【深い森と霧の真冬の国】

穏やかな初秋の季節に、ユルガルズの新市街を歩くのはいかが?

西大陸の主要ゲート国が密集する東海岸の反対側、西海岸にその国はある。
「ユール」とは「冬至」の意であり、「ガルズ(ガルド)」は「庭」を意味する。
すなわち冬至の庭といった意味か。



悠久の時を生きるエルフ、その王にしてエリスタリアの君主ディオマーは、
その計り知れない時の流れの中で多くの妻を持ち、多くの子を望んだ。

乱世の習いとして多くの跡継ぎを欲するのは、人の上に立つ者の責務であり、
まして生物として己の遺伝子を残すために繁殖を試みることに、一体何の問題があろうか。

だが不老不死のハイエルフの上級王に、そのような心配は無用であり、いずれも心身の慰めの結果に過ぎなかった。

生まれ落ちた王子たちは、その暮らし向きを整えるため、最初はエリスタリア各地に荘園を与えられたが、
すぐに目ぼしい土地がなくなると王は、半島の外に外征し、息子たちに領地を与えて封じた。

それがもう何万年前の昔の事か。
ユルガルズは、数えきれない王子の一人に与えられた庭のひとつであった。
だがそれも今や建国の主の血筋は絶えて久しい。

ユルガルズに住むエルフは、他の地域とはやや異なる。

青黒い色の肌、漆黒の角、蝙蝠を思わせる漆黒の翼。
有角有翼暗色の異形のエルフ、ダークエルフの一種とされるのが、この「アルプ」である。

地球において、アルプは淫乱な夢魔として知られ、妖精であるエルフがキリスト教によって貶められた姿とされる。
背中の翼は、フェアリーと同じものが発展したと考えられているが、詳しいことは分からない。
そもそも頭に角があるのは、他のエルフたちと全く似ても似つかない。

エリスタリア本国と違い、獣人やドワーフケンタウロス諸部族の侵攻を受け続けて来たユルガルズは、
長い闘いの歴史を持ち、彼らは開拓民としての誇りを持っていた。

おっとりとしたエルフたちと違い、やや好戦的な性格は、そういった戦いに勝ち残って来たことから来る自負なのだろう。

だが、その歴史の中でも最大の敵がやがて現れた。
オーグルズ(オウガ、オークゴブリンなど倭鬼を除く鬼族の総称)の一派、狡猾なウルク族の侵入である。



ウルクはオークより小柄で人間サイズ、エルフともそれほど変わらない体格になる。
肌の色は漆黒、完全な黒一色であり、オークやダークエルフとは違い正真の闇の色である。

最大の違いは、ドワーフ並みの手先の器用さを持ち、かつ残忍で
自らの持つ技術の全てを用いて、より強力でより優れた武器を作り出すことを欲する。

大延では伝説の武器の神、蚩尤の末裔と呼ばれ、恐れられた。
剣や槍などのあらゆる武器を最初に作り出した種族とされ、近年では火薬や鉄砲、大型攻城兵器などを発明した。
持って生まれた全知全能を破壊と殺戮に捧げるために生きている生物と言っても良い。

オーグルズと倭鬼がドニー・ドニーで海賊国家を建設したのは、この800年後であったが、
彼らもまた自分たちの安住の地を求めて各地を放浪し続けていた。

ウルク族の攻撃は、これまでの外敵の侵攻とは違っていた。
見たこともない兵器、聞いたこともない戦術、考え付かないような事ばかりが起こった。

ユルガルズの王は、当然エリスタリア本国に援軍を求めたが、
城門は固く閉ざされ、使者は王に謁見することさえなかったのである。

その理由はウルクの王の手にある、伝説にいわく「霊剣ウルグラム」。
振るえば雷を呼び、突き立てれば地鳴りが起こるとされる伝説の魔剣である。

どのような製法で造られたのか、いつからウルク族が所有していたのか。
それはハッキリとは分からないのだが、この超兵器こそディオマー王を震え上がらせた威力を秘めし切り札であった。

アルプたちは、なんとかウルグラムをウルク王ガラヴルスの手から奪う計画を考えた。
そして考え出された案は、ウルク王の娘ガラヴィニアを誘惑し、彼女にウルグラムを持って来させるというものだった。

敵の王女を魅了し、味方の切り札である魔剣を持ち出させるのは至難と考えられたが、
アルプ族は柔らかな刃を持ち合わせた民族である。
力押しよりも、むしろこのような手管こそ得意中の大得意であった。



果たしてガラヴィニアを誘惑したアルプたちはウルグラムを奪い取ることに成功した。

王女と魔剣を奪われたウルク王は、落胆して軍を引き上げることに決めたが、
後ろ髪を引かれる思いがしたらしく、ユルガルズからさほど遠くない位置に軍を定住させてしまった。

しかしこの時、味方を裏切った王女ガラヴィニアは、自分がユルガルズのアルプたちに騙されたとは思っていなかった。

もともと破壊を繰り返す父王のやり方には反対だった彼女は、父王の手から頼りの魔剣を奪ってしまえば、
二度とこのような争いが起こらずに済むと考えたのである。

だが、ウルク王ガラヴルスの手から魔剣が失われたと知ったディオマーは、
散々、エリスタリアの周りを荒らし回られた腹いせに軍を起こしてガラヴルス討伐に出陣した。

国王自らが率いる黒い長弓の近衛兵団は、ユルガルズとウルク王の駐屯地の目前に迫った。

この様子を見ていたガラヴィニア。
彼女の下にウルク族の使者が何とか忍び込み、魔剣ウルグラムを王に返して欲しいと懇願した。
勿論、ガラヴィニアは父王に魔剣を返せるハズがないと断ったので、使者は落胆して帰ってしまう。

しかし一連のやり取りを知ったアルプたちは、二日だけ魔剣を返しても良いとガラヴィニアに持ち掛けた。
アルプたちはディオマーを快く思っていなかったので、ここぞと仕返しを企んだのだった。

こうしてウルク王ガラヴルスの手に霊剣ウルグラムが帰還し、王は存分にその威力をディオマーに示した。

神の加護を受けた亜人王が、それ以外の王に敗れたというのは、滅多に起こることではなかったので、
人々はディオマー王敗北を知るとウルク王の手にある霊剣ウルグラムの威力を畏れた。



強大なエリスタリア軍を追い詰めたガラヴルスだが、完全に敵を敗走させるには3日かかることになった。
ディオマー王は、ウルグラムがウルク王の手に返される期限が2日と知っていたからである。
何としても3日目まで持ちこたえよと麾下の兵士たちに厳しく命じ、粘り強く守りを固めた。

この様子を見ていたアルプたちの意見は別れた。

困った時には知らん顔で、いつも面倒事だけは持ち込むディオマー王への不信と不満は確かだ。
しかし、仮にもエルフ族の長者であるディオマー王を打ち負かしても良いものか?

いや、ウルク王にあと1日だけ魔剣を預けて、ユルガルズはエリスタリアとキッパリ縁を切るべきだ。
その後にウルク王を英雄として招き、お互いの憎しみの結びを解こうではないか。

両者の主張はぶつかり合っていたが、既に魔剣をウルク王に渡したことでエリスタリアには怨みを買っているのだから、
いまさら魔剣を返して貰っても解決にはならぬだろうと決せられた。

つまり、魔剣はあと1日の間、ウルク王ガラヴルスに預けられることに決まった。

3日目の朝、払暁攻撃を仕掛けたウルク王の軍勢に黒い軍装のハイエルフの長弓兵は一斉に矢を射かけた。
それを掃う様に青白い閃光が戦場を斬り裂き、鈍い音共にエリスタリア軍後背の岩山が崩れ落ちたという。

これが伝説として長く伝え続け謳われた「シュド・サハの戦い」である。



シュド・サハはユルガルズの南に広がる荒れ地である。
古戦場として知られるが、当然ながら千年も昔の話であり、その跡はない。

今は古い文献にその名が出てくるか、吟遊詩人がその戦いの様子を我々に歌って聞かせるのみである。

これが人に言わせればスコットランドの風景にも似ていると言うが、
それは皆さんの眼で確かめて頂こうか。



エリスタリア軍を打ち破ったウルク王に和睦を申し入れたユルガルズの貴族たち。
王も王女を取り戻せるならばと快諾し、霊剣ウルグラムをアルプたちに差し出して礼を示した。

ユルガルズの都、ノーヴェンに入場したウルク軍。
街の人々はかつての敵を、憎き支配者の手から故郷を独立させた英雄として歓待した。

戦勝を祝って連日の宴が続き、人々は新しい時代の扉が開かれたのだと確信した。

しかしウルク王ガラヴルスは、人々の期待を裏切ってその邪悪な本性を現した。
彼は将軍たちを集めて、街を破壊し、アルプたちを殺し尽くせと命じたのである。

街に火の手が起こり、失望と怒りの声が響き渡った。
目をおおいたくなる様な惨劇の中をウルク王ガラヴルスが疾走し、再び取り戻した魔剣の威力を振るった。

しかしその時、王の前に王女ガラヴィニアが飛び出し、魔剣の犠牲者となった。

自らの手で娘を殺してしまったことに、今更ながら王は呆然となった。
戦意を喪失した王は、自分が一体、何を望んでいたのか、それすらも分からなくなった。

明くる日、アルプの貴族たちが再びウルク王の前に姿を見せた。
王は「催促されずとも、余はこの地を立ち去る。」といって訪問者たちを追い返そうとした。

だがアルプたちは「いや、我々は貴方を引き留めに来たのだ。」と伝えた。

ガラヴルスは罪人として自分の首を求めているのなら、やぶさかではない、と言いたいところだが、
余にもまだ付き従う同胞たちがいる。余の一存で命を差し出すこともままならないのだ、と答える。

ここでアルプの貴族たちは、古い王冠を差し出した。
もう何千年も前に、この地を開いたハイエルフの王子の頭上を飾っていたと伝わる冠である。

かつては我々もこの地に開拓者としてやってきた。
それは先住者からすれば破壊者であり、悪しき侵略者であった。
我々と貴方は同じなのだ。ウルクの王よ。

私たちは共に許されるのか、それを確かめたいのだ。

アルプの貴族たちの説得を受けて、堅く表情を強張らせていたウルク王も頭を下げ、
天幕から出てノーヴェンのアルプたちの前に姿を見せた。

ガラヴルス王は身に着けていた指輪、マント、鎧を脱ぎ捨てるとボロをまとって人々に許しを乞うた。
彼は、アルプの貴族たちの手から冠を受け取るとディオマー王に代わってこの地を治め、
必ずや自分が引き起こした混乱を償うために努力すると誓ったという。



その日から霊剣ウルグラムは封じられ、その隠し場所は、もはや誰も知らぬ。



夏になってもユルガルズの気温は18℃を超えぬ涼しい気候で、真冬でも零下を下回ることはない。
この気温の差が小さい所は、エリスタリアに似ている。

365日の間に400日は雨であるという過度な表現までされるほど雨が多い。
何と言っても真昼でも100m先は全く見えない濃霧に包まれていることもざらだ。

イギリスの風光明媚なハイランド地方を思わせる自然豊かな土地だが、エリスタリアと異なるのは建築様式である。

エリスタリアが木造建築が基本であるのに対し、ユルガルズはレンガや石造りだけでなく、
コンクリートや鉄鋼まで使っている。

イギリスのビクトリア朝建築、復興ゴシック様式に似た近代的な建築技術で造られた中世風の建物。
壁が薄く、柱が少なく、大きなガラス窓や微妙に時代がズレた建築様式が混ざった様子は、その特徴だ。

外見は中世風の建物だが中にはコンクリートや鉄筋が使われている。
といってもコンクリートは、古代からあるのだがカン違いさせやすいので明記する。

これはウルク族が開明的な種族であることが原因で、異世界ではドワーフと並んで産業革命を経験し、
かなり近代的な工業を発達させ、国内の生産能力が非常に高いことに起因する。

人口も国土も主要ゲート国から比べれば小さいのに、それに並ぶ国力を持つのは、
この近代化を推し進めていることが理由であろう。

首都ノーヴェンは、その近代化に毒されてはいないが、人口の密集した街には煙突や工場が建てられている。
ユルガルズ最大の人口を擁するヴィンテルは、今や西大陸の西岸地域では最大の工業地帯となっている。

ヴィンテルは、ユルガルズ最大の都市であり、工業と産業の中心地帯である。
鉄工から造船、刀鍛冶や金細工までそろっているが、ドワーフやノームたちの作る物とはかなり違う。

残念ながら工場マニアが興奮する巨大な石油精製施設や原油タンクのような現代的なモノはないが、
産業革命真っ盛りのレトロ・フューチャーな景観が広がっている。

ただし空気や水は最悪なのでマスクなどは絶対に欠かすことはできない。
また臭いもかなり酷いので、敏感な人にはお勧めできない。



アルプは、他種族を利用しなければ繁殖できない種族だが、何も亜人に拘らなければ採精も代理出産も家畜で十分足る。
彼女たちにとって亜人を標的にするのは、最早、趣向以外の何物でもない。

ウルク族も全てがアルプを受け入れている訳ではなく、アルプの全てが強姦を繰り返している訳ではない。
そのためアルプしか住んでいない地域とウルクしか住んでない地域、その両方が混在する地域の3つに国は別れる。



まず古ユルガルズ。
ユルガルズ全域の中でも西大陸のさらに西に広がる鎮西海に面するユルガルズ発祥の地である。
王都ノーヴェンも古ユルガルズに含まれ、落ち着いた雰囲気を讃える古都である。

ここはアルプとウルクが混在する土地であり比較的治安が良い。
またウルクの工業地帯とアルプの狩猟林や田園が広がり、ユルガルズの縮図ともいうべき土地である。

反面、アルプとウルクの衝突も多く、荒っぽい事件も少なくない。

次に新ユルガルズだが、これは当然、二つある。
王都ノーヴェンを挟んで北に広がる地域は、かつてデリングという小国があったが、今は併合されている。
このデリングを中心に広げられたユルガルズの新都市がヴィンテルである。

ヴィンテルは、上記の通りユルガルズ最大都市であり、活気は王都よりも上だ。
ここはウルクの人口比率が高い地域であり、治安は極めて良い。

ウルクはドワーフの職人気質とオークの荒っぽさを併せ持つ種族だが、どちらにも似ていない部分がある。
それは冷酷という点であろう。

別段、際立って冷たい訳ではないのだが、ドニー・ドニーのオークたちと比べれば驚くほどに素っ気ない。
毎日のように仕事に勤しんでおり、観光客など見向きもしない。

ただし酒好きなのは、ドワーフとオークの両方を足してもなお引けを取る程の酒豪である。
疲れた体で大量の強い酒を煽るからなのだろうが、酒場で倒れているウルクはほうぼうに居る。
あまりにみっともないので法律で飲み過ぎる者には、罰金や実刑まで定められている。

最後にアルプたちが住む新都市、オテルである。

中世の時代、街は深い森の中に浮かぶ島のようなものであった。
どれほど木を切り倒そうとも疫病や飢餓で人が死に絶え、人通りが少なくなれば押し寄せる波のように
森は息を吹き返して道を塞ぎ、人の営みの跡など呑み込んで鬱蒼と影を作った。

ユルガルズ全体は、シプレ(糸杉)の森と呼ばれる深く、幾つもの沼や川を食らう複雑な森で囲まれており、
一年中濃霧が包み、しかも川が氾濫して起こる鉄砲水や落雷が通行人の命を奪う、まさに自然の城壁だ。

何より短い夏が終わればシプレの森は、比較的暖かい土地を選んだ都市部や村落と違い、急激に寒くなる。
森を抜ける途中で何かの拍子に雪が降れば、もう助からないと覚悟した方が言いだろう。

オテルは、そんな鬱蒼と茂る処女地の深い森の中にある。
そこではアルプたちは古代からの、いや神話の時代のダークエルフに戻る。

弓を作って深い森に挑んで狩りをし、雪に備えて薪を集め、口を真一文字に結んで黙々と働く。
家畜たちのいななきが夜の闇に雲まで届き、獣の胎内から新しいアルプが生まれる。

冬至、ユール祭ではどこも火を焚く。
迫る死、押し潰す雪や肌を刺す寒さ、言葉にならぬ恐怖を押し殺すように大火を熾して踊るのだ。

幻想的でありながら恐ろしいユールの火祭りである。



珍しく地球人ひとりのがオテルのとある村落に住み着いていた。
元の名前は捨てて、ここではもっぱら地球人で通っているという変わり者だ。

女には夫たるアルプが居り、夫が狩りに出ている間は家で屋根などを補強する。
ユールの庭(ユルガルズ)などと御大層に言っているが、本当に真冬の国なのは、ここオテルだけだと彼女は言う。

その彼女の地球の故郷は、冬は愚か雪すら降らぬという。

アルプたちはウルクやオークたちさえ怯えるほどに気が強く凶暴だ。
最初、身の危険を感じる日はなかったと答える。

ならば余程、この土地が気に入っているのかと言えばそうではない。
これは自省であり、祖国に居れば本物の牢獄に入れられるか電気椅子に送られるからだという。



『付録』

「アルプ」
ダークエルフの一種と見做されるエルフ族のひとつ。

青黒い肌と整った美しい姿は、他のダークエルフと変わらないが、頭には2本の角があり、
後ろ腰の黒い蝙蝠の翼で空を飛び、身長が平均で180cm台に達するなどかなり大柄で、むしろオークや倭鬼に近い。

翼はフェアリーのものが進化したと言われているが、異世界の生物に進化があるとは考えられないため、
単純に世界樹が人間サイズの生物に飛翔可能な能力を付与する前段階の実験がフェアリーであり、こちらは完成体といえる。

地球ではキリスト教によって貶められたエルフの姿であるとされ、夢魔の一種と言われる。
主に睡眠中の人間を襲い、精気を吸い取るか、睡眠を妨害すると伝えられる。

そのように他のエルフと同じく、好色で姦淫を好む。
ただし他のエルフと違うのは、亜人に限らず他の生物のオスから精液を吸い取って体内で自分の精子に作り替え、
他の種族のメスを強姦して妊娠させて繁殖するという点である。

この生態と合わせ、不老ではあるが長寿ではないことも手伝って、繁殖にはかなり積極的であり、
極めて攻撃的で倫理観は薄く、多種族を繁殖に利用することにためらいは全くない。

体格が大きく、飛行能力を獲得しているのも戦闘力を向上させるためで、
もともと多種族の繁殖を妨害することを種の保存のための武器として来た種族である。

また男性的な外見を持つ個体と女性的な外見を持つ個体がいるが、上記の理由から生殖器の構造は同じであり、性別はない。
さらに男性器と女性器の両方を持つが、子宮も精巣もなく、精液を蓄える精嚢があるだけである。

最後に生態ではないが、家屋に侵入することに長けており、夜間になると眠っている人間を襲う。
飛行能力に加え、場合によっては家屋を破壊して強引に侵入することもあるため、身を守ることはできない。

記録によれば子供や老人、病人だろうと容赦なく強姦するとされており、
俗にいう「エロフ」などといって面白がっていられる相手ではない。

主な生活圏はユルガルズ王国であり、オークの一種であるウルク族と共存している。



「ウルク」
オーグルズ(オウガ、オーク、ゴブリンなどの倭鬼以外の鬼族の総称)の一種。

闇のように黒い肌と悍ましい凶相、逞しく発達した筋肉と頑強な肉体を持つ。
体格はオークより小柄で人間並みのサイズだが、頭には角があり、大きく上を向いたオーク鼻が特徴。

身体が小さい分、俊敏ですばしっこい。
しかし顕著なオークとの違いは、手先が器用でドワーフやノームにもひけを取らない腕である。
ただしドワーフたちと違い、工芸品などより武器を好んで作り、しかも新しい技術の開発に前向きである。

迷信、俗説の域を出ないが、剣や槍、弓などの武器を最初に発明した邪悪な狡賢い種族の末裔で、
火薬、銃器、爆弾、攻城兵器などの近代装備も彼らが発明者であるとほのめかす文献が各地に残っている。

ただ身体が小さい分、獣人や他の鬼族より身体能力が劣るため、それを補おうと武器を作り出したことは、
容易に想像できる。

ドワーフのように職人気質でもなければノームのように細工にも拘らないため、
モノ作りに長けた種族といわれるものの名品や突出して秀でた製品を作ることはない。

代わりに新しい技術の探求に貪欲で同じものを延々と作り、どこまでも精度を伸ばしてより良いものを作るという
ドワーフの方針とは真逆で量産化に取り掛かった段階で次の発明に取り掛かるというやり方をしている。

俗にイギリス人が発明し、アメリカ人が投資し、日本人が改良して、中国で量産される。
この異世界版がウルク族が発明し、猫人(またはゴブリン)が投資し、ドワーフたちが改良と量産を始める、となる。



「蚩尤(しゆう)」
日本では「ひょうすべ(河童の一種)」の祖先と伝わる古代中国の怪物。
剣や槍、弓などの武器を最初に発明した神とされ、黄帝と争って敗れたという。

その恐ろしさは黄帝が蚩尤の姿を描かせた旗を用いた所、多くの人々が蚩尤を思い出して震え上がったほど。
まさに鬼神であり、天界の王と地上を争ったという武勇の持ち主である。

異世界では大延の伝承にほのめかす鬼族の大王のひとりで、やはり武器の発明者となっている。
ウルク族、倭鬼族の共通の祖先とミズハミシマが出来る以前にあった海知波喰国(あめしらすなみをすくに)の
古い文献が今に伝えている。

この蚩尤が異世界種族であったという確証はないが、両方の世界で活躍したこの鬼神は同一人物であるというのが
異世界に現れた陰陽師、志田王翔の結論である。



「ユルガルズ王国」
西大陸西海岸にある小国。首都はノーヴェン、最大都市はヴィンテル。
深い森に包まれ陸の孤島のように周囲からは孤立しており、一年中が雨と霧に包まれた寒冷な地域。
大規模な近代工業で栄えているが公害が問題となっている。



「霊剣ウルグラム」
ウルク王ガラヴルスが持っていた魔剣。
神から与えられた神器の一種と思われるが、どの神が彼らにどのような理由で与えたのか定かではない。
またいつからウルク族に伝えられて来たのかもハッキリしていない。

ガラヴルス王が切り札として用い、非常に強力な威力を秘めていることだけは伝わっている。
王がユルガルズ王に即位した時に封印され、それ以来の足取りは不明。


  • 戦って支配して滅んで殺伐と思いきや絡め手だったり各陣営の思惑があったりと戦記に御伽噺色が入っていてどこか和んでしまうのが面白い。ファンタジー鉄板の響きある名称やそして歴史は今へと至るとくくるに自然な話運びも上手い -- (名無しさん) 2016-01-09 06:05:11
  • エリスってファンタジーっぽいと見えて現実的な思考や理念が目立つのでこういう分かりやすいファンタジー要素は新鮮で面白い。エリストップの掘り下げも珍しい -- (名無しさん) 2016-01-19 23:11:24
  • 全てを把握して管理しているディルカカとは違って多種多様な生物は生み出せるがそれらの動向は成り行き任せみたいな空気を感じる世界樹 -- (名無しさん) 2016-04-03 13:39:37
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最終更新:2016年01月09日 05:52