無明、黎明

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概略:

 シナリオ『事案記録ח20191206』エンディングフェイズのマスターシーンより。

登場人物:




 「……以上が、先日のN.O.U.N.第一期実戦配備型の性能評価試験のフィードバックだ」

 数日後、市内のどこか。あるいはどこでもない場所。薄暗い会議室のような空間で顔を合わせた『シオンの子』らの中で、例のごとく自信ありげな表情を眼鏡の奥に見せた禎太が言った。

 「外郭部隊に1セクションを配置して実戦起動から35分で全損か。コストの割には保った方だろうな」

 『シオンの子』の一人が手元のデータに目を落としながら相槌を打った。

 「実戦での有効性はこれで証明できたはずだ。兄さん、配備数を増やすようにしてもらえないかな?」
 「……好きにするといいさ」

 部屋の最奥で沈黙を守っていた彼らの長兄――“原初たる悠久”木更城阿玲歩が静かにそう告げた。

 「そういえば、既存部隊の反応はどうだった?」

 また別の『シオンの子』が禎太に聞いた。

 「ああ、今回は特に問題は無かったようだ」
 「やはりこの点は戦闘員の個体差ということか」
 「解せねえな」

 また別の一人が呆れた様子を隠しもせず口を開いた。

 「所詮死んじまえばタンパク質の塊に過ぎねえってのに何を気にしてんだかね。手前の代わりに死んでくれる生贄なんだから有難くもらっときゃいいのにな。全く人間って難儀なもんだ」
 「亜舞、口が過ぎるわよ」

 諫める声にはいはい、と手をひらひらさせて亜舞と呼ばれた『子』は応えた。

 「それにしても、今回の一件でUGNは動くかな?」
 「動くでしょう。そうでなかったら困るもの。骨折り損も良いとこよ」
 「アレをわざわざ野に放ったそのリスクを負っただけの成果を期待するとしよう。ねえ、兄さん」

 口々に言葉を交わす弟妹たちに尋ねられ、阿玲歩はゆっくり口を開いた。

 「獲物は必ず餌に掛かるさ。アレは世界を大きく変える可能性を秘めている。父さんの理想、そしてこの世界を永らえる為の唯一の可能性をね。その為には彼らの力を借りなければね……」

 不敵な笑みを口元に浮かべ、最後にこう続けた。

 「始めようか。『アイン・ソフ・オウル』の第一歩を――」
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