自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

359第269話 燃ゆる大洋(中編)

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第269話 燃ゆる大洋(中編)

1485年(1945年)12月7日 午前10時40分 レビリンイクル沖北北東575マイル地点

第58任務部隊より発艦した第1次攻撃隊204機は、艦隊より290マイル離れた位置で敵ワイバーン隊の迎撃を受けようとしていた。
空母アンティータム所属のF4Uコルセア24機は、同艦所属であるSB2Cヘルダイバー12機と共に進撃しつつあった。

「こちらグリーンチェロキー。各機に告ぐ。前方に敵の迎撃機を確認。制空隊は敵迎撃機に当たれ。護衛隊は対空艦攻撃隊の護衛に集中しろ。」

第1次攻撃隊の指揮官機から各機に向けて命令が伝えられる。
ウォルス・レリック少尉はアンティータム隊の第2中隊第1小隊の2番機としてこの作戦に参加していた。

「……前に出ていたベアキャットが速度を上げてる……あ、増槽を落としたぞ。」

レリック少尉は、制空隊の戦闘機が編隊から離れながら、胴体下の増槽タンクを落とす様を見て、いよいよ戦闘が始まると確信していた。
第1次攻撃隊に属する204機のうち、制空隊の役割を担うのはランドルフ、フランクリン、シャングリラ、レンジャーⅡ所属の戦闘機隊である。
リプライザルより発艦したF7F36機は、対艦攻撃を担うF4UとSB2Cを護衛するため、攻撃隊の周囲に張り付いている。
計84機の戦闘機が、敵機動部隊の上空で張り付く護衛騎を叩く役目を担っている事になるが、レリック少尉が見る限り、迎え撃つシホールアンル側は
制空隊よりも明らかに多い数のワイバーンを飛ばしているように見えた。

「おいおい……敵のワイバーンの数がやたらに多くないか?」

レリック少尉は、やや不安げな口調で呟く。
事実、シホールアンル側が飛ばした迎撃ワイバーンは、総数で100以上は居た。
制空隊が臨戦態勢を取りつつ、対艦攻撃隊と離れてから5分ほどで、制空戦闘が始まった。

「……やっぱり、こっち側の制空隊が少ない。こりゃ、漏れた敵ワイバーンが俺達に向かって来るな。」

レリック少尉は眉を顰めながら呟く。
案の定、制空隊の漏らした一部の敵ワイバーンは、攻撃隊に向けて突進しつつあった。 

数は約20以上はいるであろうか。
これに反応したリプライザル隊のF7Fの半数が編隊から離れ、迎撃に向かう。

「頼むぜ……ロケット弾を積んだコルセアじゃ満足に空戦が出来んからな。」

彼は、左右のエンジンをがなり立てながら敵機に向かう戦友達の奮戦を祈った。
レリックの属するコルセア隊と、シャングリラ隊のコルセアは、共に8発のロケット弾を搭載している。
今回の攻撃で出撃したロケット弾搭載機は計60機に上る。
この60機のコルセアは、アンティータム所属の艦爆隊12機と、レンジャー所属のAD-1スカイレイダー12機と共に敵の対空艦……駆逐艦や巡洋艦を
攻撃する事になっている。
第1次攻撃隊の主役は制空隊であるが、真の主役はこの84機の対艦攻撃隊と言っても過言ではない。
第2次攻撃隊の損害を少しでも抑えるためには、レリック少尉を始めとする対艦攻撃隊が奮闘する必要があった。

「敵機接近!注意しろ!!」

敵騎の大半はF7Fが引き止めくれたものの、8騎が強引に突破して攻撃機隊に向けて突進して来る。
8騎の敵は、全てコルセア隊に向かいつつあった。
あっという間に、第1中隊に属する第2小隊4機に敵が接近して来る。
第2小隊の各機は機首を敵に向けるや、両翼の機銃を放つ。
現在、艦隊航空隊に配備されているF4Uは3種類あり、従来通り、12.7ミリ機銃を装備したF4U-4、武装を20ミリ機銃に強化した
F4U-4B、夜間作戦行動も可能なように改造されたF4U-4Nがある。
アンティータム隊はF4U-4を装備しており、第2小隊は両翼の12.7ミリ機銃6丁から火を噴かせる。
機銃弾の一部は、相対したワイバーンに命中したが、防御障壁にあっさりと弾き返される。
ワイバーンが第2小隊の抵抗を嘲笑うかのように、その凶悪な咢を開け、幾つもの光弾を連射した。
12.7ミリ弾と光弾が交錯し、互いがすれ違った。
直後、被弾したコルセア2機が急速に速度を落とし始め、うち1機は、機首部分から黒煙を吐きながら墜落して行った。
敵ワイバーンは2機ずつに散開するや、思い思いの方向からコルセア隊に襲い掛かる。
攻撃隊の周囲に張り付いていたF7Fが敵に向かい、機銃を乱射しながら撃退しようとする。
敵ワイバーンは、攻撃隊に張り付いている残りのF7Fの迎撃であっさり逃げ散ったかと思われたが、その直後には、別のワイバーン10騎以上が接近していた。 

この10騎のワイバーンは、先に離脱し、迎撃に当たったF7F隊を強引に跳ね除けて対艦攻撃隊の襲撃を行っていた。
攻撃隊はこの18機のワイバーンに翻弄され始めた。
F7Fの1機が、一連射を放って離脱するワイバーンの後ろに張り付き、20ミリ機銃弾を叩き込む。
85年型ワイバーンの防御障壁はなかなかに強力で、20ミリ機銃弾を数発受けても耐えていた。
深追いが出来ないF7Fのパイロットは、中途半端な攻撃しかできぬ事に歯噛みしながらも気を翻し、攻撃隊の護衛に付いて行くが。
別のワイバーンはその隙を衝いて攻撃隊に襲い掛かる。
1機のコルセアが背後からワイバーンの光弾を食らった後、胴体中央部と右主翼の付け根から白煙を吹き出した。
コルセアは機体を大きくよろけさせながらも、編隊に続行しようとするが、更に別のワイバーンの放った光弾が左主翼に突き刺さる。
頑丈なコルセアも、何十発もの光弾を受けては耐え切ることが出来ず、パイロットの必死の操作も空しく、機首を海面に向けて墜落していく。
ワイバーンに跨る竜騎士は、撃墜したコルセアにちらりと視線を送った後、更に戦果を拡大すべく攻撃隊に向けて突進していく。
そこに、護衛のF7Fが襲い掛かり、前方上方から20ミリ機銃を浴びせた。
このワイバーンは既にF7FやF8Fに幾度か銃撃を受けていたため、魔法防御の耐用限界が近づいていた。
F7Fの射撃はもろに敵ワイバーンへ命中していた。
その瞬間、耐用限界に達した防御壁が一瞬の輝きを発して崩され、複数の機銃弾がワイバーンと竜騎士に命中して体を引き裂いた。
12.7ミリ弾よりも格段に威力が違う20ミリ弾を10発以上も受けては、さしもの最新鋭のワイバーンとはいえ、ひとたまりもなかった。
護衛戦闘機隊がワイバーンの攻撃に対応し、その隙を狙って第1次攻撃隊にワイバーンが襲い掛かるという事が何度も繰り広げられる。

交戦開始から12分が経過した頃には、対艦攻撃隊はF4U9機、SB2C3機を失っていた。

敵ワイバーン隊の戦いぶりには鬼気迫るものがあったが、その奮闘は完全に実る事は無かった。
攻撃隊は敵ワイバーンの攻撃を受けつつも、編隊を崩さぬまま進撃を続けた。
そして、午前10時58分。

「……見えたぞ。敵艦隊だ!」

レリック少尉は、探し求めていた物をようやく見つけることが出来た。
攻撃隊の眼前には、輪形陣を組んだ大艦隊が高速で航行中であった。
輪形陣は眼前の物以外にもあり、北東方面と南西方面にも似たような艦隊が航行している。 

「攻撃隊指揮官機より各機へ。敵機動部隊発見、これより攻撃に移る!」

第1次攻撃隊指揮官を務めるアンティータム艦爆隊隊長から通信が入る。

「シャングリラ隊、アンティータム隊のF4Uは輪形陣外輪部の敵駆逐艦。アンティータム隊のSB2C、レンジャー隊のA-1Dは
巡洋艦を攻撃せよ!」

命令が下された直後に、直属の中隊長より細かな指令が下される。

「聞いての通りだ!俺達は輪形陣左側外輪部に殴り込みを掛ける。第1小隊と第2小隊は左側陣形中央側の駆逐艦、第3小隊は
陣形後方の駆逐艦を叩け!」
「了解!」

アンティータム所属のF4Uが一斉に高度を下げ始めた。
レリックの属する第2中隊は、アンティータム隊に習って降下を始めた第1中隊の後を追っていく。
攻撃態勢に入った米艦載機隊に対して、ワイバーンは尚も追撃をかけて来る。
しかし、そこに護衛のF7Fがつっかかり、ワイバーンを攻撃隊から引き剥がしていく。
対艦攻撃隊の残存機72機は、護衛戦闘機隊の援護を受けつつ、艦爆隊は高度4000付近を維持したまま接近し、戦闘爆撃機隊は
低高度に降下した後、猛速で敵艦隊に殺到していった。
レリックの小隊は、輪形陣の外側を行く駆逐艦の4番艦に狙いを定めた。
4機のコルセアは単横陣の隊形で敵艦に突進していく。
敵艦からは既に激しい対空射撃が放たれており、コルセア隊の周囲に高射砲弾が炸裂していく。

「高度30メートル以下まで下げろ!敵に食われるぞ!!」

小隊長が無線機越しに指示を飛ばして来る。
レリックは彼の指示通りに動き、操縦桿をゆっくり倒していく。
超低空の為、最大速度は発揮できないものの、時速600キロ近い高速で低空を這うのはかなりきつい。
高度が1メートル下がるたびに、彼は心臓の鼓動が早くなるように感じる。
敵駆逐艦から発せられる対空砲火はなかなかに正確であり、機体のすぐ後ろや前方上方で炸裂する。
破片が機体に当たる金属音が鳴り、彼はその都度、体を震わせる。 

(くそ!落とされてたまるか!!)

レリックは、心中でそう思う事で、じわじわと広がる恐怖感を吹き飛ばそうとする。
彼は眼前の敵艦を睨み据えた。
最初はこじんまりとした陰に過ぎなかった敵駆逐艦も、今では姿形がはっきりと分かるまでになっている。
敵艦は、艦首に白波を蹴立て、高速で洋上を驀進している。
艦の前部と中央部、後部の砲塔はひっきりなしに火を噴いている。その敵艦の中央部から唐突に、魔道銃が放たれて来た。
敵艦から放たれた光弾がレリックの小隊目掛けて飛んでくる。
機体の右や左にカラフルな光弾が飛び去ると同時に、一度だけ機体が振動する。

「被弾したか……致命傷には至っていないようだが。」

レリックは幾らか安堵した口調で呟くが、彼の口はやや震えていた。
敵艦との距離が徐々に縮まっていくに従い、飛来する光弾の量が激しくなっているように感じられた。
だが、敵艦の光弾は4機のコルセアの接近を阻む事は出来ず、気が付くと、レリックは敵艦の右舷側甲板に目掛けて、8発の
5インチロケット弾を放っていた。

「これでも食らえ!」

彼はそう叫んだ後、機を右に旋回させて離脱を図った。
その時、機体に強い衝撃が加わった。

「!?」

レリックは驚愕の表情を浮かべたが、その次の瞬間には、機体は大きくバランスを崩し、右斜めの状態で海面に突っ込もうとしていた。

巡洋艦ウィリガレシは、輪形陣左側の位置に配置され、そこで迫り来る米艦載機隊相手に対空射撃を行っていた。

「まずい!エントレクにコルセアが……」 

艦橋で指揮を執っていたウィリガレシ艦長は、左舷側400リンル(800メートル)を航行する駆逐艦エントレクに敵機が接近するのを見て、やられると思った。
直後、コルセアからエントレクに向けてロケット弾が撃ち込まれる。
エントレクの射弾は、発射を終えて避退に入っていたコルセア1機を捉える。
光弾に捉えられた逆ガル翼の敵機は、右斜めに気を傾けながら海面に激突した。
同時に、ロケット弾がエントレクに飛来する。
ロケット弾の大半はエントレクを飛び越えるか、または至近に着弾して空しく海水を散らすだけに終わるが、それでも5発が中央部と後部に命中し、
爆炎が吹き上がった。

「エントレク被弾!」

ロケット弾攻撃を受けたエントレクは、速力を衰えさせぬまま対空戦闘を続けるが、後部主砲1基と、中央部付近の対空魔道銃は沈黙していた。
エントレクの被弾がきっかけであったかのように、輪形陣外輪部の駆逐艦群は次々とロケット弾を浴びせられた。
エントレクの前方を航行していた駆逐艦ヴィンヒノティは前部付近と艦橋にロケット弾が突き刺さった。
前部の命中弾は、前部付近にあった主砲2基を破損させ、艦橋に命中したロケット弾は、爆発で艦長を含む艦橋要員多数を殺傷していた。
ヴィンヒノティ被弾と同時に、エントレクの後方に居た駆逐艦シタリヲも攻撃を受けるが、こちらは事前にコルセア2機を撃墜した事もあってか、別の2機の
攻撃も全部かわし切り、損傷を受ける事は無かった。

「艦長!艦隊の左側でも敵機が味方艦を攻撃しています!」
「二手に分かれたコルセアの片方が暴れているようだな……」

艦橋に響く見張りの声を聞いた艦長は、悔しげに呻きながらも、視線はコルセアとは違う機体に向いていた。
コルセアのロケット弾攻撃は一瞬のうちに終わり、ウィリガレシの配置された右側外輪部だけでも駆逐艦4隻が被弾炎上し、うち1隻が機関部に損傷が及んで
落伍し始めた。
だが、米艦載機隊の攻撃はコルセアのロケット弾攻撃だけに留まらない。
艦長は、ウィリガレシの右舷上方から10機以上の敵機が接近しつつある事に気付いていた。

「……砲術長!目標を右舷上方より接近する敵機に定める。使用可能な砲を全て奴に叩き付けろ。」
「了解です!」 

伝声管越しに、砲術長は張りのある声で返答する。
ウィリガレシは、指向可能な6基の61口径4ネルリ連装両用砲を敵編隊に向けた直後、発砲を開始した。
フリレンギラ級巡洋艦の改良型として建造されたウィリガレシ級巡洋艦は、砲の発射速度も若干早くなっており、各砲塔は5秒おきに交互撃ち方を
繰り返す形で弾幕を張った。
敵編隊の周囲に高射砲弾が炸裂し、幾つもの黒煙が湧き出る。
ロケット弾攻撃を受けながらも、未だに戦闘可能な駆逐艦や、前方を行く戦艦ロンドブラガも高射砲を撃ちまくる。
敵編隊の周囲に咲く黒煙の量は少なくはなく、位置もなかなかに近い。
シホールアンル艦の射撃精度は高いと言えた。
だが、敵編隊は至近に高射砲弾が炸裂しようが、何機かが爆風に煽られてよろめくだけで、1機も落ちる気配が無い。

「……おかしいぞ。ヘルダイバーなら、とっくに2機か3機は落ちて居る筈なのだが……」

艦長は首を傾げながら、望遠鏡で高空から迫りくる敵機を見据える。

「なに?あの敵機………いつものヘルダイバーではないぞ。」

彼は、望遠鏡越しに見える敵機の形が明らかに違う事に気が付いた。
ヘルダイバーは全体的にごつい物の、主翼や尾翼の端は丸く、機体も大きく見える。
ところが、今見る敵機は所々が角張っており、機体もさほど大きく無いように感じられる。
その時、艦長は3か月前に、アメリカ海軍が新型の攻撃機を実戦投入して来たことを思い出した。

「まさか……あいつが、うわさに聞くスカイレイダーと言う奴か?」

彼がそう呟いた時、唐突に1機の敵機が至近で高射砲弾の炸裂を食らった。
炸裂は敵機のすぐ側で起こった。
敵機は爆発で右主翼を吹き飛ばされた後、切断面から火を噴きながら真っ逆さまになって墜落して行った。

「敵1機撃墜!」 

見張り員の声が艦橋内に響くが、その頃には、10機前後の敵編隊はウィリガレシの左舷側上方……それも、顔を見上げなければ見辛い程の
位置にまで接近していた。

「あれだけ派手に撃ちまくったにもかかわらず、たった1機しか落とせんとは!」

艦長が、敵機の打たれ強さに思わず声を上げた直後、先頭の敵機が機体を翻した。
その機首は、ウィリガレシに向けられていた。

「敵機急降下!高度2000グレル!!」
「やはり、こっちを潰しに来るか!」

艦長は眉間に皺を寄せながら、艦橋のスリットガラスに顔を張り付かせんばかりに近づけ、回避運動のタイミングを計った。
ウィリガレシの61口径4ネルリ連装砲が盛んに火を噴く。
敵機にはウィリガレシや、他の僚艦から放たれる砲弾や魔道銃の光弾も注がれる。
だが、分厚い十字砲火を敵機は無視するかのように突っ込んで来る。
上空に異様な音が鳴り始めた。

「この音は……今までに聞いた事に無い音だ!」

艦長は、ヘルダイバーが発する音とは違う音に困惑顔を浮かべつつも、視線は敵機から離さぬまま対空戦闘の指揮に専念する。
敵機との距離が1000グレルを切った所で魔道銃が一斉に放たれた。
指向可能な魔道銃全てが撃ち放たれ、ウィリガレシの上空に光弾の傘がかかる。
流石に、これだけ大量の光弾と高射砲弾を撃ちまくれば、先頭の敵機はひとたまりもないだろうと艦長は思った。
だが同時に、これまでの海戦で得た記憶が脳の奥底から蘇る。

(クソ!防空巡洋艦であるウィリガレシが、敵機の初撃を食らってたまるか!!)

彼は、被弾損傷という文字を内心で打ち消しながら、敵機との距離を測り続ける。 

「敵機尚も降下!550グレル!!」

その瞬間、艦長は大音声で命令を下した。

「面舵一杯!」

艦長の命令が下るや、すぐさま操舵室の航海長から操舵員に命令が伝えられ、操舵員はあらん限りの力を振り絞って舵輪を回す。
敵の先導機は、ヘルダイバーとは違う異質の轟音を発しながら急降下を続ける。
艦長は接近して来た敵機の姿をまじまじと見つめた。

「何だあいつは……主翼ではなく、胴体にダイブブレーキが付いているのか!」

艦長は敵機の奇妙な特徴に気付き、首を捻った。
敵機が爆弾を投下する直前、ウィリガレシは艦首を右に振り始めた。
ウィリガレシは敵機の懐に飛び込む形で回避運動を行っているため、艦長の視界から敵機が隠れていく。
完全に隠れ切る前に、敵機は高度300グレル(600メートル)で爆弾を投下した。
その時の光景は、これまで見た物とは明らかに違っていた。

「な……今、胴体だけではなく、主翼からも何か離れたような気が」

彼がそう呟いた瞬間、敵機はエンジン音をがなり立てながらウィリガレシの左舷側後方に飛び抜けて行った。
それと同時に、ウィリガレシの右舷側艦首横の海面に高々と水柱が吹き上がった。
水柱が立ち上がり、艦首付近から鈍い衝撃が伝わったと思いきや、左舷側からも衝撃が伝わって来た。

「!?」

彼は思わず、目を見開いた。

「左舷前方及び、右舷側後部に至近弾!敵機は爆弾3発を投下!」
「3発だと!?」 

艦長は、その報告が信じられなかった。
だが、艦長の動揺をよそに、先導機の後続は容赦なく突っかかって来た。
2番機は1番機の投弾位置と自らの射点を修正しながら爆弾を投下して来たが、この爆弾もウィリガレシの後部付近に着弾しただけに留まった。
続く3番機の爆撃も同様の結果に終わったが、ウィリガレシの艦上では、1機当たり3発という、反則ともいえる敵機の搭載量にあちこちで
驚きの声が上がっていた。
4番機は投弾を行う直前に、光弾の集中弾を浴びて撃墜されたが、5番機がその仇討ちとばかりに、先に投弾した僚機よりも更に低い
高度300メートルまで急降下してから爆弾を投下した。
スカイレイダーの投下した3発の爆弾のうち、1発は右舷側に外れ、1発は左舷側に空しく海水を吹き散らしただけに終わったが、最後の1発は
ウィリガレシの後部艦橋に命中し、爆弾と共に夥しい破片を噴き上げた。
被弾の瞬間、ウィリガレシの艦体は激しく揺れ動き、艦長は足を踏ん張る暇もなく、床に転がされてしまった。
彼がやられたと思う暇もなく、6番機が轟音をがなり立てながら爆弾を投下して来る。
エンジン音が鳴り響いた直後、艦橋の前で火柱が吹き上がった。
敵機の爆弾が前部に配置された主砲に命中し、これを吹き飛ばしたのだ。

「まずい!火力が!!」

彼は驚愕の表情を浮かべた。
すぐに被害報告の詳細を聞き出そうとするが、米艦載機隊の攻撃はそれすらも阻む勢いで容赦なく続いていった。

第4機動艦隊第2群旗艦であるプルパグントの艦橋上で、第2群の指揮官であるルエカ・ヘルクレンス中将は敵機の
爆撃を受けるウィリガレシを
固唾を呑んで見守っていた。

「ウィリガレシがやられている……あの調子ではいずれ……」

いつもは楽天的な口調で話すヘルクレンス中将も、防空艦であるウィリガレシがほぼ一方的にやられている状況では、
言葉を満足に紡ぐ事が出来なかった。
米軍機は、既に1発の爆弾をウィリガレシに命中させていた。
爆弾は艦前部の第1砲塔に命中してこれを粉砕している。 

防空巡洋艦であるウィリガレシは、前部甲板と後部甲板に2基ずつ。左右両舷に2基ずつ、計16門の4ネルリ砲を
有している他、魔道銃も多数装備している。
ウィリガレシは損傷を負った物の、戦闘はまだまだ続行できる。
だが、敵艦載機はウィリガレシに立ち直る暇を与えぬとばかりに、急降下で突進を続ける。
6番機が低高度で爆弾を投下して命中させたことを見習ってか、7番機も6番機とほぼ同じ高度で爆弾を投下する。
ウィリガレシの左舷側海面に水柱が立ち上がり、艦の中央部が一瞬だけ隠れる。
その直後、前部甲板にまたもや爆発が起こり、黒煙と共に無数の破片が吹き上がる。
ウィリガレシの右舷側後部にも至近弾炸裂を現す水柱が吹き上がる。

「ウィリガレシ、更に被弾!対空射撃に支障を来している模様!!」

見張り員の声が聞こえてくるが、ヘルクレンスはただただ、心の中でウィリガレシがこれ以上の損害を受けないように
祈るばかりであった。
だが、その祈りも叶わなかった。
8番機の爆弾がウィリガレシに落下して来た。
爆弾は、1発が後部甲板に命中した他、もう1発が左舷側中央部に落下した。
この瞬間、ヘルクレンスは左舷側中央部に配置された両用砲の内、後部艦橋に近い箇所にある両用砲が爆炎と共に
粉砕されるのを目の当たりにしていた。
ウィリガレシはこの時点で、両用砲12基を失った事になるが、ウィリガレシはまだ戦えると言わんばかりに、残った
両用砲と魔道銃を猛然と撃ちまくる。
それが功を奏したのか、9番機が投弾直前になって右主翼を吹き飛ばされた。
しかし、ウィリガレシの挙げた戦果はそれだけであった。
10番機と11番機は、6番機よりも更に低い、約100グレル程の高さまで降下してから爆弾を叩き付けた。
10番機の爆弾は、1発が後部甲板に命中した。
爆弾は後部1番両用砲と2番両用砲の丁度真ん中あたりで命中した。
爆発の瞬間、甲板の板材と砲塔の側面らしき破片が吹き上がった。
しばしの間を置いて、11番機の投下した爆弾1発が中央部付近に命中し、派手に爆炎が吹き上がる。
その直後、ウィリガレシの左右両舷に11番機の外れ弾が落下して水柱が立ち上がり、艦を覆い隠した。
水柱が晴れると、そこには、艦体から濛々たる黒煙を吐きながら、のろのろと航行するウィリガレシの姿があった。 

「ウィリガレシ、速力低下!大損害を受けた模様!!」
「ああ。言われずとも分かっているさ……」

見張りの報告に、ヘルクレンスは眉を顰めながらそう独語した。
ウィリガレシに対する米軍機の空襲は、僅か3分と経たずに終わりを告げたが、ウィリガレシはこの間、実に6発の爆弾を
艦体に受けていた。
ウィリガレシは、回避運動を行いながら爆撃をかわそうとしたものの、1機当たり3発と言う常識外れの搭載量を誇る
新型機は、ウィリガレシに容赦なく爆弾を叩き付けた。
爆弾は前部に2発、中央部に2発、後部に2発と、満遍なく命中しており、前部と後部の61口径4ネルリ連装砲は全て粉砕された。
また、敵弾は最上甲板を貫通し、艦深部の機関部に達して爆発したため速度が低下、ウィリガレシは艦隊速度である15リンルを
発揮できぬまま落伍しつつあった。

「あの様子じゃ、もはや戦う事は出来んな。」

ヘルクレンスはそう口ずさみながら、被弾部から黒煙を吐いて急速に速度を落としていくウィリガレシを見つめ続ける。

「スカイレイダーか……聞きしに勝る化け物だ。連中の第2次攻撃には、あの新型機が大量に混じっている可能性が高い。となると……」

彼は、諦めの混じった笑みを浮かべながら、脳裏に浮かんだ艦隊の末路が現実の物になりつつある事を確信していた。


午前11時32分 

第58任務部隊より発艦した第2次攻撃隊は、第1次攻撃隊の攻撃終了から25分後に敵機動部隊を発見した。

「よし!先発隊の連中はきっちり仕事をこなしてくれたようだ。」

空母サラトガ攻撃機隊指揮官兼第2次攻撃隊指揮官を務めるフランシス・ゲイリー中佐は、雲の隙間から見える敵艦隊の姿を見るなり、満足気な口調で呟いた。
眼前には、小粒ながらも幾つもの艦影が見える。 

その影の群れは輪形陣を組んでおり、中央には竜母と思しき大型艦が最低でも4隻は確認できる。
その周囲を護衛艦が取り囲んでいるが、何隻かはうっすらとだが、煙を吐いている。
艦隊のやや後方には、複数の濃い黒煙が立ち上っていた。
数えてみると、黒煙の数は3つほど確認できる。
第1次攻撃隊指揮官からは、

「敵迎撃騎58騎撃墜。護衛艦9隻に損傷を与えり。うち、駆逐艦2隻、巡洋艦1隻は大破相当の損害を与えり。我が方の損害少なからず。」

という戦果報告が伝えられていた。
ゲイリー中佐は、第1次攻撃隊は敵機動部隊の上空で激しい戦闘を展開しており、この戦果報告は幾らか割り切ったほうが良いと考えていた。
だが、第1次攻撃隊の報告の通り、敵機動部隊は最低でも3隻の船に甚大な損害を負わされているようだ。

「隊長!右上空に敵騎!」

唐突に、戦闘機隊指揮官機から通信が入る。
ゲイリー中佐はその方向に顔を向けた後、無意識のうちに舌打ちをしていた。

「1次の連中も相当頑張ってくれたようだが。やはり、完全に制空権を確保するのは難しいか。」

彼は淡々とした口調で呟きながら、右上方に展開している敵騎の数を数えていく。

「……大雑把に見積もって、100騎前後か。1次の連中は120騎前後の敵と渡り合い、その半数近くを落としたようだが。航空戦に関しては、
戦果は話半分か……仮にあの報告が真実だとしても、敵は温存していた予備を投入して俺達を迎え撃っているのかもしれんな。」

ゲイリー中佐は敵の迎撃に対応するため、第2次攻撃隊の護衛として随伴して来た戦闘機隊を向かわせる事にした。

第2次攻撃隊は、TG58.1のリプライザルからF4U20機、A1D36機。
ランドルフからF8F16機、A1D36機、フランクリンからF8F16機、A1D36機。
TG58.3のヴァリー・フォージからF6F24機、SB2C24機、TBF18機。
グラーズレット・シーからF4U24機、A1D36機、サラトガⅡからF7F32機、A1D32機が発艦している。
このうち、戦闘機は132機を数える。 

数的には敵とほぼ同等か、勝ってはいるものの、第2次攻撃隊は第1次攻撃隊と違い、計208機の攻撃機を守りながら戦わなければならない。
そのため、敵ワイバーンに向けられる戦闘機は、せいぜい90機程になる。
残りは攻撃隊の周囲で、戦闘機の迎撃を突破したワイバーンを追い払う仕事が待っている。

「……ヴァリー・フォージ隊とランドルフ隊は攻撃隊の護衛を行って貰う。残る戦闘機隊は制空隊として敵迎撃機の掃討に当たれ。」

ゲイリー中佐の指令が下ると、各戦闘機隊はそれぞれの持ち場に付いて行く。
ヴァリー・フォージ隊のF6Fとランドルフ隊のF8Fは、4機ずつの小編隊に分散しながら攻撃機隊の周囲に張り付いて行く。
残る92機のF8F、F4U、F7Fは編隊から離れ、右上方のワイバーン隊に向かって行く。

午前11時39分には空中戦が始まった。
交戦空域は敵機動部隊から南東に20マイルほど離れており、その様子は敵機動部隊の艦上からも、うっすらとだが確認できた。
エンジンを使用している米軍機は、空戦時に飛行機雲を発するため、上空には無数の白い帯が縦横無尽に駆け巡っているようにも見える。
敵ワイバーン隊の大半は、米戦闘機隊との戦闘に忙殺されたが、18騎は戦闘機の妨害を突破して攻撃機隊に襲い掛かって来た。
敵ワイバーン隊の指揮官は、指揮官のワイバーン隊を2騎1組の小編隊に分散させ、米艦載機隊の四方八方から攻撃を行わせた。
これに護衛のF6FとF8Fが対応するが、全ての攻撃に対応する事は難しく、戦闘の過程でA1D2機とTBF2機、SB2C3機を撃墜された他、
A1D8機が被弾し、うち5機が攻撃を諦めて帰投し始めた。
この18機のワイバーン隊は、寡兵にもかかわらず7機の攻撃機を撃墜するという戦果をあげた物の、ワイバーン隊も7機が撃墜された上に、護衛の
F6FとF8Fの迎撃も凄まじいため、最終的には攻撃続行を断念せざるを得なくなった。


午前11時50分。米空母群から発艦した第2次攻撃隊は、温存していたワイバーンも含めた計129騎もの迎撃隊の攻撃も跳ね除け、遂に艦隊の
至近にまで迫って来た。
敵攻撃隊の半数は艦隊の西側……各艦艇の艦尾側を迂回するような形で進みつつあった。

「接近中の敵編隊が分離!半数が我が艦隊を迂回しつつあります!」
「あと少しで、あの怪物どもが襲い掛かって来る。俺の艦隊は、先の空襲で損傷艦が多い……この傷だらけの護衛艦群がどれだけの敵機を落としてくれるか。」

ヘルクレンスは司令官席に座ったまま、敵編隊の空襲に戦々恐々としていた。 

敵の先発隊による空襲で、第2群は沈没艦こそない物の、対空の要でもあった巡洋艦ウィリガレシを始めとする護衛艦10隻が被弾し、ウィリガレシと
駆逐艦2隻は大破炎上し、今も懸命の消火活動に努めている。
他の7隻は先の3隻と比べ、比較的損傷が軽く押さえられた上に、被弾箇所が上部構造物だけに留まったために戦闘続行は可能であった。
だが、対空火力は著しく減少しており、敵編隊は第1次空襲よりも幾分楽な状況で第2群を襲える状況となっている。
ヘルクレンスとしては、まさに憂鬱とも言える状況である。

「だが、第2群がやられたとしても、残りの竜母群はまだ健在だ。あとは、味方が俺達の代わりに敵空母への第3次攻撃を行うだろう。ここは、1機でも
多くの敵艦載機を撃ち落とし、味方の負担を和らげなければ。」

悲壮な決意を胸に、ヘルクレンスは望遠鏡越しに敵編隊を見据える。
右舷側に見える敵編隊は、別働隊が攻撃位置に付くまで待機を続けるつもりか、艦隊に向かってくる事無く延々と旋回を繰り返している。
だが、見えている敵編隊は高空と低空に別れている。
別働隊が位置に付けば、敵編隊は機首を向けて襲い掛かってくることは間違いない。

「………来るなら来い。アメリカ人。」

ヘルクレンスは、敵を睨み付けながらそう言い放つ。
彼の言葉に応えるかのように、敵編隊の一部が艦隊に向かい始めた。
最初は10機程の小編隊が向かい始めただけであったが、すぐに後続集団が機首を向ける。
右舷側に展開している敵編隊は、高空に40機程、低空に50機程である。
輪形陣外輪部の駆逐艦が高射砲を撃ち始めた。
しばし間を置いて、砲弾が敵機群の周囲に炸裂し始める。
右舷側外輪部に展開している駆逐艦7隻は、向けられるだけの砲を動員して射撃を行っているが……

「明らかに密度が薄い……ウィリガレシが抜けた穴は大きいぞ。」

ヘルクレンスは苦痛を感じるような口ぶりで言う。
ウィリガレシが健在であったときは、今以上に弾幕が形成出来ていた。
だが、駆逐艦部隊の射撃だけではどうしても弾幕が薄い。 

「もともと、ウィリガレシが健在であったとしても対空火力の薄さは懸念されていた。リーシウィルム沖海戦で5隻のマルバンラミル級巡洋艦を失って
いなければ、もっとマシな対空戦闘が出来たものだが……!」

ヘルクレンスは歯噛みしながら呻く。
リーシウィルム沖海戦では、第4機動艦隊から抽出したマルバンラミル級巡洋艦5隻が、一夜にして全滅するという悲劇が起きていたが、それ以降、
第4機動艦隊は慢性的な対空防御の不足に陥っていた。
元でさえ対空火力は薄かったのだ。
それが、先の第1次攻撃で更に薄くされたため、敵機の阻止は最初から絶望的とも言える状態になっていた。

(あの状態じゃ、5機……いや、2、3機落とせるかどうかもわからんぞ!)

ヘルクレンスは、やり場のない怒りに震えそうになるが、敵機との距離は急速に縮まっていく。
高空から来る敵機に、戦艦マルブドラガも砲撃を始める。
流石は戦艦だけあって、対空砲火の密度は幾らか厚くなった。
ここで、プルパグントを含む竜母4隻も砲撃を始める。
主力たる竜母群も対空射撃に加わった事で、輪形陣上空の対空弾幕は、ようやくまともに見えるような形になった。
高空の敵編隊が輪形陣外輪部を突破した時、1機が高射砲弾の破片を至近で受けた直後、機首を海面に向けて墜落し始めた。
続いて、もう1機が右主翼から火を噴き始め、最初はゆっくりと高度を下げ始めるが、被弾箇所から小爆発が起こると、主翼が根元から折れた。
敵機は錐揉み状態となって落ちていく。
ここで、高空の敵編隊も二手に別れた。

「敵30機、前方のマレナリイドに向かう!敵は新鋭のスカイレイダーの模様!」
「敵約20機、本艦に向かいつつあり!敵機はヘルダイバー!」

見張り員が2つの報告を伝えて来た。
ヘルクレンスは、横目で隣に立つ艦長を見つめる。
艦長は固く口を閉じたまま、ガラス越しに右舷斜め前方より接近しつつある敵に目を向けている。

「低空より、敵雷撃機接近しつつあり!敵機の大半はスカイレイダーの模様!」

別の報告が伝わるや、ヘルクレンスは目を細める。

「敵機、本艦に向けて降下開始!高度2000グレル!」

投下地点に到達した敵機が、プルパグントに向けて急降下を開始したようだ。
プルパグントの舷側に設置された高射砲が、接近するヘルダイバーに向けて激しく砲撃を繰り返す。
高射砲の装填手は、射撃訓練よりも早い動作で砲弾を装填しているのか、砲の発射感覚がいつもよりも短いように感じられた。
敵機が1500グレルまで下がると、それまで沈黙を保っていた魔道銃が一斉に光弾を弾き飛ばす。
無数の色鮮やかな光弾が、冬晴れの大空に舞い上がる。
右舷側直上から突っ込んで来るヘルダイバー群は、頭からこの弾幕に飛び込む形となった。
1番機が高度1000グレルまで降下した所で機首に光弾の集中射を受け、真っ白な白煙を引き始める。
直後、別の光弾が左主翼の付け根に命中し、被弾箇所から紅蓮の炎が吐き出された。
操縦不能に陥ったヘルダイバーは、投弾コースを大きく外れ、プルパグントの右舷側100メートルほどの海域に向かって墜落していった。
2番機が先導機の吐き出した黒煙を突っ切る形で急降下を続けて来る。
光弾の雨嵐の前に2番機も間もなく撃ち落されるであろうと思われたが、光弾は敵に致命弾を与える事が出来ないのか、はたまた全て外れてしまっているのか。
2番機は尚も降下を続ける。

「面舵一杯!」

プルパグントの艦長が声高に命じた。
ここは敵機の懐に飛び込む形で、爆撃の照準を狂わせようと考えたのであろう。

(避けられるか?)

ヘルクレンスは心中でそう思ったが、ここはプルパグント乗員の腕を信じるしかない。
上空には、ヘルダイバーの発する甲高い轟音が鳴り響いている。
幾度も聞き慣れた悪魔の雄叫びだ。
高射砲や魔道銃に張り付いている将兵は、このけたたましいダイブブレーキの轟音に心を折られまいと、敵愾心を燃やしながら砲や魔道銃を撃ちまくる。
2番機の轟音が極大に達したかと思われた時、プルパグントの艦首が大きく右に回り始めた。
新鋭の大型竜母が15リンル以上で回頭し、艦体が左に傾く。
米艦爆がエンジン音をがなり立てながらプルパグントの左舷後方に飛び抜けていく。
直後、左舷側艦首前方付近で水柱が吹き上がった。 

水中爆発の衝撃がプルパグントの艦体を叩き、艦が僅かに振動する。
続いて突入して来た3番機、4番機が、開かれた爆弾倉から相次いで1000ポンド爆弾を投下していく。
主翼のダイブブレーキを展開しながら低空まで降下するヘルダイバーの姿は、何度見ても迫力があり、ヘルダイバー自身が発する轟音が強烈な威圧感を醸し出す。
爆弾が艦尾側後方の海面と、右舷側後方海面に叩き付けられ、海水が勢いよく跳ね上がる。
5番機が高度1000グレルにまで降下した所で光弾の集束弾を受け、機体が勢いよく炎上し始めた。
5番機は真っ赤な炎を吐き出しながらも、プルパグントに突入を図るべく、そのままの勢いで降下を続けたが、高射砲弾の直撃を受けて散華した。

「艦尾方向からも敵機接近!急降下!!」

対空砲火の喧騒に負けじとばかりに、見張り員があらん限りの声を出して艦橋に報せて来る。
この時、プルパグントに攻撃を仕掛けていたヘルダイバーは、20機中、半分の10機が艦尾方向に回り込んでいた。
10機のヘルダイバーが先に攻撃を開始した頃には、別のヘルダイバー10機はプルパグントの後方から仕掛けようと待っていたのだ。
先頭グループの攻撃が半ばを過ぎた時、ヘルダイバー隊の指揮官は好機とばかりに攻撃を開始したのであろう。

「別働隊による時間差攻撃か……単純だが、悪くない戦法だ。」

ヘルクレンスは敵編隊の戦術に感心しつつ、プルパグント艦長がこの攻撃をどう捌いて行くか気になった。

「舵そのまま!」

艦長は、このまま回頭を続ける事を決めたようだ。

(……ふむ。確かに、舵を切っても別働隊の攻撃をまともに食らってしまう恐れがある。そうなるよりは、このまま回頭を続けて、艦首を別働隊の懐に
突っ込ませようとしているな。果たして、これがどう出るか……)

ヘルクレンスは心中でそう呟く。
6番機の爆弾がプルパグントの左舷側海面に落下して大量の海水を噴き上げる。
7番機も高度200グレルまで降下し、爆弾を投下するが、これも左舷側後部に至近弾として落下しただけに留まる。
8番機の爆弾も同様で、プルパグントを捉えられずに虚しく水柱を上げた。 

「マレナリイド被弾!火災発生の模様!」

唐突に、凶報が舞い込んで来た。
見張りの声はどこか悲痛な感情がこもっていた。
ヘルクレンスは咄嗟に顔を向けた。

「ああ、マレナリイド……!!」

マレナリイドは、プルパグントと同じく、急回頭を行って敵の攻撃に対応していたが、その飛行甲板からは煙が吹き上がっていた。
ヘルクレンスが視線を合わした直後、新たな敵機が投下した爆弾がマレナリイドに落下した。
この瞬間、マレナリイドは飛行甲板前部付近に直撃弾を受けると共に、左右両舷に至近弾を受けていた。

「スカイレイダーは3発の爆弾を投下していたが……マレナリイド……なんとか、なんとか耐えてくれ。」

ヘルクレンスは険しい表情を浮かべながらそう言い放つ。
感傷に浸る暇なぞ無いとばかりに、9番機の爆弾がプルパグントの右舷側後部付近に至近弾として落下し、巨大な艦体がひとしきり揺れ動く。

「アメリカ人共め。先にこっちが母艦を叩きまくった物だから、仇討ちとばかりに容赦なく襲い掛かって来るな。」

ヘルクレンスは不敵な笑みを浮かべながら、視線をマレナリイドから外そうとした。
この時、彼の視界に何か黒い塊が斜め上から落下していった。

「!?」

ヘルクレンスはぎょっとなった。直後、初めて聞く音と振動がプルパグントの艦体に響いた。

「なっ……今のは……?」

彼は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。 

10秒ほど間を置いて、艦長が伝声管越しに何か報告を受け取った。

「司令官。先ほど、飛行甲板中央部に敵の爆弾が命中しましたが、幸いにも不発弾であったようです。」
「不発弾だと?」
「はっ。敵弾は飛行甲板を貫通して第2甲板に突き刺さりましたが、爆発しませんでした。」
「……それは幸運だな。」

ヘルクレンスは、思わぬ偶然に苦笑を浮かべる。
だが、それも長くは続かない。

「一難去って、また一難だがな。」
「ええ。今はこの攻撃を切り抜けるしかありません。」

艦長は眉間に皺を寄せながら言った後、視線を前に向け直した。

「敵1番機爆弾投下―!」

再び聞こえて来た轟音が艦上を圧し、ヘルダイバーが艦の後部に飛び去っていく。
プルパグントは回頭を続けており、この時点で艦は一周を終えていた。
爆弾は後部付近の海面に落下して海水を噴き上げた。
続く2番機の爆弾は右舷側艦首付近に至近弾として落下した。
水柱が艦の舷側をこすり、飛行甲板と銃座に大量の海水が降りかかる。
真冬の極低温の海水が防寒着を来た将兵達に降りかかり、彼らは容赦なく体温を奪われていくが、なにくそとばかりに魔道銃を撃ちまくり、
高射砲の砲弾を弾き飛ばす。
爆弾を投下して避退行動に移っていた2番機が背後から銃撃を受け、胴体後部に命中弾を浴びせられた。
この射弾は搭乗員を射殺したらしく、ヘルダイバーはそのまま右旋回降下に入る形で海面に激突した。
追い撃ちを行った銃座の兵がざまあみろと叫ぶが、直後、プルパグントは強い衝撃に見舞われた。

「ぬお!?」 

ヘルクレンスは、唐突に伝わった爆弾炸裂の衝撃に思わず足を取られそうになった。
3番機の爆弾は、プルパグントの飛行甲板後部に命中した後、甲板を貫通して格納甲板のワイバーン収容室で炸裂した。
爆発の瞬間、格納甲板で爆風が荒れ狂い、ワイバーン用に調合された餌や竜騎士用の予備の軽鎧等がいっしょくたに吹き飛ばされる。
飛行甲板上では、小さな穴が一気に数倍以上に広がり、そこから火炎が吹き出してきた。
被弾箇所の飛行甲板が一瞬にしてまくれ上がったかと思うと、その部分から夥しい破片が舞い上がり、その次に濛々たる黒煙が噴出し始めた。

「爆弾命中!火災発生ー!」

艦橋に見張り員の報告が伝わるが、艦橋内部にも火災発生に伴う異臭が流れ込んでいた。
米艦爆隊は休む暇も与えず、プルパグントに次々と降下して来る。
4番機と5番機の爆弾は外れ弾となったが、6番機の爆弾は飛行甲板中央部に着弾し、火柱を噴き上げた。
続いて、7番機の爆弾が前部飛行甲板の右舷側部分に命中し、舷側に配置されていた右舷2番両用砲と魔道銃座6基を吹き飛ばした。
爆炎が一瞬吹き上がり、その後に黒煙が後ろに棚引いて行く。
プルパグントの艦上は前部甲板から吹き上がる黒煙に包まれ、中央部から後部舷側の多くの銃座や砲座が対空射撃に支障を来していた。
それでも対空射撃は続けられるが、ただでさえ回頭中で下がっていた命中率が更に悪くなった。
8番機の爆弾は後部付近に外れ弾となったが、9番機の爆弾が中央部に命中。
爆発の瞬間、夥しい破片と共に火炎混じりの煙がもうもうと吹き上がる。
10番機の爆弾は後部甲板の昇降機に命中。昇降機は被弾と同時に格納甲板に叩き落され、爆発の瞬間、真っ二つに叩き割られた。
ぽっかりと空いた穴から火山噴火の如く火炎が吐き出され、飛行甲板の開口部の周囲が爆発で盛り上がった。
ヘルダイバーが凱歌を上げるかのように、機首から爆音をあげながら飛び去っていく。
プルパグントは実に5発の直撃弾を受け、飛行甲板並びに格納甲板で火災が発生していた。

「手荒くやられたか……!」

ヘルクレンスは、艦長がぽつりとそう呟くのを聞いた。
敵艦爆隊の攻撃はこれで終わったが、プルパグントにはまだ別の敵機が低空から接近しつつあった。

「低空より雷撃隊接近!左舷方向、400グレル!」 

プルパグントがヘルダイバーの猛攻を受けている間、敵の雷撃機隊は護衛艦の迎撃を掻い潜りながら、その至近にまで接近していた。
敵雷撃機は、左舷方向に12機いる他、艦首方向に10機、艦尾方向にも10機前後が確認できた。
舷側の銃座と砲座は、この新たな敵機に対して対空射撃を加える。
ヘルクレンスは、左舷方向より迫りつつある敵編隊に視線を向けた。

「あれが、スカイレイダーか……アベンジャーと違ってすばしっこそうな感があるな。」

彼は、スカイレイダーの胴体が異様に小さく、コクピットが1つしかない事を見てそう呟く。
だが、この新鋭機が、彼の率いる第2群を完膚なきまでに叩きのめしつつあった。
敵機は、右に回頭中のプルパグントの斜め後方から近付いていた。
魚雷攻撃を行うには最適とは言えぬ位置であったが、4機ずつの単横陣で接近していたスカイレイダーは、構う事無く魚雷を投下した。
ヘルクレンスは、スカイレイダーの胴体から落ちたそれを見るなり、目が点になってしまった。

「………うすうす感じてはいたが……しかし、現実を見ると、やはりショックを感じてしまうな。」

ヘルクレンスは平然とした口調で呟くが、内心は絶望に満ちていた。

「魚雷を投下するまでは、100歩譲って良しとしよう。だが……」

彼は、プルパグントに迫りくる“8本”の雷跡を確認しながら、言葉を続ける。

「1機当たり魚雷を2本も積んで来るのは、ちと反則じゃないかい?」

ヘルクレンスは、爆音を轟かせながら避退していくスカイレイダーにそう語り掛けた。
プルパグントは回頭を続けていく。この時になって、艦長が回頭を止めるように命令を下した。
8本の魚雷の内、6本は右舷に舵を切っていたプルパグントに命中せず、そのまま艦の左舷側を通り過ぎて行ったが、2本が回頭中のプルパグントの
右舷側に迫って来た。
また、後続の8機が投下した魚雷も次第にプルパグントに接近しつつある。
艦は命令を下してから30秒後に、回頭を止めた……が 

その次の瞬間、プルパグントの右舷後部に高々と水柱が立ち上がった。
魚雷が命中した直後、プルパグントの25000ラッグ(37500トン)の艦体が大地震もかくやと言わんばかりに激しく揺れた。
更に、後続の8機が投下した16本の魚雷も後部から忍び寄って来る。
この魚雷は殆どが外れたものの、1本がプルパグントの左舷側後部に命中した。
2本の魚雷を受けた事で速力を低下させたプルパグントに、残った2つのスカイレイダー隊が急速に接近してくる。
プルパグントは速力を低下させながらも、尚も対空射撃を続行し、回避運動を取り続ける。
この戦闘で、プルパグントは4機のスカイレイダーを撃墜したが、衆寡敵せず、左右両舷から迫った20機以上の弾幕雷撃の前にひとたまりもなかった。
プルパグントは敵が魚雷を投下する前に、左に艦首を回し始めた。
このため、左舷方向から来襲したスカイレイダーの魚雷は大半が外れ弾となった。
だが、左舷方向のスカイレイダーは9機が生き残っており、投下された魚雷は18本に上った。
このうち、3本が左舷前部と後部に命中した。
そして、右舷方向から接近したスカイレイダー7機は、14本の魚雷を投下し、そのうち5本が命中していた。
とあるスカイレイダーのパイロットは、魚雷投下後に敵竜母に顔を向けた。
敵竜母は、両舷から複数の水柱を噴き上げさせていた。
この恐ろしい光景を目の当たりにしたパイロットは、プルパグントの乗員に思わず同情してしまった程であった。


午後0時20分

「司令官……司令官。」

司令官席に座っていたヘルクレンスは、部下の主任参謀の声で我に返った。

「救命艇の準備が出来ました。退艦しましょう。」
「ああ……行くか。」

彼は、声を何とか絞り出し、重々しい体を椅子から起こした。 

「司令官。あとの事は、私にお任せ下さい。」
「うむ。乗員の事は頼んだぞ。1人でも多くの将兵を救ってくれ。」
「ハッ!」

艦長は威儀を正して敬礼をする。ヘルクレンスは答礼すると、艦橋を後にした。


5分後。彼は、救命艇の中からプルパグントの姿を見つめていた。

「………悲しい物だな。主任参謀。」
「は……」

ヘルクレンスは単調な口ぶりで主任参謀に話す。

「帝国の総力を結集して作られた正規竜母が、今ではあの有様だ。巡洋戦艦から改造されたプルパグント級と言えど、爆弾5発、
魚雷10本を食らえば沈没は免れんな。」
「……スカイレイダーが、想像以上に強力でしたな。まさか、爆弾を3発も積み、魚雷を2本も搭載して突撃して来るとは予想だに
しておりませんでした。」
「ああ。まさに非常識だよ……」

ヘルクレンスは、深いため息を吐き出す。

「だが、連中はそれを平気でやってのけた。その結果……第2群の竜母は、文字通り全滅状態となった。」

ヘルクレンスは悲しみを含んだ口調で辺りを見回した。
洋上には、幾つもの黒煙が吹き上がっている。
黒煙の数は計6本で、うち1本は、目の前にいるプルパグントだ。
プルパグントは、右舷側に雷撃を集中されたため、右舷に大傾斜する形で洋上に停止している。
相次ぐ魚雷命中で機関部が全滅したうえに、火災もまだ消し止められていないため、プルパグントは断末魔の様相を呈している。 

他の3隻の竜母……マレナリイド、ゴイロ・ブクラ、マルヒクも同様だ。
マレナリイドは、魚雷を受けた数は5本と少ない物の、爆弾は19発が命中しており、これによって大火災を生じていた。
戦死した艦長に代わってマレナリイドの指揮を引きついた副長は、現状では艦の火災が鎮火できぬと判断して総員退艦を命じた。
ゴイロ・ブクラは爆弾9発、魚雷6本。マルヒクは爆弾7発、魚雷7本を受けて共に大破炎上し、マルヒクはたった今沈没した所だ。
ゴイロ・ブクラはまだ浮いているが、こちらも10分以内にはマルヒクの後を追うであろう。
この他に、駆逐艦2隻が雷爆撃を受けて撃沈されており、現在、別の駆逐艦が乗員の救助作業に当たっている。
アメリカ軍の第2次攻撃は、新鋭機スカイレイダーの大規模投入のお陰で、第2群を全滅させる事に成功したのである。
これは同時に、第4機動艦隊がより苦しい状況に置かれた事を意味していた。

「……主任参謀。第2群の戦艦ロンドブラガを第1群に、マルブドラガを第3群に向かわせ、残存する構想予定の艦を除いた巡洋艦、駆逐艦を全て、
他の竜母群に吸収させるよう、艦隊司令部に提案してみよう。」
「はっ。救助艦に到達次第、直ちに。」

主任参謀は、第2群の実質的な解隊とも取れる発言に対し、何ら反応する事なく答えた。

「俺達が出来る事は、これぐらいしかない。あとは、第1群と第3群に任せるしかないだろうな……」


午後0時21分 第5艦隊旗艦ミズーリ

「……戦果報告を見る限り、第2次攻撃隊は、先の攻撃で敵竜母4隻、護衛艦2隻に甚大な損害を与え、6隻ともに撃沈確実と
判断して良いようでしょう。」
「竜母4隻を撃沈確実とは……流石はスカイレイダーと言った所か。」

通信参謀のエイル・フリッカート中佐の報告を聞いたフラッチャーは、腕組しながら口を開く。

「無力化ではなく、撃沈確実ですからな。これには、敵も大いに肝を冷やしている事でしょう。」
「これで、母艦戦力の差は更に開きましたな。長官、この機を逃さず、直ちに第3次攻撃隊を編成し、敵機動部隊を撃滅いたしましょう。」

デイビス参謀長がフレッチャーに進言した。
既に、TG58.4並びに、TG58.5では第3次攻撃隊の編成が進んでいる。 

「無論だ。通信参謀、両任務群に攻撃隊の準備状況を知らせよと伝えろ。」
「了解しました。」

フリッカート中佐は頷き、作戦室から退出しようとしたが、そこに通信士官が入室し、フリッカート中佐に紙を手渡した。

「……長官。TG58.2司令部より入電です。アンティータムは浸水の拡大と火災の延焼のため、損害の復仇が不可能と判断され、先ほど、
総員退艦命令が発せられたようです。」
「そうか……乗員の救助は可及的速やかに行わせたまえ。」
「はっ。そのようにお伝えいたします。」

フリッカート中佐はフレッチャーに返答してから、退出していった。

「エセックス級空母の喪失艦は、これで4隻目になりますな……」

作戦参謀のアレックス・ロー大佐が沈痛な面持ちで言う。

「建造数が20隻。うち、喪失が4隻。数字で表すと、エセックス級空母の損耗率は20%になります。」
「20隻中4隻沈没か……多くは無い数字ではあるが……少ないとも言えぬな。」

フレッチャーは、壁に貼られた編成表の1隻……アンティータムに、喪失を現すバツ印が書かれていく様子を見ながら、作戦参謀にそう返答した。

「後世の評価では、エセックス級は海戦の度に損失艦を出し続けた空母…という評価が下されるかもしれんが……戦争に勝てているのならば、
この犠牲も無駄にはなっていない。」

フレッチャーは視線を机の上にある海図に向けた。

「第3次攻撃隊には、アンティータムの分まで頑張って貰おう。彼女の弔い合戦だ。」
「攻撃機隊の編成が、従来のアベンジャーとヘルダイバーを主力としている所が気になりますが、それでも2個空母群が攻撃隊を向かわせますから、
敵の覆滅は成し遂げられるでしょう。距離的にも大分縮まって来た事もあり、攻撃隊のパイロットも精神的に余裕を持って任務を遂行できるはずです。」
「参謀長の言う通りだな。」

フレッチャーは深く頷いた。
同時に、彼はある事に思い立った。

(……敵との距離は確かに縮まっている。この状況は、レーミア沖海戦の時と似通っているな。敵の動き次第では……)

フレッチャーは、今後の展開次第ではTG58.7にも出番が回ってくる可能性がある事に気付いた。

(リー提督の戦艦部隊にも、働いて貰う必要があるな)

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