「一旦話を整理するぜ」
しゃくれた顎と跳ねた後ろ髪が特徴的な学ランの青年、木刀政が木の枝で地面に絵を書き始める。
「ここにいる俺とドス六はお前たち三人を知っている。しかしお前たちは俺たちのことを知らない」
「俺たちはいつも三人だ。まともな付き合いがあるのはアニキ達くらいなもんだぜ」
「俺たちはいつも三人だ。まともな付き合いがあるのはアニキ達くらいなもんだぜ」
木の枝で指差されたオランウータンにも似た茶髪の青年、メリケン錠が背後の巨体の青年・カミソリ鉄とチェーンを担いだ青年・チェーン万次郎を親指で差しながら返答する。
「で、オメーらはそもそも俺たちを知らないときた」
「当たり前だ。牧村がお前らみたいなヤンキー共と付き合いある訳ないだろ」
「当たり前だ。牧村がお前らみたいなヤンキー共と付き合いある訳ないだろ」
鍔付きキャップを逆向きに被ったラッパーのような青年・ワムが隣に立つドレッドヘアーの青年・ガビと共に政たちを睨みつけ圧をかける。
その背後で、小柄で目暗な青年・ヒエとテンガロンハットを被った長身の青年・バボが共に鉄パイプを肩に乗せ臨戦態勢を取っている。
その背後で、小柄で目暗な青年・ヒエとテンガロンハットを被った長身の青年・バボが共に鉄パイプを肩に乗せ臨戦態勢を取っている。
「ヘッ。そんなチャチな玩具でこのドス六と木刀政を相手にしようなんざちゃんちゃらおかしいぜ。俺一人でもあっという間にやっつけてやらあ」
「やめろドス六。今は争ってる場合じゃねえ」
「やめろドス六。今は争ってる場合じゃねえ」
そんな四人の威圧などどこ吹く風で、政は隣に立つ強面の青年・ドス六に目配せをして半歩下がらせる。
「そんな俺たちにも共通点がある。『不動明』と『牧村美樹』の二人だ」
「おおよ、あの二人は俺たちの兄貴分とその彼女だ。けど兄貴の方はまだしも牧村はお前らの言った特徴とは全然ちげえよ。あいついつも魔女の帽子被ってるようなオカルトマニアだし」
「俺たちは不動のことは牧村が惚れてる男ってことしか知らねえけどよ、牧村は陸上界の魔女って呼ばれるくらいの超有名人だぜ。あいつが四六時中魔女の帽子を被ってるなんて聞いたこともねえ」
「おおよ、あの二人は俺たちの兄貴分とその彼女だ。けど兄貴の方はまだしも牧村はお前らの言った特徴とは全然ちげえよ。あいついつも魔女の帽子被ってるようなオカルトマニアだし」
「俺たちは不動のことは牧村が惚れてる男ってことしか知らねえけどよ、牧村は陸上界の魔女って呼ばれるくらいの超有名人だぜ。あいつが四六時中魔女の帽子を被ってるなんて聞いたこともねえ」
錠とワムのそれぞれの異なる点を書きだし、共通点を絞り丸で囲む。
「ただ、共通点として名前と『不動は牧村家に居候していて』『二人は家族かそれ以上に近い間柄』ってことか。他人の空似にしちゃやりすぎだぜ」
世界には自分と同じような人間が何人かはいると聞く。
けれど、狭い日本の中、果たして名前や境遇、家族構成その他諸々がここまで重なっていることなどあり得るだろうか。いやあり得ない。
けれど、狭い日本の中、果たして名前や境遇、家族構成その他諸々がここまで重なっていることなどあり得るだろうか。いやあり得ない。
「こいつはあれじゃねえか?映画とかでよく見るやつ。なんだっけか、タイムトラベルじゃなくて」
「パラレルワールド!」
「そうそいつだ!」
「パラレルワールド!」
「そうそいつだ!」
ワムの言葉で思い出したガビは二人でイェイ、と歓喜し拳を互いに突き合せた。
「パラレルワールド?なんだそりゃ」
「今の俺たちの現実とは違う、よく似た現実の世界ってやつだよ。本当にあるかはわからないけど、そこでは微妙に関係性とか違うみたい」
「今の俺たちの現実とは違う、よく似た現実の世界ってやつだよ。本当にあるかはわからないけど、そこでは微妙に関係性とか違うみたい」
ヒエが政とは別の三つの円を地面に書き始める。
一つ目の円の中には、不動明と牧村美樹、その周囲を囲むように政・ドス六・錠・万次郎・鉄の名前が刻まれる。
一つ目の円の中には、不動明と牧村美樹、その周囲を囲むように政・ドス六・錠・万次郎・鉄の名前が刻まれる。
「この世界をAとして」
二つ目の円の中に、今度は明とオカルトマニア・美樹、その周囲に錠・万次郎・鉄の名前が刻まれる。
「この世界をBとする。二人が帰宅部だったA世界とは別に、美樹がオカルトマニアだったことが影響して、石が落ちた水面のように揺れが波及してドス六と政が振り下ろされたのがB世界」
三つ目の円の中に、陸上部の明と美樹の名前、その周囲にワム・ガビ・バボ・ヒエの名が刻まれる。
「二人が陸上部、しかも美樹が有名人だったせいで不良と一切絡む暇がなく、代わりに俺たちと関わった世界。これをC世界とする。こんな感じに、ちょっとしたキッカケで関係性がまるっきり変わった世界がパラレルワールドって奴だよ...わかった?」
「...嘘を言っているにしちゃあ出鱈目すぎるし、ここは互いに本当のことを言ってると信じるしかねえか」
「...嘘を言っているにしちゃあ出鱈目すぎるし、ここは互いに本当のことを言ってると信じるしかねえか」
ヒエの説明でなんとなくではあるが自分たちの置かれた状況を理解した一同は、露わにしていた警戒心を収め、互いに殺意を抱いていないことを確認してからこれからの方針について話し合うことにした。
「俺とドス六は不動の為なら命を捨てるのも惜しくない覚悟でいる」
「まあ、こんなところに不動の兄いがいないならそれに越したことはねえけどな。おめえらはどうだい」
「まあ、こんなところに不動の兄いがいないならそれに越したことはねえけどな。おめえらはどうだい」
ドス六は錠たち三人へと顎をしゃくる。
「アニキがいたらこんな殺し合いなんぞとっとと畳んじまうと思うけど...アニキの為に戦うってんなら邪魔する理由はないぜ。なあ鉄よ」
「おうよ。アニキに護られるだけの俺たちじゃねえぜ」
「...今度こそ無くしたりはしねえ」
「おうよ。アニキに護られるだけの俺たちじゃねえぜ」
「...今度こそ無くしたりはしねえ」
三人の返答に喜色を表し、互いに顔を合わせてはにかみ合うドス六と政。
二人の視線はそのままワム達四人へと向けられる。
二人の視線はそのままワム達四人へと向けられる。
「...俺とガビからすりゃあ不動は恋敵みたいなもんだ。けどよ、惚れた女を泣かせるような真似はしたくねえ」
「それに牧村だって呼ばれてる可能性がある。もしあいつが呼ばれてたら絶対に殺し合いを止めようとする。だったら俺たちの道は決まってる」
「それに牧村だって呼ばれてる可能性がある。もしあいつが呼ばれてたら絶対に殺し合いを止めようとする。だったら俺たちの道は決まってる」
ガビが後ろの二人をチラ、と見る。
「俺たちは二人に着いてく。仲間だもの」
「どのみち、一人で動いても生き残れる気がしないしね」
「どのみち、一人で動いても生き残れる気がしないしね」
二人の答えに、ワムとガビが微笑み合い、四人で交互にハイタッチを交わし合う。
「決まりだな」
政は立ち上がり、右手の甲を突き出す。その上にドス六が右手を重ねる。
それを見た錠が万次郎と鉄に目配せし、三人で右手を重ね、ワムとガビもまた重ね、その上にバボとヒエの手も重ねられる。
それを見た錠が万次郎と鉄に目配せし、三人で右手を重ね、ワムとガビもまた重ね、その上にバボとヒエの手も重ねられる。
「俺たちは不動明、及び牧村美樹の為に戦うことをここに誓う」
政の音頭と共に残る八人の視線に宿る熱が中央で重ねられた右手に向けられる。
「例え世界が違っても、俺たちの信念は一つ!俺たちの名はデビルマン軍団!!気張っていくぞ!!」
掛け声と共に、オウ!!と大気を揺らすほどの男たちの叫びが響き渡った。
「ずいぶんと楽しそうだなあオイ。なに話してんのか俺にも教えてくれよ〜」
青年たちの勇気の掛け声を聞きつけてきた悪意の権化が、ここに一人。
巨大な掌がバボの頭をテンガロンハットごと掴み持ち上げた。
巨大な掌がバボの頭をテンガロンハットごと掴み持ち上げた。
「なっ!?」
突然の襲来にバボを除く八人が咄嗟に振り返りその姿を認識する。
長身のバボや鉄さえ凌ぐ巨体。
服に収まりきらぬほどにぽっこりと出た腹とへそ。
厚ぼったい唇に至る箇所が欠け落ちた歯並び。
三つに割れた顎、禿げあがった頭、そもそもの顔の造形...
長身のバボや鉄さえ凌ぐ巨体。
服に収まりきらぬほどにぽっこりと出た腹とへそ。
厚ぼったい唇に至る箇所が欠け落ちた歯並び。
三つに割れた顎、禿げあがった頭、そもそもの顔の造形...
誰が見ても"不細工"としか表現できないその男は、持ち上げたバボへとニタリと厭らしい笑みを向ける。
「悪魔族(デーモン)!?」
「デーモンだあ?俺様をそんな宗教くせえバケモンと一緒にするんじゃねえよ。俺の名はブサイク大総統。純粋にてめえら人間を全部ぶっ壊してえだけの怪人様よ!」
「てめえ、人質のつもりかよ!?俺の仲間を返しやがれ!」
「デーモンだあ?俺様をそんな宗教くせえバケモンと一緒にするんじゃねえよ。俺の名はブサイク大総統。純粋にてめえら人間を全部ぶっ壊してえだけの怪人様よ!」
「てめえ、人質のつもりかよ!?俺の仲間を返しやがれ!」
激昂と共に拳銃を構えるワム。
しかし、大総統は拳銃に怯む素振りは一切見せず、むしろニヤニヤと楽し気に銃口を見つめている。
しかし、大総統は拳銃に怯む素振りは一切見せず、むしろニヤニヤと楽し気に銃口を見つめている。
「おいおいそんなに怒るんじゃねえよォ。人質とるなんて卑怯な真似はしねえ、ちゃ〜んと返すって」
大総統は下卑た笑みを浮かべると、空いた左腕でバボの左腕を摘まみ、徐々に力を込めていく。
「ちょっとずつだけどな」
「ひ、グアアアアア!!!!」
「ひ、グアアアアア!!!!」
苦悶の声を挙げるバボは痛みから逃れようと必死に首を振り、身体を揺らしもがく。
しかし、いくら暴れても大総統の力は緩まず。
しかし、いくら暴れても大総統の力は緩まず。
「やめろおおおおおお!!」
ガビの悲痛な訴えもバボの抵抗も虚しく空を切るだけだ。
無情にもバボの筋肉と骨が悲鳴を上げ軋んでいく。
無情にもバボの筋肉と骨が悲鳴を上げ軋んでいく。
そして
ブチリ。
「げ、アアアアアアアア!!!」
「ヒャハハハハハ、まずひとぉつ!!」
「ヒャハハハハハ、まずひとぉつ!!」
千切れたバボの左腕を放り捨て、大総統はバボの悲鳴と血を肴に嗤い声をあげる。
「や、やろおおおお!!」
「バカよせ!!」
「バカよせ!!」
政が止めようとするも間に合わず、怒りと恐怖を前に、反射的にワムは引き金を引く。
「げうっ」
弾丸はバボの身体に着弾し更に血が噴き出る。
弾丸が当たる寸前に大総統がバボを盾にしたのだ。
弾丸が当たる寸前に大総統がバボを盾にしたのだ。
「おっとぉ、友達を平然と撃つなんてイケメン様はヒドイやつだなあオイ!?」
「ヤロオオオ!!」
「ヤロオオオ!!」
ガビとヒエがバボを取り戻そうと大総統へと殴り掛かる。
「そんなに返してほしいかよ、じゃあ丸ごと受け取りなぁ!!」
大総統は迫る二人へとバボを投げつけ、それを受けた二人とバボはあまりの衝撃に吐血し吹き飛ばされる。
「くたばれ不細工野郎が!」
怒りのままに再び放たれる弾丸は、しかし着弾直前に首を傾けた大総統には当たらない。
それどころかワムとの距離は大総統の一足であっという間に縮まってしまう。
それどころかワムとの距離は大総統の一足であっという間に縮まってしまう。
「「うおおおおおおお!!」」
ワムの隙を埋めるように、万次郎と鉄が己の武器と共に大総統へと殴り掛かる。
ダメージはないにせよ攻撃は当たる筈。その二人の予想は、しかし外れることになる。
ダメージはないにせよ攻撃は当たる筈。その二人の予想は、しかし外れることになる。
「しゃらくせえなあおい」
大総統は避けるでも防御の姿勢を取るでもなく、万次郎のチェーンを掴み、それで鉄のカミソリを防御。
そのままチェーンを振り回し、宙に浮いた万次郎は鉄へとぶつけられ、互いの頭部から血を噴き出す。
そのままチェーンを振り回し、宙に浮いた万次郎は鉄へとぶつけられ、互いの頭部から血を噴き出す。
あまりにも一瞬の蹂躙に、ワムは思考が追いつかず、ようやく狙いを定めた時には既に大総統は拳を振り上げていた。
その背後より。
大総統の頭上へと、政の木刀が振り下ろされ大総統の頭頂を叩きつけた。
大総統の頭上へと、政の木刀が振り下ろされ大総統の頭頂を叩きつけた。
「ドス六!」
「あいよ!」
「あいよ!」
政の奇襲により出来た僅かな隙を突き、ドス六が倒れた万次郎と鉄を担ぎ上げ、ワムの襟首を引っ張り大総統から距離を取る。
「なるほどオメーがこの中で一番の使い手か」
政が着地するその瞬間、ギョロリと大総統の目が背後の政へと向けられる。
「まあ、災害レベル狼も倒せそうにねえ奴らなんざ、レベル竜の俺にとっちゃ誤差みてえなもんだけどな」
着地と同時に放たれる拳の速さと威圧感に、政の直感は、かつて死を味わった身体は本能へと告げる。
俺は数秒後、この拳で死ぬと。
俺は数秒後、この拳で死ぬと。
「させねえよ!」
政と拳の間に挟まる影が一つ。
その影は政を臀部で突き飛ばし、己は代わりに拳を受け止める。
その影は政を臀部で突き飛ばし、己は代わりに拳を受け止める。
「ジョ...!」
その影の名前を呼ぼうとする政は息を呑む。
割って入ってきたその影は間違いなくメリケン錠だった。
しかし、その身体は全身ふさふさとした体毛に覆われ、頭部には明かな異形が蠢いていた。
それはかつて政たち五人を操った蜘蛛の悪魔、ラズバそのものだった。
割って入ってきたその影は間違いなくメリケン錠だった。
しかし、その身体は全身ふさふさとした体毛に覆われ、頭部には明かな異形が蠢いていた。
それはかつて政たち五人を操った蜘蛛の悪魔、ラズバそのものだった。
「やっぱりまだ変身には時間がかかっちまうぜ...政、今は理由を聞くな。俺はデビルマンなんだ!」
「なんだオメェ、俺並に醜くなりやがって。ヘッ、劣等感が薄れてパワーダウンしちまいそうだぜ」
「なんだオメェ、俺並に醜くなりやがって。ヘッ、劣等感が薄れてパワーダウンしちまいそうだぜ」
異形と化し大総統と組み合う錠。
その姿はもはやどう見ても人間ではない。
しかし政は恐怖を抱かない。
彼は知っているからだ。悪魔に打ち勝ち人間の心を保ち続けた者たちを。
故に、錠を頼もしいとしか思わない。これを好機としか捉えない。
その姿はもはやどう見ても人間ではない。
しかし政は恐怖を抱かない。
彼は知っているからだ。悪魔に打ち勝ち人間の心を保ち続けた者たちを。
故に、錠を頼もしいとしか思わない。これを好機としか捉えない。
「立てる者は立て!!錠を援護してこいつをぶっ殺すんだ!!」
政の激励と共にドス六がドスを抜き飛び掛かり、ワムが援護として銃撃する。
「おいおいおいおい、一斉にかかれば俺を倒せますってかあ!?」
だが、銃弾が身体に当たろうと、ドスで突かれようと、木刀で殴られようとも大総統は余裕の笑みを崩さない。
弾丸も、刀も、打撃も。その一切が大総統の身体には傷一つつけられない。
弾丸も、刀も、打撃も。その一切が大総統の身体には傷一つつけられない。
「う、嘘だろ...」
絶望の声を漏らすワム。
こちらの攻撃がなにも通じないこんな化け物、どうすればいいというのか。
絶対的な恐怖にワムの心は折れつつあった。
こちらの攻撃がなにも通じないこんな化け物、どうすればいいというのか。
絶対的な恐怖にワムの心は折れつつあった。
「諦めるな!諦めてどうにかなるもんじゃねえ!」
ドス六と政はまだ啖呵をきれるだけの猶予はあるものの、しかしあまりの実力差に心は焦燥に追われその疲労が顔にも表れてくる。
「ウガアアアアア!!」
大総統と直接組み合う錠は、目が血走り身体の底から力を引き出さんばかりに喉を振るわせる。
錠もまた追い詰められていた。
現状は互角にも見えるが、一片も力を抜けない錠に対し、大総統は汗一つかかずニタニタと錠を見下ろしている。
錠もまた追い詰められていた。
現状は互角にも見えるが、一片も力を抜けない錠に対し、大総統は汗一つかかずニタニタと錠を見下ろしている。
「はいサービスタイム終了〜」
大総統の粘ついた声での宣告と共に、組み合った体勢のまま、錠の身体が持ち上げられる。
技術も糞もないひたすら純粋に圧倒的な腕力によるものだ。
技術も糞もないひたすら純粋に圧倒的な腕力によるものだ。
「オラよォッ!!」
大総統が腕を振るうと共に、錠の身体が宙を舞う。
そして彼の身体をまるでハンマーのように振るい、ドス六と政へと叩きつけた。
そして彼の身体をまるでハンマーのように振るい、ドス六と政へと叩きつけた。
「ゲボッ」
身体に受けた衝撃で吐血するドス六と政。
そんな二人の身を案じつつも、唯一動ける錠が大総統へと立ち向かう。
そんな二人の身を案じつつも、唯一動ける錠が大総統へと立ち向かう。
「うおおおおおおお!!」
勢い任せに振るう右拳は容易く掴まれる。
だがそれは読んでいたといわんばかりに、錠の眼光は微塵も揺らがない。
もぞもぞと頭部の蜘蛛が蠢き、一気に大量の糸を大総統目掛けて吐き出した。
ほとんど完璧な奇襲。
しかし、大総統はその身体能力と反射神経で容易く糸を回避した。
だがそれは読んでいたといわんばかりに、錠の眼光は微塵も揺らがない。
もぞもぞと頭部の蜘蛛が蠢き、一気に大量の糸を大総統目掛けて吐き出した。
ほとんど完璧な奇襲。
しかし、大総統はその身体能力と反射神経で容易く糸を回避した。
「そいつが奥の手だったみてえだなあ」
ビキビキと大総統の腕に筋が走り力が籠められる。
「前腕崩壊パーンチ!!」
「クッ!」
「クッ!」
振り下ろされる拳に、咄嗟に空いている左腕を盾にする。
タイミングも判断も、防御としてはこれ以上ない選択肢だ。
タイミングも判断も、防御としてはこれ以上ない選択肢だ。
だが。
「...ッ!」
ゴキリ、と骨の折れる音が鳴り、腕があらぬ方向へと曲がり、骨が所々皮膚を突き破り露わになる。
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
錠の悲痛な叫びを愉しむように大総統は大口を開けて笑う。
「ヒャヒャヒャ!クソイケメンにタンクトップバカをぶっ壊したところで茶々入れられたかと思ったがよォ!
まだまだこんなに玩具がいるなんてなあ!最高じゃねえかよ!!
殺し合い?んなもん知らねえよ、これから始まるのは劣等感で最低にねじ曲がった俺様による超・暴力祭りだぜェ!!」
まだまだこんなに玩具がいるなんてなあ!最高じゃねえかよ!!
殺し合い?んなもん知らねえよ、これから始まるのは劣等感で最低にねじ曲がった俺様による超・暴力祭りだぜェ!!」
ドッ。
言い終わる前に大総統の蹴り上げが錠の腹部に刺さり、吹き飛ばされた先のワムと衝突し地面を血に濡らす。
「ガベッ、ち、チクショウ...!」
血反吐を吐きながらも錠が立ち上がり、周囲を見回す。
ドス六と政、万次郎と鉄はどうにか立ち上がるものの、足元がおぼつかず、ワムとガビは立ち上がろうとするも足が笑い立てず。
ヒエは失血で青ざめるバボに声をかけ続けている。
ドス六と政、万次郎と鉄はどうにか立ち上がるものの、足元がおぼつかず、ワムとガビは立ち上がろうとするも足が笑い立てず。
ヒエは失血で青ざめるバボに声をかけ続けている。
(俺が護るんだ...今度こそ俺が...!)
両腕が粉砕された今でも一番動けるのは錠だ。
激痛に苛まれる両腕に耐えつつ、錠は歯を食いしばり大総統を睨みつける。
激痛に苛まれる両腕に耐えつつ、錠は歯を食いしばり大総統を睨みつける。
「おーおーまだやろうってのか。だがその根性は気に入った。どうだ、同じブサモンのよしみ、オメエから頼むんなら子分にしてやってもいいんだぜ?」
「...ヘッ、俺のアニキはあの人だけだ。てめえなんざお呼びじゃねえや」
「...ヘッ、俺のアニキはあの人だけだ。てめえなんざお呼びじゃねえや」
悪態をつくがただの強がりだ。
錠にはもはや打つ手などなにもない。
しかしそれでも大総統に屈さないのは、彼には彼なりの誇りがあるからだ。
不動アキラという漢の舎弟であり友であるという誇りが。
錠にはもはや打つ手などなにもない。
しかしそれでも大総統に屈さないのは、彼には彼なりの誇りがあるからだ。
不動アキラという漢の舎弟であり友であるという誇りが。
「へへ...言うじゃねえかよ錠。世界が違っても同じだな、俺たちは」
痛む身体に鞭を打ち、ドス六、政、万次郎、鉄が錠に並び立つ。
その光景に錠の頬は綻び、大総統は不快気に顔を歪ませ、ただでさえ醜い顔が更にヒドイものになる。
その光景に錠の頬は綻び、大総統は不快気に顔を歪ませ、ただでさえ醜い顔が更にヒドイものになる。
「ケッ、暑苦しいノリしやがってウザってえ。いいぜお望みならてめえらみんな肉餅にしてやらぁ」
「やれるもんならやってみやがれ!」
「やれるもんならやってみやがれ!」
大総統へと飛び掛かる五人。
その背を見て、ワムの思考は冷静に告げていた。
錠を筆頭とした五人の命がけの特攻の結末は―――全く、微塵も相手にならない。
大総統がその気になれば、数分ともたずに全滅するだろう。
その背を見て、ワムの思考は冷静に告げていた。
錠を筆頭とした五人の命がけの特攻の結末は―――全く、微塵も相手にならない。
大総統がその気になれば、数分ともたずに全滅するだろう。
(神よ)
ワムは気づけば祈っていた。
人間が人間を狩り、己が一番信じられるのは己だと突き付けられた時代に生きてきた彼が。
ラッパーとしての姿など微塵も感じさせないほどに、涙し、膝を着き、拳を合わせて祈っていた。
人間が人間を狩り、己が一番信じられるのは己だと突き付けられた時代に生きてきた彼が。
ラッパーとしての姿など微塵も感じさせないほどに、涙し、膝を着き、拳を合わせて祈っていた。
(どうか救いを...悪夢のような現在(いま)からの救済を!)
どれだけワムが祈ろうと神は人を救うことはできない。
それでも祈らずにいられないのが人間だとしたら。
それでも祈らずにいられないのが人間だとしたら。
ズ ン ッ
その祈りを聞き逃さない者はここにいる。
突如、眼前で湧き上がる砂塵に一同の足が止まり注目が集まる。
目に砂が入らぬよう、咄嗟に目を瞑り、あるいは腕で砂を防ぐ人間たちの一方で、大総統は降りかかる砂塵にも構わず、その一点を凝視していた。
目に砂が入らぬよう、咄嗟に目を瞑り、あるいは腕で砂を防ぐ人間たちの一方で、大総統は降りかかる砂塵にも構わず、その一点を凝視していた。
なんだこれは。
怪人と化してから久しく忘れていた怖気に、大総統の本能が己への脅威を告げる。
気が付けば拳を握りしめていた。
気が付けば歯を食いしばり、雄たけびを上げていた。
怪人と化してから久しく忘れていた怖気に、大総統の本能が己への脅威を告げる。
気が付けば拳を握りしめていた。
気が付けば歯を食いしばり、雄たけびを上げていた。
そう。彼の本能が告げていたのは警鐘。
動物でも人間でも怪人でも、遍くすべての生物が有している、生存への原始的欲求!!
動物でも人間でも怪人でも、遍くすべての生物が有している、生存への原始的欲求!!
「全身崩壊パーンチ!!」
先ほどまでのお遊びとは違う、全身全霊のパンチ。
災害ランク・竜―――単体で幾つもの街を壊滅させられる危険性を孕む怪人のランク―――に値する彼の超暴力から放たれるパンチは如何なる生物の存在も許さない。
災害ランク・竜―――単体で幾つもの街を壊滅させられる危険性を孕む怪人のランク―――に値する彼の超暴力から放たれるパンチは如何なる生物の存在も許さない。
グシャリ、と確かな手ごたえを感じる。対象ごと叩きつけられた地面に巨大なヒビが入る。
「全身崩壊パンチ!!全身崩壊!全身崩壊!」
それに気づいていながらも、大総統はその拳を止めない。
眼前の脅威を完全に沈黙させる為に―――まるで、その存在に恐怖するかのように。
眼前の脅威を完全に沈黙させる為に―――まるで、その存在に恐怖するかのように。
「全身崩」
「―――ろ」
「―――ろ」
ガシリ、と大総統の拳が止められる。
今しがた破壊した筈の、敵の腕に。
今しがた破壊した筈の、敵の腕に。
「地獄へ落ちろ!!」
それは突然だった。
大総統の腹部に激しい痛みが走り、鮮血が噴き出した!
大総統の腹部に激しい痛みが走り、鮮血が噴き出した!
「なっ、あっ」
弾丸や刃物さえ通じぬ筈の肉体の損壊に、大総統は驚愕し困惑する。
それもそのはず。
凶器はあろうことか素手。一糸纏わぬ素手で腹部は貫かれていた!!
それもそのはず。
凶器はあろうことか素手。一糸纏わぬ素手で腹部は貫かれていた!!
「ク、ソがァ!!」
大総統は空いている腕を振り下ろし、腹部を貫く腕をへし折ろうとする。
が、しかし―――
「ごっ!?」
大総統の拳が触れるその前に、彼の身体が膨張し弾け飛んだ。
飛び散る肉片。霧状に空を舞う血潮。重力に従いボタボタと地に落ちる内臓。
それらが巻きあがっていた砂塵を吹き飛ばし―――来訪者の姿を露わにした。
飛び散る肉片。霧状に空を舞う血潮。重力に従いボタボタと地に落ちる内臓。
それらが巻きあがっていた砂塵を吹き飛ばし―――来訪者の姿を露わにした。
「ぁ...」
それは誰の声だったか。
気が付けば、皆が震え、不良たちに至っては涙さえ流していた。
それは恐怖ではない、歓喜の涙。
気が付けば、皆が震え、不良たちに至っては涙さえ流していた。
それは恐怖ではない、歓喜の涙。
―――あれは誰だ?
悪魔のような角と触覚。黒の体毛に覆われた下半身。
―――誰だ、誰だ
語るまでもない。彼らが望んだ悪魔にしてヒーロー。
―――あれは誰だ!?
デビルマン―――不動明!!
「アニキ...!」
感情の赴くままに、不良たちは一斉に駆け出す。
(アニキ、やっぱりあんたはすげェよ!あんなのあっさり片づけちまうなんてよ!)
(アニキさえいてくれりゃ百人力だ!)
(アニキさえいてくれりゃ百人力だ!)
尊敬する存在との再会にひたすら歓喜する万次郎と鉄。
(アニキ!俺、デビルマンになれたんだよ!今度こそあんたの力になる為に!もうあんたにあんなことはさせねえから!)
かつての喪失の悲しみと彼の無事への喜びとが入り混じる錠。
(兄ィ!兄ィ!兄ィィィ!!)
かつて最後に残った人類として尚、彼と共に抗い続けた万感の想いを溢れさせるドス六。
(不動、牧村さんを護り切れなかったのは俺の弱さのせいだ。お前が望むなら命で償う覚悟はある。だが、いまこの瞬間だけは...!)
彼の愛した者を護れなかった懺悔と彼の無事への喜びを抱く政。
五人五色の想いで駆け寄る不良たち。
「不動っ!助けてくれ!バボが!」
そんな彼らの感傷を打ち破るかのように、一番近くで膝を着いていたヒエが声を挙げる。
彼の悲痛な叫びに、五人は我に返り現状を思い返す。
彼の悲痛な叫びに、五人は我に返り現状を思い返す。
バボは腕を引きちぎられ、弾丸の誤射を受け、そのうえでヒエたちにぶつけられていた。
人の身では耐えきれぬその怪我に晒された彼は、既に息が絶え絶えになっていた。
人の身では耐えきれぬその怪我に晒された彼は、既に息が絶え絶えになっていた。
「不動!なにか治療に使えるやつ持ってないか!?」
明に必死に縋りつくヒエの言葉と、バボに呼びかけ続けるガビの姿に、五人とワムは慌てて己のデイバックを探る。
「兄ィ!そいつらも俺たちの仲間なんだ!どうにか助けてやれねえか!?」
「――――」
「――――」
ドス六の頼みに対し、明はボソボソと呟く。
いや、彼は返事をしたのではない。
縋りつくヒエを見て、小さく呟いていたのだ。
いや、彼は返事をしたのではない。
縋りつくヒエを見て、小さく呟いていたのだ。
「――――」
「え?」
「え?」
ヒエは己の耳を疑った。
この状況で確かに明は言っているのだ。
この状況で確かに明は言っているのだ。
地獄に落ちろ、人間ども、と。
その瞬間、明の頭部の触覚が揺れ―――、一瞬にしてヒエの身体は細切れになった。
「は?」
「は?」
明がヒエを殺した。
あまりにも突然。あまりにも予想外の出来事に、一同は怒りも悲しみもなく、ただ呆然とする。
あまりにも突然。あまりにも予想外の出来事に、一同は怒りも悲しみもなく、ただ呆然とする。
そして、思考が切り替わる前に明はその逞しい足を振るい―――ヒエの次に近くにいた政を蹴り飛ばした。
政は実力派の不良ではあるが、所詮は人間。
デビルマンと化した明の岩石すら砕く蹴りを前にはなにもできず、取り出しかけていた玉を離す間もなく、ゴキリ、と首の骨が折れ、吹き飛ばされた先にあった壁に叩きつけられた身体は血化粧を咲かせ、べちゃりと壊れた人形のように地に伏せた。
政は実力派の不良ではあるが、所詮は人間。
デビルマンと化した明の岩石すら砕く蹴りを前にはなにもできず、取り出しかけていた玉を離す間もなく、ゴキリ、と首の骨が折れ、吹き飛ばされた先にあった壁に叩きつけられた身体は血化粧を咲かせ、べちゃりと壊れた人形のように地に伏せた。
「兄ぃ」
眼前の光景を信じられない、信じたくないと放心するドス六へと明の剛腕が振りかぶられる。
その光景を、誰もが案山子のように呆然と眺めていた。
その光景を、誰もが案山子のように呆然と眺めていた。
「アニキィィィィィ!!!」
ただ一人、同じ経験をしていた錠は、咄嗟に明へと身体をぶつけドス六への攻撃を外させた。
(なんでだよ...なんでまたアニキがこうなってんだよ!?)
錠の脳裏には、かつての光景が過っていた。
『ほたるのひかり』が流れる夜の校舎。
悪魔族(デーモン)の元老院達による洗脳の余波を受けたアキラが、万次郎と鉄、教師のアオイを嬉々として殺し、食らっていたあの地獄のような光景が。
だからこそ、錠は他の者たちよりも早く対応にまわることが出来たのだ。
『ほたるのひかり』が流れる夜の校舎。
悪魔族(デーモン)の元老院達による洗脳の余波を受けたアキラが、万次郎と鉄、教師のアオイを嬉々として殺し、食らっていたあの地獄のような光景が。
だからこそ、錠は他の者たちよりも早く対応にまわることが出来たのだ。
「万次郎、鉄!皆を連れて逃げろ!アニキは暴走しちまってる!俺が食い止めてる間に早く!!」
錠は折れた両腕で必死に明を抑え込もうとする。
彼に勝てるなどとは微塵も思っていない。
それでも。それでも、もう二度と繰り返しはしない。
生き返っていた万次郎と鉄の命を散らさせることを。
二人を手にかけた時のアキラの絶望の叫びを。
彼に勝てるなどとは微塵も思っていない。
それでも。それでも、もう二度と繰り返しはしない。
生き返っていた万次郎と鉄の命を散らさせることを。
二人を手にかけた時のアキラの絶望の叫びを。
明は縋りついていた錠の身体を全力で地面に叩きつける。
錠の全身が悲鳴を上げ、吐きだされた血が空を舞う。
錠の全身が悲鳴を上げ、吐きだされた血が空を舞う。
(頼む...頼むよアニキ...)
朦朧とする意識の中、錠は涙目になりながら明を見つめ訴えかける。
(もうやめてくれよ...あんたのあんな姿はもう見たくねえんだよ...)
それが伝わっているのかいないのか。明は右腕で錠の首を掴み持ち上げる。
(俺を食って満足するならそれでいい...だから...)
左腕で構えられる手刀からも目を離さず、悲しみでぐしゃぐしゃになった顔面から、必死に声を絞り出す。
「目を覚ましてくれよ...アニキィ...!」
錠の涙が明の手に落ちる。
しかしそれでも彼は止まらない。
手刀が動き、悪魔の力が錠へと襲い掛かる。
しかしそれでも彼は止まらない。
手刀が動き、悪魔の力が錠へと襲い掛かる。
「ぬりゃああああ!!」
手刀が腹を突く寸前、明の背後よりチェーンが首に絡みつく。
「引っ張れ鉄!」
「オウ!」
「オウ!」
絡めたチェーンの端を万次郎と鉄が両手で全身全霊の力を込め引っ張り、明の首をのけぞらせようとする。
「ッシ!!」
明の左腕にワムが飛びつき、錠への攻撃を防がんとしがみ付く。
「オラアアア!」
「兄ィィィ!!」
「兄ィィィ!!」
錠を持ち上げる右腕へとドス六がドスを突き立て、ガビが脚にタックルをかます。
「お、お前らなんで...!」
「バカ野郎、錠!一人でええ恰好しようとしやがって!」
「俺たちだってアニキの友だちだ、こんなになってるアニキを放っておけるわけないだろ...!」
「バカ野郎、錠!一人でええ恰好しようとしやがって!」
「俺たちだってアニキの友だちだ、こんなになってるアニキを放っておけるわけないだろ...!」
万次郎と鉄が全力で引っ張るチェーンにも、明は動じない。
「不動、オメーがヒエをぶっ殺したのは許せねえ...けどよ、一つだけ言わせろや」
「オメーになにがあったか知らねえが、牧村を泣かせるようなことすんじゃねえ...お前を信じたあいつに泥塗るようなことしてんじゃねえ...!」
「オメーになにがあったか知らねえが、牧村を泣かせるようなことすんじゃねえ...お前を信じたあいつに泥塗るようなことしてんじゃねえ...!」
ワムとガビの体当たりにも、明は動じない。
「兄ィ、兄ィよお。目ェ覚ましてくれよ。あんた人間に絶望した後でも俺たちを殺さなかったじゃねえかよ。
...俺たちはよぉ、あんたを尊敬してんだ。あのむちゃくちゃ弱かった不動明が、この世界を悪魔どもから護るために、人間の心を無くさず悪魔と合体して、誰からも知られず感謝もされず独りで戦い続けてきたなんてよ...ほんとえれーと思ってんだよ。
だから...あんたの背中、俺たちに預けてくれよ。あんたの心を護らせてくれよ、兄ィ...!」
...俺たちはよぉ、あんたを尊敬してんだ。あのむちゃくちゃ弱かった不動明が、この世界を悪魔どもから護るために、人間の心を無くさず悪魔と合体して、誰からも知られず感謝もされず独りで戦い続けてきたなんてよ...ほんとえれーと思ってんだよ。
だから...あんたの背中、俺たちに預けてくれよ。あんたの心を護らせてくれよ、兄ィ...!」
ドス六のドスも腕を跳ねる涙にも、明は動じない。
「アニキ...聞こえてるかよアニキ...アンタを護ろうとしてくれる奴らがこんなにいるんだぜ」
己に刻まれた痛みなどは知ったことではない。
死への危険さえ顧みず明を救おうとしている者たちがこれだけいる。
それだけで、錠の身体は生気を取り戻していた。
死への危険さえ顧みず明を救おうとしている者たちがこれだけいる。
それだけで、錠の身体は生気を取り戻していた。
「俺たちを...信じてくれよ、アニキィ!!」
錠の叫びが夜空に響き渡り、シン...と静寂に包まれる。
やがて、明の腕から力が抜け、錠がドサリと地面に尻餅を着く。
咄嗟に見上げた錠の目に映ったのは、背中から巨大な翼を生やした明の姿だった。
バサリ、と羽音と共に悪魔の姿が赤い月夜に照らされる。
その血に塗れた両手を隠すこともなく、溢れる殺気を隠すこともなく。
見る者に恐怖を与えるその姿は、かつては殺戮を好み悪魔族からも畏怖され勇者と敬意を抱かれたアモンそのものだ。
しかし。
その両目から流れ頬を伝う透明な液体は、悪魔のモノとは思えぬほどに美しく、アモンのものとは思えぬほどに儚げだった。
「ん...」
パチリ、と目を開ける。
「俺ぁ死んだ筈じゃ...」
青年―――政は、己の両掌を開いては握り、開いては握り、その感触を確かめた。
「そうか、あの支給品の玉...あれのお陰か」
バボが死にかけていた為、一か八かで取り出そうとしていた支給品―――復活の玉の存在を思い出す。
持っていれば一度だけ身代わりになって砕け、持ち主の身体を最高の上体にして復活させるという逸品だ。
眉唾モノだと思っていたが、こうして実際に効果が表れたのだ。
本物だったのだと受け入れるしかない。
持っていれば一度だけ身代わりになって砕け、持ち主の身体を最高の上体にして復活させるという逸品だ。
眉唾モノだと思っていたが、こうして実際に効果が表れたのだ。
本物だったのだと受け入れるしかない。
「そうだ...不動は、皆は...」
自分は不動に蹴り殺されたのだ。ならば、復活するまでの間、なにかしらの事態はあった筈だが...
果たして、それは顔を上げただけでわかってしまった。
果たして、それは顔を上げただけでわかってしまった。
「うっ!」
政が顔を上げた先にはまさに地獄絵図。
周囲の建物や地面は荒れに荒れ、至る所に散らばった臓器や手足が血だまりと共に放置されている。
周囲の建物や地面は荒れに荒れ、至る所に散らばった臓器や手足が血だまりと共に放置されている。
その中には知った顔もある。いや、知った顔しかないと言った方が正しいだろう。
政の傍にはキャップを逆に被った上半分の頭部と、虚ろな目でそれを見つめているドレッドヘアーの首が転がっている。
その傍では、顔以外の全てが炭化した死体がある。
その傍では、顔以外の全てが炭化した死体がある。
「ワム!ガビ!バボ!」
首を振り、違う方角を確認する。
手足を千切られ達磨のような姿でこと切れる巨体と、下半身をどこかに無くし、咢から下がズレ落ちた死体が横たわっていた。
「鉄...万次郎...」
彼らの傍で、胸から花のように肋骨が突き出され、内臓が零れ落ちている死体があった。
「ドス六...!」
立ち上がろうとする膝が笑い、べしゃりと血だまりにその身を投げ出す。
なんだこれは。
これを、彼がやったというのか?あの不動明が。決して人の心を捨てなかったデビルマンが!
なんだこれは。
これを、彼がやったというのか?あの不動明が。決して人の心を捨てなかったデビルマンが!
「...ま...政...」
掠れそうな呼びかける声に、政は顔を上げる。
もぞもぞと蠢くその影に、政は慌てて立ち上がり、転びそうになりながらも駆け寄る。
もぞもぞと蠢くその影に、政は慌てて立ち上がり、転びそうになりながらも駆け寄る。
「無事...だったのかよ...よかった...」
「バカヤロウ、俺なんぞよりてめえの心配しやがれ錠!」
「バカヤロウ、俺なんぞよりてめえの心配しやがれ錠!」
頭部だけになった錠を政が抱き上げる。
悪魔族(デーモン)は人間よりも生命力が強い。
それはデビルマンも例外ではない。
しかし、それでも錠が生き残ることは出来ない。
彼はドス六たちよりもほんの少しだけ死ぬまでの時間が長くなっただけだ。
悪魔族(デーモン)は人間よりも生命力が強い。
それはデビルマンも例外ではない。
しかし、それでも錠が生き残ることは出来ない。
彼はドス六たちよりもほんの少しだけ死ぬまでの時間が長くなっただけだ。
「政...俺は...アニキを許せねえ...」
錠が涙を流し、遺言を託すようにポツポツと政に零していく。
「アニキはまた...みんなぶっ壊していった...止めようとしても止まってくれなかった...俺は...アニキが憎い...」
「...ああ」
「でも...でもよう...アニキは...アニキは...!」
「...ああ」
「でも...でもよう...アニキは...アニキは...!」
最後の力を振り絞り、唇を噛み締めつつも、言葉にする。
「泣いてたんだ...ずっと、ずっと泣いてたんだよ...!やっぱり俺...アニキを見捨てることなんてできねえ...!」
「...ああ」
「頼む、頼む政。アニキを助けてくれ...アニキをあんなにした奴らをぶっ殺してくれ...!」
「わかってる。お前たちの仇は俺が討つ」
「...ああ」
「頼む、頼む政。アニキを助けてくれ...アニキをあんなにした奴らをぶっ殺してくれ...!」
「わかってる。お前たちの仇は俺が討つ」
政の言葉を聞き終えると同時に、錠の目から生気が失われていく。
「ぅ、ぐ、おお、ぉぉ、おぉ...!」
人の身体が散らばる地獄の中、一人の男の慟哭が響き渡った。
どれほど時が経過したかはわからない。
やがて、政は錠の頭部を優しく地に横たわせ、自分は木刀を手に立ち上がる。
やがて、政は錠の頭部を優しく地に横たわせ、自分は木刀を手に立ち上がる。
「錠、ドス六、万次郎、鉄、ワム、ガビ、ヒエ、バボ」
散っていった者たちの名前をその旨に刻む。
「おめえらの無念、この木刀政が引き受けた!」
政は木刀を地面に突き立て、その刀身を血だまりに浸す。
「待ってろ不動...俺たちの想いを込めたこいつをぶち込んでとっとと目を覚まさせてやる。その次はてめえらだクソガキ共!てめえらは謝っても許さねえ、不動を、俺たちを侮辱したその罪、五体を引き裂いて償わせてやる!」
明の様子がおかしかったのは火を見るよりも明らかであり、ならばあの主催の連中が手を加えたに決まっていると結論付ける。
実際、彼の推測は間違っていない。
愛するべき者を失った上で主催の者たちに魂を弄られた存在【八将神】がいまの不動明である。
実際、彼の推測は間違っていない。
愛するべき者を失った上で主催の者たちに魂を弄られた存在【八将神】がいまの不動明である。
「邪魔する奴はぶっ殺す。俺はデビルマン軍団、木刀政だ!」
宣戦と共に、政は夜空の赤い月を見上げる。
その目には決して揺らがぬ決意の炎が宿っていた。
その目には決して揺らがぬ決意の炎が宿っていた。
【ブサイク大総統@ONEPUNCH・MAN(村田版) 死亡】
【ヒエ@デビルマンcrybaby 死亡】
【バボ@デビルマンcrybaby 死亡】
【ワム@デビルマンcrybaby 死亡】
【ガビ@デビルマンcrybaby 死亡】
【カミソリ鉄@デビルマンG 死亡】
【チェーン万次郎@デビルマンG 死亡】
【ドス六@デビルマン(漫画版) 死亡】
【メリケン錠@デビルマンG 死亡】
【ヒエ@デビルマンcrybaby 死亡】
【バボ@デビルマンcrybaby 死亡】
【ワム@デビルマンcrybaby 死亡】
【ガビ@デビルマンcrybaby 死亡】
【カミソリ鉄@デビルマンG 死亡】
【チェーン万次郎@デビルマンG 死亡】
【ドス六@デビルマン(漫画版) 死亡】
【メリケン錠@デビルマンG 死亡】
【木刀政@デビルマン(漫画版)】
[状態]健康
[装備]妖刀『星砕き』@銀魂
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:不動を止める。
0:不動に一発お見舞いして目を覚まさせる。
[状態]健康
[装備]妖刀『星砕き』@銀魂
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:不動を止める。
0:不動に一発お見舞いして目を覚まさせる。
※参戦時期は原作死亡後
【妖刀『星砕き』@銀魂】
『銀魂』の主人公坂田銀時の愛用する木刀。
その名に恥じぬ、数多の強敵を屠ってきた経歴を持つと聞けば聞こえはいいが、実際はただの通販で購入した木刀。
『銀魂』の主人公坂田銀時の愛用する木刀。
その名に恥じぬ、数多の強敵を屠ってきた経歴を持つと聞けば聞こえはいいが、実際はただの通販で購入した木刀。
【復活の玉@封神演義】
崑崙山と金鰲島の中心部にある巨大宝貝から偶然に発生する奇跡の玉。
この世に2つしかないと言われる仙人界の至宝。 その玉を持つ者が生命の危険にさらされた時、 自ら破裂してその者の肉体を最高値まで復活させてくれるという。
崑崙山と金鰲島の中心部にある巨大宝貝から偶然に発生する奇跡の玉。
この世に2つしかないと言われる仙人界の至宝。 その玉を持つ者が生命の危険にさらされた時、 自ら破裂してその者の肉体を最高値まで復活させてくれるという。
【八将神枠】
【不動明@デビルマン(漫画版)】
[状態]『人間』への激しい憎悪
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:全てを滅ぼす
0:敵を殺す
【不動明@デビルマン(漫画版)】
[状態]『人間』への激しい憎悪
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:全てを滅ぼす
0:敵を殺す
※参戦時期は牧村美樹死亡後