自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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544 名前:始末記[sage] 投稿日:2016/01/26(火) 16:04:10.99 ID:SSjyzBtv

ブリタニア海軍
タイド型給油艦
『タイドスプリングス』

ブリタニアとは、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの在日住民や訪日同国人、彼等の配偶者となった日本人が建設した大陸の都市である。
英国系一万九千人、カナダ系一万三千人、オーストラリア系一万三千人、ニュージーランド系四千人、その他合わせての約五万人の人口を有している。
海軍が中心でありANZAC級フリゲート2隻を保有している。
空軍も組織されAP-3C対潜哨戒機1機やエアバス A400M中型輸送機アトラス1機を保有している。
何れも日本に来日、或いは近海を航行中に転移に巻き込まれた兵器と乗員達である。
今回新造された給油艦『タイドスプリングス』は、2012年に英国が韓国・大宇造船海洋に発注した新型給油艦4隻のうちの1隻である。
2016年より順次就役するはずだったが日本とともに転移した巨済島の巨済市大宇重工業玉浦造船所で一番艦として建造されていた。
転移による混乱と資源不足を得て放置状態となっていたが十年近くの遅れをえてようやく就役したばかりの艦だ。
二重底構造の軍用タンカーである。
海上保安庁から旅客船『いしかり』の護衛の要請を受けたが、艦長のチャールズ・ブロートン中佐は困惑していた。
状況を確認の為に艦を停止させていた。

「普通、海賊からの護衛任務とかを給油艦に振るか?
海上保安庁はこんな無茶苦茶な要請をしてくるところだったか?」
「大陸の海軍や海賊の船ならこの艦の武装でも十分に対処可能ですからね。
まあ、行くしか無いでしょう。」
幸いタンクに油は積んでいない。
急ぎの任務もありはしない。
副長の言葉に頷き、ブロートン中佐は命令を下す。

「機関再始動だ。」
「両舷始動!」
「両舷始動ー!」
「針路、速度そのまま、旅客船『いしかり』とのランデブーポイントを目指す。」



旅客船『いしかり』

「レーダーに船影、多いぞ。」

レーダーのディスプレイには19隻の輝点が表示されている。

「海保や海自の艦じゃないのか?」

平塚船長がレーダー担当の航海士に確認をとる。

「南西2-2―0から向かって来ます。
海賊の船団です!!」
「全船員に通達。
海賊船団をレーダーに捉えた。
だが今の速度なら十分に逃げられる。
各員、乗客を不安にさせないようにベストを尽くせ。」

放送では乗客にも聞こえてしまう。
メモを取った大谷副長が各部署を回るのだ。
だがそれより早く船は捕捉されていた。


私掠船『食材の使者』

ドーラク船長は窓穴から顔を出して、頭上に広がる海面を確認する。
目標の日本の船舶がこちらに向かっているのが目視出来る。
海底に視線を移して、程よい浅さなのに満足する。

「来たな・・・、歩脚を海底に固定、第一脚・・・、鋏め!!」

ドーラク船長の号令のもと、『食材の使者』号は第2・第3の対の脚を海底に挿し込み固定させる。
そして、海面に向けて放たれた第一脚の対をなす鋏が『いしかり』の船底を挟み、錨代りにその動きを大幅に制限し減速させる。
通常の錨は海底土砂に食い込み、海底面を擦ることで成立する。
だが『食材の使者』号も減速どころか加速させていた『いしかり』の重さと馬力に引き摺られている。
揺れる船内に船員達は船壁の手摺りに掴まって対処している。

「なんというパワーと固さだ。
木造船なら完全に船底を切り裂いているものを・・・、こちらが引き摺られているか?
だがこれで船団が追い付ける。」



旅客船『いしかり』

突然の船底からの衝撃と強制減速に船員や乗客達は身を投げ出されていた。

「海底に何かいます!!」
「馬鹿な、なんだというんだ。」
相手が海底にいる為にその姿を確認することが出来ない。
だが複数の船影が目視で確認出来る位置まで近づいていた。

「速度低下、24・・・、23・・・22・・・」
「距離6海里といったところか?」

平塚船長は助け起こしてくれた男に命令する。

「無賃乗船を拒否する。
丁重にお引き取り願え、高嶋隊長。」
「参ったなあ、隊員は銃を持たせただけの警備員なんですがね。」

船に乗船している武装警備員は七名。
隊長の高嶋こそ元自衛官だが他の隊員は警備会社の社員に過ぎない。
隊員達に実戦の経験は無い。
弾薬の浪費を会社が嫌がって射撃訓練も年2回の研修の時にしか出来ない。
高嶋は勝田駐屯地に勤務していた際に大洗町海賊襲撃事件で実戦を経験して負傷している。
家族の要望で退役し、大手警備会社に雇用された。
この当時、自衛隊、海保、警察を初めとする各武装機関の増員により、過去に除隊、退役した退職自衛官を大幅に復帰、採用させた。
転移当時警備業者約9,200社、警備員約53万人を擁していた警備業界は6万人近くの人員を失い、新たに一般人の雇用を創出した。
だが警備業界が考えていた新世界に対応する為の武装警備員の構想は大幅に後退した。
そんな中、自衛官から業界に入社した高嶋のような人材は重宝された。
政府は民間の武装組織の存在に眉をひそめたが、現実問題日本の長い海岸線や輸送ルートの防衛を現行の自衛隊や警察力だけでは不可能と判断した。
だが試験的な段階であり、信頼のおける業界第二位の会社に創設を許可した。
まだ、危険の少ない船舶の警備から訓練を終えた隊員とともに高嶋は隊長として乗り込んでいたが隊員達の練度は自衛官や警察官には及んでいない。
この船に保管されている武器はベレッタM92拳銃、SKB MJ-5散弾銃が隊員の人数分ある程度だ。
弾薬は予備の弾倉が人数分ワンセットだけだ。

「速度17まで低下、以後安定!!」
「後続より1隻早いの来ます!!」
「四の五の言ってる場合じゃないな。
わかった隊員を配置させる。」



海賊船団
旗艦『漆黒の翼』

「よし、『食材の使者』の連中がやってくれたか、それでも早いな。
安心しきってるだろうな日本の船は・・・、船首に大砲を用意!!」

これまでの帝国が使用してきた大砲は、鋳造の青銅製前装式滑腔砲である。
開発責任者だった人物の名前をとって、ライヒワイン砲と呼んでいた。
だが船首に台車に乗って運び込まれた大砲は施条後装砲である。

日本をはじめとする地球系都市国家からかき集めた情報をもとに帝国でも再現可能な技術で完成させた試作品である。
この一門を造り上げるのに五年の歳月を掛けた。
最大射程はこれまでの十倍、有効射程は六倍にまで飛躍した。
ピョートル船長は『いしかり』まで、5海里の距離までに近付くと、この新型砲の発射命令を出した。

「当てる必要は無い。
連中に大砲が届くと認識させることが出来れば十分だ。」

発射された砲弾は『いしかり』の前方3キロの地点に着弾した。
『いしかり』は驚いたのか回避の為にジグザグに動きだし、さらに距離が縮まっていく。

「素晴らしい!!
この大砲をピョートル砲と命名する!!」

気をよくしたピョートル船長はそのまま命名の経緯を書いた手紙を伝書鳩をアジトに向けて飛ばさせた。

「しかし、これでも連中に取っては200年も前の技術とは・・・」

副船長は新型砲の威力に驚愕しつつ、海自の艦船の大砲やミサイルとの差を痛感している。

「まったく、たった200年の間にどれだけ技術を発展させてきたんだろうな。
おかしいだろあいつら・・・

まあいい、こんな機会はそうそう無いんだ。
接舷攻撃用意と露払いの射撃開始!!」

右舷に集まった船員達が小銃で射撃を始めた。
『いしかり』からも武装警備員達が発砲して反撃してくる。
同時に『漆黒の翼』からバリスタに鎖が括りつけられた鉤爪が複数発射されて、『いしかり』の船縁に引っ掛かる。
鎖は『漆黒の翼』に固定されていて、船自体が重りになっていく。
船体が軽い『漆黒の翼』は曳航される形になるが激しい揺れが襲う。
そのまま『いしかり』の真後ろまで流されて行くが、離されなければ十分だった。
そして、『漆黒の翼』の両側から海賊船団でも『漆黒の翼』に次ぐ船脚を持つ『生より出でし蒼白の武神』号と『正義を操りし月夜の咎人』号が『漆黒の翼』を追い抜き、『いしかり』の両舷の船縁にバリスタから鉤爪の付いた鎖や網を打ち出している。
残りの16隻も追い付いて来ているが、突如として最後尾にいた『理に牙剥く不死の双子』号が爆発炎上した。

「なんだ?」

ピョートル船長が望遠鏡で確認をとると、忌まわしき飛行機械が大空を飛び回っていた。

「ヘリか?
くそっ、こんな時に」



旅客船『いしかり』

その光景は苦戦中の『いしかり』からも確認出来た。

「船長、ヘリから通信!!
あの機体はブリタニカ海軍の給油艦『タイドスプリングス』所属機、コールサイン、ハンター3です。」
「救援に感謝すると伝えろ。
      • 給油艦だと?」

なぜ給油艦が救援に来たのか平塚船長は困惑していた。


3隻の海賊船から網や鎖を伝って乗り移ろうとしてくる海賊達を武装警備員達は懸命に撃退していた。
銃弾の弾丸だけではじり貧になると、消火ホースを持ち出して放水で網や鎖にしがみつく海賊達を海に叩き落としていく。
一分間に2,000リットル、送水圧5キロの放水は容易に人間を吹き飛ばす。
おまけに海水をポンプで組み上げて転用できるので無尽蔵に防水が可能だ。

「ポンプで汲み上げている間だけ銃器で対処しろ。」


マニュアルどうりに今のところ対応できている。
武装警備員と言っても所詮は民間人。
いきなり人間を射殺する覚悟などあるはずがない。
放水による迎撃は意外にいいアイデアかもと高嶋は思えた。

「苦肉の策だったんだがな。
普通は1隻相手に十数隻もこないから、銃弾もそんなに支給されなかったからな。」

海賊の数が想定を越えていたから考えた策だった。
後方の海賊船団に目をやると、爆発する海賊船の姿が飛び込んできた。

「騎兵隊のお出ましか、もう一踏ん張りだぞ、お前ら。」



ブリタニア海軍
対潜哨戒ヘリ
三菱 SH-60K『ハンター3』
SH-60Kは海上自衛隊がSH-60Jを基にして、三菱と防衛庁で独自に、哨戒能力の向上を目指した哨戒ヘリコプターである。
転移後も少数ながら生産され、ブリタニア海軍の『タイドスプリングス』の搭載機として配備された1号機である。
最後尾にいた『理に牙剥く不死の双子』をAGM-114M ヘルファイアIIを直撃させて葬ったところだった。

「次、2隻目!!」

いっきに船団を飛び越えて、『いしかり』に接近中の先頭の船に二発目のヘルファイアIIを発射して命中させる。
これでヘルファイアIIは使いきったが船団はまだ17隻もいる。
炎上する海賊船を避けるように船団は左右に分かれていく。
SH-60Kは、浮上して斜めに傾くとのスライドドアが開く。
ベルトで体を固定した射撃手が74式車載7.62mm機関銃がドアガンとして発砲を開始する。
銃弾の雨に晒された海賊船は甲板から降り注ぎ、床を貫通して二つ下のデッキまで血で染め上げる。
各海賊船からも矢や小銃がSH-60Kに向けて放たれるが、海上を舞う機体に当てることも出来ていない。
2隻目も血祭りに上げるが弾薬が不足してきた。

「こちらハンター3。
弾薬が尽きた、一旦母艦に戻るがなんとか持ちこたえくれよ。」
『了解、早く戻ってきてくれよ。』



海賊船『漆黒の翼』
ブリタニアのヘリが去ったことにより、ピョートル船長は胸を撫で下ろした。

「やっと行ってくれたか・・・、被害報告!!」
「『理に牙剥く不死の双子』、『暗黒の支配者』、炎上!!
『残虐非道の歌姫』、『黒薔薇を持つ悪女』沈黙、航行不能の模様!!」

船の名前を聞いてピョートル船長は頭痛がしてくる。

「4隻もやられたか・・・
しかし、どうして海賊の連中は船の名前を豪華に飾り立てるのだろうな?
「まあ、色々と拗らせやすい職業ですから」

副船長はピョートルも同類だと思っていたが言葉にはしなかった。

「まあ、いいヘリが引き揚げたから当分は戻ってこない。
今のうちに」
「ヘリが戻ってきました!!」

言い終わらないうちにヘリがこちらに向かってくる光景が目にうつる。
その新たに現れた同型のヘリの胴体には『海上自衛隊』と書かれていた。
その後方の水平線の彼方からはつゆき型護衛艦の『いそゆき』が姿を見せていた。


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