傭兵ギルドからの催促が凄い。
内容は決まっている。
大口の仕事が欲しい。大口の仕事を紹介しろ。
傭兵ギルドはこんなに有力な組織だから云々かんぬん。
早くお帰り願いたい。
大口の仕事が欲しい。大口の仕事を紹介しろ。
傭兵ギルドはこんなに有力な組織だから云々かんぬん。
早くお帰り願いたい。
リンド王国の傭兵ギルドだから、リンドに敵対的な国や組織と契約を結ぶ事は禁止されているが、それ以外であればリンド王国専属の傭兵である必要はない。
つまりリンド王国から見て直接利害関係に無い第三国同士の戦争に加勢しに行くとか、リンド王国の同盟国に加勢しに行く分には問題ない。
また国家や地方領主のレベルでなくても、個人や組織が雇用主となっても何も問題ない。
有力商人が商品や現金輸送の護衛に傭兵を雇う事は珍しくないし、珍しいところでは平民個人が決闘の代理人を立てる為に傭兵を雇った話もある。
つまりリンド王国から見て直接利害関係に無い第三国同士の戦争に加勢しに行くとか、リンド王国の同盟国に加勢しに行く分には問題ない。
また国家や地方領主のレベルでなくても、個人や組織が雇用主となっても何も問題ない。
有力商人が商品や現金輸送の護衛に傭兵を雇う事は珍しくないし、珍しいところでは平民個人が決闘の代理人を立てる為に傭兵を雇った話もある。
個人から契約可能といっても、ギルドにとって金になるのは大口の顧客、つまり国家だ。
王国が戦争をするからと数万の傭兵をかき集めてくれれば、大勢の傭兵隊長の懐が潤う。
だがそれも昔日の話。近年は国王や宮廷といった中央だけでなく地方まで王国軍が中心に考えられており、傭兵ギルドは苦難の時代だ。
傭兵隊長を辞めて、王国軍の連隊長になった者も居れば、軍事官僚になった者も居る。大所帯だった傭兵隊ほどその傾向が強い。
かつては王国内に数百人は居た傭兵ギルド員も、今や百人を割ろうかとしている。この傾向が続けば傭兵ギルド自体の存続が危うい。
人員が減れば組織の政治力が弱まる。政治力が弱まれば人員が減る。組織の命脈を保つのに必死なのだ。
王国が戦争をするからと数万の傭兵をかき集めてくれれば、大勢の傭兵隊長の懐が潤う。
だがそれも昔日の話。近年は国王や宮廷といった中央だけでなく地方まで王国軍が中心に考えられており、傭兵ギルドは苦難の時代だ。
傭兵隊長を辞めて、王国軍の連隊長になった者も居れば、軍事官僚になった者も居る。大所帯だった傭兵隊ほどその傾向が強い。
かつては王国内に数百人は居た傭兵ギルド員も、今や百人を割ろうかとしている。この傾向が続けば傭兵ギルド自体の存続が危うい。
人員が減れば組織の政治力が弱まる。政治力が弱まれば人員が減る。組織の命脈を保つのに必死なのだ。
だから、歴史的大敗で金欠となってしまったリンド王国の代わりに、リンド王国の同盟国となっている皇国に契約を迫っている。
身形の良い軍服で、気前良く金貨や銀貨を支払う皇国軍の主計隊を見れば、ここで大口契約の一つでも取り付けたいと思うだろう。
身形の良い軍服で、気前良く金貨や銀貨を支払う皇国軍の主計隊を見れば、ここで大口契約の一つでも取り付けたいと思うだろう。
だが、皇国としても皇国軍としても、そこまでの大口契約は必要ないのだ。
ここぞという場面で、村を出入りする度に現地の村人を雇うような事をせずに済む、自活可能な道案内が欲しいのである。
リエール傭兵隊のように地元の地理に詳しく、しかも正規軍と出会っても自力で戦闘や退却が可能な、数十人規模の傭兵隊が、師団あたり5、6個もあれば良い。
数百人から数千人の傭兵隊なんて、纏めて派遣されても扱いに困る。数百人の纏まった傭兵隊を分割しても、相応の指揮官が居ないから使えない。
皇国軍の案内として働く分賠償金を減額するという条件で、リンド王国軍の残存部隊が幾らか付いてきているので、尚更今以上の傭兵隊なんて要らない。
ここぞという場面で、村を出入りする度に現地の村人を雇うような事をせずに済む、自活可能な道案内が欲しいのである。
リエール傭兵隊のように地元の地理に詳しく、しかも正規軍と出会っても自力で戦闘や退却が可能な、数十人規模の傭兵隊が、師団あたり5、6個もあれば良い。
数百人から数千人の傭兵隊なんて、纏めて派遣されても扱いに困る。数百人の纏まった傭兵隊を分割しても、相応の指揮官が居ないから使えない。
皇国軍の案内として働く分賠償金を減額するという条件で、リンド王国軍の残存部隊が幾らか付いてきているので、尚更今以上の傭兵隊なんて要らない。
皇国軍は、異世界の大陸で活動するにあたり、大きく分けて三種類の人々を、軍属または軍属相当の現地協力者、軍人による軍事協力者という形で募っていた。
一つ目は、農民や猟師や行商人などで、村の近隣など限定された地域に限り、行軍を補佐する形の協力者。
二つ目は、自称冒険者や小規模傭兵隊で、軽装備で自衛戦闘くらいは可能で、終始行軍に付き従う形の協力者。
三つ目は、正規軍の大隊や中規模傭兵隊で、ある程度自活可能(積極的な戦闘可能)で、終始行軍に着き従う形の協力者。
一つ目は、農民や猟師や行商人などで、村の近隣など限定された地域に限り、行軍を補佐する形の協力者。
二つ目は、自称冒険者や小規模傭兵隊で、軽装備で自衛戦闘くらいは可能で、終始行軍に付き従う形の協力者。
三つ目は、正規軍の大隊や中規模傭兵隊で、ある程度自活可能(積極的な戦闘可能)で、終始行軍に着き従う形の協力者。
このうち、傭兵の出番は二つ目と三つ目の場合だが、どちらにしても剣と銃で武装した軽歩兵的な戦士が必要とされている。
傭兵隊の中には皇国軍の欲する軽歩兵的なところもあったが、逆に槍兵専門のようなところもあって、そちらは流石に使い所に困る。
銃歩兵傭兵隊ばかりが使われる事になると、槍歩兵傭兵隊から、自分たちも使えという声が出る。
特定の傭兵隊に仕事が固まらないように、全部の傭兵隊になるべく平等に仕事が回るようにするのが
傭兵ギルドの仕事なので、数週間毎にローテーションして使って欲しいという“要請”が出てくる訳だ。
傭兵隊の中には皇国軍の欲する軽歩兵的なところもあったが、逆に槍兵専門のようなところもあって、そちらは流石に使い所に困る。
銃歩兵傭兵隊ばかりが使われる事になると、槍歩兵傭兵隊から、自分たちも使えという声が出る。
特定の傭兵隊に仕事が固まらないように、全部の傭兵隊になるべく平等に仕事が回るようにするのが
傭兵ギルドの仕事なので、数週間毎にローテーションして使って欲しいという“要請”が出てくる訳だ。
既得権益というものは、御上が無理やり取り上げても反発を受けるだけだし、
仕方なく取り上げるにしても、それに対する補填が無ければ上手く行かない。
仕方なく取り上げるにしても、それに対する補填が無ければ上手く行かない。
形式的には、傭兵ギルドを潰すのは簡単だ。
女王が傭兵ギルドを解体する旨の署名をし、ギルドの勅許状を取り上げれば(失効させれば)いい。
しかしそれは抜かずの宝刀。強引なギルド潰しを実行すれば他のギルドから不信感を持たれる事は間違いなくなる。
それにそんな事をすれば、法的地位を失った百人余の元傭兵ギルド員と数万人の元傭兵が市井に解き放たれることになる。
女王が傭兵ギルドを解体する旨の署名をし、ギルドの勅許状を取り上げれば(失効させれば)いい。
しかしそれは抜かずの宝刀。強引なギルド潰しを実行すれば他のギルドから不信感を持たれる事は間違いなくなる。
それにそんな事をすれば、法的地位を失った百人余の元傭兵ギルド員と数万人の元傭兵が市井に解き放たれることになる。
傭兵ギルドの傭兵隊、傭兵達は、公共事業の側面もあった。
職の斡旋という分かりやすい理由だけでなく、王国軍の予備役プールとしての存在。
動員がかかってから兵士を徴募して訓練するのではなく、訓練経験や実戦経験のある傭兵を兵士や下士官、中隊長や連隊長として数千から数万の規模で募れる。
リンド王国の強さの一つとして、長らく王国軍と傭兵ギルドが持ちつ持たれつの関係にあった事は否定できない。
職の斡旋という分かりやすい理由だけでなく、王国軍の予備役プールとしての存在。
動員がかかってから兵士を徴募して訓練するのではなく、訓練経験や実戦経験のある傭兵を兵士や下士官、中隊長や連隊長として数千から数万の規模で募れる。
リンド王国の強さの一つとして、長らく王国軍と傭兵ギルドが持ちつ持たれつの関係にあった事は否定できない。
それまで、国軍の補助部隊や地域や都市の治安維持組織としてあった傭兵ギルドが無くなれば治安が乱れる。
ギルドという公的特権を失った武装勢力が牙を剥けば、皇国における西南戦争か、最悪、武力革命だ。
ギルドという公的特権を失った武装勢力が牙を剥けば、皇国における西南戦争か、最悪、武力革命だ。
だから傭兵ギルドを潰すなんて出来ない。
傭兵ギルドに所属する傭兵その他の人員は、最盛期にはリンド王国だけで十数万も居たので、これでも減ったと言える。
ギルドに所属する傭兵が減った最大の理由は、地方の村落の生産力が上がって食い扶持に困らなくなった事。
また、それと並行して、地方や中央の税収が上がったので、常備軍や地方警察組織の維持が可能になった事。
これらが重なって、傭兵に頼らずとも国家(国王)や地方領主が持つ独自の戦力に頼れるようになった。
ギルドに所属する傭兵が減った最大の理由は、地方の村落の生産力が上がって食い扶持に困らなくなった事。
また、それと並行して、地方や中央の税収が上がったので、常備軍や地方警察組織の維持が可能になった事。
これらが重なって、傭兵に頼らずとも国家(国王)や地方領主が持つ独自の戦力に頼れるようになった。
ただし、十数万も居た傭兵というのは、傭兵ギルドに直接所属する傭兵隊長に雇われた下級傭兵や人夫まで含めた数だ。
規模の大きな傭兵隊であれば、1人の傭兵隊長に数百、数千の人員というのも珍しくなかったのだが、それが現代では珍しくなっている。
傭兵隊の規模が全体的に小さくなっているだけで、ギルド登録されている傭兵隊の数自体は実はそれほど減っていない。
傭兵隊長は世襲だったり、持ち回りだったり、縁故だったりで選ばれ、傭兵ギルドの職員から“転職”する輩もいる。
傭兵隊の数はあまり減っていないのにギルド員の数はかなり減った。
という事はつまり、以前はかなり多数の“役員”や“顧問”が居たという事だし、それだけ組織に余裕があったという事でもある。
羽振りの良い商業ギルドなどは今でもそんな感じだ。
規模の大きな傭兵隊であれば、1人の傭兵隊長に数百、数千の人員というのも珍しくなかったのだが、それが現代では珍しくなっている。
傭兵隊の規模が全体的に小さくなっているだけで、ギルド登録されている傭兵隊の数自体は実はそれほど減っていない。
傭兵隊長は世襲だったり、持ち回りだったり、縁故だったりで選ばれ、傭兵ギルドの職員から“転職”する輩もいる。
傭兵隊の数はあまり減っていないのにギルド員の数はかなり減った。
という事はつまり、以前はかなり多数の“役員”や“顧問”が居たという事だし、それだけ組織に余裕があったという事でもある。
羽振りの良い商業ギルドなどは今でもそんな感じだ。
今日ではどの国でも規定されている武装結社の禁止。その例外が傭兵ギルド。
かつて、それが切実に必要とされた時代の残滓。
かつて、それが切実に必要とされた時代の残滓。
昔日は傭兵業で一財産築いた傭兵隊長も居たが、現代ではそんなの夢物語だ。
傭兵隊長でさえそうなのだから、下っ端の傭兵にとっては一攫千金の機会など無い。
国王や地方領主にとっては、もはや傭兵に頼らず自力で解決出来るのが武力問題。
傭兵隊長への依頼、契約の回数は自然と減り、そうなれば多数の人員を抱えた傭兵隊は倒産する。
倒産しないためには身持ちを軽く、つまり人員を削減し、少数精鋭の組織運営にするしかなくなる。
傭兵隊長でさえそうなのだから、下っ端の傭兵にとっては一攫千金の機会など無い。
国王や地方領主にとっては、もはや傭兵に頼らず自力で解決出来るのが武力問題。
傭兵隊長への依頼、契約の回数は自然と減り、そうなれば多数の人員を抱えた傭兵隊は倒産する。
倒産しないためには身持ちを軽く、つまり人員を削減し、少数精鋭の組織運営にするしかなくなる。
しかし、これが逆に傭兵隊が傭兵隊として、国軍とは別に存在し続けていられる要因ともなっている。
小回りが利く訳だ。
皇国軍もその利点を評価していない訳ではない。
小回りが利く訳だ。
皇国軍もその利点を評価していない訳ではない。
ただ、何十もの傭兵隊を雇う余裕は無いのと、雑多過ぎるのが問題だった。
ポゼイユ侯爵が全額負担して雇用し、それを皇国軍に派遣して無期限で指揮下に入れるという形になったリエール傭兵隊のような好条件は例外。
ポゼイユ侯爵が全額負担して雇用し、それを皇国軍に派遣して無期限で指揮下に入れるという形になったリエール傭兵隊のような好条件は例外。
基本的には傭兵の雇用費は皇国が全額負担するのだから、せめてギルドは顧客側の意見くらい聞いてくれてもいいだろう。
そんなに難しい要求をしているつもりはない。戦術的に小回りの利かない槍兵はやめてくれ、ギルドの都合で勝手に編成を変えないでくれ。
そんなに難しい要求をしているつもりはない。戦術的に小回りの利かない槍兵はやめてくれ、ギルドの都合で勝手に編成を変えないでくれ。
2~3週間経つと、傭兵隊が勝手に列を抜けて、別の傭兵隊が入ってくる。どの傭兵隊が来るか皇国軍は選べない。
その土地の地理や風俗に詳しいものという条件は最低限守ってくれているが、契約条件に反しない限りで好き勝手だ。
前線部隊から評判の良かった特定の傭兵隊との専属契約にしたければギルドに違約金を支払わなければならない。
その土地の地理や風俗に詳しいものという条件は最低限守ってくれているが、契約条件に反しない限りで好き勝手だ。
前線部隊から評判の良かった特定の傭兵隊との専属契約にしたければギルドに違約金を支払わなければならない。
最初に契約を結んだ際に契約内容の確認が甘かった皇国軍の師団経理部の落ち度と言えるのだが、時既に遅し。
例えば「常に傭兵隊1隊が皇国軍に付き従う事」という文言、皇国側からすると当然、基本的には同じ傭兵隊が従属するというつもりだった。
交代するにしてもある地域から離れたので地理に疎いとか、部隊に損害が出たとか、そういう理由を考えていた。
特に理由のない交代という状況は、皇国側は失念していたといっても良い。
「已む無き理由なしに皇国軍の指揮下を離脱する事を禁ずる」という文言もこの件に関しては死文化している。
「傭兵ギルドの都合で交代するのは十分な理由」と言われ、リンド王国軍の法務官も傭兵ギルド側の理屈は正しいと言う。
例えば「常に傭兵隊1隊が皇国軍に付き従う事」という文言、皇国側からすると当然、基本的には同じ傭兵隊が従属するというつもりだった。
交代するにしてもある地域から離れたので地理に疎いとか、部隊に損害が出たとか、そういう理由を考えていた。
特に理由のない交代という状況は、皇国側は失念していたといっても良い。
「已む無き理由なしに皇国軍の指揮下を離脱する事を禁ずる」という文言もこの件に関しては死文化している。
「傭兵ギルドの都合で交代するのは十分な理由」と言われ、リンド王国軍の法務官も傭兵ギルド側の理屈は正しいと言う。
皇国軍は傭兵ギルドとの契約数を最低限に絞っている。
しかしあの傭兵隊が良いだのあの傭兵隊は嫌だの、色々と文句をつけるので、傭兵ギルドは「だったら契約数増やせばいい」と言ってくる。
大口契約にすれば、傭兵隊あたりの単価は安く抑えられるし、多くの傭兵隊を様々に使えるから便利になると。
しかしあの傭兵隊が良いだのあの傭兵隊は嫌だの、色々と文句をつけるので、傭兵ギルドは「だったら契約数増やせばいい」と言ってくる。
大口契約にすれば、傭兵隊あたりの単価は安く抑えられるし、多くの傭兵隊を様々に使えるから便利になると。
あまり傭兵ギルドに好き勝手されると、足手纏いになる。だが当面の間、傭兵の協力は欲しい。
腑に落ちないが違約金を払うしかないか?
違約金を払うくらいなら大口契約した方が後々便利ではないか?
こんな事なら傭兵ギルドを買収してやりたい!
砲撃の間違いじゃないか?
腑に落ちないが違約金を払うしかないか?
違約金を払うくらいなら大口契約した方が後々便利ではないか?
こんな事なら傭兵ギルドを買収してやりたい!
砲撃の間違いじゃないか?
そんな口論が皇国軍の司令部で起きている事など、皇国の名誉の為に秘匿されなければならないのだ。