[大きなアンテナが付いた酒場の鉱石ラジオからオールディーズ風の
新天地の音楽が流れる]
「ハァイッ!みんなのお耳の恋人・リオお姉さんよ~」
姐さん…それは記念すべきラジオ放送第一回目からする挨拶じゃないのでは?
「なによ?ザク、男のくせに細かいわねぇ…きんt(ピーという効果音)どっかにおっことしたんじゃないの?
ん~じゃあ、ナイストゥーミーチュー!ハウアーユー?こちら『González of all trades!』ゴンザレスリバティ商会放送局の新番組(っていうかこれがこの世界でのラジオ番組第一号だけど)『こちら最前線!』パーソナリティ役のリオよ。
異界渡りのラヂオでこれからみんなに世界中のホットな情報をお伝えするわ…とこんな感じでいいの?ディレクターのミスタ・ヤマーダ」
OKっす!でもお願いですから第一回目からの放送で下ネタは抑えて下さい。
「めんどくさいわねー
おととい、じゃんけんで
ルガナンさえ出しとけばこんな面倒な役をやらずにすんだのに…まあ、愚痴ってても仕方ないから給料分は働きましょうか」
その意気です姐さん。まずはニュースからとっとと流しましょう。(ニュースの束を渡すザク)
「あら?ありがと!(バサバサバサ…)」
「ちょっと!!姐さん、俺がせっかく集めた世界のホットなニュースの束を!!」
「(3枚くらいだけになったニュースの紙をヒラヒラ振りながら)こんなに一杯読めないわよ。読んでる途中で頭痛くなっちゃうもの。さあ、とっととやるわよー!」
『…さぁてと、まずは
クルスベルグの内乱の話ね。
あらー…激化しちゃったみたいね。議会側有力者は殆ど最初の首都でのテロで死んでるし、冠王が返り咲いたら他国…っていうかあのコワ~イ死神の国が介入しそうね。
まあ私達的には商売上、質のいい武具や工具類が入って来なくなるのが痛いわね。
狗人独自の冶金技術がある
イストモスやジャパンから技術提供受けてる
ミズハミシマも最近、工業製品の質が上がってるけどやっぱりクルスベルグの品が一番安定してるもんね。
ウチ(新天地)の製品は安くて頑丈で大量に作れるけど作りが大雑把なのがね…
えーっと次は、へぇ…大延国で有名な異人さんと狸人がやってる料理屋のチェーン店が新天地にできるって!あそこって確か地球の料理をアレンジした料理を出す店でリーズナブルで美味しいって交易仲間の間でも結構有名なのよね。
第一店は東部のバッドランドポートにできるんですって!新天地で延の料理が食べれるなんて楽しみだわ♪
だってウチの料理って大雑把なんだもの…
塩豚と黄色豆と赤帽子をクタクタ煮ただけの奴とか灰色パンに肉や魚やオニオンやらを焼いたり揚げたりしたのを挟んだだけのとか…
あ~暗くなっちゃったわね。まあ、気を取り直して行くわよ?
最後は…あら?我らが新天地とずっと関係が微妙だった異世界はアメリカに私達との交流のための学校ができるんですって!
こういう異世界との交流のための学校はジャパンのトツクニスクール位だったわよね?
トツクニはミズハミシマや
エリスタリア、クルスベルグ、ジャパンみたいな国家だけでなく、ウチも
ゲートのある中央市やクロック市なんかの幾つかの大きな市がいくらか出資してて確か留学生も何人か出してたと思うわ。
開門時のゴタゴタで、国としてのアメリカとは微妙な関係だったけどこれでちょっとは関係が良くなるのかしらね?』
「さて、小難しいニュースはここまで!次は地球渡りのイカした音楽流すわよー。
今日はミスタ・ヤマーダの知り合い呼んでるから生演奏よ。えーっと?ミスタ・シャドウミラー?」(『ビヨヨ~ン』というがっくり来たぜ!と言わんばかりの音が聞こえる)
姐さん、サバムラ!サバムラ!
いや、違うから!サワムラだから…
え?ああ、すいません。
「もー…ジャパンやミズハミシマの名前って覚えにくいわね。
まあ、とにかくミスタ・サバミュラーが地球の音楽を弾いてくれるわ!リック・リエールで『ミザルーの娘』どうぞ!」
だからサワムラだって…まあ、いっか!じゃあ行くぜ!!
[エキゾチックで軽快なエレキギターのサーフミュージックが流れる]
「いいわね♪最高!!
…では、曲の後はCM!その後はみんなお待ちかね。ゲストさんいらっしゃいのコーナーよ!」
CM
『そこのお客様、欲しいモノはありませんか?
新鮮な食材、イカした衣料品、強いアルコールから武具、薬品、地球製品…奴隷以外は何でも扱います!貴方の望みを満たすなら、ぜひ新天地の中央大市場へ!! あなたの欲望満たします!セントラル市場振興委員会』
『宇宙ができて137億年、そして地球が46億年、異世界は未だ判明せず…その古来から延々と続く神秘の中で、地球や異世界は人間のみならず全ての生命体、ある意味では生命がないものに対しても存在していたのだ!
みんなで宇宙と地球と異世界の神秘を解き明かせ!月刊アトランティス!!ついに新天地でも好評発売中!!! 世界の謎を解き明かす!クマ出版』
[新天地南部のラテン風の音楽が流れる]
「さて!みんなお待ちかねのゲストさんいらっしゃいのコーナーよ。
今日の栄えあるゲストさん第一号は、さっきのイカした曲を弾いてくれた異世界人のミスタ・サバミュラー!
この前までこっちの世界を楽器片手に駆けまわってたらしいから知ってる人もいるかもね。さあ、今日は音楽について熱く語ってもらうわよ?どうぞー!」
……
………
…………?
「…ちょっと!サバ公はどうしたのよ?さっきまでそこにいたでしょ?」
すんません姐さん…今さっきカードで負けて帰ってきた社長とバートンさんがサバさんに縄掛けて酒場に引っ張ってちゃいました…
「えー!?ゲスト連れてったらこのコーナーどうするのよ……ああ~もうイイ!ちょっとボウヤ!アンタそこで黙って辛気臭い顔で機械いじってないでこっち来てゲスト役やんなさい!!」
え?僕が抜けたら放送機器の操作どうするんです?
「いいのよ。そんなのそこのトサカの付いたのと眼鏡かけてるのに任せときなさい!ハイ!COME ON &SIT DOWN!!」
行ってくれガンマンさん。こっちは俺たちが何とかするから…
スマンな新人、姐さんは言い出したら聞かないからな…
「そんなぁ…」
「はい!文句言わない。
アンタ、シリーズの主役のはずなのに目立たないし人気ないって嘆いてたでしょ?
正直、海賊のお嬢ちゃんの方が人気あるしゲストじゃ無い女性キャラでイラスト無いのアンタだけだし」
「そういう心に刺さるナイフの様なメタ発言はしないで下さい…」
(ポンポンと肩を叩く音がする)気にするなよ新人。話に出てるだけマシだからさ…
「…(ため息)で、ゲストって何をするんです?」
「さあ?…アンタ向こうから来たんでしょ?何か知らない?」
「僕は、軍で無線機器扱ってたって言ったら無理やり機材担当にされただけで、ラジオ放送の中身の事は殆ど知りませんよ。
親の都合でジャパンに住んでた時の友達が、アニメのボイスアクターがやってる番組をよく聞いてたらしいですが、僕自身はあっちでもラジオ放送って殆ど聞かなかったですし…」
(二人して山田の方を見る)
あー…取り敢えず、自己紹介から行ってみよう!
「ハイ!本番組パーソナリティのリオお姉さんよん。種族は麗しのダチョウ族で年齢はヒ・ミ・ツ♡
身長は175サンチ、スリーサイズは86・58・87…」
いや…ダチョウのお姉さんのじゃなくてガンマンさんのをですね…
「何ヨ?アタシのプロフィールじゃ不満だっていうの?」(ドカンッ!と床が割れるような音がする)
い、いえ…ワーイ!ウレシイナー!
「宜しい」
「あの…いいですか?僕、事情があって詳しい自己紹介とかできないんですけど…」
えー…じゃあ、スリーサイズとか今日のパンツの色とかお風呂でどこから洗いますか?とかは…
「…Mr.ヤマダ、訴えますよ?堀の中でカマを掘られたいんですか?」
はい…調子にのってすみませんでした。
「よろしい」
じゃあ、日本にいたと言われてましたがその時の事を…
「親の仕事の都合と家庭のゴタゴタでジュニアハイの二年から三年ちょっとの間、ゲートのあるポートアイランドの近くにいました。」
「へぇ…ポートアイランドってアレでしょ?さっきのニュースで言ってたトツクニスクールのあるとこでしょ。
と言うことはそこに通ってたの?」
おお!と言うことは俺先輩!
「いえ、普通に地元のジュニアハイとハイスクールに…あそこ競争率が異様に高いですし、他国籍の人間がおいそれと入学できるようなとこじゃないですよ」
『チッ!』(マイクが拾うほどの大きな舌打ちが響く)
ガンマンちゃんが後輩なら先輩の立場を利用してあれやこれやと世話を焼きながらそのハートに火を付けたかったのに……
『ああ!ダメ!ガンマンちゃん!上に乗ってそんな激しい!!清楚な顔なのに流石メリケンッ娘!!!』
「…」
「…」
(ヤマダの脳内から盛大に漏れた妄想で静かになるスタジオ)
タンッ!…バタン
「…良かったの?アレ撃っちゃって」
「大丈夫、気絶してるだけですし正当防衛です。ええ、僕は大変身の危険を感じました」
(銃口から上がる硝煙をフッと吹いて倒れたヤマダを見ながらサラリと言う)
「アンタたまにめちゃくちゃ肝が座ってるわよね…」
「どうも、お褒めに預かり光栄です。
あ!一応、トツクニと関係が無かったわけでもないんですよ?実はインフルエンザにかかって病院に行く途中で倒れた時にトツクニの生徒の方に助けて頂いたんです」
「へー!浮いた話一つないアンタにしてはロマンちっくじゃない?その人とはどうなったの?」
「それが僕を近くの病院に担ぎ込んだ後直ぐにセンター試験の会場に走って行ったらしくて、僕は名前も顔も知らないんですよ。
お礼を言うためにトツクニに問い合わせてもみたんですがどなたも名乗り出てくれなくて…」
(しばし、当時の事を思い出し無口になるガンマン)
「まあ、生きてりゃいつかまた逢えるでしょうよ!」
「ええ、そうですね。会えたらお礼を言わないと…あ、でも当時の僕は今と違って三つ編みに眼鏡してそばかすも結構あったので、逢えても向こうは気づかないかも知れないですね」
「イメチェンする?」「この年でその格好はキツイです」
[しっとりしたジャズ風の音楽が流れてくる]
「さあ、名残り惜しいけどそろそろゲストさんとはお別れよ」
「別れといっても機材の操作に戻るだけですが…」
(ダンッ!)…はい、すいません。
「では、ガンマンちゃんバイナラ~」
「はーい、ではSee You!」
(席を立って機材の操作に四苦八苦するザクと席を替わるガンマン)
「んじゃあ、次はお便りのコーナーよ」
あ、姐さん、お便りはまだ来てないです。
「えー…来てないの?どうするのよこのコーナー…」
しょうがないじゃないですか、第一回目な上に各地の酒場で宣伝したのだって最近だし、手紙ってバカっ高い金のかかる飛脚か荷馬車以外だと妖精にお菓子渡す約束して手紙を持ってってもらうしか無いんですから…
アイツらに頼むと手紙が来るのは最速でニ・三週間かかりますよ?
「あー…じゃあもう今日は上りね!社長もバートンもサバ公も遊び歩いてるし、アタシらだけ真面目に仕事やるなんて馬鹿らしいわ。
後は地球の番組録音市たヤツや音楽のデータ流して帰りましょう」
んじゃ、そうしますか!姐さん
え!いいんですか?
「あ、ボウヤはそこで機材の操作しといてね♪アタシらじゃ機器の操作分かんないし」
「え!ちょっ…」
スマンな新人、後で美味い揚げ芋買ってきてやるから。
「じゃあねー!みんな~また明日~チャオー♡」
えーー……二人共ほんとに帰っちゃったよ…どうしよう?
…
……仕方ない。取り敢えず録音テープかけてからゴミ掃除でもするか(床のヤマダを見ながら)
『カチリ』
[ピングー・クロッシーの『故郷へ帰ろう』が流れる。しっとりとした歌は郷愁を聞く者の誘う]
この日、11門世界初のラヂオ放送が始まった。
これは現在にとっては取るに足らない一歩かも知れない。だが未来においては異世界と地球の関係の大きな大きな一歩となるだろう。
…
……
………Maybe.
蛇足
少し未来を想定して好き勝手に書いてます。
ラジオとか独自設定が強すぎるので劇中劇的な物とお考え下さい。
番組のスポンサーやお便り募集中
2/9書き足しました
- 鉱石ラジオというのが面白いアイテムでした。用意は手間がかかりそうですがあちこちの酒場にラジオを置いてという形でならこういう放送もできるんじゃないかと思いました。狭い交信範囲でも大きな効果や影響が出そうですね -- (名無しさん) 2013-12-01 17:06:59
- こういう誰でも聞ける放送みたいなのって異世界ではありそうでないからとても新鮮。移動放送局みたいなのとか新天地には似合いそう -- (名無しさん) 2014-02-04 23:30:23
- ラジオがあるというだけで情報伝達以上に場の雰囲気も大きく変わってきそう -- (名無しさん) 2017-01-17 14:11:49
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最終更新:2012年02月09日 00:04