「じゃじゃじゃじゃじゃーん!!(大河ドラマ○長King OF ZIPANGUのイントロ)」
百人隊長平原の
イストモス軍との戦いの後、シンことイヘラー・シン・ガフは赤ん坊になった。
朝になろうと夜になろうと、もう大人になることはない、完全なただの赤ん坊である。
シンが赤ん坊として成長する間、カウは正式に副王を辞し、丞相になった。
それでも隣国は彼を王と呼び、王国の神官や将軍たちも彼を二人目の国王として崇敬した。
彼は王位空座に始まる混乱を最小限に抑えるべく、政治体制の刷新に尽力。
これが後に、カー・
ラ・ムール不在でも国政は万全に保たれる基盤となっていく。
さらに20年後。
本当の大人になってからのシンは軍人王として、国内安定のために奔走した。
対
エリスタリア戦争、大スラフ島における30年間で5回に渡る戦争、そして対イストモス戦争。
しかしその間も、先代のカー・ムヘアクの時代から将軍だったカウは、未だに現役だった。
そして30年後。
やはりカウは健在だった。見た目には加齢しているものの、とっくに猫人の寿命を超えている。
流石に神官や将軍たちも、この不死の重臣をどう扱って良いものか混乱して来た。
記録の上でもはっきりしないこの男の年齢は一体、幾つになっているのか。
かつて副王に自ら即位した、この虎人は、やはり自分たちとは違う神の遣わした特別な存在なのか?
カー・ラ・ムール以外に神の代理人を許された、そんな男だというのか?
ついに61年後。
カー・シン・ガフは61歳で帰らぬ人となった。
早速、次代のカー・ラ・ムールを探す調査団が各地に送り込まれた。
そして、新王都マカダキ・ラ・ムールの中庭にて。
「旧王都ラーナ・ラ・ムールの荒廃が進んでおり、スラム化が止まりません。
このままでは犯罪の増加が抑えようもなく…。」
「嫌だよ、ボクちん。」
すっかり老人になったカウが書記官たちを前にぼやいた。
流石にもう彼をこの国が必要としている訳ではない。
既に神官団や書記官たちの間である程度は素案が出来ていて、カウは承認するだけである。
普段はこうして新王都の中庭で、巨大鰐ペトスコスたちに餌をやっている。
可愛いもので、今では彼からしか餌を貰わない。
「もうボクちんの仕事ないじゃんか。君らだけでやってちょうだい。
ボクちんってばお年寄りなのよ。それをこんなに働かせて君たち、恥ずかしくないの?」
「すみませんでした。」
慌てて書記官たちがその場を離れようとすると、カウが背中に向かって言葉を投げつける。
「役に立つ資料がある。確か12年前の国勢調査の時に集めた資料だ。
スラム化した旧王都の整理に使ってくんな。」
カウの言葉に書記官は再度、頭を下げて職場に帰っていく。
それを見送ってから、カウは一息ついた。
「いやだよ。あれでまたあいつらボクちんの所に仕事持ってくるじゃんか。」
彼自身、自分が何者なのかも分からなくなってきた。
どうして自分だけがここまで長寿でいられるのか。神官たちは歴史上は自分は死んだことにする提案を出した。
つまり同名の人物が何人も居た事にしようというのだ。
それどころか死後に、カー・ラ・ムールの称号を与えて、正式な国王ということにするという意見もあった。
これは副王即位という未曽有の自体を、世界史レベルでもみ消してしまおうというとんでもない試みである。
こちらはカウの死後、数百年後に実行され、彼は正式なカーということになっている。
ハッキリ言って、そんな提案はどうでもいい。
この数日、カウが待ち続けているのはカー・ラ・ムールの発見の報告だけだ。
今やラ・ムールの全ての国政機関は、それぞれで十全に機能する。
もう自分が口出しする様な仕事はない。たまに来る連中は、自分の知恵を借りたいだけだ。
残る大仕事は、次代の王を見つけ、その人物を安全に王宮に招くこと。
そして、出来れば即位式までは長生きしたい。というのは欲をかきすぎか。
「ったく、馬鹿は潮時ってモノを知らねえや。俺も墓ん中入ってゆっくり早く休みたいぜ。
まあ、まだまだボクちんの仕事はあるってことなのね、太陽神(ダーリン)?」
西暦1590年。
この頃、日本は戦国時代末期。欧州は破壊と改革の荒れ狂う混沌の時代となっていた。
旧来のローマ・カトリックに変わる新しい信仰と権威を求める民衆による刷新運動、宗教革命。
これに付随して展開される大航海時代。植民地から大量に流入する金銀で通貨は5分の1ないし3分の1、
最悪の時期には10分の1にまで値が崩れ、物価が不安定となる通貨革命、価格革命が起こる。
そして戦争。
プロテスタント系勢力とカトリック系勢力が100年近い間、何度も争う動乱の時代。
欧州各国では激しい戦乱が続き、幾つもの王朝が断絶。目まぐるしく地図が書き換えられた。
地図の上だけでなく、名もない人々の生活も破壊され、大きなうねりとなっていく。
魔女狩り、魔女裁判は広くは12世紀に始まったとされ、最盛期は15世紀から18世紀と考えられている。
ただし当然ながら国と地域でバラつきがあり、フランスでもっとも激しいのは15世紀といわれる。
この時期は文芸復興、ルネッサンスから宗教革命、そしてナポレオンなどの革命騒ぎまでの時期と合致する。
つまりこれまでの権威が破壊され、人々の生活が不安定になる時期に、魔女狩りは大きく流行したことが分かる。
また広く魔女とされたのはキリスト教以前の古代宗教を信じる、魔女宗(ウィッカ)ともいわれるが、
実際にはカトリック教徒によるプロテスタントへの迫害、あるいは逆がほとんどで、
キリスト教徒同士がお互いに弾圧しあっているのが実情ではないかと考えられている。
さらにこのような現象は不文律な運動と見做されがちだが、現代と異なり当時は魔術によるものと見做された犯罪も
法律で刑罰が定められており、その裁判、量刑は細かく定められ、全てが極刑という訳でもない。
しかし魔術による犯罪などという非科学的な存在は、やはり大きな都市では考えられず、
ステレオタイプの小さな田舎の町などで取り扱われたものが大半という見解に至っている。
而して、どのような形態であれ、これが社会不安が醸成する集団ヒステリーが起こす吊し上げ運動であった、という
大方の見方が変わることはない。
ユグノー戦争はフランスにおけるプロテスタント勢力ユグノーとカトリック勢力の40年に渡る戦争である。
各地ではプロテスタントが虐殺され、まさに魔女狩りの最盛期に似つかわしい血生臭い時期に入った。
20世紀に提唱されたシンデレラ・コンプレックス。
これは広く、女性は常に誰か自分の人生を劇的に変えてくれる存在を待っているという依存症のひとつである。
ちなみに「コンプレックス」という言葉を「劣等感」と捉える人がいるが間違いである。
コンプレックスとはそれなしには自立を損なうほどの強い欲求を持つことであり、
自分を支える存在に一体感を持つこと、依存してしまう心理を指す。
噛み砕いていうと「それなしには居られない」という状態を指す。
サミュラもまた、シンデレラストーリーに憧れる少女の一人だった。
不幸を自慢しあって自分が一番不幸だとは思わないが、こんな時代から逃げ出したいと考えていた。
なお自分が不幸な存在で、誰かに救われなければならないと思い込むこともシンデレラ・コンプレックスという。
特に女の中には自分が悲劇のヒロインだと酔っている、手に負えない連中もいるということである。
いずれにしても、この依存症は自立心が失われ、常に受動的になりがちな傾向を指す。
日々の雑用。終わらない仕事。
洗濯機などの家電が全くないこの時代、欧州の女は一日中働かされていた。
最も大きな理由は暖炉である。
シンデレラは”灰かぶり”という意味だが、暖炉からは常に煤が家中に広がる。
これを毎日掃除しているだけで、暖炉を使っていない間でも時間が潰される。
どんなに掃除を続けても、全く仕事は終わらない。
「サミー!」
サミーはサミュラの愛称である。
「お前は本当に愚図だな!」
彼女をぶつのは兄のサミュエルだ。
昔、父親は身体を悪くして、長雨の中、放り出されて冬でもないのに低体温症で死んだ。
庭に転がっている父を冷然と眺めていたのが、兄と母である。
男の子は女親に似るという。
そのせいではないだろうが、母は兄のサミュエルをどんな時でも優遇した。
他にも兄弟たちはいたものの、母はサミュエルをこの家の王子様のように可愛がった。
「その目がクズにそっくりだ。」
死んだ父親のことだ。
似ているというなら、お前だってお前が殺した父親にそっくりじゃないか。
「仕事を済ませろ、サミー!」
ねじりあげた腕を放して、サミュラを突き飛ばすとサミュエルは家に戻っていった。
他の兄弟たちは、あの兄と母親の言いつけ通りに働かなければならない。
さぼっていると、どこで見張っているのかサミュエルは素早く現れて兄弟たちをぶつのだ。
家の外で働くサミュラたちはともかく、サミュラの妹の一人は家の中で掃除をさせられている。
実は彼女が兄の言いつけでこっそりと他の兄弟を見張っているのでは、とサミュラたちは噂した。
この妹、橋の下で拾って来たのか、まるで他の兄弟と似ていない。
血が繋がっていないということは兄にとっては女ということになる。
「サミュラ、水が入らないよ。」
弟が姉に仕事を代わって貰おうと、見え透いた嘘をつく。
こんな馬鹿に構ってやる暇はない。無視して自分の仕事を済ませる。
「サミュラ、これができないんだ!」
他の妹や弟たちも口々に年長のサミュラのところに集まってくる。
吐き気がする。真っ黒に焼けた自分に似た顔が、見え見えのウソ泣きですり寄ってくる。
「お前は本当に愚図だな!」
兄が自分そういうように、サミュラも兄弟たちを怒鳴りつけた。
こんな日々から抜け出したい。どこか遠くの国で、こんな生活からは逃げ出したい。
シンデレラといば継母の虐待が広く知られているが、グリム童話では父親にも虐待されている。
ただしグリム童話は初版から幾らかパターンが変更されており、現在有名なペロー版には父親は登場しない。
諸説あるが、事業に失敗した父親は財産目当てで新妻と結婚し、血の繋がったシンデレラが邪魔になったという説がある。
そのため、継母や連れ子の姉たちと違い、父親は虐待どころかシンデレラを殺そうと襲って来る。
当時、財産目当ての再婚は裕福層では茶飯事であったと考えられ、妻の死を喜ぶ夫が世相を風刺した詩に残っている。
生活の貧しての家族殺しが、頻繁にあった訳ではないだろうが、実態は推して知るべしといった所か。
そのように父を殺したサミュエルが、次は兄弟たちを口減らしにしてやろうと考えているのではないか、
サミュラたちはそう考えると、それを企む兄と母よりも、同じ境遇の兄弟たちを憎んだ。
お前が死ね。誰か先に居なくなれば、俺は助かるんだ。
ぎらついた眼、優しさや助け合いのない兄弟たちは、今日も陽が沈むまで働き続ける。
夜、家に入ることが許されるとサミュエルは貧しい食事を兄弟たちに与えた。
「サボっていた奴はいないかな?」
やにわに兄がそういうと、全員が凍り付く。
一斉にサミュラに目線が注がれる。彼女も兄の顔を見る。
不安そうにしていないのは、例の妹だけだ。
「ジミー。」
サミュラが答えると、サミュエルは弟の一人をテーブルから離して、食事を残った兄弟に分配する。
その間、誰一人として声も出さず、身動き一つしないで分ける兄の手を見る。
まるで収容所の捕虜たちのように、誰かの分が多過ぎはしないかと見張っているのだ。
「サミー、畑はどうだ。」
「順調です。」
「そうだろうな。」
サミュエルは、珍しく上機嫌だ。
この独裁者も、家の中では暴君だが、外では村の若い衆の一人にすぎない。
さらに村には年長のグループがあって、その上にはもっと大きな組織が国を構成している。
兄はそこで自分も精一杯やっているというが、どうだか。
サミュラも完全なシンデレラではない。待っているばかりではなく、行動を起こそうという気持ちはあった。
だが、少女の自分が村の組合や、男たちの寄り合いには、どうやっても参加できない。
「物価が目茶目茶なんだ。このままじゃ、どれだけ働いてもパンひとつ買えやしない。」
誰かの受け売りなのか、サミュエルはこれが最近の口癖になっていた。
女のサミュラにも見当がつかないが、今日は6ドゥニエのパンも明日には10ドゥニエに変わっているかも知れないという。
ドゥニエはフランスを始め、南イタリア、スペイン、南米圏でも通用する非常に信用された銀貨である。
時代によって変化する物価、物の価値には流通価値、交換価値などあるが、この辺は割愛する。
その中で例を挙げると14世紀のフランスでは質の悪いパンは4ドゥニエで売られていた。
「ああ。毎日、腹いっぱい食べられる国があればな。」
サミュエルがそういうと、兄弟たちは何も言わずに急いで自分の皿の上の残りを食べた。
また朝になると、今日も早くから野良稼ぎだ。
サミュラは日焼けした体を掻きながら、必死に水を運び、戻れば雑用をこなし、掃除を済ませ、料理もする。
これを延々と生きている限りは繰り返すだけの人生。
そんなサミュラにも楽しみはあった。
独裁者サミュエルの機嫌が良くなった理由が分かった。村祭りである。
陰気な南仏の田舎の農村で、数少ない楽しみは、野良仕事がひと段落した間の村祭りだ。
「お前たちも自由に遊んでいいぞ。」
このサミュエルの言葉に、兄弟たちは明るい表情になった。
もっともこんな兄貴の言質などなくても、皆、その日になれば仕事を放りだして遊びにいっただろう。
「ああ、サミーは…。」
ところが急に兄は妹に向き直って、言葉を濁した。
ぎょっとした表情でサミュラが兄を見つめると、サミュエルも言葉を途切れさせる。
そして、少し考えてまた口を開いた。
「いいや。サミーもおいで。」
何だったんだろう。
現代のシンデレラでは舞踏会は夜に開かれているが、古い伝承は全て、真昼から始まっている。
理由は簡単。あの時代には電灯もガス灯もない。夜中に爛々と明かりを焚いてパーティなど出来る訳がない。
少しロマンチックな雰囲気にはならないが、村祭りは夕方までには終わる。
従って古い伝承のシンデレラでは、シンデレラは夜0時ではなく、日没と共に家に帰る。
当時はフリーセックスの概念はない。ましてキリスト教圏では婚前交渉は慎むべき行いとなっている。
だからシンデレラは性行為を迫られる前に、家に帰りついていなければならないのだ。
村祭りの舞踏会が場当たり的な性行為のパートナーを物色する場であることは暗に想像できるだろう。
それがサミュラの何歳かは分からないが、ロミオとジュリエットのジュリエットの乳母の台詞を借りて言えば
「お嬢様の処女はオラが守りましょ。オラの処女にかけて。まあ、オラの処女は11まででしたがね。」
ということなので、その辺りの年齢であれば舞踏会に参加する資格はあったと推察できる。
平凡な農村の娘としてのサミュラの生涯は、おおよそこのようなもの。
働いて、殴られて、犯されてを繰り返す家畜の様な一生が男女問わずに延々と続く。
その中で誰もが自主性を失い、こんなものだと諦観していく中で、サミュラは違った。
「押さえつけろーッ!」
それは日曜のミサである。
突然、暴れ出したサミュラが教会の祭壇に飛びついて、大暴れを始めたのだ。
「ど、どうしたというんだ!」
「落ち着け、サミー!!」
村人たちは暴れ出したサミュラをなだめようと腕を掴んだ。
本当に突然の出来事だった。
「神は死んだぁッ!」
暴れるサミュラの拳が、腕を掴んでいる村人の顔面に直撃する。
噛みつき、引っ掻き、山猫のように癇癪を起したサミュラを村人たちは何とか落ち着かせた。
「おい、サム。サミーはどうしたんだ。」
サムはサミュエルのことである。
兄としても、妹がどうしていきなり暴れ始めたのか、心当たりもない。
「サミーが怪我させてしまって、申し訳ない。」
「いや、構わない。それよりサミーは大丈夫か?」
サミュラを抑えようとして、怪我した村人は自分よりもサミュラの容体を気遣った。
年頃になったサミュラは、この刺激のない貧村では、輝く太陽のように美しい娘に育った。
「祭壇はどうする?」
「かまやしない。」
「十字架が折れてる。」
「そっちより、サミーに怪我がなくて良かった。」
村人たちもなんと信仰深いことだろう。
美人で労働力としても大切なサミュラと十字架を天秤にかけて、今日の彼女の奇行は許された。
だが、これは始まり。
子供の頃は分からなかったが、自分が特別な存在なのだとサミュラは自覚するようになった。
頭が良い訳でも、生まれが高貴なわけでもないが、男たちにとって自分は神聖な存在なのだと。
それが今日、十字架を折ろうとも自分が咎められなかったことで証明された。
この村で今日神は死んだ。確かに死んだ。今日から自分があのやせっぽちで科刑に処された男に代わる聖なる存在、
至尊の冠を頂く超越者となったのだと。
その日から鬱屈としたサミュラの日々は、色鮮やかに華やぎ始める。
兄のサミュエルが自分や兄弟たちを支配したように、彼女は村中を支配するようになった。
美しいサミュラに、村の何人かの男たちが同調し、彼らを従えることで村は王国となった。
誰もが互いを監視し、暴力が支配する小さな王国になったのだ。
その様子については、詳しく書くようなことはすまい。
だが、終わりは早くもやって来た。
シェークスピアのリチャード2世の台詞を借りて言うならば
「生きる王のこめかみを取り巻く王冠には虚ろな死神が座っていて、ただの人間である王をまるで偉大な存在だと思い込ませ、
一生を無駄にする劇を演じさせる。そしてたっぷり楽しんだ後で、死神は王を破滅させるのだ。」
サミュラは魔女として街の役人たちに捕らえられた。
村人はお互いを監視したり、私刑にかけたりしたことを全てサミュラにそそのかされたと証言した。
実際に彼女は怪しい色気を漂わせた少女で、美人であった。
男たちが虜になったのは悪魔的な力という他あるまい。
だが、村人たちはそれを魔女の呪いだと証言し、それまでの暴力行為や背徳的な過ちを全て彼女のせいにした。
自分たちは、あの女のせいで堕落したのだと。
「サミュラは魔女だ!」
「村は奴に呪われた!!」
「汚らわしいぞ!!」
人々は口々に、サミュラを罵った。
だが、本来であれば魔女は火刑に処されるべきだろうが、それも燃料代がもったいないということで、
サミュラは村のはずれにある絞首刑台に連れていかれた。
これも何年か前に腐りかけているので壊して薪にでもしてしまおうという話が上がったが、
結局は新しく作るのも面倒臭いので、そのままということになった。
サミュラの魔女裁判は淡々と進んだ。
ゴシック・ノベルのヒロインのように拷問係りに暴行を受けたり、工夫を凝らした責め苦を味わう事もなかった。
彼女は自分が特別な存在ではなく、日々の面倒事として処理されていくのだと、この時理解した。
日々、自分を罵る人間も居なくなった。
もう、面倒なのだ。
彼女にとっての苦痛は、死よりも誰からも注目されずに消えていくことだけになった。
そうだ。自分は周囲から注目を集めたかったのだ。
ただの村人のひとりとして、普通に老いて死んでいくのが嫌だっただけだ。
「おい、こっちへ来い。」
処刑人がサミュラを呼ぶ。
まるで愛想の悪いレストランの店員の様な口ぶりだ。
サミュラも、もう村を美貌と暴力で支配し、君臨した魔女ではない。
兄に殴られ、日々の雑用に追われていた村娘に戻っていた。
小汚い絞首刑台がふたりを迎える。
その時になれば、気持ちが昂るのではないかと思っていたサミュラも愕然とした。
ただの寂しい広場だ。自分と処刑人以外、誰もいない。
大人しく処刑人に言われた通りに刑台へ近づいていくと、ぼろ布を被せられ、首に縄を通す。
通常、どんな死刑囚も穏やかには死なないという。大抵の場合は暴れ出し、係り員に殴られ、刑を執行される。
だがサミュラは大人しいものだった。
静かだ。
今や自分に注がれる視線は処刑人のものだけ。
いや、違う。
誰か他の人間の視線を感じる。
「おや、なんだ。」
視界を奪われたサミュラに代わって、処刑人が視線の主に近づいていく。
さっきまで感じていた、自分の胴を後ろから押さえつけていた処刑人の肌の温もりが離れた。
あるいはここで走って逃げ出すことも出来ただろう。
だが、サミュラは繁殖場に連れ出されたメス豚のように大人しく待った。
逃げ出しても助かる見込みは薄い。
どうせ、殴られて痛い思いをするだけだ。
待て、痛い思いが嫌なのか?
サミュラは自分でさっきまでの考えを取り下げた。
痛い思いが嫌なら、どうして十字架を折ったんだ。
お前は自分を取り巻く全てを、自分の力で思い通りにしたいと考えたからじゃないのか?
痛みはお前を縛ることは出来はしない。
お前は死をも恐れぬ。あの十字架に張り付けられたやせっぽちと同じ。
いや、あいつよりもずっと気高い存在だろう?
「おいおい、邪魔するんじゃないよ。」
処刑人が何やら視線の主と話しているが、相手の声はとんと聞こえぬ。
「そっちへ行くんじゃない。」
視線の主は、どうやらサミュラの足下の方へ駆け寄って来たらしい。
犬だ。姿は見えないが、相当な大きさだ。
全く吠えないというのは利口なことだ。
それがどうして、こんな場所に迷い出た?
「全く。黒い犬なんて不吉だな。魔女の使い魔じゃないだろうな。」
「その通りだ。」
突然、声がして、処刑人は驚いた。
あたりを見まわして、声の主がサミュラだと気付くと処刑人は笑って答える。
「何が魔女だ。ただのはねっかえりだ。その気になっていたんだろうが、これが現実だ。」
「ははは。愚か者め、魔女の怒りを受けるがいい。」
サミュラは処刑人に虚勢を張って言い返したが、処刑人は気にも留めずにサミュラの背中に回り込む。
そしてがっしりと腰を捕まえると足場に片足を引っ掛けた。
あとはサミュラを抱いたまま、処刑人が飛び降りれば、運が良ければ頸椎が折られてサミュラは一瞬で苦しまずに死ねる。
「上手くいけば楽に死なせてやる。暴れるんじゃないぞ。」
そして、その時が来た。
自分のありきたりな村娘の人生を変えようとした魔女の最期は、やはりありきたりなものだった。
咄嗟に恐怖が去来し、暴れ出したサミュラは、長く苦しむことになった。
必死にしがみつく処刑人。震える若い女の手足。声にならない聞くに堪えない言葉。
そして息絶える少女の身体から魂は旅立った。
もっともそんなものがあればの話だが。
生きていた頃は、同じ重さの黄金よりも遥かに勝る輝きを放つ美少女だったサミュラだが、
死斑が浮き、刑死の苦痛で歪み、眼球が飛び出し、黒く変色して、ふためと見られない姿に変わっていた。
死は救いになんかならない。
美しい死は存在しない。人は死だけが平等だ。
そんなありきたりな文句が浮かぶ、ありふれた少女の死。
すっかり村人も美しい少女のことなど忘れて暮らした。
すっかり朽ち果てたサミュラの死体を、夜半に掘り起こす者あり。
それはあの日の黒い犬である。そして彼の傍に立つ少女の姿があった。
この一人と一匹は、サミュラの死体を愛おしそうに抱えると夜の闇よりもずっと暗い暗翳に姿をくらませた。
それからどれぐらいの時間が過ぎたろう。
死んでいるサミュラには実感の湧かないことだが、目が覚めるとどうにも嫌な臭いがする。
生まれて初めての感覚だった。
吐き気がする。息が出来ない。豚のクソだまりに弟と突っ込んだ時であっても、こうはならなかった。
蛆が群がる藁の中、蠅がたかる汚物の山、火処から垂れる精蟲でも、ここまでは臭くならない。
そして、それを見た。
なんだ、この生物は。
まぶたがない丸い目、トカゲのような鋭い顔。首筋の切れ込みからは内臓がはみ出している。
全身を覆う鱗はギラギラと光り、平べったくて半円形をしている。
そして虫の羽根の様な薄い作りの奇妙なヒレ。
それが魚だと言うことを認識できるまで、サミュラは2度、吐瀉した。
半分魚、半分人間のおぞましい姿の、神の作り損なった呪われた創造物が、自分を見て驚いている。
そいつはしばらく困惑していたが、自分の身体をさすり、汚物を取り除き、水を差しだした。
「大丈夫か?」
魚人間は、サミュラが生まれて初めて、これまで聞いたことがないほど優しい言葉をかけた。
もっとも吐く息が臭すぎてそれどころではなかったが。
「あ、貴方は?」
サミュラが訊ねると魚人間は、珍奇な発音し難い、恐らく名前しい言葉を吐いた。
あの忌々しいムーア人共(イスラム教徒)でも、ここまで奇妙な名前ではあるまい。
「ごめんなさい、覚えられないわ。」
「そ、そうかい?」
魚人間は、なんて失礼な娘だ、という表情で睨んだが、サミュラもどうしようもない。
「私はサミュラ。ここは一体、どこなの?」
「クナ国のヒホコ。」
「ひほこ?」
「火の槍だ。火矛(ヒホコ)。」
魚人間は丁寧に説明しよとするが、匂いに耐えられないサミュラはまた嘔吐する。
「ご、ごめん。うぇ。はー…、はー…。う!」
これが意識の始まり。
サミュラは怖気と吐き気を堪えながら、魚人間たちの国で暮らすことになった。
まずクナ国について説明しよう。
東大陸は
オルニトの辺境に位置する国で、のちの
新天地となる地域にあった小国のひとつである。
住民の多くは魚人で、南仏の内陸部で暮らしていたサミュラにとっては耐えられない悪臭がする。
このままでは自分の吐く汚物で喉を詰まらせるか、脱水症で死ぬかと思われたが、何とか生き延びた。
次にクナ国は国と言っても1万k㎡もない小さなもので、どの村からでも都に2日とかからない。
王は居るが、彼が2代目という歴史の浅さである。
最初は慰み者として買われたのかと思ったサミュラだが、どうも自分が例の魚人間の主であるらしい。
ある日、高貴なお人がいらっしゃって、自分の世話をさせるために雇われたのだという。
「ルイ。」
それがサミュラが魚人間につけた名前だった。
「はあ?」
「…何か文句ある?」
「いえ。」
それからルイとサミュラの生活が始まった。
ルイは使用人ではあったが、奴隷ではない。
彼には家庭があり、妻が3人、子供が10人、さらに兄弟がいて、両親が9人いる。
一応は彼を家長とする、家族全員がサミュラの世話をするように、高貴な誰かさんが手配したのだという。
繰り返しになるが、最初の生活は悪臭と吐き気との戦いだった。
まず同居人の体臭だけでもサミュラはもんどりうって倒れ、喘ぎながら息を切らす始末。
当然のように痩せ衰えたが、不思議と死なない。
「大丈夫か、サミー?」
ルイの弟が今日は世話をしてくれる。
悪いが、早く出て行って欲しいと思うサミュラだが、追い出す訳にもいかず、愛想笑いする。
だが臭いになれたら、次は食べ物だ。
これもサミュラにとっては想像を絶する未体験ゾーン。
誰だ。バックパック一つで異世界交流とか言った奴は?
「簡単な臭いが弱い食べ物はないの?」
「そんなものはないよ、サミーの鼻が利きすぎるんじゃないかな?」
ルイの家族はそういって首を振る。
しょうがない。サミュラはしばらくは食べ物にも臭いにも慣れたが、体がだるい。
特に昼間は耐え難い気だるさなのだ。
いや、正確には陽光下では気だるさはあるものの、陽の指さない屋内では気だるさが抜ける。
また夜になっても眠くはならない。
そこでサミュラは昼夜逆転の生活を送ることにした。
すっかり貧村の魔女をやめ、元のように畑仕事に精を出し、肥を運び、汚物を掃除し、仕事に励んだ。
過去を捨て、人生を始めからやり直す様に、彼女は日々の仕事に没頭した。
「サミー。夜は寝ないか?」
「うん。でも、寝付けないの。」
ルイの家族もおかしな生活リズムを続けるサミュラを心配する。
だが、サミュラはすっかり生活に順応し、今では料理などもルイの家族に振る舞うようになった。
「サミーの料理は最高さ!」
ルイの子供たちは喜んでサミュラの料理を食べ始める。
なんだろう。
私はずっと何を馬鹿な事をしたんだろう。
特別じゃなくてもいい。シンデレラにならなくても、こんな幸せな生活があるなら、ただの村娘でも良かった。
「でも、サミーは何なの!?」
ある日、ルイの甥っ子のひとりが自分の母親に訊ねた。
「オウガでもないしね。」
「鬼人というなら角もないな。」
「なんだか分からないな。」
結局、結論は出なかったが、サミュラとしては気がかりなのは、逆に彼らが口にした連中のことだ。
「エルフは西大陸に住む耳の尖った奴らさ。」
「オウガはとてつもなく大きい。凶暴で血に飢えている。」
「オークは間抜けさ。」
「ゴブリンは意地汚い、最低の二本足だよ。」
「ドワーフは…、良く知らないな。」
「鬼人ってのは角が生えてて、全員が真っ赤なのさ!」
サミュラはおとぎ話に出てくるような、この異世界の怪物たちに興味を持った。
なんだか胸が高鳴るじゃないか。そんな不思議な連中がいるなんて!
もともと大金を払って誰かがここへ住まわせてくれたものの、自分を置いておく余裕はルイの家にはない。
サミュラも苦しい台所を考えて、自分が外の世界に旅立つべきだと決心した。
そのことをルイに相談すると、当然のように反対される。
「サミー、悪いことは言わない。村を出るなんて無茶だ。」
「でも、ルイ。このままじゃ、貴方の家族のために悪いの。」
サミュラがそういうと、ルイも首を横に振りかねる。
だが、今日までサミュラが家族に打ち解けたことを思えば、追い出すような真似はできない。
「君が元居た向こう側が、どんな世界か知らないが、こっちではとんでもない化け物が大勢いるんだ。」
「でも、魔法が私も使えるようになった!」
サミュラは胸を張るが、ルイは譲らない。
「昼間はどうするんだ?」
「頑張ります!」
もうルイは頭を抱えるしかない。
「じゃあ、どうせだから、あいつを連れていってくれよ。」
ルイとサミュラが暮らす村は、古い集落で、クナ国が出来る前からあったという。
そのため、村外れには墓地があって、墓守の爺さんがいる。
一人では畑仕事もできない老いぼれで、1日がかりでようやっと墓穴が掘れる程度だ。
火葬の日ともなれば、1日中、火の番を任せられるのだが、厄介ごとを起こさない方が珍しい。
昔は偉い学者で、オルニトの大図書館の膨大な知識を貪欲に飲み干したという。
だが、向こう側とやらの世界を体験したとか、気狂い扱いされて追放され、今はここで暮らしている。
人呼んで狂えるビル爺さん。ビリー・ザ・クレイジーである。
「ビル爺さん!」
ルイが大声をあげると、スコップを持った老いぼれ老人が崩れかけた廃屋から姿を見せた。
長く伸びた白い髭。落ちくぼんだ目、長い眉毛。折れ曲がった鼻。
元はエルフだったというが、それもどうだが。嘴があって、背中に羽根が生えている。
「おー、チャウィトリッポ。誰が死んだんじゃー!?」
威勢よくビル爺さんは飛び出してくるなり、スコップを地面に突き立てて杖代わりにした。
ルイは首を振って答える。
「違うんだビル爺さん。彼女は知ってるね?サミーだ。」
そういってルイはサミュラを紹介する。
「悪いが、サミュラが都まで用事があってね。付き添ってくれ。」
「おお!いいとも!!」
スコップを振り回して暴れる老エルフ(?)をお供に、サミュラは村を出ることにした。
別れを惜しむ村人たちに手を振り、現状を理解できぬビル爺さんは困惑した。
「おい、こっちは都じゃないぞぉ?」
「何言ってんだ、ビル爺さん!」
「気を着けてな、サミュラ!」
胸が張り裂ける思いがしたが、サミュラは老人一人を共にして旅立った。
見慣れた里から一歩踏み込めば、うっそうと茂るジャングル。虫やツタ。村を離れるごとに険しくなる道中。
昼だというのに薄暗い森の中には、泥の中を這いまわる奇妙な動物たちが居る。
オルニトの北東部一帯に生息する肺魚の仲間で、雨の日には池から這い出して来る。
また今日のように泥沼になっている場所があれば、そこに潜り込んで仮死状態になって雨を待つ。
「おい、若いの!こっちは都じゃないぞ!!」
サミュラは後を着いてくるこの老人を、早い所始末しなければと考えた。
だが、そう考えた時、自分の父を殺した兄のサミュエルの事が思い出された。
足手まといといって怪我をした父を雨曝しで殺した兄と母のことを思えば、この老人を殺しては駄目だ。
あの二人のようにはなってはいけない。
そうサミュラは、自分に言い聞かせる。
「ああ!銀落蝶だぁ!!」
老人が騒ぎ出した。
翅から水銀を落とすという、恐るべき未踏破地帯から来た怪蝶だ。
群れを成して季節ごとに既知世界に紛れ込むのだという。
だが未踏破地帯は、誰も生きて帰った者はいないといわれる秘境である。
それを誰が信じるだろう。この世界に外からやって来たサミュラでも疑わしいと思う。
この老人は常にこの調子だ。
ただでさえ道ならぬ旅路で、我慢できない場面は数えきれない。
そして、ある夜中には。
「気を着けるんじゃ、サミー!空飛ぶ目玉が見ておるぞ!!」
「あれは月だよ、ビル。」
サミュラがそういってビル爺さんに答えるが、老人はいきなりサミュラに飛びついた。
「危ない!!」
そのまま二人は滑り落ち、沼に落ちてしまった。
「うっぷ!?」
サミュラは自分が泳げないことを呪いながら、沼の中に沈んだ。
しかし、どれぐらい経っただろう。目を覚ますと、ビル爺さんに生き埋めにされるところで目が覚めた。
「な、何してんの!?」
土が顔にかかったところでサミュラは飛び起きた。
上を見るとしわくちゃの老人が、小さな穴からサミュラを見下ろしている。
「ひゃあ!生き返りよったぁ!?」
土を払い除け、墓穴から飛び出してサミュラは地上に這い出した。
どうやら今は昼らしい。危なかった。
「なんで埋める!?」
「お、お前さん生きとるのか!?」
ビル爺さんが怯えながら答える。
サミュラは苛立ったが、ふと気になって自分の胸に手を当てる。
冷たい。
というよりも、全く生命の息吹が感じられない。鼓動がない。
サミュラは、ここに来てこれまでの事を思い返す。
自分は確か絞首刑になって死んだはず。これまでは何かの間違いだと自分に言い聞かせて来た。
こっちが現実で、あれは夢なのだと。
だが、自分はこの世界の誰にも似ていない。
一体、どちらが本物で、どちらが夢なのか。
「あわわわ!お前さんは死の神の使徒かも知れんな!!」
混乱するサミュラを前に、ビル爺さんは聞き慣れない言葉を口にした。
「死の神?」
サミュラが訊ねるとビル爺さんはうなずいた。
この老いぼれは長らく狂人として村人から冷遇されてきたが、実はその戯言にも真実が含まれているのかも知れない。
「この世界の現象を支配する古い神じゃよ。
かつては信仰されておったが今や地上で彼の神を讃えるものはおらぬ。
いまや悍ましい闇の勢力が、その禁じられた名を唱え、崇拝しておるという伝説が残っている。」
「神か。神を殺すのは私の趣味なの。」
サミュラが冗談交じりに答えると、ビル爺さんは首をプルプルと振った。
「精霊や神をバカにしてはいかんぞ!」
「分かってる。」
死の神の使徒か。
ここはもっと詳しく聞いてみるべきか。
そう思ったサミュラは老人にさらに教えを乞うた。
「作り話だなどと、面白半分に聞き流さぬことじゃ、サミー。
死の神によって仮初の命を得た化生(けしょう)は神咒の効力をもって、不死となる。
その者は生者の生命を吸って、おのれの血肉を養う。
その者にとって陽光は、その身体を蝕む毒となって、長く当たれば死ぬであろう。
その者は体のどこかに不死者となる起点が存在する。それを破壊されれば、不死の力も失う。
それから…。」
ビル爺さんは言葉に詰まる。
「それから?」
「うむ。他にも古のセプラフォーンの可視光線を受けると肉体を保てなくなるという伝承を聞いたが、
セプラフォーンという物が場所なのか、人なのか全く分からなかった。
そして、かつて死の神を崇拝したセステップのバラヤシーンはオクトノラスムにコントロールを譲り、
エンラー派によって滅ぼされたが、バラヤシーンの末裔がラ・ムールに生き残っていると仄めかす神官がおった。」
「バラヤシーン?」
「分からん。」
「セステップは?」
「国の名前じゃろう。オクトノラスムというのも組織か何かか。派閥の様なものなんじゃろう。
かつてラ・ムールでも不死を探求する考えがあったようじゃから。」
「不死の探求?」
「西大陸のラ・ムール王国の転生王朝の王、カー・ラ・ムールじゃよ。
肉体が滅びても絶える事無き不滅なる魂の連環。暗黒時代の遺物じゃ。
転生した魂には記憶は残らぬと歴代カーは言っているが、不連続時空に作り出されたブレートボックスにより、
王たちの記憶は時間と場所を超えて当世の王に影響力を及ぼすとティシャン通鑑に書かれておった。
バラヤシーンは不死の探求が作り出したカー、いやこの生物を、なんといったかな…。
そうじゃ、色の生物と書いておった。光は眼に見えぬ情報の集まり。色を触媒にした情報の伝達。
太陽神の持つ莫大な記録と情報は太陽光として地上のカーに刻まれる。
そうじゃ。エンラー派というのはスンルーの長老派のことを言っておったのか。
つまりはフェテス博士が残した文献に…。」
段々、ビル爺さんの暴走は加速し、次々と大図書館で読み耽った物語を思い出し始めた。
とうとう着いていけないと思ったサミュラは老人を止める。
「ちょっと、ビル爺さん。そこまで。」
「お、おう。すまん。」
大人しくなった老人。
しばらくの間、二人は黙ったままだったが、老人は遠慮深く口を開いた。
「ワシは口減らしに追い出されたのじゃな。言わんでもいい。」
そう寂しそうにいうと、彼は立ち上がった。
「都はこっちで良かったのじゃな?」
「…うん。」
サミュラはビル爺さんの後ろを着いて歩いて行った。
「ぎゃあああ!」
それから数日後、サミュラの絶叫が、オルニトの中央高原に響き渡る。
今日は3匹のワイバーンが、一斉に彼女目がけて襲って来た。
ここまでの道中で戦闘経験を積んだ彼女だが、太陽が昇っている間はそうもいかない。
しばらくの間、ワイバーンにしゃぶりつくされ、吐き捨てられるまで耐え凌ぐ。
見るも無残な骸骨人間になったサミュラは、ゆっくりと立ち上がり、ワイバーンたちを見送った。
「また生身に戻るまでは頑張らないと。」
ワイバーンたちに見つからない様に、ゆっくりと大きな岩の下まで這って行く。
「おーい!」
岩陰から出て来たのはビル爺さんだ。
「爺さんは無事?」
「おお!傷一つないわ!!」
そういって両手を広げて見せるビル爺さん。
顔を食い尽くされ、表情を上手く作れないサミュラだが、たぶん苦笑いしていた。
今やサミュラは、自分がリビング・デッド、生ける屍だと理解した。
コツを掴めば生きた生物から生命力を吸収して生身の身体を取り戻すこともできるようになった。
それに比して、精霊を操る技も上達し、ビル爺さんの怪しい知識で、禁断の術をも体得した。
「うわあああ!!」
「いやあああ!!」
今日の餌食は、寒村の村人たちだった。
サミュラは次々に村人に襲い掛かり、生命力を奪い去った。
ビル爺さんは一人で黙々と墓穴を掘ったが、何だ爺さん、真面目にやればちゃんと掘れるじゃないか。
不気味な夜だった。
生ぬるい風と湿気を孕んだ空気がまとわりつく。
不死の怪物が夜襲を仕掛けるには、似つかわしい怪夜だった。
サミュラが踏み込んだ家の部屋では、若い男女が接合している最中だった。
サミュラを見た二人はベッドから飛び起きて部屋の端まで逃げ出した。
「た、たすけ…!」
若い男の鳥人が情けを乞う声色でサミュラに声をかける。
だが、慈悲はない。
中途半端に生身を取り戻しているサミュラは血と脂がしたたる右腕を男に、左足を女の下腹部に押し当てた。
突如、二人の両目と口から青白い生命の炎が吹き出し、サミュラの全身に吸収され、光を失った。
そしてサミュラが二人を放すと、干乾びた乾物のように倒れて、床に転がって乾いた音を立てた。
村一つも滅ぼせば、サミュラの身体は完全以上に生命の輝きを取り戻した。
冴えわたる知能。みずみずしい肉体。
そうなると、若いサミュラには遊び心が起ころうという物だ。
まだ日が昇らぬうちに、サミュラは空を見渡して叫んだ。
「あの浮き島まで飛べるかな?」
「あれとは?」
ビル爺さんが老眼で必死に空を睨むが、まったく見えないようだ。
仕方なくサミュラはビル爺さんを担いで、百聞は一見に如かず。浮き島目指して飛び上がった。
空を飛ぶ術に関しては、ビル爺さんの知識によって教えられたが、鳥人ほどは自由に飛べない。
もっとも練習を積めば上達もするだろうが、ワイバーンやロック鳥が飛び交っていて、それも出来ない。
今日も飛ぶと言うよりは、ジャンプに近い要領だ。
だが結果は計測しなくても分かるぐらいの新記録。遥かな浮き島に到着した。
浮き島は、地上から切り取られているというのに、見事なジャングルが繁茂している。
そこ、ここで白い肌を見せている大理石の古代遺跡は、なかなかに面白い。
「おおおう!ファラオの墓を見つけたぞー!ファラオの墓を見つけたぞー!!」
ビル爺さんは大はしゃぎ。ファラオってなんだ?
サミュラも、久しぶりに喜び勇んで浮き島探索に駆けだした。
だがしかし、遺跡の中に足を踏み入れた瞬間、サミュラの横っ腹に飛んで来た矢が突き刺さった。
どうやら床石にスイッチがあり、それと連動して柱の顔の形をした彫刻から矢が飛んで来たようだ。
「大丈夫かのう!?」
ビル爺さんが駆け寄ってくる。
「うん。私は平気。」
サミュラが答えるが早いか、ビル爺さんは興奮冷めやらぬ様子。
「これはただ事ではない!
きっとエラン大史に載っておった古代遺跡、キーザシオンじゃーッ!」
それだけいうとメイン装備のスコップを片手に遺跡の中へ突っ込んだ。
思わずサミュラが追いかけようとすると、今度は柱が横から突っ込んで来て吹っ飛ばされた。
「ごほ!?」
柱に飛ばされたサミュラが苦しんでいる間に、狂気の研究者はスコップを石作りの壁に突き立てた。
「ここから風が出ておる!!」
などと老人は喚き散らして、スコップを使って梃子の原理で壁をこじ開け、穴の中に姿を消した。
それを追いかけようとサミュラも遺跡の中を進むが、何故かトラップが止(や)まない。
「が!?」
今度は頭上から猫の置物が落ちて来た。
不死者でなければ、割れた頭蓋骨が再生せず、お味噌をこぼしていただろう。
そんな風にトラップに四苦八苦している間に、ビル爺さんの入った穴は、左右から迫り出す壁に隠されて埋まった。
「ちょっと!!」
駆け寄るサミュラは、勢い余って閉じる壁に挟まれた右手を引きずりだす。
不死者でなければ、危うくフック船長になっていたところだ。
「痛い…。」
とにかく、あの老人を追いかけなければ。
別の入り口を探そうと壁沿いを探し始めるサミュラだが、トラップにどれだけ手こずることやら。
「これだ。ダーワ ヤン ハー シンプ ラハ シャー トラキ。
真実を求める者には…。えっと、コンラー エット プララ スクム オト ズワン…だから…。」
遺跡に入ってから、どれぐらい経ったろうか。
サミュラはビル爺さんの寝言のような講義を思い起こして、遺跡を探索する。
途中で幾つものトラップを乗り越え、金色の翻訳ロボットや電光剣を操る宇宙の騎士たちと戦いながら、
先にトラップにかかったドイツ兵たちの死体を飛び越え、奥へ進む。
「いーてぃーともだちぃ…」
「お前はジョージ・ルー○スじゃなぁーい!!」
遺跡から這い出して来たチョコレート色のモンスターを蹴散らして、サミュラは遺跡の最奥地に辿り着いた。
信じられないほどの巨石を積み重ねて作られた古代のドーム。
そこ、ここに刻まれたレリーフは、この遺跡を作らせた偉大なる古代オルニト帝国の皇帝を讃えるものか。
まだ浮き島の地上部分であるはずだが、窓はない。
もう外は昼になっている時間だ。トラップと合わせて慎重にサミュラは廊下を進む。
「ビル爺さん!」
最後の扉を開くと、輝く王冠と紫の衣をまとったビル爺さんが大はしゃぎしている。
「おう、サミー!!
ここは古代オルニト帝国の皇帝ウィトリクエの王墓じゃ!ワシは皇帝の墓を見つけたぞー!!」
「あんたの墓にしてやろうかぁー!(フランス語)」
物凄い形相でサミュラが怒鳴ると、ビル爺さんは正気に戻った。
サミュラの言葉は分からなかったが、我に返ったようだ。
「す、すまん。つい研究者としての本能が出てしまったのじゃ。」
「それ、捨ててください。」
サミュラは疲れ果てて、その場に倒れた。
ともかく、爺さんの身に何もなくて安心した。
「それにしても、どれぐらい昔の建物なの?」
「ざっと1万年かの。」
誰が聞いても嘘っぽい話だが、ここまでの遺跡の古代文字や、今日まで彼の知識を聞く限りでは信じるしかない。
予備知識のないサミュラにとって、オルニトがどういう国かも、ハッキリとは分からない。
それどころか自分が生まれ育ったフランスさえ、人にどういう国かと聞かれて答えられないだろう。
覚えているのは、楽しいことがなかった訳じゃないけれど、汚く貧しい村の生活。
随分と予想外の方角へ進んでしまったし、シンデレラのように王子様には見初められなかったけれど、
こんな人生も悪くないか。
でも、そう自分に言い聞かせても、何か黒い感情が彼女を呼び止める。
本当にそれでいいの?
「火とかない?」
「やってごらん。」
サミュラがビル爺さんに声をかけると、老人は適当な棒にぼろ布を巻き付けて渡した。
それを受け取ったサミュラが格闘すること、数分、火が着いて周囲が見渡せるようになった。
「なかなか火を着けるのは上達しないのう。」
「自分の近くでいきなり着くから。距離感が難しくって。」
サミュラは初めて精霊を使って火を着けた時、間違えて自分の目の前に火を出してしまって以来、発火は苦手だ。
ジャンプしたり、遠くの音や景色を聞いたり見渡したりする分には、自分に危害が及ばないので上達しているが、
自主的に発火の練習をする気にはなれない。
手にした松明の灯りを頼りに、遺跡の玄室を歩き回るサミュラ。
「オウベ グア パン プレト シャッタ アーダー…。
聖なる神に捧げる生贄の儀式の玄義について?」
生贄という文化は、西洋を問わずに広く分布する。
だが、多くの神話では生贄を否定する説話が登場する。
なじみ深い日本神話ではスサノヲのヤマタノオロチ退治がそれだろう。
しかし同時に生贄の効能や、犠牲の崇高さを説く宗教や神話も散見される。
生贄は神が欲するものとされながら、一方ではそれを否定する異なる価値観が存在する。
宗教や信仰の形態によって見解は異なるものの、意見が別れるところだ。
サミュラが食い入るように見守るレリーフは、原始の時代のオルニトの生贄に関する記録だ。
そこにはかつて今の既知世界のほぼ8割がたを統一し、12の神々を頂点とする超大国の姿があった。
嵐の神、戦争の神、死の神、太陽神、それらと対等の位置を占めるオルニト皇帝。
居並ぶ生贄たちの姿、建設された神殿、それらが説くのは巨大な帝国の構造と生贄の関係性。
そして創世神話。
現代人にとって、古代人の考えた世界の構造、宇宙の創世は荒唐無稽にしか思えないだろう。
だが、これらは彼らが宇宙の成り立ち、科学を解き明かすために現したものであり、
世界の構造を理解することが、文明の到達点の一つと考えられた。
つまり、宇宙の構造を理解することが、当時の人々にとっては最先端の科学であり、
日々の生活から自然現象を観察し、経験に乗っ取って論理的にこれを説明することが重大な思考実験だったのだ。
それは近世の、まともな教育を受けていないサミュラには全く理解し難いものだったろう。
世界が極小の粒や波長で構成され、原始に神はなく、最初に宇宙があったという真逆の発想。
だが、これは古代オルニト文明が、ほぼ現代人の感覚に近いレベルまで発達していたことを意味する。
もっともこちら側の宇宙と異世界の宇宙誕生が似通っていれば、の話だが。
結論からいって、古代オルニト帝国は、これら数世紀にわたる自然科学と哲学により、
生贄こそが国家のもっとも重要な玄義であると位置づけているのであった。
「ちょっと、ここで調べものしていい?」
サミュラはビル爺さんに振り返って、そういった。
それ以来、彼女はこの玄室をくまなく調べ、取り付かれた様に知識を吸収した。
まるで死んだ彼女に、古代のオルニト皇帝たちの魂が乗り移ったかのような、貪欲な姿勢だった。
それは彼女の疑問と古代人の叡智のせめぎ合いであった。
前キリスト教世界で生まれ育った彼女が感じていた違和感を消し去って、新しい解答を書き込む作業だ。
同時に古代オルニトの人々の考えに、サミュラも違和感や異なる見解を導き出した。
無論、彼女の内なる欲望も育っていった。
他の人間に命令し、支配するという暗い感情。魔女として生まれた村に君臨した、あの感覚。
しかし、古代の皇帝たちの示す思想に触れていく度に、真の王道というものを教えられた。
長い歴史が語る国の在り様、王の有り様、そして幸福な国家とは何であるか。
それから数ヶ月が経った。
彼女の中で、神の住まう永遠の楽園に至るという思想と、生贄こそが世界を運動させるという思想が融合し、
全く新しい思想が誕生していた。
「この世界は、私が生まれた世界とは違う。私は、この世界の誰とも違う。
この思想をあまねく人々に伝えなければ。」
サミュラは理解した。
支配欲と優越感を捨て去って、本当に心から幸せに暮らす人々を助けるために存在する王道を。
この王道をもって、人々を本当に幸せにする永遠の楽園が必要だ。
私は未完成なこの世界を補完するために、異世界から呼び込まれた存在なのだと。
『付録』
「サミュラ」
神祖の吸血姫サミュラの出自は不明となっているが、ここではこの時期、最も魔女狩りが激しかったフランスとする。
「シンデレラ」
今回は、近世欧州の普通の女の子の生活ぶりをイメージする上で引用した。
一昔、本当は怖いグリム童話などで取り上げられたが、あの本の内容は初版から幾つもパターンのあったグリム童話のうち、
際どい部分だけを選りすぐって書いたもので、一つのシンデレラにあそこまでえげつない場面は全てそろっていない。
グリム兄弟が童話を収録した際、可能な限り伝承を正確に記録しようとしたために、
猟奇系の童話がそのまま書かれたのだといわれている。
シンデレラ・ストーリーなどのように不幸な女の子が誰かに助けられ、劇的に人生を変える物語に例えられる。
だが、そのような内容はペロー版やディズニー版の影響であり、古いタイプの伝承には異なった姿が見られる。
まずディズニー版にも残っているようにシンデレラが動物たちと仲良くなるという内容は古い伝承からある。
これは上代文学などの考察では、シンデレラに英雄の素質があることを指す。
神話の英雄には動物の言葉を理解し、彼らの助けを受けて困難を克服したり、怪物を倒す者がいる。
これは英雄には言葉によって仲間を得たり、優れた知略を発揮したりすることが物語の読み手に対し、
英雄はただの乱暴な力自慢ではないことをアピールする点として広く取り入れられる。
次に魔術である。これはタイプにもよるが、ディズニー版やペロー版と異なり、
シンデレラ自身が死んでしまった生母から、まじないの様なものを教えられ、それを実践するという内容である。
これは極めて記録が少ないが、精霊や魔法使いではなく、自分でドレスを用意するシンデレラというパターン。
ただし、この場合はまじないや魔術よりも、自分でドレスを用意するというパターンの方が多い。
不幸な生い立ちと跳ね返す、異なる種族との対話による交流や助力、特殊な技術、知識はどれも英雄の条件と考えられる。
つまり他力本願なシンデレラだけでなく、少ないパターンだが自分で困難を克服するシンデレラも伝わっている。
なおシンデレラが「靴を脱ぐ」という場面は、性行為を暗示させているという説があるが、
シンデレラの原典となった古代ギリシア、エジプトから同様の場面があるため、ハッキリしたことは分からない。
だが、「靴を落とした」というパターンと「靴を王子に脱がされた」というパターンが明確に分かれており、
当時の欧州でシンデレラが王子と性行為していたのか、意識して書かれたことはやぶさかではない。
靴を人前で脱ぐ習慣がある日本人には馴染みがないが、古い欧州の習慣でははしたないと考えられた。
シンデレラの靴も重要で、伝承では木靴から金、銀など、パターンによっては舞踏会が数日に渡って開かれ、
日によって履いている靴が違うというもの、いずれにせよガラスは新しいパターンにしか見られない。
これはガラスが処女性を象徴するという説があり、ペロー版は明らかに意識しているとする向きがある。
最後にここではシンデレラとしているが、実際は”灰かぶり”という名もない女の子の物語が
欧州の各地に残っているだけで、それらから英雄譚じみた部分をかき集めて、彼女が待っているだけの女の子ではない
というイメージを作ることは、本当に怖いグリム童話とやっていることは同じである。
「絞首刑台のカササギ」
ピーター・ブリューゲルの絵画のひとつ。
村はずれの絞首刑台とそれに止まるカササギ、遠くに見える村祭りを描いたもので、様々な解釈がある。
広く取り上げられるものとして、まず権威の愚かさだと言われる。
普段は死刑という国家の権威を担う絞首刑台も、何事もなければ鳥が止まる木の枝となんら変わらない。
人々はそれを恐れず、普段通りに楽しく暮らす。その様子が遠くに見える村祭りだという解釈。
逆に常に国家権力による暴力に押さえつけられながら、牧歌的に暮らす民衆の愚かさだともいう。
「狂女フリート」
ピーター・ブリューゲルの絵画のひとつ。
当時の女性蔑視や迫害、差別に憤る女が、男になぞらえた小動物を蹴散らしながら鉄剣を振りかざす絵とされる。
女の行く先には大きく口を開けた人の顔が待ち構えており、地獄の入り口だと言われる。
- カーの歴史を内側から覗き見る冒頭から打って変わって怒涛のサミュラ記。今までにない解釈と経緯は悲劇か数奇か無邪気な快活かと読み進むにつれ混ざり合う。世界から弾かれたサミュラと世界から外れた場所に心があるようなビルの道程は薀蓄の相乗効果がすごいの一言。どう締めくくるのかと思った先で支配者の歴史から悟りへと至るという…ここから吸血姫になったとしたらえらく行動力のある人物になるんじゃないかと思った次第 -- (名無しさん) 2015-07-26 18:35:33
- ボクちんはないだろボクちんはって思ったけどちょっとふざけるくらいじゃないと心がねじれてしまうのかなぁと同情した。サミュラとモルテを足して二で割ったような付録だ。解説の洪水がめっちゃ気持ちいい -- (名無しさん) 2015-07-28 00:58:03
最終更新:2015年07月26日 18:28