Episode03
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homuhomu_tabetai
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Episode03・記憶
そのりぼほむは、見滝原の森林公園に住む、一匹の平凡なほむ種であった。
りぼほむ「ホーム、ホムム、マドカァ」ダイスキダヨ、マドマド
白まど「マドォ、マドォン、ホムラチャン」ワタシモダヨ、ホムホム
幼馴染みとも言えるつがいの白まどと共に暮らし、人に頼らず生きていた、いわゆる野良だった。
野良故に、彼女達は恐るべき病の知識を持たなかった。
その病の名はほむほむ病。
ほむ種のみに感染する恐ろしき病。
段階的に進行する病は、第一段階では体表に発疹やホクロのような斑点が現れる。
病白まど「マドォ?」ナンダロウ
りぼほむ「マドカ、ホムゥ?」ドウシタノ、マドマド
この発疹やホクロに見える斑点は、体表にまで達した腐敗である。
病は進行し、第二段階となると斑点は全身へと転移する。
その頃には免疫力、体力が著しく低下し、悲惨とも言えるレベルの併発症に苦しみ出す。
病白まど「マ、マドォ……マドォォ……」ウゥ、ク、クルシイヨ……クルシイヨォ……
りぼほむ「マ、マドカァ、マドカァッ!!」マドマド、マドマドォ
この時点で、発症していた妊娠していた場合、胎児の生命は絶望的と言える状況下にある。
そして、この白まどは、りぼほむとの仔を身ごもっていた。
そして、最悪の第三段階、いわゆる末期ともなると、全身に広がった腐敗により、
身体が崩れ始める。
りぼほむ「ホミャァ、ホミャァァァ、マドカァァッ!!」マドマドノウデガ、ウデガァ
病白まど「マ、ド……ホムラ、チャン……」ホム、ホム……ナカナイ、デ……
愛するつがいを目の前で失おうとする状況下で混乱するりぼほむを、
瀕死のつがいが気遣うように言葉を駆ける。
既に病はりぼほむにも感染し、彼女の全身にも無数の斑点が浮かんでいる。
彼女も第二段階である。
病りぼほむ「マドカァ……ホミャホム、ホムンッ」マドマド……スグニセンセイノトコロニツレテイッテアゲル
数年前は恐ろしき不治の病と恐れられたほむほむ病だが、それは既に過去の事。
感染性の病である時点で、ほむほむ病はウイルス性の病でしかなく、
発達した人類の医学により抗体は呆気なく発見され、“不治の病”は単なる“危険な病”に成り下がった。
人間に保全・監視された自然環境下、牧場、家庭で飼育されるほむ種達には無縁のモノとなっている。
仮に発症し、第三段階まで病が進行したとしても、ほむほむ学に精通した獣医の手ならば、
特殊な医療措置を施す事で、活動可能レベルまで回復する事も出来た。
病りぼほむ「ホムムゥゥゥッ!!」イソガナイト
それを知ってか知らずか、りぼほむは落ちていたハンカチで最愛のつがいを包み、
懇意にしている人間の獣医の元へと急ぎ、飛んだ。
慌てた様子で飛び込んで来たりぼほむの様子に、獣医は白まどの処置を開始しようとした。
第三段階であっても、この獣医の手ならば助ける事は可能だった。
そう、第三段階であったならば。
白まどだったモノ「」
ハンカチの中から現れたのは、かつて愛した白まどが崩れ落ちた肉片だった。
いかな名医と言えども、死んだほむ種を甦らせる事は出来ない。
病りぼほむ「マドカ………マド……ホ、ホ、ホミャァァァァァァァッ!!」マドマド…………マド………ウワァァァァァァン
目の前の肉塊にかつて愛した者の魂が存在しない事を悟って、
ほむ種最強のプライドをかなぐり捨て、りぼほむは慟哭する。
そこで、りぼほむは倒れた。
彼女の病も、既に第三段階に達していたからだ。
腕が崩れ、足がもげ、倒れるりぼほむ。
白まどを助けるために全力で飛んだ彼女は、肉体の限界をとうに超えており、
体力のほぼ全てを失ったりぼほむは、病に屈した。
最愛のつがいを失ったショックと、朽ち行く自らの肉体を前に、彼女は生きる希望を失った。
薄れゆく意識の中、りぼほむは口にした……。
病りぼほむ「ホム……ホ、ム……ホ……ホムム……」モット……イキ、タ、カッタ……
叶わぬであろう希望を……
病りぼほむ「マ……ド……カ……」マ……ド……マ……ド……
最愛のつがいの名を……。
そして聞いた。
“助かりたいか?”
神か、悪魔のような、その声を……
メカホム「ホ・ム・アッ!? ホ・ム・ム・ホ・ム」ハッ!? ナ・ン・ダ・ユ・メ・カ
そこでメカホムは再起動する。
今は休息時間中。
数十時間、ほむ種に関わる事件が起きない事を知った彼女は、数日ぶりの休息を取っていたのだ。
メカホム「…………マ・ド・カ」マ・ド・マ・ド
生身の肉体を持っていた頃の記録を脳内で再生しながら、
かつて愛した、いや、今も愛している者の名を呟く。
思えば、あれが生まれて初めて突き付けられた、絶対的な無力感であった。
立ち向かう事も、逃げる事も出来ない、運命と言う名の敵への、完全敗北。
メカホム「…………ホ・ム・ホ・ム・ホ・ム、ホ・ミャ・ホ・ミ・イ」ワ・タ・シ・ハ・ム・リョ・ク・ダ、ア・ノ・コ・ロ・ト・オ・ナ・ジ
この肉体を与えてくれた人物には感謝している。
だが、あの記憶は、今も突き付けられる無力感と共に、彼女を苛み続ける。
それでも、彼女は飛ばなければならない。
メカホム「ホ・ム・ンッ」ジ・ケ・ン・ガ・オ・コ・ル」
あの無力感が、他の誰かを叩き潰さぬように。
メカホム「ホ・ム・ンッ」ト・ビ・タ・チ
感情によりオーバーフローした冷却水を拭わずに、メカホムは飛び立った。
降り立った先には、一組の野良つがい。
りぼほむと白まど。
メカホム「ホ・ム・ム……」ソ・ン・ナ……
愕然とするメカホム。
病白まど「マドォ……マドォォ」クルシイィ……クルシイヨォ
りぼほむ「ホムゥンッ、マドカァァッ!!」シッカリシテ、マドマド
かつての自分を思わせる、ほむほむ病に冒された白まどと、それを必死で元気づけるりぼほむ。
おぞまくも圧倒的な無力感がメカホムの魂を叩き潰す。
だが、それでもいい。
メカホム「ホ・ム・ホ・ム…………ホ・ム・ホ・ム、ホ・ム・ホ・ム・ン」カ・ン・ケ・イ・ナ・イ……カ・ノ・ジョ・タ・チ・ヲ・タ・ス・ケ・ル
この魂などいくら傷ついても、この身がある限り、このつがいは救える。
センサーが感知した白まどの進行度は第二段階、
そして、つがいであるりぼほむも第一段階を発症しつつある。
メカホム「ホ・ム・ホ・ム・ホ・ム・ム・ン」メ・カ・ホ・ム・キャ・プ・チャ・ア
メカホムは内臓された牽引光線で、病に冒されたつがいを優しく包み込むと、自らの拠点へと急いだ。
発見が早かった事もあり、つがいは医師の手により呆気なく救われた。
白まどの体表の斑点は消え、りぼほむもワクチンの投与が終わっている。
りぼほむ「ホム、ホムホム、ホムン」レイヲイウワ
白まど「マドマドォ」アリガトウ
メカホム「ホ・ム・ン・ホ・ム」レ・イ・ハ・イ・ラ・ナ・イ
いつものように言い残し、飛び去ろうとするメカホム。
メカホム「マ・ド・カ、ホ・ム・ホ・ム、ホ・ム・ホ・ミャ・ア」マ・ド・マ・ド・ヲ・ダ・イ・ジ・ニ・ナ・サ・イ、ホ・ム・ホ・ム
ただ、その時だけは普段ならば言わないような言葉を背中越しに残した。
メカホム「ホ・ム・ンッ」ト・ビ・タ・チ
さあ行こう、今日もどこかで、助けを求めるほむ種がいるのだから。