その3
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homuhomu_tabetai
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男女は花壇の手前で立ち止まると、そっとしゃがみ込み様子を伺った。
そして花壇の中で動くものを確かめると頷きあった。
…男は胸ポケットを軽くつつく。すると、中から若まどが顔を出した。
まだ眠気の覚めていない、ぽや~っとした顔をしている。
…男は若まどの頭を優しくなでてやり、何かを喋りかける。…よく懐いている様子だ。
「…じゃあ行っておいで。」 若まどを地面に下ろした。
「マドー///」テフリテフリ テテテテ…
若まどは走っていく…仔ほむのいる花壇に向かって。
「これで下ごしらえはできたよ。」
「やっぱりよくわからないなぁ…。なんで直接会わないんだよ?」
「変に緊張させたくないからだよ。それに…生き物だから昨日と今日では、もう違う考え方かもしれないしね。」
「この方が自然に近い形だし…仔ほむは僕らと離れていたけど、若まどは昨日一緒に居たからどんな様子だったかがわかる。」
「J子さんも若まどが僕に懐いてたのは見てただろう? あの若まどなら他のほむ種に何を言われても僕を信用するはずだ。」
「まぁ、仔ほむも僕を信用してるのは、ほぼ間違いないけど…念には念をだよ。」
「それに僕が行ったらJ子さんは離れてなきゃいけないしね…初めての人間に会うのはあの仔の恐怖を増長させるよ。」
「いずれ紹介するとは言っておいたけど、いきなりはやっぱりちょっと…ね。」
「…まわりくどいな…お手並み拝見といくか…。」
「それとも…J子さんは僕と離れたいのかな?」
「…!? …バカ!!」
…二人は手をつないで大学へと向かった…。
仔ほむは日課にすると決めた花集めをしている。
人間のあまり来ないであろう早朝にやることにした。
「ホミュホミュホミュン♪」
今日もいいお天気! よかった♪
昨日は張り切ってたくさん集めちゃったから、気をつけないと…
毎日摘みすぎてお花がなくなっちゃったら困るもんね///
ん~…あと少しなら大丈夫かな?
今はあまり姿が見えなくとも、時間が経つと人間が増えてくる事を仔ほむは知っている。
それでも一応、辺りを警戒しながら花を集める。
しかし物事に夢中になってしまう性格なのか…たまに警戒が疎かになる。
すでに自分が人間に見つかっていることを、まだ仔ほむは知らない。相手がT久達だったのが今は幸いだ…。
…あの一本で今日はおしまい!
仔ほむが花を摘もうとしたその時、声をかけられた。
「マドマドー…///」
「ホミュッ!?」
声がした方をみると、そこには若まどがいた。
…!? お…お姉ちゃん!?!? …じゃ…ない…!!
一瞬、仔ほむは姉が現れたのかと思った…しかしすぐに違うと気づいた。
たしかに年恰好は姉に似ているが、大好きだった姉を仔ほむが間違えるはずがないのだ…。
それに…姉はもうこの世にはいない…。
若まどは仔ほむに近づくと笑顔で話しかけてきた。
「おはよう/// いいお天気ね♪」
「…お花集めのお手伝い…してもいいかしら?」
「私も、あなたのご家族のお墓にお供えしてあげたいの…」
「ホミュミュッ!?!?」
家族のことは自分しか知らないはず…
あ! あの優しい人間さんと自分だけだ!!
…それとも…どこかから見てたのかな?
「…あなたはだぁれ? …どうしてお墓のことを知ってるの?」
「そのことはわたしと…ううん…わたししか知らないはずなのに?」
素直に疑問を聞いてみる。T久のことはあえて伏せた。変に勘ぐられても嫌だから…。
…しかしそれは徒労に終わった。若まどは仔ほむの予想を超える事を答えた。
「あ! ごめんなさい、驚くわよね。実は昨日、とても優しい人間の雄から聞いたのよ。」
「あなたが独りぼっちになってかわいそうだから仲良くしてあげてもらえないかなって…」
「…その人間の雄は…私のご主人様なの///」
…仔ほむは…その場で固まってしまった…。
…え!? うそ!? なんで!? …人間の雄って…あの人間さんだよね!? …他にいないよね?
人間さんは…わたしの事を心配してくれてたんだ……うれしい///
すごい! やっぱり人間さんは優しいんだ…///
…ご主人…様…?
興奮しながらも新たな疑問がわいた。それも聞いてみる。
「…今…ご主人様って言ったよね?」
「あなたは…あの人間さんの…『飼いまど』…なの?」
…『飼いまど』という言葉を使った。…その言葉は以前、両親が吐き捨てるように言った言葉だ。
そんな仔ほむの内心を知らない若まどは「そうよ///」と嬉しそうに答えた。
…やっぱりそうなんだ…でも…あの人間さんだったら…大丈夫だよね…
お母さん達にひどいことをやった人間とはぜんぜん違うんだから!
仔ほむが考えていると、若まどが仔ほむに心配そうに聞いてきた。
「…えっと…少し人間が目につくようになってきたんだけど…大丈夫なの?」
…うながされて、仔ほむはハッとした。
「いけない!! 早く戻らなきゃ!! …そこのお花…あぁっ…ごめんなさい、わたしについてきて!!」
仔ほむは若まどにそう言うと巣へと駆け出した。
「あ!? …ちょっと待ってー!」
若まども後を追いかけた。
…無事に巣へとたどり着いた。
仔ほむは若まどを見る…若まどの手には花が握られていた。
「もう…急に走り出さないでよ!! びっくりしちゃたわ!」
若まどが文句を言う。それに対して仔ほむはこう答えた。
「そのお花…摘んでくれたんだね…ありがとう///」
二匹は顔を見合わせて笑った。
墓の前に立つ…仔ほむと若まどは昨日の花を新しい花に変えた。
…ただ、T久が供えた花だけはそのままだ。
二匹は並んで祈った…。
…お母さん達…お姉ちゃん…すごい事があったよ!!
昨日話した人間さんが、わたしにお友達を連れてきてくれたんだ…
…これからわたし…独りぼっちなんだと思ってたのに…
なんだか信じられない…でも…今わたしの隣にいるんだよ! 一緒にお祈りしてくれてるの…
とても優しくていい子…あ! 私より大きいから、子じゃないね///ふふふ…
…祈りが終わると二匹は巣の中に入っていった。
二匹は玉子焼きを頬張る。昨日T久がタッパーに入れてきた物だ。
…おいしい…
仔ほむがそう思った瞬間…。
「おいしい! やっぱりご主人様の食べ物はおいしいわ!」
若まどが驚嘆の声を上げた。…似てると思った。
…仔ほむはさっき聞けなかった事を思い切って聞いてみた。
「…ちょっといいかな?…あなたはどうして人間さんの飼いまどになったの?」
「それと…ずっとここにいてくれるの?」
若まどは少し考えるような表情をしてから仔ほむを真っ直ぐに見て答えた。
「…そうね…最初の質問の答えは…私はご主人様に命を助けられたの…」
仔ほむは何か言おうとしたが口をつぐんだ…。若ほむが続ける…。
「私もあなたと同じように家族を失って…独りで生きてきたの…ある日、食べ物を探しに行こうとしたら人間に捕まってしまった…」
「家を出た瞬間に網のような物が被せられてパニックになって…気が付くと私はまどまどばかりがいる箱の中にいたわ…」
「透明の壁があって…周りを見ると…他にもほむほむだけの箱、さやさやだけの箱って感じで並べられていたの…」
「しばらくすると人間が来て…それぞれの箱から出されて、黒い小さな箱に入れられていった…私もそうだった…」
「怖くて泣いていたら、なんだかだんだん寒くなってきて…知らない間に眠ってしまってた…」
若まどはその時を思い出したのか、うっすらと涙を浮かべている…。
「…眠っていた私は仲間達の悲鳴で目を覚ましたの…まだ箱の中にいたから真っ暗で何も見えなかった…でも外からはたくさんの悲鳴が聞こえる…」
「それでまたパニックになった私は、いつの間にか気を失ってしまった…どれくらい経ったかはわからないけれど、次に気が付いた時には暖かい毛布の上に寝かせられていた…」
「ワケがわからずにキョロキョロしている時に優しい声が聞こえたの…」
『ん! 気が付いたんだね? …安心したよ。もう大丈夫だからね。…助けられて本当に良かったよ。』
「…って…それがご主人様だった…」
…涙が若まどの頬を伝う…。
「《…!? 人間だ!? 逃げなきゃ!!》…そう思ったわ…でもご主人様は私を見てこう言ったの…」
『思ったより元気そうだね。それならすぐに元に返してあげなきゃ…怪我はなかったしね。あ! この食べ物を持って行くといいよ。』
「そう言うとご主人様は、私だけじゃ持ちきれないぐらいの食べ物を出してくれたの…」
『ごめんごめん。持ちきれないね。持てるだけ持って行ってね。残りはこの箱に入れて外に置いておくから好きな時に持っていくといい。』
「それからご主人様は食べ物の入った箱と私を乗せた毛布を持って外に出たの…不思議と不安は感じなかったわ…」
仔ほむは食べるのも忘れて聞き入っている…。
「外に出たらご主人様は箱と、私を下ろしてくれた…私はあっけに取られてしまってて…」
『食べ物はここに置くよ。無くなってたらまた新しく入れておくから安心してね。それじゃ気をつけるんだよ、バイバイ』
「…私は逃げようとした事も忘れて考え込んでしまった…」
《…なにこれ? …どういうことなの? …わけがわからない…》
《…そういえば私…本当に怪我一つしていない…殺されててもおかしくないはずだったのに…》
《…なぜ? …この人間は? …いい人間…???》
「そんな私を見ていたご主人様は…」
『…逃げないのかい? …それとも逃げられないのかい? …おかしいな…どこも怪我はしていなかったと思ったんだけど…』
『…どこか痛いところはある? …腰が抜けたんじゃないよね?』
「そう言ってくれたの…私はブンブンって頭を振ったわ…なぜだろう…とても暖かい気持ちになった…」
…後に『ほむほむマイスター』となるT久の実力の片鱗が発揮された二度目の瞬間だった
…最初は仔ほむの時である。他の人間が同じ事をやっても恐らく無理であろう…。
…人間によって心と体に傷を負ったほむ種は、二度と人間に心を許さないのだから…。
『…逃げたくないって事で…いいんだね?それじゃ……僕の飼いまどになるかい?』
『…マド!? マドッマドマドッ!!!』ポロポロポロ…
『ごめんね、僕は言葉が… 『飼いまどになるって言ってるよ』
「…突然出てきた人間の雌に驚いて…私は思わずご主人様にすがりついちゃったの///」
「後から聞いたんだけど…その雌はご主人様の番だって言ってた…出てきた時は少しびっくりして…おしっこが漏れちゃった///」
仔ほむは息を吐き出した…。
やっぱり人間さんは優しいんだ///
…昨日言ってた番のことかな? …いつ会わせてくれるのかなぁ…?
きっと人間さんの番だから…人間さんと同じぐらい優しいんだろな…
…奇妙な気持ちが湧き出した…。
…わたしも…頼んだら…飼ってくれるかな…?
…でも…お墓から離れちゃうのは…いやだな…
…あれ?…わたし…なに考えてるんだろ…
…考えがまとまらない…うーん…
仔ほむは短い手で頭を抱えている…。そこに追い討ちをかけるように…。
「…二番目の答えだけど…私はご主人様の家に帰らないといけないの…」
…やっぱり…そっか…
仔ほむは頭を抱えながら悲しい気持ちになった…。
…せっかく仲良くなれると思ったのに…そうだよね…
しゅんとした仔ほむを見て、若まどが笑いを押し殺していることに仔ほむは気づかない。
「…ぷっ…うぷぷぷ…」
…堪えきれずに若まどは吹き出してしまった。そして…。
「ごめんなさい/// あんまりかわいいから思わず意地悪しちゃった///」
「…実はね…朝、ご主人様から…こう言われたの///」
『若まど…もしお前がその仔ほむを気に入ったら…番になることも考えてみてくれないか?』
「…って…///」
…!?
仔ほむは若まどを…口を開けたまま見た…。