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はじめての味

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作者:CIyFlgamo

138 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/01/16(水) 22:03:32.36 ID:CIyFlgamo


起床。
今日はやや曇っている。動きたくない気分だったけど、空腹には勝てない。
重い体をゆっくりと起こして、外に出る。

しかしまぁこのも古くなったものだ。
ちょっとの風でも転がる上、出入り口はギザギザして痛い。
だが、ほんの少し香る甘い匂いが好きでずっと使ってきたんだけど……。
それも薄らぎ、変な臭いがするようになった。
そろそろ替え時だな。どこかにいい段ボールでもあればいいけど…。


ご飯置き場に到着。今日はいつもと場所を変えてみた。
さっそく何匹か同胞がいたので話しかけたけど、無視された。
おまけに周りの連中もそそくさと逃げ出し、私を避けているようにも見えた。
もしかして、あの変な臭いが体に染み付いているせいなのかなぁ…早く新しい家を探さなくちゃ。

巨大な袋の破れた箇所を念入りに探したけれど、あんまりいいものは見つからなかった。
昨日は甘くて茶色いご馳走を見つけたんだけど…そう毎日落ちてないか。場所も悪いのかもしれない。
帰り道に同胞に会った。知り合って数日だが、何かと世話を焼いてくれる。
名前は、まどまどと言うらしい。
何だか落ち込んでたみたいだから、また後で訪ねていってみよう。


―――――――……


ふう。味はともかく、とりあえず満腹になれたからいいか………。
少し横になるとグワングワンと左右に揺れるマイホーム。いつものことだ。

……しかし、臭い。

満腹になったから一眠りしたいところだが、臭いが気になって眠れない。
……このままみんなに避けられ続けるのも嫌だし。

まだ日も高いから、今日中に新しい家を見つけてみようかな。


――――――
――――
――


うん、これにしよう。いい家が見つかった。
小さめの段ボールだが、私一匹なら充分だろう。ところどころ何かが擦れたような跡があったが、外壁だから別に気にならない。
中には先っちょが赤い棒が入っていた。それも、何本も。何に使うのだろう?

古い家に荷物を取りに行く途中、またまどまどに会った。今度は同胞を連れていたが、何だか元気が無いやつで、俯いたまま動こうとしない。
まどまどは気に止めていない様子だったから、大したことは無いのかもしれない。眠たいのかな。


と、ふとあること気になった。

さっきもそうだったが、まどまどは私の臭いが気にならないのだろうか。

思いきって聞いてみたが、どうも私からそんな悪臭はしていないらしい。
では何故、同胞はあの時………。



後日。
雨も降ったし、もうすっかりあの臭いはとれたはずなのに、未だに同胞は私を見ると逃げ出してしまう。

………私の何がいけないのだろう……。

落ち込んだまま、ご飯置き場までの道を歩く。
すると、あの日ぶりに、まどまどに会った。

少し相談してみよう。

カクカクシカジカ、と言ったところで、まどまどから意外な答えが返ってきた。

どうやら、私が同胞だと思っていたものたちは「ほむほむ」と言う種族らしい。


我々にとっては食糧、だそうだ。


……とんでもない!!他の者の生命を奪ってまで生きようとは思わない。
それに食糧だって?同じ仲間なのに!?

孤児だった私は、生涯まどまど以外に知り合いがおらず、そんなことを教えてくれる者は誰もいなかった。

「ほむほむを食べればご飯には困らないし、栄養もつく」と言うまどまど。

この間連れていたほむほむも、ご飯にするために生命を奪った後だったようだ。
道理で元気が無かったわけだ………。

まだ頭の中がごっちゃになっているが…。
とにかく、私は認めない。
同胞は同胞だ。同胞を食おうとするやつは私がぶちのめしてやる!!

……たとえ、それがまどまどであっても。



いつものご飯置き場に到着。
……いた。「ほむほむ」たちだ。

――――――よし。

元気よく、精一杯の笑顔で声をかける。
敵意など微塵も無いような、自分で言うのもなんだが純真無垢な笑顔で。



…………やはり、逃げられてしまった。
ちょっと顔がひきつってしまったのがいけなかったか………。

珍しく親子連れが居たが、まるで悪魔でも見るような目で私から後ずさっていく。
どうやら、腰が抜けてしまっているようだ。
親はそれでも必死で子供を匿っている。
さすがにちょっと傷付いた。

………………。
まぁしかし、同胞を守るどころか、怖がらせてしまっているようではダメだな。
私はここにいちゃいけないのかもしれない。

振り返ろうとしたその時。
何かが、私の足を掴んだ。

ほむほむの子供だ。匿う親から這い出して来たのか……。
親は必死で戻ってくるように呼び掛けているが、子供は天使のような笑顔を私に向けてくれる。
その可愛らしい笑顔は抱き上げずにいられないほど。
「たかいたかい」をしてやると、子供はキャッキャキャッキャと喜んだ。
親は相変わらず泣き叫び、やめて助けてと懇願している。


……わかった。わかりましたよ。
相当嫌われてしまったようだ。

子供を地面に下ろし、立ち去ろうとした次の瞬間。

騒がしい音を立てて、何かが物陰から飛び出してきた。


………同胞!?

それも、私と全く同じ姿をしている。それが、何匹も。

これは…何だ?
何が起こっている?

同胞は、眼前の子供を槍で一突きにした。私の顔に生暖かいものが飛び散った。

途端、悲痛な叫び声が辺りに響いた。

叫び声の主も瞬く間に首を跳ねられ、絶望に歪んだ顔が私の足元に転がってきた。

これが……私と同じ種族の狩り……

これが……食糧であるほむほむ……

残った胴体と、串刺にされたまま痙攣する子供に、一斉に群がり貪り食う、私と同じ姿をした者たち。

しばらく呆然とその光景を見つめていたが、


気づいた時には一番近くにいたやつの首を蹴り砕いていた。


―――――――――
――………


……どれぐらい時間が経ったのだろう。すでに日は落ちていた。
自分が何をしていたかも忘れかけていたが………全身の激痛が、嫌でも先程のことを思い出させる。

多勢に無勢。敵うはずがなかった。

目の前には無惨なまでの親子の肉片と、首のへし折れた「私」が横たわるのみであった。



………まだ整理がつかない。
私は…これからどうすればいいのか?
同胞には避けられ…驚異から守ることもできず……


…………私は……。


そう考えていると、ふと聞き覚えのある声が。

まどまどだ。まどまどが来てくれた。
………安心したのか、涙が流れた。


傷だらけで泣いている私を見て、さぞ驚いたのだろう。
即座にうずくまり、怪我した箇所を一生懸命舐めてくれた。

……ありがとう、まどまど。
そう言いかけたが、ある音が遮った。途


……腹の虫。


必死に傷を舐めていたまどまどが吹き出してしまった。
私も笑うしかなく、辺りには笑い声が響いた。

どこかに食べ物は無いかと辺りを見回すまどまど。
いい。と止めたのだが、何かに気付いたまどまどは立ち上がり、すぐ近くまで移動してしゃがみこんだ。

そして、戻ってきたその手には、赤い…肉のようなものが。


「これを食べればすぐ元気になれるよ」


栄養価が高いんだって――そう囁くまどまどは、少し申し訳なさそうな、それでいて優しい表情で微笑みかけてくれていた。



一口、食べてみた。


グチャ、という音


味が、口一杯に広がって



美味しい。

初めての感想は、ただそれだけだった。






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