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【船上にて2】

おおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおんんんん……歓喜の雄叫びが聞こえる。
「これはまた…」
「敵さんもやるもんだなぁ…」
轟音を響かせ船体を崩しながらはい出て、敵味方関係なく海上のヒトを跳ね飛ばす白い巨大なモノは甲板を乗せた鯨らしい巨大な骸骨獣だった…

「進めーー!下等生物共を薙ぎ払えーーー!!!」
ある種悲痛にも聞こえるアニーの突撃命令が響き渡る。
「お嬢様、ここまで事を大きくすると我らが神や主の処罰を受ける可能性も…」
「アハハハハ!知ったこっちゃないわーーーーー!!!!」
「……お嬢様が『また』ご乱心なされたぞーーーー!!」
骸骨達が一斉に頭を抱える。

「こりゃちょっと骨だな!リバティ商会組全員でかかるか」
ゴンザレスさんとバートンさんが海に飛び込み水中を弾丸のように進む。
リオさんとザクさんは放棄された小舟を飛び移りながら鯨に向かう。
船員たちは
「野郎ども!ありゃライトスチール種の骨だ!ひっぺがして売れば一年は酒代に困らんぞ!!総員、捕鯨準備用意!!!」
「「「「うぉう!!!!!」」」」
素晴らしいハングリー精神だ。

僕は、下のお祭り騒ぎに混ざりにいったゴブリン船員を尻目に、スコープを覗いて敵甲板を見ている。
「あれ、さっき撃ち漏らしたヒトだよね?中途半端で終わった仕事はちゃんと始末しとかないと…」
そう呟いて引き金を引く

殺気を感じたアニーが飛来した弾丸をカトラスで叩き切る。
切られた弾丸が両脇にいた骸骨船員を粉々にしたが気にしない。
「見つけた…あいつね」
言うが早いか背中から巨大な骨の手が出て甲板を打ち付けてジャンプ!一気に交易船のマストのところまで飛翔する。

「ちょっ!!」
飛来した物体に切り裂かれる直前、転げるようにマストの横木に逃げる。
ガスッ!!
斬りつけられたマストがいい音をさせる。
「アンタね…大貴族である私に部下の前で大恥かかせた下等種は…」
ギギギと音がなりそうな感じに首をこちらに向ける骸骨女。
「恥ってカツラのことですか?」
カトラスが飛んできたので屈んで避ける。
「決めた…アンタ殺してバラして、この私、アニー・デルタ・クリストファー専用の足置き椅子に作りなおしてやるわ」
腰に下げたサーベルを抜きながらアニーが言う。
「謹んでお断り致します。アニーお嬢様」
右手にリボルバーを左手にボウイナイフを持ち替えながらそう返す僕。

シュッ!!キンッ!!
アニーが放った光線のような突きをナイフでさばく
お返しにこちらも弾丸をお見舞いする。

ダン!ダン!ダン!
カカカン!!
矢継ぎ早に撃った銃弾をアニーは引き戻したサーベルでなんとか弾き返して後ろに飛んだ。
(さて、剣一本だとこちらが少し有利だけれど…スラヴィアのヒトだしな)
マストの上でバランスを崩さないよう油断なく構えながら、新天地で数度戦ったトリッキーな戦法を取るスラヴィア人達を思い出す。

アニーが突撃の姿勢を取る。僕は右手の銃を突き出し射撃体勢を取る。
ダンッ!!
強い踏み込みと一緒に切っ先をこちらに向けたアニーが迫ってくる。
迷わず剣を持つ右腕と頭に向かって残りの全弾を叩き込む!

が…
カカカン!!
右腕を狙った弾はサーベルで頭を狙った二発は左の肋骨辺りから伸びた短剣を持った二本の腕で弾かれた。
「なっ!!」
驚く暇もなくアニーの背中から巨大な骨の腕が伸びこちらを叩き潰さんと迫ってくる。
即座に左手のナイフをアニーに投げつけながら脇の保険を引き抜き迫るアニーに撃ちこむ。

ダァンッ!!
銃身を切り詰めたショットガンである。
弾を受けたアニーが骨をばら蒔きながら吹き飛び、僕の方も反動とばら蒔かれる骨のせいでマストから落ちかけ必死で横木にしがみつく。

「よくもよくも私の可憐な腕を…」
怒り心頭で構えるアニーだが、その姿は背中の右腕や肋骨の位置にあった二本の隠し腕を粉砕され右肩には投げたナイフが突き刺さりてほうほうの体であったが、
こちらも似たようなもので、ショットガンに残弾1の状態で落ちないように必死でぶら下がりながら何とか構えているだけだ。
「やっぱり、カウボーイに海戦は似合わないですね…」
「じゃあ、大人しく私の足置き椅子になりなさいな…可愛がってあげるわよ?」
皮肉のやり取りをして二人が一斉に攻撃に転じようとしたその時!!

ドゥンッ!!!
船を大きな揺れが襲った。
「きゃあっ!?」
「わわ、とっと…」
アニーがたたらを踏み、僕は揺れを利用してなんとかマストの上に復帰できた。
「お嬢様!早くお戻り下さい!!これ以上の戦闘は継続できません。撤退いたしましょう」
コウモリの翼を持ったボロボロの骸骨兵がアニーに叫ぶ。

下を見ると
船体の横に巨大骨鯨が突き刺さっていた。が、その姿は惨憺たるものだった…
どこに仕舞ってあったのか、大きな網に行動を遮られそこらかしこの骨を周りの船員やうちの商会の先輩方に削り取られている。
「あんちゃん!そこら辺りからちょっと切って落としてよ!」
「あいよ!」
ザクさんが胸骨を切り落としている。
「姉ちゃん!そこの突起を割ってくれねえか?」
「お嬢さんとお呼びよ!」
リオさんが背骨の槍のような突起を足で蹴り折って渡す。
「はははは!大量だな?相棒」
「当分飲み代に困らずに済みそうだな…」
ゴンザレスさんとバートンさんは仲良くヒレやら歯やらを引っこ抜いている。
今まで隠れていた他の乗客達も一緒になって削り取ったり、量を測ったり質を鑑定してそれぞれに選別したりとお祭り騒ぎだ。

「こ、この泥棒共!!」
「そんな事言ってる間に帰ったほうがいいですよ?みんなにかかれば、後数分もしないうちにあの骨鯨の一片も残さず商品になってしまいますから…」
僕は、アニーが気を取られている隙にリボルバーに再装填を済まして頭を照準しながら言う。
「くぅ…次にあった時は必ずアンタを家具にしてやるわ!!」
捨て台詞を放つとアニーは背中の巨大な手でジャンプして鯨の方に飛んでいった。
「ああいうヒトとは二度と会いたくないなぁ…」
そう言った後、どっと疲れが出てその場に座り込んだ。

「今回はなかなか儲かったな!おかげでミズハミシマの夜に期待ができるってもんだ!…ん?どうした新人、なんで暗くなってるんだ?」
「スラヴィアのお貴族様と乳繰り合ってたけど手酷く振られでもしたの?」
「お、ボコボコにされたのか?新人?」
「まあ、スラヴィアの貴族相手に頑張ったほうだな…」
ほくほく顔のみんなが、暗くなってる僕の顔を覗き込む。
「いや、負けそうになってたのはそうなんですけど、それより…愛用のナイフを持ち逃げされて…」
失ったボウイナイフは、向こうで結構張り込んで知り合いの刀工に作ってもらった物で、かなり愛用していたのにアニーが肩にさしたまま、鯨や他の骸骨と一緒に逃げ帰ってしまった。
こっちじゃなかなか手に入らないだろうし、命あっての物種ではあるがかなりのショックだ…

「…お前は本当にそんなんばっかりだな」
何か皆に呆れられているが、僕は持ち逃げされたナイフのことで頭が一杯だった。

「あの下等種…今度あったら生きたままバラバラにしてやるわ…」
ここは饗宴の会場内のサロンで、肩に刺さったまま持って帰ってしまったナイフを睨みつけながらアニーは独りごちる。そこへ
「あら貴女、久しぶりね。」
「傀儡候女」レシエ=バーバルディアが共のセバスを連れてそこに立っていた。
憧れのレシエ様が自分に話しかけてくれてアニーは舞い上がる。
レシエは最古の貴族ということもあるが、その類稀な美貌と戦歴から異性からだけでなくその手の同性にも人気があり、アニーもその手の同性の一人である。
「れ、レシエお姉さま!ご、ご機嫌麗しく…」
どもりながら挨拶をすると
「…あ、貴女!その手の物を見せて頂戴!」
と言うが早いか、アニーの手からナイフをひったくるように取り上げると矯めつ眇めつしだしたのだ。
「形は非常にシンプルで西方的…戦闘だけでなく野外での行動を想定した実用的な物ね。
でも、この刀身自体は何かミズハミシマの刀のような、剛性と靭性の合わさったような非常に頑丈で美しい刃を持っているわ…こんな東西のコラボ作品があるなんて」
うっとりと分析するレシエを見て、好機を感じ取ったアニーは彼女にこう持ちかけた。
「も、もしよろしければソレを差し上げましょうか?そ、そのかわり今度うちでお茶でも…」
「???
いいわよ?お茶会くらいなら何度でも行ってあげるわ」
喜色満面で応諾するレシエを見てアニーの脳裏にお茶会後の桃色の妄想がよぎる。

ガシッ!!
桃色アニーの肩に凍りつきそうなくらい冷たい手がかかる…
ギギギと音を鳴らせながら振り向くと、そこには神祖の吸血姫?がショック死しそうなほど美しい笑顔を浮かべていた。
「さ、さ、みゅらひ、姫様…?」
「僕の可愛い下僕の一人・アニー…?君、勝手に新天地の交易船を襲った挙句、手酷く返り討ちにあったんだってね…
お気に入りの一人を観察してたレギオンの分身が僕に面白おかしく話してくれたよ…」
絶対零度の神気を纏って少し感じの違う我らが屍姫様は更に詰め寄る。
「君は僕が、群れるしか能のない弱神風情にどれだけ赤っ恥をかかされたか分かるかい?
ちょっと君は、貴族としての立場の理解が足りなさそうだから僕が直々に再教育して上げようか?……おいでアニー」
「え?ちょっと!?お赦し下さい姫様!!…た、助けてレシエお姉さま!!!」

引きずられながら助けを求めるアニーをレシエは無表情で見送ると
「セバス?」「青筋を立ててどうされましたか?我が主」
ドカッ!!
セバスの胴に持っていたナイフが突き立てられる。
「あの娘、何かムカつくから今度の饗宴で潰すわ」「左様でございますか…では、手配をしておきましょう」
自業自得のアニーの受難はまだ続くようだ。


蛇足
【船上にて1】の続きです。
非常に長くなって申し訳ないです。
また、勝手にキャラクターを使わせて頂いているモルテ様やサミュラ姫、レシエさん達の作者様には感謝を
もし内容などでまずい所があれば教えて頂ければ幸いです。修正か削除かをしますので…


  • 船上の戦いはあまり無茶をすると沈没の憂き目に遭いそうではらはらしますね。スラヴィアンなのにとても元気なアニーとの銃撃接近戦はキャラ特徴がよく出ていて面白いですね。しかし部下の船員は永遠の苦労を背負わされたようなものですかこれは -- (名無しさん) 2013-03-31 18:41:53
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最終更新:2011年10月17日 12:21