『シャーナさまと蓄音機』
リンド王国、ノールベルグ城。
ある日の午後、シャーナは侍女を呼ぶ呼び鈴を鳴らすと、蓄音機のスイッチを入れ、急いでカーテンの裏に隠れた。
ある日の午後、シャーナは侍女を呼ぶ呼び鈴を鳴らすと、蓄音機のスイッチを入れ、急いでカーテンの裏に隠れた。
「お呼びでございますか?」
…………。
「陛下?」
自分を呼んだ筈のシャーナの姿が見えない。
『あなたの後ろに居ますよ』
突然聞こえたシャーナの声に振り向くも、そこに姿は無い。
『あなたの後ろに居ますよ』
もう一度振り返るが、やはり誰の姿も無い。
そもそも声の聞こえる方向と“後ろ”が一致しない。
「陛下、どちらにいらっしゃるのですか?」
『私はここに居ますよ』
部屋に姿は無いのに“ここ”とは?
おろおろする侍女をカーテンの影から覗き見るシャーナは笑いを堪えるのに必死だ。
…………。
「陛下?」
自分を呼んだ筈のシャーナの姿が見えない。
『あなたの後ろに居ますよ』
突然聞こえたシャーナの声に振り向くも、そこに姿は無い。
『あなたの後ろに居ますよ』
もう一度振り返るが、やはり誰の姿も無い。
そもそも声の聞こえる方向と“後ろ”が一致しない。
「陛下、どちらにいらっしゃるのですか?」
『私はここに居ますよ』
部屋に姿は無いのに“ここ”とは?
おろおろする侍女をカーテンの影から覗き見るシャーナは笑いを堪えるのに必死だ。
件の蓄音機は、女王即位と国交樹立に対するお祝いの品として皇国天皇から贈られたものだった。
皇国外の外国人が持つものとしては現状ユラ教皇とリンド女王しか持たない貴重品である。
機能もそうだが、調度品としての外装も素晴らしい。むしろ外装の方が高価なくらいだ。
皇国風の漆の箱に入れられており、花鳥風月をあしらった蒔絵、蝶番などに用いられる金細工は皇国でも最高の職人達の手による。
外装だけで100万リルスの値がついてもおかしくないくらいなのだ。
さらに中に入れられている、本体たる蓄音機が皇国以外の国では作成不可能な高度製品であり、輸出もされていない事から、実質値が付けられないも同然。
当代のリンド王家の財産としては破格の物品であることは確かであろう。
それを、侍女との遊びに使うとは……。
皇国外の外国人が持つものとしては現状ユラ教皇とリンド女王しか持たない貴重品である。
機能もそうだが、調度品としての外装も素晴らしい。むしろ外装の方が高価なくらいだ。
皇国風の漆の箱に入れられており、花鳥風月をあしらった蒔絵、蝶番などに用いられる金細工は皇国でも最高の職人達の手による。
外装だけで100万リルスの値がついてもおかしくないくらいなのだ。
さらに中に入れられている、本体たる蓄音機が皇国以外の国では作成不可能な高度製品であり、輸出もされていない事から、実質値が付けられないも同然。
当代のリンド王家の財産としては破格の物品であることは確かであろう。
それを、侍女との遊びに使うとは……。