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【ご愛聴ありがとうございます。ドナルド先生の次回講義にご期待ください。】

さて、これから異世界史学の講義を始める。
前回はキミらも御存知の通り、異世界の顔とも言える11神についてを学んだ。
今日は異世界の神自体についての話をしよう。

現在、異世界で神と言えばゲートの開かれた11国を治める列強の11神達の事を思い浮かべるだろう。
しかし、弱小神集合体である群神・レギオンの例を見て分かる通り、異世界には神と呼ばれるものが数多くいる。
例えば、真名を司る蛇神・ルガナン、名を持たぬ言葉の老神、狂える月の三女神・セレ・ニア・コス(クス)に鬼族の始祖神である角を折られた鬼神・アグール、死の間際に現れるというあの世への渡し神である黒犬、腐れ神と呼ばれる腐敗と発酵を司る謎の神…
かの世界は、名前を覚えるのも大変なくらい多種多様な神々を戴く多神教世界であり、天にまします我らが父が唯一の神であるこの世界とは大きく異なっている。(生徒の乾いた笑い)

さて、非常に多くの神々がおわす異世界だが、現在11神以外の神々は実は殆ど信仰されてはいない。
(ボソリと)まあ、11神の中でもレギオンやハピカトルモルテの様にまともな『信仰』をされていない神もいるのだが…
それは何故か?モバイルフォンを見ているそこの君!答えて
『え!?…い、今の11神が…強かったから?」

成る程、他の神々は現在の11神の力に負けて信仰を失ったと…良い意見だ。
この事についてはかなりの論説がある。だが私はこの事について、神々に『世代交代』があったという考えを支持したいね。

世代交代、つまり神々の移り変わりがあったと言う事だ。
分かるかね?つまり、異世界の神界では君等がやっている学校のクラブ活動の様に先輩から後輩へ技術や役割の移転が何度か起きていると言うことさ。
例えば鳥の神、殆ど古い鳥人達の口伝でしか登場しない鳥族の始祖とも言われる神だが、この神は神代の時代には魂や運命を司るほどの大神であったと言われている。
また、農耕の神と言われるダゴンは魚人達の始祖とも呼ばれ、ミズハミシマができるまでは海から恵みをもたらすものとして、また夫婦神となるハイドラと仲睦まじいため夫婦円満の神として広く祀られていたという。
どちらも大神と言っていい神であるが、今上げた神々は現在は記録のみ残る全く忘れ去られた神々だ。

これだけ見れば、彼が言ったように現在の強い神に負けて取って代わられたようにしか聞こえないだろうが、異世界には悪魔とされた神がいないのだ。
普通、私たちの世界では追いやられた神は追いやった神に対抗する醜い悪魔に姿形や性質まで歪められて貶められるが異世界では、ヒトを害するモノとしての悪魔や悪霊、広義の厄災神といった概念はあるがそういった事例が今の所見つかっていない…まあ、今の所ではあるが。
彼らは極々静かで平和的に人々の前から消えてしまったとしか言いようがない忘れ去られ方をしているのだ。
そして、消えた彼らの役割は今の11神が引き継いでいる…
ん!?どうしたね?手を挙げている君、質問などがあったら言ってみなさい。

『(おずおずと)あ、あの!…今の11神である太陽神や星神などは根源の時代からいたんですよね?』
成る程、素晴らしい質問だ!B+をあげよう。
君の指摘通り、太陽神と星神は根源の時代からいたとされている上に、今の11神の中で非常に重要なウェイトを占める二柱だ。
(少しもったいつけたような話し方で)普通に考えればこの世代交代が当てはまらない神々であるが…

次回に予定しているラ・ムール史で詳しく語るが、太陽神は史実上何度か歴代ラ・ムール王に『殺された』事になっている。
一番有名な神を殺した最初の王は、神殺しの武器を創った神殺王カテナセーガ であろうが、その他にもこのカテナセーガの神殺しを求めた王は多くいる。
例えば、古くは赤砂王ラスティン、黒猫女王ウルタウル…最近では凡王ミスラスや金獅子王レブオーロ…残っている資料だけでも数多くの王がこの武器を求め、そしてその殆どが在位中に不慮の死をとげたり行方知れずとなっている。
詳しい持論は来月のラ・ムール史で述べるが、神殺の史実と異世界で記録された幾度かの日蝕から太陽神も世代交代があったのではないかと私は考えている。

次に星神であるが、イストモス建国以前から存在するとされているこの神は非常に謎の多い神であり、残っている記録からもこの神が実際に地上に降りて何かを行ったというものがほぼない。
公式な記録では、この神と地上との関わりは殆どが星界から地上にもたらされる落としモノか星からの光によるものが大半とされている。
全天の支配者の割に酷く謙虚な神だ。
ただ、ラ・ムール史の中で語る事となるイストモス建国史と関わり深い大災害『星の涙』を引き起こした事からも分かるように太陽神に勝るとも劣らない非常に強い力を持った神であることは間違いがない。

では、何故この強い力を持った神が地上にまで降りてこないのか?
11神の中で一番慈悲深いと言われるテミランは、何故地上に降りて報われない人々を救わないのか?実は下天の者共の悲哀などどうでもいいと思っているのだろうか?
…その辺りの謎が世代交代に関わっていると私は思っている。
何にせよ星には寿命があるし、星の光は何億光年も向こうから届くものもあるのだ。
星神は星神で思いも寄らない世代交代のシステムを星界内部で採用しているのかも知れない。

おや?これだけでは納得できないかな?
では、もう一つ…
この講義を受けるものはみな知っているだろうが、異世界の歴史にはラ・ムールの大オベリスクやオルニトの飛行石板、マセ・バズークのオパール壁画などにある程度記録が残っている神代、古代、現代の3つの時代の他に一番最初の根源代がある。
これは創世期といってもいい時代で、世界が創られた時代を指しているものだが…この根源代には一つ大きな欠落がある。

それは、私たちの世界の宗教にあるような世界を創った一番最初の神である『創造神』が全く記録から消え去っているところだ。
太陽神を戴く古々しい国ラ・ムールでさえ神話の最初から世界はあったのだ!

神話の中での最重要なパーツである創造神の欠如…これこそが神の世代交代を如実に表していると思わないかね?(ざわつく生徒)

私が独自に集めた異世界の創造神についてのいくつかの資料と私的な考察をまとめたプリントを諸君らに次回配布しようと思う。
(腕時計を見て)さて、(ジリリリリリリリリリリリリーー!)…ベルが鳴ったな。
それでは続きは次回の講義で!


教授、本当に貴方って人は…
教室の後ろで聴講していた女性が呆れたようにそう呟いて横に置いていた帽子を被って立ち去った。

ドナルド・バーキンが異世界の創造神について何を発見したのかは分からない。だが、その日ドナルド教授の部屋で情けない悲鳴があがった事と次回の講義が休講になった事は確かである…




蛇足
独自設定方過多の作品ですので基本、劇中劇扱いでお願いします。
まずい表現がある場合は修正や削除をしますのでご連絡下さい。

  • 現役11神以外の神が思っていたよりも多くいるのとその関係は興味がわきますね -- (名無しさん) 2014-03-30 18:03:38
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最終更新:2013年03月28日 09:55