田中茂人(たなかしげひと)はある国の親善大使に会うために総理官邸まで来ていた。
たぶん新興国の要人なのだろう。
相手はエルブ王国という聞いたことがない国の人物らしい。
たぶん新興国の要人なのだろう。
相手はエルブ王国という聞いたことがない国の人物らしい。
外務省も経済産業省や内閣府が忙しい例に漏れず、在留外国人の相手で一杯一杯である。
暇なのは文武科学省と環境省ぐらいだ。
特に文武科学省は日本ユネスコ会長が運営資金を流用していた罪がお流れになって歓喜している。
暇なのは文武科学省と環境省ぐらいだ。
特に文武科学省は日本ユネスコ会長が運営資金を流用していた罪がお流れになって歓喜している。
自衛隊と海上保安庁の共同による、国境封鎖から忙しい。
各国大使館には駐留外国人がずらりと並び、外まで長い列を作っている。
最後尾は5時間待ち、甲高い声ネズミランドのアトラクション待ち並だ。
駐留外国人の滞在許可延長の手続きや、海外の家族を心配する外国人への返答、
怒鳴り込んでくる海外要人への対応など、元々少数精鋭、
予算が減らされギリギリの人員で廻していた各国大使館は
通常業務のほかに急速に増えたクレームを処理する力はなかった。
各国大使館には駐留外国人がずらりと並び、外まで長い列を作っている。
最後尾は5時間待ち、甲高い声ネズミランドのアトラクション待ち並だ。
駐留外国人の滞在許可延長の手続きや、海外の家族を心配する外国人への返答、
怒鳴り込んでくる海外要人への対応など、元々少数精鋭、
予算が減らされギリギリの人員で廻していた各国大使館は
通常業務のほかに急速に増えたクレームを処理する力はなかった。
クレームを処理すると同時に通常業務は行えない。大使館の仕事は特別な知識や資格がいる。
大使館員は替えが効かない。緊急雇用も難しい。
他部署からの増援も望めず、仕事はの必要性加速度的に高まっている。
日本人と外国人との金利格差の訴えや、差別云々に関する“いつもの業務”は全て無視して
増えた仕事に対応しているのが現状であった。
大使館員は替えが効かない。緊急雇用も難しい。
他部署からの増援も望めず、仕事はの必要性加速度的に高まっている。
日本人と外国人との金利格差の訴えや、差別云々に関する“いつもの業務”は全て無視して
増えた仕事に対応しているのが現状であった。
クレームの中で面倒なのが株と為替の問題である。
海外と連絡が取れなくなった影響で、海外口座の確認や資金運用の相談
についての電話がひっきりなしに電話に掛かってくる。
「株と為替の件については金融庁に一任しています」と話して電話を切っても。
数時間後、同じ相手から「金融庁につながらないからアンタらに電話した」と返って来る。
結局、問題はたらいまわしで処理はできない。
そうした件が何件もあった。
しかも相手は金のことだから簡単には諦めず、他の案件処理の時間がとられる。
人間の欲は恐ろしい。
海外と連絡が取れなくなった影響で、海外口座の確認や資金運用の相談
についての電話がひっきりなしに電話に掛かってくる。
「株と為替の件については金融庁に一任しています」と話して電話を切っても。
数時間後、同じ相手から「金融庁につながらないからアンタらに電話した」と返って来る。
結局、問題はたらいまわしで処理はできない。
そうした件が何件もあった。
しかも相手は金のことだから簡単には諦めず、他の案件処理の時間がとられる。
人間の欲は恐ろしい。
数日前から大使館の固定電話と個人的な携帯電話が鳴りっぱなしだ。
うるさくて眠れないので音と振動を切り、ピカピカ光るのが邪魔なのでカバーを掛けて
携帯電話の電源を付けっぱなしにしたまま家に放っておいた。
今頃、恐ろしい勢いで留守番電話サービスに転送されているだろう。
事態が収束してからの電話が怖い。一週間連続、頭をさげて電話を掛け続ける破目に陥るのは確実。
うるさくて眠れないので音と振動を切り、ピカピカ光るのが邪魔なのでカバーを掛けて
携帯電話の電源を付けっぱなしにしたまま家に放っておいた。
今頃、恐ろしい勢いで留守番電話サービスに転送されているだろう。
事態が収束してからの電話が怖い。一週間連続、頭をさげて電話を掛け続ける破目に陥るのは確実。
それだけ忙しい中から引き抜かれたのだから
さぞ、エルブ王国大使とやらの会談は重要なのだ。
会談内容は実務者会談でもなく政労使交流でもなく、ただの交流に留まる程度だそうだ。
交流程度なら他の部署にやらせておけばいいし、緊急性もない。
自分程の役職が出張る仕事でもない。
暇になったらささっとやっておけばいいだろう。今は殺人的に忙しい。
新興国家相手がどうしてそこまで重要な仕事であるのか見当も付かない。
さぞ、エルブ王国大使とやらの会談は重要なのだ。
会談内容は実務者会談でもなく政労使交流でもなく、ただの交流に留まる程度だそうだ。
交流程度なら他の部署にやらせておけばいいし、緊急性もない。
自分程の役職が出張る仕事でもない。
暇になったらささっとやっておけばいいだろう。今は殺人的に忙しい。
新興国家相手がどうしてそこまで重要な仕事であるのか見当も付かない。
「失礼します」
「よく来てくれた。君が茂人君だね。館長からの紹介で知っている」
総理官邸に入ると武原総理が直接出迎えた。
「挨拶はいい、時間が勿体無いからな。
2、3質問があるから答えてくれるかい?」
面食らう田中を前に武原は言葉を続ける。
「よく来てくれた。君が茂人君だね。館長からの紹介で知っている」
総理官邸に入ると武原総理が直接出迎えた。
「挨拶はいい、時間が勿体無いからな。
2、3質問があるから答えてくれるかい?」
面食らう田中を前に武原は言葉を続ける。
「確か君はエルフ語が出来たんだったね」
「はい。イギリスで学びました」
大学で適当に単位を埋めるためとった教科だ。
「はい。イギリスで学びました」
大学で適当に単位を埋めるためとった教科だ。
「他にも話せる言語があったね」
「英語、イギリス英語、中国語、ドイツ語です」
「大した物だ。私なんて20年以上ほぼ毎日、中国語やドイツ語の通訳を聴いているが、
いまだに彼らが何を言ってるのかわからん。英語しか話せんよ」
「中国語は広東かな」
「北京語です。父に連れられて一時期住んでいました」
「茂人君の父上は知っているよ。昔、随分お世話になった」
「英語、イギリス英語、中国語、ドイツ語です」
「大した物だ。私なんて20年以上ほぼ毎日、中国語やドイツ語の通訳を聴いているが、
いまだに彼らが何を言ってるのかわからん。英語しか話せんよ」
「中国語は広東かな」
「北京語です。父に連れられて一時期住んでいました」
「茂人君の父上は知っているよ。昔、随分お世話になった」
「話は変わるが、君はファンタジーが好きかい?」
「ええ。指輪物語やD&Dも好きですね。やりもしないのにルールブックを買ってますよ」
「D&D?」
「有名なファンタジーゲームですよ」
「するとエルフやドラゴンについても詳しいわけだ」
「かいつまむぐらいですが、それなりには」
「神話や怪物はどうだね?例えばワイバーンとドラゴンの違いは知ってるかい?」
「ええ。指輪物語やD&Dも好きですね。やりもしないのにルールブックを買ってますよ」
「D&D?」
「有名なファンタジーゲームですよ」
「するとエルフやドラゴンについても詳しいわけだ」
「かいつまむぐらいですが、それなりには」
「神話や怪物はどうだね?例えばワイバーンとドラゴンの違いは知ってるかい?」
武原は胸ポケットから写真を出した。
写真に写るワイバーンは生き生きとしていて、まるで本物だった。
写真に写るワイバーンは生き生きとしていて、まるで本物だった。
茂人の目線が上に向いた。答えを考えている。
「違い―――ですか」
「そうだ」
「違い―――ですか」
「そうだ」
「世間一般の認識としては、ワイバーンとドラゴンは別物、又は亜種とされています。
ワイバーンはドラゴンより力の劣るものとされていて、知能が低く
竜騎士に代表されるような家畜やペットとして扱われている場合があります。
大抵は大きな翼を持ち空を飛びます。
ドラゴンとの外見の区別として前足が短い、もしくはないものが多く
噛み付きが主な攻撃手段であり、炎や酸、氷などを吐きません。
細かい点は作品によって色々ですが。だいたいこんな感じです」
ワイバーンはドラゴンより力の劣るものとされていて、知能が低く
竜騎士に代表されるような家畜やペットとして扱われている場合があります。
大抵は大きな翼を持ち空を飛びます。
ドラゴンとの外見の区別として前足が短い、もしくはないものが多く
噛み付きが主な攻撃手段であり、炎や酸、氷などを吐きません。
細かい点は作品によって色々ですが。だいたいこんな感じです」
ワイバーンは、ゲームによっては棘のある尾を持つトカゲのような動物であったり
空を飛ぶトカゲの総称であったりと様々だ。また、日本語ではワイヴァーンと
表したりもする。ドラゴンも同様にドラグーンや龍と表すことがある。
空を飛ぶトカゲの総称であったりと様々だ。また、日本語ではワイヴァーンと
表したりもする。ドラゴンも同様にドラグーンや龍と表すことがある。
ペラペラ
「ドラゴンの亜種として他に、ドレイク、レッサードラゴンがあります。
厳密には違いますが、これらはどれも力の弱いドラゴン
としてワイバーンひとまとめにして考えてもいいでしょう」
「問題は亜種のワーム、翼や足の欠けたドラゴンです。
ワームは巨大な体躯と力を持つドラゴンで、知能についてはまちまちです。
西の神話の竜はドラゴン、東方神話に出る龍はワームの部類に入るでしょう。
ドラゴンに比べ、比較的多い頻度で物語の怪物として登場します」
厳密には違いますが、これらはどれも力の弱いドラゴン
としてワイバーンひとまとめにして考えてもいいでしょう」
「問題は亜種のワーム、翼や足の欠けたドラゴンです。
ワームは巨大な体躯と力を持つドラゴンで、知能についてはまちまちです。
西の神話の竜はドラゴン、東方神話に出る龍はワームの部類に入るでしょう。
ドラゴンに比べ、比較的多い頻度で物語の怪物として登場します」
西洋のドラゴンは火を噴く、街を焼き尽くすなど火のイメージから来ていることが多い。
キリスト教のサタンからのイメージが強いのだろうか。姿は翼のあるドラゴン型だ。
火吹き竜として有名なサラマンダーだが、もとは周囲を冷やすトカゲとして伝わっていた。
火を噴く竜と冷やす竜、変温動物としてのトカゲが神話の土台となっていると考えられる。
キリスト教のサタンからのイメージが強いのだろうか。姿は翼のあるドラゴン型だ。
火吹き竜として有名なサラマンダーだが、もとは周囲を冷やすトカゲとして伝わっていた。
火を噴く竜と冷やす竜、変温動物としてのトカゲが神話の土台となっていると考えられる。
対して東洋のドラゴンは雨乞い、洪水など水の印象が強い。
姿はワーム型。モデルは蛇、湿気の多い場所に生息し、脱皮をすることから輪廻転生や
不老長寿の象徴とされる。陸に生息するドラゴンに対して龍は湖や海に住む。
リュウグウノツカイや鯉の滝登りなどの水生生物に関する物語が多い。
火と水の関係から、ドラゴンは破壊を司り龍は再生を司っているとされている。
火は山火事などで全てを焼き尽くすがために否定的、
水は雨を想像させるがために肯定的なものとされている。
姿はワーム型。モデルは蛇、湿気の多い場所に生息し、脱皮をすることから輪廻転生や
不老長寿の象徴とされる。陸に生息するドラゴンに対して龍は湖や海に住む。
リュウグウノツカイや鯉の滝登りなどの水生生物に関する物語が多い。
火と水の関係から、ドラゴンは破壊を司り龍は再生を司っているとされている。
火は山火事などで全てを焼き尽くすがために否定的、
水は雨を想像させるがために肯定的なものとされている。
ペラペラ
「落ち着きなさい。ファンタジーな方面に詳しいのは痛いほど理解した」
「えっ、あっう!?」
「えっ、あっう!?」
茂人ははっと我に返った。
耳まで赤くする。
耳まで赤くする。
「すみません。取り乱しました」
「語学が堪能でファンタジーが好きな茂人君にぴったりな仕事がある」
「語学が堪能でファンタジーが好きな茂人君にぴったりな仕事がある」
武原はとびっきりの笑みをしている。
してやったりといった表情だ。
してやったりといった表情だ。
「茂人君にはダークエルフとの交渉を担ってもらおう」
「ダークえるふ」
「茂人君の考えている通りのダークエルフだ。
褐色で耳が長くプラチナの髪、しかも美女。興味を惹かれるだろう?」
「茂人君の考えている通りのダークエルフだ。
褐色で耳が長くプラチナの髪、しかも美女。興味を惹かれるだろう?」
懐から2枚目の写真を取り出した。
褐色で耳が長い豪奢な鎧を着たエルフが血に濡れた地面に倒れている。
長い睫毛、滑らかな褐色の肌、肩まであるプラチナブロンドの髪、整った目鼻。
ここまで均整の取れた顔立ちはモデルでもそうはいるまい。
とてもよく出来たコスプレ写真だった。写真集が出せそうだ。
褐色で耳が長い豪奢な鎧を着たエルフが血に濡れた地面に倒れている。
長い睫毛、滑らかな褐色の肌、肩まであるプラチナブロンドの髪、整った目鼻。
ここまで均整の取れた顔立ちはモデルでもそうはいるまい。
とてもよく出来たコスプレ写真だった。写真集が出せそうだ。
耳の長いエルフ。よりにもよってマニアックなダークエルフ。
総理は私をからかっているんじゃないか。
総理は私をからかっているんじゃないか。
「頭の中が表情に出ているぞ。
近頃、我々の周りに奇妙な隣人が越して来てね。
いや、我々が越してきたとするべきか」
「?」
「この道をいけばどうなるものか危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし踏み出せばその一歩が道となり
その一足が道となる迷わず行けよ」
近頃、我々の周りに奇妙な隣人が越して来てね。
いや、我々が越してきたとするべきか」
「?」
「この道をいけばどうなるものか危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし踏み出せばその一歩が道となり
その一足が道となる迷わず行けよ」
行けば判るさ、一休さんか。面白そうじゃないか。
「ダークエルフと交渉の件。承りました。
でもどうしてですか、私より神話や伝承に詳しい研究家なんていくらでもいますよ」
でもどうしてですか、私より神話や伝承に詳しい研究家なんていくらでもいますよ」
「交渉には広い視点が求められる、相手は異種族で異民族で異世界人だ。
我々の常識は利かんが、エルフやドワーフ、彼らと我々の常識は多少通じる部分もある。
エルフは魔法を使い、ドワーフは鍛冶が得意だ。中世風の鎧を着て剣を持っている。
これは我々の想像する典型的なファンタジーと同じくする。
彼ら相手には柔軟な対応が求められ、交渉のための知識も必要だ。
常識外を相手にするには深い知識はかえって邪魔になる。
しかし交渉を望むには精神的な土台と最低限の知識を持っていなくてはならない。
固定観念に囚われた、外交に縁のない神話研究家ではいかんのだ」
「そこで、君に白羽の矢が立った」
我々の常識は利かんが、エルフやドワーフ、彼らと我々の常識は多少通じる部分もある。
エルフは魔法を使い、ドワーフは鍛冶が得意だ。中世風の鎧を着て剣を持っている。
これは我々の想像する典型的なファンタジーと同じくする。
彼ら相手には柔軟な対応が求められ、交渉のための知識も必要だ。
常識外を相手にするには深い知識はかえって邪魔になる。
しかし交渉を望むには精神的な土台と最低限の知識を持っていなくてはならない。
固定観念に囚われた、外交に縁のない神話研究家ではいかんのだ」
「そこで、君に白羽の矢が立った」
ギーグなのは隠していたつもりだったんだけどなあ。ばれていたか。
「外に車が出ているから乗りたまえ。それと茂人君には封筒も渡しておこう」
棚からファイルを取り出した。中には封筒が入っている。
茶封筒に入った大きいものと
「現地についてから開くといい」
青い便箋サイズの小さな封筒
「こっちはエルフと会った後に開くものだ」
「了解しました」
棚からファイルを取り出した。中には封筒が入っている。
茶封筒に入った大きいものと
「現地についてから開くといい」
青い便箋サイズの小さな封筒
「こっちはエルフと会った後に開くものだ」
「了解しました」
「此方です。どうぞ」
総理官邸から車に揺られ、乗り換えること三回。
研究所らしき場所についた。何処かの企業っぽい建物だ。
作業員用勝手口から通される。
入り口にはエアカーテンと吸着マットが敷かれていて、査察で見たような
精密部品や薬品を扱っているような工場に近い印象を受けた。
壁に複数の穴があいた通路に入ると、壁から温風が噴出し埃を取った。
いくつかのスライドドアとエアロックを抜けると、監視所らしき場所に通される。
研究所らしき場所についた。何処かの企業っぽい建物だ。
作業員用勝手口から通される。
入り口にはエアカーテンと吸着マットが敷かれていて、査察で見たような
精密部品や薬品を扱っているような工場に近い印象を受けた。
壁に複数の穴があいた通路に入ると、壁から温風が噴出し埃を取った。
いくつかのスライドドアとエアロックを抜けると、監視所らしき場所に通される。
「ようこそ。田中茂人さんですね。お待ちしておりました。
研究主任の黒桐中人(こくとうなかひと)です。Nでも黒人でも気軽に呼んでください」
人払いを済ませた後、部屋には荒沢と私だけが立っていた。
荒沢は20代に見える研究員で、主任にしてはとても若い。
男か女か判断に困る中性的な顔立ちをしていて、蠱惑的な瞳が印象的だ。
研究主任の黒桐中人(こくとうなかひと)です。Nでも黒人でも気軽に呼んでください」
人払いを済ませた後、部屋には荒沢と私だけが立っていた。
荒沢は20代に見える研究員で、主任にしてはとても若い。
男か女か判断に困る中性的な顔立ちをしていて、蠱惑的な瞳が印象的だ。
「部屋は完全防音ですから話しても大丈夫ですよ」
「エルブ王国?から来たダークエルフ?の親善大使と交渉をする手筈だったのですが」
怪しい雰囲気だ。もしや私は嵌められたのではなかろうか。
物体Xの実験台にされたり、人体実験の材料だったり。
バイオハザードな下らない妄想が脳裏を駆け巡る。
「エルブ王国?から来たダークエルフ?の親善大使と交渉をする手筈だったのですが」
怪しい雰囲気だ。もしや私は嵌められたのではなかろうか。
物体Xの実験台にされたり、人体実験の材料だったり。
バイオハザードな下らない妄想が脳裏を駆け巡る。
「はい。おっしゃる通りです」
「竹島戦で韓国軍が戦闘した相手、について知っていらっしゃられますかな」
「詳しく話を聞きたいですね」
「首相からお話は聞いておられますかな」
そういえば封筒を開いていなかったな。
「竹島戦で韓国軍が戦闘した相手、について知っていらっしゃられますかな」
「詳しく話を聞きたいですね」
「首相からお話は聞いておられますかな」
そういえば封筒を開いていなかったな。
「資料を貰っていました。現地で開けと言われていた物がありますね」
「では、それを見ながら説明いたしましょう」
荒沢がリモコンのボタンを押すと、部屋の窓が動いて隣の小部屋の様子が見える。
部屋のベッドには褐色の肌、プラチナブロンドの美が付く幼女が眠っている。
「では、それを見ながら説明いたしましょう」
荒沢がリモコンのボタンを押すと、部屋の窓が動いて隣の小部屋の様子が見える。
部屋のベッドには褐色の肌、プラチナブロンドの美が付く幼女が眠っている。
「竹島戦で韓国軍が殲滅されたのは知っていますね」
「ええ」
近々、TVで公式発表される予定の情報だ。世間では既にTSBが未公表情報をスッパ抜き、
世間では何処が攻撃してきたかと騒ぎになっている。
「ええ」
近々、TVで公式発表される予定の情報だ。世間では既にTSBが未公表情報をスッパ抜き、
世間では何処が攻撃してきたかと騒ぎになっている。
「今後の報道では中国でも韓国でも露西亜でもましてや亜米利加でもない“正体不明の敵”と戦い、
一人残らず殲滅されたと“言われます”」
「ええ」
じゃあ何処の国が襲ってきたんだ、それ以前に日米同盟はどうなったんだ!?
驚愕を抑えつつ、話を促した。
一人残らず殲滅されたと“言われます”」
「ええ」
じゃあ何処の国が襲ってきたんだ、それ以前に日米同盟はどうなったんだ!?
驚愕を抑えつつ、話を促した。
「おや?驚かれませんな。知っておられましたか」
知るはずないじゃないか。
知るはずないじゃないか。
「失礼。それはこれから報道されるんでしたね」
「もちろんですとも」
さりげなく念を押して確認をした。
「もちろんですとも」
さりげなく念を押して確認をした。
「韓国軍を襲撃したのは謎の生命体群です。通信テロから数時間後、
体長7mの巨大な空飛ぶトカゲが海の向こうから襲ってきました。
しかも100匹近くの大群です。自衛隊は必至の抵抗を試み、日本海側に戦力を集結。
戦力集中の結果が国境封鎖と自衛隊の防衛出動です」
そういやネットで話題になってたな。UMAを確認したって。
体長7mの巨大な空飛ぶトカゲが海の向こうから襲ってきました。
しかも100匹近くの大群です。自衛隊は必至の抵抗を試み、日本海側に戦力を集結。
戦力集中の結果が国境封鎖と自衛隊の防衛出動です」
そういやネットで話題になってたな。UMAを確認したって。
「それらがベッドで眠っている子供とどう関係が?他の国はどうなったんですか!」
「結論を急がないで下さいな。謎の生命体郡は現代科学の常識を覆す生態をしていてですね、
信じられない巨体で空を飛んだり、ある種の『超能力』まで使うんですよ。とても興味深い。
私達研究チームは『魔法』と呼んでいますが」
「結論を急がないで下さいな。謎の生命体郡は現代科学の常識を覆す生態をしていてですね、
信じられない巨体で空を飛んだり、ある種の『超能力』まで使うんですよ。とても興味深い。
私達研究チームは『魔法』と呼んでいますが」
「通信が途切れた理由は」
「日本の外で大規模な戦争が起こったと考えられています。
核や細菌兵器、サイバー攻撃などが一斉に行われました。
その結果として日本国内のインターネットをはじめとした通信機器は一斉に遮断。
衛星も一度に破壊、又は無力化されました」
話が大きすぎて現実味がない話だなと思ってしまった。
同時に突っ込みどころがある話だと。
「日本の外で大規模な戦争が起こったと考えられています。
核や細菌兵器、サイバー攻撃などが一斉に行われました。
その結果として日本国内のインターネットをはじめとした通信機器は一斉に遮断。
衛星も一度に破壊、又は無力化されました」
話が大きすぎて現実味がない話だなと思ってしまった。
同時に突っ込みどころがある話だと。
「ネットが破壊されるはずがない。リスク分散のために無数の独立したサーバーから成り立っている」
「インターネットの破壊は不可能だと思われていますが、実はそうでもないんですよ。
とあるクラッカーは「30分あればインターネットをダウンさせられる」と言いました。
ネット環境の普及のためにはデータ形式や管理方法を並列化させないといけません。
OSや防火壁は常時進化していますが、その根幹を支える管理システムそのものはさほど変わりません。
そこをトロイで偽装したボットが同じ時間に一斉攻撃をかけるとシステムは広域にわたって停止します。
Dos攻撃に代表されるように、ネットは負荷が一箇所にかかると停止します。
一定以上の負荷をかけられると枝葉末端まで連鎖的に壊滅するのですよ」
「インターネットの破壊は不可能だと思われていますが、実はそうでもないんですよ。
とあるクラッカーは「30分あればインターネットをダウンさせられる」と言いました。
ネット環境の普及のためにはデータ形式や管理方法を並列化させないといけません。
OSや防火壁は常時進化していますが、その根幹を支える管理システムそのものはさほど変わりません。
そこをトロイで偽装したボットが同じ時間に一斉攻撃をかけるとシステムは広域にわたって停止します。
Dos攻撃に代表されるように、ネットは負荷が一箇所にかかると停止します。
一定以上の負荷をかけられると枝葉末端まで連鎖的に壊滅するのですよ」
「簡易なアナログ回線まで壊滅したのはおかしい」
「そのネットを支え、補助しているシステムが壊れたんですよ。中継局や中継器までね」
海外との通信が切れたせいで大騒ぎになっている。
事件当時、大慌てで職員総出で大使館の機械を全部壊れているか確認した。
「そのネットを支え、補助しているシステムが壊れたんですよ。中継局や中継器までね」
海外との通信が切れたせいで大騒ぎになっている。
事件当時、大慌てで職員総出で大使館の機械を全部壊れているか確認した。
「日本だけが無傷で残るのは不自然だ」
「偶然残ったのですよ。外を歩いているだけで隕石に直撃される世の中です。
戦争で偶然生き残った国家があってもいいでしょう。
日本も甚大な被害を受けていますよ。貿易を絶たれるだけで明日の食事すらままならない」
「偶然残ったのですよ。外を歩いているだけで隕石に直撃される世の中です。
戦争で偶然生き残った国家があってもいいでしょう。
日本も甚大な被害を受けていますよ。貿易を絶たれるだけで明日の食事すらままならない」
「アメリカは軍事大国だ。簡単に壊滅しない」
「過去に新しい戦略や戦術導入によって滅びた大国など星条旗の数ほどあります。
裏付けとなる写真が此方です」
「過去に新しい戦略や戦術導入によって滅びた大国など星条旗の数ほどあります。
裏付けとなる写真が此方です」
ひゅうがの甲板に貼り付けられたワイバーンの死骸。
おおすみに牽引されるニンゲンの死骸。
戦闘機の機関砲で粉砕されるネッシーの動画。
おおすみに牽引されるニンゲンの死骸。
戦闘機の機関砲で粉砕されるネッシーの動画。
「全長7mの竜の死骸、体長数十mもある人型クジラニンゲン、6mもあるネッシー。
どれも現代科学の常識を超えています。居ると言われ続け、確認されていなかった動物達です」
どれも現代科学の常識を超えています。居ると言われ続け、確認されていなかった動物達です」
「私達の予想外の事態が進行している証拠です。
航空自衛隊によって殲滅され、海上自衛隊によって運搬された死体が段階を得て、
国民の皆様に晒されることになるでしょう」
航空自衛隊によって殲滅され、海上自衛隊によって運搬された死体が段階を得て、
国民の皆様に晒されることになるでしょう」
「他にも裏付けとなる証拠があります」
船から撮られた海の写真だ。
船から撮られた海の写真だ。
「本来はユーラシア大陸、中国があった場所の写真です」
「海だけじゃないか」
「中国の一部が大きく消滅しています。えぐれた湾から察するに、
大規模な核攻撃やそれに類するものがあったと考えられています」
「海だけじゃないか」
「中国の一部が大きく消滅しています。えぐれた湾から察するに、
大規模な核攻撃やそれに類するものがあったと考えられています」
「写真は嘘だ。ありえるはずがない」
「まだ証拠があります」
島を埋め尽くす死体。“鎧を着た”蛮族達。剣や槍、地面に刺さった大量の弓矢。
「まだ証拠があります」
島を埋め尽くす死体。“鎧を着た”蛮族達。剣や槍、地面に刺さった大量の弓矢。
「エルフやドワーフっぽい死体だな。映画の撮影か」
「いいえ、違います。メディアにはまだ伝えられていませんが、“外からの侵略者”達です。
彼らは超能力、魔法を使い、竜に乗ってやってきました。自衛隊が撮った映像を見ますか?」
「いや、いい。やめておく」
「いいえ、違います。メディアにはまだ伝えられていませんが、“外からの侵略者”達です。
彼らは超能力、魔法を使い、竜に乗ってやってきました。自衛隊が撮った映像を見ますか?」
「いや、いい。やめておく」
「死体役は全員エキストラかな」
「いいえ。違います本物です。私達はこんなに大量の小人病患者、ドワーフを用意できません。
死体に見せかけた役者を大量動員して凝ったメイクをしても、死体鑑定で簡単に判別できます。
良い検体がありますが、直接死体を拝見なされますか?」
「遠慮しておくよ」
「残念だ。彼らの体はとても興味深いのに。ミュータントですよ、突然変異ですよ。
ヴィールスで変異したのでしょうか。とても面白い症状だ」
「いいえ。違います本物です。私達はこんなに大量の小人病患者、ドワーフを用意できません。
死体に見せかけた役者を大量動員して凝ったメイクをしても、死体鑑定で簡単に判別できます。
良い検体がありますが、直接死体を拝見なされますか?」
「遠慮しておくよ」
「残念だ。彼らの体はとても興味深いのに。ミュータントですよ、突然変異ですよ。
ヴィールスで変異したのでしょうか。とても面白い症状だ」
「さて、信じてもらえましたか?」
「信じるしかないだろう」
中人は満足そうな笑みを浮かべたあと言った。
「信じるしかないだろう」
中人は満足そうな笑みを浮かべたあと言った。
「全部フィクションです」
「は?」
「ええええええええええっ!?」
「ええええええええええっ!?」
長話して引っ張っておいて最後の言葉がそれかあああ!
「・・・・とここまでが、今夜発表される政府発表です」
「が」
「真実は別にあります。そのためにあなたをお呼びしました。
政府発表は嘘ですが、真実も限られた含んでいます。
少なくともあなたと私、ごく限られた小数の人間以外には真実でしょう」
「が」
「真実は別にあります。そのためにあなたをお呼びしました。
政府発表は嘘ですが、真実も限られた含んでいます。
少なくともあなたと私、ごく限られた小数の人間以外には真実でしょう」
中人の瞳に嘘はない。淡々と決められた話をしていた感じだ。
「専門化が断定し、十数万人の自衛隊が動き、日本の通信が一斉に遮断され、
ミュータントが実際に襲ってきて、それを説明できる理由が信頼ある政府から説明されたら
それは本当になる」
ミュータントが実際に襲ってきて、それを説明できる理由が信頼ある政府から説明されたら
それは本当になる」
「現実は常に考えられる最悪の下を行く、かな」
「おっしゃる通りです」
「おっしゃる通りです」