鬼殺隊霞柱、時任無一郎は殺し合いが始まると同時に己の立ち位置を明確にしていた。
即ちメフィスとフェレスなる二人の主催者に対する反抗の構えである。
無一郎自身を含めて不特定多数の人間を無理矢理に拉致して殺し合いを強要し、あまつさえ二人の少女を惨たらしく殺害した外道。
鬼殺隊が戦う鬼と同様、あるいはそれにも劣る字義通りの鬼畜の所業。
そんな悪鬼どもに柱である無一郎が与し、殺し合いの進行を助ける理由など微塵もない。
即ちメフィスとフェレスなる二人の主催者に対する反抗の構えである。
無一郎自身を含めて不特定多数の人間を無理矢理に拉致して殺し合いを強要し、あまつさえ二人の少女を惨たらしく殺害した外道。
鬼殺隊が戦う鬼と同様、あるいはそれにも劣る字義通りの鬼畜の所業。
そんな悪鬼どもに柱である無一郎が与し、殺し合いの進行を助ける理由など微塵もない。
「僕の日輪刀は……ある。じゃあ何故一度没収したんだ?」
とはいえ非武装の状態で放り出された以上支給された荷物の確認は不可欠だった。
支給された物品の大半は大正時代の、それもお世辞にも十分な学があるとは言えない無一郎にとって理解できないものだった。
しかし使い慣れた愛刀は見間違えるはずもなかった。
支給された物品の大半は大正時代の、それもお世辞にも十分な学があるとは言えない無一郎にとって理解できないものだった。
しかし使い慣れた愛刀は見間違えるはずもなかった。
「これで人を殺し回れってこと?するはずないだろそんなこと」
岩塊よりも硬い鬼の頸を断ち切る日輪刀も、そのための戦闘技術である呼吸も人喰い鬼を斬るためのものだ。
己の命惜しさに人を斬るようならそもそも無一郎は鬼殺隊になど入っていない。
使い慣れた武器を返したところで自分たちに反逆など出来るはずがないと馬鹿にされているのだ。今にその報いを受けさせてみせる。
己の命惜しさに人を斬るようならそもそも無一郎は鬼殺隊になど入っていない。
使い慣れた武器を返したところで自分たちに反逆など出来るはずがないと馬鹿にされているのだ。今にその報いを受けさせてみせる。
(しかしこの首輪をどうしたものか……他の参加者なら外す方法に心当たりがあるかもしれない)
問題は主催者の匙加減一つでいつでも起爆できるであろう首輪だ。
どうにかして主催者を出し抜き首輪を外す必要があるが、思い当たる鬼殺隊の仲間にこの手の技術に長けていそうな者はいない。
というか鬼殺隊の隊士、特に柱はこの場に居ないに越したことはないとさえ思っている。
鬼の首魁である鬼舞辻無惨との決戦が近い中、鬼殺隊の中核である柱が何人も拉致されているなどあってはならないことだ。
故に無一郎は名簿を確認するまでもなく他の参加者との接触を求めて行動を開始しようとしていた。
どうにかして主催者を出し抜き首輪を外す必要があるが、思い当たる鬼殺隊の仲間にこの手の技術に長けていそうな者はいない。
というか鬼殺隊の隊士、特に柱はこの場に居ないに越したことはないとさえ思っている。
鬼の首魁である鬼舞辻無惨との決戦が近い中、鬼殺隊の中核である柱が何人も拉致されているなどあってはならないことだ。
故に無一郎は名簿を確認するまでもなく他の参加者との接触を求めて行動を開始しようとしていた。
その時だ、目線の先に一人の鬼を見つけたのは。
その存在を視認した瞬間、知らず身体に怖気が走り震えが止まらなくなった。
腰に差した刀を抜こうとしているのに一向に抜けない。本能が目の前の存在と戦うことを全力で拒否している。
顔中から脂汗が流れる。意識を切り替え呼吸を落ちつけようとしているのに身体が全く言うことを聞かない。
腰に差した刀を抜こうとしているのに一向に抜けない。本能が目の前の存在と戦うことを全力で拒否している。
顔中から脂汗が流れる。意識を切り替え呼吸を落ちつけようとしているのに身体が全く言うことを聞かない。
「お前は……そうか……継国の子孫か……」
いつの間にか無一郎の前に立っていた鬼は大正の時代からは外れた古侍の如き出で立ちだった。
紫の着物に歪な形状ながら刀を携えている。
しかし何より特徴的なのは人間には有り得ない六つの眼とその眼から溢れるように流れる血涙、そしてうっすらと見える「上弦 壱」と左右それぞれの眼に刻まれた数字だった。
紫の着物に歪な形状ながら刀を携えている。
しかし何より特徴的なのは人間には有り得ない六つの眼とその眼から溢れるように流れる血涙、そしてうっすらと見える「上弦 壱」と左右それぞれの眼に刻まれた数字だった。
(上弦の壱…!?それにこいつは今何と言った……!?)
鬼舞辻の配下、十二鬼月でも頂点に立つ鬼が無一郎の眼前に立っている。
威厳すら感じられる重厚な構え、加えて鬼としての気配も以前斃した上弦の伍などとは比べものにならない強大さだ。
逆に何故ここまで接近されるまで気配に気づけなかったのかが不思議なほどだ。
だがそれだけではない。鬼としての強さだけではない、名状しがたい禍々しさは一体何だ。
痣を発現させて動こうとするも、相変わらず一歩たりとも動けない。蛇に睨まれた蛙のようだ。
威厳すら感じられる重厚な構え、加えて鬼としての気配も以前斃した上弦の伍などとは比べものにならない強大さだ。
逆に何故ここまで接近されるまで気配に気づけなかったのかが不思議なほどだ。
だがそれだけではない。鬼としての強さだけではない、名状しがたい禍々しさは一体何だ。
痣を発現させて動こうとするも、相変わらず一歩たりとも動けない。蛇に睨まれた蛙のようだ。
「痣……なるほど、流石は我が末裔……。
萎縮し身動きが取れぬことを恥じる必要はない……彼我の力量差を正しく理解できるのはお前が強者であることの証だ……」
萎縮し身動きが取れぬことを恥じる必要はない……彼我の力量差を正しく理解できるのはお前が強者であることの証だ……」
鬼らしい傲慢な上からの物言いに反論してやりたかった。実際鬼に舌戦でやり込められるような柔い精神力では鬼殺の剣士などやっていられない。
だというのに舌を動かすことさえままならない。心は折れていないのに本能が、魂がどうしようもなく屈服してしまっている。
何をしようとも僅かでも動いた瞬間殺されると本能的に理解できてしまう。この鬼はただそこに在るだけで痣者にして柱たる無一郎の戦意をへし折るほどの領域に立っている。
だというのに舌を動かすことさえままならない。心は折れていないのに本能が、魂がどうしようもなく屈服してしまっている。
何をしようとも僅かでも動いた瞬間殺されると本能的に理解できてしまう。この鬼はただそこに在るだけで痣者にして柱たる無一郎の戦意をへし折るほどの領域に立っている。
「だからこそ残念だ……このようになり果てていなければ鬼となり更なる強さを求める道もあったであろうに……。
最早私はあの御方に仕える十二鬼月の黒死牟ではない……ただ一切鏖殺を成す主催の者どもの走狗に過ぎぬ……」
(…来る!動け、動け俺の身体!)
最早私はあの御方に仕える十二鬼月の黒死牟ではない……ただ一切鏖殺を成す主催の者どもの走狗に過ぎぬ……」
(…来る!動け、動け俺の身体!)
黒死牟を名乗る鬼の気配が変わった。腰に提げた歪な刀に手を掛けた。
それがわかっているのに動けない。魂が無駄な抵抗はやめろと訴えかけてくるかのようだ。
それがわかっているのに動けない。魂が無駄な抵抗はやめろと訴えかけてくるかのようだ。
黒死牟の剣閃が振るわれる。
それは無一郎には視認することも敵わぬ、異次元の斬撃であった。
だが無一郎の肉体が両断されることはなかった。代わりに甲高い金属音が鳴り響いた。
それは無一郎には視認することも敵わぬ、異次元の斬撃であった。
だが無一郎の肉体が両断されることはなかった。代わりに甲高い金属音が鳴り響いた。
気がつけば無一郎と黒死牟の間に一人の剣士が立っていた。
無一郎からは背中しか見えないが相当な上背だ。悲鳴嶼ほどでないにせよ、宇髄に匹敵するだろう。
その剣士は見たところ黒死牟とほぼ同じ髪型で日輪刀と思しき刀を手にしていた。
しかし見たことのない色の日輪刀だ。炎の呼吸の剣士が使う色ともまた異なる赫刀だった。
無一郎からは背中しか見えないが相当な上背だ。悲鳴嶼ほどでないにせよ、宇髄に匹敵するだろう。
その剣士は見たところ黒死牟とほぼ同じ髪型で日輪刀と思しき刀を手にしていた。
しかし見たことのない色の日輪刀だ。炎の呼吸の剣士が使う色ともまた異なる赫刀だった。
「お前……は…………!?」
血色に染まった黒死牟の六つの眼が驚愕に見開かれていた。
有り得ないものを、信じられぬものを見たと言わんばかりだ。
有り得ないものを、信じられぬものを見たと言わんばかりだ。
「動けるか」
剣士が僅かに顔を無一郎に向けて問うてきた。
その言葉でようやく金縛りに遭ったかのように硬直していた身体に自由が戻る。
その言葉でようやく金縛りに遭ったかのように硬直していた身体に自由が戻る。
(顔に炎のような痣!?じゃあこの剣士も痣を発現させた鬼狩りなのか!?)
剣士は鬼殺隊の隊服を身に着けていない。
黒死牟の紫の着物の色違いのような服装で、とてもではないが鬼殺隊の隊士には見えない。
何よりあの人智を超えた黒死牟の一撃を涼しい顔で止めてみせるなど柱の無一郎からしても信じ難い。
黒死牟の紫の着物の色違いのような服装で、とてもではないが鬼殺隊の隊士には見えない。
何よりあの人智を超えた黒死牟の一撃を涼しい顔で止めてみせるなど柱の無一郎からしても信じ難い。
「すぐにこの場から離れろ。それまで私が此処を受け持つ」
「……!」
「……!」
屈辱だった。柱である自分が鬼を前にして碌に動けず逃げろと言われるなど。
しかし怒りを感じる以上に剣士の言葉が正しいことを確信できてしまう。
この剣士はさながら日輪の具現のようだ。実力も格も鬼殺隊の剣士たちとはまるで次元が違うことが今の攻防だけで感じ取れる。
しかし怒りを感じる以上に剣士の言葉が正しいことを確信できてしまう。
この剣士はさながら日輪の具現のようだ。実力も格も鬼殺隊の剣士たちとはまるで次元が違うことが今の攻防だけで感じ取れる。
迷わず無一郎は荷物を拾って走り出した。
この場に留まったところで出来ることはなく、どころか足手まといにしかならないと理解できてしまうが故に。
今の無一郎に出来ることがあるとすれば精々他の参加者の中にあの二人に匹敵する実力者がいると信じて助けを求めるぐらいだ。
先ほどとは別の理由で心が折れそうになる。これまでの鍛錬と鬼との死闘の日々を全て否定されたかのように感じられる。
この場に留まったところで出来ることはなく、どころか足手まといにしかならないと理解できてしまうが故に。
今の無一郎に出来ることがあるとすれば精々他の参加者の中にあの二人に匹敵する実力者がいると信じて助けを求めるぐらいだ。
先ほどとは別の理由で心が折れそうになる。これまでの鍛錬と鬼との死闘の日々を全て否定されたかのように感じられる。
(僕は霞柱の時任無一郎だぞ!なのに、なのにこんなにも無力なのか、僕は!?)
そうして無一郎が余人には目でも追えぬほどの健脚で離脱したことを確認すると日輪の剣士―――継国縁壱は黒死牟へと向き直った。
変わり果てた兄を見る縁壱の双眸には知らず涙が流れていた。
変わり果てた兄を見る縁壱の双眸には知らず涙が流れていた。
「―――お労しや、兄上」
○○○
主催者を名乗る娘二人が外法の使い手であることはわかっていた。
そうでなければ無限城にて待機していた自分を何処とも知れぬ奇怪な空間に連れ込み殺し合いを強要するなど出来るはずもない。
まして、主たる鬼舞辻無惨が配下の鬼に掛けた呪いを一方的に消し去り己の心臓を作り替え、別の存在に作り替えるなど!
己の内から溢れ出す殺戮への衝動と未だかつて感じたことのない力の奔流に黒死牟自身が困惑していたほどなのだ。
四百年以上の長きに渡り鬼の力に身を浸し、技を磨き続けた黒死牟だからこそ適応できているが、他の者では容易く吞み込まれていただろう。
そうでなければ無限城にて待機していた自分を何処とも知れぬ奇怪な空間に連れ込み殺し合いを強要するなど出来るはずもない。
まして、主たる鬼舞辻無惨が配下の鬼に掛けた呪いを一方的に消し去り己の心臓を作り替え、別の存在に作り替えるなど!
己の内から溢れ出す殺戮への衝動と未だかつて感じたことのない力の奔流に黒死牟自身が困惑していたほどなのだ。
四百年以上の長きに渡り鬼の力に身を浸し、技を磨き続けた黒死牟だからこそ適応できているが、他の者では容易く吞み込まれていただろう。
だが内心の混乱も収まりきらぬうちに更なる衝撃に襲われた。
己の子孫にあたる鬼狩りの剣士を内から湧き出る衝動に従い切り捨てようと刀を抜いたその瞬間、『奴』は現れたのだ。
四百と六十年以上も前に死んだはずの、黒死牟が人であった頃の肉の片割れ。
黒死牟に何百年と経っても消えない敗北感を刻み続けた弟、縁壱が。
己の子孫にあたる鬼狩りの剣士を内から湧き出る衝動に従い切り捨てようと刀を抜いたその瞬間、『奴』は現れたのだ。
四百と六十年以上も前に死んだはずの、黒死牟が人であった頃の肉の片割れ。
黒死牟に何百年と経っても消えない敗北感を刻み続けた弟、縁壱が。
「―――お労しや、兄上」
かつて相対した時と同じ言葉を紡ぎながら。
かつて相対した時と同じように双眸から涙を流しながら。
かつて相対した時と同じように双眸から涙を流しながら。
だが、だからこそだろうか。
四百と六十年前の状況の再現に黒死牟は一つの確信を得た。
四百と六十年前の状況の再現に黒死牟は一つの確信を得た。
「四百と六十年前…私と相対した時もお前は同じことを言ったな……。
その時のお前は命尽きる寸前の老爺であったが……」
「……兄上?」
「思い当たらぬ、か……やはり…そういうことか……」
その時のお前は命尽きる寸前の老爺であったが……」
「……兄上?」
「思い当たらぬ、か……やはり…そういうことか……」
そもそもが、黒死牟が元いた大正の時代に平安京など残っていない。
血鬼術による異空間構築能力だと仮定してもあまりに高度、かつ緻密に過ぎる。
しかしこの縁壱を見れば謎は解けた。煎じ詰めれば答えは簡単、主催者どもは時を操る術を持っているのだ。
だから生きていた頃の、若かりし日の縁壱を参加者として連れてくることができたのだろう。
それは取りも直さず主催者が縁壱を生け捕りにして殺し合いに参加させるほどの力を有していることの証左でもある。
血鬼術による異空間構築能力だと仮定してもあまりに高度、かつ緻密に過ぎる。
しかしこの縁壱を見れば謎は解けた。煎じ詰めれば答えは簡単、主催者どもは時を操る術を持っているのだ。
だから生きていた頃の、若かりし日の縁壱を参加者として連れてくることができたのだろう。
それは取りも直さず主催者が縁壱を生け捕りにして殺し合いに参加させるほどの力を有していることの証左でもある。
ふと、とうに死んだはずの縁壱を前にした己がこれほど冷静な思考力を保っている事実に気付き、内心で驚く。
異常事態に次ぐ異常事態に黒死牟の感覚が麻痺したのか、あるいは精神、魂までも弄られた結果かあるいは両方か。
だが―――そんなことは最早どうでも良いことだった。
異常事態に次ぐ異常事態に黒死牟の感覚が麻痺したのか、あるいは精神、魂までも弄られた結果かあるいは両方か。
だが―――そんなことは最早どうでも良いことだった。
「いずれにせよ……永遠に得られぬはずの機会を得られたのだ……。
これだけでも私がこの地に招かれた意味はあったというもの……」
これだけでも私がこの地に招かれた意味はあったというもの……」
鬼狩りと鬼が出会った以上、為すべきことは一つ。
黒死牟が自身の肉から生成した刀に手を掛けると、応ずるように縁壱も構えを取った。
四百と六十年前には、老人の縁壱に対して刀を抜くことすらできず圧倒され、挙句寿命で勝ち逃げを許した。
しかし今黒死牟の眼前に立つ縁壱は真実全盛期の若き姿。如何なる結果に至るにせよ寿命で勝ち逃げという結果だけは起こらない。
黒死牟が自身の肉から生成した刀に手を掛けると、応ずるように縁壱も構えを取った。
四百と六十年前には、老人の縁壱に対して刀を抜くことすらできず圧倒され、挙句寿命で勝ち逃げを許した。
しかし今黒死牟の眼前に立つ縁壱は真実全盛期の若き姿。如何なる結果に至るにせよ寿命で勝ち逃げという結果だけは起こらない。
「―――参る」
縁壱から放たれる重圧、あるいは剣気とでも呼ぶべきもの。
四百と六十年前に相対した時以上のそれを前にしても黒死牟は取り乱さない。
一度経験しているからか―――それとも黒死牟自身がその重圧を跳ね除ける力を得ているからか。
四百と六十年前に相対した時以上のそれを前にしても黒死牟は取り乱さない。
一度経験しているからか―――それとも黒死牟自身がその重圧を跳ね除ける力を得ているからか。
人間の域を遥かに超えた速度の踏み込み一閃。
継国縁壱に掛かればこれだけで鬼舞辻無惨を除くあらゆる鬼が屠られるであろう、頸狙いの超神速の斬撃。
けれどそれは黒死牟の頸を捉えることはなく、同等の速度で繰り出した斬撃によって相殺される。
継国縁壱に掛かればこれだけで鬼舞辻無惨を除くあらゆる鬼が屠られるであろう、頸狙いの超神速の斬撃。
けれどそれは黒死牟の頸を捉えることはなく、同等の速度で繰り出した斬撃によって相殺される。
日の呼吸 斜陽転身
一流の剣士であれば防がれた時点で距離を取り、仕切り直しを図っただろう。
だが人の域に収まらぬ剣技を持つ縁壱は最初の一撃を弾かれた瞬間自ら空中へ飛び、天地を入れ替えながら放つ日の呼吸の技を繰り出した。
これにも黒死牟は反応し刀で防御するが、縁壱の赫刀とぶつかり合った瞬間刀身の半ばから折れた。
血鬼術で生成された刀と赫刀が衝突したが故の必然。一度目は耐えたが日の呼吸の技を放った二度目には耐えられない。
だが人の域に収まらぬ剣技を持つ縁壱は最初の一撃を弾かれた瞬間自ら空中へ飛び、天地を入れ替えながら放つ日の呼吸の技を繰り出した。
これにも黒死牟は反応し刀で防御するが、縁壱の赫刀とぶつかり合った瞬間刀身の半ばから折れた。
血鬼術で生成された刀と赫刀が衝突したが故の必然。一度目は耐えたが日の呼吸の技を放った二度目には耐えられない。
月の呼吸 伍ノ型 月魄災禍
日の呼吸 幻日虹
宙を舞いながらにして更なる追撃を仕掛けんとした縁壱を襲う十もの斬撃。
縁壱の攻撃を予見していた黒死牟が予め仕掛けていた、刀を振るうことなく生じる月の呼吸の技。
上下左右を隈なく覆う月の呼吸の斬撃を、しかし縁壱は日の呼吸の回避技を使うことで無傷で凌ぎ距離を取った。
赫刀によって付けられた傷は鬼の再生能力では治癒できない。つまり黒死牟の肉から作られた刀は再生しない。
そう考えていた縁壱は次の瞬間、有り得ぬものを見た。鬼舞辻と戦った時以上の死の予感が総身を襲う。
縁壱の攻撃を予見していた黒死牟が予め仕掛けていた、刀を振るうことなく生じる月の呼吸の技。
上下左右を隈なく覆う月の呼吸の斬撃を、しかし縁壱は日の呼吸の回避技を使うことで無傷で凌ぎ距離を取った。
赫刀によって付けられた傷は鬼の再生能力では治癒できない。つまり黒死牟の肉から作られた刀は再生しない。
そう考えていた縁壱は次の瞬間、有り得ぬものを見た。鬼舞辻と戦った時以上の死の予感が総身を襲う。
月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え
間髪を入れず放たれる七条もの斬撃。
大地を蹂躙しながら進む超広範囲・超神速の技。更に斬撃の周囲に細かな、赤に染まった三日月の刃が付随し隙間を埋める。
咄嗟に全力で攻撃範囲から逃れた縁壱だったが、左の頬から一筋の血が流れていた。
だが縁壱の関心は自身の負傷などではなく、黒死牟の刀に対して向けられていた。
大地を蹂躙しながら進む超広範囲・超神速の技。更に斬撃の周囲に細かな、赤に染まった三日月の刃が付随し隙間を埋める。
咄嗟に全力で攻撃範囲から逃れた縁壱だったが、左の頬から一筋の血が流れていた。
だが縁壱の関心は自身の負傷などではなく、黒死牟の刀に対して向けられていた。
「何故……」
「折られたところですぐに再生する……最早お前の赫刀でも止めることなど出来ぬ……」
「折られたところですぐに再生する……最早お前の赫刀でも止めることなど出来ぬ……」
黒死牟の刀、虚哭神去は赫刀で折られたにも関わらず既に再生。どころか七支刀にも似た巨大な長刀へと変じていた。
埋め込まれた宿業の影響か、元より禍々しかった刀身は黒みがかった赤色に変貌し、刀全体に付いた無数の目も全て血のように赤く染まっていた。
埋め込まれた宿業の影響か、元より禍々しかった刀身は黒みがかった赤色に変貌し、刀全体に付いた無数の目も全て血のように赤く染まっていた。
果たして縁壱の赫刀は黒死牟に通用しなかったのか?答えは否。
縁壱の赫刀は通用していたのだ。縁壱だからこそ一瞬とはいえ黒死牟の刀を折るという事象を引き起こすことに成功していた。
これが大正時代の鬼殺隊の柱たちの赫刀であったならそもそも折ることすら出来ていないだろう。
他の武器で刀を損傷させたとしても、損傷させた瞬間に再生を完了させてしまうだろう。鬼舞辻無惨と同じように。
縁壱の赫刀は通用していたのだ。縁壱だからこそ一瞬とはいえ黒死牟の刀を折るという事象を引き起こすことに成功していた。
これが大正時代の鬼殺隊の柱たちの赫刀であったならそもそも折ることすら出来ていないだろう。
他の武器で刀を損傷させたとしても、損傷させた瞬間に再生を完了させてしまうだろう。鬼舞辻無惨と同じように。
元より上弦の壱たる鬼として凄まじき再生力を誇っていた黒死牟には宿業が埋め込まれ、八将神の一人と成り果てている。
心臓という弱点部位が増えた代償に宿業による再生能力をも付与されているのだ。
これは厳密には鬼としての再生力を強化しているのではなく、鬼と宿業の二種類の再生能力を兼ね備えた格好となっている。
このため鬼の再生力を封じる赫刀によって刀を折られても宿業による再生能力が働き一瞬のうちに刀を再生してのけたのだ。
今の黒死牟に不治の傷を刻むには縁壱の赫刀を以ってしても足りない。それこそ赫刀と、宿業を断ち切る空に至った剣士の技を同時に重ねない限りは。
心臓という弱点部位が増えた代償に宿業による再生能力をも付与されているのだ。
これは厳密には鬼としての再生力を強化しているのではなく、鬼と宿業の二種類の再生能力を兼ね備えた格好となっている。
このため鬼の再生力を封じる赫刀によって刀を折られても宿業による再生能力が働き一瞬のうちに刀を再生してのけたのだ。
今の黒死牟に不治の傷を刻むには縁壱の赫刀を以ってしても足りない。それこそ赫刀と、宿業を断ち切る空に至った剣士の技を同時に重ねない限りは。
強化されたのは再生力だけではない。埋め込まれた疑似心臓が齎す膨大な魔力は黒死牟の鬼としての基本性能を著しく引き上げていた。
身体能力に反応速度、血鬼術の威力・精度が、本来の黒死牟と比較してすら異次元と呼べる域に高められている。
そして疑似心臓は心肺機能の強化をも齎し、副産物として肺活量の大幅な増大という結果をも生んでいた。
身体能力に反応速度、血鬼術の威力・精度が、本来の黒死牟と比較してすら異次元と呼べる域に高められている。
そして疑似心臓は心肺機能の強化をも齎し、副産物として肺活量の大幅な増大という結果をも生んでいた。
呼吸の剣士が扱う全集中の呼吸は心肺を鍛え上げ、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで血管や筋肉を熱化・強化する技法だ。
そうすることで身体能力を大幅に引き上げ、岩塊よりも硬い鬼の頸を斬れるまでに強くなる。
つまり肺活量が増せば増すほどに呼吸の剣士としての地力もまた増していくと言える。
疑似心臓により強化された心肺機能は黒死牟の呼吸の剣士としての地力をも更なる高みへと押し上げていた。
そうすることで身体能力を大幅に引き上げ、岩塊よりも硬い鬼の頸を斬れるまでに強くなる。
つまり肺活量が増せば増すほどに呼吸の剣士としての地力もまた増していくと言える。
疑似心臓により強化された心肺機能は黒死牟の呼吸の剣士としての地力をも更なる高みへと押し上げていた。
鬼の肉体と血鬼術、呼吸の剣士としての地力。
それら全てが爆発的に向上した黒死牟は今や継国縁壱にも届く戦技と鬼舞辻無惨に匹敵する再生力を併せ持つ無双の戦鬼と化していた。
それら全てが爆発的に向上した黒死牟は今や継国縁壱にも届く戦技と鬼舞辻無惨に匹敵する再生力を併せ持つ無双の戦鬼と化していた。
「漸くだ……人喰い鬼に成り下がり、主催者どもに肉体を弄られ……漸くこの境地に至った……。
あの方でさえ傷つけることが出来なかったお前に、ついに傷をつけるに至った……!
今、俺は確かにお前と同じ地平に立っている…!これに勝る法悦があろうはずもない…!」
「……そうまで成り果てて、たった一人の人間の強さを極めることに何の意味があるのですか」
「私にとってはそれこそが全てだった……。そのためにあらゆるものを捨てた……。あの方への忠義すらももう無い…。
我らを引き合わせ、尋常な果し合いを実現させた主催者どもの異能。それは最早神仏の御業と形容する他ない……」
「このような凄惨な所業を行う者を神と言えるのですか?」
「知らぬ」
あの方でさえ傷つけることが出来なかったお前に、ついに傷をつけるに至った……!
今、俺は確かにお前と同じ地平に立っている…!これに勝る法悦があろうはずもない…!」
「……そうまで成り果てて、たった一人の人間の強さを極めることに何の意味があるのですか」
「私にとってはそれこそが全てだった……。そのためにあらゆるものを捨てた……。あの方への忠義すらももう無い…。
我らを引き合わせ、尋常な果し合いを実現させた主催者どもの異能。それは最早神仏の御業と形容する他ない……」
「このような凄惨な所業を行う者を神と言えるのですか?」
「知らぬ」
縁壱の問いを、黒死牟はあっさりと切り捨てた。
黒死牟にしてみれば、今この瞬間こそが全てであり、主への忠義も殺し合いの趨勢も全てが些事に過ぎないが故に。
黒死牟にしてみれば、今この瞬間こそが全てであり、主への忠義も殺し合いの趨勢も全てが些事に過ぎないが故に。
「神の真贋など知らぬ。神の正邪など知らぬ。あるのはこの奇跡の如き場を組み上げた者への感謝のみ。
例え殺し合いの終焉を待たずしてこの身と魂が燃え尽きようとも、お前を超えることさえ出来ればそれで構わん……!
そうだ、俺は二度と敗北しない。お前が相手であろうとも……!」
「兄上……」
例え殺し合いの終焉を待たずしてこの身と魂が燃え尽きようとも、お前を超えることさえ出来ればそれで構わん……!
そうだ、俺は二度と敗北しない。お前が相手であろうとも……!」
「兄上……」
自分たち兄弟は何処で間違えたのだろうか。縁壱はそう嘆かずにいられなかった。
縁壱にとって個人の武などはさして価値を見出せるものではなかった。どころか暴力を振るうことさえ本心では嫌いだった。
けれど兄はそうではなかったのだろう。思い起こせば幼少の頃、兄の稽古役を務めていた侍を叩きのめして以来兄が心から笑う姿を見たことがない。
剣の秘訣を何度も聞かれた時に気づくべきだったのだ。自分と兄では価値を見出すものがまるで違うことに。
兄は自分へのどす黒い嫉妬の念をずっと押し隠していたに過ぎなかったのだ。
そこに気づけたところで最早全てが遅い。あるいは―――生まれた時からこうなる運命だったのだろうか?
縁壱にとって個人の武などはさして価値を見出せるものではなかった。どころか暴力を振るうことさえ本心では嫌いだった。
けれど兄はそうではなかったのだろう。思い起こせば幼少の頃、兄の稽古役を務めていた侍を叩きのめして以来兄が心から笑う姿を見たことがない。
剣の秘訣を何度も聞かれた時に気づくべきだったのだ。自分と兄では価値を見出すものがまるで違うことに。
兄は自分へのどす黒い嫉妬の念をずっと押し隠していたに過ぎなかったのだ。
そこに気づけたところで最早全てが遅い。あるいは―――生まれた時からこうなる運命だったのだろうか?
「……参る」
悲壮な内心を押し殺し、再び構える。
今ここで兄を斬らねば、殺し合いに巻き込まれた大勢の人間が犠牲になる。
鬼の首魁を取り逃がした無能者の自分に兄を止める機会が与えられたことをせめてもの幸いとする他ない。
今ここで兄を斬らねば、殺し合いに巻き込まれた大勢の人間が犠牲になる。
鬼の首魁を取り逃がした無能者の自分に兄を止める機会が与えられたことをせめてもの幸いとする他ない。
赤い月が、どうしようもなく道を違えた兄弟を照らしていた。
【継国縁壱@鬼滅の刃】
[状態]:左頬に掠り傷、深い悲しみ
[装備]:継国縁壱の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:一人でも多くの者を助ける
1:兄上を斬る
2:逃がした少年(無一郎)が気になる
[備考]
※参戦時期は炭吉に耳飾りを託した後からです。
[状態]:左頬に掠り傷、深い悲しみ
[装備]:継国縁壱の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:一人でも多くの者を助ける
1:兄上を斬る
2:逃がした少年(無一郎)が気になる
[備考]
※参戦時期は炭吉に耳飾りを託した後からです。
【時任無一郎@鬼滅の刃】
[状態]:健康、無力感と屈辱
[装備]:時任無一郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:鬼殺隊として主催者を倒す
0:畜生…!
1:あの剣士(縁壱)の助けになれる参加者を探す
2:鬼殺隊の仲間は巻き込まれていないと思いたい
[備考]
※参戦時期は柱稽古〜無限城での決戦開始までの間からです。
[状態]:健康、無力感と屈辱
[装備]:時任無一郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:鬼殺隊として主催者を倒す
0:畜生…!
1:あの剣士(縁壱)の助けになれる参加者を探す
2:鬼殺隊の仲間は巻き込まれていないと思いたい
[備考]
※参戦時期は柱稽古〜無限城での決戦開始までの間からです。
【八将神枠】
【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:健康、戦意高揚
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:縁壱を殺す
1:縁壱を殺す
[備考]
※参戦時期は少なくとも無限城決戦開始よりも前です。
※八将神化により身体能力、再生能力、血鬼術、呼吸の精度が大幅に強化されています。
【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:健康、戦意高揚
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:縁壱を殺す
1:縁壱を殺す
[備考]
※参戦時期は少なくとも無限城決戦開始よりも前です。
※八将神化により身体能力、再生能力、血鬼術、呼吸の精度が大幅に強化されています。