<10:52 AM>
天候は曇り。
今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。
(……俺も傘持ってくればよかった)
肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。
この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。
そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。
息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。
「………………10:52?マジかよ…」
遅刻だ。
約束の時刻は10:00。
現在時刻は10:52。
完全なる遅刻。
怒られるのを覚悟しなければならない。
「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」
小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。
今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。
もし、そんなことになったなら、
今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。
(……俺も傘持ってくればよかった)
肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。
この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。
そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。
息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。
「………………10:52?マジかよ…」
遅刻だ。
約束の時刻は10:00。
現在時刻は10:52。
完全なる遅刻。
怒られるのを覚悟しなければならない。
「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」
小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。
今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。
もし、そんなことになったなら、
『インデックス~今日から次の支給日までご飯はお茶漬けだよ~』
『ホント~?毎日毎日お茶漬けなんて私は幸せなんだよ~』
『あはは~噛みつくなよインデックス~』
なんてことになりかねない。
(あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…)
古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。
そんなことをしている内に自販機の前に着いた。
約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、
「あれ?」
そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。
(あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…)
古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。
そんなことをしている内に自販機の前に着いた。
約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、
「あれ?」
そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。
(集合場所って…ここで良かったよな?)
携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。
「集合時間は10:00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」
もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。
上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。
それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。
(謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ)
そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。
ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。
「へ!?」
抱き着いてきた人物は、
「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」
上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。
「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」
右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。
そんな上条を見て、
「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」
意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。
「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」
「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」
美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。
「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」
その笑みに上条は思わずドキン…とする。
(こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?)
さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。
「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」
「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」
ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。
公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。
携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。
「集合時間は10:00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」
もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。
上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。
それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。
(謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ)
そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。
ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。
「へ!?」
抱き着いてきた人物は、
「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」
上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。
「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」
右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。
そんな上条を見て、
「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」
意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。
「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」
「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」
美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。
「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」
その笑みに上条は思わずドキン…とする。
(こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?)
さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。
「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」
「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」
ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。
公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。
<11:07 AM>
「な……ンだとォ…」
一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。
「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」
「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」
クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。
御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。
一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。
「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」
「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」
クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。
御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。
敵対勢力名〔パンドラ〕
作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕
そして、その目的と手段。
作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕
そして、その目的と手段。
予想外だった。
一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。
予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。
「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」
「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」
「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」
「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」
「…………………………………」
一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。
かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。
「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」
「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」
「な………ッ!?」
一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。
思わず身を乗り出しながら、
「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」
「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」
仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。
御坂妹はその言葉に口をつぐむ。
おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。
そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。
御坂妹は悔しさに唇を噛む。
護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。
ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。
キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。
「ミサカにも、やれることはあります…」
「あァ?」
「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」
感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。
一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。
予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。
「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」
「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」
「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」
「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」
「…………………………………」
一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。
かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。
「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」
「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」
「な………ッ!?」
一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。
思わず身を乗り出しながら、
「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」
「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」
仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。
御坂妹はその言葉に口をつぐむ。
おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。
そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。
御坂妹は悔しさに唇を噛む。
護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。
ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。
キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。
「ミサカにも、やれることはあります…」
「あァ?」
「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」
感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。
そんな御坂妹を見て、一方通行は唇の端をつり上げながら思う。
自分は間違っていなかった。
一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。
一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。
しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。
そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。
そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。
「何もねェよ…」
心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。
「お前にできることなンて、何一つ」
胸がチクリと痛む。
「ありはしねェンだ」
「…………………………………」
御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。
一方通行の瞳に御坂妹が映る。
その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。
(妙なとこばっか似やがってェ……)
そして、御坂妹が口を開こうとして、
自分は間違っていなかった。
一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。
一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。
しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。
そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。
そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。
「何もねェよ…」
心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。
「お前にできることなンて、何一つ」
胸がチクリと痛む。
「ありはしねェンだ」
「…………………………………」
御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。
一方通行の瞳に御坂妹が映る。
その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。
(妙なとこばっか似やがってェ……)
そして、御坂妹が口を開こうとして、
「やることならさ。君にはたくさんあるよ」
そんな声が路地裏に響いた。
一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、
「予想より早かったな…〔パンドラ〕」
そう呟いた。
二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。
少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。
極め付きには無表情。
あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。
対する少女はスポーツ少女のような短い髪。
ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。
明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。
そこまではまだいい。
問題はその服装だ。
まるで劇のような。
世代の違う時代にいるような服装だった。
「………あれが一方通行だよ」
無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。
その言葉に少女はニヤリと笑う。
「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」
一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。
「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」
「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」
そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。
そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。
「………………ミーナ」
「うん…わかってる」
何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。
一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、
「予想より早かったな…〔パンドラ〕」
そう呟いた。
二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。
少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。
極め付きには無表情。
あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。
対する少女はスポーツ少女のような短い髪。
ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。
明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。
そこまではまだいい。
問題はその服装だ。
まるで劇のような。
世代の違う時代にいるような服装だった。
「………あれが一方通行だよ」
無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。
その言葉に少女はニヤリと笑う。
「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」
一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。
「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」
「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」
そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。
そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。
「………………ミーナ」
「うん…わかってる」
何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。
「キミは面白いね…殺すのが惜しいくらいだよ」
「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」
少女はポケットに手を入れながら、
「それはやってみないと…」
その言葉は最後まで続かなかった。
一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。
バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。
「………あァ!?」
しかしそれだけだった
一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。
少女が倒れない。
銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。
「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」
そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。
その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。
「仕返し♪」
少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。
綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。
「大いなる五大元素の一つ『水』」
少女は笑いながら独り言のように呟く。
「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」
少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。
「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」
瞬間――――――
ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。
破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。
「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」
少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。
「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」
それに呼応するように水の流れが渦を巻く。
周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。
「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」
人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。
水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。
おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。
しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。
そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。
これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。
しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。
「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」
死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。
見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。
「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」
少女はポケットに手を入れながら、
「それはやってみないと…」
その言葉は最後まで続かなかった。
一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。
バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。
「………あァ!?」
しかしそれだけだった
一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。
少女が倒れない。
銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。
「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」
そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。
その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。
「仕返し♪」
少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。
綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。
「大いなる五大元素の一つ『水』」
少女は笑いながら独り言のように呟く。
「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」
少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。
「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」
瞬間――――――
ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。
破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。
「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」
少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。
「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」
それに呼応するように水の流れが渦を巻く。
周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。
「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」
人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。
水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。
おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。
しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。
そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。
これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。
しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。
「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」
死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。
見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。
<11:12 AM>
上条は美琴に連れられ一つの建物の地下駐車場にたどり着いた。
「御坂…ここに何かあるのか?」
面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。
上条は疲れきっていた。
その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。
普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。
第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。
そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。
「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」
「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止めて----------」
言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。
グフォ…、と上条の口から声が漏れる。
「………空気読みなさいよ、このバカ」
「すいませんでした」
上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。
美琴はそんな上条を見て、もうと呟いていた。
「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」
「そんなこと言われても……、」
雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、
「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」
まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。
そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。
「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」
「そうだ、それを聞きたかったんだ」
上条は先ほどから思っていたことを口にする。
「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから------」
口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。
「どうなったらそんな結論になんのよ…、」
「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」
上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。
「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」
「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」
美琴が空いた手で髪の毛をいじる。
「そんなことも知らないの、常識じゃない?」
ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。
日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。
「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」
そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。
「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」
顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。
「御坂…ここに何かあるのか?」
面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。
上条は疲れきっていた。
その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。
普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。
第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。
そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。
「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」
「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止めて----------」
言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。
グフォ…、と上条の口から声が漏れる。
「………空気読みなさいよ、このバカ」
「すいませんでした」
上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。
美琴はそんな上条を見て、もうと呟いていた。
「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」
「そんなこと言われても……、」
雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、
「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」
まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。
そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。
「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」
「そうだ、それを聞きたかったんだ」
上条は先ほどから思っていたことを口にする。
「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから------」
口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。
「どうなったらそんな結論になんのよ…、」
「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」
上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。
「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」
「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」
美琴が空いた手で髪の毛をいじる。
「そんなことも知らないの、常識じゃない?」
ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。
日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。
「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」
そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。
「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」
顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。
(御坂が……御坂が可愛く見えるッ!?)
「目を閉じて」
「へ?」
「はやくッ!!」
うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。
「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」
「で、できる範囲でなら」
そう…と美琴は呟いた。
(なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?)
手から汗がにじみ出てきた。
視界がゼロなため一層焦りを加速させる。
「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」
震えるような声で美琴は話す。
目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。
見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。
ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。
(雰囲気って……そういうことかよ)
「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」
「ホントに?」
美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。
上条は見えない美琴に笑いかけた。
「ホントだ。約束する」
手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。
「じゃあ…言うよ?」
美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。
「私、御坂美琴は…」
上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。
(俺が緊張してんのかな…?)
心の中で苦笑する上条。
そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。
「あなた、上条当麻のことが…」
その続きを予想し、上条は息を呑む。
そして、美琴が震える口を開いた。
「目を閉じて」
「へ?」
「はやくッ!!」
うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。
「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」
「で、できる範囲でなら」
そう…と美琴は呟いた。
(なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?)
手から汗がにじみ出てきた。
視界がゼロなため一層焦りを加速させる。
「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」
震えるような声で美琴は話す。
目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。
見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。
ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。
(雰囲気って……そういうことかよ)
「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」
「ホントに?」
美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。
上条は見えない美琴に笑いかけた。
「ホントだ。約束する」
手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。
「じゃあ…言うよ?」
美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。
「私、御坂美琴は…」
上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。
(俺が緊張してんのかな…?)
心の中で苦笑する上条。
そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。
「あなた、上条当麻のことが…」
その続きを予想し、上条は息を呑む。
そして、美琴が震える口を開いた。
「殺したくて殺したくて仕方がありません」
は?と呟き目を開けると目の前の『御坂美琴』が後ろに手を回しているのが見えた。
『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける
『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける
「み、みさ…か?」
目の前の出来事に体がついていかない。
その前に目の前の出来事を受け入れられない。
さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。
なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。
なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。
なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。
そのすべてが上条には理解できない。
完全に思考が停止した。
「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」
銃を片手に美琴は笑う。
「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」
「………………、」
「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」
「え………ッ!?なんでそれを………」
上条の背筋に冷たい何かが走った。
目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。
目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。
「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」
「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」
肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。
上条より少し背の短い身長。
常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。
極めつけは右手だ。
上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。
その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。
(変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?)
「お前はいったい…誰なんだ!?」
思わず叫ぶ上条。
それに対し『御坂美琴』は、
「だからね当麻…」
悪意のある視線で上条を貫いた。
「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」
そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。
誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。
目の前の出来事に体がついていかない。
その前に目の前の出来事を受け入れられない。
さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。
なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。
なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。
なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。
そのすべてが上条には理解できない。
完全に思考が停止した。
「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」
銃を片手に美琴は笑う。
「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」
「………………、」
「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」
「え………ッ!?なんでそれを………」
上条の背筋に冷たい何かが走った。
目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。
目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。
「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」
「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」
肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。
上条より少し背の短い身長。
常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。
極めつけは右手だ。
上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。
その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。
(変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?)
「お前はいったい…誰なんだ!?」
思わず叫ぶ上条。
それに対し『御坂美琴』は、
「だからね当麻…」
悪意のある視線で上条を貫いた。
「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」
そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。
誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。