その9
最終更新:
homuhomu_tabetai
-
view
それから、しばらくの後――
野良仔あん「ニャンコ~♪」
野良仔さや「チャヤヤ~♪」
あの植え込みの群の中で、生まれて間もない幼い仔あんあんと仔さやさやが、
楽しそうに歌を口ずさんでいた。
野良あん「アン~」ニッコリ
それを嬉しそうに見つめる、隻腕のあんあん。
そう、あんあんは、奇跡的にその命を取り留めた。
仲間達の必死の治療と、そして――
?????「ザヤ゙ヤ゙」
野良あん「アン、サヤカァ///」
野良黒さや「ザヤ゙ァ、ギョヴゴォ///」
――自らの喉を潰す事も厭わず、何日も休まず懸命に歌い続けてくれた……必死に呼び続けてくれたさやさやのお陰で。
黒化した身体は、極度の疲労によって色が沈着し、
きりきりと見分けが付かないほど真っ黒に染まっていた。
潰れた喉からは嗄れた声しか聞こえず、あの絶世の美声は失われていた。
あんあんも、あの野良猫との戦いで槍と片腕を失い、
まともに狩りをする事もままならなくなってしまった。
だが、それでも、あんあんとさやさやは互いを求め合い、つがいとなって、新たな命が結ばれた。
それが、目の前にいる娘達である。
野良あん「アンコ……」
愛しいつがいと、愛しい娘達を見ながら、あんあんはふと考えた。
若かりし日、尊敬する義母を見上げて思った、
あの義母の気持ちが、今になってようやく分かった気がする。
あの頃は、責任感とか、そんな言葉を並べて義母も気持ちを想像していたが。
今なら、ハッキリと分かる。
義母であったさやさやは、もう一人の義母であるめがほむを、心から愛していた。
そして、そのめがほむとの間に生まれたさやさやの事も、真剣に愛していた。
愛しているから守りたいと、愛しているから傍にいたいと、
義母は必死になって生きて、全力で自らの家族を愛したのだ。
それはきっと、事故で死んだ自分の母あんあんも、
死の瞬間まで自分と妹を守り続けてくれた母まみまみも、
きっと同じだったのだろう。
そう思うと、若かりし日の自分の勘違いが、少し恥ずかしい気がした。
野良あん「アン……///」
野良黒さや「ザヤ゙?」キョトン
羞恥で頬を染めた自分を、さやさやが小首を傾げて覗き込む。
野良あん「ア、アンコッ!///」プイッ
野良黒さや「マ゙イ゙ア゙ガジャッデマ゙ズネ゙ェ」クスクス
ぶっきらぼうに顔を背けるあんあんがおかしくて、さやさやは微笑ましそうに目を細めた。
ニャンコ~♪ チャヤヤ~♪ ティリョリョ~♪ キャミミ~♪ ホミュミュ~♪ ヒチョチョ~♪
いつの間にか、仔供達は集まって、大合唱を始めている。
野良黒さや「ザヤ゙……」
合唱の様子を、少しだけ寂しそうに見遣るさやさや。
もう、自分は、かつてのように美しい歌を唄う事が出来ない。
それだけが、少し寂しかった。
だが――
野良あん「アンコッ///」
いいんじゃないか。
傍らから、ぶっきらぼうな声が聞こえる。
野良黒さや「ザヤ゙……ギョヴゴ……ザヤ゙ァ///」
さあ、歌を、唄おう……
野良黒さや「ザヤ゙ヤ゙~♪」
どんな歌が、好き?
野良黒さや「ギョヴゴォ……ザヤ゙ヤ゙ザヤ゙ヤ゙♪///」
野良あん「サヤカァ……クゥカイ///」
君の歌が、好き。
「歌を、唄おう」・了