誰もが社会の教科書で見たことある光景が広がっていた
上空から見る事ができるならば、それは囲碁盤の如く綺麗に並べられた都市――平安京
そして人々が今いる場所は、平安宮――大内裏。かつて政権が武士ではなく天皇にあった時代の、その宮城の内。朱雀門の内、応天門の前
空はまるで血染めの如く染まっている。月は紅く、眼下の来訪者を嘲笑うがごとく輝いている。禍々しき朱の輝きが、1200年の歴史を紡いできた古都を妖しく映し出す
そして、何よりも―――紅き空を劈きそびえ立つ何かが、内裏に位置する場所を見下ろすが如く、それはあった
歯車――幾重にも重なった歯車で出来た巨大な塔。まるで空想を紡がんと神を撃ち落とし、世界を侵食(おか)さんと育つ樹木の如く。塔の周りには同じく重なり合った歯車のオブジェクト、浮遊する大地
空の禍々しさとは裏腹に、黄昏色に輝く歯車の塔は、余りにも神秘的で、美しくも思える
回る、周る、廻る、マワル――歯車は沈黙すること無く、淡々と、ゆっくりと、回り続ける。時計の如く、ゆっくりと
回る、周る、廻る、マワル――歯車は沈黙すること無く、淡々と、ゆっくりと、回り続ける。時計の如く、ゆっくりと
「――大体の状況は理解してもらえたようじゃな」
歯車の方から声がした。皆が声をした方へと視線を向けると、歯車の塔より『飛んできた』少女が一人。まるで天使のようにも、悪魔のようにも思える少女。眼鏡越しに映る赤い瞳は、何かを見極めるが如くこちらへの方へと近づき、地面に降り立つ
「……自己紹介は、まあいいじゃろ。簡単な説明だけしておくなら……お主らは今から殺し合いをしてもらう為にここに呼び出させてもらった」
少女の言葉に、場がどよめき出す。殺し合い? 突然平安京に呼ばれた挙げ句、わけのわからない状況で殺し合いをしろなどという、余りにも受け入れがたい言葉
「ルールは至極簡単。人間の推定時間で3日間以内に一人になるまで殺し合ってもらう。最後の一人はその功績として『どんな願いでも一つだけ何でも叶えられる』権利を与え、元の世界に返してやろう」
少女は人々の動揺に見向きもせず、淡々と説明する。優勝の果てに授けられるのは『どんな願いでも一つだけ何でも叶えられる』権利。余りにも魅力的であり、余りにも残酷
人々の周りでさらなる動揺が走る。拒絶するもの、心揺れ動くもの、そして今にも殺し合いに乗ることを決意するもの
人々の周りでさらなる動揺が走る。拒絶するもの、心揺れ動くもの、そして今にも殺し合いに乗ることを決意するもの
「それとじゃ。お主ら、首元に首輪が填められているはずじゃから、ちゃんと確認しておいたがほうがいい」
少女の言葉に人々は各々に首元を確認する。人によっては隣人に確認しあって貰っている。少女の言葉通り、首には紋章らしき物が刻まれた黒い、それこそ少女の言っていた『首輪』が填められていた
「それはお主らがわしらに歯向かうような真似が出来ぬように刻ませてもらった首輪じゃ。あまりにも強すぎる力を持つ者へのセーフティロックの役割も兼ねておる。圧倒的な蹂躙も見てる分には楽しいのじゃが、余りに続きすぎると興が削ぎれるからのう。――そして、もし歯向かったようならば……」
少女が何かを言い掛けようとした時、歯車の塔より同じくしてもう一人の少女の姿が見える。先の少女の対象とも言わんばかりの外見。右手には目と口と両手両足をガムテープのようなもので縛られた少女、そして左手には……バチバチと火花を飛び散らせている、女の生首を携えて
今のやり取りを見る限り、ルールを説明していた少女の名はメフィス、そしてもう片方はフェレスという名前らしい。フェレスは片手の生首を向こう側へ放り投げ、もう片手に掴んだ少女をメフィスの前に置く
生首が悲しそうな目で少女の方を見つめ、何かを喋っていたような気がするが、それは聞こえることなく露と消える
生首が悲しそうな目で少女の方を見つめ、何かを喋っていたような気がするが、それは聞こえることなく露と消える
「―――ッ!! ―――ッ!!」
「まだ諦めぬその心意気だけは褒めてやらんでもないな。じゃが、お主の旅はもう終わりじゃ」
「まだ諦めぬその心意気だけは褒めてやらんでもないな。じゃが、お主の旅はもう終わりじゃ」
ガムテープ越しに自分を睨んでいるであろう少女の顔を得意げに見下しながら、メフィスは淡々と言葉を告げる。そして、人々の前に顔を向け、改めて笑みを浮かべ
「……さてと。では改めて、わしらに歯向かったのならばどうなるか、この小娘の命を以って教えてやるとしようか」
メフィスが、少女の首筋に触れる。触れた途端、少女の首にも填められていたであろう首輪に刻まれた紋章が紅く輝く
メフィスとフェレスは少女から離れてゆく。首輪の紋章は輝いてゆく。少女は目を隠されているが故にその輝きは見えない
輝きが増す事に、少女は苦しみ始める。だが両手両足を縛られた少女はただ悶えることしか出来ず、宛ら苦しむナメクジの如く
メフィスとフェレスは少女から離れてゆく。首輪の紋章は輝いてゆく。少女は目を隠されているが故にその輝きは見えない
輝きが増す事に、少女は苦しみ始める。だが両手両足を縛られた少女はただ悶えることしか出来ず、宛ら苦しむナメクジの如く
「あははははっ! 無様、無様だねぇ!」
フェレスはそんな少女の醜態を嘲笑す。メフィスの方はまるで養豚場の豚を見るような目で少女を見つめ、少しばかり吹き出しそうにほくそ笑む。そして―――
光が収まり、少女の首は爆散し、血飛沫を撒き散らした
残ったのは、首の無くなった少女の死体のみ
残ったのは、首の無くなった少女の死体のみ
その光景に、人々の一部は騒ぎ出す。恐怖で逃げ惑うとする者もいる。だがそれに意を介さずメフィスは言葉を続ける
「……よーくわかったじゃろう? お主たちはもうここから逃れる術なぞ存在しない。殺し合い、生き残ることでしか、のう?」
メフィスの視線が恐ろしく冷たく、人々の方を見据える
「最後じゃ、他のルールはデイバッグに入っておる説明書の中に載っておる。ここで説明しなかったルールも載っておるから、忘れずに見返すようにな」
その言葉を最後に、人々が霧に包まれる。人々の中にはメフィスとフェレスを睨みつける視線も見えたが、それも朝露の如く消え去ってゆく
「さぁ、楽しい楽しい殺し合い、みんなみんな殺し合う。あははははっ」
「では始めようかのう……天国でも地獄でもない場所での、生き残りを賭けたゲームを」
「では始めようかのう……天国でも地獄でもない場所での、生き残りを賭けたゲームを」
二人の悪魔の言葉を最後に―――これてゲームの開催は告げられた
○ ○ ○
「さぁさぁご覧頂くは、歪んだ世界の混沌無形の物語」
歪められた平安の都にて繰り広げられるは、血風荒ぶ凄絶無残の殺し合い
歯車の塔の頂上、混沌紅月の玉座に座して嗤うは、悪意より生まれ落ちし妖術師
「前座と称し邪魔者を始末できたのは中々に僥倖。たとえ抑止の徒が来ようとも敵う道理は非ず」
ソラを見よ、血染めの月が、世界を侵食(おか)す。空想の根は落ちた、ここに混沌は生まれ落ちる
「これより、この黄幡神・蘆屋道満が改めて告げましょう。―――全ては、この身が大いなる神になり得る為の序章の開幕を!!!」
―――さぁ物語を、始めよう
【加藤段蔵@Fate/Grand Order 死亡】
【藤丸立香(ぐだ子)@Fate/Grand Order 死亡】
【藤丸立香(ぐだ子)@Fate/Grand Order 死亡】
『主催』
【メフィス@CRYSTAR -クライスタ-】
【フェレス@CRYSTAR -クライスタ-】
【蘆屋道満@Fate/Grand Order】
【メフィス@CRYSTAR -クライスタ-】
【フェレス@CRYSTAR -クライスタ-】
【蘆屋道満@Fate/Grand Order】