「つまり、どういうことだ」
私は上官に敬語を使うのも忘れ、1等陸尉に詰め寄っていた。
「無差別に発砲する無人兵器と、ミュータントの化け物だらけの中に俺達は放り込まれたんだよ。
そして此処は日本じゃない何処かで、化け物どもが俺達を殺しに掛かってきている。理解したか?」
「はい」
「はいじゃない、レンジャーだ」
「レ、レンジャー」
私は信じられなかったものの渋々頷いた。足元には30cmの蟻が転がっている。
紛れもない証拠を眼にすれば信じるしかない。
「隊の仲間は」
「誰もいない、4人だけだ。居たが……今はこれだけだ」
帽子を被った冬季遊撃徽章の男が言った、彼もレンジャーだ。
記章を見るに所属は北部方面だろう、冬レンジャーと呼ぶことにする。
しかし妙だ、空挺レンジャーに冬レンジャー、新人の私と正体不明の謎レンジャー。
普通作戦地域に応じたレンジャーを派遣するのが常だと言うに
想定し訓練した地形、専門分野がばらばらだ。作戦を立案したものはどんな意図で集めたのだろうか。
「伏せろっ!」誰かが叫んだ。
全員考えるより先に動いた。訓練は体に染み付いている。
キュィィィとモーターが回転する音がした。
ブモオオオと牛が鳴くと周りの木々がなぎ払われる。
演習で見たアベンジャーの射撃にも似た砲撃は草木を細切れにした。
撃ったのはガトリング砲を頭に付けた車両ほどもある巨大な芋虫。
これを作り出した奴はきっと頭が狂っている。
――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――
「居なくなったな。空が赤くなってきた……夜が近いな」
冬レンジャーに誰も答えない。重苦しい沈黙が隊を包んでいる。
「誰か、アレが判るか?」
「どうしてこうなった?」
ぽつりと空挺レンジャーが言った。
「アレは中華かロシアの生物兵器か?」
「日本はどうなった?」
「本部との連絡は?」
「此処は何処だ?」
冬レンジャーの質問を皮切りに皆口々に疑問を出す。
喋っていないと頭がおかしくなりそうだった。
「おーけー、まずは事の始まりからはっきりさせていこうか。
情報を整理するに。時系列から始めるのが一番だ」
一番胡散臭い1等陸尉、謎レンジャーが口を開く。
「オレは習志野で訓練していた。訓練を終えてベッドで寝たら此処にいた」
3人で顔を見合わせる、習志野駐屯地は第一空挺団の拠点だ。
「所属は?悪いが俺も習志野だ、アンタの姿は見たことないがな」
「………………」
空挺レンジャーが謎レンジャーを睨み付けた。
「あんたがスパイで、俺達を陥れた可能性もある」
「………………」
しばらく睨みあった後、根負けしたように謎レンジャーが答えた。
「特殊作戦郡だ。どうやら所属を明かしておかないと後ろから撃たれそうなんでな。
ここの世界はいがみ合って生きて行けるほど甘くない、所属がバレると面倒だから記章は外していた」
「第7師団所属、目が覚めたら彼と同じだ」
「私もだ、昨日レンジャーに合格したばかりでまだ配属先が決まってない、
一応九州のほうへ配属されるらしかった」
「第一師団、演習から帰ってきて寝たまでしか記憶がない」
全員、所属がバラバラだ。
東西南北バラエティに富んでいる。
「共通するのは全員、レンジャー資格持ちで自衛隊員だってことだ」
「おまけに記憶喪失持ちだな」
「ははははは、笑えねぇ」
選別した側は自衛隊員を選び、自衛隊の戦闘職で最も数が多い普通科がいない、先ほどの異形。
つまり、極地での戦闘を想定しているということだろう。
加え、レンジャー技能とはある意味どんな場所へ放置されても生きていける資格でもある。
時には文明社会から完全に隔絶した森の中で、何ヶ月にも及ぶゲリラ戦さえ想定しているからだ。
言葉に出来ない不安を感じた
「とりあえず飯喰わないとな、背嚢の中身はどうなってる」
中は山岳演習用の装備だった、しかも非常食に加えて
えんぴからテントまで無駄に揃っている、むしろ揃いすぎだ。
服のポケットの中にはナイフに鉛筆、予備弾薬に狙撃に使うスコープなどが入っていた。
今夜は発見されるのを恐れ火を使わず、冷たい飯をかき込み
交代を立てて眠ることにした。
私は上官に敬語を使うのも忘れ、1等陸尉に詰め寄っていた。
「無差別に発砲する無人兵器と、ミュータントの化け物だらけの中に俺達は放り込まれたんだよ。
そして此処は日本じゃない何処かで、化け物どもが俺達を殺しに掛かってきている。理解したか?」
「はい」
「はいじゃない、レンジャーだ」
「レ、レンジャー」
私は信じられなかったものの渋々頷いた。足元には30cmの蟻が転がっている。
紛れもない証拠を眼にすれば信じるしかない。
「隊の仲間は」
「誰もいない、4人だけだ。居たが……今はこれだけだ」
帽子を被った冬季遊撃徽章の男が言った、彼もレンジャーだ。
記章を見るに所属は北部方面だろう、冬レンジャーと呼ぶことにする。
しかし妙だ、空挺レンジャーに冬レンジャー、新人の私と正体不明の謎レンジャー。
普通作戦地域に応じたレンジャーを派遣するのが常だと言うに
想定し訓練した地形、専門分野がばらばらだ。作戦を立案したものはどんな意図で集めたのだろうか。
「伏せろっ!」誰かが叫んだ。
全員考えるより先に動いた。訓練は体に染み付いている。
キュィィィとモーターが回転する音がした。
ブモオオオと牛が鳴くと周りの木々がなぎ払われる。
演習で見たアベンジャーの射撃にも似た砲撃は草木を細切れにした。
撃ったのはガトリング砲を頭に付けた車両ほどもある巨大な芋虫。
これを作り出した奴はきっと頭が狂っている。
――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――
「居なくなったな。空が赤くなってきた……夜が近いな」
冬レンジャーに誰も答えない。重苦しい沈黙が隊を包んでいる。
「誰か、アレが判るか?」
「どうしてこうなった?」
ぽつりと空挺レンジャーが言った。
「アレは中華かロシアの生物兵器か?」
「日本はどうなった?」
「本部との連絡は?」
「此処は何処だ?」
冬レンジャーの質問を皮切りに皆口々に疑問を出す。
喋っていないと頭がおかしくなりそうだった。
「おーけー、まずは事の始まりからはっきりさせていこうか。
情報を整理するに。時系列から始めるのが一番だ」
一番胡散臭い1等陸尉、謎レンジャーが口を開く。
「オレは習志野で訓練していた。訓練を終えてベッドで寝たら此処にいた」
3人で顔を見合わせる、習志野駐屯地は第一空挺団の拠点だ。
「所属は?悪いが俺も習志野だ、アンタの姿は見たことないがな」
「………………」
空挺レンジャーが謎レンジャーを睨み付けた。
「あんたがスパイで、俺達を陥れた可能性もある」
「………………」
しばらく睨みあった後、根負けしたように謎レンジャーが答えた。
「特殊作戦郡だ。どうやら所属を明かしておかないと後ろから撃たれそうなんでな。
ここの世界はいがみ合って生きて行けるほど甘くない、所属がバレると面倒だから記章は外していた」
「第7師団所属、目が覚めたら彼と同じだ」
「私もだ、昨日レンジャーに合格したばかりでまだ配属先が決まってない、
一応九州のほうへ配属されるらしかった」
「第一師団、演習から帰ってきて寝たまでしか記憶がない」
全員、所属がバラバラだ。
東西南北バラエティに富んでいる。
「共通するのは全員、レンジャー資格持ちで自衛隊員だってことだ」
「おまけに記憶喪失持ちだな」
「ははははは、笑えねぇ」
選別した側は自衛隊員を選び、自衛隊の戦闘職で最も数が多い普通科がいない、先ほどの異形。
つまり、極地での戦闘を想定しているということだろう。
加え、レンジャー技能とはある意味どんな場所へ放置されても生きていける資格でもある。
時には文明社会から完全に隔絶した森の中で、何ヶ月にも及ぶゲリラ戦さえ想定しているからだ。
言葉に出来ない不安を感じた
「とりあえず飯喰わないとな、背嚢の中身はどうなってる」
中は山岳演習用の装備だった、しかも非常食に加えて
えんぴからテントまで無駄に揃っている、むしろ揃いすぎだ。
服のポケットの中にはナイフに鉛筆、予備弾薬に狙撃に使うスコープなどが入っていた。
今夜は発見されるのを恐れ火を使わず、冷たい飯をかき込み
交代を立てて眠ることにした。