自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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626 名前:始末記[sage] 投稿日:2016/06/18(土) 01:46:23.16 ID:jX5TYPQS

百済沖
おやしお型潜水艦『もちしお』

アガフィア海亀甲艦隊と2隻の潜水艦の戦いは続いていた。
「目標11に魚雷着弾!!
目標11圧壊しています。」
「目標11上部から離脱する物体群に4番魚雷自爆。
放出された物体が散り散りになっています。」

残りの魚雷は12本。
こちらに向かってくるのは大型生物は4匹。
大型生物と小集団を仕留めるのに必要なのは最低でも8本。
艦長の佐々木二佐はまだ自艦と敵との距離があるので余裕があった。
第一斉射が89式魚雷の有効射程距離限界ギリギリの27海里/50キロメートルから攻撃だったこともある。
だが友軍の潜水艦『鄭地』はだいぶ距離を詰められている。
何より敵小集団のものと思われる何かが外側から『鄭地』を叩いている音もソナーが捉えている。
何で叩いてるかわからないが、潜水艦に孔を穿つほどではない。

「『鄭地』からスクリュー音が減少。
『鄭地』がマスカーを起動させた模様です。」

マスカーと呼ばれる気泡発生装置により、艦周辺の水中に気泡を作られていく。
本来は音源となるスクリューを主とする音を水中で伝わりにくくする装置だ。
また、艦体との海水と船体の摩擦抵抗の軽減にも使われる。
『鄭地』の艦体表面に取りついていた重甲羅海兵達が気泡に押し流されていく。
或いは摩擦が軽減して滑って『鄭地』から放り出されていく。
そのまま『鄭地』から四本の魚雷発射された。
目標9、10に魚雷が命中し、自爆した魚雷が小集団を粉砕されていく。

「残り2匹。
仕留めたのが3匹ずつなら互いの沽券も傷つけまい。
よし舵そのまま、機関逆進!
ピンガーを打て!」

戦闘中に政治まで考慮しないといけないのは佐々木二佐に取っても煩わしかった。
『もちしお』と『鄭地』は互いの獲物を追跡する。




百済沿岸

定置網が重甲羅海兵達に犠牲を強いている頃、その定置網を水揚げをしようとしていた各漁船に無線で状況が漁師達に伝わっていた。

「なんだ魚じゃないのか・・・」

魚群探知機には大量に獲物の影が映っていただけに漁師達の落胆は激しかった。

「迂闊に引き揚げると危ないってか?」
「でも亀のモンスターなんだろ?
肉は食えるし、甲羅は漢方や鼈甲になるから損はあるまい。」
「じゃあ、もう少しひっぱり回して弱らせとくか。
それと・・・、武器を出しとくか。」

国防警備隊も漁師達も亀人が獣人の一種である認識も無いし、敵が軍隊であるとも考えていない。
単なる昨今問題視されていたモンスターのスタンピードの類いだと思われている。
漁師達は普段から用意してあるモンスターを相手にする為のダイナマイトや猟銃、銛を手に持ち始めて、海面に姿を見せた重甲羅海兵達を仕留めていく。
重甲羅海兵達は固い甲羅を持っているが、海遊する為には四本の脚や頭部や尻尾を甲羅から出さないといけない。
露出した部位が攻撃を受けて負傷した者や死亡した者が続出した。
さすがに全ての重甲羅海兵が定置網に捕らわれていたわけではない。
二千匹ほどの重甲羅海兵達が、定置網を避けて海面まで浮上して突破したからだ。
定置網や漁船の包囲を抜けて胸を撫でおろしていた。
だがそんな彼等の前に高麗国国防警備隊の李舜臣級駆逐艦『大祚栄』、太平洋型警備救難艦『太平洋10号』が姿を現した。


「攻撃を開始せよ。
一匹たりとも逃がすな。」

『大祚栄』艦長の命令のもと、『大祚栄』のMk-45 127mm砲が発砲する。
ゴールキーパー 30mmCIWSも海上を舐めるように掃射を開始する。
Mk 32 3連装短魚雷発射管から6発の魚雷が発射され重甲羅海兵の密集した海域で自爆して肉片や甲羅が爆風に巻き上げられて空を飛ぶ。
『太平洋10号』もそれらを突破してきた重甲羅海兵達に40mm連装機銃、シーバルカン 20mm機銃、ブローニングM2重機関銃を撃ち込んでいく。
加えて2隻から発進したスーパーリンクス 300が2機とKa-32ヘリコプターがドアガンを用いて海面の掃射に参加する。
水柱がところ構わず数十、数百本と立ち上がる。
だがその海面の地獄を掻い潜り、アガフィア海亀甲艦隊が海中を通過していく。
海面が激しく叩かれて、爆発で海上、海中が乱れているので、上手くすり抜けられると思われた。
しかし、『大祚栄』のソナーや魚群探知機は逃がさない。
『大祚栄』のMk 41VLSが開き、対潜ミサイル紅鮫が次々と発射された。
対潜ミサイル紅鮫は上空で落下傘を開いて減速、着水した。
着水時に落下傘を切り離し、スクリューが稼動する。
その後は魚雷としてアガフィア海亀甲艦隊を追跡する。
複数の魚雷をぶつける必要がある情報が伝わっていなかったのか6本だけである。
目標を感知した誘導魚雷がアガフィア海亀甲艦隊に次々と命中するが、海中での爆発を受けながらも撃沈、或いは離脱した中型海亀はいない。
アガフィア海亀甲艦隊は遂に百済港のある湾岸に到達に成功した。



エレンハフト城

エレンハフト城の大広間ではサミットが続いていた。
現在はルソン代表ニーナ・タカヤマ市長が問題を提示していた。
ニーナ・タカヤマ市長は日本ではグラビアモデルをしていた経歴を持つ。
ルソンは23万人の在日フィリピン人やその日本人の伴侶を主な住民としている。
これらに加えて転移当時来日していたフィリピン人も共に市民生活を送っている。
問題は男女比が25対75な点である。

「圧倒的に女性が多くて労働力が足りません。
現在は協定に従って大陸民を地域から追放していますが、都市では大陸人の移民を望む声も一定数あり、当局は対応に苦慮しています。
当然のことながら軍警察の男性隊員による実働部隊が30名と少なく、治安の悪化と大陸民の都市部郊外での居住区の成立を防げていません。」

このままではスタンピード防止の為の駆除作業も遅々として進まず被害を受ける可能性が大であった。
産業も特に育っていない。
膨大な女性の大半は水商売や性風俗の経験者ばかりだ。
しかも転移から十年も立つと高齢化により需要も右肩下がりだ。
領域内に炭鉱もあるのだが開発を行うことも出来ていない。
ルソンからの希望は各都市からの資本の投入と多国籍軍の派遣であった。
サミット参加国はこれを了承するとともに地球系人類との積極的婚活を支援する声明が出された。

ルソンに割り当てられた時間が終わり会議は休憩の時間となった。
書類をまとめている秋月総督や秋山補佐官のもとに高橋陸将が『くらま』や『もちしお』から送られた戦況が書かれた報告書を差し出してくる。
ただモンスターの種類まではまだ調査中となっていた。

「海洋モンスターのスタンピードですか。
まあ、順調なようですね。
何か懸念になる点でも?」
「『鄭地』ですが魚雷の使いすぎです。
高麗に魚雷の生産能力は無いはずです。
一応、忠告をしといた方がいいと思いますが・・・」

高麗国は軍艦から潜水艦といった艦艇の建造能力を保有している。


だが他の兵器の製造能力は限定されていた。
それでも本国の3島には結構なサンプルが残っていたので再現と量産を目標としていた。
最も資源の確保自体が停滞しているので日本からの輸入頼りになっているのが現状だ。

「高麗国って何を生産してるんですか?」

高橋陸将は少し考えこんで答える。

「近年は『大祚栄』と『太平洋10号』の主砲や機関砲の弾薬に集中してましたからね。
あとはK1A1 5.56mmアサルトカービン、ブローニングM2重機関銃とその弾薬。
野外炊事車、浄水セット・・・
ああ、最近はK131多用途車の再現に成功して、次はK311小型トラックだとか言ってましたね。」

比較的常識の範囲で意外であった。
ミサイルや魚雷の生産にはいまだに携わることが出来ていない。
つまり現在の在庫が全てなのであった。

「出し惜しみされてここまで、モンスターの侵入を許されても迷惑ですな。
事が終わるまで黙っていたまえ。
それと秋山君。
本国に高麗が長魚雷の輸入を打診してくるかもしれないから対応を考慮してくれるよう連絡しといてくれ。」

話し合っているうちに休憩時間は終わり、サイゴンの代表が壇上に立つがバルコニーや窓の側にいた人間達が騒ぎ始めた。
高橋陸将がバルコニーから外の光景を見渡すと、エレンハフト城から見渡せる百済の港湾に数隻の船のような物体が港に向かっていた。
高橋陸将はその物体を見て舌打ちする。

「亀甲船?
なるほど我々に対するイヤミか。」

エレンハフト城から距離はあるのだがその大きさから形は辛うじて見てとれる。
高橋陸将は大広間にいる白泰英百済市長を睨み付けた。
それは城内の日本人達に伝染していった。
険悪な雰囲気に新香港の林主席もやり過ぎだと肩を竦めていたが、謂われの無い視線の集中に白市長は身震いしていた。

「誰だあんなもの用意してた奴は!!」

自分を市長の座から引き摺り降ろそうとする反動主義者によるセレモニーと疑って掛かっていた。
百済市にいる市民は日本に観光や仕事で来ていた人間ばかりで比較的反日傾向は薄い。
だが高麗本国の人間には警戒が必要だった。
現に港で反日デモを行っていたのは本国に籍を置く市民団体が中心になっている。
百済市と高麗本国との対日姿勢における温度差は、白市長にとって悩みの種であった。
再び警備隊の幹部を呼び出して命令する。

「さっさと警備隊を港に派遣して連中を排除しろ!!
このままではサミットが台無しだ。」




アガフィア海亀甲艦隊
旗艦『瞬間の欠片』号

『瞬間の欠片』号は海底を這って進んでいた。
おかげで地球系海軍にはまだ見付かっていない。
その内部で艦隊を指揮するザギモ・ザロ提督は、損害の大きさに頭を抱えていた。
百済の港にようやく中型海亀を侵入させたが、魚雷による負傷で浮上させざるを得なかった。
だが港に侵入したにも関わらず、何故か攻撃は受けていない。
港には数隻の軍船の姿が確認されているが、まるで動きを見せていなかった。

「重甲羅海兵の生き残りはどれくらいか?」

ザギモ・ザロ提督は味方の状況を整理していた参謀に問い質す。


「先鋒隊の一部が交戦中なので、詳細は不明ですが。
湾内には千と百ばかり。
そして、本船の三百は無傷です。」

作戦開始時には一万を数えた軍団が1400しか残っていない。

「撤退を命じるべきなんだろうな本当は・・・」
「ですが退路はすでにありません。」

本当は軍隊と認識されていないので、湾外に逃げ出した重甲羅海兵達は追撃を受けておらず退路はガバガバである。
ただ潜水艦による後背からの奇襲。
巧妙な網を使って待ち構えていた罠。
迎撃に出てきた軍船による激しい攻撃。

「やはり我々の作戦は漏洩していたのだろうな。」
「残念であります。
ここまで周到に待ち構えていた敵です。
我々を生かして帰す気はないでしょう。」
「だが敵の王達が参集しているというのは本当のようだ。
せめて、一太刀浴びせてくれよう。」

ザギモ・ザロ提督は右前足を静かに振って、全軍に前進を命じた。




百済港

デモ隊と亀甲船の排除を命じられた国防警備隊の隊員達はパトカーやバスを改造して造った輸送車で百済港に到着していた。
責任者の一人である隊長柳基宗大尉が、岸壁に陣取るデモ隊の一人に声を掛ける。

「おい亀甲船を早く撤去しろ。
あちこちに迷惑が掛かってるんだよ。」

声を掛けられたデモ隊の若者は困った顔で、柳大尉に海上を見るよう指を指した。
岸壁には数隻の手漕ぎボートをもとに造られたみすぼらしい亀甲船が浮かんでいた。
大きさは二メートルほど。
城から見えるサイズではない。
柳大尉はそのデザインに些か失望を覚えた。
次に若者が港湾の奥を指差す。
そこには城から見えた巨大な亀甲船が浮かんでいた。
舳先には亀甲船の特徴の竜頭もついている。

「竜頭にしては丸いか?」

だが勇壮な姿は子供の頃に妄想した『ボクの考えた最強亀甲船』そのものだった。

「そうだよ、亀甲船はああじゃないと。」
「あれ、俺らが用意したのじゃないです。」
「えっ?」

若者の言葉に驚いていると、亀甲船の舳先の竜頭がこちらを向いていて目が合ってしまった。

「敵襲!!」

叫びと同時に海中から無数の岩球とハンマーが飛んできて警備隊とデモ隊に降り注いだ。


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