10 名前: 名無し三等兵 02/12/02 17:18 ID:???
レンジャー隊員である山川は一人で雪の降りしきる迷いの森を彷徨っていた。
仲間とはぐれてから既に五時間は経つ。もはや日は暮れて、辺りには積もり上がった白銀と夜の闇が広がっていた。
「畜生、何処なんだココは」
手にしたコンパスに目をやるも、針はあらぬ方向へ回転を続けている。磁場が狂っているのだ。
「もうだめか…」
雪の降り積もりが浅い松の根元に座り込んでため息のように呟く。腕の時計を見ると既に夜中の三時を回っていた。
(どうせもう死ぬ。日本には帰れずに、この訳の分からない場所で凍え死ぬくらいなら・・・)
言いえぬ衝動に駆られて腰のホルスターから拳銃を抜き、自分の頭に銃口を突き立てたその時。
「キャァァァァァ!!・・・」
夜の静寂を破り女の悲鳴が木々に木霊する。はっと我に返った山川は拳銃を手にしたまま、反射的にその方向へ走り出した。
雪を掻き分け夜の闇を百メートルほど進んだ所に悲鳴の発生源がいた。いったい何事だ?目を凝らしてみる。
ゴブリンにローブを纏った女性が掴み上げられているようだ。まだ此方の存在には気づいていない。
ここから撃ち殺すのは簡単だ。しかし音を立てて他の敵に見つかる可能性がある。
山川はナイフを手に構え、ゴブリンの後ろにゆっくりと、静かに回り込んだ。
13 名前: 10の続き 02/12/02 18:47 ID:???
「グヘヘ…観念しろ」
両手で相手の胸座を掴み上げたゴブリンが得意げに声を上げた。
しかしローブを纏った女性は相変わらず抵抗を続けている。両者の身長差は歴然で、女性のほうは既に足が地に付いていない。
それでも足をバタ付かせるなりして精一杯の抵抗をしていた。
「くそうっ!!離せこの化け物め!!」
バタつかせた足でゴブリンの腹をけり続けるものの、効果は皆無に等しかった。
しかも暴れればそれだけ敵の締め付ける力が強くなっていき、呼吸も難しくなっていく。
「クッ…!!」
だんだん意識が遠のいて足を動かす力も無くなって来た。もうだめかと思って薄れ行く意識の中で最後の一睨みを利かせようと前を見る。
そして気づいた。ゴブリンの後ろに誰かいる。
「ウガあッ!?」
その誰かは目にも留まらぬ速さでゴブリンの口を塞ぎ、手にした短剣の様な物をその咽喉に走らせた。
ほんの数秒の内にゴブリンの口から血が溢れ出し、咽喉がザクロの様にパックリ開いていく。
ゴブリンは声を出す事さえ出来ずに周りの雪を真っ赤に染めその場に突っ伏した。
「いっ…!」
突然宙吊り状態から開放された女性は着地に失敗しその場に尻餅を突いてしまった。言葉にならない声を上げる。
「大丈夫か?」
ゴブリンを殺した張本人、山川が少しなだめる様に問いかけた。
だが女性の方はその場に座り込んだまま警戒する様に山川を睨み付ける。
相手の状況を察した山川は取り敢えずナイフをしまい自分に攻撃の意志が無い事を伝えようとしたが、その必要は無かったようだ。
女性は無言のままローブを上げて、今まで隠れていた顔を露にした。
レンジャー隊員である山川は一人で雪の降りしきる迷いの森を彷徨っていた。
仲間とはぐれてから既に五時間は経つ。もはや日は暮れて、辺りには積もり上がった白銀と夜の闇が広がっていた。
「畜生、何処なんだココは」
手にしたコンパスに目をやるも、針はあらぬ方向へ回転を続けている。磁場が狂っているのだ。
「もうだめか…」
雪の降り積もりが浅い松の根元に座り込んでため息のように呟く。腕の時計を見ると既に夜中の三時を回っていた。
(どうせもう死ぬ。日本には帰れずに、この訳の分からない場所で凍え死ぬくらいなら・・・)
言いえぬ衝動に駆られて腰のホルスターから拳銃を抜き、自分の頭に銃口を突き立てたその時。
「キャァァァァァ!!・・・」
夜の静寂を破り女の悲鳴が木々に木霊する。はっと我に返った山川は拳銃を手にしたまま、反射的にその方向へ走り出した。
雪を掻き分け夜の闇を百メートルほど進んだ所に悲鳴の発生源がいた。いったい何事だ?目を凝らしてみる。
ゴブリンにローブを纏った女性が掴み上げられているようだ。まだ此方の存在には気づいていない。
ここから撃ち殺すのは簡単だ。しかし音を立てて他の敵に見つかる可能性がある。
山川はナイフを手に構え、ゴブリンの後ろにゆっくりと、静かに回り込んだ。
13 名前: 10の続き 02/12/02 18:47 ID:???
「グヘヘ…観念しろ」
両手で相手の胸座を掴み上げたゴブリンが得意げに声を上げた。
しかしローブを纏った女性は相変わらず抵抗を続けている。両者の身長差は歴然で、女性のほうは既に足が地に付いていない。
それでも足をバタ付かせるなりして精一杯の抵抗をしていた。
「くそうっ!!離せこの化け物め!!」
バタつかせた足でゴブリンの腹をけり続けるものの、効果は皆無に等しかった。
しかも暴れればそれだけ敵の締め付ける力が強くなっていき、呼吸も難しくなっていく。
「クッ…!!」
だんだん意識が遠のいて足を動かす力も無くなって来た。もうだめかと思って薄れ行く意識の中で最後の一睨みを利かせようと前を見る。
そして気づいた。ゴブリンの後ろに誰かいる。
「ウガあッ!?」
その誰かは目にも留まらぬ速さでゴブリンの口を塞ぎ、手にした短剣の様な物をその咽喉に走らせた。
ほんの数秒の内にゴブリンの口から血が溢れ出し、咽喉がザクロの様にパックリ開いていく。
ゴブリンは声を出す事さえ出来ずに周りの雪を真っ赤に染めその場に突っ伏した。
「いっ…!」
突然宙吊り状態から開放された女性は着地に失敗しその場に尻餅を突いてしまった。言葉にならない声を上げる。
「大丈夫か?」
ゴブリンを殺した張本人、山川が少しなだめる様に問いかけた。
だが女性の方はその場に座り込んだまま警戒する様に山川を睨み付ける。
相手の状況を察した山川は取り敢えずナイフをしまい自分に攻撃の意志が無い事を伝えようとしたが、その必要は無かったようだ。
女性は無言のままローブを上げて、今まで隠れていた顔を露にした。