「なるほどな」
紅月の夜の下に、白スーツの男、里見義昭は忌々しげに吐き捨てる
「一般人や超人を集めて殺し合い、ということか? 裏の見世物にしてはあまりにも派手すぎる」
だが、里見義昭は自らが置かれた状況に忌々しく思いながらも苛立ちの類は感じてはいない。それ以前に頭に浮かぶのは疑問ばかり
「それに、わざわざ平安京を殺し合いの舞台に選ぶとは」
900年以上の歴史を誇る平安京、この場所を殺し合いの舞台として選択した主催陣。何の意図があってなのか、それとも平安京か当時の天皇に恨みを持ったかの怨霊によるものか、然して考察は出来ど答えにたどり着くにはあまりにも遠すぎた
この里見義昭という男、自分が恨まれるような人間であることも十分承知の上である。彼のいた世界、超人という幻想が跋扈する世界において、それを歪と感じ、己がやり方で超人をただの幻想として消し去ろうとした
この里見義昭という男、自分が恨まれるような人間であることも十分承知の上である。彼のいた世界、超人という幻想が跋扈する世界において、それを歪と感じ、己がやり方で超人をただの幻想として消し去ろうとした
「さて、どうすべき、か」
所詮、今の自分はこの歪な催しに巻き込まれた役者の一人にしか過ぎない。人間であろうと超人であろうと、命の価値は千差万別であり正しく平等。進んで殺し合いに乗るつもりもないが、だからといって願いを叶える権利は十分な魅力もある。それにあのメフィスとフェレスなる双子の悪魔、あの二人がそう安々と願いを叶える権利を授けてくれるとは思えない
ならばまずはこの首輪を何とかする他無い。この首輪がある限りその命は主催の掌の上、その気一つで奪われてしまう。殺し合いという体裁の上、無闇な干渉はしてこないであろうが、それでもあの双子には少々の想定外を愉悦として楽しむであろう節は見受けられる
――なれば、首輪解除のための手段を探しながら、利用できる参加者を探す。最悪超人課の連中と出会ったのならなんとか言いくるめられなくも無いだろう。だが人吉爾朗か柴来人、それに準ずる連中がいた場合が一番厄介だ
ならばまずはこの首輪を何とかする他無い。この首輪がある限りその命は主催の掌の上、その気一つで奪われてしまう。殺し合いという体裁の上、無闇な干渉はしてこないであろうが、それでもあの双子には少々の想定外を愉悦として楽しむであろう節は見受けられる
――なれば、首輪解除のための手段を探しながら、利用できる参加者を探す。最悪超人課の連中と出会ったのならなんとか言いくるめられなくも無いだろう。だが人吉爾朗か柴来人、それに準ずる連中がいた場合が一番厄介だ
「……ふむ」
気まぐれに、首輪を指で突く。小さな金属音が静寂の中にか細く鳴る。余りにも小さなその音は里見義昭以外の誰にも聞こえる事はない。願いという餌に惹かれる気持ちはあるものの、彼にはこの殺し合いへの興味は然程もない。だが、それでも必要とならば里見義昭は他の参加者へ容赦なくその牙を向けるであろう
一歩一歩、思考しながら歩く。自分以外に呼ばれた者達はおそらく多種多様だ。自らの犠牲も能わず誰かを救うヒーロー、衝動と欲望のままに暴れる悪役(ヴィラン)、願いを叶えるために悪へと転ずる善人等
誰と出会おうとも、その都度で欺瞞の仮面を被り対応すればいいだけの話だ
誰と出会おうとも、その都度で欺瞞の仮面を被り対応すればいいだけの話だ
数分ほど歩き続けても、景色は変われど赤は延々と続くばかり。古都がこうも良いものだとして、景色が赤染まりばかりでは殺風景でしか無い
「……ぬ?」
更に歩けば、民家らしき建物、その玄関の壁にもたれ掛かながら途方に暮れている少年が一人。超人課に所属する妖怪の少年風郎太の事もあるため、一応の警戒はしておきながらも近づいていく
「……そこの君、そんなところでどうしたのかね?」
そして、その言葉に、少年は初めて出会う人物である里見義昭を認識した
○ ○ ○
勇者が、大嫌いだ。――正しくは、勇者なんて言う、誰かを救うためにその命を、お役目なんていう反吐が出る言葉で取り繕って、勝手に崇めて、その人が何を思っていたなんか知らないままに祀り上げられるその概念にだ
姉ちゃんが死んで、心底それを実感した。誰も彼も、両親も親族も「お役目のために死ねたんだから満足」だと勝手に決めつける。神様なら神様らしく姉ちゃんを助けて欲しかった。だけど神様は勝手に姉ちゃんに役目を与えて見殺しにした
「神様なんだったら何で守ってくれなかったんだよ!
姉ちゃんはずっと頑張ってただろ!
それなのに!なんで姉ちゃんなんだよ!」
その叫びも、思いも、憎しみも。神なんていう秩序の元に切り捨てられる。叫んだ自分を抑えようとした周りは、まさに異物を見るような表情で見つめていた
それは単純に「どうして」という疑問に首を傾げていただけかもしれない、だけどそれが気に入らなかった。当たり前じゃない当たり前を押し付けようとする世界が気に入らなかった
それは単純に「どうして」という疑問に首を傾げていただけかもしれない、だけどそれが気に入らなかった。当たり前じゃない当たり前を押し付けようとする世界が気に入らなかった
だけど、そんな世界でも、みんなを守るために、姉ちゃんが一所懸命に戦った、その意志だけは、否定できなかった。『勇者』という概念を、否定したくても否定できなかった。弟のことも託されていたから
それでも、本当にそれでも――姉ちゃんの死を『名誉』だとか『英霊になった』なんて言葉で片付けてしまう家の連中が、何の躊躇いもなく姉ちゃんを死地に送った連中が、それを強いた神様が、どうしようもなく憎い
「なんだよ、これ」
―――気がつけば、赤い夜空の下にいた。首輪を付けられて、変なやつに殺し合いをしろだなんて言われて、目の前で名も知らない人が爆殺させられて、何も出来ずに怯えていて、そしてまた気を失ったと思ったら別の場所にいて、これが現実だって思い知らされた
「なんなんだよ……これ……」
夜空を照らす赤き月明かりも、和洋折衷往古来今無秩序に散りばめられた建物も、全てが受け入れがたい現実でしかなく
「……どうしろって、いうんだよ……」
少年は―――『英雄・三ノ輪銀』の弟、三ノ輪鉄男はこの受け入れがたい現実を、否応とも直視せざるえないのだ
「……願いを、叶える」
ふと、説明の時の言葉を思い出す。優勝すれば『どんな願いでも一つだけ叶える権利』を与えられた上で帰還させられる事を
だが、その選択は、姉ちゃんの願いを裏切るに等しい行為。もし仮に願いを叶えたとしても、それで姉ちゃんが『勇者』の責務に囚われ続けることに変わりはない
でも、もし願うのなら――自分たちの元に帰ってきて欲しい。それが例え叶わぬものだとしても。そう放心し、途方に暮れていた時に、その男は声を掛けてきた
だが、その選択は、姉ちゃんの願いを裏切るに等しい行為。もし仮に願いを叶えたとしても、それで姉ちゃんが『勇者』の責務に囚われ続けることに変わりはない
でも、もし願うのなら――自分たちの元に帰ってきて欲しい。それが例え叶わぬものだとしても。そう放心し、途方に暮れていた時に、その男は声を掛けてきた
「……そこの君、そんなところでどうしたのかね?」
白いシルクハットを被り、白いスーツに身を包んだ如何にも礼儀正しい佇まいの男が、自分を見下ろし、言葉を投げ掛けていた
○ ○ ○
「――神が人類を滅ぼすために遣わせた怪物バーテックス、それを倒すために神樹に選ばれた『勇者』か」
「……神化なんて年号、あったっけ……それに超人や怪獣や宇宙人が普通にいる世界だなんて、信じられないよ」
「……神化なんて年号、あったっけ……それに超人や怪獣や宇宙人が普通にいる世界だなんて、信じられないよ」
三ノ輪鉄男が里見義昭と出会って数分ほど後、二人は近くの建物で改めて自己紹介と情報交換をおこなっていた
「……勇者というのは、私の世界にありふれていた『超人』と対して変わらないかもしれんな。ただ、こちらは善の超人もいれば悪の超人もいるという、その違いがあるぐらいか」
里見義昭の視点からすれば、神樹によって選ばれ力を授けられた勇者は、里見のいた世界における超人と何ら変わりはないという考えであった
超人自体は妖怪のように古代から存在するものもあれば、セイダカアワダチソウの変異種による超人病の発症によって一般人が超人となる場合もある。
対して勇者は、神樹が勇者システムを介して選ばれしものに勇者の力を与える。結局の所、勇者もまた『超人』であることに変わりはない。妖怪も、超人も、そして勇者も、天の采配によって生み出された存在だ
超人自体は妖怪のように古代から存在するものもあれば、セイダカアワダチソウの変異種による超人病の発症によって一般人が超人となる場合もある。
対して勇者は、神樹が勇者システムを介して選ばれしものに勇者の力を与える。結局の所、勇者もまた『超人』であることに変わりはない。妖怪も、超人も、そして勇者も、天の采配によって生み出された存在だ
「……超人。力がある人……」
里見の言葉に、三ノ輪鉄男は考え込む。超人もある意味、勇者と変わらない。善と悪に分かれている以外、変わりはしない。いや、ある意味『勇者』の方が過酷なのかも知れない。誰とも知らぬ者達の為に、いつまでも外的と戦い続ける運命、まるで呪いのような宿命。姉が死んで、三ノ輪鉄男は初めてそれを自覚した
「……どうした?」
「……俺の姉ちゃんは、勇者だったんだ。でも、死んじゃった」
「……俺の姉ちゃんは、勇者だったんだ。でも、死んじゃった」
鉄男の反応を怪訝に思った里見が問いかける。鉄男から出た言葉は秘めこんだ思いだ
「父ちゃんも母ちゃんも、他の親戚のみんな「名誉なこと」だ、「英霊となった」だ……姉ちゃんがどんな思いで行ったのか、俺でもわかんないのに、勝手に決めつけて……」
鉄男の吐露に、里見はただ黙り込みながら耳を傾ける。「ヒーローとして崇められる」という点では、一部の超人と何ら変わりないとは、等という悪態を心の内で吐き捨てながら
「俺は、勇者っていう概念が憎いって思ってしまったんだ。その人が何を思っているのか知らないで、勝手に崇めて、頼って、死んだら勝手に決めつけて満足して、みんな身勝手だ」
「そういう君もある意味身勝手ではないのかね?」
「そうかもしれない。だって恨んでも仕方ねぇんだよ。姉ちゃんに金太郎のこと頼まれた。それに、俺が憎んでも、何も意味がないって――俺のいた世界は、そうだったんだ。それに――」
「それに?」
「どれだけそんな反吐が出るような勇者を否定したら、死んだ姉ちゃんの事まで、否定しちまうようだった
から。……そんな事、出来るわけが無いだろ」
「そういう君もある意味身勝手ではないのかね?」
「そうかもしれない。だって恨んでも仕方ねぇんだよ。姉ちゃんに金太郎のこと頼まれた。それに、俺が憎んでも、何も意味がないって――俺のいた世界は、そうだったんだ。それに――」
「それに?」
「どれだけそんな反吐が出るような勇者を否定したら、死んだ姉ちゃんの事まで、否定しちまうようだった
から。……そんな事、出来るわけが無いだろ」
三ノ輪鉄男は、人を救う為に命を捨てさせるという勇者の概念が大嫌いになった
だけど、それでも、自分の姉ちゃんが自分を含めた、そんな人々を守るために命を散らしたその生き様まで、否定できなかった。否定したくても、ただそれだけは否定できずにいた
だけど、それでも、自分の姉ちゃんが自分を含めた、そんな人々を守るために命を散らしたその生き様まで、否定できなかった。否定したくても、ただそれだけは否定できずにいた
「……俺は、姉ちゃんが生きれくれたら、良かったんだ。どうして……どうして……」
そう言葉を零す鉄男の目には、涙が溢れ、まるで血涙の如く月夜に照らされ赤く光り輝いている
どれだけその概念が憎くても、自分たちを守るためにその命を散らした姉を否定してしまう選択を、三ノ輪鉄男は取りたくはなかった。いや、取れなかったのだろう
だから、もし自分が何かの間違いで国を守る立場になったその時、自分が姉が命を懸してでも守ろうとしないと行けないとその根底に根付いてしまうだろう
人はどこまでも愚かだ、姉の死を他人事のように片付けてしまう周りが、勇者の存在が憎く、それでも姉を否定できず、どこまでも中途半端なままな自分も含めて
どれだけその概念が憎くても、自分たちを守るためにその命を散らした姉を否定してしまう選択を、三ノ輪鉄男は取りたくはなかった。いや、取れなかったのだろう
だから、もし自分が何かの間違いで国を守る立場になったその時、自分が姉が命を懸してでも守ろうとしないと行けないとその根底に根付いてしまうだろう
人はどこまでも愚かだ、姉の死を他人事のように片付けてしまう周りが、勇者の存在が憎く、それでも姉を否定できず、どこまでも中途半端なままな自分も含めて
「……」
里見は思考を巡らせる。三ノ輪鉄男のいた世界において『勇者(ちょうじん)』はそこまで隠匿された存在ではない。超人もまた公然の秘密という扱いで隠匿性など形骸化しているようなものではあるが
「お役目」、神樹という神に選定された超人兵士(ゆうしゃ)。国のためにと使われ続け、その果てに力尽きる。
神化の時代にジャングルオペレーションエンフォーサーズ、通称JOEという米軍の特殊部隊が存在した。人権を無視した超人改造手術により隊員全員が強化サイボーグへとなった者達だ
神化40年代前半頃における東南アジア某国周辺の紛争へと介入した米軍が、そこに住み着くゲリラ超人を掃討するためにこの部隊を送り込んだ
だが、無理な改造をした超人たちが戦争後に精神を病まない訳もなく、その部隊のとある曹長が日本において暴走した事件があった
『勇者』が、そうならないとは必ずしも言い切れはしない。里見からすればバーテックスが人類を滅ぼす敵以外の情報はまだ入っていない。人知を超えた化け物と、人知を超えた『勇者』。勇者がどれだけ長生きかは知らないが、それは正しい意味で死ぬまで永遠に戦い続ける無限地獄そのものであろう
故に、三ノ輪鉄男が勇者の在り方を憎いと思ってしまった理由を里見義昭は彼なりに理解できた。『神樹』と、人々の願いという『幻想』を背負わされ、死ぬまで戦い続ける運命。それが『勇者』
「お役目」、神樹という神に選定された超人兵士(ゆうしゃ)。国のためにと使われ続け、その果てに力尽きる。
神化の時代にジャングルオペレーションエンフォーサーズ、通称JOEという米軍の特殊部隊が存在した。人権を無視した超人改造手術により隊員全員が強化サイボーグへとなった者達だ
神化40年代前半頃における東南アジア某国周辺の紛争へと介入した米軍が、そこに住み着くゲリラ超人を掃討するためにこの部隊を送り込んだ
だが、無理な改造をした超人たちが戦争後に精神を病まない訳もなく、その部隊のとある曹長が日本において暴走した事件があった
『勇者』が、そうならないとは必ずしも言い切れはしない。里見からすればバーテックスが人類を滅ぼす敵以外の情報はまだ入っていない。人知を超えた化け物と、人知を超えた『勇者』。勇者がどれだけ長生きかは知らないが、それは正しい意味で死ぬまで永遠に戦い続ける無限地獄そのものであろう
故に、三ノ輪鉄男が勇者の在り方を憎いと思ってしまった理由を里見義昭は彼なりに理解できた。『神樹』と、人々の願いという『幻想』を背負わされ、死ぬまで戦い続ける運命。それが『勇者』
「――悍ましいものだな」
里見の口から漏れたのは、素直な感想だった。里見義昭は善人ではない。自らの願望のために超人を自分の世界から一掃しようと考えている人物だ
だが、それ故に、暗躍のために裏を知る者故に、『超人』の存在を不自然だと思う彼にとっては、その世界の正しさは余りにも悍ましいものであった
それと同時に、この三ノ輪鉄男という少年の奥底にある感情は、何かしら使えるとも考えた
だが、それ故に、暗躍のために裏を知る者故に、『超人』の存在を不自然だと思う彼にとっては、その世界の正しさは余りにも悍ましいものであった
それと同時に、この三ノ輪鉄男という少年の奥底にある感情は、何かしら使えるとも考えた
「――もしも、その『幻想』を否定できるとしたら、どうする?」
「――え?」
「――え?」
里見の問いかけ。それに対し三ノ輪鉄男は思わず唖然となる。まるで自分の心情を見透かすかのように、自分の中に燻る憎悪を釣り上げようとばかりに
「私は、超人がいる世界にいながら、超人の存在が酷く不自然に思えてしまっていてね」
「……どうして」
「君が疑問に思う理由もわからんでもないさ。ならばまず聞こうか。自分のいた世界の在り方は本当に正しかったのか?」
「……どうして」
「君が疑問に思う理由もわからんでもないさ。ならばまず聞こうか。自分のいた世界の在り方は本当に正しかったのか?」
里見の次の問いは、三ノ輪鉄男を試すかのような言葉。自分の世界が本当に正しいのか、哲学めいた問いかけだ
「そ、れは……」
口籠るはある意味必然だった。いくら姉の死を切欠にその歪みを自覚はしたが、それでも世界そのものを疑うという発想には至らなかったからだ
「――神化20年8月、終戦直前の広島に米軍の爆撃機が新型爆弾を投下した。だが、それによる被害は起きなかった」
「米軍の爆撃機、広島、新型爆弾……原爆?」
「米軍の爆撃機、広島、新型爆弾……原爆?」
広島、米軍の新型爆弾。その単語だけで三ノ輪鉄男としても察するもの。核爆弾。広島と長崎に投下され、甚大な被害を引き起こし、日本が降伏勧告を受け入れるきっかけを作ったもの
「だがね、私は思うのだよ。どこかの歴史で、「新型爆弾」がちゃんと爆発し、広島に被害を与えたという可能性が存在することを」
「……それって」
「……それって」
間違いなく、三ノ輪鉄男のいた世界の、昭和の時代の出来事だ。彼のいた世界の神化は、紛れもなく自分たちのいた世界の過去――昭和の時代の、第二次世界大戦そのものだ
「――じゃあ、超人の存在が酷く不自然っていうのは」
「私のいた世界は、人々の、超人を望む『幻想』によって分岐した歴史だと、私は思っているのだよ。そして私の取っ手の正しい世界の在り方は、超人は存在せず、善も悪も幸福も残酷さも、平等に訪れる世界だと」
「私のいた世界は、人々の、超人を望む『幻想』によって分岐した歴史だと、私は思っているのだよ。そして私の取っ手の正しい世界の在り方は、超人は存在せず、善も悪も幸福も残酷さも、平等に訪れる世界だと」
それこそが里見義昭の望み。超人という不自然極まりない存在を一掃し、正しい世界を構築する。それが里見義昭の野望。そして世界は何の『異常もなく』都合よく不都合に歴史を刻み続けるだろう
「……あんたは、姉ちゃんのことまで否定したいっていうのかよ」
三ノ輪鉄男は反論する。確かにバーテックスがいなくなれば勇者も大赦も存在価値が無くなり、自然消滅するであろう。だが、そうなれば勇者であった姉の頑張りも無に帰すのかと、思わず怒らずには得なかった
「そう焦るな。君の姉を否定するつもりなどない。私が否定したいのは『超人』の概念だよ。「外敵がいるから超人は存在する、悪の超人がいるのだから善の超人は存在する。バーテックスがいるから勇者は存在する。視点を変えれば必然的な因果でしかない」
善があるからこそ悪はある。悪があるからこそ善はある。善人が悪行を為し、悪人が善行を為す。その細部に複雑な構図があろうとも、全体的な面で言えば単純な善悪の対立模様でしかない。そこに暗躍するものが紛れ込む以外は
「君の世界は、そんな世界の幻想に巻き込まれたと、私は思うのだよ。――だからこそ、君の姉のように、世界の生贄にされる。幻想を望む神々の、玩具にされる」
何も言い返せない。その言葉に、三ノ輪鉄男は口を開くことすら出来なかった。
「君は結局、姉を裏切るのが怖いと思いこんでいるだけだろう? 世界がそんな残酷な幻想を望むのであれば、その幻想を、勇者を、超人どもを、その概念を永遠に消し去ってしまえばいいのだ」
心の内の憎しみを見据え、里見義昭は問いかける。憎ければ消してしまえばいい。単純至極な感情の暴露。三ノ輪鉄男がその選択を取らないでいたのは、それでも世界を守ろうとした姉の意志を裏切りたくないからだ。託された弟のことも、三ノ輪家というしがらみも、彼の中で渦巻くものも――全て投げ捨ててしまえばどれだけ楽だっただろう
だけど、そんな事は出来るわけがない。姉ちゃんを裏切るなんて出来るわけがない。それが唯一三ノ輪鉄男を繋ぎ止める唯一の楔だ
だが、里見義昭はその楔を破壊しようと誘惑を続ける。彼の中に燻るそれをうまく解き放ちさえすれば、彼の望む超人のいない世界への階になり得るのだから
だけど、そんな事は出来るわけがない。姉ちゃんを裏切るなんて出来るわけがない。それが唯一三ノ輪鉄男を繋ぎ止める唯一の楔だ
だが、里見義昭はその楔を破壊しようと誘惑を続ける。彼の中に燻るそれをうまく解き放ちさえすれば、彼の望む超人のいない世界への階になり得るのだから
「どんなに世界が憎くても、それでも姉が守った世界だから否定できない? そんな幻想は、否定してしまえ。君に足りないのは、全てを裏切っても手に入れるべき願望への渇望だ。いずれ―――君の姉の死の意味すらも、踏み躙られる事になるぞ」
「――――――――あ」
「――――――――あ」
致命的だった。里見義昭の「超人も勇者もあまり変わりはない」。勇者は資格があるものさえあればいくらでも補充できる。ただ崇め奉られるというだけで、ただ重要とされるだけで、補充される兵士でしか無い
人口という意味合いではそれには上限はあるだろう。だが、里見の言葉のせいで、勇者という存在が上によって使い捨てられる兵士という認識を刻まれてしまい、それを払拭できなかった
人口という意味合いではそれには上限はあるだろう。だが、里見の言葉のせいで、勇者という存在が上によって使い捨てられる兵士という認識を刻まれてしまい、それを払拭できなかった
「君の姉の死の意味すらも、踏み躙られる」。余りにも、余りにも残酷な精神への毒だ。もしバーテックスの戦いが永遠に続くとしたら、今まで死んでいった勇者はその死や思いすらもプロパガンダとして利用されかねない
あくまでそれは神西暦を知らぬ里見視点での考え。だが、今の三ノ輪鉄男にとっては有効で致命的な毒であった
あくまでそれは神西暦を知らぬ里見視点での考え。だが、今の三ノ輪鉄男にとっては有効で致命的な毒であった
『三ノ輪銀様の輝かしい偉業は、とこしえに我々の指針として残ることでしょう。どうか神樹様のもとで安らかに、そして末永く、私共の行く手をお見守り下さい』
『神樹様のお役目で逝かれるとは、大変名誉なことじゃないか』
『銀ちゃんはね、英霊になられたの。羨ましいわ』
『今後三ノ輪家の者は、法外な援助が受けられるんだ。むしも銀も孝行が出来て誇らしいことだろうよ』
もはや今の三ノ輪鉄男に御せる事の出来るものではない。その絶望は、その喪失は、その怒りは、その憎しみは
何が偉業だ、何が名誉だ、何が英霊になれただ―――何が孝行出来て誇らしいだ。姉ちゃんが死にそうになった時に、姉ちゃんが何を思っていたのか知らない癖に。どいつもこいつも他人事みたいに
お前たちにとって俺の姉ちゃんはその程度なのか。何が勇者だ何がお役目だふざけるな他の勇者もそうやって縛り付けて見殺しにするのか巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
何が偉業だ、何が名誉だ、何が英霊になれただ―――何が孝行出来て誇らしいだ。姉ちゃんが死にそうになった時に、姉ちゃんが何を思っていたのか知らない癖に。どいつもこいつも他人事みたいに
お前たちにとって俺の姉ちゃんはその程度なのか。何が勇者だ何がお役目だふざけるな他の勇者もそうやって縛り付けて見殺しにするのか巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
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憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
―――俺は、勇者が憎い。どうしようなく憎い。姉ちゃんを勇者にした、世界の幻想が、たまらなく憎い
「では改めて問おうか。己が幻想の為、今在る世界を如何なる犠牲を以ってしても、その願いを叶える覚悟はあるか」
「………やる」
それは憎悪だ。憎悪に呑まれた、現実を知るには余りにも幼すぎた一人の少年の憎悪だ
「……なんだって、やってやる」
そしてその憎悪は、狂気となりて、全てを踏み躙ってでも、願望を叶えるエゴへと変わる
「――ならば喜べ少年。君の願いは、いずれ叶う」
幻想の否定者は、それに対し、拍手を贈り、賛辞の言葉とともに、その生誕を祝福する
○ ○ ○
「――行ったか」
過ぎゆく少年の姿を、里見義昭は静かに見送る。種は芽吹いた。幻想を憎む事を覚えた少年は、どういう形であろうと自らの目的の足掛かりとなりうる
「選別の品も、与えておいたからな」
三ノ輪鉄男が里見義昭の元を去る前、里見は自らに支給されていた一本の刀を手渡した。それはある意味里見義昭からの祝福として、三ノ輪鉄男はその祝福に何も言わず、立ち去っていった
「さて、と――」
里見義昭としては、三ノ輪鉄男に同行しても良かったとは考えていた。だが参加者の全貌が見えず、尚且超人課もしくは人吉爾朗一派がいる可能性がある以上は不用意な同行はかえって悪手である
何も書かれていない名簿、というのもまた怪しいものであるが、明確にどのような参加者がいるかで、方針もまた変わっていくだろう
そして何より芽生えた種は、恐ろしい存在となりて自らへ立ち塞がる可能性もありうる。方向性は同じであれど、明確な最終目的は完全な別。何れ雌雄を決する時が来るであろう。そしてそれは、彼も分かっているはずだ
何も書かれていない名簿、というのもまた怪しいものであるが、明確にどのような参加者がいるかで、方針もまた変わっていくだろう
そして何より芽生えた種は、恐ろしい存在となりて自らへ立ち塞がる可能性もありうる。方向性は同じであれど、明確な最終目的は完全な別。何れ雌雄を決する時が来るであろう。そしてそれは、彼も分かっているはずだ
空はあいも変わらず紅い月が輝いている。海外において月は古来より狂気を齎す言い伝えが存在する。かの青年もまた、自分と言う名の満月に、この殺し合いという名の狂気に当てられた
超人・里見義昭はほくそ笑む。彼の望みもまた、彼が望んだ幻想であるが故に、その先に纏わる者は、だれも知らないままで
超人・里見義昭はほくそ笑む。彼の望みもまた、彼が望んだ幻想であるが故に、その先に纏わる者は、だれも知らないままで
【里見義昭@コンクリート・レボルティオ~超人幻想~】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:首輪の解除を最優先
1:利用できる人物を探す。同行者は参加者がわかれば検討
2:三ノ輪鉄男とは何れ雌雄を決する事になりそうだ
[備考]
※参戦時期は最低でも第二期以降
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:首輪の解除を最優先
1:利用できる人物を探す。同行者は参加者がわかれば検討
2:三ノ輪鉄男とは何れ雌雄を決する事になりそうだ
[備考]
※参戦時期は最低でも第二期以降
○ ○ ○
「ごめんな、姉ちゃん。約束、守れないや」
その言葉は、狂気の奥底に残った残滓でしかなく
この身は何れ屍山血河を築くか、何も出来ずにただ朽ち果てるか
祝福という名の選別に授けられた刀は、三ノ輪鉄男の行く先を嘲笑うかのように照らしている
「でも、俺は――――」
姉ちゃんに、生きて欲しかったんだ
その思いは、赤き月の廻る世界において、儚く薄れていった
【三ノ輪鉄男@鷲尾須美は勇者である】
[状態]:健康、『勇者』への憎悪
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、刀の支給品1本(出典は後続の書き手にお任せします)
[思考・状況]
基本方針:『幻想』を滅ぼす。姉ちゃんを生き返らせる
1:ごめんな、姉ちゃん
[備考]
※参戦時期は三ノ輪銀死亡後
[状態]:健康、『勇者』への憎悪
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、刀の支給品1本(出典は後続の書き手にお任せします)
[思考・状況]
基本方針:『幻想』を滅ぼす。姉ちゃんを生き返らせる
1:ごめんな、姉ちゃん
[備考]
※参戦時期は三ノ輪銀死亡後