせず、斬り続けた。
トライフォースラッシュ。
別の世界の彼が、そう名付けていた技だ。
「でぇやあああああああああああああああああ!!!!!」
慟哭と共に放たれた最後の一撃は、カイムを遥か彼方に吹き飛ばした。
生者はリンクを除いて誰もいなくなり、そのリンクも体力を使い過ぎ、がっくりと膝をつく。
(まだだ……奴に……とどめを………。)
動こうとしない体に鞭打って、立ち上がろうとする。
人間離れした敵のことだから、死体を見ない限りは安心できない。
「リンク!!」
そこへ、記憶のかなたで聞いた声が響いた。
「大丈夫!?」
「君……は……。」
そこにいたのは、ゾーラ族の少女。
朧げな記憶だが、確かに知っている相手だった。
全身ボロボロなリンクを見て、涙ながらに回復の術を施す。
リンクは僅かながらの安堵と共に、同じように傷ついた彼女の手当てを受け入れた。
それが、自分達の戦いの厄災になった相手と知らずに。
【四条貴音@THE IDOLM@STER 死亡確認】
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER 死亡確認】
【ソニック・ザ・ヘッジホッグ@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL 死亡確認】
【ヨルハ二号B型@Nier Automata 死亡確認】
【リザードン@ポケットモンスターポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー 死亡確認】
【残り42名】
【D-2 山岳地帯/一日目 昼】
【リンク@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(特大)胸上に浅い裂傷、両脚に怪我、軽い火傷、失意
[装備]:民主刀@METAL GEAR SOLID 2、デルカダールの盾@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて ブーメラン状の木の枝@現実
[道具]:基本支給品(残り食料5/6)、ナベのフタ@現実 残ったアオキノコ×2、ソニックのランダム支給品(0〜1個)双剣オオナズチ(長剣)@MONSTER HUNTER X、貴音のデイパック
[思考・状況] :ゼルダはどうしているだろう?
基本行動方針:守るために戦う。
1.それでも生きる
2.カイムの生死を確認したい
※厄災ガノンの討伐に向かう直前からの参戦です。
※ニーアオートマタ、アイマスの世界の情報を得ました。
※美津雄の調合所セット(入門編)から薬に関する知識を得ました。
【ミファー@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:ダメージ(中) 右肩に銃創 体にいくつかの切り傷
[装備]: 鬼炎のドス@龍が如く極
[道具]:基本支給品、マカロフ(残弾2)@現実 ランダム支給品(確認済み、0~2個)
[思考・状況]
基本行動方針:リンクを優勝させる
1.不意打ちで参加者を殺して回る。
2. 今はリンクを回復させる
※百年前、厄災ガノンが復活した直後からの参戦です。
※治癒能力に制限が掛かっており普段よりも回復が遅いです。
【???/一日目 昼】
【カイム@ドラッグ・オン・ドラグーン】
[状態]:ダメージ(少なくとも特大)、魔力:ほぼ0、気絶、全身に裂傷
[装備]:正宗@FINAL FANTASY Ⅶ
[道具]:基本支給品 エアリスの基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、マナを殺す。
1.目の前の敵を殺す。
2.自分よりも弱い存在を狙い、殲滅する……つもりだったが?
3.雷を操る者(ウルボザ)のような強者に注意する。
4.子供は殺したくない。
※生死は不明です。
※D-2の半径1マス以内のどこかにいます。
※フリアエがマナに心の中を暴かれ、自殺した直後からの参戦です。
※契約により声を失っています。
※正宗に自分の魔力を纏わせることで、魔法「コメテオ」が使用できます。
※ヨルハ2号B型の支給品、双剣オオナズチ(短剣)は焼失および破壊されました。
※萩原雪歩、四条貴音の遺体の傍に、萩原雪歩の支給品、ナイフ型消音拳銃(弾0)があります。
最終更新:2024年11月18日 12:08