東京都は新宿区を舞台に勃発した最強同士の大激突。
それがもたらした余波は新宿全体をほぼ壊滅状態にまで追い込み。
そしてその報せと異変は東京の全土に轟き渡った。
新宿と隣接する中野区の廃屋に身を置いていた
光月おでんも当然、件の異変を察知していた。
彼の場合は、新宿方面に広がる異様な色彩の空を見上げる必要すらなかった。
「縁壱。感じたか?」
鍛えに鍛え抜かれた肉体。
周囲の反対を押し切って大海に出、世界を旅して積んだ経験。
新免武蔵とすら打ち合うことを可能にする大剣豪、それがおでんだ。
そんな彼の体はかの地から放たれる巨大な力の気を鋭敏に感じ取ってくれた。
理由としてはそこに加えて更にもう一つ。
隣区にまで届くほどの震撼を巻き起こした気の中に、おでんにとって覚えのある波長が紛れていたというのもあった。
「ああ。巨大な……途方もなく巨大な力の兆しを感じた。
そして大地が丸ごと吹き飛んだかのような、壮絶極まる破壊音も聞こえた」
「本当かよ。おれは流石にそこまでは聞こえなかったが……すげェ地獄耳だなお前」
無論それを縁壱が感知していない筈はない。
彼はおでんのように覇気を持たない身だが、彼と同じかそれ以上の感知能力を有していた。
生まれ持った感覚の強さにかけても、
継国縁壱は当然のように規格外なのだ。
「見ろ。あの空を」
おでんは廃屋の窓から遠方に広がる空を見る。
忌々しげな顔だった。
彼には分かっているからだろう。
あの空の下で何が起こっているのか。
どれだけの命が巻き添えになって潰れたのか。
おでんは、聖杯を願うあまりに人の心を失った亡者達の醜さを空の色に見出した。
「何処かの大馬鹿野郎が暴れてやがる。手前の力をひけらかすみてェに」
だがおでんの表情がこうまで苦い理由はそれだけではない。
大気を通じてひしひしと伝わってくる皮膚の痺れるような"覇気"。
「……おれのよく知る馬鹿野郎だ。だから余計に放っとけねェ」
「それは」
おでんはその覇気の主を知っていた。
故郷ワノ国の闇から這い上がってきた復讐者、黒炭オロチ。
奸計を練る頭脳はあっても戦う力はからっきしだったにも関わらず、彼の布く独裁体制を誰も崩せなかった理由。
「アヴェンジャーの言っていた"青龍"のことか?」
「真の名は
カイドウ。龍に化ける怪物だ」
それこそが青龍……真名をカイドウという大海賊。
音に聞くロックス海賊団にも名を連ねていた怪物。
おでんは生前彼と相見え、その体に消えない傷跡を刻み付けた。
しかしあと一歩のところでおでんは奸計に倒れ、それが彼の破滅を決定付けた経緯がある。
その決着を不本意に感じ引きずる程度には真面目な男だったがそんな一面はカイドウの脅威度をほんの僅かたりとも下げない。
その証拠が彼方、新宿方面に広がる異様な空とそこから伝わってくる震撼だ。
「……おれは昔あの野郎を仕留め損ねた。あと一歩のところで判断を誤っちまった。
今でも思うんだ。もしあの時おれがカイドウを討てていればどれほどいい未来を遺せたかって」
こう言ってはいるがおでんも自惚れてはいない。
自分はカイドウに一太刀入れただけだ。
オロチの腹心の企みを見破れていたとしても、その先に待っていたのは本気になったカイドウとの一騎打ち。
勝てたかどうかは分からない。だがそれでも、あの時もしババアの罠を見抜けていたなら。
それだけの頭が自分にあったなら……ワノ国の未来はどれほど安泰なものになっていただろうかと。
二度目の生を受けてからというもの、おでんはずっと取り返しのつかない悔恨に思いを馳せてきた。
「死人のおれが此処に呼ばれた意味は、界聖杯を裁定することだとずっとそう思ってた。
けどよ……今はこう思うんだよ。もしかしたらそれはとんでもねェ勘違いだったのかも、ってな」
おでんに聖杯を手に入れるつもりはない。
彼の敗北がワノ国に齎した暗黒の二十年が消えることはない。
しかしそれでもおでんは龍化の法を宿すあの怪物に因果を感じずにはいられなかった。
デッドプールの口から青龍の話を聞いた時、パズルのピースがカチリと嵌る感覚が確かにあったのだ。
自分のような死人が此処に招かれた意味。
界聖杯が遺恨ばかりを残して死んだバカ殿なぞに可能性とやらを見出した理由。
それはつまり――あの日果たせなかった"討ち入り"の再演なのではないかと。
「おれはカイドウを討たなきゃならん」
「……私もお前も。裁定者などではなかったということか」
「元々ガラじゃねえとは思ってたんだよ。だがこれで納得したぜ」
光月おでんは百獣のカイドウを。
継国縁壱は
鬼舞辻無惨を。
それぞれ生前に仕留め損ねた悔恨の大元。
それを討つために自分達は二度目の生を与えられたのだと二人は共に理解する。
「おれは新宿に向かう。あの地獄絵図は放っておけねえからな」
「あさひとアヴェンジャーのことはどうする」
「正直不義理だが……こればかりは書き置きを残してでも出かけるしかねェな。
あさひ坊達のことは確かに心配だけどよ、だからといってあれは放置出来ねえよ」
おでんが気がかりなことはもう一つあった。
新宿で暴れているのがカイドウだというのは分かる。
だがあの怪物が格下に向けて必要以上に力をひけらかす質だとは思えない。
それを前提に置いて考えた場合に浮かび上がるのは恐ろしい可能性だ。
“カイドウの野郎とまともにやり合える奴がいるってことか……?”
冗談ではない、と思う。
あんな怪物一体でも手に余るのだ。
なのにそれと切った張ったの勝負が出来る輩がいるとしたらこれほど最悪なことはない。
だからこそおでんは"新宿に行かねばならぬ"と強くそう思ったのである。
もしもそんな事態になっていたなら――怪物同士の闘いを止められる主従など相当限られるのだから。
「来てくれるか? 縁壱」
「私はお前のサーヴァントだ、おでん。お前が決めた指針に逆らう理由はない」
す、と縁壱は立ち上がる。
渦中の新宿へと向かうために。
「胸を張れ。お前の進もうとしている道は……少なくとも私の目には、正しいものに見える」
「そうか。……お前に言われると何だか安心するぜ」
光月おでん。継国縁壱。共に、侍。
いざ――崩壊都市と化した新宿へ向かう。
◆ ◆ ◆
“羽虫”
“解っている。光におびき寄せられた輩だろう、まさに羽虫というわけだ”
自分の下僕が破壊した町を悠然と立ち去るは
峰津院大和。
皮下医院の襲撃という目的は達成出来たが、敵の首級を挙げられなかったのは計算外だった。
皮下真。人間を辞めて非道の限りを尽くしながら理想を追う男。
彼自体は大和に言わせれば取るに足らない相手だった。
最後逃してしまったのは不覚だったが、その不覚さえなければ間違いなく大和が仕留めていただろう。
だが皮下の根城で待っていたあの龍人(ライダー)は話が別だ。
最終的には皮下側の撤退という形の決着に落ち着いたものの、殺せなかったことに変わりはない。
口の利き方や態度はともかく、実力だけは誰よりも確かな
ベルゼバブが仕留め損ねたのだ。
“距離もそう遠くない。殲滅するが異論はないな?”
“構わん。ジークフリートになり損ねた汚名を存分に濯ぐのだな”
“龍の腰巾着一匹仕留められなかった無能がよく吠える。恥を知らないのか?”
主従の絆も共感も一切存在しない棘だらけのやり取り。
こんな男達が現状一二を争うほど聖杯に近い位置にいるというのは皮肉なものだった。
しかし現に大和は強い。ベルゼバブについては言わずもがなだ。
先刻は仕損じたが、逆に言えばあれほど理不尽な強さがなければこの二人を相手に生き残るのはまず不可能ということでもある。
“時にランサー。つかぬことを聞くが”
ベルゼバブは大和の言葉にいちいち反応などしない。
彼に限っては無言は肯定を意味する。
大和も今更彼のそんな態度を問題にする気はなかった。
この傲岸、不遜を絵に書いたような男を相手に礼儀を説くほど困難なこともそうそうないのだから。
“先の戦いで宝具を開帳しなかったのは何故だ?”
“羽虫よ。余が慢心したとでも言いたいのか”
“身も蓋もない言い方をすればそうなる。貴様の矛は不滅すら滅ぼす『腐滅』だろう”
ベルゼバブは先刻のライダー、カイドウとの戦いで宝具を使っていなかった。
宝具は宝具でも彼が常から自在に操っている鋼翼ではない。
彼がランサーのクラスで召喚されている所以でもある第一宝具、腐滅の魔槍だ。
その本質を知る大和にしてみれば、彼がカイドウを相手に出し惜しんだ判断に多少の疑問が残った。
“原初の一たるルシフェルすら滅ぼした混沌の槍。惜しむ意味があったのか?”
“あった”
大和の詰問にベルゼバブは即答で断言した。
第一宝具『滅尽滅相・混沌招来(ケイオスマター)』。
天司長ルシフェルを殺害するという最大級の難業をねじ伏せたその実績を、大和は知識として把握している。
仮にベルゼバブが先刻の戦いでそれを抜き、カイドウの身に突き立てていれば十中八九それで事が済んでいただろう。
ベルゼバブの虎の子とはそれほどの代物なのだ。
これを上回る攻撃手段がこの界聖杯に存在しているとは、大和は思わない。
では何故ベルゼバブがそれを抜かなかったかといえば、その理由は単純だった。
“あれは羽虫の中でも上澄みの上澄みだ。でなくば余とああも延々戦えはすまい”
それは大和も認めるところだ。
生半なサーヴァントなら力押しで打倒出来るほどの実力を持つ大和でも、流石にあの龍人が相手では手も足も出ないだろう。
恐らくカイドウはこの聖杯戦争において最強もしくはその座に限りなく近いサーヴァントに違いない。
そこの認識に相違がないことを大前提にして、ベルゼバブは続けて理由を述べる。
彼の場合それは釈明ではなく、あくまでもマスターという肩書きを持つ羽虫に対して垂れる高説だったが。
“奴はまだ全力を出していなかった。余があれしきの羽虫に遅れを取るとは思わんが、万一、億一の可能性があるのも否定はしない”
“君らしくない発言だ。意外と堅実に物を考えるのだな、ランサー”
“ケイオスマターを抜くのは奴の底が見えてからでも遅くはない、そう考えたまでのこと。異存はあるか?”
カイドウは無窮の武錬を体現するベルゼバブをして、武の究極に達した存在に見えた。
常に相手を羽虫と軽んじるベルゼバブではあるが、彼はある種カイドウのことを信用したのだ。
ケイオスマターを抜き殺しにかかったとしても呆気なくは終わらない。
腐滅の槍に宿る危険性を直感的に見抜き、槍に決して触れない、当たらない殺陣に切り替えてくる。
そう信じたからこそあえてベルゼバブは安直な道を選ぶのを避けた。
それを聞いた大和も、これ以上そこについて追及しようとはしなかった。
“いや。少なくとも単なる油断でないことは分かった、十分だ”
“羽虫の物差しで余を測る無礼は改めろ。命がある内にな”
相変わらず親しげな様子の一切ない会話。
それも途切れ、二人は無言のまま気配の方へと歩を進めていった。
◆ ◆ ◆
新宿へ向かうべく急ぐおでん。
その駆ける様子をワノ国の人間が見たならば、かつて彼が黒炭オロチの許へ乗り込んだ日のことを思い出したろう。
しかし彼の足取りは途中で止まることになった。
新宿で起きた悲劇を止めるためにと全身全霊を懸けて走るおでん。
そんな彼を撃ち抜かんと、鋼の羽毛が数十と吹き寄せたからである。
「一歩下がれ」
それに反応したのは縁壱だった。
彼の声に従って足を止め、慣性の法則を力ずくでねじ伏せて後ろに一歩分飛ぶ。
結果空いた一歩分のスペースに縁壱が霊体化を解き現界。
視認すら難しい速度での斬撃を繰り出し、飛来した鋼羽を全て叩き落とした。
「悪ィ、助かった! だが…何だこりゃ。敵襲か!?」
「そのようだな」
縁壱に促された方向をおでんは見る。
そこには急ぐおでんに不躾極まりない攻撃を仕掛けてきた敵の姿が確かにあった。
苛立ちも露わにそれを見つめて、おでんは。
“――縁壱”
“皆まで言うな。分かっている”
自分の中の苛立ちの念が一瞬で冷め切っていくのを感じた。
光月おでんは海に出て、自分の生きていた世界が井戸の中であったことを思い知った。
ゴールド・ロジャー。エドワード・ニューゲート。そうした強者達の全力を目にする度に畏れで体が震えたものだ。
自分を攻撃してきた褐色の男を目にした瞬間おでんが抱いた感覚は、あの頃のそれによく似ていた。
コイツは――強い。というより、ヤバい。
あの頃の百獣のカイドウと相対した時ですらこれほど心胆から震える感覚に陥りはしなかった。
何故今。よりにもよって今こんな化物に出くわしてしまうのかと悪態をつかずにはいられない。
「おい、そこの褐色肌! 詳しい事情は省くがおれ達は今メチャクチャ急いでんだ!」
今はこんなところで時間を取られている場合ではないのだ。
新宿にはカイドウがいる。
もう戦いが終わってしまっていたとしても救える命があるかもしれない。
自分に誰かを救える力があるにも関わらず、何かしら理由を付けてそれに背を向けることが出来るおでんではなかった。
「戦いてェなら後でいくらでも付き合ってやる! だから今は退いてくれ!」
「何を言うかと思えば……実につまらん命乞いだ」
「ああ!? 何だと!」
おでんの言葉を聞いた男は何ともつまらなそうにそう言った。
つまらんと。おでんの抱く焦りも真剣さも、全てを一笑に付したのだ。
「光月おでんだな。君の評判は私も常々聞いているよ」
「…マスターの方か。ならお前でもいい。戦うのは構わねェが今はナシだ」
「残念だったな、義侠の風来坊。今から君が向かったところで全て遅い」
なんだこの態度のでけェ男はと噴飯するおでん。
そんな彼にとって新たに現れたマスターと思しき少年は希望の光に見えただろう。
が、おでんのそんな期待は通らない。
少年……峰津院大和はおでんの期待を裏切るどころか、更にその遥か下を行く言葉を口にしたからだ。
「新宿での戦いは既に痛み分けで終わっている。まさか此処まで事が大きくなるとは思わなかったが」
「その言い草、まさか…てめェらか、カイドウの野郎と戦ったのは!?」
「ほう、これは思いがけない収穫だ。まさかあの青龍に化けるライダーの真名をこんなところで知れるとはな。
感謝ついでに教えてやろう。いかにも、我々は貴様の言う"カイドウ"と戦ったとも」
むしろ仕掛けたのはこちらの方だ。
そう言って微かに笑う大和におでんは拳を握り締めることを禁じ得なかった。
「あの様子では数百人……いや、数千人単位で死んだかもしれないな」
「……お前。何を笑っていやがる」
「いや、失礼。君があまりにも必死な形相をしていたものでな」
大和の言を聞いておでんは確信する。
こいつらは、カイドウに一方的に仕掛けられた被害者ではない。
事実は逆。こいつらが、カイドウに仕掛けたのだ。
その結果新宿は崩壊した。大勢という言葉ですら足りないほどの人間が死んだ。
何が何だか分からない内に、大切な人との別れを済ませる間もなくゴミのように死んでいったのだと。
「若輩の身なことは承知で助言しよう。死んだ民衆の命など、気負う必要も背負う必要もない」
「……」
「聖杯戦争のために生産された世界に生きる人間の命に一喜一憂するなど、それは心の贅肉というものだ」
おでんはただ無言だった。
その体が小さく震えていることに大和は当然気付いている。
自分が風来坊の逆鱗の上を歩いていることを承知しながら、しかし大和の口は止まらなかった。
「彼らは"泡"だ、光月おでん。戦いが終われば弾けて消える、意味を失う。
界聖杯に選ばれ地平線の彼方へ至る権利を得た私達が、弾けた泡の行方に想いを馳せるのはまったく無意味なことだ」
「そうか。よく分かった」
空気が張り詰めた。
縁壱ですらもがおでんの方に目を向けた。
英霊ならざる人の身が発するにはあまりに過大な怒気の波。
ベルゼバブは縁壱を睥睨しながらも、内心で独りごちた。
成程、少しは出来るようだ――と。
「名を名乗れ」
「峰津院大和」
「ヤマト。お前はつける薬のねェ大バカ野郎だ」
何故初対面の相手が自分の名前を知っているのか、なんて疑問すら頭の中に残らない。
おでんは今、憤激していた。
命を命とも思わない傲慢な支配者の言動に魂からの怒りを覚えていた。
こいつらは生かしておけないと武士の魂がそう叫ぶ。
父、光月スキヤキから受け継いだ光月の血の誇りが、この男を許すなと言っている!
「お前らは此処でおれ達が倒す。明日の朝日は拝ませねェ」
「吠えたな。日本男児を気取るならば吐いた唾を飲む無様だけは晒してくれるなよ」
大和がベルゼバブに目配せする。
言われるまでもないと、彼は縁壱の方を見た。
大和とベルゼバブは常に険悪な、主従という形容をすることが憚られるような関係性の中にある。
だがその実彼らは互いの実力を理解できないほど愚鈍な人間ではなかった。
だから余計な懸念を挟むことなく対処を任せられる。
マスターはマスターを。サーヴァントはサーヴァントを。
確固撃破という極めて基本的でありながら最もベターな回答で打ち破る意思を共有する。
「ぶった斬る」
「やってみろ。侍の出る幕などこの時代にはもう無いことを教えてやる」
◆ ◆ ◆
「愚かなマスターを持つと苦労するな」
ベルゼバブは嘲笑も露わにそう言った。
対する継国縁壱はただ無言。
刀一振りのみを寄る辺に最上位の武力を持つ破壊の権化と相対する。
縁壱をして分かる、相対したその瞬間に伝わってくる恐るべき強さ。
縁壱の生きた生涯の中では間違いなく最大の脅威であったろう鬼舞辻無惨すらこれに比べれば遥かに霞むだろう。
人間の完成形と言って差し障りない縁壱がそう感じるほど、目前の男が発する闘気は圧倒的だった。
「なんと痩躯な霊基だ。哀れみすら覚えるぞ」
英霊としての格など比べるまでもない。
間違いなく、格上はあちらの方だ。
これほどの存在までもが呼ばれていたのかと驚嘆さえ覚える。
これが新宿を破滅に追い込んだ英霊の片割れか。
まさに怪物。鬼など及びもつかない暴力の化身。
これを相手に人が出来ることなど、何一つありはしないだろう。
「一つだけ聞かせてほしい」
「何だ」
「お前は、主……峰津院大和の言を聞いて何か感じたか」
だが――しかし。
ベルゼバブは縁壱の質問にただ嘆息した。
「何かと思えば、つまらん」
「……」
「下らぬ感傷に引き摺られて無様を晒す意味が何処にある。
あえて奴の言葉を借りるが……泡が弾けて消えたことに嘆き悲しむほど無意味なことが他にあるか?」
「そうか。よく分かった」
日輪刀を携えて。
破壊の君と相対する彼は人ではない。
人を超え、英霊の座へと至った存在。
失敗に満ちた生涯を永遠のものにされて尚自身のあり方を損なわぬもの。
「貴様は存在してはならない生き物だ」
「吠えたな、羽虫。ならばどうする」
「斬る」
悔恨の念の一つでも口にしたならば話は違ったかもしれない。
しかし縁壱の問いに対してベルゼバブが返した答えはどうだ。
悪びれるどころか、散っていった命を慈しむ意思の欠片もない。
ならばもはや縁壱に刃を振るうことを躊躇わせる理由は何一つとしてなかった。
かつて彼が鬼と相対し、その首に向かって刃を振るっていた頃のように。
ただ殺すという意思のみを向けて縁壱は日輪刀の柄に手を掛けた。
「相分かった。己の愚かさをあの世で恥じろ」
ベルゼバブもそれに応えるように翼を広げる。
鋼の翼、おぞましく。
須臾の内に数多の命を奪える暴力の具現が花を咲かせる。
「余を相手に大口を叩いたその浅慮。貴様自身の血肉で支払うがいい」
もしもこの戦端に観衆がいたのなら、誰もが初撃での終幕を確信したたろう。
ランサー、ベルゼバブの背中から噴き上がった黒い爆発。
正確にはそう錯覚するほどの勢いで噴射された無数の黒翅。
それがセイバー、継国縁壱の立っていた座標を惨たらしい槍衾に変えてしまったからだ。
しかしそこに縁壱はいない。
落ちてきた翅の軌道を正確に予測した舞踏のように繊細な脚使いでベルゼバブの初手をいなした。
が、それがどうしたと言外に告げるのがベルゼバブの次手。
「死ね」
ゴムのように伸縮する鋼という矛盾。
事もなくそれを実現させながら背の鋼翼を縁壱目掛けて振り抜いた。
当然、縁壱はこれも回避。
髪の毛の数本が引きちぎられて宙に舞う。
その毛髪が風に吹かれて縁壱の視界から消える頃には、ベルゼバブが彼の目の前にいた。
至近距離で振り抜かれる拳は見栄えでこそ見劣りするが、これも侮れる威力では到底ない。
並のサーヴァントなら拳骨一つで撲殺出来る程度の膂力がそこには込められている。
空を切る拳。
その風圧だけで路傍の街路樹が砲弾でも食らったみたいに抉れて散り散りになっていくのは何の冗談か。
ベルゼバブに比べて悲しいほど細い体、低い背丈、そして刀という頼りない得物。
あらゆる点で縁壱は彼に劣っており、傍から見ると相対的にひどくちっぽけな存在に見えた。
現に縁壱は此処までベルゼバブに何も出来ていない。
ただ避けて、避けて、避けて……。
避け続けることしか出来ていないのだ。
「分を弁えているな。避けるのだけは一丁前というわけか」
そう挑発する一方で、ベルゼバブの内心は至って冷静だった。
ベルゼバブは手抜かりなく打ち込み攻め立てているが、縁壱は未だ傷一つ負っていない。
逃げに徹しているといえばそれまでだが、それにしたってベルゼバブを相手にこの間合いで無傷を保つなど容易なことではない。
“多少は出来るらしい。闇雲に打ち込むばかりでは捉えられんか”
敵に対する認識を一段引き上げながら、ベルゼバブはその手に黒い靄を纏わせる。
徐々に形を確かにしていくそれは彼の生み出すアストラル・ウェポンの一つ。
創世の破壊を含有する、黒銀の滅爪であった。
「ならばこれならどうだ?」
ランサークラスであることを忘れそうになるほどの多芸は彼が積んできた研鑽の程を窺わせる。
鉤爪などという凡そ一般的とは言い難い武器の扱いも、ことベルゼバブに限っては抜かりなどある筈もない。
人間の動体視力では黒い線にしか見えないような高速の爪撃。
それを受けて継国縁壱は、此処で初めてその刀を抜いた。
妙な刀だ――ベルゼバブはそう思う。
東洋の刀としてはありふれた形状であるし、強いて言うなら特異な点は刀身が赫く染まっていることくらいだ。
宝具ではあるのだろうが魔力の反応は無きに等しく、ベルゼバブが今用いている黒銀の滅爪の方が数倍も武器として強大だった。
なのに何故か、取るに足らない鈍と片付けることに躊躇を覚える。
何かを見落としているようなそんな不快感が脳の片隅に居座っている。
思案するベルゼバブだったが、その間も攻撃の手は止めるどころか緩めもしない。
黒い嵐と呼ぶ他ない滅びの闇と刀一本で戦う無理難題の遂行を、縁壱は強いられ続けている。
闇、闇、闇、闇。
その中に凛と煌めく赫銀の斬光。
希望の光と呼ぶにはあまりに細く小さいそれ。
しかし消えることだけはない。
不滅の灯火となってベルゼバブと打ち合い続ける縁壱の技量は成程英霊の座へ上るに相応しいものだ。
ベルゼバブでさえ、そこのところには異論がなかった。
己が殺す気で潰しにかかっているというのに、未だ以て殺せても潰せてもいないその事実。
だがそれでも。
縁壱が多少拮抗出来ていることを含めても、ベルゼバブは終始優位に立ち続けていた。
「涙ぐましい姿だな。後何分耐えられる? それとも何十分か?」
手数の違い、パワーの違い。
力と手数を両立させた上で途切れることなく降り注ぐ混沌の雨霰。
縁壱がこれほど耐えるのはベルゼバブにとって予想外だったが、それならそれで耐えられなくなるまで続けるのみだ。
彼の優位は何も揺るがない。
更にベルゼバブは駄目押しとばかりに目前の煩わしい羽虫に対し、火力を上乗せする暴挙に出た。
渾身の力を込めた滅爪の大振りが縁壱を襲う。
当然縁壱は受け止めるか躱すかするだろうが、どちらを取っても彼にとっては荊道だ。
まず受け止めるのは愚策の中の愚策。
面で受けることには特化していない日本刀が、滅爪の纏う闇とそれを担うベルゼバブの剛力に耐えられる道理はない。
躱すのならば得物を失わずに済む。
だが……今まさにその選択をした縁壱に向けて、超音速の"代償"が殺到した。
身を引いての回避に出た縁壱に対しベルゼバブは再度の乾坤一擲。
但し今度は滅爪ではなく背の鋼翼を袈裟懸けに振るうことでの攻撃だ。
今更補足するまでもないだろうが、ベルゼバブの鋼翼は縁壱程度の英霊なぞ容易く両断出来る。
先刻のカイドウは例外中の例外で、普通の英霊がベルゼバブの力をその身で受けることは即死に繋がると言っていい。
その上彼の全力はこの速度。
音を超え、サーヴァントの動体視力を以てしても完全に捉え切るのは困難な超高速。
そんな怪物の力と速度が歴戦の戦術眼に基づき振るわれるのだから恐ろしいなどという次元ですらない。
事実哀れな侍はこうして詰みに追いやられ、まさしく羽虫のように無残に殺されてしまうことと相成り――
「……ほう?」
は、しなかった。
縁壱の行動にベルゼバブが訝しげな目をする。
縁壱は回避が困難と悟るや否や、迫る滅びの翼に向けて前進したのだ。
血迷ったか。
死の淵に立たされては、縁壱ほどの剣士でさえも滑稽な愚を犯してしまうのか。
違う。
ベルゼバブにはそれが分かっていたし、事実事態は彼の思った通りになった。
縁壱は身を屈め、翼と擦れ違いざまにそれに劣らぬほどの速度で一閃刻んだのである。
鋼翼などと称されていてもその実態では鋼のそれを遥か上回る強度を持つ恐るべき翼。
しかし斬鉄までは行かずとも、接触を介して軌道をズラすことなら可能だ。
少なくとも縁壱には造作もない。
表情一つ変えずに踏み込み、敵と定めた羅刹を斬るべく刀を振るう。
頬から垂れる一筋の血。
彼が超音速の死に挑み失ったものはたったのそれだけだ。
幸運などではない。全ては理屈に基づいた必然だ。
継国縁壱はベルゼバブの速度を目で追うことが出来るという、ただそれだけの単純な理屈。
“此奴……”
ベルゼバブの眉間に皺が寄った。
今度は自らが至近で仕掛ける形となった縁壱。
ベルゼバブは此処で初めて攻勢に回った縁壱を相手にすることとなり、そして知った。
“随分と、不快な剣を使う”
この男の剣は並大抵のものではない。
剣士など何度となく相手にしてきた。
何度となく、屠ってきた。
だが、剣士を相手にしてこのような気分になった試しは今まで一度もなかった。
ジリジリと脳の何処かが焦げ付くような。
ひどく不快で、そして鬱陶しい気分。
滅爪による斬撃と鋼翼による連続攻撃は既に迎撃の範疇に収まっていない。
にも関わらず足取りを崩さず徹底的に攻勢を保ち続ける縁壱。
幾百打ち合った頃だろうか。
互いに息一つ切らさずの攻防の中、一つの変化が発生した。
“……掠めたか”
ベルゼバブの首筋に一筋の裂傷が走った。
流れ落ちる血は彼がこの戦いで初めて受けた手傷だ。
首筋に手をやり、雫が滴る不快な感覚を拭い去るベルゼバブ。
――その瞬間から更に二秒ほど遅れてのことだった。
彼の胸から紅い血潮がひとたび噴き上がり、褐色の貌が驚愕に歪んだのは。
「――――何」
袈裟に刻まれた斬痕。
肺の表面にまで及ぶほど深いそれの存在に気付いたところでようやく痛覚が追い付いてきた。
カイドウと世界そのものを巻き込みながら殺し合った時ですら手傷らしい手傷は負わなかったベルゼバブ。
その彼が初めて負った刀傷は、強者の脳細胞に甚大な激痛を運んでいた。
「貴様……何をした?」
細胞の一つ一つが炎で灼かれていくような痛みだった。
傷口を基点に全身へ痛みの火が燃え広がっていく気さえする。
妙な剣だと思ったその理由が今はよく分かる。
あの剣は、滅ぼすものなのだ。
ベルゼバブが秘めるかの混沌と、形は違えどよく似た性質を宿している。
「千三百ほど打ち合って、ようやくお前の速度に慣れてきた」
「……」
「速度に慣れれば隙も分かる。そこを斬っただけのことだ」
今、縁壱の眼はベルゼバブの速度を完全に捉えられる。
だがそれまでの間は流石の彼も苦戦を強いられた。
目前の敵に動体視力が追い付かないという初めての経験。
明鏡止水たる透き通る世界に生まれながら入門していた縁壱が、その眼の力あってもなお追い付けない超高速の連撃。
空気の揺らぎと打ち合いの中に滲んだ敵のクセ、傾向。
そういうものをまで逐一つぶさに観察し、読み解きながら迎え撃たなければならなかった。
しかし幸い、そうしている内に縁壱の肉体がベルゼバブという"異常事態"に対し順応してくれた。
千三百の苦境を超えた末、千八百でベルゼバブの隙を知覚。
千九百合後半にて遂に、縁壱は彼の見せた本人すら無自覚であったろう間隙へ自らの斬撃を"挟み込む"ことに成功したのだ。
当人が斬られたことに気付かないほどの速度と精度で、正確に。
「二撃目は頸を落とすつもりだったが……上手く行かないものだ」
「……業腹だが認めよう。余が侮っていた」
ベルゼバブの頸に走る一筋の傷。
それは打ち合いの中で偶然掠めたものではない。
首尾よく一度彼を斬ることに成功した縁壱が二撃目を狙い、惜しくも仕損じた結果の傷。
期せず殺されかけていたこと。
あまつさえ、そのことに気付かない道化を晒していたこと。
二つの事実に屈辱と怒りの念が噴き上がる。
羽虫の跳梁を此処まで許してしまった己の不覚に、マグマのような憤激を感じる。
今も脳を灼き続ける赫刀の激痛ですら、その煮え滾る激情の前に芥と消えていく。
「貴様は確実に殺す。その羽音は此処で消さねばならんと、そう理解した」
「そうか」
虚空から出でる――混沌。
招来されたそれが宿す理は滅尽滅相、万象全ての死と滅び。
あらゆる神話を破却するデウス・エクス・マキナ。
縁壱の赫刀をさえ遥かに凌ぐ、不死(モノ)を殺すということの極北。
『滅尽滅相・混沌招来(ケイオスマター)』。
その顕現を前にしても、しかし縁壱の表情は変わらない。
「私も同じ想いだ」
◆ ◆ ◆
“なんて剣使ってやがる、このガキ……!”
峰津院大和という少年のことを、おでんは当初さほど評価していなかった。
体を鍛えてはいるようだがそれもおでんが今までに見てきた強豪達に比べれば数段劣る。
所詮はマスター。そう舐めていたのは否定出来ない。
しかし今はそんな侮りも吹き飛んだ。
その大和がおでんをして息を呑むほどの業物を振るいながら、遅れを取ることなく拮抗勝負を演じているからだ。
“おれの二刀流と打ち合える刀なんてそうはねェぞ…!? 宝具か、こりゃ……!?”
大和が振るうは青き長剣、フェイトレス。
運命を否定する名を持つ一振りはおでんの重剣を受けても軋みすらあげていない。
稀代の大業物であり、妖刀である閻魔。その相方を務める天羽々斬。
その二刀を同時に相手取って形を保てる武器がこの世に幾つあるだろうか。
それもその筈、おでんの推測は当たっていた。
かの剣はアストラルウェポン――彼のサーヴァント、ベルゼバブの宝具から生成された武装なのだ。
如何におでんが強くとも容易に砕ける道理はない。
「ちッ…! 鬱陶しい剣だな! 普通に斬り合えねェのかお前は!」
「貴様の時代錯誤に付き合ってやる義理が、私にあると思うか?」
純粋に強いだけならまだしも、大和の剣は時に氷を吐いた。
迂闊に受けられる速度ではない。
おでんの肉体が屈強と言えど、まともに貰えば深手になるのは必至だろう。
やり難い。彼が思わず漏らした悪態を一蹴しながら……大和は不意に剣を離した。
「うおッ――!」
「とはいえ不満なら、それに応えて棄ててやろう。このようにな」
瞬間、フェイトレスが凄まじい速度でおでんを目掛けて飛翔した。
時速は数百キロは優にあろう。
咄嗟におでんは二刀を交差させて受け止めたが、それでも数メートルかの後退を余儀なくされた。
肝を冷やしながらどうにかそれを乗り越えた彼に、称賛の代わりに降り注ぐのは次なる脅威。
「"カレイドフォス"」
大和の手に、今度は白銀の槍が握られており。
その切っ先がおでんの方を向いていた。
大和が呟いた一つの言葉。
意味すら理解出来ないそれが、しかし光月おでんの背筋を粟立たせる。
見聞色の覇気。極めれば未来予知の真似事すら可能になるそれが、光月おでんの命運を助けた。
アストラルウェポン、ロンゴミニアド――疑似宝具真名解放。
網膜が灼けるような眩い光条が数瞬前おでんが立っていた座標に着弾。
爆裂としか形容することの出来ない閃光と破壊を撒き散らし、おでんの大柄な体が紙切れみたいに宙を舞う。
「どういう原理だよ!!」
とんでもない出鱈目だ。
危うく死ぬところだったし、体に受けたダメージも少なくない。
どうにか着地し、当然のように着地点を予期して放たれていたレーザービームを切り払う。
そして大和を睥睨して……おでんは舌打ちをした。
“眩惑か…忍者みてェな真似しやがって……!”
強すぎる光を至近で見たことによる影響か、大和の姿が霞んで見える。
おでんとて大名をしていた身だ。
自分の命を狙った忍者崩れと戦ったことくらいはある。
しかし大和ほどの強者が使ってくる小細工の脅威度は、雑魚が使うそれの比ではない。
「ガキの火遊びにしちゃ激しすぎんだろ」
「そのガキに、貴様はこれから己が願いを踏み潰されるわけだ。笑えるな」
おでんを嘲笑うように殺到する光条弾雨(レイストーム)。
このままでは防戦一方だし、いずれ削り切られてこっちが負ける。
意を決しておでんは不自由な視界のまま踏み出した。
光の悉くを力押しで突破し、弾幕をこじ開け、目指すは峰津院大和。
裂帛の気合を込めて迫り来るおでんへ追撃を続けながら……大和もまた、内心では舌を巻いていた。
“これほどのマスターがいるのは計算外だった。そう認めざるを得んか”
大和がおでんとの接近戦を早々に投げ出した理由は一つである。
光月おでんが、大和の予想以上に強かったのだ。
打ち合う度にその膂力に驚かされた。
おでんはフェイトレスの強度に悪態をついたが、あれほどの業物でなければ数合でお釈迦になっていただろう。
剣戟の音がもう少し小さかったなら、彼が最初の激突の直後に「タルカジャ」と小さく呟いたのが聞き取れたに違いない。
“皮下なぞより余程上だ。下手なサーヴァントなら敗れても不思議ではない”
思考しながら大和が行ったのはケルベロスの招来だった。
ロンゴミニアドの射撃を力ずくで乗り越えんとするおでんの頭上からケルベロスが襲いかかる。
「は!?」
驚愕しながらも防御はしっかり行うおでん。
だがケルベロスの攻撃は流石の彼も両手を用いねば防げない。
そこで大和は先刻棄てたフェイトレスを呼び戻す。
おでんの背に向かって迫ったそれから逃げるため、彼は地面を転がった。
呼び戻したフェイトレスをキャッチし、振り被り。
「"アイシクルスティング"」
二度目の疑似宝具真名解放。
それに合わせてケルベロスが更に真上から渾身の一撃を叩き込む。
大きく体勢を崩したおでん。
そこに、水を司るアストラルウェポンの全霊が壮絶な音響と共に撃ち込まれ――
「……驚いたな。腕の一本は吹き飛ばせるものと思ったが」
「ハァ、ハァ…こんなもん、白吉っちゃんのゲンコツに比べたら屁でもねェよ……!」
土煙が晴れた時。
おでんは額から流血し、全身に擦過傷を作りながらも五体を保ってそこにいた。
地面に突いた片膝を持ち上げ、立ち上がってから顔を垂れ落ちる血を拭う。
分かっていたことではあるが、改めて大和は光月おでんの超人さを悟った。
今の挟撃を受けてこの程度で済む人間など、皮下真のような例外を除けばまず他には居まい。
大和の口角に笑みが浮いた。
「何を笑っていやがる」
「嘲っているわけではない。貴様があまりに出鱈目をするものだからつい、な」
「何だそりゃ。これだけやっといて嫌味な野郎だな」
この男はこんな世界にいるべき人間ではない。
一切の皮肉を抜きに大和はそう思う。
彼がいるべき世界は、自身の理想の果てに待つ実力主義の楽園だ。
彼のような存在が溢れた世界をこそ大和は夢見ている。
全ての弱者の見苦しい言い訳や嫉妬、怠惰を棚に上げた不平不満。
その全てをただそこにいるだけで黙らせられる圧倒的な強さ。
これを評価せずして他の誰を評価すればいいのかという話だった。
「提案がある」
「……言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」
「私と組め、光月おでん。風来坊をさせておくには惜しい」
リップを指して大和は素質があると評した。
だがおでんに対する評価は彼に向けたものより遥かに上だ。
よもやこの世界で、自分相手に此処まで食い下がれるマスターが存在するとは思わなかった。
「なんでおれが新宿を地獄に変えたお前らと組むんだ」
おでんの眉間に皺が寄る。
瞳に赫怒の炎が燃えている。
「分かってねェなら教えてやる。おれはブチ切れてんだぞ」
「侘びるつもりはないが弁明はしようか。私としてもあれは想定外の事態だった。
あれはなかなか難儀なサーヴァントでな。恐らく興が乗りすぎてしまったのだろう」
嘘は言っていない。
大和はあれだけ野放図な混沌を描くのを好む質ではないのだ。
少なくとも自分の計画の中には絶対に持ち込まない。
「貴様にも願いがあるのだろう。場合によっては、それを汲んでやる。
私の目的は界聖杯なぞという一介の願望器風情に留まらない。界聖杯は所詮ただの鍵に過ぎん。
鍵を用いて扉を開いたその先にあるものを掴んだ暁には、貴様の働きに免じて――」
「おれは見極めるだけだ」
台詞を遮っておでんが断ずる。
「界聖杯の善悪とその真贋を見極める。それが、おれの目的だ」
「……成程。利口とは言えんが、貴様らしい不合理だ」
「ただおれは別に聖杯を欲しがってる連中の全員を否定してェわけじゃない。
何かを願う気持ちは尊いものだ。道理で叶わない願いを無理で叶えること、それを悪と呼ぶ気はねェんだ」
脳裏に痩せぎすの少年の面影を浮かべながら、おでんは言った。
不合理と言われるのは分かる。そこに異論はない。
だがそれでも二度目の生などに興味は持てないし、そのために今を生きる人間を踏みつけにするなどおでんにとっては論外だった。
「だからまずはお前の願いを聞かせろ。話はそれからだ」
「私を試すか。大きく出たな」
鼻を鳴らすも気を悪くしたわけではない。
聞かせろと言われたならば教えてやるまで。
ロンゴミニアドを地に突き、大和は口を開く。
「新世界だ」
「あ?」
「私が望む世界に既存の秩序や枠組み、慣習は必要ない。
重視するのはただ一つ、"個"としての強さ。生物としての強さのみ。
強くあれるのならば、男女の区別も年齢の違いも、肌の色も信教の違いも身分の貴賤も全て問わん」
新世界という言葉にはおでんも多少の思い入れがある。
が、大和の口に出したそれは文字通りの新たな世界。
確かに、それこそ万能の願望器なんて代物でもなければ実現不能の夢だった。
新世界の海とは弱者は生存すること自体叶わない……そういう場所であった。
そして大和が夢想する新世界もまた、強者生存の理を布くという。
「生きるべき人間が明日を生き、評価されるべき人間が正当に評価される。
貴様とて一度や二度は感じたことがあるのではないか? この世の憎むべき不条理を」
おでんは黙って話を聞いていたが、仮に口を開いたとしても否定はしなかったろう。
何故ならそれはまともな価値観を持って生まれた人間ならば、誰もが何処かで抱く憎しみだからだ。
平等という名の不条理への疑念と嫌悪。
この世は常にそういうもので溢れている。溢れかえっていると言ってもいい。
世襲文化が根強く残っているワノ国の出身であるおでんだ。そう感じた機会はきっと人より多い。
「それが私の理想(イノリ)だ。この身、この魂は、それを叶えるためだけに此処にある」
「……」
「世界をより美しく、優れたものにしたい。これは間違った願望か? 裁定者を気取る彷徨者よ」
おでんは過去、父スキヤキから盆栽の薀蓄を聞いたことがあった。
おでんには全く理解の出来ない爺臭い趣味だったが、どういうわけかよく覚えている。
曰く盆栽では、余分な枝や葉は切り捨てて純粋な木の美しさや雄々しさを追求していくのだという。
野放図にあるがまま成長させていては立派とは程遠い駄木になる……そんな風に父は言っていた気がする。
「……一つだけ、聞かせてくれ」
大和の語る新世界とはつまりそういうものなのだろうとおでんは認識した。
弱者という名の枝葉を剪定することで、それに隠され阻害されていた力ある者達を輝かせる。
そうして世界そのものを限りなく先鋭化させていき、それを以って理想郷と成す。
とてもではないが二十歳にも達していないような小僧が考えるとは思えない理想だった。
おでんは険しい顔をしながら大和の思想を噛み締め、彼なりに咀嚼して、それでようやく口を開いた。
「その世界に、おれの好きなものは残せるか?」
「……貴様らは揃って同じことばかり気にするのだな。だが、答えてやろう」
先刻相対したリップを彷彿とさせる問い。
苦笑しながらも大和はおでんに答えを返す。
「そこに尊く輝く素養があるのならば。芽を出す前の種を穿り出して捨てる真似はしない」
そも、大和は現在の世界で弱者に足を引かれて割を食っている素養ある者達の存在を憂いているのだ。
その彼が現行世界における強者以外は全て消すとかそんなことを宣うのはダブルスタンダードというものだろう。
この世界には蝶になるのを待つ蛹や、日が当たらないせいで芽吹けない種が山程ある。
大和の目的にはそういう者達に日を当て昇華させるというのも当然含まれている。
おでんに返した答えに一切の嘘はない。
「言ってみろ。貴様は何を残したい?」
打って変わった大和の問いに、おでんは答える。
「金を借りる時はしおらしい態度するクセして、返せと迫ると千里を駆けてでも逃げ回るバカ。
毎日朝から晩まで酒ばっかり飲んで、仕事もしないでのらりくらり生きてるジイさん。
いつ行ってもマズい飯しか出さねェそば屋のオヤジ、完全にボケちまって何度訂正してもおれをてめえの息子と勘違いしてるバアさん。それと…」
「……逆に聞こうか」
大和の思想を咀嚼し飲み込んだおでん。
その上で彼があげつらうのは、彼の望む世界に適合出来るとは思えないろくでなしばかり。
大和は小さく溜息を吐いてから、おでんへ逆に問いかけた。
「貴様は本当にそんなゴミ共の存在に価値があると思っているのか?」
「ああ。思ってるぜ」
「……」
即答に閉口する大和。
今度はおでんが語る番だった。
「おれの世界にも山程の問題と不幸があった。お前の世界もそうなんだろう。
そこでお前が何を見て育ってきたかは知らん。だが、お前の"憂う心"全てを否定する気はねぇよ」
ワノ国はお世辞にも完璧な国ではなかった。
根付く迫害に貧富の差。明日の飯に困窮する貧乏人がいる一方で平気で白飯やおしるこを床にぶち撒けて笑う奴らもいる。
大和の育った世界にもきっと山程の欠陥があったのだろうことは分かる。
その不条理を嘆くことに罪はない。
素直に受け入れて大人になれなどと吐くつもりはない。
だが。
「けどなヤマト。おれはあいつらが好きなんだ」
弱い人間がいるから生まれる不幸もあれば、弱い人間がいるから生まれる美しさもあるのだ。
自分の立場や身分に驕ることなくワノ国を奔放に駆け回って育ってきたおでんはそのことをよく知っている。
駄目な奴、弱い奴、狡い奴、悪い奴。
色んな人間を見てきたし、時には成敗だってしてきた。
だが……それでもおでんは彼らに生きる価値がないとは思わない。
「強ぇ奴、弱い奴。色んな奴らが生きててバカみてェに笑ってる、おれはそんな世界が好きなんだ」
「その多様性の結果、不当に可能性を閉ざされる人間がいるとしてもか」
「そいつらが救われるべき存在なことに異論はない。だが、その為に弱え奴らが全員死ななきゃならねえって言うなら話は別だ」
大和の眼光の強さが増す。
おでんへの期待が失望へ挿げ替わるのが分かる。
しかしおでんも怯まない、譲らない。
峰津院大和の理想を聞いて彼が思ったのは共感ではなく確信だ。
この願いだけは認めてはならない。
彼の描く世界が実現することだけは、たとえ生きる世界が違っていようと決して許してはならないのだと。
「あれこれ理屈こね回すのは性に合わねえ。直球で言うぜ、ヤマト」
閻魔の切っ先を大和に向ける。
それは彼の提案を蹴り飛ばす意思表示であり。
そして彼の描く新世界に唾を吐く明確な宣戦布告だった。
「おれの友達(ダチ)を蔑ろにしてんじゃねェ」
強い者が羽ばたけない理不尽に憤る、その感情はきっと正しい。
しかしだから羽ばたけない弱い者は生きる価値がないと言うのならおでんは何度だって否を叫ぶ。
少なくともそんな世界じゃ、光月おでんは笑えない。
おでんが愛した世界を国を上から目線で勝手に取り仕切ろうとする目の前の男を認められない。
光月おでんは――ワノ国の誰よりも、窮屈な世界を嫌っているのだから。
「二十年も生きてねェガキが! おれの国を! おれの大好きな世界を! あいつらを! 見下げてんじゃねェぞ――ヤマト!!」
おでんの喝破が木霊する。
その反響が途絶えた頃に大和はまた息づいた。
交渉の決裂だけならばまだ良かった。
だが事態はそれより悪い。
おでんの愚かしさを知った今、大和が彼に対してすることは一つだった。
「そうか。貴様が莫迦なのはよく分かった」
「ンなことよく知ってるぜ。おれのアダ名を教えてやろうか?」
「結構だ。貴様の強さは認めるが、もはや未練はない」
大和の望む世界は窮屈だ。
しかしその分上には伸びていく、尖っていく。
おでんにはその意義が分からない。
おでんの望む世界は広大だ。
上ではなく横に伸びていく、広がっていく。
大和にはその意義が分からない。
故にこの決裂は必然だった。
光月おでんと峰津院大和は決して手を取り合えない水と油。
世界の理不尽さを知っていても、そこに希望を見たか失望を見たかはまるで違う。
彼らが手を取り合うなど、天地がひっくり返っても起こるかどうか。
「余計な邪魔者が来ては面倒だ。此度は退く」
大和は既にベルゼバブの苦戦に気付いていた。
あの程度のサーヴァントに苦戦するなどとは思っていなかったが、これ以上戦い続ければ分が悪いのは間違いなくこちらだ。
おでんほどの強者を相手にしながらやって来た野次馬共を捌くとなるとさしもの大和も苦しい。
ケルベロスのみでも大半のサーヴァントならば相手は出来るだろうが、新宿の戦いを経た今は一旦腰を落ち着けたかった。
「だが忘れるな。私は貴様を脅威だと認識した」
手にしたロンゴミニアドを消失させ、ケルベロスを傍らに呼び戻す。
「その武勇と義侠心を礎にして、私は私の世界を築こう」
「させねえよ。おれがいる」
「繰り返しになるが――貴様も忘れるな。私がいることを」
おでんとしても追う気はなかった。
今は新宿に行かなければならない。
そこに溢れている悲劇と被害を調停し、一人でも多くを助けなければならないのだ。
峰津院大和とそのサーヴァントは確かに倒さねばならない脅威だったが……深追いすれば生死をかけた戦いになるとおでんは理解していた。
「勝利とは走り抜けた後で振り返るもの。貴様の未来は私の轍だ」
「そうなる前にぶん殴ってやるよ、ヤマト。お前の夢を醒まさせてやる」
勝敗の行方は未来へ。
光月おでんと峰津院大和、最強のマスター二人は決着を預けて別れる。
倒さねばならない敵の存在を互いに確信しながら。
◆ ◆ ◆
ベルゼバブと継国縁壱の戦いは再び拮抗に戻っていた。
互いに併せ持つ剛柔。偏りのない武力と武力。
その胸に袈裟の刀傷を負いながらも、ベルゼバブは二度目の不覚は取らなかった。
“恐るべき男だ。不覚を自覚した途端に全ての隙が消えた”
縁壱をして恐ろしいと形容する。
生涯ただの一度も敗れず、不倶戴天の敵にさえ一方的に恐怖を植え付けた神の玩具が。
その生涯が始まって初めて相手の武力に脅威を覚えた。
これほどの生物が存在するのかとそう思った。
否、それどころか……"疲労"という概念すら、縁壱は混沌を振るう槍兵との邂逅を経て初めて知覚したのかもしれない。
“つくづく癪に障る羽虫だ。こうも余の神経を逆撫でするとは”
だがベルゼバブも縁壱に苦いものを覚えていた。
開帳した忌槍、ケイオスマター。
当たれば必ず殺すそれも前提を満たせなければただの風車に過ぎない。
そして縁壱は、ベルゼバブほどの強者が全神経を欹てなければ避け切れないほどの攻めを維持しながら致命傷を避け続ける超人技を成し遂げていた。
掠めるのが精々。まともな当たりは一切与えられていない。
「ちょこまかと逃げ回る羽虫だ。虫螻の跳梁も極めればこうまでなるか」
「私はお前とは違う。人間としてこの世に生を受け、人間として生きてきた」
最初から神仏の類として作られていたならと。
そう思ったことは一度や二度ではないが、噤む。
「人間はお前のようには戦えない。それだけの血を失えば手足が縺れ、やがて死に至る」
誰もがそうだった。
鬼の一挙一動、その全てが人間にとっては致死だった。
掠めただけで手足が飛ぶ、脈が裂ける。
仲間の死など日常茶飯事であり、だからこそ誰もが一瞬一瞬に命を懸けるのだ。
「受け止めていい攻撃など人間にはない。その気構えがなければ、怪物とは戦えない」
「……合点が行った。そもそも前提からして間違えていたか」
ベルゼバブも事此処に至って理解する。
継国縁壱、目前の羽虫に対して使うにはケイオスマターは不適であったと。
彼にとって当たれば死ぬ槍など特筆すべき脅威ではないのだ。
何故なら彼にとっては、自身の放つ全ての攻撃が致死だから。
「当たれば死ぬ」を常識として歩み英霊の座に至った彼には……混沌の魔槍など今更敵ではない。
「しかし……笑えるな。羽虫よ」
究極の完成度を誇る人間の剣士。
彼を相手に不覚を取り……挙句やり返せない。
そんな屈辱を受けておきながら、しかしベルゼバブは嗤った。
「人間の振る舞いか? それが」
「――――」
縁壱は答えない。
肯定する義理はなく。
今更否定するつもりもなかった。
交差する二つの不死殺し。
赫刀とケイオスマター。
それが衝突し、世界を震わせたその時。
何百回目かの震撼の瞬間に――ベルゼバブが顔を歪めた。
“ランサー。退くぞ”
“世迷言を。余を負け犬にするつもりか?”
“貴様が光月おでんのサーヴァントに不覚を取ったことは既に把握している”
突如響いた念話に青筋が浮かぶ。
ベルゼバブにとって縁壱は既に殺す以外にない相手だった。
だからこそケイオスマターを抜いたのだ。
にも関わらず大和は退くと言う。
これで黙って従うほど、彼のプライドは安くない。
“想像出来るぞ。貴様は貴様で野良犬に手を噛まれたのだろう。だから臆病風に吹かれたというわけか”
“このまま続ければ横槍も入るだろう。それは今の我々にとって芳しくない事態だ”
“覇道を志す者の言葉にしてはずいぶんと弱気だな。寄せ来る敵など全て殺し尽くしてしまえばよかろう”
“それを先刻の青龍に対してやってくれていれば、私の胃痛の種も減ったのだがな”
仮にも主従という間柄であるとは思えない会話。
互いに考えを曲げるつもりなど毛頭ないため、必然その行く末は強硬策になる。
“もう一度言うぞ。退け、ランサー”
ベルゼバブの強さは大和も知っている。
彼ならば本当に横槍を入れてきた野次馬どもも薙ぎ払えるだろう。
しかしその結果、目前の強敵に首を取られる可能性はある。
そのことは彼が既に一撃不覚を貰っていることからも明らかだった。
“こんなところで令呪を使いたくはない。私にリードを引かせるな、ベルゼバブ”
“……貴様。それを余が許すと思うか?”
“御託はいい、今は私の采配に従え。消えぬ屈辱をもう一つ追加で味わいたくなければな”
浮かぶ青筋が一つ増える。
だがベルゼバブは結局、主の采配に従うことを選んだ。
煮えくり返る腸の処理は大和に贖わせる。
そして……
「邪魔が入った。此度の勝敗は預ける」
ケイオスマターを消し。
ベルゼバブは苛立ちを露わに踵を返す。
縁壱は主がそうしたのと同じく、そこへ斬りかかろうとはしなかった。
「と、言いたいところだが。あえて貴様に与えてやろう」
ベルゼバブは一度だけ足を止めてそう言った。
「此度は貴様の勝ちだ。しかし次は、余が貴様の全てを踏み躙る」
敗北することは屈辱だ。
しかし慣れている。
ベルゼバブは絶対無敵の常勝者ではない。
彼の生涯には現に消えない敗北の記憶が残り続けている。
だが――次はない。敗北を敗北のままにはしない。
それもまた、ベルゼバブだ。
天司長を墜とした男の不撓不屈の殺意なのだ。
「覚えておけよ、侍」
「分かった。覚えておくぞ、悪鬼」
……斯くして二つの戦端は閉じる。
最強と最強の決戦にはまたしても決着がつかず。
その行方は未来へと委ねられた。
動乱の東京にて聖杯戦争は続く。
数多の因縁を渦のように逆巻かせて、地平線の彼方が見えるその日まで。
【新宿区・郊外/一日目・夜】
【峰津院大和@デビルサバイバー2】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)
[令呪]:残り三画
[装備]:宝具・漆黒の棘翅によって作られた武器(現在判明している武器はフェイトレス(長剣)と、ロンゴミニアド(槍)です)
[道具]:悪魔召喚の媒体となる道具
[所持金]:超莫大
[思考・状況]
基本方針:界聖杯の入手。全てを殺し尽くすつもり
0:ひとまず休息を取る。ベルゼバブとの情報共有もしておきたい。
1:ロールは峰津院財閥の現当主です。財閥に所属する構成員
NPCや、各種コネクションを用いて、様々な特権を行使出来ます
2:グラスチルドレンと交戦しており、その際に輝村照のアジトの一つを捕捉しています。また、この際に、ライダー(シャーロット・リンリン)の能力の一端にアタリを付けています
3:峰津院財閥に何らかの形でアクションを起こしている存在を認知しています。現状彼らに対する殺意は極めて高いです
4:東京都内に自らの魔術能力を利用した霊的陣地をいくつか所有しています。数、場所については後続の書き手様にお任せします。現在判明している場所は、中央区・築地本願寺です
5:白瀨咲耶、
神戸あさひと不審者(プリミホッシー)については後回し。炎上の裏に隠れている人物を優先する。
6:所有する霊地の一つ、新宿御苑の霊地としての機能を破却させました。また、当該霊地内で戦った為か、魔力消費がありません。
7:リップ&アーチャー(
シュヴィ・ドーラ)に同盟を持ちかけました。返答の期限は、今日の0:00までです。
8:光月おでんは次に見えれば必ず殺す。
【備考】
※皮下医院地下の鬼ヶ島の存在を認識しました。
【ランサー(ベルゼバブ)@グランブルーファンタジ-】
[状態]:極めて不機嫌、疲労(中)、胴体に袈裟の刀傷(再生には時間がかかります)
[装備]:ケイオスマター、バース・オブ・ニューキング
[道具]:タブレット(5台)、スナック菓子付録のレアカード
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:最強になる
0:いい加減にしろよ羽虫(大和)。合流次第詰める。
1:現代の文化に興味を示しています。今はプロテインとエナジードリンクが好きです。また、東京の景色やリムジンにも興味津々です。
2:狡知を弄する者は殺す。
3:青龍(カイドウ)は確実に殺す。次出会えば絶対に殺す。
4:あのアーチャー(シュヴィ・ドーラ)……『月』の関係者か?
5;セイバー(継国縁壱)との決着は必ずつける。
【備考】
※峰津院大和のプライベート用のタブレットを奪いました。
※複数のタブレットで情報収集を行っています。
※大和から送られた、霊地の魔力全てを譲渡された為か、戦闘による魔力消費が帳消しになり、戦闘で失った以上の魔力をチャージしています。
【光月おでん@ONE PIECE】
[状態]:全身にダメージ(中)、右肩に刀傷(行動及び戦闘に支障なし)、疲労(中)
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:二刀『天羽々斬』『閻魔』(いずれも布で包んで隠している)
[所持金]:数万円程度(手伝いや日雇いを繰り返してそれなりに稼いでいる)
[思考・状況]
基本方針:界聖杯―――その全貌、見極めさせてもらう。
0:新宿に向かって人々を助けたい。
1:他の主従と接触し、その在り方を確かめたい。戦う意思を持つ相手ならば応じる。
2:界聖杯へと辿り着く術を探す。が――
3:カイドウを討つ。それがおれの現界の意味と確信した。
4:ヤマトの世界は認められない。次に会ったら決着を着ける
5:何なんだあのセイバー(武蔵)! とんでもねェ女だな!!
6:あの変態野郎(クロサワ)は今度会った時にぶちのめしてやる!
7:あさひ坊のことが心配。頃合を見て戻りたい
[備考]
※
古手梨花&セイバー(宮本武蔵)の主従から、ライダー(
アシュレイ・ホライゾン)の計画について軽く聞きました。
※「青い龍の目撃情報」からカイドウの存在を直感しました。
※アヴェンジャー(デッドプール)の電話番号を知りました。
※廃屋に神戸あさひに向けた書き置きを残してきました。
【セイバー(継国縁壱)@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(中)、全身各所に切り傷や擦過傷(いずれも小程度)
[装備]:日輪刀
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:為すべきことを為す。
1:光月おでんに従う。
2:他の主従と対峙し、その在り方を見極める。
3:もしもこの直感が錯覚でないのなら。その時は。
4:凄腕の女剣士(宮本武蔵)とも、いずれ相見えるかもしれない。
[備考]
※鬼、ひいては鬼舞辻無惨の存在を微弱ながら感じています。
気配を辿るようなことは出来ません。現状、単なる直感です。
時系列順
投下順
最終更新:2022年02月11日 00:16