(おのれ……ディメーン!!ワタシだけならまだしも、伯爵さままで巻き込むとは……!!)
眼鏡の奥から怒りの光を滾らせ、ナスタシアはかつての同胞への憎しみを露わにする。
どうして死んだはずのミスターLが参戦したのか分からなかったが、その死亡報告はディメーンによるものだったので、ウソを掴まされたのだと今になって実感した。
元々、彼は自分やノワール伯爵にも隠し事をしているかのような言動を見られた。
だが、その果てにこのようなことをするとは。
すぐにでも伯爵と合流し、裏切り者を粛清して脱出せねばと意気込み走り出す。
どうして死んだはずのミスターLが参戦したのか分からなかったが、その死亡報告はディメーンによるものだったので、ウソを掴まされたのだと今になって実感した。
元々、彼は自分やノワール伯爵にも隠し事をしているかのような言動を見られた。
だが、その果てにこのようなことをするとは。
すぐにでも伯爵と合流し、裏切り者を粛清して脱出せねばと意気込み走り出す。
そこへ、何度か爆発音が聞こえてきた。
何があったのかとその場所へ向かう。
もしかすると操ることが出来る相手がいるのではないかと言う期待を胸に。
何があったのかとその場所へ向かう。
もしかすると操ることが出来る相手がいるのではないかと言う期待を胸に。
しかし、古都の道を何度か曲がったナスタシアの目に入ったのは、衝撃的な光景だった。
☆
「あの方はいないのか……しかしこれは一体どういうことだ?」
誰が参戦させられていても、自分の目的が変わることは無い。
それは間違いないが、名簿を見て、さしもの童磨も首を傾げざるを得なかった。
確かに凡そ人名を成してないような名前がそこかしこに見られたが、特に気になったのは自分の上にあった名前。
誰が参戦させられていても、自分の目的が変わることは無い。
それは間違いないが、名簿を見て、さしもの童磨も首を傾げざるを得なかった。
確かに凡そ人名を成してないような名前がそこかしこに見られたが、特に気になったのは自分の上にあった名前。
(これ……あの累君のことだよなあ?)
思い出したのは、かつて鬼殺隊の柱に殺された同じ十二鬼月のこと。
童磨は上弦の弐なのに対し、彼は下から数えた方が早い下弦の伍だったが、家族を作るという自身からしてみれば極めて奇妙なことをしていたので、記憶に残っていた。
思い出したのは、かつて鬼殺隊の柱に殺された同じ十二鬼月のこと。
童磨は上弦の弐なのに対し、彼は下から数えた方が早い下弦の伍だったが、家族を作るという自身からしてみれば極めて奇妙なことをしていたので、記憶に残っていた。
累の父というのは、その過程で累が無理矢理家族にした鬼のことだと察しはついた。
(だとすると、奴らは鬼を生き返らせる能力もあるのか……。)
死んだ鬼を生き返らせるなど、主である鬼舞辻無惨でさえ不可能な芸当だ。
一体どのような手品を使えばそんなことが出来るのが分からないし、そもそもどうして他の十二鬼月ではなく、そのような者を生き返らせたのか分からないが、未知の技術がこの世界には張り巡らされていることは理解した。
死んだ鬼を生き返らせるなど、主である鬼舞辻無惨でさえ不可能な芸当だ。
一体どのような手品を使えばそんなことが出来るのが分からないし、そもそもどうして他の十二鬼月ではなく、そのような者を生き返らせたのか分からないが、未知の技術がこの世界には張り巡らされていることは理解した。
その上にいた『沼の鬼』というのも、自分と同じ鬼にしてもらった誰かなのかもしれないが、考えても仕方がないと判断し、自分の役目を全うするべきと歩き始めた。
☆
ナスタシアとしても予想の範疇に無かった光景が飛び込んできた。
「ドドンタス……!?」
かつて同じノワール伯爵の部下として仕えてきた者が、死んでいた。
体力だけは誰よりもあった彼がこんなことになっているのは俄かに信じがたく、動かなくなった彼を揺さぶる。
残念ながら反応は無く、そして腹部に大量の穴が空いていたことで、もう手遅れだということが嫌でも伝わる。
かつて同じノワール伯爵の部下として仕えてきた者が、死んでいた。
体力だけは誰よりもあった彼がこんなことになっているのは俄かに信じがたく、動かなくなった彼を揺さぶる。
残念ながら反応は無く、そして腹部に大量の穴が空いていたことで、もう手遅れだということが嫌でも伝わる。
「こんな所で何をしているのですか!立ちなさい!!立って伯爵サマのために戦うのです!!」
無理だと半ば理解しながらも、いつものように叱咤の声をかける。
だがいつもとは違い、返事は無かった。
無理だと半ば理解しながらも、いつものように叱咤の声をかける。
だがいつもとは違い、返事は無かった。
(そんな……)
彼女としてはドドンタスの死が悲しいわけではない。
ただ、頭脳はさておき、戦いの経験・実力共に申し分ない彼がこんなにも早く死んでいた事実に驚いただけだ。
制限を課せられたとはいえ催眠術を払われたことといい、この世界の参加者の底の知れなさを改めて感じる。
しかし彼女はすぐに気持ちを切り替え、ミドリのヒゲ男を催眠術で操った時の様に、伯爵ズの穴を埋める者の勧誘も念頭に置く。
ただ、頭脳はさておき、戦いの経験・実力共に申し分ない彼がこんなにも早く死んでいた事実に驚いただけだ。
制限を課せられたとはいえ催眠術を払われたことといい、この世界の参加者の底の知れなさを改めて感じる。
しかし彼女はすぐに気持ちを切り替え、ミドリのヒゲ男を催眠術で操った時の様に、伯爵ズの穴を埋める者の勧誘も念頭に置く。
「その人、君の仲間だったのかい?」
声をかけられて振り向くと、得体のしれない男が立っていた。
姿こそ多少派手と言うぐらいで、別段異様という訳ではない。
強いて奇妙な点を挙げるとするなら瞳の色が極彩色だというぐらいだ。
姿こそ多少派手と言うぐらいで、別段異様という訳ではない。
強いて奇妙な点を挙げるとするなら瞳の色が極彩色だというぐらいだ。
だがおかしいのは表情。
心配しているかのような口調で語りかけているのに、このような緊迫した状況なのに、にこやかな表情を浮かべて話しかけて来る。
さしものナスタシアも、違和感を覚えた。
心配しているかのような口調で語りかけているのに、このような緊迫した状況なのに、にこやかな表情を浮かべて話しかけて来る。
さしものナスタシアも、違和感を覚えた。
「やあやあ初めまして。俺の名は童磨。いい月夜だねえ。」
「ドドンタスを殺したのはアナタですか?」
挨拶も他所に、単刀直入に聞きたいことを尋ねる。
「ドドンタスを殺したのはアナタですか?」
挨拶も他所に、単刀直入に聞きたいことを尋ねる。
「ヤダなあ。いくら死体の近くにいたからと言って、疑われるのは心外だよ。そもそも俺がここへ来たのは今さっきのことだしね。
いくら友達が死んで動揺しているからって、他人を疑うのは良くないと思うよ。」
いくら友達が死んで動揺しているからって、他人を疑うのは良くないと思うよ。」
軽薄そうにペラペラと一般論を語る男の意図がつかめず、警戒するナスタシア。
「アナタは何を言いたいのですか?」
「別に大したことじゃないよ。ただ、君みたいな可愛い子が憂いているのが見てられなくてね。万世極楽教の教祖として、是非かわいそうな君を救ってあげないと………」
「別に大したことじゃないよ。ただ、君みたいな可愛い子が憂いているのが見てられなくてね。万世極楽教の教祖として、是非かわいそうな君を救ってあげないと………」
ナスタシアの眼孔が瞬き、灼色の光線が童磨を包み込む。
「うわ!何だこの感じ!!胸の中がもやもや〜ってして、何だか作り変えられていくみたい!!」
童磨は頭を抑えながらも、どこか楽しそうな表情でサイミン光線を受ける。
童磨は頭を抑えながらも、どこか楽しそうな表情でサイミン光線を受ける。
「その顔で二度と口を開かないでください。」
不快感を露わにするナスタシアは、光線を更に強める。
不快感を露わにするナスタシアは、光線を更に強める。
ナスタシアにとって、童磨はかつてないほど不快な存在だった。
自分を救うことが出来る相手も、自分が忠誠を誓う相手も、伯爵のみ。
だというのにこの男は平然と個人の領域に土足で踏み込み、救うだの何だのもっともらしいことをあれこれと語りだす。
こんないても鳥肌が立つだけの相手は、操り人形にしてしまうべきだと思い、更に力を強める。
自分を救うことが出来る相手も、自分が忠誠を誓う相手も、伯爵のみ。
だというのにこの男は平然と個人の領域に土足で踏み込み、救うだの何だのもっともらしいことをあれこれと語りだす。
こんないても鳥肌が立つだけの相手は、操り人形にしてしまうべきだと思い、更に力を強める。
「一つ教えてあげましょう。ワタシを救うなどと、伯爵さま以外は出来ないことです。
もし本当に救いたいと思うなら、ワタシの僕となって、伯爵さまにお仕えなさい。」
もし本当に救いたいと思うなら、ワタシの僕となって、伯爵さまにお仕えなさい。」
「凄いなあ……それが君の想いってやつ?でも誰かに付き従うことでしか自分を示せないなんて、実に哀れだねえ。」
「―――――――ッ!!!」
「―――――――ッ!!!」
常に冷静に部下に指示を出す彼女らしくもなく、文字で表せない怒りの言葉を叫び、サイミンジュツを浴びせ続ける。
(消えろ!!消えろ!!消えろ!!)
こいつの不愉快極まりない笑顔と言葉を消し、不浄の魂が消えつくされるまで、心を引っ掻き回す。
既にナスタシアの怒りは頂点に達していた。
既にナスタシアの怒りは頂点に達していた。
自分の力を受けてこれほど長く自我を保っている相手を見たことは無かった。
だが、今度は相手の意思が一片も残らず消え去るまで、この能力を浴びせ続ける。
だが、今度は相手の意思が一片も残らず消え去るまで、この能力を浴びせ続ける。
しかし、童磨は体の動きを制限されながらも、扇を持つ片手を動かす。
――血鬼術 蓮葉氷
(!?)
パキパキ、と空気が凍る音が響き、童磨の腕を振ったベクトルに合わせて氷が生まれる。
距離は離れていたため、その技による被害を受けることは無い。だが、氷は低温と鋭さで相手を傷つける武器以外にも用途がある。
パキパキ、と空気が凍る音が響き、童磨の腕を振ったベクトルに合わせて氷が生まれる。
距離は離れていたため、その技による被害を受けることは無い。だが、氷は低温と鋭さで相手を傷つける武器以外にも用途がある。
「なっ!?」
光線を跳ね返されるという未知の経験に驚くナスタシア。
宝石のようにキラキラ輝く氷は、光を跳ね返す鏡の盾になる。
催眠術なので跳ね返されて自分に当たっても被害はない。
だが、一番の武器がこのようにして無効化されてしまったことは、極めて深刻な問題だ。
光線を跳ね返されるという未知の経験に驚くナスタシア。
宝石のようにキラキラ輝く氷は、光を跳ね返す鏡の盾になる。
催眠術なので跳ね返されて自分に当たっても被害はない。
だが、一番の武器がこのようにして無効化されてしまったことは、極めて深刻な問題だ。
「あれぇ?君の技、跳ね返しちゃった。ごめんね?」
ニィィィィと笑みを浮かべ、何事もなかったかのようなアピールをする。
ニィィィィと笑みを浮かべ、何事もなかったかのようなアピールをする。
「でも目から光線を出して心を乱そうとするなんて、面白い技だなあ。
とりあえずその両目、潰しておくか。」
――血鬼術 凍て曇
とりあえずその両目、潰しておくか。」
――血鬼術 凍て曇
扇から霧状の氷を散布される。
自分の攻撃のタネがバレてしまったのもあって、明らかにその出所を狙ってきている。
ならば、とナスタシアは妖弦フェイルノートに指をかけ、風を飛ばして凍てつく霧を吹き飛ばす。
自分の攻撃のタネがバレてしまったのもあって、明らかにその出所を狙ってきている。
ならば、とナスタシアは妖弦フェイルノートに指をかけ、風を飛ばして凍てつく霧を吹き飛ばす。
「面白い武器だなあ、楽器みたいだ。」
危機は脱した、と思いきや、いつの間にか武器が無くなっていた。
危機は脱した、と思いきや、いつの間にか武器が無くなっていた。
「なるほど、ここを弾くことで、風を出すのか。」
玩具を手にした子供のようにナスタシアの武器を擦ったり、回したりしている。
いつの間にか武器を取ったタネは単純にして明快。
鬼特有の常人離れした運動能力から繰り出される超スピードで、一瞬のうちに武器を奪い去ったのだ。
玩具を手にした子供のようにナスタシアの武器を擦ったり、回したりしている。
いつの間にか武器を取ったタネは単純にして明快。
鬼特有の常人離れした運動能力から繰り出される超スピードで、一瞬のうちに武器を奪い去ったのだ。
「ほら、ここに置いておくから取りに来て。」
ご丁寧に地面に置いてから、再び扇を構えて挑発する。
催眠術が効果的じゃないと分かった以上、罠だと分かっていてもそれを取りに行くしかなかった。
ご丁寧に地面に置いてから、再び扇を構えて挑発する。
催眠術が効果的じゃないと分かった以上、罠だと分かっていてもそれを取りに行くしかなかった。
――血鬼術 冬ざれ氷柱
妖弦フェイルノートを囲むかのように、空から氷柱が降り注ぐ。
「くっ……」
致命傷は負わなかったが、何本かはナスタシアに刺さった。
「くっ……」
致命傷は負わなかったが、何本かはナスタシアに刺さった。
「次行くよー。」
何気ない口調で、殺傷力の極めて高い技が出て来る。
何気ない口調で、殺傷力の極めて高い技が出て来る。
――血鬼術 寒烈の白姫
二つの氷の蓮華が空間に咲き始め、満開になると二人の乙女の頭部が現れる。
赤い月を背にした白銀の乙女は、見惚れてしまうほどの美しさだが、並の相手なら瞬時に凍死させてしまう恐ろしい技だ。
乙女らがフウと息を吹き、辺りを超低温にさせる。
二つの氷の蓮華が空間に咲き始め、満開になると二人の乙女の頭部が現れる。
赤い月を背にした白銀の乙女は、見惚れてしまうほどの美しさだが、並の相手なら瞬時に凍死させてしまう恐ろしい技だ。
乙女らがフウと息を吹き、辺りを超低温にさせる。
(脚が……!?)
今まではどうにか逃げてきたが、ついに下半身が氷に拘束され、動けなくなる。
今まではどうにか逃げてきたが、ついに下半身が氷に拘束され、動けなくなる。
「武器からどんどん遠ざかっていくねえ。というか、もう歩けないか。」
童磨はゆっくりと近づき、金の扇を振りかざし、とどめに首を刎ねようとする。
童磨はゆっくりと近づき、金の扇を振りかざし、とどめに首を刎ねようとする。
☆☆☆
(ボスやみんなは……いないのか。)
ディメーンからの放送を聞き、受け取った名簿を見た桐生が覚えたのは、安堵だった。
もう一度名簿を読み返す。
どこか目を止めたくなるような独特な名前はあるが、知っている名前はない。
ディメーンからの放送を聞き、受け取った名簿を見た桐生が覚えたのは、安堵だった。
もう一度名簿を読み返す。
どこか目を止めたくなるような独特な名前はあるが、知っている名前はない。
彼の尊敬する真央なら、自分にこの殺し合いを止めるように提言するはずだ。
だが、彼女や他の幹部がいない以上は、他者の心配などをせずにやりたいようにやることが出来る。
だが、彼女や他の幹部がいない以上は、他者の心配などをせずにやりたいようにやることが出来る。
そう思っていた所で、火薬の爆ぜる音が聞こえた。
彼にとっては懐かしい音だった。
400年以上前に、人間との戦いで嫌と言うほど聞いた、乾いた破裂音。
彼にとっては懐かしい音だった。
400年以上前に、人間との戦いで嫌と言うほど聞いた、乾いた破裂音。
少し離れてはいるが、人間がいるのかと意気揚々と音の場所へ向かう。
その場所にあったのは、氷を使う男と青い肌に眼鏡の女。
明らかに男の方が有利なのと、人間の姿をしていることから、目標を男の方に定めた。
明らかに男の方が有利なのと、人間の姿をしていることから、目標を男の方に定めた。
颯爽と戦場へと駆け、桐生の義手と童磨の鋭い扇がぶつかり、金属の高音を奏でる。
桐生の全身に、長らく味わったことのなかった強い反動が走った。
それだけで、目の前の男は相当な力を持っていることが十二分に伝わった。
桐生の全身に、長らく味わったことのなかった強い反動が走った。
それだけで、目の前の男は相当な力を持っていることが十二分に伝わった。
「アナタは……」
危機を救われたナスタシアは、声をかけようとするが、全てを話しきる前に地面の氷を砕く。
危機を救われたナスタシアは、声をかけようとするが、全てを話しきる前に地面の氷を砕く。
「どこかへ行け。俺はこの男と戦いたい。」
青い肌をしたナスタシアを異形だと判断した桐生は、片手間に逃げるように言う。
それと共に去るナスタシア。
青い肌をしたナスタシアを異形だと判断した桐生は、片手間に逃げるように言う。
それと共に去るナスタシア。
「わあ、凄い力だね。君は鬼狩りかい?それにしては鬼のような姿をしているけど……。」
強い力同士で拮抗しながらも、童磨はにこやかな笑みを絶やさず桐生に語り掛ける。
強い力同士で拮抗しながらも、童磨はにこやかな笑みを絶やさず桐生に語り掛ける。
「そんなことを話す必要はないだろう。」
余裕か、はったりか、それとも罠か。
戦場に似つかわしくない表情で語り掛ける男を、桐生は警戒する。
余裕か、はったりか、それとも罠か。
戦場に似つかわしくない表情で語り掛ける男を、桐生は警戒する。
――血鬼術 蓮葉氷
まだ片方の腕が自由な童磨は、その手で氷を操る。
ナスタシアの時と異なり、防御ではなく攻撃のための技だ。
まだ片方の腕が自由な童磨は、その手で氷を操る。
ナスタシアの時と異なり、防御ではなく攻撃のための技だ。
すぐさま後方に飛び退くかと思いきや、思いっきり姿勢を低くし、童磨の腹を思いっ切り自由な片腕で打つ。
勢いよく飛んでいく鬼。
勢いよく飛んでいく鬼。
「ん?これはどういうことかな?」
立ち上がるも、童磨の腹には大きな穴が空いていた。
殴打の力が強すぎるからではない。
食らった部分がドロリと溶けるという、明らかにそれとは別の空き方をしている。
立ち上がるも、童磨の腹には大きな穴が空いていた。
殴打の力が強すぎるからではない。
食らった部分がドロリと溶けるという、明らかにそれとは別の空き方をしている。
異能である桐生が持つ、「酸」の力だ。
拳で直に触れたことにより、その力は鬼の肌にまで存分に伝わった。
拳で直に触れたことにより、その力は鬼の肌にまで存分に伝わった。
「あまり戦いに余計な口を挟むな。」
「あ、もしかして戦いにばかりかまけて言葉の交流を忘れちゃった人?いるんだよねえ。俺の親友みたいに戦っても勝ち目ないのに、戦いでしか自分を示せないからって無暗に喧嘩を売る奴等。」
「………。」
「あ、もしかして戦いにばかりかまけて言葉の交流を忘れちゃった人?いるんだよねえ。俺の親友みたいに戦っても勝ち目ないのに、戦いでしか自分を示せないからって無暗に喧嘩を売る奴等。」
「………。」
人間のような外見だが、人間離れした腕力に異形と大差ない能力。
いよいよ目の前の男の正体が分からなくなってきたが、例え異形だとしてもあまり一緒にいたい相手ではない。
それに久々に経験した互角の戦いを、中途半端に切り上げるのは忍びないので、戦いを続けることにした。
いよいよ目の前の男の正体が分からなくなってきたが、例え異形だとしてもあまり一緒にいたい相手ではない。
それに久々に経験した互角の戦いを、中途半端に切り上げるのは忍びないので、戦いを続けることにした。
「その不愉快な言葉を、お前の舌ごと溶かしてやろう。」
義手ではない左手から発せられるのは、強酸の霧。
義手ではない左手から発せられるのは、強酸の霧。
「うわ〜、凄いな、全身が溶けて行くよ。こんな経験初めてだ。」
整った顔がおかしな形になりながらも、童磨は口調を崩さない。
整った顔がおかしな形になりながらも、童磨は口調を崩さない。
――血鬼術 寒烈の白姫
またも現れる二対一組の乙女の息吹が、酸の霧を吹き飛ばす。
ただそれが守りの為ではなく、攻撃の為にも使ったことはすぐに分かった。
またも現れる二対一組の乙女の息吹が、酸の霧を吹き飛ばす。
ただそれが守りの為ではなく、攻撃の為にも使ったことはすぐに分かった。
地面が白銀の膜に覆われ、凍り付くのを見ると、すぐに範囲の外まで退く。
続いて桐生は左手を高く掲げる。
続いて桐生は左手を高く掲げる。
童磨の頭上から、大雨が降り注ぐ。
――血鬼術 凍て曇
先程の霧と同じで、ただの水ではないと即座に判断した童磨は、すぐに辺りに絶対零度の霧を振り撒く。
酸性雨は童磨の体に染み込み溶かすことなく、凍り付いた。
先程の霧と同じで、ただの水ではないと即座に判断した童磨は、すぐに辺りに絶対零度の霧を振り撒く。
酸性雨は童磨の体に染み込み溶かすことなく、凍り付いた。
「なるほど、その手が何かの力になってるのかな?」
――血鬼術 蔓蓮華
今度は長い蔓を持った氷の花を飛ばす。
機械の腕を振り回し、厄介な花を1つ残らず砕く桐生。
今度は長い蔓を持った氷の花を飛ばす。
機械の腕を振り回し、厄介な花を1つ残らず砕く桐生。
そしてしばらくその場から動いてなかった童磨が、地面を蹴って走りだす。
予想外なまでの速さに、桐生は一瞬反応が遅れる。
しかし、強者同士の戦いは、その一瞬が命取りとなる。
予想外なまでの速さに、桐生は一瞬反応が遅れる。
しかし、強者同士の戦いは、その一瞬が命取りとなる。
「まずはその手、切り落としておくか。」
鋭利な扇は、迷うことなく桐生の生身の左腕へと走る。
その一撃は、僅かな裂傷を与えるだけに終わった。
鋭利な扇は、迷うことなく桐生の生身の左腕へと走る。
その一撃は、僅かな裂傷を与えるだけに終わった。
桐生の腕の強度は人間のそれを上回っているだけが理由ではない。
「もしかして、俺の肌だけじゃなくて、武器もボロボロにすることが出来るのかな?」
「そっちの腕まで落とされちゃ叶わないからな」
「そっちの腕まで落とされちゃ叶わないからな」
酸性の霧や雨は、鬼のみではなく、その武器の鋭さも落としていたのだ。
すかさず全身をコマのように回転させ、がら空きになった敵の足元を払う。
バランスを崩して隙が出来た童磨の顔面を、マークが外れていた機械の腕で思いっ切り打ち抜く。
派手に裏拳がヒットし、吹き飛んだ鬼の、さっきまで顔があった場所には大きな空洞が出来ている。
すかさず全身をコマのように回転させ、がら空きになった敵の足元を払う。
バランスを崩して隙が出来た童磨の顔面を、マークが外れていた機械の腕で思いっ切り打ち抜く。
派手に裏拳がヒットし、吹き飛んだ鬼の、さっきまで顔があった場所には大きな空洞が出来ている。
――血鬼術 散蓮華
しかし顔を失ったまま、鬼は大量のガラスの破片のような氷を纏めて飛ばしてくる。
それに対して桐生は地面を思いっ切り殴りつけ、吹き飛ぶ瓦礫で全てを打ち落とす。
それに対して桐生は地面を思いっ切り殴りつけ、吹き飛ぶ瓦礫で全てを打ち落とす。
楽しい!楽しい!!楽しい!!!
人間なのか異形なのかもわからない相手との戦いの中で感じたのは、長い間経験していない高揚感。
人間なのか異形なのかもわからない相手との戦いの中で感じたのは、長い間経験していない高揚感。
憎しみの中で戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して勝利して
最後に経験したのは数百年も前だが、それでもこれがあの時感じた喜びだと分かる。
数百年も生きてなお、分からないことが多かったが、これがずっと求めていた感情だということは分かる。
数百年も生きてなお、分からないことが多かったが、これがずっと求めていた感情だということは分かる。
未知の敵と戦える嬉しさのあまり、かつてないほどのアドレナリンが溜まっていた桐生だが、ここでようやく自身の異変に気付いた。
「あー、やっぱり息切れするよね。」
その原因は激しい戦闘によるものでは無い。
かつての桐生ならこれより激しい戦闘を呼吸を乱すことなく切り抜けた。
その原因は激しい戦闘によるものでは無い。
かつての桐生ならこれより激しい戦闘を呼吸を乱すことなく切り抜けた。
「何をした……!!」
血の混じった言葉を吐き、治り始めた敵の顔を睨みつける。
興奮状態で忘れていたが、気が付くと胸を裂かれたような激痛が走る。
血の混じった言葉を吐き、治り始めた敵の顔を睨みつける。
興奮状態で忘れていたが、気が付くと胸を裂かれたような激痛が走る。
「どうやら俺の血鬼術吸ったみたいだからねえ。君にも効くようで安心したよ」
童磨の扇は、攻撃のたびに吸うと肺胞が侵される「粉氷」を散布することが出来る。
最初の時は互いに離れて戦っていたのもあったが、戦いのうちに桐生も吸ってしまっていた。
童磨の扇は、攻撃のたびに吸うと肺胞が侵される「粉氷」を散布することが出来る。
最初の時は互いに離れて戦っていたのもあったが、戦いのうちに桐生も吸ってしまっていた。
だからといって、彼にとって大した問題ではない。
肺の損傷くらいこの敵を倒した後、使い慣れていないとはいえ情報(コード)で治癒できる。
相手はいくら攻撃しても再生するが、ならば再生できなくなるまで徹底的に攻撃すればいい。
肺の損傷くらいこの敵を倒した後、使い慣れていないとはいえ情報(コード)で治癒できる。
相手はいくら攻撃しても再生するが、ならば再生できなくなるまで徹底的に攻撃すればいい。
「ええ?まだやるの?」
その意思が現れた表情を、童磨も呆れ気味な顔で見据える。
だが、まだ攻撃を続けるというなら、童磨もトドメを刺そうとする。
その意思が現れた表情を、童磨も呆れ気味な顔で見据える。
だが、まだ攻撃を続けるというなら、童磨もトドメを刺そうとする。
「うおおおおおおおお!!」
雄たけびを上げ、猛然と突撃する桐生。
雄たけびを上げ、猛然と突撃する桐生。
――血鬼術 霧氷 水連菩薩
2人の間に割って入るかのように、菩薩を模した巨大な氷像が現れる。
桐生を包み込んでしまうほどの手が振り下ろされる。
既に脆くなっていた石畳が、大きく砕かれる。
それに対し、桐生も酸性雨を降らせ、敵の顔をグズグズにする。
桐生を包み込んでしまうほどの手が振り下ろされる。
既に脆くなっていた石畳が、大きく砕かれる。
それに対し、桐生も酸性雨を降らせ、敵の顔をグズグズにする。
これで触れさえすれば、相手を何度でもぐちゃぐちゃに出来る。
死闘に燃える異形と、感情の無い異形。
最低限の動作でその攻撃をかわし、菩薩の吐きかける絶対零度の吐息も、半身が凍る覚悟で突っ切る。
死闘に燃える異形と、感情の無い異形。
最低限の動作でその攻撃をかわし、菩薩の吐きかける絶対零度の吐息も、半身が凍る覚悟で突っ切る。
酸の力を纏った腕で既に幾分か融解していた扇を更に溶かし、機械の手が童磨の首に走る。
「危ない所だったなあ。」
桐生の鉄の拳は、済んでの所で届かなかった。
鬼としての無限の体力から繰り出される反射神経もあることながら、氷菩薩の吐息により、動きが制限されていた。
鬼としての無限の体力から繰り出される反射神経もあることながら、氷菩薩の吐息により、動きが制限されていた。
そして残りの菩薩の拳で、桐生をはるか遠くに殴り飛ばした。
桐生は建物の屋根で一度バウンドし、そのまま童磨が見えない所へ飛んでいく。
「あらら、どこかへ行っちゃったみたいだね。生きてるのかどうかは分からないけど、また会えたら救ってあげなきゃな。」
全快の状態ならすぐにでも追いかけて死にかけで苦しんでいるはずの相手を救おうとするのが童磨だ。
だが、何度も酸の雨や霧を受けたため、溶けた顔や体を修復したい。
こういう時は自分の分身でもある結晶の御子にさせるのだが、どういう訳かこの技だけは出来なかった。
だが、何度も酸の雨や霧を受けたため、溶けた顔や体を修復したい。
こういう時は自分の分身でもある結晶の御子にさせるのだが、どういう訳かこの技だけは出来なかった。
溶けかけた建物を背にし、ゆっくりと回復に専念する。
【B-6 1日目 黎明】
【童磨@鬼滅の刃】
[状態]:全身融解(再生中)再生の多用による疲労(大)
[装備]:鉄扇×2(片方ほぼ融解)@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 妖弦フェイルノート@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:帰るために、力を取り戻すために人を喰らう。
1:次会った時こそ美鈴ちゃん達を喰べてあげる。
2:無惨や他の鬼@鬼滅の刃が参戦していた場合は遭遇してから考える。
3:ナスタシアや桐生のような『かわいそう』な相手を『救う』
[備考]
※参戦時期は無限城編よりも前です。
※主催により上弦の弐としての力が抑えられています。少なくとも「結晶の御子」が使えません。
※無惨の呪いの有無については後続の書き手にお任せします。
[状態]:全身融解(再生中)再生の多用による疲労(大)
[装備]:鉄扇×2(片方ほぼ融解)@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 妖弦フェイルノート@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:帰るために、力を取り戻すために人を喰らう。
1:次会った時こそ美鈴ちゃん達を喰べてあげる。
2:無惨や他の鬼@鬼滅の刃が参戦していた場合は遭遇してから考える。
3:ナスタシアや桐生のような『かわいそう』な相手を『救う』
[備考]
※参戦時期は無限城編よりも前です。
※主催により上弦の弐としての力が抑えられています。少なくとも「結晶の御子」が使えません。
※無惨の呪いの有無については後続の書き手にお任せします。
「アナタは……」
屋根を超えて飛んで来たのは、先程自分を助けた多眼の男だった。
場所は平安京の外れであり、町と山の境目
あの不愉快極まりない男と戦ったからか、全身ボロボロになっており、ひゅうひゅうと呼吸も不安定な状態だ。
幸いなことに、自分は回復道具を支給されている。
屋根を超えて飛んで来たのは、先程自分を助けた多眼の男だった。
場所は平安京の外れであり、町と山の境目
あの不愉快極まりない男と戦ったからか、全身ボロボロになっており、ひゅうひゅうと呼吸も不安定な状態だ。
幸いなことに、自分は回復道具を支給されている。
「祝福の杖」といって振りかざすと自分や見方を回復出来るらしい。
だが、その前にすることは。
だが、その前にすることは。
両目が光り、光線が桐生を包み込む。
「お、お前、何を……。」
口から血を零しながら桐生は抵抗するが、そんな相手にナスタシアは催眠光線を浴びせ続ける。
「お、お前、何を……。」
口から血を零しながら桐生は抵抗するが、そんな相手にナスタシアは催眠光線を浴びせ続ける。
「何もしません。ただアナタを、伯爵さまに仕える新たな僕にするだけです。」
「やめろ……」
この時、ナスタシアは桐生の世界にいた異形という訳ではなく、助けられる対象でさえないのだと気づく。
抵抗するが、既に全身にダメージを受けていた桐生に、逆転の目度はなかった。
桐生にとっての戦いとは、自分の楽しみと復讐のためにあるのであって、誰かのためにするというなら、それはボスのためだ。
決して、伯爵さまとやらに仕えるつもりはない。
この時、ナスタシアは桐生の世界にいた異形という訳ではなく、助けられる対象でさえないのだと気づく。
抵抗するが、既に全身にダメージを受けていた桐生に、逆転の目度はなかった。
桐生にとっての戦いとは、自分の楽しみと復讐のためにあるのであって、誰かのためにするというなら、それはボスのためだ。
決して、伯爵さまとやらに仕えるつもりはない。
「ビ……バ……伯爵!!」
だが、そんな意思はかき消され、攻撃のために振るおうとした手は、忠誠の誓いとしてナスタシアの手を握った。
だが、そんな意思はかき消され、攻撃のために振るおうとした手は、忠誠の誓いとしてナスタシアの手を握った。
「アナタはかしこい判断をしました。まずはアナタの傷を回復してあげましょう。」
杖を何度か振り、桐生の傷は癒えていく。
既に彼の意識はなくなっていた。
これは、平穏の世界から逸脱した者達の物語。
平安の都で戦うことになれど、彼等には「平静」も「安穏」もない。
既に彼の意識はなくなっていた。
これは、平穏の世界から逸脱した者達の物語。
平安の都で戦うことになれど、彼等には「平静」も「安穏」もない。
【B-5 1日目 黎明】
【ナスタシア@スーパーペーパーマリオ】
[状態]:顔にかすり傷、両脚に凍傷(治療中)
[装備]:祝福の杖@ドラゴンクエスト7
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本:早急に伯爵様の元へ帰還する
1:伯爵様と合流する
2:桐生はドドンタスの穴を埋める役割を担ってもらう
3:直接戦闘は必要な敵以外は避ける。
4:童磨はまた会ったら殺す
5:ディメーンは裏切り者として生かしておけない
[備考]
※参戦時期は最低でもステージ7以降
※チョーサイミンジュツに制限が課せられています
『以下チョーサイミンジュツの制約についての説明』
洗脳可能上限は一人まで
絶対に洗脳できるわけではなく、相手の意志力自体では洗脳を解除されるか不完全な洗脳になる
何か道具や技があれば、跳ね返すことが出来る
[状態]:顔にかすり傷、両脚に凍傷(治療中)
[装備]:祝福の杖@ドラゴンクエスト7
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本:早急に伯爵様の元へ帰還する
1:伯爵様と合流する
2:桐生はドドンタスの穴を埋める役割を担ってもらう
3:直接戦闘は必要な敵以外は避ける。
4:童磨はまた会ったら殺す
5:ディメーンは裏切り者として生かしておけない
[備考]
※参戦時期は最低でもステージ7以降
※チョーサイミンジュツに制限が課せられています
『以下チョーサイミンジュツの制約についての説明』
洗脳可能上限は一人まで
絶対に洗脳できるわけではなく、相手の意志力自体では洗脳を解除されるか不完全な洗脳になる
何か道具や技があれば、跳ね返すことが出来る
【桐生@ドキュンサーガ】
[状態]:ダメージ(大)消費(中) 催眠状態
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:強い人間と出会い、戦う
1:ナスタシア、ノワール伯爵に仕える
[備考]
※参戦時期は第九話④から
※ナスタシアによって操られています
[状態]:ダメージ(大)消費(中) 催眠状態
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:強い人間と出会い、戦う
1:ナスタシア、ノワール伯爵に仕える
[備考]
※参戦時期は第九話④から
※ナスタシアによって操られています
| 015:正義の証明 | 投下順 | 017:再起 |
| 赤き夜の支配者(ドミネーター) | 童磨 | 055:英雄の条件(前編) |
| Designed desires | ナスタシア | 033:ホワイトアウト |
| 天外魔京 | 桐生 |