その日、しらね型護衛艦がエルブ基地へ入港した。
甲板からは3機のコブラに護衛されたSH-60Jが飛び立ち、厳重な警戒態勢の下、“城”の中庭へと着陸した。
遠く離れた異国、日本からの客人である。
簡素なスーツとネクタイ、来ている人物も同じく地味な顔をしている男――――――と彼に手を引かれて降りてきた
耳の長い銀髪の小学校高学年ほどの少女、こちらは黒の落ち着いたドレスを着ている。
彼らの周囲を取り巻く体格の良い、スーツに身を固めた男達。
甲板からは3機のコブラに護衛されたSH-60Jが飛び立ち、厳重な警戒態勢の下、“城”の中庭へと着陸した。
遠く離れた異国、日本からの客人である。
簡素なスーツとネクタイ、来ている人物も同じく地味な顔をしている男――――――と彼に手を引かれて降りてきた
耳の長い銀髪の小学校高学年ほどの少女、こちらは黒の落ち着いたドレスを着ている。
彼らの周囲を取り巻く体格の良い、スーツに身を固めた男達。
物々しい警戒の中、一人居る年端も行かない少女は異質であった。
スーツの一団と彼らを迎える腰に剣を下げた集団。
中心に立つ少女の足取りは故郷の土を踏むがごとく軽い。
スーツの一団と彼らを迎える腰に剣を下げた集団。
中心に立つ少女の足取りは故郷の土を踏むがごとく軽い。
「赤井・マル・ポーロ。只今、帰還した」
出迎えの集団の中からプラチナブロンドの女性が進み出、抱きしめる。
銀髪の少女が人懐っこい笑みを浮かべて
銀髪の少女が人懐っこい笑みを浮かべて
「ようやく帰ってこれた。彼らのお陰だ」
と言った。落ち着いた声に
感動の対面を果たしているプラチナブロンドの50代女性――――――の横に居た金髪の女性は
少女から眼を離し、襟を正した。
数歩離れたところで護衛達はスーツの男達を警戒している。
感動の対面を果たしているプラチナブロンドの50代女性――――――の横に居た金髪の女性は
少女から眼を離し、襟を正した。
数歩離れたところで護衛達はスーツの男達を警戒している。
少女の手を引いていた男が頷いた。
「“日本国”から来ました。外交官の田中茂人です。
我々は彼女を保護し、此処エルブまでやって来ました」
「エルブ国、ギュンスカー商会会長、ガンダルヴをやっている」
「田中よ。感謝する」
我々は彼女を保護し、此処エルブまでやって来ました」
「エルブ国、ギュンスカー商会会長、ガンダルヴをやっている」
「田中よ。感謝する」
金髪の女が田中の手を握り感謝の意を示す。
暖かく柔らかい手。
“突然現れた異国”の魔族は血も涙もない化け物だと聞いていたが、
ガンダルヴは思っていたより日本人が普通だったことに驚いた。
暖かく柔らかい手。
“突然現れた異国”の魔族は血も涙もない化け物だと聞いていたが、
ガンダルヴは思っていたより日本人が普通だったことに驚いた。
田中は視線を抱きしめあっている会長達に向け、
「彼女達はしばらく積もる話があるでしょうから、私たちもお茶しませんか?
保護した経緯についても話したいですし」
「ミゼットです。宜しく、田中さん。ええ、お願いするわ」
「彼女達はしばらく積もる話があるでしょうから、私たちもお茶しませんか?
保護した経緯についても話したいですし」
「ミゼットです。宜しく、田中さん。ええ、お願いするわ」
さあ、これからが本番だ。
まだ抱き合っている二人を見つめミゼットは気を引き締めなおした。
中庭に下りている4体の鉄で出来た魔物。
見知らぬ国からの来客。
彼らの対処は話してから決めるとしよう。
まだ抱き合っている二人を見つめミゼットは気を引き締めなおした。
中庭に下りている4体の鉄で出来た魔物。
見知らぬ国からの来客。
彼らの対処は話してから決めるとしよう。
二人の後に従ってスーツ達と近衛兵の人波がわらわらと動く。
バッサン兵を皆殺しにした魔族とはいえ警戒が過ぎると思った。
田中が感情を読み取ったのか
「警備は邪魔ですか?」
「引かせて貰うと助かる。彼らは君達を恐れている」
「了解しました。では、帰らせましょう。
お互いにぴりぴりしているのは良くない。
此方は警備に四人残しますが宜しいか?」
「はい、頼みます。我々も兵を引きましょう」
バッサン兵を皆殺しにした魔族とはいえ警戒が過ぎると思った。
田中が感情を読み取ったのか
「警備は邪魔ですか?」
「引かせて貰うと助かる。彼らは君達を恐れている」
「了解しました。では、帰らせましょう。
お互いにぴりぴりしているのは良くない。
此方は警備に四人残しますが宜しいか?」
「はい、頼みます。我々も兵を引きましょう」
田中が手元の箱に何か呟くと人波は静かに中庭へと移動していった。
統制の取れた護衛だ。腕利きらしい。良い兵士なのだろう。
残ったのは護衛のモザイク服を着た3人の巨漢と、小さな鞄を持った男であった。
統制の取れた護衛だ。腕利きらしい。良い兵士なのだろう。
残ったのは護衛のモザイク服を着た3人の巨漢と、小さな鞄を持った男であった。
「ん?」
応接室へ歩き出すと首筋に違和感を感じた。
視線?
振り向くと鎧を着た護衛兵だった。
視線?
振り向くと鎧を着た護衛兵だった。
「何か問題でも?」
緊張で神経が過敏になり過ぎているのかも知れない。
悪い兆候だ。
「気のせいだ。行こう」
緊張で神経が過敏になり過ぎているのかも知れない。
悪い兆候だ。
「気のせいだ。行こう」
先行する護衛がドアを開けたとたん、
戸の向こうから手にナイフを持った人影が廊下へ飛び込んできた。
ミゼットの盾となった兵士は鎧の隙間、
脇と腕の間から胸を指され口から血を吐いて倒れた。
戸の向こうから手にナイフを持った人影が廊下へ飛び込んできた。
ミゼットの盾となった兵士は鎧の隙間、
脇と腕の間から胸を指され口から血を吐いて倒れた。
「ブルータス!お前か!」
「国のためだ。悪く思うな」
護衛兵を一瞬で刺殺した男が、ナイフを手にミゼットへ迫った。
「国のためだ。悪く思うな」
護衛兵を一瞬で刺殺した男が、ナイフを手にミゼットへ迫った。
めきり、と鈍い音。
視界に割り込む灰色の迷彩色。
視界に割り込む灰色の迷彩色。
男は横から飛び込んできた男に蹴り飛ばされた。
護衛に参加していた特殊作戦郡の隊員であった。
護衛に参加していた特殊作戦郡の隊員であった。
ブルータスはくぐもった声を上げつつ、体をくの字に曲げ四つんばいになる。
張って逃げようとしているのを見ると、隊員は胸を蹴りあげた。
ブルータスは口から血と胃液と肺に溜まっていた空気を吐き出し、痙攣し、それ以上逃げようとしなくなった。
手を使わず、足を使って蹴り上げうつぶせに倒れ体を仰向けにする。
男の手を踏み、手にしたH&K USPを頭に突き付け動きを封じる。
張って逃げようとしているのを見ると、隊員は胸を蹴りあげた。
ブルータスは口から血と胃液と肺に溜まっていた空気を吐き出し、痙攣し、それ以上逃げようとしなくなった。
手を使わず、足を使って蹴り上げうつぶせに倒れ体を仰向けにする。
男の手を踏み、手にしたH&K USPを頭に突き付け動きを封じる。
「お怪我はありませんか」
顔を青くしている田中達とブルータスの間に割り込んだ赤沢が、二人に聞いた。
「大丈夫です。怪我はありません」
「私も無事です。しかし、今日の会談は終わりにした方が良さそうですね」
「ええ、そう思います。ところで狙われる心当たりでも?」
「私も無事です。しかし、今日の会談は終わりにした方が良さそうですね」
「ええ、そう思います。ところで狙われる心当たりでも?」
田中のミゼットへの質問に、胃液が混ざった血を吐くブルータスが足元で弱弱しく答えた。
「君は、エルブの、置かれた状況が、理解できておらぬのだ。
エルブには、大国に配慮で、きる、リーダーが、必要だ」
「このゲス野郎!拷問でどれだけの人が殺されたか…
お前等はやり過ぎたんだ!」
エルブには、大国に配慮で、きる、リーダーが、必要だ」
「このゲス野郎!拷問でどれだけの人が殺されたか…
お前等はやり過ぎたんだ!」
床に組み伏せられたブルータスにミゼットが怒鳴る。
「成功、には犠牲、が必要だ」
「配慮した結果が両国政治介入の“放置”か!?
武器と犯罪者が流れ込み、田畑は荒れ果て、政界は専横と大国の操り人形だ!」
「皆が、君のような、人物なら」
「配慮した結果が両国政治介入の“放置”か!?
武器と犯罪者が流れ込み、田畑は荒れ果て、政界は専横と大国の操り人形だ!」
「皆が、君のような、人物なら」
最期の言葉を言い終えぬ内にブルータスは一際大きく痙攣し、動かなくなった。
「死んだのか?」
素早く脈を取る赤沢に、耳のヘッドホンを押さえていた工藤が聞いた。
半田と及川(おいかわ)は増援要請と戸口の警戒をしている。
半田と及川(おいかわ)は増援要請と戸口の警戒をしている。
「ああ。脈も呼吸もしてない。胸を蹴ったとき、心臓が揺れたみたいだな」
「みたいだって・・・レッド隊長が蹴ったんだろ」
「みたいだって・・・レッド隊長が蹴ったんだろ」
工藤はやり過ぎだろと眼で訴え、ブルータスの胸元のボタンを千切る赤沢を見て眼をそらした。
「だから心肺蘇生をしている。それにまだ死んでない。衛生は?」
話しながら、固い地面の上に仰向けに寝かせ、片方の手で額を押さえ、
もう片方の人差し指と中指で顎を上に持ち上げる。
男にキスするのかよと軽い吐き気を催しつつ、生暖かいぬるついた口に齧り付き、
鼻を押さえ、胸部がふくらむよう息を吹き込む。
もう片方の人差し指と中指で顎を上に持ち上げる。
男にキスするのかよと軽い吐き気を催しつつ、生暖かいぬるついた口に齧り付き、
鼻を押さえ、胸部がふくらむよう息を吹き込む。
「今呼んでる」
「・・・・・ちょ、ええっ!?」
「別の場所でも襲撃があったらしい。部隊をおくってない場所で詳しい情報は不明だそうだ」
「・・・・・ちょ、ええっ!?」
「別の場所でも襲撃があったらしい。部隊をおくってない場所で詳しい情報は不明だそうだ」
胸と胸を結んだ線上で身体の中心に手の付け根を置き、圧迫する。
生憎、電気ショックなんて便利なものはヘリの中だ。
ぶぶぶぅと音がする。
焦ると口に息が上手く入らない。
チクショウ、人工呼吸の訓練をもっと真面目に受けときゃよかった。
生憎、電気ショックなんて便利なものはヘリの中だ。
ぶぶぶぅと音がする。
焦ると口に息が上手く入らない。
チクショウ、人工呼吸の訓練をもっと真面目に受けときゃよかった。
「1、2、3、4、5・・・・・」
息を吹き込み、胸を圧迫するサイクルを五回繰り返した後、ブルータスは息を吹き返した。
持っていたテープで手足を捕縛し、ブルータスの服を漁っているとやっと衛生と警備が到着した。
近衛兵との交渉で手間取ったらしい。
到着した後続に処理を任せ、襲撃地点へ急ぐことにした。
持っていたテープで手足を捕縛し、ブルータスの服を漁っているとやっと衛生と警備が到着した。
近衛兵との交渉で手間取ったらしい。
到着した後続に処理を任せ、襲撃地点へ急ぐことにした。
「襲撃される場所もしくは人物の心当たりはあるか?」
館の地理に詳しそうなミゼットへ聞く。
館の地理に詳しそうなミゼットへ聞く。
彼女は悲鳴を上げた。
「この状況では…カイ様!」
あの場違いだった少女か。
今回の会談は襲撃者には絶好の機会だった。
日本とエルブの要人を捕らえられれば旧革新派の有利に話は進む。
新世界に来て、数少ない友好国との関係悪化は日本にとっても手痛い問題となる。
「この状況では…カイ様!」
あの場違いだった少女か。
今回の会談は襲撃者には絶好の機会だった。
日本とエルブの要人を捕らえられれば旧革新派の有利に話は進む。
新世界に来て、数少ない友好国との関係悪化は日本にとっても手痛い問題となる。
「案内して欲しい。場所は判るだろうか?」
「はぃ。会長の寝室は西館3階の突き当たりです」
再開の後、寝室へ向かったらしい。
個人的な面談なのだろう。
「はぃ。会長の寝室は西館3階の突き当たりです」
再開の後、寝室へ向かったらしい。
個人的な面談なのだろう。
『此方23。此れより、ゲリラからアカマル救出に向かう。送れ』
『此方08。了解。現地人の許可が欲しい。取れ次第許可する。送れ』
『此方08。了解。現地人の許可が欲しい。取れ次第許可する。送れ』
無線機でニ、三状況を連絡する。
現地人、エルブ側の許可が必要だと言ってきた。
この城はエルブ国の領域かつ大使館でもある。
他国大使館で武力行使はたとえ正当な理由があってでも慎まなくてはならない。
将来に禍根を残すことに成りえるからだ。
現地人、エルブ側の許可が必要だと言ってきた。
この城はエルブ国の領域かつ大使館でもある。
他国大使館で武力行使はたとえ正当な理由があってでも慎まなくてはならない。
将来に禍根を残すことに成りえるからだ。
「我々も彼女の救出に向かいたい。
彼女は我々にとっても掛け替えのない人材であります。
宜しいでしょうか?」
彼女は我々にとっても掛け替えのない人材であります。
宜しいでしょうか?」
田中がスッと会話へ入ってきた。
空気を読む奴だ。
こういった問題は外務筋から言って貰ったほうがいい。
自衛官の口から話すと後日、マスコミが騒ぐ。
空気を読む奴だ。
こういった問題は外務筋から言って貰ったほうがいい。
自衛官の口から話すと後日、マスコミが騒ぐ。
「事態は一刻を争います。外務大臣、貴女の許可があれば私達は速やかに動き、事態を収集できます」
「戦闘許可を」
「・・・・・・許可します」
『此方23。通信は傍受していたな。許可が出た。
エルブ国外務大臣直々の命令だ。現場に居た外務省員の許可もある。
我々は要請に従い最寄の階段から寝室へ向かう。送れ』
『此方08。現在移動中。ゲリラへの発砲を許可する。
屋根と窓から部隊がアタックを掛ける。誤射に注意しろ。終わり』
「戦闘許可を」
「・・・・・・許可します」
『此方23。通信は傍受していたな。許可が出た。
エルブ国外務大臣直々の命令だ。現場に居た外務省員の許可もある。
我々は要請に従い最寄の階段から寝室へ向かう。送れ』
『此方08。現在移動中。ゲリラへの発砲を許可する。
屋根と窓から部隊がアタックを掛ける。誤射に注意しろ。終わり』
館中央の螺旋階段を駆け上る。
木造の天井からはゴツゴツと降りる音と、ヘリの羽音が聞こえてきた。
木造の天井からはゴツゴツと降りる音と、ヘリの羽音が聞こえてきた。
『此方23。廊下からの突入は其方が近い、突入にはフラッシュを使え。送れ』
『此方08。タイミングはどちらに合わせるか?送れ』
『外からでは中の様子が確認できん。君達に任せる。送れ』
『了解。送れ』
『了解。終わり』
『此方08。タイミングはどちらに合わせるか?送れ』
『外からでは中の様子が確認できん。君達に任せる。送れ』
『了解。送れ』
『了解。終わり』
『此方23、これより突入する』
(突入準備)
無言でドアに指を刺す。
ドアの左右に立ち、ドアノブをゆっくり廻す。
ノブは少し動いた後、かちりと止まった。
(駄目です)
「ノブを撃ち抜く、フラグ用意」
H&K USPを構え、工藤と半田が閃光手榴弾を取り出す。
この手榴弾は現地での暴徒鎮圧に持たされたものだ。
竹島戦での件で新たに“ゲリラ”対策に自衛隊員へ携行許可が出た非殺傷武器である。
領土で300人の犠牲(他国の兵士である)が出たにも拘らず、
未だ自衛隊には破砕手榴弾や焼夷手榴弾は許可されていない。
(突入!)
ノブを撃ち抜き、ドアを開ける。
「フラグ投下」
(突入準備)
無言でドアに指を刺す。
ドアの左右に立ち、ドアノブをゆっくり廻す。
ノブは少し動いた後、かちりと止まった。
(駄目です)
「ノブを撃ち抜く、フラグ用意」
H&K USPを構え、工藤と半田が閃光手榴弾を取り出す。
この手榴弾は現地での暴徒鎮圧に持たされたものだ。
竹島戦での件で新たに“ゲリラ”対策に自衛隊員へ携行許可が出た非殺傷武器である。
領土で300人の犠牲(他国の兵士である)が出たにも拘らず、
未だ自衛隊には破砕手榴弾や焼夷手榴弾は許可されていない。
(突入!)
ノブを撃ち抜き、ドアを開ける。
「フラグ投下」
バンッと大きな音がした後、キィーンと耳鳴りがする。
『目標4!窓際正面2、ソファー裏2、人質なし』
『此方08、突入する』
工藤と半田がフラグを投げ、爆発を確認してからH&K USPを構え突入する。
爆発直後、ステンドグラスが砕け散り、防弾装備に身を固めた特戦隊員が飛び込んできた。
音と閃光で棒立ちになっていたテロリストは一瞬で殲滅された。
『目標4!窓際正面2、ソファー裏2、人質なし』
『此方08、突入する』
工藤と半田がフラグを投げ、爆発を確認してからH&K USPを構え突入する。
爆発直後、ステンドグラスが砕け散り、防弾装備に身を固めた特戦隊員が飛び込んできた。
音と閃光で棒立ちになっていたテロリストは一瞬で殲滅された。
『此方08、敵影なし』
「此方23、敵影なし」
『此方09、警戒態勢解除。
ゲリラは撤退した。人質は無事、エルブ軍が救出した。作戦は成功だ』
「此方23、敵影なし」
『此方09、警戒態勢解除。
ゲリラは撤退した。人質は無事、エルブ軍が救出した。作戦は成功だ』
エルブ国大使館で行われた救出作戦は無事、終了した。
「うわー疲れた」
「ふぅ。やっと一服できるぜ」
「ふぅ。やっと一服できるぜ」
工藤と半田はやっと肩の荷が下りたと防弾チョッキを脱いでいた。
自衛隊の持つ装備の中で重いのが、小銃とチョッキである。
自衛隊の持つ装備の中で重いのが、小銃とチョッキである。
小銃は3キロは下らないし、マガジンや背嚢と違って服に取り付けたり外したり出来ず、
いつも手に持っていなければならない。
チョッキは本体の重量が3.8kg、これにセラミックプレート2枚挿入するとは7.4kg、
プレートを前後に挿入した場合の重量は約12kg。
スーパーで売っている米袋を10kgと考えるといかに重いか判る。
いつも手に持っていなければならない。
チョッキは本体の重量が3.8kg、これにセラミックプレート2枚挿入するとは7.4kg、
プレートを前後に挿入した場合の重量は約12kg。
スーパーで売っている米袋を10kgと考えるといかに重いか判る。
任務を終えたばかりの彼らの体は汗だくで、湯気が上がっていた。
「結局、残党処理に使われただけの気がするな。まるで道化だ」
顔に付いた汗を拭いつつ工藤が言った。
着任早々、ゲリラの襲撃と人質の救出。
新世界は厳しい世界なのかもしれない。
着任早々、ゲリラの襲撃と人質の救出。
新世界は厳しい世界なのかもしれない。
「政治的決断って奴だろうさ。
いきなり外の国からやってきた軍隊に人質救出されちゃあ、面目丸つぶれだろ」
「確かに。違いない。あの後、安否確認に行ったら面会謝絶だってね。
案外、救出失敗してたりしてな」
「はは。そうなってないことを祈るよ」
「任務おつかれさん。ほい、差し入れだ。隊長からだよ」
いきなり外の国からやってきた軍隊に人質救出されちゃあ、面目丸つぶれだろ」
「確かに。違いない。あの後、安否確認に行ったら面会謝絶だってね。
案外、救出失敗してたりしてな」
「はは。そうなってないことを祈るよ」
「任務おつかれさん。ほい、差し入れだ。隊長からだよ」
需品科の武雄(たけお)さんが冷えた缶を渡してくれた。
体を動かした後のジュースは美味い。
体を動かした後のジュースは美味い。
需品科―――――――。
需品科とは衣食住を担当する自衛隊の“嫁”である。
輸送科は飯を運ぶ、需品科は飯を作る。
炊事、洗濯、風呂、裁縫など日常生活に最も関係の深い隊である。
需品科とは衣食住を担当する自衛隊の“嫁”である。
輸送科は飯を運ぶ、需品科は飯を作る。
炊事、洗濯、風呂、裁縫など日常生活に最も関係の深い隊である。
武雄さんはキッチンの冷蔵庫番で時々俺達に良くしてくれるいい人である。
ちなみに男だ。
ちなみに男だ。
「どもっす」
「レッド隊長に礼言っといてください」
「ははは。直接言えよ」
「だってねえ?あの人怖いっすよ?昨日なんか、キックでテロリスト殺りかけてましたし」
「ちょ。トマトジュースかよ。ビールくれ」
「おいおい、俺たちは公務員だぞ。非番の日まで我慢しろ。それに隊のビールは不味いぞ」
「飲んでもちっとも酔えやしねぇ」
「まあな。アルコールが抜いてある特別性だからな」
「そんな特別いらねぇ!」
「レッド隊長に礼言っといてください」
「ははは。直接言えよ」
「だってねえ?あの人怖いっすよ?昨日なんか、キックでテロリスト殺りかけてましたし」
「ちょ。トマトジュースかよ。ビールくれ」
「おいおい、俺たちは公務員だぞ。非番の日まで我慢しろ。それに隊のビールは不味いぞ」
「飲んでもちっとも酔えやしねぇ」
「まあな。アルコールが抜いてある特別性だからな」
「そんな特別いらねぇ!」
まったく半田、おまえって奴は・・・