「戻ったわ、梨花ちゃん」
不意に耳慣れた声がした。
不意に、とは言ったが――梨花とてマスターである。
たとえ姿が見えなくとも、彼女が帰ってきたことは気配と感覚で分かった。
セイバー・
宮本武蔵。日本人で知らない人間はまず居ないだろう、天下無双の大剣豪。
何故武蔵が女なのだ、というツッコミはもはや再三繰り返されてきたものであるため割愛する。
どことなく出かける前よりも肌の色艶が増している気がしたが、それを指摘するよりも先に、聞かねばならないことがあった。
「……どうでしたか、セイバー」
梨花の言葉に、武蔵は無言で首を横に振るだけだった。
それだけで言わんとするところは十分伝わる。
見つからなかった。やっぱり、白瀬咲耶はどこにも居なかった。
「そう、ですか。じゃあ、やっぱり咲耶は、ライダーは――」
「別に東京の街を隅から隅までくまなく探したわけじゃないわ。
やろうと思えば希望的観測はいくらでも出来ると思う。でも、おすすめはしません」
何事においても、"居ない"ことの証明をするのは難しい。
俗に言う悪魔の証明だ。界聖杯から直接通達でもされない限り、咲耶が生存している可能性はこの先も常にどこかには残り続けるだろう。
だが、梨花とて馬鹿ではない。まして彼女は百年を生きる魔女である。
未だ幼さと青さから抜け出せていない身だとはいえ、この期に及んでまだ武蔵の言う希望的観測に縋る気にはなれなかった。
白瀬咲耶は、もう死んでいる。彼女の手を取ることは二度と出来ない。
その冷たい現実と折り合いを付けて、梨花は武蔵に頷いた。
「……、分かりましたです。
ボクのわがままを聞いてくれてありがとうなのですよ、セイバー」
そう言って梨花は笑顔を見せたが、それが力のないものであったのは言うまでもない。
そんなマスターに対して武蔵は口を開く。
しかしその口から出た言葉は、梨花への慰めでも鼓舞でもなかった。
「後悔してる? あの時、彼女たちの手を取れなかったこと」
傷心の少女に対して投げ掛けるにはあまりにも配慮に欠けた、心の瘡蓋を剥がすような無遠慮な問いかけ。
武蔵に咲耶達の捜索を命じた時の梨花だったなら、当たり前だと激昂していたかもしれない。
だが思考がある程度落ち着き、咲耶達との離別を受け入れられた今の梨花は違う。
その証拠に彼女は、武蔵がどうして自分にこんなことを訊くのかをちゃんと理解出来ていた。
「悔やむ気持ちがないと言えば……嘘になるのです。
ボクがあの時咲耶の手を取れていたら、何かを変えられたかもしれない。
そう思うと、やっぱり気分がどんよりと暗くなってしまうのですよ」
咲耶達が唱えていた手段で本当に脱出が出来たのか、それを確かめる手段も今となってはない。
だが、もしもあの時梨花が咲耶の手を取っていたなら――その勇気が彼女にあったならば。
白瀬咲耶という心優しく強い少女が死ぬ未来は、避けられたのかもしれない。
梨花はそういう観点で見ると全く使えないただの少女だが、梨花には武蔵が居る。
武蔵の存在が咲耶達の傍にあったなら、彼女達が死なずに済んだ可能性は十分にあるだろう。
これは聖杯戦争。奪い合いも騙し合いも許容される、血で血を洗う魔術儀式である。
ならば手を取る取らないも自由。死んだというならそれまでの人間だったというだけのことだと、そう割り切れる精神性は梨花にはない。
彼女はどこまで行っても見た目より少し大人びている程度の人間で、子供だ。
――
古手梨花は、魔女ではない。
所詮は、ただの、人間なのだ。
「――でも私には、後悔に足を止めていられる余裕はないわ。
あの時ああしていればなんて嘆いても、時間が戻ることなんてないのだもの」
でも、武蔵が不在の間に梨花の思考はもう前へと進んでいる。
俯いたところで、悔いたところで、謝ったところで、咲耶はもう帰ってこないのだ。
咲耶の願いと想い。出来れば、その強さも。
すべて引き継いで――前に進む。そう決めたから、もううじうじ落ち込んだりなんかしない。
「……私にとってこの世界は、深くて暗い井戸の底にしか見えなかった。
でも咲耶は――あの子は本気で、この井戸の外に出られると信じていた」
咲耶が果たして井の中の蛙だったのか、それとももっと別な生き物だったのかは分からない。
それを知るには、梨花と咲耶が関わった時間はあまりにも短すぎた。
確かなのは、彼女は井戸の外に出られなかったということ。志半ばで墜ちて、深い泥濘の底に沈んでしまったということ。
「ならせめて。私は、咲耶の生きた証になりたい。
あの子の分も、なんて殊勝なことは言えないけど……それでもよ。
生きて、もがいて、いつか必ず井戸の外に出る。
それがきっと、咲耶の弔いにもなると思うから」
それを聞いた武蔵は、意外――そう思った。
梨花のことを侮っていたわけでは決してないが、まさかこうしてちゃんと前を向けているとは思わなかったのだ。
もしも燻っているようなら発破の一つくらい掛けてやろうと思っていたものだから、良い意味で驚かされた形である。
「うん。そこまで分かってるなら、私から言うことは何もありません。
もしかしたら、取り返しのつかないことをしてしまったってくよくよしてるかなと思ってたんだけど――杞憂だったみたいね。ごめんなさい」
「……みー。珍しく、セイバーから花丸をもらえたのです」
「うんうん、花丸花丸! 梨花ちゃんはいい子だね〜!」
梨花の言う通り、どれだけ嘆いても呪っても、時間だけは戻せない。
ならば重要なのは過ぎた過去、終わった話を振り返って思いを馳せることではなく――
「じゃあ、次はこれからの話。
残念ながら咲耶ちゃん達もその仇も見つからなかったけど、その代わり新しい主従と出会えました」
これから先の未来を見据え、思い出だけ背負って進むことだ。
武蔵の報告に、梨花は驚いて目を丸くする。
念話で報告することもしていなかったのだ、驚くのも無理はない。
「……戦ってきたのですか?」
「軽〜く、ね。お互い命までは取らない、ほんの軽いじゃれ合いです」
「じゃれ合ってるつもりなのがセイバーの方だけじゃないことを祈るばかりなのです」
いつだったか、暇潰しに眺めていたテレビで得た知識だが。
外飼いにされているイエネコは、一日に数匹は生き物を殺して帰ってくる場合がほとんどらしい。
もちろん餌として狙った場合もあるだろう。しかし、時にはそうですらなく。もちろん悪意などもなく。
猫としてはじゃれ合いのつもりで生き物を甚振り追い回し、その結果死なせてしまうのだという。
……そんな知識が不意に脳裏を過ぎった。
興味を持つと一直線という意味では、猫もこの剣豪も似たようなものかもしれない。
もっとも武蔵の場合、興味の対象になるのは斬りでのある武芸者に限定されるのだろうが――それはさておき。
「いい子たちだったよ。同盟を組まないかって誘われちゃったし。
でも私としては組む組まないの結論を出すよりも先に、梨花ちゃんに聞いときたいことがあってね」
「……? ボクに、何を答えてほしいのですか?」
「梨花ちゃん。――――今度は、手を取れる?」
先程武蔵が梨花に投げた質問とは重みも意味合いも違う。
先のは、梨花が過去に囚われているか否かを見る"試し"だった。
だが今度のは、明確に未来を見据えての"確認"だ。
これを聞いておかないことには、誘いに答えを返すなど出来るわけもない。
「確率はすごく低いらしいわ。
咲耶ちゃん達のやろうとしてた方法に比べたら砂粒みたいなものだと考えていいと思う。
それでも、嘘を吐いてるようには見えなかった」
武蔵にその話を持ち掛けたライダー自身が言っていたことだ。
「私が君の立場だったら……まあまず乗らないかなー!
そんなまどろっこしいことするより全員斬って勝ち残った方が早いし」
確率は低い。夢物語にも等しい。
聖杯戦争を勝ち抜いて帰るほうが間違いなく手っ取り早いと断言出来るような、そんな砂粒大の希望。
武蔵が梨花の立場だったならどうするかは今言った通りだ。
今でこそこの身は人類史の影。だがもしも、人の肉体と魂――世界を渡り歩く力もない、ただの人斬りとしてこの地を踏んでいたなら。
武蔵はきっと、聖杯を手に入れて正攻法でねじ伏せる道を選んだだろう。
それが一番簡単で、早くて、確実だからだ。少なくとも砂粒の希望に縋って徒労を繰り返すよりかは余程未来を得られる確率が高い。
「とにかく、咲耶ちゃんとライダーが目指してたやり方よりもずっと分が悪いのは確か。
でも上手く行けば、あの子達が見ていた大団円の輪郭をなぞることも出来るかもしれない」
説明を此処で一区切り。
ふう。と成し遂げたしたように息づき、武蔵は再度問うた。
「で、どうする?」
「此処では決められません。
"出来るかもしれない"のは分かりましたけど、"どうやって"の部分が明かされてないのです」
だが、梨花は逡巡を挟まずに回答する。
それは結論だけ見れば、決断を先延ばしにするだけの怠惰な回答であったが。
梨花はこれで多少、心理戦の心得がある。
彼女を取り巻く恐るべき部活メンバー達に比べれば幾らか劣るのは否めないものの、少なくとも魅音やレナなら――沙都子なら。
此処で一時の感情に身を任せて結論を出すような愚は犯さないだろうという確信があった。
聖杯戦争の
ルールを破壊し、脱出することが出来るという"解"は分かった。
しかし今の話の中には、そこへ至るための途中式がまるで入っていない。
確率は凄く低いだとか、難易度が高いだとか、そういう具体性を欠いた情報が疎らに散りばめられていただけ。
「セイバー。貴女も、そこについては教えられていないのではないですか?」
「鋭いね。その通り、実は私も"どうやって"成し遂げるのかは教えてもらってない」
そんな回りくどいことをわざとするとは思えないし、そうする意味もない。
となると、何のことはない。この武蔵もその核心部分を聞かされていないのだとすぐに察しが付いた。
そのことを指摘された武蔵はイタズラがバレた子供のようにばつが悪そうな笑みを見せる。
はあ、と溜め息をつく梨花。……とはいえ、相手方の申し出を蹴るとまでは言っていない。
「それを聞けないことには、簡単に信じることは出来ないのですよ。
でも……話は聞いてみたいのです。ボクをその二人のところに連れて行ってくれませんか?」
信じるも信じないも、まずはそれからだ。
決めつける前にまずは話し合ってみる。これは、梨花が百年の旅の中で得た教訓の一つでもある。
それに、この武蔵が実際に顔を合わせて好印象を抱いたという時点で一定の信用度は既に担保されていた。
「もしもボクが信じられると――信じたいと思えたなら、今度は手を取ってみたい。
……だから。お願いします、セイバー」
もっとも。
前の時は、そこまでしても手を取れなかった。
白瀬咲耶はまっすぐ自分を見て、対等な立場から手を伸ばしてくれていたのに。
古手梨花は、その手を拒んだ。あの少女との縁は、それきりになってしまった。
実際会って話して、それでどうなるかは……今の時点では分からないとしか言いようがないが。
それでも――今度こそは自分に胸を張れる、そういう選択をしたいと思う。
そんな梨花の思いを受け取って、天元の花はにっかりと笑った。
「――はいよ、しかと承りました。あっちも首を長くして待ってるだろうし、それじゃ早速行きましょっか!」
◆◆
「界聖杯の機能を破壊するだと!? 凄ェ話だな!!」
それから、二十分かそこらが経過して。
古手梨花とそのサーヴァント・
宮本武蔵は、一人の奇妙な男と話していた。
二メートルの大台を優に超える長身と、まるで岩石が人の身体を形成したかのような屈強な肉体。
そんな彼の右手には紅い三画の刻印がはっきりと見て取れる。一方でそれを隠そうという努力の形跡は一切見られない。
だが、彼を最も異様たらしめていたのは……この令和の時代はもちろん、梨花の生きていた昭和の時代でも確実に人目を引くであろう格好だった。
一言で言うならば、"侍"。しかし時代劇などに登場するそれよりもずっと派手で、存在感が強い。
この成りで日本の首都を練り歩いて、一度も職質されたりしなかったのだろうかと、心の底から疑問を抱いてしまうような。
聖杯戦争のマスターの一人、"
光月おでん"は――ひとえにそんな男であった。
「あはは。失敗の可能性の方が高いらしいけどねー、今のところは」
梨花達が目的地に向かう足を止めてまで彼に接触した理由は、おでんという男がどこからどう見てもマスターだったから。これに尽きる。
彼の出で立ちと体格はこの現代の町並みの中で、いっそシュールに感じられるくらい浮いていた。
実際道の向こうから歩いてくるおでんを見た梨花は思わず足を止めて呆然としてしまったほどだ。
この見た目でマスターでないのなら、それは界聖杯が猛暑のせいで誤作動を起こしているとか、そういう理由しか考えられまい。
「(こんな格好の人間が一般人として認識されるようになったら世も末よ……)」
一方で武蔵は、どうも梨花とはまた別な理由で彼のことをマスターだと見抜いていたらしい。
念話で多少相談した結果、とりあえず接触してみようということになった。
武蔵が目の前で霊体化を解除するのを見たおでんは大層驚いていたが、自分もその格好に驚かされたのだしおあいこだろうと、梨花は心の中ではそう思っていた――無論、おでんが敵と見ればすぐさま潰しに来るタイプでなかったのは僥倖以外の何物でもなかったが。
この通り、武蔵はライダーが話した"界聖杯の
ルールを破壊する"プランについてもおでんへ共有した。
別に隠し立てする理由もない。もしも梨花達がライダーのプランに乗ることになったなら、その時協力者の数が多いに越したことはないのだから。
話の概略を聞かされたおでんは「う〜む……」と唸り、腕組みをしている。
それが本当なら夢のような話だが……という胸の内が、その険しい顔からは滲み出ていた。
「もし失敗したらどうするつもりなんだ。博打に負けてみんな仲良く一文無しなんて笑い話にもならねェだろう」
「その辺はもちろん考えてると思うわ。
理想だけ先走った無計画な戯言だったなら、私だって話もそこそこに切り上げてたもの。見くびられちゃ困ります」
「見くびれるか、お前みてェな女のことを」
おでんは誰もが認める破天荒。型破りを地で行く豪放磊落だ。
さりとて馬鹿ではない。だから、恐らくは梨花が思っているよりもずっと真面目に、ずっと深く――おでんは今しがた聞いた話について考えていた。
「("どうやって"やるのかは……意図的に伏せてるって感じじゃねェな。
こいつらも、そもそも教えられてない――言い出しっぺの奴らが出し渋ってる情報ってことか)」
現実は、決して甘いものではない。
みんなが笑顔の大団円(ハッピーエンド)なんて基本的には絵空事の産物だ。
その証拠に、武蔵がライダーのサーヴァントから伝え聞いたという聖杯戦争からの脱出策も決して確かな勝算があるとは言い難いものであった。
博打も博打、大博打だ。しかし――もしもその賭けに勝てたなら。絵空事のような"めでたしめでたし"を、現実のものに出来るかもしれない。
では、その砂粒ほどの希望に賭けてみるのが"
光月おでん"という男ではないのかと思う者もあろう。
在りし日の彼の無茶苦茶っぷりを知っている者であれば、誰もがそう思った筈だ。
だが――もう一度繰り返す。
現実とは、甘いものではないのだ。
この界聖杯内界で見た一つの"現実"が、おでんに安易な選択を許さなかった。
「とにかく、話は分かった。……この件だが、おれのサーヴァントと共有してもいいか?」
「もちろん。でも他の人達には、まだ内緒にしておいてね」
界聖杯への干渉、及び根本的な
ルールの破壊。
もしそんな芸当が本当に出来るのなら、確かにこの地に残されたマスター達を元の世界に帰すことも可能なのだろう。
目の前の
古手梨花のように、そもそも戦うことに対して然程意欲を示していないマスターにしてみれば……それは宛ら、地獄の中に下りた蜘蛛の糸。
多くのマスターが救われるだろう。多くの未来が、守られるだろう。
それは間違いなく良いことである筈なのに。しかし今のおでんは、「待てよ」とそこに待ったを掛けてしまう。
「(それじゃ……あさひ坊のような奴らはどうなる?)」
神戸あさひという少年が居た。
体格は貧相で、性格もお世辞にも荒事向きではなかった。
けれど彼は、
光月おでんを前に一歩も退かなかった。
泣く子も黙る
光月おでん。それを相手に、あさひは効かないと分かっている攻撃と抵抗を繰り返した。
彼には、そうまでして叶えたい願いがあったのだ。
それを"悪しき願い"と切り捨てることは……おでんには、到底出来なかった。
仮に、顔も知らないライダーの掲げるプランが上手く行ったとしてだ。
確かに、戦いを望んでいなかったマスター達は救われるかもしれない。
だけど。じゃあ、あさひのような――聖杯に縋るしかなかったマスター達は、どうだろうか。
聖杯戦争を続行させれば、戦いを望まない器達が割を食う。
かと言ってそれを破綻させれば、聖杯を手に入れるしかない器達が……あさひのような者達が、絶望のどん底に落とされる。
聖杯などという反則に頼ろうとした報いだと嗤う者も居るかもしれない。
だが、少なくともおでんは。
神戸あさひの覚悟と強さを目の当たりにした彼には――そんな言葉はとても吐けない。
如何にしたものかと逡巡を重ねるおでんの思考は、しかし突然断ち切られる。武蔵が、痺れを切らしたように言葉を投げ掛けて来たからだ。
「ところで、なんだけど――ねえ、おでんさん? 貴方、相当強いわよね」
そして、これこそが。
武蔵がおでんを聖杯戦争の関係者であると見抜けた理由だった。
実のところ、おでんについて先にそう認識したのは武蔵の方であった。
梨花の視力がおでんの全体像を捉えるよりも早く、武蔵の研ぎ澄まされた眼力が彼を――ひいてはその肉体の粋を、見た。
瞬間、武蔵が悟ったことは言うまでもない。
この男は、決して可能性を持たぬ木偶などではないと。
「その肉体、佇まい。どれも人間の枠に留まるものじゃない。
ていうか反則級でしょ、それでマスターなんて! さっき会ったマスターの子が見たらどんな顔するか!!」
見る者が見れば一目で分かる。
頭など使わずとも、感覚だけで理解出来る。
それほどまでに、
光月おでんという人間が醸す強さの色は濃かった。
武蔵がかつて、様々な事象を渡り歩く中で戦ってきた数多の強者達。
その中でも間違いなく上位であろう、鍛え抜かれた肉体と、そこから生ずる覇気。
その双方を、おでんは併せ持っていた。
女武蔵をして"ともすれば"と思わせるだけの強さを、目の前のマスターは当たり前のように秘めている。
武蔵にそう言われたおでんは口を開き、「おれは……」と何か答えようとした。
だがその台詞を遮るようにして、小さな音が鳴った。
その音は梨花にも聞こえていたが、彼女にとってそれは別段特筆に値する音ではなかった。
ごく小さな音。武士が大衆娯楽の中だけの存在になり、剣が死合の凶器から競技の道具に堕ちた時代では、決して大きな意味を持たぬ音。
チャキ、と。武蔵が腰から提げた刀鞘の鯉口が、小さく鳴ったのだ。
単に刀の柄を弄んだ結果鳴っただけでしかない、少なくとも梨花にはそうとしか認識出来ないような音。
されどその音を梨花の鼓膜が捉えた時には、もう既に。
世界は――冷たく、そして鋭い静寂に染め上げられていた。
「……、え?」
かなかなかな、かなかなかな、と。
聞き慣れた、うんざりするほど聞いたひぐらしの声。真夏の風物詩。
人々の喧騒、車の走行音、工事現場の騒音に政治団体の街頭演説。
そうした諸々の音が全て、目には見えない壁の向こうに隔絶されてしまったかのような静けさ。
梨花が掻い潜ってきた修羅場と、武蔵やおでんの言うところの修羅場は言葉こそ同じだが全く違うものだ。
だからこそ梨花は、気付くのが遅れてしまった。
自分は今、まさに――彼らにとっての意味合いの、"修羅場"に遭遇しているのだと。
「それ……クセなら改めた方がいいぜ。冗談で済まねェからな」
鯉口を切る、というその行為。
それが偶然であれ必然であれ、武士剣士の世界では致命的な意味合いを持つ。
言うなれば臨戦態勢。今から斬り合いをするぞと、相手にそう告げているのにも等しい。
おでんが今言った通り、冗談では済まないのだ。
英霊ならざる人の身でありながら、しかし英霊でさえ怯ませるだろう圧力を伴った視線で武蔵を睥睨する――光月の武士。
ビリビリと皮膚が痺れを帯びる感覚は、されど武蔵にとっては心地良いものですらあり。
「まさか。――誘ってるのよ。分かるでしょ?」
故に武蔵は笑って、もう一度その音を鳴らした。
おでんはふうと、仕方のない奴だ、と言うような溜息をつく。
さりとて、彼もまた武士だ。終生に渡り我流だったとはいえ、剣の道を歩んだ者なのだ。
であれば二度に渡る宣戦布告を、挑発を……見逃す筈もなし。此処で日和れば、それ即ち武士の恥。男が廃る臆病風に他ならず。
「そうか。なら――こうするのが礼儀だな、おれも」
おでんはその手を、自らの二刀に伸ばした。
カモフラージュの為に巻き付けていた布がはらりと解けて風に舞う。
この時にはもう既に、梨花の思考も目の前の現実に追い付いていた。
「ま……待つのです、セイバー! おでん! どうしてあの話の流れからこうなるのですか!?」
梨花の疑問は至極尤もだ。おでんは内心、彼女に同情した。難儀なサーヴァントを引いたもんだと。
話してみた印象として、決して悪い人物だとは感じなかった。
マスターを想う気持ちも本物だろうし、ライダーの某が謳う計画を利用して何か悪事を働こうとしている風にも見えない。
だが、それとこれとは話が別――なのだろう。要するに。
良きサーヴァントではあるものの、根本的な部分では戦闘狂い。強者と見れば刀を合わせずにはいられない、そういう人物。
おでんは彼女の姿に、新世界の海で見た強豪達の面影を見出した。
「打って、」
心の中で梨花に謝罪しながら、おでんもまた臨戦態勢。
挑んでくるというのならば受けて立つ。相手がサーヴァントであれ、それは変わらない。
が。次の武蔵の挙動には、さしものおでんも驚いた。
いざ尋常に、という掛け声は確かになかったが。
おでんの台詞が終わるよりも早く、武蔵が地を蹴り吶喊を開始していたのだ。
「(この女……そういう手合い(タイプ)か!)」
正々堂々とは程遠く、作法も礼節もあったものではない無法の剣。
武芸としてではない、まさに死合の剣である。
先手を取られる形となったおでんだが、理解さえ済めば十二分。
なまじおでん自身も剣士としては大概に無法者の部類であるからか、驚きが理解に変わるまでの時間も短かった。
一瞬、この世の終わりのような顔をしている梨花が視界に入ったが、気にしていられる余裕はない。
巻き込まれないように離れてろと声をあげる隙ですら死に繋がるとおでんは踏んだ。
首筋に迫る剣へと自分のそれを掲げ、面で点を弾く絶技を事も無げに成し遂げつつ、しかし驕るどころか戦慄する。
「(鋭さと速さが尋常じゃねェ……! "突き"でおれの"閻魔"を軋ませやがった……!!)」
武蔵の眼、そこに宿る法理をおでんは知らぬ。
だが、彼女の眼は紛れもなく剣の道を極めた者。
そして、死合の中に全てを尽くした者のそれだった。
友好的な相手? 戦わずとも済む相手? ――否々、そんな事実は自分の命を担保するには役者不足過ぎる。
サーヴァントを、世界に召し上げられた影法師の強さを侮っていたわけでは断じてない。
それでも尚、これほどの戦慄と畏怖を覚えさせてくる。
心が躍る暇もない。ただ底冷えするような死の気配が這い上がってくる感覚。
武蔵の初撃、多角軌道から降り注ぐそれを二刀で弾き切るが、
宮本武蔵にはおでん以上の手数がある。
攻撃の機を逃せばこのまま永遠に防戦を強いられることになる――恐らくそれが最も恐れるべき展開であるとおでんは理解。
その上で、自分の二刀をX字状に交差させながら、地を蹴って砲弾の如く勢いを突けて文字通り"正面突破"するという大博打を即断した。
「(力でならおれが勝てる。流桜使いの特権だ!)」
光月おでんには、覇気という人智を超えた力がある。
今おでんが使っているのはその中でも、"武装色の覇気"と呼ばれる代物だ。彼の国では、流桜と呼ばれていた。
これを扱える人間は、敵が固体としての形を持たない"自然"であろうと斬り伏せられる。
霊体とてその例外では恐らくない。おでんは、サーヴァントを斬れる男なのだ。
宮本武蔵は間違いなく、剣士としておでんより格上であろう。
だが、しかし。武蔵の生まれた世界にも、彼女が渡り歩いたどの世界にも、この技術だけは存在しなかった。
おでんが武蔵より優れている唯一の点。
言うなれば鬼札となるそれを活かしての力業に、武蔵の顔が驚きを湛えた。
「"おでん二刀流"」
刹那にして彼女が選択したのは、あろうことか防御。
英霊が――人間相手に防御を選ぶ。
それは本来の聖杯戦争の形から考えれば異常事態であったが、武蔵はその判断を恥とは思わない。
そうしなければ不味いと、剣士の直感と理屈、二つの感覚で理解した。
「"桃源"――――"白滝"!!!」
ワノ国に根付いた神秘の一つ。
山の神。位はどうあれ神獣と呼ばれるべきであろうそれを、かつておでんは斬っている。
その時に用いた技が、これだ。やること自体はなんてことない、単なる二刀流での突撃剣。
だがそれを使う者が流桜の達人であり、そうでなくとも天性の剣才を持つ者であったならば。
単純明快なその技は――神を斬る極剣へと化ける!
マスターとサーヴァントの死合としてあまりにも不似合いな光景。
梨花には最早、何が行われているのかすら理解出来なかった。
剣と剣で戦っているというのは分かる。だが、何故たかが剣で此処までの戦いになるのかが分からない。
おでんの二刀絶技を、武蔵は避けない。否、避け切れないと判断した。
この間合いから逃げに移れば最悪、避ける時に掠めて致命傷になりかねない――そう踏んで。
"受ける"ことを選ぶ。その意気や良しとばかりに、両者の剣は最短距離で激突した。
その瞬間も、やはり。
武蔵の口元には、高揚の笑みが浮かんでおり――
◆◆
交錯の後、おでんも武蔵も生きていた。そして、立っていた。
だが数瞬遅れて、おでんの右肩から血が噴き上がった。
何、と驚くおでん。腕を動かせないほどの深さではないが、傷は傷だ。
一方で桃源白滝、神を斬った技を受けて立った武蔵の身体には傷一つ見られない。
「(……あの一瞬で――おれの剣を防ぎながら、攻撃までしてやがったのか!)」
これにはさしものおでんも驚愕する他なかった。
なんという絶技。なんという度胸。そして、なんという"視力"か。
自分が同じ立場に立ったとして、果たして真似できるかどうか。
……恐らく無理だろう。彼の剣は剛柔の"剛"に多くの比重を置いている。
武蔵がやってみせたような、針の穴に糸を通すが如き剣は――おでんには振るえぬ剣だ。
だが武蔵は驕りなど微塵もなく笑い、愉快痛快とばかりにこう言った。
「いや〜〜、やっぱ反則でしょ貴方がマスターって!
界聖杯がトチ狂って間違えたとしか思えないわよ、正直!!」
「アレを無傷で凌ぎながら言われて喜べるか。
女だからとナメてたわけじゃねェが……肝が冷えたぜ。とんでもない剣士だな、アンタ」
「皮肉なんかじゃないわ、どうか素直に受け取って。
私――結構本気だったもの。なのに貴方はこうして生きてる」
真実だった。
武蔵は、おでんに対する剣に対して一切手心を加えていない。
彼が並の剣士であったなら、恐らく十度は死んでいる筈なのだ。
運命収束の天眼を持つ彼女と相対して一度の負傷で済んでいる。
その時点で
光月おでんは間違いなく、規格外の傑物であった。
マスターどころかサーヴァントの枠組みで見たとしても、目を瞠る実力が彼にはある。
「最近、もっと上の剣を見ててな。だから凌げたってだけで――あっ!」
とはいえおでんにも、自分がそれなりに出来る方だという自負はある。
故に此処に召喚された時点の彼がすぐさま武蔵と戦っていたなら、侮りから致命傷を被っていた可能性も否定は出来ない。
彼にサーヴァントが恐るべき相手であるということを教えたのは、他でもない己自身の召喚したサーヴァント。
故におでんは、単なる事実としてそのことを口にしたのだったが……しかし言い方が不味かった。
「――今、なんて?」
武蔵の声のトーンが冷え切る。
当たり前だろう。面と向かってこれを言われて無反応な剣士など、そうは居るまい。
「すまん! お前を煽ろうってつもりで言ったわけじゃねェんだ!
おい梨花、見てないでお前もおれに助け舟を出してくれ!!」
「みー。ボクはセイバーのマスターなので、それはちょっとなのです」
「忘れてたァ〜ッ!! そういえばそうだったな、お前!!」
武蔵の突然の暴挙にひたすら驚愕したり焦ったりしていた梨花の姿を見ている内に、いつの間にか変な仲間意識を抱いてしまっていたおでん。
幼女に完膚無きまでの正論を返されて天を仰ぐおでんだったが、もちろん武蔵も本気で激怒しているわけではない。
確かに一瞬はヒリついたが――すぐさまその感情は、もっと大きくて激しい衝動によって掻き消されたからだ。
「あははっ、ごめんごめん。いやあ、流石に今のは剣士として聴き逃がせない言葉だったからちょっと反応しちゃった」
「別にお前が弱えとか言ったつもりはねェんだ、神仏に誓ってもいい。
ただ……もっと"死ぬかもしれない"と思わせた剣士が居たんだよ。おれのサーヴァントなんだけどな、そいつは」
「――ふうん。貴方のサーヴァント、そんなに強い剣士なんだ」
宮本武蔵は自他共に認める人でなしである。
剣の道を究める為、強い者を見るとつい戦いたい衝動が湧いてくる。いわば持病のようなものだ。
その彼女を相手取ったおでん。彼の連れるサーヴァントは、少なくとも自分と互角以上――それほどの剣士であるらしい。
そう聞いて心の躍らぬ武蔵ではなかった。
笑みの奥から、戦いを求める獣めいた一面を少しだけ覗かせながら、武蔵はおでんに言う。
「しょうがない、さっきの言葉はすっぱり許してあげましょう。
でもその代わり――次に会った時は、貴方のサーヴァントと死合(や)らせて?」
「あ……お、おう。ただ、良いって言うかは分からねェぞ?」
「その時は、ほら。貴方にやったのと同じように、こうやって……」
鯉口をこれ見よがしにチャキチャキする武蔵に、おでんは「とんでもねえ奴だ」とまた呆れた。
――その後は特に話し込むでもなく、両者すっぱりと別れた。
本来の目的地に向かうべく去っていった二人を見送ってから、おでんは今交わしてしまった"約束"について考える。
「(縁壱の奴、伊達や酔狂で剣を振るうのは嫌いだろうしな。
もしかするとおれは、とんでもなくマズい口約束をしちまったのかもしれん)」
おでんのサーヴァント。
継国縁壱は、間違いなく最上級の剣士だ。
少なくともおでんは、彼より上の剣士を見たことがない。
しかし縁壱は武蔵のように、自己の研鑽のために剣を振るっていた質の男ではないのも分かっている。
彼にとって剣の才とは、悪鬼を斬って人を守るための道具。
持ちたくもなかった、世に平穏があるのなら願わくば無縁でいたかったものでしかないのだ。
武蔵と果たして馬が合うかどうか。そしてどちらにしろ、あそこまで極まった剣士同士がかち合ったのなら、どちらかが死ぬ以外の結末になるのは間違いないのではないかと、おでんの頭の中を"問題"がぐるぐると廻る。
「それにしても、強い……いや、とんでもねェ女だったな!
梨花も災難だ。じゃじゃ馬が獅子の牙を持ってるようなもんだぜ、ありゃあ」
これから梨花はあの武蔵を連れて、件のライダー陣営の元に向かうのだろう。
その先、彼女達がどうするのかは分からない。
首尾よく同盟が結ばれるのかもしれないし、場合によっては決裂して戦闘に、なんて可能性も無いとは言い切れまい。
――聖杯戦争の根幹を破壊し、マスターを元の世界に帰す。
それが叶ったなら。聖杯戦争が破綻したなら。
願いを叶えなければいけない、どん詰まりのマスター達はどうなる。
界聖杯を明確に黒と感じつつあるのに、おでんの心にはそんな疑問がずっと重たく残り続けていた。
【世田谷区・路上/一日目・午後】
【
光月おでん@ONE PIECE】
[状態]:疲労(小)、右肩に刀傷(行動及び戦闘に支障なし)
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:二刀『天羽々斬』『閻魔』(いずれも布で包んで隠している)
[所持金]:数万円程度(手伝いや日雇いを繰り返してそれなりに稼いでいる)
[思考・状況]
基本方針:界聖杯―――その全貌、見極めさせてもらう。
1:他の主従と接触し、その在り方を確かめたい。戦う意思を持つ相手ならば応じる。
2:界聖杯へと辿り着く術を探す。が――
3:何なんだあのセイバー(武蔵)! とんでもねェ女だな!!
[備考]
※
古手梨花&セイバー(宮本武蔵)の主従から、ライダー(
アシュレイ・ホライゾン)の計画について軽く聞きました。
◆◆
「セイバー。まず申し開きを聞かせてほしいのですよ」
「い、いやあ〜……血が騒いだっていうか、職業病っていうか?」
「病気なら病院に行きましょうです。ほら、ちょうどこの辺に皮下医院っていうおっきな病院が――」
「ごめんって〜! 今後は気をつけるから!!」
「……本当ですか? ボクの目を見て言ってほしいのです」
「……、……で、出来る範囲で……」
露骨に目を逸らして歯切れ悪く言う武蔵に、梨花は何度目かの溜息をついた。
おでんは「肝が冷えた」なんて言っていたが、梨花にしてみれば肝どころではない。
全身が余すところ冷えたし、体内に残っているアルコールの若干の酩酊感すら粉微塵に吹き飛んだ。
かつて山狗部隊と戦った時に味わった緊張感の何十倍かのものを、何の前触れもなく味わうことになったのだ。
これで怒らないほど梨花は心の広い人間ではなかった。
また、恐らく武蔵と戦ったらしい件のライダーの方は、彼女との戦闘のことを"じゃれ合った"とは思っていないのだろうなあという確信も深まった。
「まあでも、良かったこともあるわよ?
光月おでん。彼は、梨花ちゃんから見ても"信用できる相手"だったでしょ?」
「……時と場合によるのです。
主に、これから向かう先でするお話の内容で変わるのですよ」
梨花からおでんに対する印象は、決して悪いものではない。
豪放磊落で、悪いものは悪いと言える男。間違っているものを、間違っていると正せる男。
光月おでんはひとえにそういう人間だった。信用できるかどうかで言えば、武蔵の言う通り前者。
ただ――それはあくまでも、梨花が聖杯を狙わないことが決まった場合の話だ。
おでんは、あの男はあまりにも強すぎる。
あの男がサーヴァントを連れているという事実は、まさに反則の一言。
もしも敵に回ればと考えるだけで背筋が粟立つのを禁じ得ない、そんな相手だった。
「(……ライダー達が信用できる相手であることを祈るしかないわね)」
そう思いながら、歩みを進める。
目的地は遠い。適当な場所でバスなり何なりに乗ることになるだろう。
少なくともこの炎天下の中をずっと徒歩というのは間違いなく得策ではない。
「そういえば……ライダーとは何処で待ち合わせてるのですか?」
「あれ? 言ってなかったっけ」
「新宿で、としか聞いてないのです」
「んーとね、ホテルだよホテル。なんかちょっともわ〜んとした雰囲気な音楽の掛かってるホテル」
「……それ、ボクが入れないホテルだったりしませんか?」
――会話をしながら、武蔵は右手をぐー、ぱー、と動かす。
……いつもより心做しか動きが緩慢だった。それもその筈、武蔵の右腕には今軽い痺れが残っている。
おでんの大技、"桃源白滝"。それを受け止めた反動が、彼女の腕を苛む不快感の正体だった。
梨花はそれに気付かないだろうし、武蔵もそれでいいと思っている。
何しろサーヴァントの肉体は便利だ。このくらいの痺れならば、すぐに抜けるだろう。
ただ、驚くべきは――人間の肉体で以って、武蔵に此処までの痛手を負わせたおでんの剣。
そしてそのおでんに曰く。自身の連れるサーヴァントは、ともすれば武蔵よりも上だと言う。
「……そんなこと言われたらさあ。堪えきれなくなっちゃうじゃない」
「? セイバー?」
「ううん、何でもない。行こ、梨花ちゃん」
――戦ってみたい。
斬り合って、その腕を見てみたい。
原初神を斬って往生した時には、自分の旅もこれで終わりだと思った。
だが蓋を開けてみればこの通り。当たり前のように、
宮本武蔵の往く手には"先"があって。
ライダーの中に眠る無限大の赫炎。そして今回存在を知った、おでんのサーヴァントと――決して武蔵を飽きさせない。
ああ、なんて楽しいのだろう。
不謹慎なことは百も承知で、武蔵はそう思った。
鮮やかなる天元の花――依然、その花弁は散らず。
【
古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:健康、酔いも冷めたわ(激怒)
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]
基本方針:生還を目指す。もし無ければ…
0:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。
1:ライダーの所へ向かう。
2:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。
3:彼女のいた事務所に足を運んで見ようかしら…話せる事なんて無いけど。
4:いきなり路上で殺し合い始めるな(激怒)
【セイバー(
宮本武蔵)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、右腕に痺れ(中度。すぐに回復します)
[装備]:計5振りの刀
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:マスターである
古手梨花の意向を優先。強い奴が見たら鯉口チャキチャキ
1:にちかちゃんとライダーの所へ向かう。
2:おでんのサーヴァント(
継国縁壱)に対しての非常に強い興味。
3:
アシュレイ・ホライゾンの中にいるヘリオスの存在を認識しました。
武蔵ちゃん「アレ斬りたいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。でもアレだしたらダメな奴なのでは????」
時系列順
投下順
最終更新:2021年10月06日 15:09